物色日記−2005年9月

※頻出語句解説はこちら
  9月29−30日
▼29日は収穫なしで、本日30日の収穫、バナナレコード全店バーゲンということで出向いたジャズ・シンでTIM BARNE「FRACTURED FAIRY TALES」(89年、WINTER&WINTER再発!)、CECIL TAYLOR「CONQUISTADOR!」、THE VANDERMARK 5「SINGLE PIECE FLOW」「TARGET OR FLAG」「SIMPATICO」「BURN THE INCLINE」(ATAVISTIC)、本店でTONY BANKS「A CURIOUS FEELING」(GENESISのキーボーディストソロ!)、ART BLAKEY「THE AFRICAN BEAT」(ユゼフ・ラティーフ参加)。

【本日のレビューその1:OSI「OFFICE OF STRATEGIC INFLUENCE」】


サイド・プロジェクトをボコボコ濫発するDREAM THEATER界隈からまた新たなユニットが。今度は遂に2ndまでで脱退したキーボーディスト、ケヴィン・ムーアが登場してしまって大変です。あとのメンツはマイク・ポートノイ(Ds.)、FATES WARNINGのジム・マセオス(G.)。ゲストでCYNIC〜GORDIAN KNOTのショーン・マローンなんかも入ってます。よく仕事しますねこの人。内容がこれまた、1st〜2ndの頃のDREAM THEATERのヘヴィリフ、メカニカル変拍子とケヴィンの現在の本丸であるCHROMA KEYのアンビエント感(ナレーション挿入やケヴィン自身の低域ヴォーカル)、FATES WARNING譲りの変則ミニマルアルペジオが合体した納得の内容。ただしあくまでサイドユニットということでそれほど時間を費やせなかったのか、顔合わせの瞬発力に賭けたのか、初期DREAM THEATERにあったスパンの大きい緊張と弛緩の波みたいなものはあまり堪能できず、加えて後半ちょっとアンビエント寄りになり過ぎてダルさが出る流れになってるのも残念。やっぱりCHROMA KEY単品で聴きたい気がしつつ、往年のファンにとってはポートノイ&ムーアが再び居合わせているというだけでも嬉しいアイテムでございます。

【本日のレビューその2:THE VANDERMARK 5「SINGLE PIECE FLOW」】


THE FLYING LUTTENBACHERSにちょっと参加したことがあったりシカゴの音響系アーティストコンピにTORTOISEらと共に音源を提供していたこともある、サックス/クラリネット奏者ケン・ヴァンダーマーク率いるTHE VANDERMARK 5の97年作。編成はずっと2管+ギター+ベース+ドラムで変わらないようです。ジェフ・パーカーのTRICOLORも出しているATAVISTICに所属ということで、作曲と即興が複雑に組み合ったバキバキのアヴァンジャズをやってます。オーネット・コールマンみたいな昔ながらのフリースタイルもやれば、DON CABALLEROまがいの変拍子リフも楽にこなす。曲によってはテーマ以外のキメパートが変な風に挿入されることもあり、そういうときは少しプログレを想起させます。新しいグルーヴ解釈だとかアンサンブル構築だとかそういった問題にはあまり色気を見せず、ジャズらしい流儀のもとで行うアヴァンジャズスタイルは堅守した上で、時間の流れというものをどうデザインしどう格闘するか、そこに重きを置いてる様子。一撃一撃の鋭利さに思わず身が締まる心地。完成度は非常に高いと思います。このへんの試みにロックのイディオムも足してもっとどえらい雪ダルマになったような、緊迫の1枚です。

  9月28日
本日の収穫、バナナ栄店にてHEAVENLY「OPERATION」、HELLEBORE「IL Y A DES JOURS」(85年AYAA!)。髪切りに行ったので耳で風を切れる男になりました。颯爽とした気持ちで物色に寄ったのに、HEAVENLYの方が久々の二重購入だったことが(しかもサイト内検索によって)判って今、果てしなくショック。よりによってHEAVENLYか〜。前やったときはDESULTORYでした。近頃Kが気になるという後輩平尾君に売りつけてみよう。

