物色日記−2005年5月

※頻出語句解説はこちら
  5月31日
収穫はなし。携帯をさわりながら片手で自転車に乗ってて、暗がりの植え込みが見えずこけました。地面についた手の皮がむけてしまった。たったこれだけのことのせいで今日から数日間、風呂も洗顔も雑巾しぼりも圧倒的に不便になると思うと、人間の体とはつくづくもろく出来とるもんです。常にすぐ目先の物体(走行中の自動車、高所工事のクレーン、因縁つけてきそうな人など)によって簡単に引き起こされ得る突然の死を意識しながら生活してたらパラノイアでしょうか。

【只今のBGM:AGITATION FREE「LAST」】


ジャーマンサイケ名バンド、解散後リリースの編集盤的3rd。編集盤といっても6分、17分、23分の全3曲というなかなかガッツリした構成です。ブルーズロックを基調にしたサイケセッションとアンビエントなシンセがぼけーっと交錯する、バンド時代のASH RA TEMPELのスタイルですね大筋で。あまりえげつないブチ壊れ方はせず、完全人力のままで起き抜けのYESみたいなふんわりした表現までこなす実力派。圧巻はやはりTANGERINE DREAM+GURU GURU(?)な3曲目か。遠ーくの祭りの音が生活ノイズに紛れて聞こえてくるような奥ゆかしいナチュラルさを23分間見事に維持。ドイツ人のこの大局的なバランス感覚は本当に恐れ入ります。KRANKYあたりのオチなし音響を愛している人ならば必須ですな。

  5月30日
本日の収穫、バナナレコードパルコ店にてV.A.「DYNAMITE WITH A LASERBEAM - QUEEN AS HEARD THROUGH THE MEAT GRINDER OF THREE ONE G」(サンディエゴの31G周辺バンドによるQUEENトリビュート!)。これさっき通して聴きまして、各々のスタイルで跡形なくブチ壊してる作品が多い中、ミスターTHE FLYING LUTTENBACHERSことウィーゼル・ウォルターは物凄く真面目に端々のパーツを再現してて泣けました。

【只今のBGM:MELVINS「HOSTILE AMBIENT TAKEOVER」】


IPECACリリース、戦慄の2002年作。彼らの仕業はホントに我々一般人の想像を超えます。この(CDのトラック数でいうところの)2曲目のダブルトリオ仕立ての未曾有なサイケデリアたるやヤバイ。雪崩れ込むノイズセッション!そこからこの3曲目の超ぺらぺらギター高速パブロックみたいなのに行こうと思うか!?お家芸のヘヴィスラッジチューンをやるにしてもそこら中に瓦解的展開をすべり込ませてきて頭おかしくなりそうです。持続していた低音をスッと取り去った静寂に残る逆説的な重圧感の演出などはもはや無形文化財指定モンの見事さ。最悪のスカム音楽たろうと当人達が思っているのか、思っていないのか判りませんが、人にうげっと言わせるための技も奥深くまで突き詰めればアートになるという最高の見本ですね。と同時に、きちんと息をするロックンロールを堪能出来る数少ない現役バンドのひとつとして最上級の評価を得るべき人達。むちゃセクスィー。

  5月28−29日
▼28日はバンドの篠田君にあげたファミコンソフト「迷宮組曲」がどうしても先に進められないというので10年振りくらいに挑戦、左手親指の先を十字キーでごりごりと痛めながら3階の途中で頓挫。狭い技術的限界の中でやり込む余地を稼ぐために必然的にストイックかつ無情な作りになってるファミコン旧作群って、頑張ってやると本当に疲弊しますね。ミュージシャンものゲーム幻の草分け「聖飢魔II 悪魔の逆襲」などは、時間の経過にともなって生命ポイント(?)が減っていくのは当時よくあったとして、買わなくても最終ステージまで進んで来れる「みつぎもの」をちゃんと揃えずにクリアしてしまうと、エンディングの代わりとして真っ黒の背景に一行だけ「みつぎものがすくない でなおしてこい!!」と表示されてあっけなくスタート画面に戻るという残酷さでした。その段にきて初めて無駄にした時間の膨大さを噛み締めて愕然とする、といったことがどんなソフトでも往々にしてあるのでワタクシ、テレビゲームの新しいハードなどには一切興味を示さんことにしております。ウチにある最先端機は任天堂ディスクシステムであります。

▼29日は昼頃に栄を東西に移動しようとしたら名古屋まつりの英傑行列に数分間に渡って阻まれた。大迷惑であるわ。

本日29の収穫はバナナ本店にてZZZZ「PALM READER」、OFFERING「III et IV」(クリスチャン・ヴァンデ!!!)。

【本日のレビューその1:NINA NASTASIA「RUN TO RUIN」】


TOUCH & GOの女性SSWの2003年作。アルビニ録音、ドラムはDIRTY THREEのジム・ホワイト。THE SONORA PINECAT POWERとDIRTY THREEの中間のようなフヨフヨパラパラした神妙なスローコアタッチの作風。クラシックの素養があるのか、なんとなーくミア・ドイ・トッドを思わす場面も。耳に優しい乙女の小唄というよりはあくまでアーティスティックな創作物であって、i−Podなんぞで混ぜこぜに聴かずじっくり正座で対峙せねばならない感はあります。シャノン・ライトのような恨み節っぷりとは違いますけども。うーん要はアナザー・タラジェンかぁ〜って気がしないでもない。真摯なのは判るんだけど画一的ですよねやり方が。ジュリー・ドワロンみたいに飛び道具級の歌唱があればもうそれだけで有り難がるに足りるわけですけど。ひとまず作品単体での完成としては文句ないです。

【本日のレビューその2:PAT BOONE「IN A METAL MOOD -NO MORE MR. NICE GUY」】


ジャズヴォーカルの超大御所パット・ブーンがメタルのスタンダードをビッグバンド〜ゴスペルスタイルでカヴァーした珍盤として、リリース当初はメタラーの間で相当話題になったアルバムですけども、一般的にはあんまり知られてないんでしょうか。面白半分のMOOG COOKBOOKや「KIDS WILL ROCK YOU」と違ってこちらは至って本気でやってる壮絶な内容です。"Enter Sandman"(METALLICA)や"Paradise City"(GUNS N' ROSES)はバディ・リッチのように、"Smoke On The Water"(DEEP PURPLE)はフュージョン路線以降のウェス・モンゴメリーかSANTANAか、"Crazy Train"(OZZY OSBOURNE)はシナトラ風どっかりスイングにと上手く料理されてる一方、"You've Got Another Thing Comin'"(JUDAS PRIEST)や"Holy Diver"(DIO)などはエレキギターがブラス隊に代わっただけであとはオリジナルに割と忠実。見逃せないのはゲスト陣です。とりあえずグレッグ・ビソネット(Ds./ex.DAVID LEE ROTHバンド)が全曲で叩いてるのを筆頭にマルコ・メンドーサ(B./ex.BLUE MURDER他)、ドゥイージル・ザッパ(Gt./フランク・ザッパの息子)、そして御大リッチー・ブラックモアが自ら"Smoke On The Water"でリフを、ロニー・ジェイムズ・ディオ大先生様が同じく"Holy Diver"で「ルカウ!」「ジョッ、ジョッ」などのシャウトのほか随所でコーラスを披露!!そう何で突然こんなの引っ張り出してきたかって、ひとえにコレゆえです。このトータル数秒のためにスタジオに出向いてお仕事してきたと思うと何とも。まあしかしこの作品、アイディアだけじゃなくてちゃんと質に妥協しない作りになってて、普通に聴き応えがあるのが素晴らしいですな。これをやってしまったせいでパット氏は長年持っていたラジオのレギュラー番組を降板になってしまったというオマケつき。あんたは正しかったという思いを込めて是非とも1枚買ってあげて下さい。

  5月27日
▼行って参りましたDIO&SPIRITUAL BEGGARS。さて落ち着いて書き始めねば。会場のZEPP名古屋はスタンディングながらも相当広く、一応イスありの2階席も(使われてなかったけど)存在する模様。クアトロやボトムラインより横にも上にも一回り広い印象です。Tシャツを先に購入し、荷物をロッカーに預け、ドリンクを頼んだら500mlのペットボトルを丸ごと、専用のストラップみたいなのをつけて渡される。そのストラップが手に引っ掛けておくには長く、首からぶら下げるのも何だかダサく、ずっと手持ち無沙汰にしてました。

 客層は総じて年齢高めで、いかにもといった風体のヴェテランメタラーから往年のメタルクイーンですみたいな派手なお姐さん、一見普通なスーツ姿の会社員も。私は間違いなく若い部類でした。大学生はおろか高校生なんてとんでもないみたいな勢い。バンドTシャツはあまり変わり種を発見できず、皆さん普通に会場で売ってるものや最近名古屋でライヴがあったばかりのJUDAS PRIEST、その他ANGRAなどのメジャーなものをお召しになってました。そしてメガネ率が異様に高い。やはりメタラーは「コンタクト怖いもん」とか「面倒くさいもん」みたいな気弱さや保守性があるのか…私こそがそう言ってコンタクトに乗り換えないメガネユーザーなのですが。

 てことでまずは先手のSPIRITUAL BEGGARS。マイケル・アモットのギターはシェンカー譲りの泣きベンディングが効いてて巧かったけど、それ以外のメンバーはこれぞプロってな驚きもなく、曲もまあ予想の範囲内で、好きという方には申し訳ないですけど殆ど何も感じないまま終わってしまいました。70年代ロック云々と言われるようなセクシーさも全然ないし、昔のPEARL JAMにメタルシンガーが入ったようなバンドだったなあという印象です。「盛り上がらんなお前ら、ウムまあいいか…」みたいな雰囲気で終始煮え切らなかったヴォーカリストが特にいまひとつ。凄さを説明してくれ奥野編集者。

 大掛かりな機材入れ替えののち真打ちDIO。楽器陣が出揃って演奏を始め、少し遅れて御大ロニーが走って登場!フロアから大声援と大量のメロイックサイン!ロニーは笑顔。本当に達者な人のライヴって「目にモノ見せてやるぜお前等、なので頑張ります」みたいな必死の威嚇感がない代わりに「今日も楽しもうか!僕らも君達も」みたいな寛大な構えをしてる気がします。それにしてもロニーは髪も細くなって、首の皮や顔の皺はホントにおじいちゃん寸前で、なのにこの眼力。ロニーは目で歌うとはよく言ったもんですが本当です。1曲目"Killing The Dragon"、知らないけど最近の曲っぽい。ヴォーカルは凄まじい!30余年前から一切変わらぬあの声で、歌詞にあわせてビシビシ動きながら物凄い情報量の表現力で熱唱。ワンコーラス歌い終わるまでもなく感動の嵐。CDで聴き慣れているあの歌を実際やるとこうもエネルギーに溢れたものになるのかと、腰抜かす思いでした!!

