物色日記−2005年2月

※頻出語句解説はこちら
  2月28日
収穫はなし。花粉マストダイ、ゼイガッデムバスタード。極寒→花粉→酷暑→蚊、名古屋の一年に安息はなし。

【只今のBGM:TANKARD「ZOMBIE ATTACK」】


多分半年かヘタすりゃ一年くらい前に買ったものっぽいです。最近売りCD裁判しようと部屋の平積みの山をチェックした際に、聴いた記憶のないブツが下の方から…。さてこれはジャーマンスラッシュきっての爆走ビール野郎バンドTANKARDの86年1st。ガシャガシャと荒いロッキンリフにヤケクソ気味の吐き捨て高音ヴォーカルをのせてスパスパスパとブッ飛ばす最高に痛快な連中でして、名盤「MORNING AFTER」より前とあってか更にリフの非スラッシュ度が高く、SODOMが時々やるMOTORHEAD風の曲ばっかり集めたような底ヌケノリノリ・アルバムとなっております。これはたまらん。コントロールの利かない乱雑なスピード感と焦燥感を煽るツッコミシャウトがホント魅力的です。"Baka"で有名なASSASSINほど狂気じみてはいないものの、やんやと大騒ぎでとにかく陽気なのがいい。突き抜けたバカ金太郎アメ感はAC/DCにも通じます。マイナースラッシュに触れたことのない方は、いきなりLIVING DEATHやら初期DARK ANGELやら買って「うわぁ〜何だかなあー」と尻込みしてしまう前にコッチから通ってくのを断然オススメ。

  2月27日
収穫はなし。壊れたメガネの代わりを物色しに今日は出掛けました。接客にあたった店員、頑張ってるのは判るんだが…「そちらのタイプですとラインが細くなりますので、スッキリした印象になりますね〜。こういった明るい茶色(のフレーム)なんかどうでしょう」って、CD屋の店頭でMAYHEMのライヴ盤ULVERの1stを手に取ってどっち買うか悩んでんのに「そちらブラックメタルですのでブラストビートっていうのが入ってます、同じ速くて叫んでるのでしたらSPAZZなんか凄くオススメですけど」と説明してくる店員はいなかろうに、メガネ屋も服屋にしても何故彼らは客が気にしてるパラメータとはかけ離れた補足トリビアを速射して冷静な吟味熟考を妨げるのか、その喋りで客の需要とミスマッチになる品物を買わせる運びになったとしてそれは誠意のある商売とは言えんだろうと、こういう所に行く度に煩わしく思うのは私だけではないはず!宿で室外のドアノブに掛けておく「起こさないで下さい」って札みたいに「接客不要」を示す何かのグッズを入り口に置いといてくれるようになりませんかねえ、世の中。

【只今のBGM:JACK DEJOHNETTE「SORCERY」】


80年代のマイケル・ジャクソンかと思うような微妙なジャケの74年PRESTIGE盤。参加メンツはデイヴ・ホランドやジョン・アバークロンビー他。14分に渡る冒頭のタイトルトラックは「IN A SILENT WAY」でのマイルス、あるいは「ISLANDS」以降のクリムゾン("Starless"間奏部とか)を思わせる、ほぼワンコードでじわじわ盛り上がるダークなインプロ。これに納得してると、続く2曲目がランダムな喋りを重ねまくっただけのレコメン的悪ふざけで、更に3曲目が無駄に軽快なロック風8ビート(デタラメなソロを沢山かぶせてしかもタイトルが"The Rock Thing")、うーん何だこれは。4曲目はまたも14分を超す大曲、SEをバックにノンビートでオルガンをふらふらつま弾くこのイントロでやっと「結局プログレの習作を作りたかったのか」という線で決着がつきます。ロック経由で出戻ったフリージャズみたいな真似をこの人がわざわざやんなくても…とちょっと切ない。時流的に目新しいものが入ってりゃとりあえずショックにはなるんだろうけど、プログレッシャーが聴いてさほど驚きを感じる内容とは言えません。ドラムテクもそんなに堪能できる曲がないし、この頃のこの人はこういう妄想を持ってたのか〜と想像させられるのみ。70年代ジャズはこうやってアイディア一発で賭けに出てるアルバム多いですね。

  2月26日
本日の収穫、今池P-CANにてDR. FEELGOOD「SNEAKIN' SUSPICION」、V.A.「ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK -THE CROW」(315円にて)。メガネは幸い切断面が広かったので瞬間接着剤で何とか復活してくれました。

【只今のBGM:V.A.「ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK -THE CROW」】


主演のブランドン・リー(ブルース・リーの息子)が撮影中に事故死か何かしたという94年の映画「THE CROW」のサントラ。あー懐かしい、暗澹としたオルタナだけがチャートを占領していた時代の空気がモアッと噴き戻るようです。THE CUREやTHE JESUS AND MARY CHAINあたりは例外としてSTONE TEMPLE PILOTS、NINE INCH NAILS、RAGE AGAINST THE MACHINE、ROLLINS BANDにPANTERAなど、当時のMTV「HEADBANGERS BALL」の常連だったバンド達の新録音源がズラズラと。今聴くとホントに暗くてヨドんでますね。絢爛豪華で全てがバリバリハキハキしていたメタル時代へのカウンターだったからしゃーないんですがそれにしてもことごとく暗くてしかも緩慢。そんな時代評はさておき、何で今頃わざわざこんな捨て値放出品を拾ったのかというと、ひとえにHELMETの提供曲の確認のためです。"Milktoast"と表記されたこの曲、アルバム「BETTY」に入っている"Milquetoast"とどう違うのか?というのが積年の疑問であったのです。さて答えは以下のように判明致しました。1.ミキシングが「BETTY」を担当したアンディ・ウォレスじゃなくてT-RAYなる人物(ゆえに音作りが大きく異なる)、2.バッキングギター2本がLR両端じゃなくて両方ともセンターに寄せられている、3.曲中にアルバムヴァージョンには入ってないSEが出てくる、4.エンディングがフェイドアウトじゃない(ノイズが入ったのち唐突にストップ)、の4点。音源自体はアルバムと同一のもののようです。このサントラ収録の方が荒削りというかゴソゴソと不明瞭でショボい感じ。ファンでも別にそう嬉しくはないテイクかと思いますが、他のバンドの未発表曲は多分それなりに貴重っぽいし、何よりポンペイ的記憶装置としての価値は確実にある物なので、500円以下で見つけたら回収してやって下さい。

  2月25日
収穫はなし。ここ数日、録り溜めたマテリアルのミキシングに熱中してて、早く作業を先に進めたく思うあまり朝7時40分(実際起きねばならないのは8時半くらい)に勝手に目が覚めたりする次第でございます。今もバウンス待ちの合間に書いてます。今や夜ですが、すげー小っちゃい音でモニターしてもウルサく演奏してるように聞こえるのが正解なので夜ミキシングも結構アリということに最近はなってます。そんなことよりメガネがフレームの真ん中から折れた。

【只今のBGM:BEN PEROWSKY「CAMP SONGS」】


ジョンスコその他の大物ジャズメンと仕事してるドラマーのTZADIKからのトリオアルバム。まっとうなコンボジャズです。ユダヤのキャンプソングを集めたものだそうで、ピアノはユリ・ケイン。クレツマーとかサッパリ判らんですが確かに日照の少なそうな(東欧ってそういうイメージなんですが違ったらすいません)うら哀しさを湛えている感じはする気がします。あやしいエスニズムを胡散臭くなく完成された音楽として聴かせるトータルアレンジは見事。ユニークなことをやっているということを忘れて普通にイイと思ってしまう。クラシックの枠組内で表現される地方性をのっけたポスト前衛ジャズという意味ではECMっぽくもあります。ドラムはさすがに思う存分変態ですね、周囲360度から音が飛んでくるような縦横無尽タコ手数プレイで、しかもアンサンブル全体を威圧しない収まりの良さ。しこたま饒舌ながら常に背景感を失わないピアノとうまく協調してゆるやかなツートップを張って、その後ろに曲の筋書きをガッシリ支えるベースがいるといった感じです。とりとめないようで遊びはなし。良い演奏と面白い主題の、結構パンチのある好盤だと思うんですがなー、何故か検索してもあんまり引っ掛からないです。敬遠されてるんでしょうか、TZADIKのCDってコワイからなあ外見が…。

  2月24日
本日の収穫アマゾンから届いたULVER「BERGTATT」。以前散々待った挙句「どの仕入れ先からも入手できないことが判明しました」という丁重なキャンセルメールが来て、それでも表示が在庫切れにならないからカートに入れっぱなしにしておいた品が数日前に見たら急に「通常24時間以内に発送/1点在庫あり。注文はお早めに」となっていて、これは私が頼んだ奴に違いないと確信して注文した次第です。ディストリビューションは基本的にノルウェーのVOICES OF WONDERがやってる品のようなのですが、届いたブツはアメリカのCARGO経由。八方手を尽くして頑張ってくれてたのねアマゾン…と思わず目頭を熱くしてしまった(当然嘘)から気にしないことにするけどレート変動で初回注文時(キャンセルになった方)より150円くらい値上がりしてるんですけど!