【只今のBGM:HELLEBORE「IL Y A DES JOURS」】


今月はカタめのが続いてます。一見初期デスメタルだろうか?と思うバンド名ですが然に非ず、KLIMPEREIなどをリリースしていたフランスのレコメン系レーベルAYAAから85年に1007枚限定(中途半端な…)で出ていたというれっきとしたプログレバンドです。1枚限りで姿を消した超マイナーどころ。カウ的な崩壊系フリー音響セッションにも程々に手を出しつつ、大筋ではコミカル変拍子ジャズロックの仏代表・ETRON FOU LELOUBLANと、ベルギーの重厚長大暗黒チェンバー星雲・UNIVERS ZEROのあいのこのような、ユーロレコメンのサラブレッド的仕上がり。UNIVERS ZEROの暗さとエトロンの笑いという拮抗し得る2要素を大胆にも抱き合わせて、据わった目で笑う江頭2:50のような異様さに繋げているのが面白いところか。随所に漂うまったり湿った詩情はいかにもフランスの香り。そういう地域性の割り込みを除いていえば、85年にこれは既に真新しい音ではないけど、剥製化した従来型ロックと決別すべく自分達なりに挑戦・闘争しようとする気概は鳴らす音の重みとなって表れている気もします。真摯に対峙するに充分堪える。重度のプログレッシャーからSKIN GRAFTファンまで…って狭いな。CHEVAL DE FRISEミーツFRIEND/ENEMYって言ったら食い付いてもらえますかね。国内流通はLOCUS SOLUSがばっちりやってるので入手もそう難しくないはず。

  9月27日
本日の収穫、グレイテストヒッツ今池にてDON HENLEY「BUILDING THE PERFECT BEAST」(84年1st)、小田和正「自己ベスト」。今日書こうと思ったことは去年も書いてました

【本日のレビューその1:HELMET「SIZE MATTERS」】


去年出た再結成作。EXODUSからTESTAMENT、WHITE ZOMBIEといったスラッシュ/元スラッシュ界隈を渡り歩くことになったジョン・テンペスタがドラム、ANTHRAXを脱退してしまった(はずが現在は戻っている様子…本当にジョン・ブッシュは抜けたんですか?)フランク・ベロがベースという驚きのメンツ。初期のゴリゴリインテリ路線に垢抜けたクールさと多趣味さを加味して大傑作になった「BETTY」を折り返し点として、リズム面のトリック云々をフィーチャーし過ぎずに硬度とメロディアスさを両立させるリフ作りを試みた解散前ラスト「AFTERTASTE」の方向に更に突き進んだ作風となっています。この物分かりの良さは何ですとな?FOO FIGHTERS+STAINEDなどと例えられても文句言えまい。だからダサいとか腹膨れないというわけではなく、特大フォントのメッセージTシャツの如くシンプル&ストレートに言い放つリフのセンス、説得力はやっぱりHELMETのもの。あー何だか4日前のKILLING JOKEと同じ論理展開になってきたな。「夢は見れないが興奮できる」という点では似た仕上がりといえるかも。ああしかし私の記憶のHELMETは、股が裂けるまで淡々と脱線し続けるポリリズムに乗っかって猛犬のようにボッボッと噛み付くヴォーカルのあれですよ。緊張感というかある種の怖さがあったものだと思ったが。再結成したらそれがゆとりの貫禄に変わっていた、みたいなこういうケースは順応に時間かかります。と思いきや最後の最後にきて往年路線ど真ん中のが2曲続くのはファンサービスっすかね。特に"Throwing Punches"の殺気立ったタメに死にそう。おうおうイイじゃないか。

【本日のレビューその2:小田和正「自己ベスト」】


2002年に出ていたベスト。オフコース時代の曲の再録などを含みます。ファンからは選曲・アレンジ含め賛否両論かなり激しいようですので、ここはひとつ落ち着いた観察を…。冒頭の新曲"キラキラ"は小田和正の声だから許せる普通のトップ20ものの曲。しかし齢60になろうというのに、こんなナイーブなまでに希望と愛を詰め込んだ歌をスンナリ聴かせてしまうのはスゲー話です。黒木瞳が女学生の格好をしたとしてもどこかリアルさをもって映ってしまいそうなのと同じ異常事態。オフコースのリメイクに関してですが、淡々としたハイソAORに着替えた"さよなら"、オサレ系16ビートシャッフルと化した"Yes-No"などは、リミックス的感覚で楽しめてええんじゃないかと思います。期待した"言葉にできない"は、肝心の「あなたに会えて〜」のフレーズが、オリジナルだと長い間奏を経てやっと辿り着くはずが、ここではサビから間を置かずに雪崩れ込んでしまって全く盛り上がれず、白々しく強引なストリングスにも興醒めし、そもそもライヴレコーディングであるゆえプロダクション的に無理あり。10年経って新解釈を見せてほしかった"ラブストーリーは突然に"は再録に至らずリマスターのみ(但し効果はてきめん)。再録音源は全般的に打ち込みブラスが貧乏くさいのがかなりマイナス点。セルフプロデュース的視点をもって活動をしているミュージシャンの作品ばかり普段聴いているだけに、予想もしない変なところでガッカリすることが多い盤でした。歌い手・小田和正は凄い人やなーという感想に留まる。ということで小田和正未体験(ちゃんとCD買ったことないという意味で)の人は先にこちらでオゥイエ…と唸って下さい。