 その他のメンバーについても。ギターのクレイグ・ゴールディーは終始苦虫系ポーカーフェイスで、黒のエナメルパンツに黒シャツという典型的速弾きメタラールック。んでギターが無茶苦茶速い!!!殆ど動いてないくらいに見える右手のピッキングは80年代のバブリーなスピード競争の末編み出されたスタイルなんでしょう。ゆえに燃え盛る熱さなど望むべくもなし、てな影の薄さでもありました。キーボードの人はまず目立つ出番自体が少ないので、とにかく暇を潰すかのようなオーヴァーアクションでずっと健闘。ドラマーは普通に堅実で上手い。ベースのルディ・サーゾがですね、私はあんな色男を見たことがありません。つり眉+たれ目、西洋人には珍しくサラサラストレートの黒髪、細長い骨格にガッチリ筋肉がついた郷ひろみ体形、衣装もなんか一人だけオシャレで、何人グルーピーはべらせてても納得してしまうような美男子でございました。仮にベース下手だとしてもあれなら許す。普通に上手いし華のあるパフォーマンスも余裕で織り交ぜてましたけどね。

 フロアの熱狂振りに御大もなかなか満足がいった様子で、やあやあ名古屋、調子いいね的なMCののち2曲目は2nd「THE LAST IN LINE」のラストを飾る"Egypt"。いきなり微妙なのが来たなと思ってると、エンディングのドラム乱れ打ちがいつの間にかあのイントロに…あっ"Stargazer"!!会場大熱狂、そりゃ大騒ぎです。後方からみるみる人が押し寄せてメロイックサインの林が出来上がり、歌い出しからいきなり大合唱。高いところはフェイク入るかと思ったけどあくまで原曲に忠実に歌い切りました御大。スゲ〜。構成的には若干の短縮がありつつソロパートは端折りなしで完奏され、壮大なエンディングにわーっとなっているうちに次の曲名が"Stand Up And Shout"と告げられた日にゃフロア沸騰ですよ。何だこのセットリストは。ギターソロが冷凍食品っぽいことを除けばもう本当にリリース20年後の演奏とは思えない気迫!次は何だ〜と身構えてたら何と、初体験です、セットの途中でのドラムソロ!!ステージ上が暗転してドラムキットだけにスポットが当たり、ひたすら一人でドカドカやるという様式美。ああ我々観客は80年代に招待されたのだとここで確信します。

 まあしかしソロの内容はパラディドルにツーバスを絡めたようなよくあるやつで、フーンと思ってるうちに終了。ここからは曲順の記憶がないのでやった曲をとにかく書いていきますと、1stから"Straight Through The Heart""Holy Diver""Don't Talk To Strangers"、「DREAM EVIL」から"Sunset Superman"(心なしかこの時のクレイグ・ゴールディは輝いて見えた)、最近のアルバムから"Shivers"、更にはRAINBOWの"Man On The Silver Mountain""Long Live Rock'n'Roll""Gates Of Babylon"!ドラム同様ギターのソロタイムもありました。しかし"Man On〜"のイントロのリフを半音低く弾き始めてウヤムヤなうちにごまかした彼を私は許さない。さておき御大のヴォーカル、後半にいくにつれだんだん、原曲で凄く高い部分がある曲にはフェイクを入れていくようになりましたが、あくまで声自体がかすれるようなことは一切なし。曲のエンディングでドカドカーッと盛り上がるような場面で、普通はオオオーだのイエィエーだのでごまかしそうなところをロニーは全部言葉をのっけて歌うのがカッコイイです。あとdownと言えば下を指し、coldと言えば寒そうに体を抱え、magicと言えばすかさずメロイックサインを出すといった、歌詞と完全一体のジェスチャーがまた最高。物凄く細かく繰り出してきます。それにあわせて声色も本当に一語一語変えてて、その見事さに本気で脱帽。ここまで訴えかける表現力をもったヴォーカリゼイションを目の当たりにしたのは初めてです。「こんな小柄で細い体のどこからこんな歌が…」と考えながら見てたら思わず泣いてしまいそうでした。

 本編ラストは満を持してBLACK SABBATHの大名曲"Heaven And Hell"。イントロでリフのメロディを追っかける合唱が起きるほどの盛り上がり!2コーラス目の「The lover of life...」のくだりでの歌唱は思い描いていた通りの妖艶さでゾクゾクしました。ギターソロの後に少し新構成がつけ足され、真っ暗なステージを後ろに真下から赤い照明で一人照らし上げられるロニーがまたストーリーテラー的身振りで歌いまくるパートがあって、この堂に入ったパフォーマンスたるや今日一番のハイライトでしたね。心底ビックリした。「On and on, on and on.. sing it !?」「おーねのーん」みたいな掛け合いも楽しんでラストのファストパートで燃焼し、盛大な拍手と歓声のもと一旦終了。

 ここで既に大感動に呑まれながらも、あの曲もこの曲もまだやってないじゃんと客はこぞってアンコール要求。割とスンナリ復帰。ファンから熱いメッセージの入った垂れ幕をプレゼントされ、「今これをもらったからってだけの理由であと1・2曲やってあげよう。次からはお金を渡してくれたらもっと何曲も演奏するよ」みたいなジョークをかましつつ、出てきたのが"Rainbow In The Dark""The Last In Line"…って明らかに不完全燃焼を狙った選曲じゃないですか。デフォルトでアンコール2回目が視野に入ってるあたりさすがはアリーナクラスの人だけある。再度の呼び戻しにも成功し、とうとうやってくれました"We Rock"!!!タイトルコールからイントロリフの流れで興奮は頂点に、サビは当然全員大合唱。今度こそ最後のカーテンコールでシメた後も飽き足らず「もっとー!」と叫びかける観客に、さすがに勘弁してよ的な表情で手の平を向けたロニーはもう汗だらだらで燃え尽きてるようでした。これを日々、世界中で順番にやって回ってるなんて恐ろしい56歳です。いやはや何ともスーパー初老でございました。感動した。

▼先述のとおり物販ではTシャツのみ購入で寄り道もなく収穫はなし。CD7500円分買うのをしのぐ幸福は確かにありました。

【只今のBGM:DIO「HOLY DIVER」】


今日はこれしか聴けないっす。1曲目"Stand Up And Shout"の猛烈に高性能なスピード感は当時の他の誰にもないスゴさですね。そこに乗るロニーのギリギリなシャウトがまあアゲることアゲること。HM史的にはDIOってRAINBOWやBLACK SABBATHのオマケ的扱いになってる感がなきにしもあらずですが、NWOBHM前後の差がやっぱり歴然とあって、メタル・ロニーの凄みはここから本格的に開花してる気がします。"Don't Talk To Stranger"の「ダーーー!!!」なんかそこらの二流デスメタルなど足元にも及ばぬ壮絶な気合じゃないですか。もうメタラーじゃなかろうが何だろうがロニー・ジェイムズ・ディオという男の歌を聴くためだけに全員買って頂きたいですね。そうだチャーリー・パーカー聴こうって言うのと同じ次元で。そういう人ですから。

  5月26日
収穫はなし。今日は松屋かココイチか…と超マイクロスケールな葛藤に苛まれた末に腹を決めて入った吉野家で、せめて汁物とサラダをつけて贅沢にいこうと企んだところに、後から入ってきて近くに座った女子高生二人の攻撃的な愚痴が遮りきれない音量でずーっと聞こえてて穏やかな食事にならんかったりしました。ああ口惜し。強制的に話の全容が聞こえてくる感じで喋る女子高生達の話題って十中八九「誰ソレがうざい」だのというネガティヴなものなのは何故なのか。別に妻夫木君とかへの愛を謳歌してもいいのに。しかも今日の彼女らは喋れてなかったのがまた悪かった。情報の断片をすっきりオーガナイズしてから聞かせるとか、エピソードの重要度に応じて強調/省略するとかそういう、自分を然るべくプレゼンして他人とスムースに渡り合うことを可能にする根本的な思考体系は、本来学校教育が地道に鍛え上げていくものではないのかと。受験での「思考力」すら所詮思考停止的コマンド記憶の集積で、大学4年の卒論まできてやっと「それじゃ最初から考えてみなさい」と言い放たれるっていう珍妙で狭小な枠組みがあるからですね、今の若人のいくらかは話す自分を知らず、就くべき仕事を自ら選べず、新種の虫みたいにニートだとか嫌な呼び名を授けられるという斯様な状況になっとるのではないでしょうかね。問題意識の芯に自己を感じるという、自律的な活動主体たる人としての取捨選択その他の行為の根本をですね、シッカリしていくのが人格教育の最重要点であるべきだと思いますよね。すれ違った若者に突然激昂されて撲殺とかされたら困るのでこういうこと考えてしまいます。