【只今のBGM:ULVER「BERGTATT」】


初期ノルウェーブラック最重要盤の1枚として名高い94年1st。まだDISSECTIONやAT THE GATESが日本でもギリギリ認知され始めたくらいのこの時期に、アトモスフェリックな多角化メロ・ブラを大成してしまっている驚きのアルバムです。CELTIC FROSTから受け継ぐブラックメタル然とした邪悪さの代わりに聖歌風の幽玄なメロディ感覚が主役を張ってて、アコギをバックにやんわりした普通声で歌うパートなんかも平気で登場。それできっちり狂気のブラスト&絶叫パートも挟むという、これはもう激しく倒錯した純芸術と言うべき内容ですね。正真正銘のオリジネイターとはいえブラックメタルの本流の範疇で語るには余りにも異端。この後アコースティック一辺倒の2nd、プリブラ一本勝負の3rdを経て、何やら映画のサントラじみた妖しいゴシック・エレクトロ方向へ行ったきり帰って来なくなるんですが、これを聴くと10余年後の現在と本質は何も変わらないなというのが判ります。むしろ確信犯で示唆してたのではないかと思うほどの揺るぎのなさ。音作りはわざと汚したようなグシャグシャローファイなのじゃなくて非常に整然としてまして、ただスネアその他は普通なのに何故かタム類だけに深く長いリヴァーブがかけられているのが不思議。そのへんの訳わからん狂気性も含めてとにかく神々しい存在感を放つ作品になってると思います。型だけ真似た後続はいるかも知れないけど、もっと芯の部分でこのバンドは絶対的に孤高。

  2月23日
▼厭世短文家風に収穫はなし。早寝しようと思う。

【只今のBGM:PRAYING MANTIS「TIME TELLS NO LIES」】


美旋律NWOBHMの金字塔!81年リリースの1stです。外盤はちっとも見かけないからブートしか存在しないとばかり思っていたところに、RIOTの「FIRE DOWN UNDER」も再発したHIGH VOLTAGE盤をめでたく発見。ティノ・トロイ直々のライナーつきでなかなか信用できるリイシューです。さてとりあえず有名な1曲目"Cheated"はTHIN LIZZYからの影響が色濃く窺えるポップで明るい曲。ツカミは強いが今言われるイメージと違いますな。続く2曲目が早速何てことない感じなのでオイ大丈夫かよと匙を投げかけるものの、3曲目以降でやっとこさ持ち前の叙情が炸裂致します。MSGっぽかったりグラムロック風だったり雰囲気の幅はありますが、総じて垢抜けていてツブが大きい。古い音楽の色んないい所を自然と踏まえて曲を作ってるがゆえの安心みたいなのは新人離れ(特にNWOBHMの括り内においては)してますね。泣きのツインリードは評判どおり随所で聴かれまして、フレージングのみならずトーンも含めて泥臭さが凄く薄いのが80年代メタルらしいところ。"Beads Of Ebony"なんて元ネタを晒せばIRON MAIDENの変形なんだろうけど、本家はこんなスムースな泣きは持ってないですからね。初期SCORPIONSあたりがイモ臭さの陰に隠し持っていた強烈な哀愁をちゃんと売れるフォーマット(当時)に載せ替えてあげたような感じでもあります。コマーシャルなアリーナロック方向とジメジメ哀愁メタル方向とが完全に分化しきらないような煮え切らなさがひとつの魅力にもなってて、1st〜2ndの頃のDEF LEPPARDとは正にパラレルな存在だったといえるでしょう。かたやバカ売れ、かたや10年間の潜伏と明暗は分かれた訳ですが。ともあれ洗練/産業化が進まんとする新時代のメタルが向かう道を図らずも提示することになった一枚として、重宝され続けて然るべき内容には違いありません。というか以後の直球美旋律メタルってここから半歩ほどの進歩しかない気もする…。ちなみにボーナスとしてシングルB面のみリリースの"Thirty Pieces Of Silver"とライヴテイク2曲収録。

  2月22日
本日の収穫、御器所ホーリーハウスにてPRAYING MANTIS「TIME TELLS NO LIES」、サウンドベイ上前津にてバーゲン品105円でUZEDA「THE PEEL SESSIONS」(94年BBC)。あっゾロ目だ。

【只今のBGM:UZEDA「THE PEEL SESSIONS」】


ヴォーカルのジョヴァンナ嬢をBELLINI(ドンキャバのドラマーの新バンド)に送り出したことで名を知られるイタリアのバンド。まさかのBBCライヴ音源です。マルチマイクで録られたものをちゃんとミックスしてる上オーディエンス側の音声はなく、7曲も入ってるしちょっと大味なスタジオ盤くらいのつもりで聴ける内容。まあこの盤自体をどうこう分析しても多分探して買う人はいないでしょうから、バンドの素性の紹介の方に焦点をあてていきます。AMGによると結成は87年と意外に古く、アルバム/EP併せて計5枚のリリースがあるようです(うちラスト2枚はTOUCH & GOリリース)。アルビニ師がエンジニアとして関わることも度々あった模様。内容的にはもう荒みに荒んだ女ヴォーカル版THE JESUS LIZARD!テクニカル指向を全面に出すほどでもないながら変則的なリズム展開を恐ろしくタイトにキメる優秀な人達です。リフやドラムパターンのフック具合も上々。遠くイタリアから大西洋を飛び越えてTOUCH & GOリリースにこぎつけたのも納得ですね。RAINER MARIAやIDAなど女性がシンガーを務めるバンドって一応時々いますが、このバンドの場合はおおよそ女らしさとは無縁のコワモテポストコア音楽を直球でやってるという意味で異色といえるでしょう。スラッシュメタル界でいうところのHOLY MOSES的存在として語り継がれていってもらいたいもんです。

  2月21日
収穫はなし。今朝から自転車の後輪ブレーキがじゃりじゃり鳴るので何だろう、砂でも入ったか、と思って見たらゴムが擦り減って中の金属が露出してて、それがリムを削る音だったことが判明してすぐさま替えのゴムを買いに走った訳ですが、髪の毛、ヒゲ、自転車のそういうパーツ、アクティヴピックアップが載ってるベースの電池等々、長期的に増量/消耗していくものをある時必要に迫られてどうにかしなければならなくなる状況あるいはそれが繰り返されることって、非っ常ーに面倒くせえことないですか。ヨシこれがベスト・コンディション!と思ったらそれで頭髪も止まってもらいたいのですよ。

【只今のBGM:TRIOSK MEETS JAN JELINEK「1+3+1」】


ドイツのクリックハウス〜エレクトロニカクリエイター、ヤン・イェリネック(a.k.a.GRAMM、FARBEN)と、オーストラリアのジャズトリオTRIOSKの共作盤とのこと。ヤン氏は他にも人力演奏アーティストとの共演があるようですが未チェックです。さて2003年~SCAPEリリースのこの盤、ビックリするくらい最高でございます。方法論的にはエディットされた生演奏に電子音が絡むかたちでSAVATH+SAVALASの1枚目に非常に近く、しかしもっとビンビン来るというか、親切設計で容易にエキサイト出来てしかも下品な押しの強さは皆無という理想的な仕上がり。全体的にツカミのいいメランコリックな空気が流れてまして、音を加工するアイディア/センスの冴えよりも先に美しいなと感じる内容です。ミニマルといえど基本はジャズ・マナーの活用でそこに電子楽器を導入した格好のTIED + TICKLED TRIOやFONTANELLE、人力演奏の意義が失せるくらいにイジリまくるMILS、どこか学者肌の高潔感漂うTORTOISEなど(って言うけど四者とも全然嫌いじゃないですが)とも違い、電子音響のテクノロジーでジャズがジャズとしてそのままパーツ化された情緒的な芸術作品といった具合。共作としての完成度が高い。何とかニカとかポス何とかとか全然わかんないけどキューピーマヨネーズのCMの音楽は大抵好きーという人でも大満足の傑作だと思います。