  9月26日
本日の収穫、P-CAN FUDGEにてHELMET「SIZE MATTERS」(復活作!)。新登場のミスドのカフェオレを試す。牛乳らしい甘みがなくてねっとり濃く、フレッシュとの中間のような感じ。見れば「香りはコスタリカ、コクはグアテマラ、キレはコロンビア、ミルクはオリジナル」という。ものは言いようです。まあオカワリはしましたが。

▼とにかくレイザーラモンHGが気になって気になって仕方がありません。近所の大学の学祭に来るかもという噂がありまして、本当に来るなら絶対見に行くつもりです。

【本日のレビューその1:BRANT BJORK「JALAMANTA」】


今月はじめにも紹介した元KYUSSのドラマーのソロ。99年リリースの第一弾は今は亡きMAN'S RUINから。全パート彼一人でやってます。90年代中盤から盛り上がったストーナーブームの仕掛け人なわけですから、さぞ濃い世界を展開してるかと思いきや、濃いは濃いけどそれ以上に上手(ウワテ)!という印象。何だこのレイドバックぶりは。プーンと弱く歪んだファズで静かに攻める、前代未聞のチルアウト型ストーナー/レトロック。ブルーズロックやラテン、ダブまで視野に収めながら、繰り返すビートで酔わせるのが基本スタンスで、もはやリフがお草くさいからいいねえなんていうせこい次元は飛び越え、さながらバッドトリップして誰もソロを取らないSANTANAかTHE ALLMAN BROTHERS BANDか、はたまたまっとうに上手くなってしまったがやっぱり性懲りの無いAMON DUUL IIや初期ASH RAの如しです。すなわちほぼインスト(12曲中4曲だけ歌入り)なんですけど、そのことに後で気付くくらいのグルーヴのしたたかさ。ジャムバンドとも違う頑固さと、かといって全然伸張しまくるグルーヴと、こりゃ何とも形容し難いですな。無言にして饒舌、ひたすら太い。荒野のMONEY MARKってなとこでしょうか。ク〜ル。

【本日のレビューその2:CHE「SOUNDS OF LIBERATION」】


この際ブラント先生続きでもう1枚。KYUSSの二代目ドラマーと、KYUSSの他のメンバーが解散後にやっていたUNIDAのベーシストと組んだトリオで2000年に残した唯一のアルバム。これもMAN'S RUIN。ブラント先生ここではギターヴォーカルです。作風はいわゆるストーナースタイルに近づくものの、もう少しハードロック的な躍動感があり、レトロ細工に腐心せずそこからモダンを練り出す手腕がさすが。吐き掛けるようなキレのあるヴォーカルスタイルもカッコイイことこの上なしです。BUDGIEとPEARL JAMの間、MOUNTAINかつRAGE AGAINST THE MACHINE、KILLDOZERでTHE VAN PELT、みたいな無茶な例えしか浮かばない。実際のところ地味といえば相当地味なわけですが、いやこれは大人のシブさだと言い張りたい。ライヴ見たら多分誰でも訳判らんうちに踊ってると思います。

  9月25日
収穫はなし。今日は6月頃からドラマーとしてお手伝いをしているシロクマのライブやってきました。あかんかったなぁ〜、山のようにCD持ってても、手が無駄にデカくても、白けますわ。ドラム下手じゃあねえ。対バン勢がどれも立派だったのでなお縮む。ヴァンデ目指して頑張りますあーあ。

▼帰りにネコをいっぱい見た。

【只今のBGM:ULVER「TEACHINGS IN SILENCE」】


この世で最もディープな音楽作品のひとつだと思います。フォーキー/アトモスフェリック・ブラックメタルの異端バンドとして本場ノルウェーに現れたのが94年、その後悲哀フォーク一徹の2nd、突如本気でプリブラに走った3rdを経て、メタルのメの字さえ見当たらないダークな映画音楽みたいな方向にシフト、品行方正メタラーには見向きもされなくなりながら遂にノイズエレクトロニカにまで足を踏み入れてしまったのが最近の話。さて今回の盤は、枚数限定で2001年にリリースされたEP2枚を抱き合わせたものである模様。全4曲で順に24分、9分、10分、11分と長尺です。MEGO同然のプツプツミチャミチャピーピーヨゲゲゲというノイズ(といっても割と静かめ)の合間にアラン・ホールズワース的な幽霊アルペジオ、TIAMATみたいな死にそうなピアノ、スティーヴ・ヴォン・ティル(NEUROSIS)風のアンビエントミニマルビーツ、クリムゾンの"アイランズ"的ヴォーカルパート、RACHEL'Sばりのチェンバーアンサンブルまでをも挟み込む作風は正にあの世のGASTR DEL SOL(の「UPGRADE & AFTERLIFE」)。はてさてこれを誰が聴くのか。ブラックメタルを精神性だと捉えるならこれは至上のそれであるわけですけども…。現役BURZUMファンか或いは、極初期LOWとかPAN AMERICANみたいなKRANKYどころが好きなら他人の空似で激ストライクの可能性あり。希死願望や鬱傾向がある方は慎重に、本当に。

