物色日記−2004年10月

※頻出語句解説はこちら
  10月31日
▼大量に買い込む度に「今月はこれでオシマイ…」などと思うものですが本日の収穫、今池グレイテストヒッツにてRACHEL'S「HANDWRITING」「MUSIC FOR LEGON SCHIELE」、RACHEL'S/MATMOS「FULL ON NIGHT」、ONEIDA/LIARS「ATHEISTS, RECONSIDER」、FARMERS MANUAL「NO BACKUP」(MEGO)、LIVING COLOUR「VIVID」。RACHEL'Sの目撃情報を聞きつけてしまったからには仕方なし。

【只今のBGM:RACHEL'S「MUSIC FOR EGON SCHIELE」】


RODAN派生組コンプリートを目指して購入しました。シカゴのイリノイ大学で行われた、画家のエゴン・シーレという人を題材にした演劇のためのサウンドトラックとして作ったと書いてあります。通常大勢のゲスト陣を迎えて制作されることの多い彼らの作品中では珍しくメンバー3人(ピアノ、ヴィオラ、チェロ)のみで全編演奏されていまして、肩肘張る大曲はなく軒並み3分前後。内容も例によって絵画的悲壮チェンバーかな、と思いきや、まあドラムも何もなくロック以外の何かであることはいつもながら確かなものの、欧州的な薫りの深さ(エゴン・シーレはオーストリアの人)と目の覚める美しさをたたえた、SIGUR ROSもPOPOL VUHも久石譲もブッ飛ぶような究極の精神浄化ミュージックになっております。こりゃ凄い。ちゃんとクラシックマナーで気合の入った演奏を聞かせるレイチェル・グライムズ君のピアノの表現力には恐れ入りました。これがポストコアシーンからニョキッと出てきた音なのか…と信じられない心地ですが、実際このアルバムには唯一の元RODAN、ジェイソン・ノーブル君は演奏自体には不参加なわけですねー(プロダクション&プリ・レコーディングとしてクレジットあり)。ついでに録音は我らがロバート・ウェストンIV世。ルイヴィル大学・北リサイタルホールにて収録ってのがまた凄い。他のアルバム聴いて、チェンバー版LABRADFORDみたいなのは要らないよーって思った人も、これだけは強くオススメです。RODANに全く興味のない人も、イヤし系ヨクなーい?みたいに言ってる人も買って聴いて泣けと。

  10月30日
本日の収穫、一日遅れの今池P-CANにてJOHN FAHEY「AMERICA」、MOVING GELATINE PLATES「MOVING GELATINE PLATES」、RICKIE LEE JONES「RICKIE LEE JONES」、BRUCE SPRINGSTEEN「THE RIVER」、ORNETTE COLEMAN「ORNETTE!」、RON CARTER / ERIC DOLPHY / MAL WALDRON「WHERE?」、4Fバーゲン品コーナーから300円でURGE OVERKILL「AMERICRUISER/JESUS URGE SUPERSTAR」、BRUCE SPRINGSTEEN「NEBRASKA」。P-CANらしいシブい買い物になりました。

【本日のレビューその1:URGE OVERKILL「AMERICRUISER/JESUS URGE SUPERSTAR」】


バーゲン棚で見掛けまくるバンドの90年作。よく見るのはGEFFEN移籍後のものですがこの人達もともとTOUCH&GOなんですなー。てことでこのアルバムはまだT&G時代の盤。音楽性は微妙。HUSKER DUをKILLDOZERみたいなジャンクに染まらせて初期FAITH NO MOREっぽさをやや加味したような、「ANGEL RAT」期のVOIVODをTHE HELLACOPTERSにカヴァーさせたような、こりゃ何とも言い難い。それでもやってる本人達はやけに自信満々な様子で有無を言わせぬ説得力があるのがオールドT&Gのマジックです。いやー興味深い。微妙だろうと何だろうとバンドのロック体力の高さがひしひしと伝わるのがいいですね。ライヴはやっぱり圧巻だったんでしょう。色々と分化する前のUSアンダーグラウンドシーンの一端を垣間見るにはこの上なし。300円なら買えばよい。

【本日のレビューその2:THE FIRM「THE FIRM」】


2月6日のこの欄で2作目を紹介したTHE FIRMの1st。BAD COMPANYが辿った都会的洗練の延長上にくるポール・ロジャース節満開の、ペイジ及びZEPファンにはまあガッカリもいいとこな内容でしょう。BAD COMPANYにも明らかに冴えてるときと冴えてないときがあったわけで、このアルバムはどっちかというと冴えない寄りの空気。どうでもいい感じのアリーナロックのオンパレードなんて言ったらあんまりでしょうか。ペイジ単独の作曲は一つもなく、わざわざフレットレスで出しゃばるトニー・フランクリンはなんか余計。ホーン・セクションや女声コーラス隊も妙にバブリーで却って切ない。それでも、それでもッ、ポール・ロジャースの歌唱は素晴らしいのでいいのです。らしい哀愁漂う"Radioactive"や"Money Can't Buy"など佳曲と呼べるものはあるし、9分余に渡って徐々にヴォルテージを上げていくラストの大曲"Midnight Moonlight"も"天国への階段パート2"には全然なり損ねてるけど意欲は買えます。ジャケも80年代らしくて良いし、まあ趣きのある品じゃないですかと。

  10月29日
収穫はなし。今日からの今池P-CANバーゲンには行けなかったので明日出向こうと思います。風邪でダルいのか風邪薬でダルいのかよくわからん。

【只今のBGM:THE CLAUDIA QUINTET「I, CLAUDIA」】


CUNEIFORMの人達。この界隈では名うてのプレイヤーが揃ってるようですがよく判りません…。メンバーが過去に絡んできたミュージシャンとして挙げられていた中で辛うじて知ってたのはドン・バイロン、アンソニー・ブラクストン、ジム・ブラックくらい。ヴィブラフォン、クラリネット兼テナーサックス、アコーディオンにリズム隊という変わったカルテットです。ポストロックとアヴァンジャズの中間をいく感じのこれがまたイカす音楽!各楽器の音の立ち上がりの違いを活かしてのライヒ的ミニマリズム(アコーディオンがストリングス隊の代わりとして大活躍)から初期MICE PARADEをもっとアダルトにしたような人力親切エレクトロニカ風アンサンブルまで余裕で股にかける頼もしさ。TOWN AND COUNTRYにジャック・ディジョネットを加入させたらこうなるか?ジム・オルークやTORTOISE人脈を中心としたいわゆるシカゴ・ポストロック・コミュニティの連中が共通して背負っているニオイ(潔癖、和み、未整理の実験性、etc.)はしかし全く感じさせず、ジャズ的なミュージシャンシップ優位の先鋭音楽探求をごく真剣に行っているという印象です。なかなかシッポを掴ませないBATTLESあたりより完成度/確信度は高いと見るべきかも。CUNEIFORM〜KNITTING FACTORY界隈はまだまだ開拓の余地ありですな。大推薦。

  10月28日
▼最近行ったサウンドベイ上前津に買い残しがいっぱいあった気がして再発掘に向かいました。本日の収穫CURLEW「MEET THE CURLEWS!」「MERCURY」、THE CLAUDIA QUINTET「I, CLAUDIA」、このへんは昨日CUNEIFORMのサイトで試聴して買う気に。収穫まだ続きます、ANTELOPE「CROWNS/THE FLOCK」(DISCHORD、EL GUAPOのメンバーがいる新バンドの2曲入りシングル)、B-52'S「COSMIC THING」(89年)、HENRY COW「UNREST」(リマスター)、ORNETTE COLEMAN「NEW YORK IS NOW」、EASTMOUNTAINSOUTH「EASTMOUNTAINSOUTH」、THE FIRM「THE FIRM」(ポール・ロジャース&ジミー・ペイジ!1st!)、更に久々にバナナ本店でUS MAPLE「ACRE THRILLS」、TRENCHMOUTH「MORE MOTION」(THE ETERNALSの前身バンドのアンソロジー!)。最近めっきり大量まとめ買い→ほそぼそ分割鑑賞、というサイクルが根付いてしまって、結局買ってる量は変わらん訳ですが、あまり中古CD屋に通い過ぎない生活にも慣れてきました。ある時突然日本のよっぽど寂れた土地に住むことになったとして、狙った品だけ時々アマゾンで買う生活になっても耐えられそうです。