  2月20日
収穫はなし。ひねもすミキシングと宅録に励んだ次第でございます。突然ですが幻の瞬間消滅ローファイスカムプロジェクト・パンチングタバスコス名義でアルバムを制作中です。非常にスカムなのでそのうち掲示板かどこかでタダでバラ撒きたいと思ってます。コンデンサ一本でドラムも録ればいいじゃない。

【只今のBGM:CURLEW「NORTH AMERICA」】


85年リリース作。CUNEIFORMから出てる最近の作品は既に持ってまして、とにかくジョージ・カートライト氏が頑張るプロジェクトなんだなと思ってたんですが勉強不足でした。まあ彼が中心なのは変わりないんでしょうけどこの当時はフレッド・フリスにトム・コラなんつう豪華キャストがメンバーとしてクレジットされてます。内容は当然の如くMASSACRE以降のハードレコメン/NYアヴァンスタイルの王道的なもの。キメキメ半分、フリージャズ風瓦解半分といったバランスで、チェロ&サックスを巧みに暴走させてかなり緻密かつインテリなアンサンブルを展開させております。濃い目のリヴァーブに騙されそうになるけど意外とニューウェイブの影は薄く、総じてHENRY COW〜ART BEARSのハードサイドを更にオーバーにしたような趣き。もはやこの手の音は後続の連中によって大量生産され過ぎた感もありますが、やっぱりオリジナルに近いものはそれ相応の説得力があるもんです。チェロの低音が邪悪にシャッフルする"First Bite"など単体で印象に残る曲も多数。ジャケがやたらダサいのに差し替わってるのが残念というか解せない。

  2月19日
収穫はなし。夜、家に帰ってからの時間って、活動的になれないことが多いので、最近はちょっと早起きして朝にミキシングなどの作業をしております。これなかなか良い。それで早寝になったわけでもなく無駄に睡眠不足気味。てきぱき暮らせる人は尊敬しますなあ。

【只今のBGM:THIN LIZZY「VAGABONDS OF THE WESTERN WORLD」】


DECCAリリースの73年3rd。いきなりブルージーなスライドが出てきて面食らって、続くコード展開はやっぱりアイリッシュに和むTHIN LIZZY流そのもので「あ〜初期作だなあ」という趣きバッチリ。この頃はギタリストがエリック・ベルという男一人なんですな。別に彼が作曲に大きく関与してる訳でもなさそうなんですが、作風の幅はその後(「FIGHTING」以降)と大きく異なって、60年代っぽい哀愁サイケ感や思いがけないブルーズ/ソウルテイストが直球で顔を出してます。後々まで有名なのは"The Rocker"とボーナス収録の"Whisky In The Jar"くらいのもんですね。しかしファンとしてはそれ以外の忘れ去られていった意外な曲たちの方にもっぱら興味が向ところ。何をやろうと歌ってるのはフィル・ライノットなので。別段声が若いということもなく、解散まで連れ添うことになる世話女房ブライアン・ダウニーの細かくてビタッとキマるドラムも既に冴えてるし、確かにあのTHIN LIZZYだけどやってる曲は凄い違うなあ面白いなあという感慨が尽きんのであります。しかもその非ハードロッキンなモワモワ感、大胆極まりないミクスチャー感覚が普通に素晴らしかったりするからリスペクトひとしお。70年代の自由な気風をパックした記録盤としても存分に楽しめるでしょう。むしろ「BLACK ROSE」とか無理だわというハードロック敬遠者にはこのあたりの初期作をオススメ。数多くのミュージシャンに愛されるバンドですから、たしなんでおいて損はないと思います。

  2月18日
収穫はなし。昨日の日記は深夜に寝そうになりながら書いてたんですが、時間帯と整備不良という二重のフィルターを両方くぐり抜けていたことを途中からすっかり忘れてました。夜の無灯火は法規違反でした。「ライト、つけてたけど盗られたんですホラ」といってハンドルに残っているライト設置用のホルダを見せて納得させた訳ですが、ライトを盗られたのも本当の話なんですが、私の前の持ち主が2年以上前に盗られたものという事実は伏せておきました。

【只今のBGM:CRAW「BODIES FOR STRONTIUM 90」】


BOTCHやDISCORDANCE AXISを擁したボストンのHYDRAHEADからリリースの4人組1st。オビ(最近外盤でも時々ケース上部に横オビがついてますね)の解説によるとこの人達、知られざる10年選手らしく、THE JESUS LIZARDやDAZZLING KILLMENのファンにとオススメされてたので試聴して購入した品です。確かにそんな感じの内容でして、うねうね絡まりながらハイテンションに爆発する複雑系ジャンク〜カオティックHCをやってます。ヴォーカルは近頃多いキャアキャアわめくタイプじゃなくてNOMEANSNOやBARKMARKETやそれこそTHEJESUS LIZARDのようなスポークンワード風酔いどれアジテイト・スタイル。沸騰しそうでしないフツフツ感渦巻く楽曲と相俟って10年前のあの空気がそこはかとなく呼び戻されるような心地です。既に売れてる大御所と比較すると確かにツカミが不明瞭な感じもあるんですが、ライヴで見たりCD屋の店内で大音量で流れてたら「何誰これ最高〜」と喜んでしまいそうなクオリティとパワーは備えてます。特にこの手のジャンルを熱心に集めてる方なら、高性能化を競う百凡の若手よりも断然オススメ。

  2月17日
収穫はなし。また夜の無灯火走行で警察に呼び止められましたわ、円頓寺の交差点で。時間帯なんていう大雑把なフィルターで一般市民を絞り込んであとは見た目の雰囲気で適当にしょっぴくってのが気に食いませんね。ママチャリに乗った老女だったら悪いことしなそうだからスルーで20代男はとりあえず疑ってかかるのがこの世の法かアンタら、と一度詰め寄ってやろうと思ってるけどやれてません。

【只今のBGM:JOHN LURIE「AFRICAN SWIM AND MANNY & LO」】


THE LOUNGE LIZARDSのジョン・ルーリーの97年リリース作。二つの映画のスコアをCD1枚にまとめたもののようです。マーク・リボーやMEDESKI, MARTIN & WOODの面々もやっぱり参加、と書けば中身は半分くらい見当がつくわけですが、正にその想像を裏切らない内容。前半はバンジョーの転がるアメリカーナなトラックにジャムバンド風低重心ダウンビートインスト、パーカッションの嵐プラス人の掛け声などなど、アメリカンスタンダード式のぞき窓から切り取ったビート・オリエンテッドなエスニズム/田舎イズムといった趣き。後半はマリンバなどがフィーチャーされてかなりラテン寄りの哀愁ノリも加味されつつ、音数少なめのアレンジのせいもあってか多国籍度アップな出来。ともかく映画音楽とあって手短ながらも彫りの深い楽曲が並んでます。いずれも映像の一歩後ろに下がろうとするような余白確保の意識が感じられて、音楽だけ通して聴くとそれが決して薄さや物足りなさではなく逆に統一された空気感となって全体に快い緊張を作り出している気がします。それって音楽作品として世にリリースされるサントラの類の理想形ですわな。視覚よりもニオイや振動を想起させる。結構誰にでもオススメです。

  2月16日
▼隣国の中央テレビ局お抱えナレーターのフンフン気張る語り口がクラウス・ブラスキスに聞こえてならない今日この頃、本日の収穫は名駅69にてJUNIOR WELLS「HOODOO MAN BLUES」、あと昨日THIN LIZZY「VAGABONDS OF THE WESTERN WORLD」がアマゾンマーケットプレイスから届いてたのを書き忘れてました。