  9月24日
本日の収穫、鶴舞線原駅近くのMUSIC FREAKなる店の中古コーナーでスピッツ「春の歌/テクテク」、昨日のバーゲンで上前津の方に先に並んだ友人に確保しておいてもらったPACHORA「AST」。これは素晴らしいね〜、これは当たりやねー、みたいなことばっかり言い続けて毎日回っていけばいいのにという線で合致した次第。ああ日本ってちゃんとしないといかん所ですなあ。やってくだけじゃんと心を決めて何であろうとやっていける人は全員尊敬します。そう嘯いていられるのもあと数年。

【只今のBGM:PACHORA「AST」】


99年KNITTING FACTORY。クリス・スピードがクラリネットに特化し、ドラムはジム・ブラック。タブラやトルコのサズという弦楽器なども入って、バルカン変拍子をはじめその他の東欧〜中央アジア地域の色をどしどし織り込み、NYアングラジャズのパラダイム下でスッキリ消化されたエスノ・ジャズ。はいソロいきまーすと宣言するでもなく各パートの声が折り重なるようなKNITTING FACTORYらしい温度感ながら、異国情緒をネタに達人たちの妙技とアイディアを存分に堪能出来ます。テクノ/エレクトロニカの世界に比べてやれグローバルだやれフューチャーだという手法がジャズ界においては常に5年くらい遅れてるイメージなんですが、ここでは素直に器としてのジャズと具材としてのエスニズムが自然体で組み合っているだけなのでそういうダサさ・臭さはありません。いやーカッコイイですよ。ブラジリアン/スピリチュアルかぶれになりたそうで無理してジャズぶろうとしてるポストロックの一派も、こうやって本職にハイどうぞとやられたら立場ないっすね。って何かとHIMを槍玉に挙げてしまう(好きなんだけど)。あるいはFARMERS MARKETがもっと正気だったらいいのにという人がいたらズバリど真ん中ですな。バルカン音楽ってよく判らんけどNONSUCHとかの直球で民俗音楽なやつは無理かもと思ってる人(≒ただの変拍子好き)にもオススメ。とにかくオススメなんです。

  9月23日
▼質実剛健、良品厳選、バーゲン中のサウンドベイにて本日の収穫、金山でKILLING JOKE「KILLING JOKE」(デイヴ・グロール参加)、BRANT BJORK & THE OPERATORS「BRANT BJORK & THE OPERATORS」(ex.KYUSS〜現FU MANCHU!)、CHE「SOUNDS OF LIBERATION」(ブラント・ビョーク在籍!MAN'S RUINリリース!)、EAGLES「ONE OF THESE NIGHTS」(リマスター)、DON HENLEY「THE END OF THE INNOCENCE」、ULVER「TEACHINGS IN SILENCE」、THE 3RD AND THE MORTAL「EP'S AND RARITIES」、OSI「OFFICE OF STRATEGIC INFLUENCE」(ケヴィン・ムーア&マイク・ポートノイの元/現DREAM THEATER組+FATES WARNINGのジム・マセオスによるプロジェクト!)、MASTODON「LEVIATHAN」(ボーナスDVD付き限定盤に買い替え)、HIRAX「EL DIABLO NEGRO」(2001年の復活EP)、TODAY IS THE DAY「KISS THE PIG」(04年)、THE ROLLING STONES「SOME GIRLS」(リマスター)、WOLFSBANE「LIVE FAST, DIE FAST」(ブレイズ・ベイリー!)、上前津でFRED FRITH「FREEDOM IN FRAGMENTS」(TZADIK)、LATTE E MIELE「PASSIO SECUNDUM MATTHEUM」、V.A.「THE UNACCOMPANIED VOICE- AN A CAPELLA COMPILATION」(SECRET CANADIAN編集、ミア・ドイ・トッド、マーク・コゼレク、デイヴィッド・グラブス、ヤンデックなど参加の完全アカペラ音源コンピ!!)。最近聴きたい感じの音楽を無駄なく拾って来れました。ますますロック傾向です。