【本日のレビューその1:RAINBOW「ON STAGE」】


明日のDIO名古屋公演に向けてロニー史復習その1。HM/HR最強のライヴ盤として名高い、世界中の何百万人ものメタラーの思い入れを乗せた77年リリース作であります。イントロの"Over The Rainbow"からメドレーで雪崩れ込む"Kill The King"が…なんてフレーズも多分散々言い古されきってますな。ともかく"Catch The Rainbow"が15分、"Mistreated"が13分、"Still I'm Sad"が11分と、全てをライヴヴァージョンとして再生成する騙しなしのバンドパワーをしかと堪能できるというのが何といっても魅力でしょう。クラシカルなフレーズを導入しただのアルヴィン・リーより速く弾いただのという事実ばかりクローズアップされるリッチーもちゃんと瞬間のニュアンスを戦えるプレイヤーであるということ、この頃の(RAINBOWをサンプルとして見るところの)ロックバンドがジャズ/ブルーズの流儀を汲んだ微細なグループ表現というものを出来ていたということなど、コンプとリヴァーブだらけの画一的プロダクツ基準によって音場感覚の勘まで潰された今時の耳にはあれもこれも新鮮に届くはず。その上でリッチーのジミヘン・オマージュなワウがけ乱れ弾きとかがどういう意味の殺傷力を持っていたのか改めて受け止め直すなりすれば、90年代以降よくある安っぽいロックのカタルシスの誤読がいかに恥かも判るってもんです。なんかロニーを堪能しようと思って聴き始めたのにヴォーカルパートがオマケのようにしか入ってませんが…勿論パフォーマンスは余裕綽々の深い声色で最高。あとマーティン・バーチによるプロダクションがやっぱり最高です。

【本日のレビューその2:BLACK SABBATH「MOB RULES」】


ということで次はこれ。ウッカリこれのタイトルトラックなんてやられた日にゃ乗り遅れたら最悪なので。大名盤「HEAVEN AND HELL」のフォローアップ以上の何でもないといったイメージが強く、また実際その通りの中身だとも思いますが、"Heaven And Hell"と"Children Of The Sea"のあいのこ的大曲"The Sign Of The Southern Cross"、"Die Young"彷彿型の哀愁を孕む"Falling Off The Edge Of The World"など見逃せない盛り上がりどころもあるから侮れない。もろオジーサバスな雰囲気の6曲目、タイトルがジェイムズ・イハ君の和み佳曲と同じ"Country Girl"なのは如何に…?その次の"Slipping Away"はZEPの真似じゃないか!局所的な鋼鉄度が上がる一方血迷う部分では思いっきり迷走しまくってますね。後にそのままDIOに連れて行かれるヴィニー・アピスが器用なんで何やってもある程度まではキマッてしまってます。とにかく脂のノリまくったロニーの歌唱がリフマスター・アイオミ師のリフよりも前に出るようなガッツ溢れる出来で、誰のレコードなんだか判らんほど。サバスの弦二人が入ったプロト・DIOと思えば途端に釈然とするかも。

  5月25日
▼自分の出演するライブに来ないかと人に面と向かって誘うのって、逆の立場のとき自分がもっぱら「今回は『金がない』にしようか『その時間働いてる』にしようか…」と考えてばかりの部類の人間であるゆえ(実際にそれらの理由である場合も勿論多々あります)、その空気を漂わすのに気が引けてなかなか誘いづらく思ってしまうのが常。なので面と向かわぬネット上で告知のみさせて頂きます。まあ全員参加ですがな!!!!

DOI MOIやります!リアルタイムで受けたグランジの洗礼とBURRN!からの鋼鉄教育を両方血肉とし、国産ではあまり見かけないようなメジャーロッキンかつヘヴィグルーヴィンな音楽性をモットーとするトリオでございます。私はドラムとおおかたの作曲をやってます。実はギターにスイッチ希望のためドラマー募集中!!

6月5日(日)名古屋 鶴舞KD JAPON
stiffslack presents "tune-in"
18:30 開演
w/THE SUNSETBOULEVARD(from横浜!こちらがメイン)
SAME PLACE EMPTY
KEEP AWAY FROM CHILDREN
取り置き 1500円(メールでお名前と枚数を教えて下さい)
当日1800円

バンドのサイトはここから。試聴音源あります。ワタクシ渾身のハイファイミキシングが冴える4曲入り自主制作CD-Rも現在stiffslackおよびfile-underにて取り扱い中、しかも割と売れてるとのことです!そちらもよろしくどうぞ。

岐阜在住の澤田くんによるシロクマという宅録ユニットのライヴをドラムでお手伝いすることになってます!岐阜のティム・キンセラか小沢健二か、いやただの善き歌人でありましょう、てなビックリ才能の人。アコギ+鍵盤+ドラムというジェン・ウッドの来日時と同様のほっこり編成でお届けします。

6月22日(水)名古屋 新栄CLUB ROCK'N'ROLL
19:00時開演
w/ザ・キッチンゴリラ(東京)
microguitar
しゃにむに
前売り1800円 / 当日2000円

サイトはこちら。試聴音源豊富!完全宅録の自主制作CD-R2作品があり、いずれもネットにて通販出来ます(詳細はサイトの方で)。最近何とCRJ-Cにチャートイン(9位!)したらしく、今後静かに注目が高まっていくこと必至なんではないでしょうか。私はサンプラーで打ち込まれたドラムの人力再現に四苦八苦しておりますが、上手くいけばかなりもの珍しいステージになりそうな手応えです。OWEN名古屋公演の二日後ということでその週は男の歌心週間にしちゃって下さい。

▼貴重なスペースを有り難うございました。収穫はなし

【只今のBGM:シロクマ「晴天の霹靂デモンストレーション」】


手前味噌シリーズで。練習のためのコピー用としてもらったものですが普通に聴きたくなったりしてる盤です。これは稀有なる天然フリークアウトSSWでありますよ。オルタナティヴ・ミュージックには一定の理解を持ちながらももっと根源的なファンクネスやら普遍的「名曲」のイデアやらそういうものを、想像/妄想を交えつつ形にしたらこうなったんじゃないでしょうか。調子外れがちなヴォーカルも平然とスケールアウトする上モノフレーズも全て必然のいびつさとして納得。全く他人の空似でJOAN OF ARCの近年作によく似てますが(!)、多分発想が近いんでしょう。訥々と日常の心情を切りとって語る歌詞は共感を強いず、自己埋没せず、読み応えのあるウェブ日記を流し読むかのように音楽と一体となって入ってきてこれがまた良いというか貴重。薄めのコンプをはじめ空間演出など徹底的に放棄したプロダクションは、寂しくはあっても中途半端に悲惨なアマチュア音源より遥かに好感。コンデンサ録りされたアコギが広い帯域をフォローしてるのでシーケンサ+ライン録音で全部作ったような貧乏臭さはないですし、打ち込みドラムも変にトレブリーだったり嫌なリヴァーブが乗っていたりしない慎ましい音色のもの。必要充分なこだわりどころだけ妥協せずにあとは極力シンプルに作られてるのがひたすら快いです。ライヴにお越し頂いて是非物販にて1枚ということで。

  5月24日
収穫はなし。昨日からノド痛いなと思ったら発熱しまして、一時は38度台にまでなったものの大人しく風邪薬飲んで21時半から寝倒してやったらスッカリ平熱に回復。ということで現在32時の更新です。

【只今のBGM:THE FLYING LUTTENBACHERS「SYSTEMS EMERGE FROM COMPLETE DISORDER」】


何度も紹介してますがかなり好きなバンドです。バンドというか、ドラマーのウィーゼル・ウォルターの一人プロジェクトのようなもんなんですね。アルバムごとに参加メンツが違ってて、この2003年作は完全なる単身自作自演の模様。ドラム上手いくせに打ち込みだけど宅録で作ったんでしょうか。家でほくそ笑みながらこれ作ってるってのもコワイな〜。音楽的には過去のレビューを参考にして頂ければそれとほぼ同様。この作品に関してはどうも、ドラムをまず気の趣くままにプログラムしてしまって、そこに多少キメを意識したベースを乗せ、ギターはもっと自由に殆どアドリブみたいなリフを被せていくという具合で作られた様子です。総人力で作ったアルバムにはない支離滅裂感が。しかしこの随所に見られる這いずり感が何とも、MAGMAもしくは3期クリムゾンのヘヴィサイド("Red"間奏部とか)を匂わせますね。新世紀アートのように見えて実は型破りの伝統芸なのかも。

  5月23日
本日の収穫、サウンドベイ上前津にてTHE FLYING LUTTENBACHERS「SYSTEMS EMERGE FROM COMPLETE DISORDER」(2003年)、MELVINS「HOSTILE AMBIENT TAKEOVER」(2002年)、QUICKSAND「SLIP」(ブックレット傷みアリのを持ってたので買い替え)、THESE ARMS ARE SNAKES「THIS IS MEANT TO HURT YOU」、NINA NASTASIA「RUN TO RUIN」。買い過ぎか。と思ったらカイマンからJERRY GASKILL「COME SOMEWHERE」も届いておった。

【本日のレビューその1:JERRY GASKILL「COME SOMEWHERE」】


KING'S Xのドラマーのソロ。ギターのタイ・テイバーは個人名義および数々の別ユニットで、ベースのダグ・ピニックはPOUNDHOUNDで、それぞれ自分メインの作品をリリースしてきましたが、この人がばばーんと表に出るのはこれが初ですね。タイが全面プロデュースかつギター他で演奏にも参加ということでヘヴィリフ&ポップメロの笑っちゃうくらいKING'S Xな曲もありつつ、大筋では「EARCANDY」収録"American Cheese"でも垣間見えていたメランコリックな歌心がメインになってるようです。ボブ・ディラン+764HEROか、DIZZY MIZZ LIZZY+RIVAL SCHOOLSか、そんな微妙なライン。ひとまずKING'S Xファンとしては買わないわけにはいかない内容です。それにしても各メンバーの仕事をバラで聴くにつけ、よくまあこれだけ創造性の似通った人達が一緒のバンドに巡り合ったものだと関心します。地味ながら長く続いてる秘訣がわかりました。

【本日のレビューその2:QUICKSAND「SLIP」】


いやー完璧。久々に聴いたけどこれは効きますわ。アーリー90's暗澹グルーヴの奥底から叫び上げるエモい情念。1stフルにしてこの老成した粘っこいノリは何なのだと。メタルやオールドロックとナチュラルにクロスオーヴァーしつつ、ダウンチューニングによる重圧を必要充分に駆使してちょいとスペイシーなコード感を醸し出すギターワーク、これが何とも天才的であります。凝ったことやってるけどRAGE AGAINST THE MACHINEと同期かぁ〜と思うと妙に納得。JAWBOXの3rdでの大化けといい、こういう空気が渦巻いてたんでしょうか当時のハードコアシーンは。ともかくきょうびエモグランジと言われる音楽の偉大な礎ですね。WHITE OCTAVEとか殆どこれのトリビュートバンドみたいなもんだなあ。名盤の誉れ高い次作「MANIC COMPRESSION」に勝るとも劣らぬグレイトな出来ですから安易なスルーはNGです。