【本日のレビューその1:EASTMOUNTAINSOUTH「EASTMOUNTAINSOUTH」】


けっこう前にバナナレコード名駅店で試聴してその場では買わないで、2・3日して「やっぱりあれは買いだった…」と思い直して再び出向いたら既に売れてしまっていた、という哀しい思い出があってその後密かに探していた品。男女ヴォーカル和みフォーキーポップ、といえばIDAのためにある枕詞のようなものですが、この人達はDREAMWORKS(EELS、ルーファス・ウェインライト、JIMMY EAT WORLD他)リリース、ミッチェル・フルームがプロデュースという体制のもと、良心的といえる範囲内でもっと産業的メインストリーム対応型の仕上げが施されております。しんみりアメリカン版THE CORRS?今っぽくコーティングされているものの楽曲自体のフォーキー度は相当なもので、枯れ声オヤジに泥臭く弾き語らせたところを想像するとホントただの王道USルーツロックになりそうな曲も。逆にいうと今様メロディアス&夢見心地に聴かすアレンジがそれだけ巧みということでもありましょう。ジェイムズ・イハのソロにも近い手触り。メロウで良質なのが聴きたい人には即おすすめ。

【本日のレビューその2:ORNETTE COLEMAN「NEW YORK IS NOW」】


フリーファンク化前夜の68年録音BLUE NOTE盤。ジミー・ギャリスン&エルヴィン・ジョーンズを従え、相方はジョシュア・レッドマンの父デューイ・レッドマンというカルテットです。でたらめなAMラジオのチューニングの如く13分間グネグネとシームレスに変調し続ける1曲目からもう気合充分。破綻と秩序の境目を亡きものにする作風は相変わらずというか変わりようもなくといった感じ。とはいえオーソドックスなモダンジャズ・アンサンブルの上に妙なのが乗っかる格好だったCONTEMPORARY初期に比べると随分活用形を増やしたものです。このアルバムはエンジンがコルトレーンバンドの二人とあって若干闘争モード寄りのテンションになる場面も多々ありまして、私はこの人のユルくて実はラブリーなところが味だと思ってるんですが、周りのペースに呑まれずちゃんといつもどおりの息が出来ているのはさすが。ポップで楽しい"Broad Way Blues"白眉です。いかにもBLUE NOTE印なジャケのレイアウトはしかし似合わんなあ。

  10月27日
収穫はなし。風邪をひきかけた。醤油はうす塩に変えた。

【只今のBGM:KAMPEC DOLORES「SITTING ON THE BUFFALO」】


80年代末から音源を残しているというハンガリーの現役レコメンバンドの2001年作。ニコ、PERE UBU、THE EXなどと絡みがある人達のようです。最近のCUNEIFORMとか世界各国のRecRecの連中に手を出し始めるとキリがないので少々恐い買い物だったんですが、試聴して余りに良かったので。変なストイックさとオールドロック然とした情緒(特にギター!)漂うアンサンブルにRAINER MARIAばりにヘタウマぶっきらぼうかと思いきや伝統的な各種特殊唱法を完璧にマスターしたやり手女性ヴォーカルが乗って、やってることは東欧式変拍子や山岳民謡を消化した素朴な泣きのアヴァン・トラッド・ロック。仏HOLYの名バンドSTILLE VOLKの2ndによく似てますがそれじゃ余りに人に通じない例えなので別の言い方を無理矢理するならば、テンション低めのKARATE+AREA!でしょうか。火花散る濃密なスカスカスキマ感と、滲み出るどころか常時湧き出っぱなしの土着性がたまりません。クラリネットほか金管楽器も入り過ぎない程度に導入されて雰囲気充分。直球でFARMERS MARKETやNE ZHDALIが好きという人からTHE 3RD AND THE MORTALにもっとプログレッシヴになってもらいたい人、SOUTHERNやQUARTERSTICKあたりのエキセントリックなバンドがツボという人まで、広くお勧めしたいクオリティと分かりやすさをもった好盤。

  10月26日
収穫はなし。最近どの店も一ヶ月に一度くらいしか行かなくなってしまって、もはや物色日記を名乗る資格さえ危ぶまれるところでございます。金もないが、留年5回生時代と同様に買い込んでたんでは聴く時間がなく、それでストップがかかってる状態です。いよいよ大地震の恐怖も迫ってるところで、アレも割れたコレも潰れたと嘆く前に既に持ってるのをシッポリ聴き返すのも良いか。あっオチがない!

【只今のBGM:KING'S X「DOGMAN」】


ということで久々に引っ張り出して聴こう第1弾。黒人ソウルフルベースヴォーカル/白人インドア系ギターヴォーカルのダブル・メインシンガー体制を取るトリオバンドの5thです。デビュー以来、変則チューニングを駆使したへヴィリフ&複雑アルペジオ/オブリガート、岩のように堅固な3声コーラス、ノーマルな4拍子の中での入り組んだリズム表現に徹底的に拘った特異なスタイルを身上としていて、METAL BLADEからリリースされていたもののメタルじゃあないしそれなら何と言われても困る、て感じの物凄く微妙なポジションに居続けてる彼らですが、今聴くとBURNING AIRLINESやSHINER、TRAINDODGEあたりの、ガッツィー&へヴィながら歌ものとしての完成度が高いエモ/ポストコアの一部の人々に非常に近いなと感じます。むしろ私がメタルからそっちにスンナリ移行したのはKING'S X聴いてたからかと。94年のこのアルバムは過去4枚でタッグを組んでいたプロデューサーのサム・テイラーを起用せず、甘いメロディが減って当時勢いのあったグランジの深いへヴィネスに同調した転換点的作品として軽く物議を(少ないファンの間で)醸し出したという代物でありまして、私もその頃は何か味気なくなったなー程度に思ってたのですが、いやいやこの充実しきったパワートリオ・グルーヴに、ソリッドな曲調も相俟って冴えに冴えるダグ・ピニックの激ソウルヴォーカル、もうカッコイイの一言!でございます。別段変にダークになったとかオリジナリティをないがしろにしたということはなく、時代が追いついたから堂々と自分達のやることをやるといった自然体っぷり。文句ナシに彼らの名盤のひとつとして数えていいと思います。いやーこれは多くの人に聴かれて再評価されて頂きたいなあ。平気で800円以下でゴロゴロしてるので是非捕獲を。ちなみにジャケは色違いで計4種あるようなので出来れば全色買って下さい全員。

  10月25日
▼言い切り羅列系散文調に収穫はなし。くどいようですが免許は失効して下さい。全部動く歩道にして下さい。黒い毛の混じった柴犬を見掛けたいの。ポン・デ・紫いもはてんでイモくなくて全然ダメなんで御注意。バンド頑張ってます。西部が優勝ね。

【只今のBGM:NIGHT RANGER「MIDNIGHT MADNESS」】


今までこれを持たずにデカい顔をしておったのかと、ギザギザに刻んだ石ザブトンに座らされて半日叱責されても構いません。便利なベスト盤で済ませていたのですがこの度やっと購入致しました、名盤2nd。言わずと知れた8フィンガースッ飛ばしチューン"(You Can Still) Rock In America"に始まり、サイコー!ジェフ・ワトソンはやっぱシャレにならん巧さですね。83年とあって多分まだ冷蔵庫みたいなエフェクタラックは繋げずに弾いてるっぽいから、超絶フレーズの超絶具合にもリアリティがあって本当に圧倒されます。そしてニューウェイブの空気をたんまり吸い込んだクサクサシンセのイントロで始まる2曲目、日本のアイドル歌謡みたいな軽快ハイソロッキンな3曲目…、と流れはもう完璧です。そこにトドメの"Sister Christian"か!と、贅沢尽くしフルコースに完全KO。やっぱりこういうのはフルアルバムで聴くべきですね。LAメタルって凄く曖昧な言葉でCINDERELLAからLIZZY BORDENまで一緒くたにしてしまうタチ悪い存在でもありますが、NIGHT RANGERは「ハード・エッヂなギター満載のソフィスティケイテッド・スタジアムロック・バンド」とでも表現すればよいでしょうか。私はその昔WINGERの1stに「アメリカ人はこんな良く出来たものを掃いて捨てるかの如くポッポと聴き流しているのか、贅沢な!」と衝撃を受けたことのある男ですので、そのラインの先駆盤たるこのアルバムにはもう神々しささえ覚えます。アメリカ愛してます。アメリカが好きと言うならこれを黙って買いなさい!浮ついた80年代ヘアメタルで何かバランス良く強烈な一枚をと言われたら自信をもってこれをお勧めします。これだけは買っといて下さい。終盤に出てきた"When You Close Your Eyes"のイントロに軽く泣きそうになってしまった。