【只今のBGM:ARCHIE SHEPP「ATTICA BLUES」】


72年IMPULSE!。屈折展開の絶叫系フリーをやってる人という認識でしたけどこのアルバムは何か凄いですね、ポスト・スピリチュアル(あるいは「BITCHES BREW」)な大所帯アブストラクトサイケアンサンブルのダシでグツグツボコボコと不健康に煮崩れた歌ものファンク/ソウル/R&B!しかも曲間に喋りが入ってヒップホップかダブみたいだし、正しくブラックミュージックの闇鍋的な様相ですな。(ブラックミュージックがわかりませんが!)狂ったように引っ掻き続けるヴァイオリンにトレモロがかったチルアウトなエレピ、歌のバックだろうが構わずプカプカ吹っ放す各種金管、これらの膨大な音数の海の真ん中に何故かやたら朗々と上手いヴォーカルがいるというカオス。いや曲によってはただのバラードだし、何なんでしょうか、とにかく30年余のギャップをものともせず強烈に現役感を放つ音にゃ違いありません。72年にして完璧にこういう音楽を対象化しちゃってますね。ネタからネタへ案内するようなエディット感はもうテクノ/エレクトロニカそのもの、しかもパフォーマンス自体はことごとく直球でアツイという。これ1枚で巷のいわゆる名盤5枚分くらいの満腹感が本当に得られる、決定盤中の決定盤ということで異論はないでしょう。いかにもクラブ受けっぽい雰囲気って基本的に苦手だけどこれには参った。

  2月15日
本日の収穫、バナナ栄店にてBEN PEROWSKY「CAMP SONG」(ユリ・ケイン参加!2003年TZADIK)、ART ENSEMBLE OF CHICAGO「THE MEETING」(2003年!)、TRIOSK/ JAN JELINEK「1+3+1」(~SCAPE)、ARCHIE SHEPP「ATTICA BLUES」(72年IMPULSE!、リマスター)。東京フレンドパークは出演者が多過ぎると昨日書くのを忘れてました。関口宏と渡辺正行のどっちかでいいし、メダルを持って微笑むだけの女性はリストラ対象。平日夜にそんなん見てしまうのもコタツが悪いコタツが!夏はまだかね。

【只今のBGM:HOELDERLIN「CLOWNS & CLOUDS」】


名盤「HOLDERIN'S TRAUM」のあのバンドの3枚目です。バンド名のOがOEになったのはウムラウトが消えた都合上。いつの間にか女性シンガーは脱退し、歌詞は全部英語になり、エレピその他の電力系鍵盤がやたら増え、ど田舎の簡潔版初期YESが更に血迷ったようなポップでほのぼのしたシンフォプログレと化しています。あの気が触れる寸前のような美しさをたたえたフォークロックはどこへ行った〜!?…とマニアは嘆くんでしょうが、意外とこの路線でもナイスな内容になってるんですな。4人時代のGENESISにもかなり近い。すなわち変拍子だしハモンドだしデコボコの展開だけどプログレよりはポップスにしか聞こえないという。しかもコニー・プランクがプロデュースというオマケつきで、鍵盤独奏のイントロ数十秒だけがCLUSTER風になってしまっていたりとツッコミどころにも事欠きません。あ、聴き進んで判りましたが後半はけっこうミニマルに盛り上がっていくだけの直線的展開な長尺曲になってます、これはいかにもドイツっぽい。それこそ"Autobahn"の間奏部だけみたいなのが2曲続いて終わりです。さすが。てことでチグハグで胡散臭くてやけに親切な迷走盤ともいえますが、質が低いことは全然ないし、カンタベリー似のかわいい風情もあって何だか愛せる一枚になることでしょう。

  2月14日
本日の収穫、久々のバナナ本店にてJACK DEJOHNETTE「SORCERY」(74年)、HENRYK MISKIEWICZ「NO MORE LOVE」、FRANCISCO MORA CATLETT「WORLD TRADE MUSIC」、HOELDERLIN「CLOWNS & CLOUDS」。バナナ金山店が3月10日にニューオープンってめでたいな。今回は移転じゃなくて1店舗増えることになるわけで、すなわち我ら消費層の出費トータルも増えて、サウンドベイに寄ることも多くなりそうだし、消費税率引き上げとか言ってる政治家は全員公職追放になって田舎の白菜畑かどこかで静かに隠遁して頂かないと困るッス。

【只今のBGM:FRANCISCO MORA CATLETT「WORLD TRADE MUSIC」】


凄いアルバムタイトル(99年リリースですから9.11とは関係ないですね)がついてますが元SUN RA ARKESTRAならば許されるでしょう。リリースがこれまたPLANET Eときた。ピアノトリオをベースに曲によってパーカッションや各種管楽器を加えるスタイルで、IMPULSE!時代初期のコルトレーンをもう少しアフリカ礼賛にしたような、若干アブストラクトかつ非常にリリカルで美しいモーダル系ジャズを割とまっとうにやってます。ピアノは常に理知的で端正、しかしベースがやたらプリミティヴなビートでゾモゾモと蠢き、ドラムは更に妖しいトライバル・ポリリズムでもって空気を支配。サン・ラのように強烈なケミカル級ラリ攻勢はとらずあくまでそこはかとないナチュラルトリップという感じです。息のしやすいアダルトなセミ・スピリチュアル。しかしやっぱり何やら背後に確信と妄想に満ちた宇宙観の存在が匂ってくる気がするのは気のせいではないはず。新しさのためだけに突き詰められた新世代ミュージシャン達の難しいジャズに比べて遥かに受け取るのが容易な、焦点の絞れた出来になってると思います。静かな口調でホメてますがとても素晴らしいんですよ。ユゼフ・ラティーフとかが好みな人には勿論、アーティスティックなのは結構だがECMなんか学者くさくて好かねえナってな向きにも大推薦。

  2月13日
本日の収穫stiffslackにて新品でV.A.「UNTIL THE SHAKING STOPS: A SALUTE TO JAWBOX」、EL GUAPO「THE PHENOMENON OF RENEWAL」、THREE SECONDS KISS「MUSIC OUT OF MUSIC」、中古でBIG STAR「#1 RECORD/RADIO CITY」(2in1、from STAX!)。そんで今3000円以上買うとついてくるV.A.「FLAMESHOVEL RECORDS FALL 2004 SAMPLER」もゲット。6月頃に予定されてるというTRAINDODGEのEPの音源を店頭で数曲チラッと聴かせてもらえたのですが、これがまた「THE TRUTH」ラインの重量級鋼鉄パンチなグレイト過ぎる出来で、しかも上手くいけば日本公演実現も結構カタイ気配とのこと。みーんな遅くて重かった10年前にSOUNDGARDENで、ALICE IN CHAINSで、HELMETにQUICKSANDで拳を握ってた御仁の皆々様はここぞとばかりに決起せねば。

【本日のレビューその1:EL GUAPO「THE PHENOMENON OF RENEWAL」】


新世代DISCHORDバンドとして人気を博したEL GUAPO(現在はSUPER SYSTEMと改名したようです)が移籍前の古巣RESINからリリースしていた1stフル。RESINといえばDC界隈のとりわけハイセンスかつヘボロッキン(激しく褒め言葉)なバンドを集中的にフォローしていたレーベルですが現在もまだ存命なんでしょうか?内容はDISCHORDからの2枚とガラッと違う雰囲気で、変拍子や変則展開、屈折ギター(ぺらぺら!)をたくさんフィーチャーした、気弱なHOOVERってな趣き…というか過去に紹介したデビューEPと殆ど変わらない出来です。今見たらそっちで音楽性のことはかなり詳細に述べてたのでそっちを参考にして下さい。このフルアルバムの方はそれが13曲分入った満腹仕様。もうそれだけといえばそれだけだけど、RESINファンだからいいんですこれで。ダメで屈折した暮らしを送ってる方にオススメ。