  5月22日
収穫はなし。休日であるからバンドの練習などをして過ごす。天気予報にはいつも勝つ気でいるので、長い傘(折り畳でないもの)などは持たず軽装にて自転車で出掛け、見事勝利。

【只今のBGM:ONE LAST WISH「1986」】


FUGAZIのブレンダンとギーがいたバンドの唯一のフルアルバム。もう全部これでいいじゃんってくらいDCエモの総てが入ってますね。最近のFUGAZIはツカミが良くなってきたなあと思ってたけど、その感じもこの頃既に実践済みだったみたいです。激情渦巻く混沌のすきまにHUSKER DU的な男気の青春がボフッと匂う楽曲をギーのうわずったギリギリヴォーカルで歌い上げる妙!ファッションでエモを選択してるような若手には到底ない気迫。ダウンピッキングの熱いブリッジミュートなど随所にハードコアの名残がホヤホヤしてるのがまた良いです。およそ20年前とは思えんセンスのギターワークですな。今こんな音を出すバンドが最新クオリティのサウンドプロダクションで音源作ってきたらもうQ AND NOT Uを凌ぐ超新星扱い間違いないっす。よーく絞ろうよー古典は大事だよーということで(イヤ、絞り過ぎもイカンですが…買いましょうCDはボカスカと)、あらかじめ知っとくべきですね、こういう絶対的な作品は。

  5月21日
DIOジャパンツアー名古屋公演のチケット購入して参りました。7500円高け〜っす…しかし相手は人間国宝、ケチってちゃいかんのです。この世で唯一本物のメロイックサインを目撃して来るっす。本日の収穫はそのチケットを買った御器所ホーリーハウスにてEXIT-13HEMDALEのスプリット。

【本日のレビューその1:EXIT-13/HEMDALE「SPLIT EP」】


AGATHOCLESやEXHUMEDもお世話しているVISCERAL PRODUCTIONから恐らく96年にリリースされたスプリット。元々は全5曲だったところに何曲か追加収録されたものの模様です。EXIT-13はRELAPSEに昔からいるフリークアウト・グラインドの名バンド。ここでも微妙にロッキンなリフを配したり突如フェイクジャズ風展開を挿入したりして持ち前の変態能力をバリバリ発揮。ずげんずげんに歪んだベースで押すミッドテンポの曲で聴けるような破壊力は何だか第3期クリムゾンのようですね。どっち向いても心底本気っぽいのがリスペクトです。一方のHEMDALEはダン・リルカが変名で在籍する模擬プリミティヴブラック…だと思ってたんですがここでは割とストレートなグラインドをやってます。ヴォーカルも低音咆哮型だったりするし、初期BRUTAL TRUTHとさほど大差ない気も。質としては当然高いですしちゃんと燃えれます。NAPALM DEATHの"Rise Above"のカヴァーをやってるのがポイントですかな。本家に勝るとも劣らぬ混沌スカム度でかっこよい。ヘタな新興ゴアグラインドに踊らされるよりこういうヴェテラン達の妙味をきちんと堪能した方が腹膨れますね。文句なしのナイス盤です。

【本日のレビューその2:CANNIBAL CORPSE「TOMB OF THE MUTILATED」】


先日行ったタラ・ジェーン・オニール名古屋公演でサポートのミギー・リトルトンがこのジャケのTシャツを着ていたので聴き返したくなってた盤です。MORRISOUNDにてスコット・バーンズ録音の由緒正しきフロリダ産テクニカルデス、92年の3rd。「食人死体」なるバンド名と毎度ショッキングなジャケで有名な人達です。チューニングが半音下げにとどまっているためCARCASSみたいなグチャグチャした屍肉感はそんなにない代わりに、12音技法かと思う奇怪な響きの単音リフ、特にその合間に繰り出されるピッキングハーモニクスが、何ともスプラッタな異臭を放ちます。リズム展開はとにかく唐突、うげうげと低速変拍子でうめいてたと思ったらキリの悪いタイミングでいきなりタパタパタパと激ブラスト!なんてのばっかり。一瞬のブレイクでやたらテクニカルなパッセージをかますベースがまた凄い。どんな歌詞を歌っても殆どボューボョーとしか聞こえないヴォーカルは、噛みつくような迫力を犠牲にしてでも下劣さを選択する下水道系ゴア声スタイルの元祖ですな。この男がいなければロード・ワーム(ex.CRYPTOPSY)もああはなるまい。この頃はバンド全体での演奏のキレがやや鈍重で、その点ではSUFFOCATIONに一歩譲るものの、却ってそれが独特のいやらしいスプラッタ感となって彼らをユニークな存在たらしめている気もします。一応この1曲目"Hammer Smashed Face"が、シングルカットされるくらいの代表曲ということになってますので、初期でどれか一枚といったらこれを。それにしても劣悪極まりないジャケであることよ。

  5月20日
本日の収穫、今池ピーカンにてRICKIE LEE JONES「PIRATES」(2nd)、URI CANE「BEDROCK」。って藤ヶ丘が消えた今や、今池とことわる必要もなくなったのか…。バーゲンは6月3日(金)〜5日(日)のようです。

【只今のBGM:URI CANE「BEDROCK」】


ごっつい紙ジャケでアヴァンジャズをボコスコ送り出してくるミュンヘンのWINTER&WINTERリリース01年作。エレクトリックもアコースティックもやるトリオ編成です。リーダーのユリ氏、この直前にはTHE ROOTSのドラマーなどと共演した作品も出してるようで。こちらは完全人力・暗黒クラブジャズ/ドラムンベース/ジャムバンドな作風になってます。音楽性そのものをとって見れば世のエレクトリックミュージックのトレンドから5年分(当時比)くらい遅れてる気がするのはまぁ〜置いとくべきなんでしょか。SQUAREPUSHERやWAGON CHRISTもこんな感じのことやってた気が。とはいえワザ的にはアホかってくらい凄いですし、最先鋭じゃないってだけで別に趣味が悪いということでもなく、ジャズ的視座から見るアヴァンジャズとしては全くもって順当なる秀作。特にこの異種エレメンツが交錯しながらアメーバのように展開していく大局観の巧みさは、ミクロでの神業ラッシュを当然のものとしてやってのけてこそ可能な境地ですね。あっ何か時々ギターレスになってからの54-71を思い出すような場面もありますよ。ともかく生で演奏される現場においては並々ならぬ温度のスリルが発生していることでしょう。そこを想像しながら聴けば大アリ。

  5月19日
本日の収穫はブックオフ池下店にて小田和正「OH! YEAH!」、CAL TJADER「PRIMO」。ココイチではロースカツ400gしか食うものがないと長年嘆いておったわけですが、大穴「イカフライカレー」に本日開眼して参りました。硬いのを噛むせいで食べ応えが増すだけでなく、イカ本体の味ってものがロースカツに比べて実は俄然シッカリしてるのが良いんです。しかもロースより50円安いときた。もう煮込みチキンや白身魚フライには騙されません。

【本日のレビューその1:小田和正「OH! YEAH!」】


250円で買える至宝!Yeah!ということでこれは買った方がいいです。"ラブストーリーは突然に"を含む91年作。恐らくジャズ畑の出でジュリア・フォーダムやダイアナ・ロスとも仕事をしているロビー・ブキャナン、そしてMADONNAやピーター・セトラなどの作品でギターを弾いて自身もGIANTというバンドを率いた、そうMEGADETHもプロデュースしたあのダン・ハフという豪華2名が参加してます!内容はもう特上のAOR。舶来品の模造みたいなインチキくささの一切漂わない、80年代CHICAGOやその他の華々しいメインストリームSSW達と余裕で肩を並べる完成度。直球でドロドロなのにやたらセクスィ〜な歌詞も全開、歌唱力は勿論何の問題もなく、とにかく強烈な翳りをもつ楽曲の訴求力の高さがものを言う。R&B消化系の人畜無害な産業フックじゃなくて、ルー・グラム(FOREIGNER)やSTINGのような何とも言えぬ翳りなわけです。異様なテンションで迫る"恋は大騒ぎ"なんて聴きながら正気でいられない。"春風に乱れて"はアレンジ変えりゃそのまんまスピッツか何かですよ。そしてラスト1曲前になってやっと歴史的キラーチューン"ラブストーリーは突然に"!ドラマのタイアップということを忘れても正真正銘の名曲でございます。当時出回った量が半端じゃなかったが為に現在の市場価格が大暴落しておりますが、中身は未だ堕ちぬ金字塔。買うしかない。

【本日のレビューその2:GOLDEN「SUPER ORIGINAL MOVEMENT」】


TRANS AMのメンバーを含むDCの4人組。LED ZEPPELINや初期RUSHのようなオールドロッキンテイストとモサモサした南国ノリを併せもつちょっと変わったバンドです。色んなものへのオマージュだけで成り立ってる感じはTRANS AM譲りですな。この盤(2nd)はSLOWDIMEリリースとあってかインスト多めで、ハードロック化したTHE SORTSてな趣きも。HIMやウィル・オールダムとも仕事をし、最近ではTHE MARS VOLTAのメンバーとなって宇多田ヒカルのアルバムでも叩いてたりする(!)ドラマーのジョン・セオドアが激ウマ過ぎてそればっかり耳が行ってしまいますけど、レトロックのカッコ良い響きを上手く現代風にトリミングするギタリストの腕もなかなか。ポストコアだと思って買うと何コレーという事態は必至ですので、そのへんのシーンを踏まえた上でそいつらが演奏するハードロックを聴くのだというつもりで接すれば最高。あと録音が最高。