  10月23−24日
▼両日とも収穫はなし。日曜の朝イチちょっと過ぎくらいに自動車の運転免許の更新に行きますと、不愉快なまでに長い列に並ばされる(全長200m以上はあったはず)ことがあります。賢明な皆様は平日に行くか、失効して下さい。

【只今のBGM:GILGAMESH「GILGAMESH」】


また一枚カンタベリーの名盤が我が家にやって参りました。NATIONAL HEALTHのメンバーとなるアラン・ゴウエン率いるバンドです。これとあと1枚だけを残して解散してしまった伝説のグループの伝説盤なわけですが、迷宮ジャズロックにして牧歌ポップ、スリリングとコミカルの最高峰を一度に鷲掴みにした、んもー素晴らしい出来ですね。サムラ+HATFIELD AND THE NORTH的な激変則ユニゾンの嵐とCARAVAN〜ロバート・ワイアット風のポッカリ和みムードを違和感なくスパスパ切り替えて夢見心地のカンタ・サウンドを堪能させてくれます。スゴイなあ。恐らく一発録りなんでしょう、異様に高鮮度な演奏が最高だしこっそり拾ってるアンビエンス(ギターで特に顕著)もたまらない。熾烈な変拍子もラウンジーな愛らしさの中で行われるので、プログレ苦手だわと思ってる人にも全く問題ございません。効果的に導入されるエレピやヴィブラフォンの音色の優しいこと。音楽とは斯くも豊かになれるものかと感銘を受けるサイコーな盤です嗚呼イイなあ本当に。全員買いですよ本気で。

  10月22日
▼免許書き換えに向けて髪切りました。ついでに上前津サウンドベイで本日の収穫GILGAMESH「GILGAMESH」、KAMPEC DOLORES「A BIVALY HATEN」(ハンガリー産ReRバンド2000年作)、MOTORPSYCHO + JAGA JAZZIST HORNS「IN THE FISHTANK」(EPシリーズ第10弾)、面影ラッキーホール「音楽ぎらい」、バーゲン品でSTRAND「MESSAGES」(DELSIN!)、MARINE RESEARCH「SOUNDS FROM THE GULF STREAM」(K)。

【只今のBGM:面影ラッキーホール「音楽ぎらい」】


昭和歌謡キャバレーR&Bともじゃがたらファンクの後継者とも言われる面ラホこと面影ラッキーホールの3rd。大槻ケンヂのアンダーグラウンドサーチライへの参加で知りました。淫靡に廻るミラーボールの明かりとそこはかとないカビの薫りに満ち満ちた薄倖/発酵アングラ岡村靖之とでも申しましょうか、キース・ジャレット似(?)の声をしたシンガー氏が所帯じみたソフト三上寛みたいな詞を歌う、戦後日本の世知辛さを音に凝縮したかのような壮絶な内容です。表向きは突撃オシャレファンクだったりダウンビートなR&Bだったりするのですが、基本的に演奏は全員激ウマな上、全編にあしらわれた生ホーンがLOS LOBOS的対象化感の源泉になっていて、時々入っているラウンジーな曲もむしろ果てしなく痛烈に響きます。ブックレットのサンクスリストに警視庁と東京地裁が載っているのはシャレなのか、その真意さえ想像させないキワドい音楽。

  10月21日
▼次の日曜は免許の書き換えを。本気で忘れそうなのでこんなところに覚え書きです。収穫はなし

【只今のBGM:BEDHEAD「TRANSACTION DE NOVO」】


CODEINE、LOWなどと並び評されるスローコア・オリジン・バンドの98年ラスト作。デビュー以来のTRANCE SYNDICATEリリースです。鬱ウツ恨み節ってな感じじゃなくてどっちかといえばCODEINEタイプの、若干アメリカーナ入った優しい泣きをユッタリ聴かせてくれる人達であります。低音で危うく囁き歌うヴォーカルはもろジェフ・ミュラー(RODAN〜JUNE OF 44、SHIPPING NEWS)。なのでSSWっぽさはありません。この手のバンドには珍しくアップテンポのツカミ系チューンがあるのがビックリですが、これは蛇足な気がしないでもないけど悪くはない出来。しかも泣きの質がとにかく高くてフレンドリーさは比較的あるので、スローコアの中でもストイックなやつをアルバム一枚聴き通すのはキツイという人にはうってつけでしょう。英国プログレでいったら4大バンド(KING CRIMSON、PINK FLOYD、YES、EL&P)に対するGENESISのような位置付けか。

  10月20日
収穫はなし。昨日の「台風攻勢」ってのは来る頻度のことを言ったつもりなんですが、今回のはえらいパワーがあって名古屋市内でも久々に洪水か建造物倒壊かとヒヤヒヤしました。地震で棚が倒れてCDが6割くらいぱりんぱりん、というなら割れた分に関してはまだ諦めがつくけど、家の二階まで浸水して全部ウォーターダメージ有りとかになったら何かやりきれないだろうなと思います。ああコレクターって生きにくい。財を持たないで幸せに生きられたら幸せでしょうなー。

【只今のBGM:OFFERING「I - II」】


畏れ多くもOFFERINGです。重厚長大なるコバイアの語り部からコンパクトなアフロ・マグマへ、そしてそれらを経過した愛溢れる人声オリエンテッド・スピリチュアル・ポップと化して消滅に至ったMAGMAが、ヴァンデ夫妻をより絶対的な核とするコルトレーン・イタコ・ユニットとしての性格を強めてリインカーネイトしたのがこのOFFERINGでした、と一応軽く説明を。これは別に2作品のカップリングとかではなく、もともとOFFERINGのコンセプトのパート1とパート2を収めたアルバムですよとしてリリースされた正真正銘の1stです。MAGMAにあった緻密で長大なスコアはここでは殆ど破棄されて、もっとアブストラクトでインプロヴィゼイション主体の、「UDU WUDU」以降のモサモサ・アフロビートを消化した土台に「MERCI」で見られたスピリチュアル寄りのムードを順当に増大させたような音楽性になっています。もはやファラオ・サンダースやアリス・コルトレーンのノリで聴ける域。全体的にヴァンデ夫妻のヴォーカルがよりクローズアップされてというか堂々の主役扱いで、特に夫クリスチャンの方は恐ろしい滑舌でもって人力シーツ・オブ・サウンドを構築!彼の人智を超えたヴァイタリティがほとばしるようなパフォーマンスでもう全部圧巻。コルトレーンに啓示を受けてMAGMAをスタートさせたというのが狂言でも何でもなかったことがここへきて改めて実感されます。一方の妻ステラはヒヨーウワワーと天上人の如きソプラノを披露。高速夫婦ユニゾンもあります。かつての不穏な異世界スリルがないことに不満を持つファンがいるのも当然でしょうが、私はこの唯一無二のコバイア流・愛の賛歌(?)を支持/肯定したい側です。MAGMAってこういう燦々たるポジティヴさも見せてくれるバンドだったと思うので。MAGMAが好きなのかヴァンデ(=コバイア)共感者なのかを分かつ試験紙的な作品かも。

  10月19日
収穫はなし。年配のテレビ御無沙汰系芸人が待ってましたの得意芸を連発し過ぎて「もういいから…」と取り押さえたくなる、ような重ね重ねの台風攻勢でもはやビックリしますね。