【本日のレビューその2:THREE SECOND KISS「MUSIC OUT OF MUSIC」】


DC界隈の良心レーベルつながりで今度はSLOWDIMEリリースの三人組ニューカマー。全然知らん存在でした、有名でもないでしょう。SLOWDIMEはレーベルオーナーが政治活動で多忙であんまり会社回せてないとか…。HOOVER派生人脈と何かしらの絡みがある人達が多いレーベルですが、このバンドはイタリア出身のようで、名前を見ても全員普通にイタリア人。アルビニ録音(何故か録音地だけフランス)だからもしかしてUZEDAの残党か?と思って調べてみたけどカスッてもいませんでした。しかし中身は結構UZEDAに近い、鋭角ギターと変則リズムのSHELLAC〜SHIPPING NEWS〜PITCHBLENDEライン。イタリアに根付いてるんでしょうかねこういう音。REGULATOR WATTSやKEROSENE454みたいな骨太グルーヴで押しもせずTHE BOOMやTHE SORTSのようにファンキーに技で魅せるでもなく終始神経質なポストコアの一点張りで、DCよりはシカゴ系の感触です。没個性っぽくもあるけど、SLOWDIMEファンだからいいんですこれで。今やここまでの正統派も少ないことを考えると伝統芸バンドってことで大事にしてあげたい感じも。クオリティは恐ろしく高い。

  2月11−12日
▼5センチ四方くらいにカットされた葉っぱを見てそれがキャベツだかレタスだか白菜だか普通判るもんですか?両日とも収穫はなし。レコーディングは娯楽だな。

【本日のレビューその1:LED ZEPPELIN「PRESENCE」】


割と最近買った「CODA」をさっきまで聴いてたけど終わってしまったので次はこれ。ZEP史的にどうのとか、ボンゾが最高でプラントの調子がどうのとか、あらゆる切り口から語り尽くされてきたアルバムだと思うのでここはひとつフェティッシュかつ見当違いな視点から無駄口を垂れるとします。まず冒頭を飾る"Achilles Last Stand"、これは大名曲ですね。ダレ知らずの10分強で思わずジッと聴き入ってしまいます。しかし1曲目がキラーチューンないわゆる名盤において次に肝心なのは2曲目だと思ってます、思いませんか?更なるヒートアップでハイテンション攻めといくか、一変クールダウンを図って1曲目の余韻の減衰ラインにスンナリ乗っかるか。この作品の場合後者なんでしょうけど、しかし"For Your Life"は開始1秒で食らわされる強烈な拍トリックと不健康なダルさ漂うヘヴィネスの静かな猛攻、1曲目がエクストラオーディナリーだっただけにここで「うわっZEPだった!!」とむせ返るという、クールダウンかつ攻めの完璧な流れになっとると思うんですな。続く"Royal Orleans"もハードロックノリの血にしか出来ない太く粗いファンクネスが魅力的じゃないですか。アキレスと並ぶ山場とされるリフ・オリエンテッドなヘヴィチューン"Nobody's Falut But Mine"は言うに及ばずバンドの象徴的な名曲として、アメリカンなカッティングとまたトリッキーな拍感覚(イントロで1拍数え間違えても途中までは普通に聞こえる周到振り)が不敵な"Candy Store Rock"、掃いて捨てられそうな曲調ながら世界一重いブレイクと暴力的な半拍食いに満腹の"Hots On For Nowhere"、テレビのチャンネルを替えるようなイントロに導かれてリヴァーブたっぷりのエロエロな時間が流れる哀愁スローブルーズ風"Tea For One"まで、緩急はあってもスキは皆無。買って3ヶ月で売ろうか悩むようなそこらへんの優等生CD30枚分の充実感はあろうかという、けだし名盤ですな。居眠りみたいな二流マスロックや商業ジャズを遥かに凌ぐプレイヤー的快感が溢れかえっております。譜面的なものではなく瞬間の音響現象の集合としてのロックの可能性ってこの人達が随分試し尽くしてんだなあと、2005年の今熟聴してもそう思う次第。

【本日のレビューその2:CAN「LANDED」】


ダモさん脱退後の通算8枚目。無所属の逸脱音響ポップとして高い完成度に至った前作「FUTURE DAYS」とは雰囲気が変わってノーマルなロックサウンドが部分的に導入されてますが、闇雲に塗布された(といってもセンスに裏打ちされた一定の調和が存在するわけですが)ような雑多のオブジェクツによって紡がれるこの流れは依然どうやっても商業ベースに乗りきるものではなく、結局CANそのものな内容になってます。テクノロジーに翻弄されるようなシンセの使い方とそこに無理して組み合うヤキ・リーベツァイトの人力ファイト・ドラム("Vernal Equinox"後半)など見どころもそこかしこに。あらゆるボーダーを無視してfun&DIYで通すという姿勢は、そのままパンク〜ポストパンクの世代まで継承されてるのが明白ですね。75年発表ですが5年後以降の香りが既に漂います。彼らのような実験おじさんがウヨウヨいての華の80年代、過去の試行錯誤を自らこうしてまとめ直していたからこそ後続の者共もやりやすかったことでしょう。音楽性と同じく「反復&落書き」なジャケがグレイト。

  2月10日
▼特にネタもない今日は自称物書き風に収穫はなしであるのだ。春かと思った暖気は刹那、花粉だけが残る。クシャクシャする。

【只今のBGM:AUTISTIC DAUGHTERS「JEALOUSY AND DIAMOND」】


KRANKY話題のニューリリース。ウィーン発音響トリオRADIANのドラマー率いる三人組(オーストリア+ニュージーランド)であります。内容は言うまでもなく思いっきり激枯れ音響スローコアながら、アメリカが混じってないのでお決まりのUSカントリーフォーク/ブルーズ色は完全不在。FRIEND/ENEMY、ちょっと前のU2、THE FOR CARNATION、DIRTY THREE(お隣りさんなだけに)、「HOMOGENIC」以降のBJORK、その他諸々のものを整然としない塊にしたのち激ダウナー化フィルターを通したような、実はシブい歌心バンドでもあります。もう何かロック云々より現代芸術って感じのまとまりかた(美術館が似合う!)。大陸的な高みのあるサイレント潔癖ジャジーアンサンブルがまた見事なもので、静謐も濃密さとして響くような達観した身構えとスケール感に圧倒。こりゃKRANKYはLOW以来の快挙ですね。「スローコアの名盤10選」を決めるとしたらまず上位にノミネートされるような、新世代のための教科書的な一枚。

  2月9日
本日の収穫、ナディアパーク内ヤマギワソフトにてLES THUGS「STRIKE」(SEBADOHのエリック在籍、96年SUBPOPアルビニrec)、OLD「LO FLUX TUBE」(100円!)、PREMIATA FORNERIA MARCONI「MISS BAKER」(300円新品、81年)、バナナ名駅店にてPLUSH「FED」、CRAW「BODIES FOR STRONTIUM 90」(HYDRAHEADリリース、THE JESUS LIZARD〜DALLZING KILLMENラインの極悪コア隠れ10年選手)、アマゾンから届いたAUTISTIC DAUGHTERS「JEALOUSY AND DIAMOND」。

【只今のBGM:PLUSH「FED」】


これずーーっと欲しくて、国内盤しか見かけないから外盤発見を待ってたところどうやらP-VINE/AFTERHOURS盤のみしか出てないらしいということを最近知り、でもP-VINEといえば裏ジャケにJASRACのマークのプリントが入ってるしそもそもあのPCD何々って品番も丸Pマークも嫌いだし畜生DRAG CITY早く外盤出せよ、と悶々としてまして、今日また国内盤を見かけたから試聴のフリして装丁を確かめましたらば何とEUPHONE「THE LAKEWOOD」やTHE SORTS「SIX PLUS」同様オビ以外どこにも日本語がなく当然JASRACマークもないOKラインのつくりだったので喜んで購入。渋ってた皆さん大丈夫ですよ。中身はもう最高のPLUSH節、ちょっと大仰で温かく寂しいオールドサイケポップスタイルの名曲の数々!「THE MORE YOU BECOMES YOU」を聴いて抱いていた期待と物足りなさを完璧に埋め尽くす激盛りフルコース。シングル"Found A Little Baby"を彷彿とさせるほのぼの系から、飛び跳ねるように楽しいアップテンポの曲まで、全てが彼の愛溢れる酔いどれ二枚目弱気ヘナウマヴォーカルでつながれてツルーッと深くまで流れ込んできます。賑やかに添えられたブラスも女性コーラスも鉄琴もエレピもオルガンも小編成オケもきっと全部本物なんでしょう、何せこのレコーディングに家一軒買えるくらいの金を注ぎ込んだというのがもっぱらの語り草になってますから、広がる視界は夢のようでございます。演奏者やエンジニアとして関わる面子も御大アルビニ、ジョン・マッケンタイア、ボブ・ウェストン、コンラッド・シュトラウス(KING KONGやウィル・オールダム他を手掛ける)、ライアン・マーフィー、アジータ、ジェフ・パーカー、リック・リッツォ(CHESTNUT STATION)などCHICAGO UNDERGROUND周辺〜DRAG CITY絡みの連中がフル出席でもの凄い豪華。しかしこの作品に限ってはそんなことを意識する余地なんぞないのであります。DRAG CITY界隈の良く出来た一枚どころじゃなくて「無人島レコード」の風格ですよ。多くの人に安心して長く愛していってもらいたい大名作。