【本日のレビューその3:CAL TJADER「PRIMO」】


73年作。この欄にも度々登場しているヴィブラフォン奏者です。ラテン系の名前ばっかりの大編成かつ70年代録音で電子楽器使用だったのでこれは期待が持てそうだと思って購入しましたが、やっぱりアイアート・モレイラとのコラボ作はアイアートが凄かったから凄かったのか。こっちはもっとお利口なラテンフュージョンに収まってます。しかしよくよく聴くと短いパターンのループ+奔放なアドリブという展開が頻繁にあり、同時期のマイルスなりハンコックなりの「酩酊するアブストラクト・ダンスグルーヴ」をこっそり意識したようなフシも窺えます。管楽器を要所にしか登場しない上モノ専門として扱って、もっぱらパーカッションとヴィブラフォン、エレピのポツポツした音色をメインに据えた上品かつ若干ラウンジーな響きがなかなか好ましい。これが希釈/変形されてB-52'Sみたいなのに繋がったのでしょうか。鼻につきかねないオシャレさとともに子供みたいな愛らしさ。

  5月18日
▼TARA JANE O'NEIL&MIRAH名古屋公演行ってきました。手短に。一番手のYO-MAはBUILT TO SPILLとKARATEとフィッシュマンズが好きそうという感じ。ジョークがいまいち分からず。二番手のOGRE YOU ASSHOLEは!良かった!!和ノリはナンバーガール風、退廃感はMODEST MOUSEを思わせながら、堂に入ったリアルさがあって見入ってしまいました。ギターヴォーカル氏はセーターを着ていた。ドラムの人が岡崎にいる大学の先輩に本当にソックリでそれもまた見入ってしまった。というか途中からその先輩が叩いてるつもりで見てた気さえします。今度のOWENの前座でもまた見れるわけですが、未聴でOWEN行くつもりの方は楽しみにしといた方がいいですよ〜。

▼メイン先手はタラさん。サポートのミギー・リトルトンはCANNIBAL CORPSEのTシャツを着とるではないか。しかも切り裂かれて縛られた女性の死体の局部に顔をうずめる死体男という最悪ジャケの3rd「TOMB OF THE MUTILATED」(名曲"Hammer Smashed Face"収録!!!)のを。ギター、鉄琴、サンプラー、その他を上手く使い回してはその場で巧みにループを組み、3人らしからぬ空間表現で魅せてくれました。終始ステージに照明はなく、プロジェクタで映し出されるスクリーンのビデオ(自作っぽい)がその代わり。そんで女性陣2名はタバコ吸いまくり。タラさん、火のついたタバコを右手に持ちながら普通にギター弾いてました…。私は座った場所が悪かったようで、ギターアンプの低音に6割方食われてしまってヴォーカルなんて殆ど聞こえず、何か消化不良のまま終わってしまった。

▼と思ったら同行した一般人が「全然わかんない、あんまり好きじゃない」との反応を示し、しかしそれもそうだなー、暗いしよく見えんしやたら神妙そうだし、とそっち寄りの心情も理解できて、人を微笑ませも踊らせもしない芸術表現の立ち位置って確かに難しいよなあと考えてしまいました。そのテンションで臨んでしまったミラーの方も、ずっと小声だなあとか、単純かつ根本的な感想を抱いてしまいつつ、乙女声で丁寧に歌われる楽曲の数々を普通に堪能もする。同じ得三で見たジェン・ウッドを思い出したりもしました。サポートというか相方のギター兼ドラム氏が、声を発したとき初めてギター兼ドラム女史であったことが判明しビックリ!短髪でちょっと二の腕余り気味のイケメンにしか見えません。マイナーなセクシャリティをお持ちの方なんでしょうか。

▼結局やる方も見る方もいまひとつガーッと上がりきらぬまま静かに終了し、アンコールも起きず。今日のベストアクトはOGRE YOU ASSHOLEだったと思った人もいたことでしょう。それくらい良かったのか、メイン2組が低調気味だったのかよく判りません。同じSSW+αという編成でもっと大衝撃が走ったジュリー・ドワロンや二階堂和美はやっぱり別格だったのだなあなどと再認識するという結果になってしまいました、個人的には。総じて悪かったということではないんですけどね全然。むしろ別の問題で、得三で椅子ありのライブで盛り上がったためしがないって気もしますな。こういうしんみり系こそ切迫感のある立ち見かカノーヴァンくらい狭いとこで見た方が良いに違いない。あとMCでネイティヴのスピードでぺらぺら英語を喋って、反応しようもなく無言な会場に対してハァ〜みたいに半ば呆れたような態度を取られるのは、よくあることだけど好きじゃないですね。反応しなくちゃと焦って余計どうしようもなくなるし、嫌な気分にさせたんだなって思って更にテンション下がるので。あれでフロアとステージの距離がより広がってしまったのは確かだったと思います。残念。

↑タラ&ミギーの影

↑ミラーとサポート女史

収穫はなし。物販にて、CDは買わずKのTシャツを買いました。これが非常にナイス!

【ライブリポートを取り急ぎアップロードしたかったということで本日はレビュー休みます。後日複数枚ドバッと。】

  5月17日
▼最近届いたコンデンサマイク用にケーブルを買おーうと思って昨日コメ兵6階の楽器屋に出向いて、AUDIO TECHNICAのキャノン/キャノンケーブルが約2500円、CANAREのキャノン/標準ケーブルが2000円弱、まあ僅かな差だけど安いCANAREでいいっしょということでそっちを買って帰りました。今朝わくわくしながら結線し、コンデンサパワーを確認しようとゲインを上げても、マスターを上げても、音は出ず。プラグがキャノン/キャノンじゃないとファンタム電源が供給されないということをスッカリ忘れてたのに数分後気付き、屈辱を味わう。本日の収穫、サウンドベイ金山にてDOUG SAHM「GROVERS PARADISE」、KATAKLYSM「THE TEMPLE OF KNOWLEDGE」(2003年)、CARGO CULT「STRANGE MEN BEARING GIFTS」(THE JESUS LIZARD〜DK3のデュアン・デニソン在籍!86年TOUCH & GO!)。あと石橋楽器でHEXAのキャノン/キャノンケーブル。

【只今のBGM:DOUG SAHM「GROOVERS PARADISE」】


テックスメックスというですか、色々と細かい分類がありますわな。メタル界でいうヴァイキング・ブラックくらいの感じですかね。レコスケファンには「底ヌケ盤」のくだりで有名なダグ・サームの74年作。カントリーやブルーズ、R&Bなどが渾然一体となりつつ、たまにSANTANA風のパーカスが効いたダウンビートチューンも混じる、概ねスワンピーな感触の底ヌケ・アメ・ロックになっております。爽やかハスキーヴォイスで暑苦しくならんのがいいですね。みんな円くなって録りました的なコーラスや時折挿入されるホーンセクションも実にほのぼの。何かMONEY MARKやGALAXIA一派を聴いてるかのような、半歩退いた対象化感というかとにかく身軽な感じがあって、どっぷりフォークしてる人のまどろっこしい熱さとは無縁。イマドキの耳で全然涼しく聴けます。これはいいアメリカです。

  5月15−16日
収穫はなし。クレジットカードを紛失しました…自室で。10日夜に通販の手続きのために手に取ったのは確かで、12日に部屋の大規模な整理整頓をして、その時どこかに行ったのか。特定のエリアにあるはずの物を何時間も探すほど不毛な時間の使い方はないっす。整頓したばっかりだから何の思いがけない物も出て来んし。携帯が見当たらないときみたいにそいつに電話かけて鳴らしたくなります。

【只今のBGM:MASTER'S HAMMER「THE JILEMNICE OCCULTIST」】


昨日久々にちょっと聴いて改めて愕然としたので。知る人ぞ知るウクライナのスーパー・ヘボ・シンフォニック・デス。92年のこれ1stですかね。リリースは今や名門のOSMOSE。「TO MEGA THERION」〜「INTO THE PANDEMONIUM」期のCELTIC FROSTのような荘厳かつオーケストラルな世界観をより過剰にしたものをベースに、デスメタリックなリズムやリフも導入して見事前衛アートと化したユニークな音楽性…と言えりゃいいんですが、いかんせんドラムは打ち込み、豪華げに入ってるティンパニやストリングスもシンセ感モロ出し、ヴォーカルは死にそうな加藤茶みたいだし、そのへんのチープさも相俟って何とも強烈なカルト臭を振り撒いております。三柴江戸蔵が加入した空手バカボンが妄想でデスメタルやってる感じというか。そう思うとこのひ弱なデス声もおーつきモヨ子に聞こえてくる。にしても92年にしてこの徹底したデスメタルのツール化および本格的な有調指向はやっぱり他に例を見ない気がします。これをもっとまっとうかつストレートにやったらSENTENCEDの名盤「NORTH FROM HERE」に近いものになっていたんじゃないでしょうか。CELTIC FROST発展型といえどTHERIONより遥かにスケールでかいですし変態です。類稀なナゴム系デスメタルということで珍重しましょう。

  5月14日
収穫はなし。近所のデイリーヤマザキがいつの間にか宮本むなしになっててショック。あの下世話なまでにデカイ看板と「今日もむなし、明日もむなし…」というオバチャン声の無限リピートMCを引っ提げてどこにでも出現する宮本むなしの店舗の増やし方はなんか「進出」というより「侵食」ですな。早く吉野家に牛丼が帰ってこないかね。

【只今のBGM:CARBONIZED「DISHARMONIZATION」】


炭化した!ってバンド名がいきなり果てしなく微妙ですな〜。スコッグスベルグ工場発の90'sマイナー北欧デスバンドの多分1st(93年)。リリースはCROWBARがいたPAVEMENT MUSICから。これは衝撃的ですよ。とりあえず1曲目から後期DEATH ANGELが映画のサントラを手掛けたかのような意味不明のインストで、次から気を取り直してメタルリフがズガーッと炸裂するかと思いきやVOIVODを30倍スカスカにしてCELTIC FROSTとATHEISTを足したような2曲目。なーんだこれ!その後からようやく歪んだギターとデス声(時にブラストビートも)が登場しますが、やっぱりずっと異様。基本的には「NOTHINGFACE」期VOIVODの変拍子突発展開&スカスカアレンジをデフォルメしてパクりながら、もっと人を小馬鹿にしたような迫力のないリズムパターンを多用し、同時期のENTOMBEDみたいな大味ロッキンなパーツも何故か組み入れるわで、もう全然訳わかんないっす。プログレッシヴというより完全なる破綻。THOUGHT INDUSTRYの2ndに似た真性ジャンクな鵺(ヌエ)感がありつつ初期MISANTHROPEくらいメチャクチャ。途中MEAT PUPPETSみたいなカントリー風展開もあったが正気か!?しかも気がつきゃ半分くらいがインスト。ある意味予定調和的奇天烈さともいえる昨今のケイオティック系(THE DILLINGER ESCAPE PLANとか)なり初期ボアダムス借用系(FANTOMASとか)と違って本当に一切読めないのが怖い。まっとうな感動はないですが、紛れもなく稀代の奇盤といえます。これは本物。COLOSSAMITEもAKSAK MABOULも超えてます。