【只今のBGM:COPELAND「KNOW NOTHING STAYS THE SAME」】


瑞々しく映った花のジャケに「変わらないものは何一つなしと知れ」とのタイトル、それで中身はベッタベタの80年代USヒッツのカヴァーというEP。1曲目がGENESISつながりでよく知っている(というかこっちを先に知っててGENESISに手を出したのですが)フィル・コリンズの、無く子も黙るインターナショナルヒット"Another Day In Paradise"だったので買わざるを得ませんでした。叙情的で端正なメインストリーム向き美エモを身上とする彼ららしく、若干今っぽい気怠さを加味しつつ原曲の泣かせどころを無駄にしないアレンジを頑張って施していて、カヴァーとしては聴き応えのある内容になっているし、次のフルアルバムまでのつなぎとしてもファンを納得させる出来だと思います。映画「トップガン」で有名な"Take My Breath Away"も、あの印象的なビョビョビョビョビョーンというシンセをオミットしてスタイリッシュに生まれ変わっております。30前後の人にはたまらんでしょうな。

  10月18日
収穫はなし。ヒマがあって何となく東急ハンズをウロついてたらフツフツとDIYしたくなって、いきなり板と糸ノコとか買ってしまったなあ。

【只今のBGM:CAPTAIN BEEFHEART「DOC AT THE RADAR STATION」】


アマゾンの廉価セールで980円だったので購入。ジャケを見てのとおりニューウェイブ時代、80年の作品です。内容は(一応試聴したものの)これまた想像どおり、ニューウェイブ版牛隊長そのまま。もともとこの人のバンドの壊れギターはポストモダン対応型だった訳で、その組み上げ方が80年代仕様のリズム・オリエンテッドなものになっただけなんだけど、これが痛快。シンセや金管も交えてフリークアウト度は更にアップです。昔ながらのアイコンタクト系無拍子キメも全然健在、サティ風インストまで入って何考えてんだか。TROUBLEMANやGSLの連中も結局はこういうのを金字塔として愛ある模倣を試みてるだけであった訳ですな。これ一枚で相当数の変態系新人は要らない。ロックにおいてニューウェイブとそれまでの時代との境界がイデオロジックな音楽/ポストモダンな非音楽(からの音楽)であるならば、真っ更に新しい音楽が降って沸かない限りこの盤はいつまでも最先鋭たり続けるはず。

  10月16−17日
▼16日は収穫なし本日17日の収穫は大量。今池P-CANでCONCEPTION「FLOW」(4th)、NIGHT RANGER「MIDNIGHT MADNESS」、MATCHING MOLE「MATCHING MOLE」、CHRISTIAN VANDER「OFFERING I et II」、INDIAN SUMMER「INDIAN SUMMER」、MOVING GELATINE PLATES「THE WORLD OF GENIUS HANS」、THE AMERICAN AMBOY DUKES「JOURNEY TO THE CENTER OF THE MIND」。大収穫に小後悔していたら自宅にはアマゾンからの荷物が…CAPTAIN BEEFHEART「BLUEJEANS & MOONBEAMS」「DOCAT AT THE RADAR STATION」、THE BABYS「ON THE EDGE」、Q AND NOT U「POWER」、GANG OF FOUR「A BRIEF HISTORY OF THE TWENTIETH CENTURY」("To Hell With Poverty"収録のベスト盤)、COPELAND「KNOW NOTHING STAYS THE SAME」("Another Day In Paradise"、"Take My Breath Away"他収録のカヴァー企画EP)。あおなみ線には乗りましたか?金城埠頭は排煙くさいです。

▼昨日サボった&思わぬ大量収穫につき今日も小レビュー祭りで。↓

【本日のレビューその1:Q AND NOT U「POWER」】


まだ買ってない、というか買うのを躊躇してる人も多いであろう注目の3rdです。去年のシングルで結局GANG OF FOURになりたいの?ってな方向に進んでくれた彼ら、あれはやはり来たるフルアルバムへの順当な布石でありました。演奏はよりディスコに、ヴォーカルラインはよりメロディ重視に。君達が頼みの綱だから方向性変えるならコマーシャルな方向にねとDISCHORDに念を押された訳でもあるまいに、自ら巻き起こしたダンスパンクブームと心中せんとするような真似を何故。全曲そうとは言わずともとにかくアタマ1・2発目がですよ。混沌としたエモい衝動とそこはかとないニューウェイブ感が奇跡的に折衷していた1st、そこからダンサブル化を図りながらもトリオのキャパ限界ギリギリでしのぎを削る緊張感が強烈だった2ndに比べて、そこまでで確立したスカスカ&リズミックなアプローチを今回も当然のように基点としてしまっている分チャレンジ性は薄いと言わざるを得ない。若干レイドバック&和気藹々方向に行ってみたのが今作の新機軸でしょうか。予測の範囲内だったことに由来するパンチ不足で不満を垂れてるだけかも知れないので後々「イヤやっぱりあれはディープな名作だった」とか言い出すかも知れませんが、そう単純に、ウソー何これっていう勢いに欠ける気がします、しませんか?

【本日のレビューその2:CONCEPTION「FLOW」】


速弾きフラメンコが舞う新世代エキゾ・メタルとして華々しく登場したCONCEPTIONのラスト作97年4th。何故か評判の悪かった前作「IN YOUR MULTITUDE」は当時流行りのプログレメタルに接近しつつもデビュー以来の個性をきちんと拠り所にした超名盤でありました。そこからガッサリとシンプル化(オルタナ化という言われ方もした)を敢行したこのアルバム、重い深いが良しとされた90年代において正統派メタル側が出来る最大限の譲歩が上手くなされた力作でしょう。スローダウンしてALICE IN CHAINS、PANTERA、「AWAKE」期DREAM THEATERなどなどを表皮に吸着しつつも身売り感というほどのものはなく、聴き手の耳に真っ先に届くのはロイ・S・カーン(現KAMELOT)の腰砕け艶やかヴォイスであると。ヌルンとしたこの感触はメタルバンドとしては唯一無二のものだったのに、これで解散とは今更ながら惜しいですね。すっかり存在さえ忘れてたけどこんなに良いバンドだったとは。KAMELOTはいいとしてコッチが再評価されて欲しいですなあ。

【只今のBGM:MOVING GELATINE PLATES「THE WORLD OF GENIUS HANS」】


このジャケにグジグジのフォントでこのバンド名、リリース元はMUSEA、ときて試聴してしまった1枚。レコメン/カンタ臭の強い素っ頓狂系フリークアウトジャズロックをやってますがフランスのバンドでしかも71年作です。2作目だとか。何なんでしょうこれは、ビーフハートを曲解したSOFT MACHINE?奇声とか不穏な激キメ満載で楽しい。相当クルクル素早く展開してかなり頭狂ってます。巧いし…。ETRON FOU LELOUBLANの直系の祖先ですな。パンク以降の解体感がないだけで、人を食う勢いは充分パンキッシュ。こんなに強力なのに全然名前聞かないのは変!この時代にこれなら何々フォロワーとして一蹴されることもなかろうに。「TROUT MASK REPLICA」に似過ぎのジャケが多分ニセっぽくて良くなかったんでしょう。変態プログレを追っかけてる人には絶対お薦めです。

  10月15日
収穫はなし。今や保育園児から大正生まれまですっかり定着した感のある「暴君ハバネロ」、あれってあの辛さにやられてそのこと以外深く考えないですけど、何か変に郷愁を誘われるところがあったことはないですか?そうその正体は、薄塩テイストのシンプル極まりないオールドスクールおやつの定番、同じ東ハト製の「なげわ」なのですね!!「暴君ハバネロ」はすなわち「なげわ」にハバネロを塗りたくっただけの製品なのです!確かにあの薄さと環状オビ・シェイプは、表面積を稼いで一口の殺傷力を高めるには最適。「なげわ」のラインを流用して何か出来ないかと考えたのが先か、ハバネロをどうにかしようと思ったのが先か判りませんが、偉い発明です。

【只今のBGM:LOIS「SNAPSHOT RADIO」】


Kの女性SSWの5曲入りEP。1曲ごとにバラバラの面子でやってるんですがそれが全部凄い。FUGAZIのブレンダン・キャンティ、DUB NARCOTIC SOUND SYSTEM他K界隈で大活躍のヘザー・ダン、CALIFONE全員(incl.ブライアン・デック!)、現THE ETERNALSのデイモン・ロックス、YO LA TENGOのジェイムズ、エンジニアはキャルヴィン大将にスティーヴ・フィスク(ex.PELL MELL他)、MODEST MOUSEなどを録っていたスティーヴ・ウォルド。内容は何とも曖昧なK流セミ・フォーク/セミ・パンクとでも呼ぶべきものをやっています。ヴォーカルスタイルは今月5日のこの欄でも取り上げたIDAのカーラ嬢をもう少し柔らかくした感じ。朴訥としつつもなかなか懐の深い歌心をお持ちです。バック演奏の方はというと、一見ローファイっぽいパーツ各種が実は相当繊細に組み合っており、ひとつの方向性のもと過不足なく美しく収まっている感じです。ゲストが多彩なせいかアレンジもカラフル。メインストリームで売れる形に整理されているわけではないけどあらゆる頑張りとセンスが胸を打つという、ある意味K流の本筋をいく作品だと思います。今のところLOISのCDはひとつも外してないなあ。