  2月8日
収穫はなし。佐川急便はいっつも同じ人が配達に来るから、コマゴマと何買ってんだと思われるから、アマゾンはなるべく全部一括で送ってほしいなあ。手配送れの品があとから1枚ずつ2・3回に分けて来るのとか嫌だなあ。明日も1枚来そうです。

【只今のBGM:PILOT TO GUNNER「GAMES AT HIGH SPEEDS」】


JAWBOXチルドレンのホープとしてもっぱら評判のいいPILOT TO GUNNERの2001年リリース1stフル。GERN BLANDSTEN盤とARENA ROCK盤があるようですが私は前者を入手。内容はJAWBOX〜BURNING AIRLINESと3枚目以降のNO KNIFE(声が似てる)あるいはCURSIVEらへんの中間をいくような男気じっとりパワー・エモをやってます。普通じゃないことをやろうと屈折/技巧性に走って結局没個性化してしまうバンドが多い中で、こうやってストレートにリフをガツンと鳴らして歌を歌うバンドってのは清々しいもんですね。勿論クオリティあってのシンプルイズベストですけども。どうも垢抜けっぷりが足りない気がするのはいかにもインディーっぽいヴォーカルスタイル(別にヘタとかではないし不足はない、タイプの問題)のせいか?これでマジ・セクスィーに歌える直球シンガーが入ったとしたら、あるいはその域まで成長したら、AT THE DRIVE-INちょい手前くらいのポジションまでいってもおかしくないような全般的センスの良さ。RETISONIC、RIDDLE OF STEEL、TRAINDODGEあたり(全部JAWBOXトリビュート参加組ですが…)のこういう音はもう今年ドンドン盛り上がってもらいたいですね。

  2月7日
本日の収穫、バナナレコードパルコ店にてJOHN SCOFIELD「OUT LIKE A LIGHT」、JOHN LURIE「AFRICAN SWIM AND MANNY & LO」。耐えられないくらい寒いのに外を自転車で走って帰らなければいけないような時、「冬至は過ぎたんだからもう夏だ」と自分に言い聞かせることにしています。夏のクソ暑いときは「ここは風呂の脱衣所だ」とヴァージョンを変えます。

【本日のレビューその1:JOHN SCOFIELD「OUT LIKE A LIGHT」】


81年録音のトリオ作。ベースはエレベで80年代のマルチマイク録音(多分)のくせにアンビエンスをちゃんと拾ってて忌むべき人為オーバーリバーブは皆無、これHEFTYから出したら一瞬EUPHONEやILIUMと勘違いするんでないか?というほどイカした身格好してます。しかもこれが意外にもライヴ録音。内容的にはメセニー以降のギターフュージョンの発展形なわけですが、アメリカジャズ然とした愛らしい響きのコード展開がいつの間にやら千鳥足、何だよそのギリギリ過ぎるラインは…と、若きジョンスコの積極的なスケールアウト攻勢が随所で火を噴きまくり。求道手段としてだけ、あるいは存在意義だけの前衛じゃなく、聴いて愉快であることが前提になってるあたりにオーネット・コールマン的な親しみやすさも感じます。東北の田舎のお年寄トークの如しですね。すなわち10語に2・3語くらいしか知ってる言葉がなくても日本語であることは伝わって、耳慣れず風変わりな響きだけどニュアンス豊かで温度は人肌という。進歩的なコードワークに踊らされず自由自在にあやしいラインを弾き出しては時にギターのようなソロも取るスティーヴ・スワロウ(B.)、パシッと喝の入るキメ打ちをそこかしこに挟む若干ロッキンなスタイルを基本にダカスカ系崩壊プレイも完璧にコントロールして演じきるアダム・ナスバウム(Ds.)の両名も激しく好サポート。激変則展開&鬼弾きがとりわけ圧倒的にスリリングな4曲目のタイトルトラックなんかはテクニカルスラッシュの名バンドWATCHTOWER(および後身のSPATIC INK)の原型を見るようで凄まじいな〜。アウトする非産業フュージョンで判りやすくエキサイト出来るのをお探しなら非常にオススメ。

【本日のレビューその2:ALCATRAZZ「LIVE SENTENCE」】


今月はなんか小難しいのが続いてるんでここらで和むメタルを。イングヴェイとグラハム・ボネットの過去の熱き夢ALCATRAZZの84年中野サンプラザでのライヴ盤です。もうこのアルバム冒頭、ドラムフィルに続いてのF#m一発の単音ヴィブラート+オルガン(シンセ)で「お〜っインギーだ!!」と誰もがわかるからやっぱりこの人は壮絶に偉いと思いますよ。ハーモニックマイナーフル稼働のシャッフルチューン"Too Young To Die, Too Drunk To Love"で威勢良く幕を開けるわけですがこの人バッキングも半分くらいソロですな。振れの大きいヴィブラートをパワーコードにまで使う陶酔満点っぷりがいいじゃないですか。RAINBOWをオシャレかつ淫靡にしたような"Hiroshima Mon Amour"も名曲。彼がポップめの曲で見せるコードないしリズムのオシャレ感はホント独特でフォロワー達もここまでは真似してません。演奏後のグラハム・ボネットと日本人オーディエンスの「リメンバー・ヒロシマ!(イェー)ドンフォゲッ・ヒロシマ!(イェー)エヴァー!(イェー)ノウモーウォー(イェー?)」ていう空しいやり取りがまたアツイです。その後も"Island In The Sun"、"Since You've Been Gone"に"All Night Long"(客盛り上がり過ぎ)、RISING FORCEでもやってる"Evil Eye"とキラーチューンが凝縮の全9曲。ミックスも優秀で演奏はベストな冴え(どんだけ差し替えてんのか判らんですが…)、なーんだ名盤ですよこのライヴ。やっぱ「TRILOGY」までのイングヴェイのクリアな激弾きはスペシャルです。未だ健在の燃えたぎるようなニュアンスもこの頃は格別に活きがいいし、何より全部聞き取って譜面に起こせるくらいの正確無比なピッキング!スキャロップのゴマカシじゃないでしょうこれは。まあ手グセも20年前から変わんないですけどね…。とにかくファンは必携、スルーなんてとんでもない。イングヴェイなんて無能のクソでしょうとか言う若い人もこれ全部コピーするまで繰り返し聴いて大声で泣けと。ちなみに余談ですが、イングヴェイの初期作もそうだけどこのアルバムもミックスがLester Claypoolとなってます。同名異人でなければPRIMUSのレス・クレイプールは昔マイアミで職業エンジニアやってたのか。おおメタルトリビア。