  5月13日
本日の収穫、御器所SOUTH OF HEAVENにてMANNHAI「THE SONS OF YESTERDAY'S BLACK GROUSE」「EVIL UNDER THE SUN」(ex.XYSMA)、同HOLY HOUSEにてCARBONIZED「DISHARMONIZATION」。あと石橋楽器の通販で注文したコンデンサマイクと4トラックミキサーなどが到着。これでドラム録りも近場のスタジオで出来ます。自宅での小声歌録りやアコギ録りも多少はローノイズでやれるようになりますな。

▼夜は大学のサークルの先輩がやっているタムラジオにギター漫談で少し登場。全然ダメななりきりジョニ・ミッチェルで頑張って参りました。掲示板に書き込まれるリアルタイムでの反応を見ながら次の瞬間やることを決めるってのは面白いですね。おおインプロヴィゼイション、コールアンドレスポンス、シンガロング、ウィーロォォァック!!今月のDIO来日は皆様行かれますか?一緒についてくるSPIRITUAL BEGGARSは別に興味ないので個人的にはチケット割高感ありすぎなんですがロニーも大概じいちゃんですから未だ揺らいでおります。クレイグ・ゴールディーかぁ〜。(以上ラジオ的クロスフェード展開)

▼以前にもここで刊行の旨をお知らせした、私も執筆させて頂いている自主制作のレビュー雑誌MAG FOR EARS第1号が晴れて通販可能になったとのこと。リアル在庫あり店舗も東京方面に広がったようで、高円寺円盤なんぞに己の文章が横たわってるとは何とも感慨であります。是非とも1冊、と言わずお土産に2・3冊、ご購入をば!

【只今のBGM:GRENDEL「SCHOOL VEHICLE」】


昨日からDC続きで。THE BETTER AUTOMATIC、LANDSPEEDRECORDなど、心和む良質B級ポストコアバンドを密かに輩出するマイナーレーベル・RESINからの刺客です(といっても96年作)。基本的にはモロFUGAZIなのですが、普通にちょっとヘタである上、ギターの歪みにしろヴォーカルにしろ明らかに確信犯と思えるヘタレ(not不真面目)・ヴァイブスがあり、プロダクションはポコポコのスカスカ。いやーこれがいいんです実直DIYな感じで。HELLOWEENになれなかったNOT FRAGILE、GENESISになれなかったACQUA FRAGILEのような、そこにしかない情緒が確かにあります。このバンドの2ndを既に持ってるんですが、ここでの作風に更にノーマルロッキン・テイストが加わり一層ダメダメ感が増して最高の内容になってます。廃墟と化したサイトを見るに恐らくレーベルはもう動いてないっぽいので、入手困難になる前にRESIN買い、オススメです。

  5月12日
収穫はなし。先日、物置きの奥から、中学時代に技術家庭科の授業で作らされたショボい本棚が数年振りに現れ、勿論本棚として敢えて使う意味は全くない代物なので捨ててしまっても良かったんですが、一瞬にして閃いてベンリな多段収納君になってもらいました。

6面体の上面と手前面が空いてるつくりのを上下ひっくり返して、天板と化した底板の上に物を置いております。いい感じ。

【只今のBGM:MARY TIMONY「EX HEX」】


SLANT6のメンバーと絡みがあって90年代中頃にはHELIUMというバンドを率いたというメアリーさんのソロアルバム。FARAQUET〜MEDICATIONSのデヴィンがドラムおよびベースで全面参加のデュオ体制であります。楽曲の共作もしてるということでファンは買わないわけにはいかんですね。ブレンダン・キャンティ&ドン・ズィエンタラ(読み方あってるのか?)による録音で、ドラムの一撃がドッパドッパと重くギターがやたら生々しいFUGAZIの近年作のようなプロダクションに。作風はTHE EVENSとTHE CARIBBEANとBELLINIの間みたいな、そこはかとないナンセンスなラウンジ感とアルビニプロデュースでもいけそうなササクレ感を同時に漂わせつつ二人組生バンドという枠組み内で最大幅の表現を敢行するアートとしてのポストコア、という感じ。随所にデヴィン節が効いてまして、脳内で声をすり替えれば裏MEDICATIONSとして楽しむことも曲によっては可能。SMART WENT CRAZY時代も専任ドラマーだっただけあってやっぱり上手過ぎです。あれだけのギターを弾く人ですからドラミングに関してもまずアイディアの豊かさが凄い。テクは当然。あーこの7曲目とかMEDICATIONSで普通にやればいいのに!EUPHONEファンにとってのHEROIC DOSESのような盤ですな。

  5月11日
収穫はなし。満腹で寝れません。さっきテレビで磯山さやかが茨城弁バリバリで喋るのを見ましたが、それが想像を絶するハードコアさでビックリしてしまった。同じ年頃の若者で比べれば名古屋弁なんて全然大したことないじゃないですか。それでも名古屋弁が首都圏民から揶揄される理由はやっぱり、名古屋そのものが中途半端だからなんでしょうね。大阪まで行ききらない距離の、名所といえば無理矢理挙げても城か大須くらいの、その割に人口200万の、やけに異文化の、要は都会のバッタもんともいうべき佇まいに映るんでしょう。いやーその通りですよ。風情は薄いし機能性も劣るがそこそこ文明的な生活を快適に送るにはいい所だと思います。要所をシンプルに結ぶ市営地下鉄、ユニオンより広々として試聴も出来るバナナレコード。何事も中庸ですよ中庸。と言いながらDIE APOKALYPTISCHEN REITER最高と抜かす私の言うことに信憑性はありませんなー。

【只今のBGM:IDAHO「ALAS」】


有名レーベルとも絡まず、名の通ったミュージシャンとも関わらない、孤立系老舗スローコアとして個人的に名高いIDAHO a.k.a.ジェフ・マーティン(RACER Xの人とは同名異人)の98年作。バンド名でアイダホ!と言い切っちゃうとこが凄いですが、このアルバムタイトルも、途中で切れてるもののアートワークから察するに「ALASKA」ですね。それが内容にどう反映されてるかは不明。作風としては以前紹介した作品とそう変わらず、若干しんみり寄りにシフトした程度。しかしここでは地味に木琴とかオモチャのラッパみたいなのとか、趣きのある各種小道具で細部まで丁寧に仕立ててあって、あらまー!と小さく声をあげたくなるようなつつましい感動が詰まっております。普通に曲のツブが大きめな気もする。インディロックのインディっぷりを必要充分な表現手段としてすっかり血肉化し、あとは素直に良い音楽を作ってるだけという感じが伝わってきて非常に良い。清々しい。PEDRO THE LIONとか実はちょっと胡散臭くねーか?と訝しむような向きには自信をもってお勧めします。

  5月10日
収穫はなし。「連休どっか行った?」を絶対自分から言わないのが最近の趣味です。未聴CDがたまってるので今日はレビュー責め。

【本日のレビューその1:THE CRANIUM「A NEW MUSIC FOR A NEW KITCHEN」】


HOOVER関連人脈を中心に地味なリリースを続けていたSLOWDIME(最近は開店休業状態に近いっすね)から1枚だけ出しているバンド。これが見事に全編hentaiです。激変拍子ビーフハート、バラバラ死体のGONG、オカマのあぶらだこ、悪夢のPOP GROUP、「出来るだけ気持ち悪くして」と頼まれたフレッド・フリスもしくはRUINS、骨という骨を抜かれたVOIVOD…てなとこでしょうか。よくある嫌がらせポストパンクおよびその亜流とは一線を画するプログレ〜フリージャズ的壮絶展開スコアの嵐に絶句。SLOWDIME的にも相当異色だと思います。ALL SCARSとかに似るでなし。アヴァンギャルドなるものをポップさの下位パーツとして飼い慣らすことなく、あくまで真摯な芸術表現として敬意をもって挑みかかる(割に笑わせどころはわきまえてくれてる)ような姿勢はSKIN GRAFTノリですね。FANTOMASあたりよりよっぽど真性の狂気を感じる。

【本日のレビューその2:CURSIVE「BURST AND BLOOM」】


チェロ奏者が加入して話題になった2001年の5曲入りEP。リリースは変わらずSADDLE CREEK。エモというにはちょっとアーティスティック過ぎるアレンジや語り口が賛否両論を呼んだわけですが、いやー別に曲自体はそう変わってないと思うんですな。もともとTHE GET UP KIDSとかBRAIDとかとは毛色の違うドラマティックさをもったバンドだったし。若者の熱情発散音楽のネクストステップをひねり出そうと、ロックの範疇において自分達なりのアダルトなディープさを掘り出してみた習作ってことで、結果的にMARS VOLTAあたりと近い方向を見る作品になってる気もします。ファンの不慣れゆえのみによって敬遠/過小評価されてしまったなら残念。この暑苦しくて若干ナル気味なヴォーカルにチェロを絡ますアイディアは全然悪くないというか、CURSIVEだから上手く行ったというくらいシックリ来てるんですけど、私がおかしいですかねー。