  10月14日
収穫はなし。「渡る世間は鬼ばかり」ってダメな役者はもろダイコンに映る一方、上手(うわて)な人はどうにかして自分なりに橋田臭を消そうと頑張ってて泣けますね。たまに見ると登場人物が入れ替わり立ち代わり横暴になったり諌め役になったり無茶苦茶で凄いなあ。

【只今のBGM:THE BABYS「THE BABYS / BROKEN HEART」】


BAD ENGLISHのジョン・ウェイト(Vo.)とジョナサン・ケイン(Key.)がいたバンドの1st&2ndカップリング。この頃はまだジョナサン・ケインはいません。加入後の作品、特に4thは会心の胸キュンメロハーのマスターピースだったものです。コッチは時代的にも76〜77年ということでそんなものはまだ大成されておらず、他の産業ロックの名バンド達のこの頃の音楽性とそんなに変わらない、微妙にブルージーさやハードロックらしい無骨さを残したことをやっています。ドラムが売れ線ポップスとしてはやり過ぎな小技を効かせまくってるのがいかにも昔で微笑ましい。1stはジョン・ウェイトがまだ微妙にヘタというか奔放な歌いっぷりをしてて、もともとハスキーな声質と楽曲のロッキン具合と相俟ってARMORED SAINTの面影がチラつくのは私だけでしょうか。2ndになると若干スマートにまとまってアリーナロック街道を一歩進んだのが判ります。BAD COMPANYそのままやんって曲もあるけど、ソフトな歌い方からして影響受けてそう。ジョナサン・ケイン加入以降の作品に比べてインパクトは少ないもののこの手の音楽の原点の一角として記憶され続けてもいい作品なのではと。

  10月13日
収穫はなし。(昨日からの続き)そのアマゾンから「注文の品は入手出来ませんでしたゴメンナサイ」のメールが来ると、今回は節約しろということだよと神に告げられたようで心なしかホッとするのは私だけでしょうか。滅多にないこのメール、物凄く申し訳なさそうな上、切り出され方が何かとてもドキドキするので、受け取ってもホントにあんまり悪い気しません。ここに転載してしまいましょう。

Amazon.co.jpをご利用いただき、ありがとうございます。
誠に申し訳ございませんが、大変残念なご報告があります。お客様のご注文内容のうち、以下の商品については入手できないことが判明いたしました。
Cheer-Accident (アーティスト) "Not a Food [FROM US] [IMPORT]"
お客様にこの商品をお届けできる見込みでしたが、現時点ではどの仕入先からも入手できないことが判明いたしました。お客様のご期待に背くお知らせとなりますと共に、お客様にご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。
私どもでは、ごく最近までこの商品を入手可能なものと見込んでおりました。この結果がわかるまでに長い時間がかかったことについても、心よりお詫びいたします。
(後略)

 最近人の言葉に心打たれてないなという人はアマゾンできわどい輸入盤注文するといいです。

【只今のBGM:DUB NARCOTIC SOUND SYSTEM「INTRODUCTION DEGENERATE」】


言わずと知れたKのオーナー、キャルヴィン・ジョンソン率いるバンドの今年1月に出ていた最新作。ポストパンク/ニューウェイブファンクを消化したローファイスカスカグルーヴに乗せて例のバリトン地底人ヴォイスを好き放題撒き散らしまくるという、フェティッシュなまでにディ〜プな音楽ではや10年、いつの間にか時代が彼らに追いついてたということで、昔からさしたる変化はないはずなのに正に今ストライクな内容になってます。飛び道具なあの地底声が、唄というイデオロギー(?)に縛られずにパタパタッと置かれていく様には無心で微笑めます。「とても異様な唄」として成立していたBEAT HAPPENINGよりとっかかりの段階では聴きやすいかも。そんでまたこの三人、ノリノリビートの引き出しの膨大なこと。更に演奏の基礎体力も高く、すわJBバンドかと目を見張る瞬間も多々。最新作だからなのか音響遊びも充実してて、ローファイだインディーだと言わずとも普通に「芸術性の高いグッド・ミュージック」として色んな高尚なものと並び評してもいい気さえします。PARLIAMENTの物真似で「ダンサブル!変態!」ともてはやされるような若手新人より前に、と思います。

  10月12日
収穫はなし。あの人何て名前だったか、と数分間頭を抱えたのちピカーンと正解が出てくる瞬間は、発送予定期間を過ぎてもまだ「未発送」になり続けていたアマゾンの荷物が「まもなく発送されます」に変わってるのを目撃した瞬間くらい気持ちがいいと思います。今日は「中尾彬」を思い出せたから良かった。

【只今のBGM:CAPTAIN BEYOND「CAPTAIN BEYOND」】


もういつ買ったのか忘れたくらい前に買ったのを最近部屋の平積みの中に発見して、そういえばこれちゃんと通して聴いたことないんじゃないか?と思って聴いてみたらホントに全く内容に覚えがなくて衝撃でした。元DEEP PURPLEのロッド・エヴァンスが在籍することで割と有名なバンドの1st。若干無骨なまでの豪腕ブリティッシュハードロックをベースに、何故かトリッキーな奇数拍子を積極的に取り入れた、70年代前半アートロック外郭ムードバリバリの気合充分押せ押せ盤です。ロッド・エヴァンスのヴォーカルはポール・ディアノの原型のようでもあり力んだときのフィル・ライノットに心なしか近くもあり、初期ハードロックらしい情緒に溢れたスタイルでなかなか良い。この時代のドラマーって変にジャズロックな薫りをたしなんだような手数プレイをこなす人が多い気がしてるんですが、ここのボビー・コールドウェル氏(AORの人とは同名異人!)も基本はパワードラムながら余裕ある芸の細かさを随所で披露。ネットリ翳るブリティッシュテイスト満載の弦楽器隊とは拮抗するように共存して、あわやMASTODONかFARAQUETかという場面も。かなり変拍子然とした人為感ある変拍子なのでマスロックを歴史考証的に全範囲フォローしたい向きには必須でしょうし、普通に「PERMANENT WAVES」より前までの重厚長大RUSHを愛してる人なんかにはたまらんと思います。ブリティッシュロック史全体で見ても恐らくちょっとした異端なんじゃないでしょうか。当時の偉大なバンドはだいたい全員異端ですが…。

  10月11日
収穫はなし。飲食店の有線で、流行りものの邦楽に混じって話題の現役漁師バンド・漁港の曲と思われるものを耳に致しましたがあれ良かったなあ。名古屋港にも出現して下さい。

【只今のBGM:IDAHO「THIS WAY OUT」】


しんみりアコースティックSSW続きで…と思ったら94年のこのアルバム、結構しっかりバンドっぽい内容でした。RED HOUSE PAINTERSの低空飛行感とAMERICAN MUSIC CLUBのメジャーロック紙一重っぷりを併せ持つ、部分的にはスローコアどころかフォーキーと言うにもあやしいくらい突き抜けた出来です。3rd以降のPAVEMENTが本気の切々系直球歌モノだったらこんなんか?という感もあり。これが後でどんどん深みに沈んでいくわけですね。活動が長い割にスローコアオリジンとして取り立てて語られる機会は少ないようですが、USインディの最もピュアな部分に触れる心地のする秀逸な作品だと思います。それにしてもワン・ワード言い切り系の最高峰たるこのバンド名は凄いなあ。普通にLAの人達ですから。

  10月10日
本日の収穫アマゾンから届いたTHE SONORA PINE「THE SONORA PINE」、GEOFF FARINA「USONIAN DREAM SEQUENCE」。2004年度上半期総括できました。アゴの先の方のヒゲが、9割くらいの確率で茶色いのが生えてることに今日気付いたんですけど、これ何かの病気ですか?モミアゲの延長あたりとか下アゴからノドに折り返すあたりは普通に黒いんです。アタマの白髪は昔から多い体質です。お客様の中にお医者様は…!