  2月6日
収穫はなし。件の歯グキ口内炎におでんの辛子がしみて困りました。辛子好きなのになあ辛子〜。

【只今のBGM:JOHN CAGE「SONATAS AND INTERLUDES FOR PREPARED PIANO」】


新品が激安のNAXOS盤でゲット。もう何を書くのも畏れ多いんでまずは裏ジャケ記載の文面をそのまんま訳しときます。「ジョン・ケージ:アメリカ人の作曲家。米国アヴァンギャルド及び世界中の音楽に後々重要となる影響を与えた。仏教の禅や易、またヒンドゥー教などに関心を持ち、それはノイズや偶然性までも語彙に含める彼の革新的・実験的な創作に反映された。1946〜48年に書かれたこの『SONATAS AND INTERLUDES』は、打楽器的効果を得るためにねじやボルト、プラスチック、ゴムなどを仕込んだプリペアド・ピアノ向けの小品集である。この作品には彼の変わった音を使うアプローチやヒンドゥー教への関心が、central tranquillity(これ多分何か特定のタームでしょう)の周りに配された陰と陽の描き分けをもって表現されている」と。能書きはこれで勘弁ということで現音素人が聴いた内容のリポートを以下に。ヒンドゥーや仏教の音楽ってどんなものか全然知りませんが、日本のお葬式や祭祀その他で耳にするものは、太鼓や金属の打音と人の声その他の長音の群れですよね。中心となる静寂(=「間」?)をめぐって断続的に有声状態の時間が貼り付けられてて、その中で拍のカウントは示唆されたり覆されたり自由に伸縮/出没するという、そういう感覚はもう何か、音符と殆ど等価なものとして「休符」を数える西洋音楽とは全く違ったものに感じられます。それをヨーロッパの文化鍛錬の賜物たるピアノという箱に入れ込んで"現代"音楽と呼ぶのは結局欧州中心の視座から一歩も出てない気もするけどまあそういうイデオロギー云々カテゴリ名称云々の小噺はさておき。アメリカ人の大層な異教かぶれだとしても出来上がったものは立派な無国籍料理です。自然界のカオスをそのまま不穏な音階(あるいはノイズ)に代入したような東南アジア圏特有の表現をよく習熟しながら、鳴ってるのは全部ピアノの弦や鍵の音。1オクターブ12音という構造上の制約のせいもあり端々で素材の味が滲み出ます。ガムラン風の曲から構造解体的な欧州現音然としたものまで、いずれもスコアとして確定指示された気配を漂わせない自然体さ。旅先の路頭で現地人が演奏してるとでも思えば現・代・オンガク!と気負わずともあっさり無心に楽しめるような内容なんじゃないでしょうか。THRILL JOCKEY絡みとかのロック畑アヴァン好き一派の膨大なカタログ群をありがたやと買い集めてしまう前にこれだけ持ってれば随分迂回が減ってたなあと猛省しきりです。古典学習は意義深し。

  2月5日
▼口内炎が歯グキに出来ました、クチヒゲのあたりを触るだけでちょっと痛みます、どうでもいいですよ。だいたひかる自身がな。本日の収穫mapから届いた二階堂和美「US TOUR 2003」。

【只今のBGM:二階堂和美「US TOUR 2003」】


さーて届きました豪華3枚組BOX。まだアルバム2作(名義違いの頃のリリースもあったようですが現在流通してるのは「たねI」と「また おとしましたよ」のみということで)しかリリースがなく、認知度的にも例えば54-71みたいに露出がある人と比べれば「噂が噂を呼ぶ」な域の彼女がいきなりババンとこんなものを世に出せてしまうのもひとえに、一度実物に出くわせば完全降伏するしかないその才気と「ホニャホニャした」と形容されるキャラクターゆえの広く温かい支持を思えば何の不思議もない話。内容はツアーのドキュメント的DVD、ライヴ録音音源のダイジェストCD、フィル・エルヴラム(MICROPHONES)によるスタジオ録音CDとなっております。ウチのPC、DVDが見れんとです…なのでレビューはCDの方だけ。

 DISC1がDVDなのでまずはDISC2。これは会場の音をそのままポータブルMDでマイク録りした音源のようで、もう本当に録っただけという音質なものの、ヒャーッとトリが飛び抜けるように伸びる声のヴォリュームにあわせて録再MDの雑なコンプがガンガン効いてアコギの音を押し退けるさまに、現場で聴かれる圧倒的な振れの大きさが生々しく想像できます。2枚の既発作からのレパートリーに加えて未録の新曲もやってて、ちょうど私がジェン・ウッドの前座で目撃した頃と同じような選曲。盛り上がるがままにギターを凄く適当に弾いてるのとかも克明にモロバレですが、そんなもの構わず爆発しまくるヴォーカルに耳を強奪されまくり。別に英訳ヴァージョンにするでもなく日本語のままで歌っているのだけど初見のアメリカ人オーディエンスも演奏中はジッと静かに聴いて(咳や物音は録れてるからちゃんと黙ってることが判る)、歌い終わるや否や大歓迎の拍手と声援を送っています。異国の物見客をガッチリ魅了してきた様子。

 そしてDISC3、これはKの総本山DUB NARCOTIC STUDIOおよびフィル・エルヴラムのプライベートスタジオ(自称「NOWHERE」)での即興が計12曲収録されております。即興といってもライヴで曲を始める前にMCを取りながらフラフラつま弾いてる感じの、ギターその他がループするバッキングに解読不明のホニャ語アドリブメロを乗っけるスタイル。この手の非・歌詞ありトラックはこれまでのアルバムにも度々収録されてきたものであって別段違和感はありません。作曲とインプロヴィゼイションの間に壁を持たず、聴いたような知らないようなとにかくいきなりスッと収まるフレーズを次々とほどき出していくこのセンスと勢い、キース・ジャレットが特上のわらべ唄を量産するが如し。空気まで丸ごと記録するアメリカンインディー流儀の録音によってスタジオで楽しみながらパフォーマンスした様子がありありと伝わるタマラン仕上がりになってます。

 とういことで約束されていたが如くグレイトな内容でありました訳で、買うべくして買ったなと満足のいく品でした。ちなみに予約特典としてついてきた2曲収録のボーナス盤DISC4では、"赤いスイートピー"なんかやってみるものの歌詞もコードもグデグデに踏み外すまま殆どオリジナル化してしまう壮絶なヴァージョンに。あとは既に披露されてる新曲(ことごとく名曲!)を収めたフルアルバムの完成を待つばかりでございます、名古屋公演もそろそろやって頂きたいところ。今後の大活躍に期待しましょう。

  2月4日
本日の収穫アマゾンから届いたRAYMOND SCOTT「SOOTHING SOUNDS FOR BABY VOLUME 1」、同「VOLUME 2」「VOLUME3」、JOHN CAGE「SONATAS AND INTERLUDES FOR PREPARED PIANO」(NAXOS)、BARTOK「PIANO MUSIC 3」(同じくNAXOS)。花見してー。

【只今のBGM:RAYMOND SCOTT「SOOTHING SOUNDS FOR BABY VOLUME 2: 6-12 MONTHS」】


アマゾンを探検してるうちにいつの間にか買ってた品です。作者についてはなーんも知らないので自力でぐぐって下さい!とりあえずアニメやCM向けのコンボジャズ用スコアでひと儲けした金を当時まだ馬鹿でかかったシンセに注ぎ込んで未開の電子音響に文字通り埋没した人とのこと。モンドブームで光を当てられて以来、CHILDISC界隈あたりなどで細々と確かなリスペクトを集めているようです。さてこの作品、幼児のための音楽ということで生後1〜6ヶ月、6〜12ヶ月、12〜18ヶ月用とシリーズで1962年に制作されたものの中編。内容は超無心なミニマル和み(もしくはミニマルなゴミ)エレクトロニックミュージック!テルミン(使われてませんが)やムーグがこの世に生まれ落ちてからプログレ全盛時代に花咲かすまでの間、シンセはこんな風に使われておったのですね。各トラック、ベースとなるリズムないしフレーズのループがカタポコとひょうきんに繰り返され、そこにディレイの乗った鼻歌風のフレンドリーなメロディ(時にアドリブ)を踊らせて、10分経ってハイ一曲、みたいな単純極まりない世界。シニカルなナンセンスじゃなくて、子供らしい無心なんですな。同じく一定のフィーリング内での手探りをそのまま作品化していた「AUTOBAHN」までのKRAFTWERKは、他人の空似だとしてもかなり直系。更にここにインテリとささやかな悪意を加えるとTHE RESIDENTSになると。ヴィクセル・ガーランドやつい先日紹介したMARZなどKARAOKE KALK勢への(間接的かも知れないにせよ)影響も甚大なようです。リアル・ヴィンテージ機材を100%使用しながらにして今聴いてもキツいと感じる古さは全くなし。もともとジャズ畑の出身なせいか、同じ曲でもトランペットとヴィブラフォンとフルートじゃ全然響きが違うように電子楽器についても然るべき鳴らし方を踏まえてやってる感じがまたセンスの冴えどころだなあと思います。まだそういう楽器の居場所が定まらない時代だっただけに。ともかくシンセミュージックの偉大な父、無論聴いて楽しい音楽なのですが勉強としてでも知る価値ありです。差し替えられたジャケのヒドさだけがざ〜んねん。