【本日のレビューその3:BOBBY HUTCHERSON「THE KICKER」】


63年。表題曲はジョー・ヘン作で、こちらが同タイトルの本人リーダーアルバムより4年早い初演。どっぷりモーダルってことは全然なく、大筋でクールなハードバップに落ち着いてます。この人のヴィブラフォンは、ミルトほど派手な表情の上がり下がりがないものの、逆にそういう堅・シブなムードにマッチしてるので良いかと。全6曲中後半3曲のみグラント・グリーンが参加してまして、曲調も含めて一気に日本人好みのドロッと感が加わります。というかソロのバッキングも殆どピアノだし、割とリーダーの影が薄い出来かも。バリバリの新主流派はおろかヴィブラフォン・ジャズすら期待すると肩透かしにあいかねないので注意です。出来自体は全然OKなのですが。ラストのデューク・ピアソン作"Bedouin"だけは唯一エスニック・モード全開時代のコルトレーンを彷彿とさせるナウい(当時)雰囲気でオッ!?と思う。

【本日のレビューその4:DOKKEN「BREAKING THE CHAINS」】


83年1st。もっぱら作曲を担当し自らのファミリーネームをバンド名にまで冠すドン・ドッケン本人がメンバー4人の中で一番しょぼいという衝撃的なLAメタルの代表的バンド。ヴィブラートのかからない細いハイトーンでJUDAS PRIESTのミッド〜スローナンバーをポップにしたような曲を連発するという基本的な体裁はこの頃から既に確立されております。どちらかと言えばRATTやMOTLEY CRUEみたいな浮ついた一派と同じにまとめられがちな割に、比較すると随分メタリックなクドみが強く、VAN HALEN以降の系譜からはかなり外れる気が。むしろWASPやTWISTED SISTER寄りな感じさえします。そこをドンのヤワい声が中和したから売れたんですな。あとジョージ・リンチというエキセントリックな人材との対比がまた良かった。バッキングもソロもただ上手いだけじゃなくて一味違いますこの人。アルバムとしては、スマッシュヒットを飛ばす程のインパクトをもった曲には欠けるものの、正にメタルがオーヴァーグラウンドにのし上がろうと勢いづく空気感をよく閉じ込めた内容になっておると思います。

  5月9日
▼炊飯器で米を炊く程度のことを失敗してしまって不甲斐ない今日この頃の本日の収穫、相互リンクして頂いてるハイパーイナフラジオの出口さんがちょっと前に遂にオープンさせたオンラインショップHYPER ENOUGH RECORDSSHIPPING NEWS「FLIES THE FIELDS」、GRENDEL「SCHOOL VEHICLE」(DCの良心レーベルRESINリリース!!!)、ROUTINEERS「ROUTINEERS」(THE MOST SECRED METHOD、OSWEGO、BEAUTY PILLのライアン・ネルソン!)、ONE LAST WISH「1986」(pre-FUGAZI!!)、THE CRANIUM「A NEW MUSIC FOR A NEW KITCHEN」(SLOWDIMEインテリフリークアウトポストHC!)、GOLDEN「SUPER ORIGINAL MOVEMENT」(SLOWDIME、TRANS AMのメンバーら在籍!)、それとCROSSED OUTのTシャツ(かっこいい!)。基本的に在庫のあるものだけが注文出来るシステムなので、オーダーのメールを出せば対応は超迅速、昨日(日曜にも関わらず)頼んで今日届きました。1万円以上で送料&代引手数料オマケサービスもあり最高です!なかなか買えないSLOWDIMEのCDなんかも置いてるし、今夜は在庫リストをなめ回すようにチェックしてみて下さい皆様。

【只今のBGM:SHIPPING NEWS「FLIES THE FIELDS」】


ジェフ・ミュラー&ジェイソン・ノーブルの元RODAN組がやっているルイヴィルポストコア純血バンドの、今年リリースしたての4th。案ずるまでもなくいつも通りの暗黒節でございます。JUNE OF 44なんかは結構独自の音楽的拡がりを見せておりましたが、このバンドはとにかくSLINT「SPIDERLAND」の音をストレートに継承するのみですね。DINOSAUR JR.がほぼ後期HUSKER DUそのまんまのことをやり続けながら誰にも文句を言われなかったように、SHIPPING NEWSもまた紛れもない本物としてもはや揺るがぬ地位を確立してる感です。全員貫禄の演奏してますが特にジェフのポスト・コワモテな囁きヴォーカル(若干アルビニ似)はホント突き刺さります。こえーよー。PARADISE LOSTやANATHEMAすら上回りかねない、ベトベトした悲壮とは違った殺気立つネガティヴ・エネルギーの渦。むしろ漂う空気はART ZOYDとかの方に近い。目新しさはないが「普通に良い王道」の域まで行ってしまいました。ずっとこのままでIRON MAIDENみたいに地道にやってもらいたいもんです。ボブ・ウェストンによる録音も最上級の出来で素晴らしい。

  5月7−8日
▼7日は卒業した大学のサークルの定期ライブに顔出して、打ち上げに紛れ込む。ここぞとばかりにCD売る自分。

▼8日は大CD裁判ののちバナナ本店へ赴いて7〜80枚くらい大放出。これメールマガジンで「エモ&メタル大量入荷あり。」みたいに書かれるんだろうかってな量。バナナのメールマガジンはそういう半ばタレコミ的入荷情報があるんで侮れませんよ、ここで即登録!手土産に携えていったCEOとドイモイのCDを店内で流してもらっていたときにちょうど外国人のお客さんがいて、一人で勝手に背中に汗かいてしまった。英詞は極力もうしません。

本日8日の収穫は本店にてBOBBY HUTCHERSON「THE KICKER」(リマスター)、DOKKEN「BREAKING THE CHAINS」(1st!)、HOELDERLIN「HOELDERLIN」(ジャーマンプログレ2nd!)、STIFF SLACKにてTRAINDODGE「UNDER BLACK SAILS」、MARY TIMONY「EX HEX」(FARAQUET〜MEDICATIONSのデヴィン全面参加!!)、バナナ栄店にてKANSAS「MASQUE」「POINT OF KNOW RETURN」(ともにリマスター!)、CURSIVE「BURST AND BLOOM」(2001年)、HOOVER「THE LURID TRAVERSAL OF ROUTE 7」(リマスター買い替え)。寝耳に水過ぎて結局行けずじまいでしたが、P-CAN FUDGE藤ヶ丘店が本日をもって撤退だそうですね…!

【本日のレビューその1:TRAINDODGE「UNDER BLACK SAILS」】


7月に日本ツアーも決定しているTRAINDODGE、方々で評価の高い傑作2枚組3rd「THE TRUTH」に続いてのEPがリリース元のstiff slackにて先行発売!ポストコアに染まりつつKING'S Xとジョン・ブッシュ加入後のANTHRAX(ジョーイ時代もですけど)をこよなく愛し続ける私にとって、このバンドがいかにツボか、それはもう筆舌に尽くし難いのでありますが、この5曲入りEPも「THE TRUTH」と全く同一路線の超弩級豪腕パンチなダウンチューニング・屈折ヘヴィグルーヴ・翳りの男気・ロォォオッック!!!に仕上がっておりまして当然最高です。この6弦Eを越えた世界だけに展開し得るアドバンストなコードワーク、噛んだら歯が折れそうなくらいに硬いリフとタメ張って気を吐くヴォーカルのアジテイション、休符の無音すら死ぬ程ヘヴィに聴かせる重圧コントロールと、全てが完璧なんですけどどうしましょうか。スローダウンしたスラッシュメタルからヘヴィネスのみを抽出していたオルタナ勢とポストオルタナ時代のメタル勢とがさりげなくクロスオーヴァーしていた90年代中盤の空気をまといつつも、21世紀型といえる現役の説得力を備えた、稀有な逸材として見事に大成してくれました。この勢いは大いに伝播するでしょう。身内ともいえるRIDDLE OF STEELへの感化だけでは終わらないはず。全員即買い!

【本日のレビューその2:KANSAS「MASQUE」】


おおこれぞプログレハード。"Carry On Wayward Son"収録のヒット作「LEFTOVERTURE」(これより良いアルバムいっぱい作ってると思うが)の次とあって、そこで掴んだファンを離さないべくノリノリロッキンなノーマル・アメリカンロックに接近しつつ、プログレの名残りっぽい鍵盤がまだふんだんに使われてて産業ロックと言い切るには中途半端なアート性を残した作風。この時期のこういうバンドの、持ち前の進歩的な創造意欲(の惰性で続投しそうになる変拍子・変則展開・アレンジワークその他)と時代に押されてのコマーシャル性との折り合いのつけ方、あるいはその失敗のしかたが、バンドによってホントそれぞれなので興味深いんです。KANSASの場合は歌も上手いし割とスンナリ垢抜けに成功した方ですね。むしろソツなく行き過ぎて面白くないくらい。ロッキン&ブルージーか、クラシカルでテクニカルかのどっちかで、私がもっぱら聴きたい"Song For America"や"Point Of Know Return"みたいな揚々とした感じの曲の方がむしろ例外的なようです。プログレ然とした曲もあるけど、変拍子化したALLMAN BROTHERS BANDというか何というか…あファンはそこがいいのか。とにかく最初から「あくまでプログレ風バンドである」という認識でかかるのが大事かと。そしてこの作風はSPOCK'S BEARDなどに受け継がれる。私はやっぱRUSH〜GENESIS派です。

  5月6日
収穫はなし。嫁いだ姉が今ちょっと体調を崩しているらしく、より会社に近いウチにここ数日戻り中で、しかし大人しく寝るのもすぐ飽きて旦那さんが持ってきてくれたプレステ2移植版ドラクエVにひねもす興じております。いい大人がドラクエかよ…と冷ややかな目で見てたんですけど、レベル30くらいまでひたすらやり込んだところで「行き詰まった。妖精がいる沼地というのを探している」などと言いながら何だかボケボケと効率悪くさまよっているところをとうとう見かねて私がコントローラーを奪取、地図を頼りにまだ行ってない土地にバシバシ上陸し、なんか関係ない塔ひとつ制覇してマグマの杖とやらまでゲットしてしまった。いやあ面白いですねードラクエ。