【只今のBGM:GEOFF FARINA「USONIAN DREAM SEQUENCE」】


来日前盛り上がっていきましょうということで。98年リリースのソロ1作目。3rd「REVERSE ECLIPSE」はジャジーにキメておりましたがこのアルバムはそこまでいかず、アコギで普通にじゃらんと弾き語るTHE SECRET STARS路線の曲が多い。一応若干しおれ気味にはなってますけども。例の引っ掛かり気味のソロが披露されることもなく、トーンは終始均一なので、「キャラクターのあるいい声の人がひたすら弾き語るアルバム」以外の何者でもないという感想にしかなりませんなあ。これでも生演奏で聴けば張り詰めた空気になって絶品なんだろうと予測は出来るけど、外の雑音が聞こえながら自室のステレオでへらへら聴いてちゃスルッと流してしまってイカン。ちょっと眠いときにヘッドフォンで無心に聴けば「うおー名盤!」と俄然いきり立ちそう。ひとまずKARATEファンならば持ってて損するこたありません。

  10月9日
▼名古屋は大した事なかったですけど各地で台風ヤバかったようですね。行くはずのライヴに行けなかった/中止になった、みたいな惨劇は無かったでしょうか皆様。そんな夜にはTAI PHONGHURRICANEでもどうぞ…。収穫はなし

【只今のBGM:J.J. JOHNSON「J.J.'S BROADWAY」】


63年VERVE。ブロードウェイミュージカルの曲を有名無名織り交ぜてのアルバムだそうで。ヴィブラフォン界におけるミルトの如く、トロンボーンといえばこの人として有名なお方です。この作品では何と自分含めファイブ・トロンボーン・アンサンブルに挑戦していまして、そのアレンジも彼自身。ホーン(ボーン?)隊なしのセッションではハンク・ジョーンズのピアノが入ります。各曲ともそれぞれのムード作り/解釈に労力を注いだのが判る仕上がりで、派手なアドリブ回しも殆どなく(御大本人のソロは勿論たんまりあります)、曲自体とアンサンブルをもっぱら堪能するような内容。ブロードウェイマニアだったらこの曲やった!?この曲こうなった!?と楽しいことしきりでしょう。やんわりジェントルでピースフルなトロンボーンの音色に溺れるまで浸れる優秀な一枚です。低域で弱音を出すときの立ち上がりが若干かすれ気味になったりするのがセクスィ〜ですよね。

  10月8日
収穫はなし。今池得三でDEERHOOF&54-71見てきました。どっちも過去に複数回ライヴを見たことのあるバンドだったので、期待を満たすために行ったという感じでしたが、結果はバッチリ。DEERHOOFは予習の甲斐あって"Koneko"ほか数曲、音源化されてないもの以外は全部判って、細かい編曲違いやメドレー化の妙に唸らされることしきり。前から思ってたんですが彼らはアメリカのアニメ映画の音楽とかそういうものにも多分に影響されてる気がします。プログレのように壮麗だったり「トムとジェリー」のようにコミカルだったり、二本のギターが組み合っての複雑な和声構築はムチャ頭イイし、ホント奥が深いバンドですわ。グレッグ君のドラムセットは今回ハイハットが足されて計4点になっておりました。裸足+ビールケースは相変わらず。ギタリストが脱退してインスト化した54-71はこれまた超強力だった!ヴォーカル氏のシンセへのスイッチによる人声大幅カットでますます近寄り難さが増すかと思いきや、敢えて単調にしていたかにも思える以前のラップヴォーカルより予測不能性がプラスされていて聴く側も集中力が持続できたし、何よりヴォーカル氏が実は普通に鍵盤弾ける人でやることなすこと至極的確だったのが良かった。もはやこの人らの音楽性を「ちょい和テイストありのストイック人力スキマアブストラクト」とかでは表現しきれません。幻想的とさえ言える場面もあったしMEDESKI, MARTIN & WOODに喧嘩売れそうな瞬間もありました。

 それではまたお土産写真をどうぞ。

↑アンコールでギターとベースを持ち替えたDEERHOOF

↑どう撮っても頭が写らない人

↑踊る人

↑3人版54-71はこんな形

↑アンコールで"エリーゼのために"をマジ熱演!
 いやあ今回もいいもの見てきましたありがとう。54-71は11月のBATTLESでまた見ることになるわけですが全然楽しみ。

【只今のBGM:NERVOUS COP「NERVOUS COP」】


HELLAのザック・ヒルとDEERHOOFのグレッグ君の共演プロジェクトです。何やってるかというと珍妙なプロダクションが施された無制御ドラムソロ×2にエレクトロニクスが絡む妥協なきアヴァンインプロ。全編ノンビートだし調性など望むべくもありません。分けて聴けば判るはずなのにどこまでがどっちの音か判らないようなミックスになってて、ファン心理でパーツに萌えることも難しい。デレク・ベイリーのソロとか謎のTZADIKものと基本的には大差ございません。常軌を逸した動きをする男二人が延々爆演していることこそが最大の意義でしょう。生で見ればそりゃ当然凄まじいはず。HIM来日のときについてきたDJ ASTRALBLUTとかと共演してくれたら相当面白いと思うんだけどなー。とりあえずリリースは5 RUE CRISTINEだしバッタリ中古で見つけてしまった時には買えばいいでしょう。

  10月7日
収穫はなし。昨日のレビューで泣いてたばっかですがKARATE名古屋公演は結局あるようですね。K.D.JAPONと書いてケイディーハポンと読むこの会場、鶴舞の高架下(DAY TRIPの向かいの反対くらい)にある多分相当小さな店で、生バンドが演奏すると余裕で音漏れしてくるような所です。その近さでKARATEとは、新栄カノーヴァンでのジュリー・ドワロンに匹敵する垂涎ロケーションとなること必至でしょう!良心ある名古屋人は全員来て頂きたいですね、入りきらんけど。

【只今のBGM:CRIMSON GLORY「STRANGE AND BEAUTIFUL」】


超音波ハイトーンシンガー、ミッドナイト率いる80's米国様式美HM最後の牙城のなれの果て3rd。伝説的名盤「TRANSCENDENCE」で実った美学を全部ぽいぽい捨てて突然BADLANDSもどきになり世界中のピュアな様式美ファンのハートを八つ裂きにしたことで有名なアルバムです。ということで例によって初めからダメなのを期待して後追いで聴きますと、ジェフ・テイトに鋼鉄の背骨矯正ギブスを仕込んだような固いメタルヴォーカルしかしないミッドナイトが一生懸命ブルージーなラインを歌い上げようとする様が、クリス・スクワイアをMOTORHEADにブチ込んだようでひたすら面白い。ただでさえ私ミッドナイトは好きですからね、ハイトーンで歌ってる限り何やられてもOKです。それにしてもこの90年代初頭の、メタル畑からしか出て来ない偏ったへヴィ・ブルージー・アメリカンなテイストは大変興味深い!当時からガンズだってこんなことやってた訳じゃないし勿論70年代HRとも似てるようで別物。どこがどう売れるのか判らないくらいフックに乏しいのにCINDERELLAもSKID ROWもみんなこういう方向かじってたから不思議です。昭和64年鋳造の硬貨みたいなもんで、別に有り難くもないわとスルーしようと思えば出来るけどどうも見つけると気になってしまうという。私はもう探して見つけるくらいの域に来てしまいました。玄人好みのあり得なさを求める向きはお試しあれ。

  10月6日
▼既にバレバレのことと思いますが、日記を当日夜書き上げるまでの気力が足りずに翌朝アップし忘れを装って実は新しく書いて前の日の日付で更新することが頻繁にございます。昨日の分もそれで、今はまだ午前ですが、今日は朝一番でアマゾンからの荷物が届いたのでついでに今日の分も書いてしまいます。本日の収穫JOAN OF ARC「JOAN OF ARC, DICK CHENEY, MARK TWAIN...」(最新作!)、KARATE「POCKETS」、RACHEL'S「THE SEA AND THE BELLS」、BATTLES「B EP」。さっきササッと通して聴いたJOAN OF ARCが壮絶なことになってて腰抜けました。FRIEND/ENEMYの1曲目にビビッと来てた人はすぐさまショッピングカートに入れて注文を確定です!この際サムラやTHIS HEAT(2nd)、ランディ・ニューマン好きな人まで全員どうぞ。あと再三書いてますけどDEERHOOF名古屋公演(今池得三)もう明後日です、これも全員参加で。