  2月3日
▼冬の寒さにはバイタリティを奪われるからイカンですね。暖かい場所でフリーズする。収穫はなし

【只今のBGM:FRANCIS DUNNERY「LET'S GO DO WHAT HAPPENS」】


80年代英国にIT BITESというバンドがおりまして、プログレ扱いされながらその実シンセ主体のハイファイ・アーバン・ポップスに激テクギターと謎の寓話的展開をくっつけた、「ABACAB」以降のGENESISを履き違えたような音楽性をもったバンドでした。中心人物のフランシス・ダナリーはバンド解散後ソロデビュー(日本でしかリリースされなかった)、ロバート・プラントのサポートを経て、95年にワールドワイドリリースとなったATLANTICからのソロ2枚目「FEARLESS」でいきなりレイドバックしたインディポップ寄りのアプローチ(とも言い難いですが…ハードロック畑の人間がオルタナに転向したサウンドは何とも形容のしようがありません)を敢行し、シングルカットされた"American Life In The Summertime"は当時MTVでも結構オンエアがありました。続く3rd「TALL BLONDE HELICOPTER」はこぢんまりDIYな趣きさえある快作となり、本日のネタとなったこれは4th。ジョン・レノン及びTHE BEATLESの影がさす平和&ラブリーな和声センスおよびメロディ運びを不動の背骨としつつ、やっぱり最近のGENESIS(ヴォーカル交代後!)やフィル・コリンズみたいな売れそで売れなさそう系アレンジになったり、ジェイソン・フォークナー風のポスト・ギターポップ・大人SSWスタイル(?)になったり、「ヴァラエティ豊か」よりは「散漫」寄りの内容。しかし歌メロと等価として挿入されるギターの高音オブリ、必然の字余りとして聴かせる突発変拍子、などなど彼ならではの得意技が光る場面ではやっぱりこの人天才の仲間だよなあと思い直しもして、少なくともファンならば悪くは言えない出来になってる感じです。フィル・コリンズやスティーヴ・ペリーの収まり悪い部分ばかり受け継いでしまったようなアクの強い声質が一見さんにはネックか。やっぱりまずは名曲ラッシュな3rdがお勧めです、そっちはSEAN NA NAやPERNICE BROTHERSファンにもイケるはず。

  2月2日
▼名古屋では滅多にない積雪のために自転車を諦めて年に3・4回くらいしか乗らない地下鉄を利用したらたまたま、過去2・3度しか会ったことがなく親戚といえど面識など皆無に等しい従姉妹の旦那を割と至近距離で発見してしまった時にどうするか?気付かなかったフリ以外出来ません。本日の収穫はついつい寄ってしまったサウンドベイ金山にてCHROME「HALF MACHINE LIP MOVES/ALIEN SOUNDTRACKS」、THE BEAKERS「FOUR STEPS TOWARD A CULTURAL REVOLUTION」(Kからのリイシュー)、CURLEW「NORTH AMERICA」(フレッド・フリス、トム・コラ在籍!85年)、SWAMPWATER「SWAMPWATER」、MEL TORME「CALIFORNIA SUITE」(57年BETHLEHEM、リマスター)、ENON「IN THIS CITY」、FRANCIS DUNNERY「LET'S GO DO WHAT HAPPENS」(ex.IT BITES!98年ソロ)。

【本日のレビューその1:CHROME「HALF MACHINE LIP MOVES/ALIEN SOUNDTRACKS」】


サンフランシスコ発の伝説的アングラユニットの3rdと2ndのカップリング。78・79年リリースですがデビューは77年ということで、微妙にポストパンクとも呼べない奇怪な人達です。ガレージパンクとハードロックの間をいく馬鹿みたいなリフとシンプル&ソリッドなリズム、やる気なく吠えるヴォーカル、インダストリアル風ノイズとダブ経由の変調工作を操りながら、盛り上がり無視の乱暴なエディットをガンガン加えて「音楽なんかばーか!」と全力で悪態つかれてる気になるような、RESIDENTSやFAUSTよりもタチの悪いニヒリスティック・クラウトロックを大成してます、もー凄い。グレたTHIS HEAT?もう30年近くも前にこれはちょっとヤバイんじゃないでしょうか。いかに現代のロック畑における「エクスペリメンタル」なる言葉が商業ブランド化してるかということを思い知らされる、特濃の原液みたいな感じです。TRANS AMの立つ瀬がない!こんなもの90年にちゃっかり再発してたTOUCH & GOはホント偉いですね。そしてこれを今までスルーしてあれこれ偉そうにごたく並べてた私はモグリです。全てのグラインドコアマニアがTERRORIZERを聴かねばならぬように、ポストパンクどうの音響どうのと言うなら必須であることが明らかな音しとります。

【本日のレビューその2:THE BEAKERS「FOUR STEPS TOWARD A CULTURAL REVOLUTION」】


同系統でもう一発。GANG OF FOURの前座なんかもやっていたというシアトルのポストパンクバンドの81〜83年頃の音源の、K RECORDS編集による親切なアンソロジー盤です。バンドメンバー本人ほかSOUNDGARDEN、GANG OF FOUR、DELTA 5の元メンバーらによる豪華ライナー満載の愛ある作り。サウンド的には脂ののったポストパンクそのものでして、GANG OF FOURを下世話ファンキーにしたようなのを下地に、フリージャズをかじったようなアホ・サックスが入るあたりMATERIALみたいなNYアンダーグラウンドを彷彿とせかけるものの、ノリがインテリ脳天気なのでやっぱりそっち寄りじゃないなという。あそうかビーフハートか。KもローファイフォークパンクだけじゃなくてDUB NARCOTIC SOUND SYSTEMをはじめCOCOMOCKETみたいなリズム・オリエンテッド一派が幅を利かせてきてることを思えばこのリリースは納得。オリジナルな実験性のあるなしが大きいポストパンク〜ニューウェイブにあって、このバンドがそこまで貴重な存在かといえば正直微妙ですが、ジャーマンスラッシュにKREATORがいる以上TANKARDもHOLY MOSESも消え去ればいいというのは心の狭い話。時代の空気をそのままパックして伝えてくれるのはむしろこういうちょっとフォロワーっぽい人達な気もします。

  2月1日
▼マウンテンバイクに乗ると、剥き出しのギアにズボンの裾がとられるのはよくあること。立ち漕ぎしてる最中にこの状況が起きるとどうなるか?バランスを失ってママチャリより細く尖ったサドルの先端に、後門を激打致します。思わず路肩に緊急停車してキース・ジャレットの声真似を数十秒。朝からツラかった…収穫はなし

【只今のBGM:EYEHATEGOD「10 YEARS OF ABUSE (AND STILL BROKE)」】


ニューオーリンズのスラッジ王EYEHATEGODの、90年のデモ4曲+94年のライヴ+2000年のライヴで構成された2001年リリースの編集盤。俄然90年のデモに注目がいくわけですが、スタジオでのリハーサルをヨレヨレのテープに録ったような、クリムゾン「EARTHBOUND」やEMPEROR「WRATH OF THE TYRANT」をも凌ぐ極悪プロダクションで凄まじい。音楽性としてはこの頃から既にスロウ、ヘヴィ&スモーキーな凶暴スラッジコアを体現してます。サバスやMELVINSに誘発されたという出自が明らかとはいえ、当人達の狂気は真性のものであろうことがビシビシ感じ取られる歌と演奏。本気で危ない。続く94年ライヴはドラムの音こそ力ないものの、ひしゃげた歪みでのたうつドス黒いリフだけでもゲップ出そう。この鈍重で油まみれのグルーヴが生で攻めてきたら…と思うともうオゲーと来ます。2000年ライヴはパタパタ軽いドラムサウンドと多過ぎるアンビエンスで迫力がガタッと殺がれてるのが残念無念!やってること自体は10年前と基本的には変わらず。変わらないことを責めるようなバンドじゃないのでこれで何も問題なしです。AC/DCやMOTORHEADのように頼れる金太郎飴でいてくれればいい。活動はまだ続いてるんでしょうか、また日本来ないかな。

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