【只今のBGM:ANEKDOTEN「NUCLEUS」】


実はあれイケてたんじゃないかと唐突に思って聴き返したくなったシリーズです。ひしゃげベースとメロトロンが躍る、絵に描いたようなダーク&叙情クリムゾン・サウンドを引っ提げてスウェーデンから登場したバンドの95年2nd。メタル〜プログレ畑からの評価はもっぱら「完成度は高いし、オルタナティヴなアプローチにも意欲的だが、いかんせんレプリカの度が過ぎる」といった感じだったように記憶してますが、これ今GSLや54-40 OR FIGHT!から出てりゃ神扱いですわ。サックスこそいないものの狂暴変拍子と泣きのスロウパートの対比はSWEEP THE LEG JOHNNYを凌がんとする程、流行りの変態エレピもガンガン入ってMAKE BELIEVEやPIT ER PATを10年先取り、溢れるプログレ愛はTHE FLYING LUTTENBACHERS以上。これをクソ真面目な顔してやるかうんこぴょーんと言いながらやるかの違いだけですねもう。確かにクリムゾンには似てるし似せてるフシもバレバレなんですが、今様(いまよう)を踏まえた上でちゃんと元ネタを対象化出来てる気配が感じられるのでまあOKです。プログレじゃないつもりで聴けば普通に楽しいし物足りないこともなし。

  5月5日
▼5時55分に何かしましたか?本日の収穫、今池グレ・ヒにてLITTLE WINGS「MONDERUE」(カイル・フィールド!K!)、MICROPHONES「DON'T WAKE ME UP」(フィル・エルヴラム!K!)、IDAHO「ALAS」、THE METERS「ZONY MASH」。Kまとめ売りの形跡ありました。

【只今のBGM:THE METERS「ZONY MASH」】


シングルその他のレア音源を集めた編集盤とのこと。などと知った口を叩きつつワタクシ初METERSですが。MEDESKI, MARTIN & WOODほかニッティングファクトリー系(ウェイン・ホーヴィッツがそのまんまZONY MASHっていう名義で出してたこともあった)、LOS LOBOSやMONEY MARK、更にはDUB NARCOTIC SOUND SYSTEMやSEVENS(pre-THE SORTS)みたいな畑違いの人達にまでまず間違いなく影響力絶大な、シンプルでユルいファンク〜ジャムバンド・サウンドをやっておるわけですな。職人技をあくまで堅実に使ってスキマを多めに取るゆったりリズムセクション、その上のワウ・ギターとファーフィサ・オルガンの絡みもまた静かにカミソリ。ハンコックの「HEADHUNTERS」とかよりグルーヴがべたーっとしてるというか、浮き足立ってない。パイオニアのくせしていきなり達観したシブさを手に入れていたようです。1曲1ネタ、宿命的な慢性リピート感、ロービットに見せかけて冴えまくるリズム等、つまるところAC/DCやなあ〜とどうしても言いたい。メタラーとして。

  5月4日
収穫はなし。ミス・ドの会計如きのしかも何故か一度小計が出た後にコッチが金払うまでに4分も5分も待たせる壮絶な店員がいて驚いた。ファイアー!アットワンス!人間を4種類くらいに分けたら私はチャック・シュルディナーのいる側だと思います、でもジーン・ホグランを切るこたしませんな。アンディ・ラロックとスティーヴ・ディジョルジオとのあの布陣だったらね、私なら一生幸せですよ。

【只今のBGM:KIND OF LIKE SPITTING「NOTHING MAKES SENSE WITHOUT IT」】


これもそろそろいいか…と売りレコ裁判の壇上に乗せられかけたものの、今一度聴き返してみたら余りのエモさにびっくりしてやっぱり無罪にしてしまいました。何枚目かわかりませんが99年作。しゃがれとヨレの紙一重の中低音ヴォーカルはちょいOWEN似で、曲調は初期デスキャブをヘタらせたようなSSW〜スローコアタッチ。そのつもりで聴いてると、途中時々暴れディストーションな激情リフ(って書くと語弊ありますが他に形容しがたい)が突然ズゴーッて来て、歌も火事で全焼の勢いの家に取り残された恋人に向かって絶叫するボブ・ナナの様相(?)に変わり果てるので全くもって侮れません。この振れ幅の凄さはTHE WHITE OCTAVE(CURSIVEでもいいけど)やMINERAL超えてますね。メインのギターヴォーカル氏だけの頑張りじゃなくてグループ表現としてガッツリ盛り上がるのがいいです。ナイスチーム。その点BARSUKに移ってベン・ギバードが全面参加した2002年作(そういえばそれの内ジャケに「チャック・シュルディナーに捧ぐ」と書いてあった)では、洗練と引き換えにこの抑えが効かないまでの純なエモさは若干犠牲になってた感があったなあ。少々形が悪くとも気合度で俄然勝るこちらをお勧め。

  5月3日
収穫はなし。本当に微々たる規模のものですけど隠れ水虫持ちです。日記見ても伝染りませんから、大丈夫ですから。

【只今のBGM:ORNETTE COLEMAN「DANCING IN YOUR HEAD」】


言わずと知れた73年作。ハーモロディック理論とは何かという話は各々ググッて頂くとして、ウーンこれは凄い(向きはともかく絶対値が)ですね、スラッシュメタルが壁を越えてデスメタルまで進んだときの「確かに凄くはなったが、これはもはや音楽か…」という感慨にも似る"やってしまった感"ありありです。牛心臓隊長そのまんまのフリークアウト狂宴ジャンクの手法をフリージャズにブチ込んだ上、オーネットがもともと持っていたユーモラスなリズム感覚をフュージョン〜ファンク風ビートにがっちりリンクさせ、結果AMON DUULはじめジャーマンロック勢のようなナチュラルトリップの原始憧憬サイケデリアとは似て非なる、人智によって発明されたケミカル系ハードドラッグ・サウンドに到達。放っておけば自傷行為にも走りかねないような危険なハイテンションがもはや怖い。なまじ断片的な語彙だけは自分らと共通してて、それをオーガナイズする頭が完全にトンでるからこそ真の恐怖(と紙一重の悦楽)をもたらす、真性電波または廃人のうわごとの音像化。現代音楽方面からのこういうアプローチがこの頃までにどれだけ実践されていたか知りませんが、こちらには公に広くショックを与えるだけのポピュラリティがあったはずという点で、この(及びこの時期の)作品がもった歴史的意義は計り知れないことでしょう。THE POP GROUPもFRIEND ENEMYもZAZEN BOYSもここからのおさがりを絶対頂戴してるはずです。

  5月2日
収穫はなし。列挙した者勝ち。

▼本秀康の新刊2冊を買った。これから読む。

▼帰り際に肩つかんで愛を告げろと言うのに、後輩は「いや、メシに誘ってそこで言う」と断固譲らない。相手は今のところ好感触寄りのニュートラル、しかも一ヶ月後に大阪転勤が控える身。どう思われますか世の女性?

▼カトマン氏が「リアクション求む」を常々繰り返すのも判る。実は凄く何にもならないことを必死でやってるんじゃないかという気になることがある。掲示板でもメールでもご自分のブログでも、いいことも悪いことも量の多少も関わらず、CD手にした方は軽くリアクション頂けると励みになります。

▼私がいくつかレビューを書かせていただいたMAG FOR EARSがついに刊行。己の拙文を活字で見る感動。YO。現時点では関西の限られたリアル店舗のみで購入可能とのことですが、通販可能になった際には是非一部、よろしくどうぞー。googleとアマゾン(試聴目的)片手に読めば3連休も余裕で潰れる充実の内容!メーン!

【只今のBGM:TRIOSK「MOMENT RETURNS」】


ヤン・イェリネックとの共演盤が素晴らしかった三人組の単独フルアルバム。リリースはMANITOBAがいるLEAFです。ジャズバンドの体裁で人力エレクトロニカみたいなのに取り組む人達といえばTIED + TICKLED TRIOあたりが思い浮かびますが、そういった「現代的エレクトロニクス/エディットも交えた前衛ジャズ」ではなくこちらは「体張ってジャズ風サンプルネタを実演する音響ポストロック〜エレクトロニックミュージック」になっております。構造自体に関わるアイディアが広がらず結局リズム強調&エスニック化の一途を辿ったHIMなり、人力和みエレクトロニカ風になってみたものの別にやってることはPELEやC-CLAMPみたいなのと変わらない凡百の元ポストロックバンド達なりを、実に鮮やかに出し抜くカッチョイイ内容ですね。ミニマリズムに食われず常に豊かな色彩を保つ高い演奏能力もひたすら見事。SAVATH+SAVALASの1stより親切、TORTOISEよりフレンドリー、しかも下世話にはならずに、ジャズらしいオトナの味わいを壊さないまま音響的チャレンジに貪欲な若い層にもがっちりアピールする理想的な出来になってると思います。

  5月1日
本日の収穫FILE-UNDERにてPIT ER PAT「SHAKEY」、TRIOSK「MOMENT RETURNS」。昨日のstiff slackに続いてCDを売り込みに突撃して、またも快諾頂きました。私関連ドンドン売り出し中です、よろしくお願いします!

【只今のBGM:PIT ER PAT「SHAKEY」】


NEUTRAL MILK HOTEL(ELEPHANT 6異端の激ローファイインディフォークバンド!)の元メンバーがいるというバンドの今年出た最新作。昨日書いたEUPHONEもそうですが近頃のシカゴにはMAKE BELIEVEみたいな感じが伝染してるんでしょうか、このバンドもエレピを多めにフィーチャーしつつダカダカ鳴る変則ドラムと素っ頓狂歌メロでアヴァン・ニュースタイルをあっさりこなしてしまうツワモノです。時に派手に瓦解するリズムは2ndの頃のドンキャバすら彷彿とさせ、女性が歌う曲はさながら悪夢の中で聴くBLONDE REDHEADもしくはBEAUTY PILL。SLAPP HAPPY的な喜劇風コケ・テイストも確かにあってもう何か楽しいばっかですね。プログレッシャーの時代がやっと来たかと。リズムの大胆さがその他の小難しい細工より前に出てるので、どインテリな割にフィジカルなアタックが直で来るのが良いじゃないですか。新しい変な音楽がいっぱい出てきて幸せ。

最新に戻る 他の月の分を見る
 
トップページ サイト入り口へ
情報と音源公開 制作活動
管理人のことなども このサイトに関して
リンク 冒険
いつも独り言 掲示板(hosted by Rocket BBS)
サイト内検索(google) 不完全
since 07/04/2002    copyright (c) Sugiyama
inserted by FC2 system