【只今のBGM:KARATE「POCKETS」】


泣けることに来たる日本公演スケジュールに名古屋がないKARATEの泣ける最新作。1曲目はなんか前作アタマと一緒だけどジェフ氏のギターはやたら深みを増してるように思えます。体調不良→ダウンが彼に何かを与えたのでしょうか。以降はラテンかぶれの激泣きをフィーチャーしたメロウナンバーから小ノリ16分シャッフル、クリス・ブロカウのポストグランジギター炸裂のちょいエモナンバー、びっくり軽快8ビートまで、結成10年以上にしてKARATE流新機軸が一杯入った意欲作に仕上がってます、大変良い!前作の方向のままだとあわやレトロ職人に徹して終わるかってな感じもありましたが見事な前進です。ポストコアコミュニティあがりな堅さがうんと抜けて表現力を増し続ける演奏もスバラシイ。これはもう京都でもどこでも見に行こうじゃないの(泣)。録音は相変わらずアンディ・ホン氏で、前作より若干近接感のある音像にしてきました。もはやこの人の手腕も含めてKARATEサウンド完成な気がします。いい仕事。ライヴ諦める人もCDは買いですよ。

  10月5日
収穫はなし。秋雨前線が長尺変則激展開なのはやめて欲しい。

【只今のBGM:K.「NEW PROBLEMS」】


IDAのカーラ嬢によるプロジェクトの01年フル。乙女声のエリザベス・ミッチェルに比べるとかなり硬質なトーンの持ち主で、曲も一風変わった弱刺激性のものを書く人ですが、IDAのカラーは忘れて彼女メインで好き勝手やらせたのを聴くと、THE VAN PELTやOSWEGOあたりに通じるかなり微妙な歌心からジェン・ウッドすれすれのSSWタッチまで乗りこなす、やっぱり相当な才女だなあと認識新たにします。そういえばBEEKEEPERでもフロントに立ってかなりアーティスティックなことをやってたんでした。しかもこっちはBEEKEEPERよりも若干たおやか方面の魅力がクローズアップされてる感もあり、そういう良さが聴きたくて女性SSW買っとるんだわという向きにも納得いくでしょう。IDAの3人、タラ・ジェーン・オニール&シンシア・ネルソンのRETSINコンビなどゲスト陣も充実。完全裏IDAアルバムとしてファンは必携ってとこでしょうか。

  10月4日
収穫はなし。最近名古屋でも急に店舗を増やしている漫画喫茶マンボー、あれの店先で常時流れている、そのへんの少女を3人くらい呼んできてとりあえず歌わせたような店のテーマソングが、何だか面影ラッキーホールそっくりのアゲアゲ淫靡グルーヴっぷりでイイなあと、前を通る度に立ち止まって聴きたくなります。じゃがたらイズムが街角にはびこる時代が来たのか…

【只今のBGM:MODEST MOUSE「GOOD NEWS FOR PEOPLE WHO LOVE BAD NEWS」】


たまにはちょっと有名どころの新譜を。今年4月リリースなのでホヤホヤとまではいきませんけども。まだまだEPIC/SONYからのリリースです。いきなりホーン隊がブッ放すイントロ、続いていつもの酔いどれアイザック君節が出てきて、ああこのバンドはこのままいくんだなと若干諦めかけて3曲目、いきなり四つ打ち+カッティングの激垢抜け変態キャッチーチューン!が出てきてビックリです。日本でもこの手の国産屈折ギターバンドが高評価を得るようになってきた中、真打ちはやっぱりひと駅次まで行ってました。怠惰なダメ人間オーラはそのまま維持した上で無意味に奮い立ったような訳わからんやけっぱちハイテンションがもう痛快。かつて聞いたことのないようなアジテイト調スポークンワードスタイルとか、バンジョー+多管でディキシーランドジャズかと思う曲、氾濫するディスコパンクリヴァイヴァルを鼻で笑う超ファンクトラックなど、メジャーレーベルのくせに無茶苦茶やり尽くしてます。これは凄いな。相変わらず計16トラックとヴォリューム過多な作りですが各曲の向きがチグハグすぎて冗長さは余り感じません。末期FAITH NO MOREにも匹敵する誇大妄想ロック!上手くやりました。何枚も持っててもういいかと匙投げかけの人も買い。

  10月3日
▼未聴CDが積もり過ぎてるので今日はレビュー祭りといきましょう。

【本日のレビュー1:THE ETERNALS「RAWAR STYLE」】


今年の最近出たばっかの奴ですが早くも中古で救出です。DESOTOからAESTHETICSへ。レゲエ〜ダブ、R&Bくずれのスタイルをベースにしてはいるもののかなり闇鍋状態で、FIVE STYLE(ジョン・ヘーンドンがカブってますが)やKING KONGの最新作あたりに共鳴する、要するにシカゴ的ジャンクパーツミュージックに仕上がってます。いかにもポストロックな電子音/エディットは表向き控えめの肉体派。(注意して聴くと色々やっている。)んだばばべばって感じに黒人らしくまくし立てるヴォーカルも全編頑張ってて、リズムもしっかりしてるし腰抜けフェイクには別に聞こえない。インプロの要素は少ないのでどっちかというと「このトラックはこういう雰囲気でいきました」の羅列的な、そういう意味では電子工作展たるエレクトロニカみたいな感触のアルバム。THE SORTSらへんのジャムバンド寄りの人達とは趣きが違います。むさ苦しいのにいまひとつ特濃って感じがしないのはメンバーがリアル黒人100%じゃないからか。ライヴで見たら間違いなく激カッコイイでしょうけどね。それってHIMじゃん、そうか。

【本日のレビュー2:CAL TJADER「AMAZONAS」】


75年FANTASYリリース。ヴィブラフォン奏者カル・ジェイダー(ここではマリンバも演奏)がリーダーということになってますが多分これは小室哲哉プレゼンツ華原朋美みたいなもんで、ラテンの巨匠(らしい)アイアート・モレイラがプロデューサーとして表ジャケにまで名前載ってます。むしろ北米ジャズメンなんかカル氏一人だけであとはラテンな薫りの名前がずらずら並んでまして、エルメート・パスコアールとかエグベルト・ジスモンチとか私のような素人でも名前は耳にするような超有名人が平気で参加している、実はスゲー盤な気がします。んで内容の方、しりとりじゃないけどこっちこそ近頃のHIMの偉大なる原型。ビッグバンドまでいかない中編成バンドの手足をフル活用したモッサモサの密林アンサンブルでもって、若干淫靡なアフロラテンミュージックをスリリングなフュージョンテイストで体現する、めちゃくちゃ高いミュージシャンシップが圧巻な全8+1(追加ボーナス)曲です。プロデューサーありきで制作されているためか色彩豊かなインプロもトータルでの明確な統率のもと行われており、端から端までとにかく完成度が凄まじい。「BITCHES BREW」以降これくらいの時期までのジャズは何が埋もれてるか判ったもんじゃないですね。

【本日のレビュー3:EVOL「PRINCIPIO」】


MEGO買いの一枚。何故画像が小さいかというと8cmCDだからです。一応全18トラックとの表記。ビート構築までいかない周期的クリック、グリッチ&高音ビープだけが断続的に鳴る、MEGO印にも程がある人を食ったノイズ音響。ほぼ無音にしか聞こえない超低周波のみで3分とか、ホントに完全無音で2分みたいなトラックが途中に紛れ込んでるから垂れ流そうにも不安が絶えず気が抜けません。よっぽど素晴らしいリスニング環境でなければヘッドフォンは必須。音楽というより実質的には脳のマッサージですね。首の後ろがチリチリくる高周波にビドビドビドと攻められたり、攻撃的ステレオで左右の耳元をツキツキとなぶられるのがですね、気が付きゃ快感なわけです。デジタルでしかあり得ない表現形態の最終到達点延長に挑んだ前衛芸術としての存在意義も勿論あり。色んな意味で刺激的。

▼ここまで書いたところで外出しました。今は帰ってきました。本日の収穫、リヴェンジの大須店で先日買い残したGCTTCATT「AMPERASE」(MEGO)、ついでに立ち寄ったアンサーで奇跡的にREGULATORWATTS「THE MERCURY」(SLOWDIME、ex.HOOVER!!新品にて)、そして市内で唯一行ってなかった四ツ谷店でTHE SPENCER DAVIS GROUP「KEEP ON RUNNING」("I'm A Man"も"Gimme Some Lovin'"も収録の40周年記念ベスト)、PETER TOSH「WANTED DREAD & ALIVE」(81年)、PLAID「REST PROOF CLOCKWORK」。では続きといきましょう。「只今のBGM」は今日はなしです。

【本日のレビュー4:REGULATORWATTS「THE MERCURY」】


バックカタログがすぐ入手困難になるSLOWDIME(実際廃盤になってしまうかどうかは知りませんがアマゾンではちっとも買えません)のバリバリ旧譜。これがアンサー店内の足元の、何の山でもない山の一番上にポンと置いてあったからビックリ感動です。内容はもう当然最っ高!名実ともにHOOVER直系の変則屈折ダークポストコアの最高峰。静的なアプローチに寄り気味だった2ndに比べて直球アグレッシヴで、かつニューウェーブ/ダブを昇華したリズムおよび音響面の拘りが隠し味で冴えまくり。天才的としか言いようがないなあ。アルバム後半にいくとABILENEそのまんまの曲もいくつか出てきてこれまたカッコイイ。95〜97年の録音だけどジェフ・ターナー、ジュアン・カレーラなどお抱え仕事人達の世話になっててプロダクションは文句なし。DCフリークは黙って買いです。KEROSENE454とかよりもっと大枠扱いでもいいくらいなのにあまり語られてないのは惜しい!もっとこの世に流通させて下さいSLOWDIMEのCDを。

【本日のレビュー5:EVILDEAD「THE UNDERWORLD」】


ちょっと1から4がオサレな方面に偏り過ぎてたんでここでちょっとバラつき調整を。AGENT STEELの元ギタリストがいるEVILDEADの91年2ndです。やっぱり90年代をまたぐと音作りにしろリズム展開にしろ一気に締まりますね。音楽的には特に珍しいところのない、OVERKILL〜FORBIDDENの系譜のテクニカル神経質リフなUSアングラスラッシュそのもの。開放的なクランチが気持ちいいはずなのに肝心のギターサウンドがデスメタリックなグジグジ重鈍系で、いまひとつ爽やかに汗かけないのが難といえば難だし、他にはないスラッシュ末期らしさであるとして萌えることも可能。リズム展開も細かく全体的に統率が行き届いて、なりふり構わず疾走する80'sスラッシュの魅力とはちょっと遠いところにある作品かも知れません。充分高性能スポーティだし、METALLICAが既に黒いの出した後の作品だということを考えるとオールドスクールっぷりに泣けもするわけですが。M.O.D.を腹八分目半にしたような満足度。

  10月2日
▼さて一日遅れでバーゲン本番、本日の収穫まずは本店からSTEVE REICH「DRUMMING」(87年)、BAD BRAINS「BAD BRAINS」、SMOG「COLD BLOODED OLD TIMES」、ジャズ・シンでJ.J. JOHNSON「J.J.'S BROADWAY」、FREDDIE HUBBARD「HUB CAP」、WAYNE SHORTER「THE ALL SEEING EYE」、ULRIK/SCOFIELD/DANIELSSON/ERSKINE「SHORTCUTS」、栄店でONEIDA「ENEMY HOGS」(JAGJAGUWAR)、EVOL「PRINCIPIO」(MEGO)、そこからJRに揺られまして久々の岐阜店!にてJEREMY ENIGK「RETURN OF THE FROG QUEEN」(ex.SDRE〜現THE FIRE THEFT!SUBPOPからの96年ソロ)、IDAHO「THIS WAY OUT」(94年)、MODEST MOUSE「GOOD NEWS FOR PEOPLE WHO LOVE BAD NEWS」(最新作!)、DUB NARCOTIC SOUND SYSTEM「INTRODUCTION DEGENERATE」、ついでに岐阜といえばの隠れ名店ざうるすにてSTRYPER「AGAINST THE LAW」(ラスト作)、CRIMSON GLORY「STRANGE AND BEAUTIFUL」(幻の問題作3rd)。実り多き一日で何よりです。

【只今のBGM:DYNAREC「USER INPUT」】


オランダはアムステルダムのDELSINから。今年3月のリリースです。クールなデトロイティッシュ・テックハウスでほぼレーベルカラーを統一してたところに一石を投じてみたらしく、この人は初期シンセ風のチープ・エレクトロニクスを全編に散りばめた、言うなればファミコン・ディスコ・ハウス?みたいなのをやってます。突き詰めたミニマル感は薄く、オールドスクールなフレンドリネスで一杯。KRAFTWERK「EXPO2000」のリミックスの方に入ってたやつをオモシロ貧弱にしたような感じでしょうか。90年代前半のフツーのテクノの余りに直球な赤面カタルシスとは紙一枚隔てて視座の異なる対象化済みダサ・ノリノリ系のしかも割と上品な部類です。トランス風の下世話邪悪グルーヴも上手く消化吸収されている。ちょっと歴史考証的テクノマニアの方を向き過ぎの感がなくもないですが、やってること自体は小難しくも何ともないのであからさまな敷居の高さは別に感じません。DELSINファンは安心して買えます。

  10月1日
▼気がつきゃDEERHOOF名古屋公演が一週間後な今日この頃、ローソンでチケット買ったんですがコレ大丈夫かみたいなぺらぺらしたフツーの紙で渡されて不安です。本日の収穫は今日からバナナ全店バーゲンってことでまずは序盤戦、パルコ店にてTHE ALLMAN BROTHERS BAND「THE ALLMAN BROTHERS BAND」「BEGINNINGS」(リマスター)、KILLDOZER「UNCOMPROMISING WAR ON ART UNDER THE DICTATORSHIP OF THE PROLETARIAT」、I AM SPOONBENDER「SENDER/RECIEVER」、大須店でAGORAPHOBIC NOSEBLEEDCONVERGEのスプリット、名駅店でCAL TJADER「AMAZONAS」(75年、アイアート・モレイラプロデュース、エルメート・パスコアール、エグベルト・ジスモンチ他参加)。明日も廻ります。

【只今のBGM:KILLDOZER「UNCOMPROMISING WAR ON ART UNDER THE DICTATORSHIP OF THE PROLETARIAT」】


往年のTOUCH&GOを背負って立っていた、のかどうか知りませんがとにかくTOUCH&GO印のへヴィジャンクバンドの94年作。86年の「BURL」というEPも丸々カップリングで収められているようです。SCRATCH ACIDやLAUGHING HYENASラインのジャンクギターサウンドにかなりLUNGFISH似のもったりブルージー酩酊感を大量投下した、やさぐれオヤジが寝転がって何もせず独りで世界にイライラしてるのを音にしたような、それはそれは荒んだ音楽でございます。ベースヴォーカル氏は基本的に見えない誰かと喧嘩してる酔っ払い系のダミ声で唸ってるんですが、時々キャルヴィン・ジョンソンが降臨して脱力バリトンで嬉しそうに歌ったり、トム・G・ウォリアーになって「ウッ」を連発したりもするひょうきん派。プロダクションに関しては、まだウソリヴァーブを平気で使う90年代前半サウンドの流れではあるものの、歪んだベースの凶暴性と鈍く錆びた重量グルーヴをカッコ良く前に出したバランスで、ギターもRAPEMANみたいな変な音じゃないし、トータルでは全然好感。いやーカッコイイなあ、TOUCH&GOファンにはたまりません。ジャケもめちゃ冴えてます。既に解散済みですがライヴ見てみたかった。こういう新人どっかから出てきませんかね。

最新に戻る 他の月の分を見る
 
トップページ サイト入り口へ
情報と音源公開 制作活動
管理人のことなども このサイトに関して
リンク 冒険
いつも独り言 掲示板(hosted by Rocket BBS)
サイト内検索(google) 不完全
since 07/04/2002    copyright (c) Sugiyama
inserted by FC2 system