【本日のレビューその1:DON HENLEY「THE END OF THE INNOCENCE」】


EAGLESのドラムだったドン・ヘンリーのソロ3rd。ブライアン・アダムスが少し老けたようなバリバリのハスキーアメリカン産業ロックヴォイスをしてる人です。曲もアーバンでソフィスティケイトされていてオシャレッティ〜な最上級AOR。いかにも捨て曲と言わんばかりのチャカチャカしたダンサブル&セクスィ〜ナンバー群はだいたいどうでもいいとして、クッサクサのハイソ系シンセが踊る和みポップチューンやバラードがとにかく素晴らしい。それこそブライアン・アダムスや、ルー・グラム(FOREIGNER)のソロワーク、WINGERのメロウサイドも思わせる。よくぞここまでと思う程ドンピシャでツボを心得た恐るべき完成度です。心憎いコード進行で貴方を高級ホテル最上階から摩天楼を見下ろしつつ憂鬱な溜息をフーッとつく色男気分へと誘なう激バブル・バラード"New York Minute"の壮絶さといったらない。因みにバックメンバー/ゲスト陣もウェイン・ショーター、パティ・スミス、アクセル・ローズ(!)、ジェフ・ポーカロ、シェリル・クロウなど錚々たる豪華メンツを投下。80年代最後の贅沢ということで、安く見たらスグ買って下さい。

【本日のレビューその2:KILLING JOKE「KILLING JOKE」】


ニューウェイヴ草創期から、ダーク&ヘヴィなギターリフと無機質なドラムフレーズを呪詛的にシークエンスさせる擬似インダストリアルスタイルで異彩を放ち、LUNGFISHからRAMMSTEINまで広く影響が及ぶ、未だ現役のKILLING JOKEの最新作。90年代はまんまとMINISTRYやNINの手法に呑まれてましたがここへきてドラマーにデイヴ・グロール(言わずもがなFOO FIGHTERS)という強力助っ人を呼び寄せ、どうなったかと思ったら半分くらいは90'Sインダストリアルメタルの域でした。本気で変質者みたいだった初期の異様なテンションは、デジ・ロックのカタルシスの着火に必死な豪腕パワーに取って代わられてしまってます。しかしその豪腕の主がデイヴ・グロールということで、出来自体は文句無くかっこよい。ロック!!ドラムの存在感だけで残り半分がFOO FIGHTERSやPROBOTに聞こえるほど。ヴォーカルは昔と違って野太いドス声中心になっちゃってますが、元々何をやっても貫禄のある人なので全然大丈夫。ただこれがKILLING JOKEだと思ってバックカタログに遡ると話違うって展開になること必至です。マックス・カヴァレラ(SEPULTURA〜SOULFLY)とアレックス・ニューポート(FUDGE TUNNEL)がやってたNAILBOMBとか、ヴォーカルが違っていた頃のVOIVOD、デイヴ・ロンバード(ex.SLAYER)のGRIP INC.、ブラックメタルオールスターのはずがどんどんニューウェイブに染まってしまった最近のDODHEIMSGARDあたりの方が音楽的には近い線。バンドのカラー云々という視点はさておき、単純に一枚の優れた作品としてオススメ出来る内容です。

  9月22日
収穫はなし。うまそうだと思って買ったパンが全然うまくないとムカつく。あっ凄く普通のことでした。ぬるいかもなーと思って買ったペットボトル飲料が実際ぬるいと誰を恨んでよいのかわからない。遠目に見てネコがいると思ったのに近づいてみたら白いビニール袋だったときはやりきれない。曲がり角で出会い頭にニアミスしかけた相手に「おーっと!っ危ない〜」と言われたらすれ違った後で背中に向かって舌打ちし、「ごめんなさい」と言われたらこっちも謝る。バーゲンなのに棚のCDを一枚一枚取り出してジャケを眺めていく遅い客に行く手を阻まれたら横から無慈悲に煽る。気が向いたので普通のことばっかり書いてみました。明日のサウンドベイは10時から。

【只今のBGM:CHICK COREA / GARY BURTON「CRYSTAL SILENCE」】


度々共演することになる二人の初顔合わせ。一昨日登場したばっかですがこれもECMでリリースは73年です。ピアノとヴィブラフォンのみによる完全デュオ演奏ということで、聴いてて神経がすり減るような気難しいことでもやってるのかといえば、そうでもあるし、全然とも言える。少なくとも眠ってしまいたくはならんと思います。キレの鋭いラテンノリを二人でビッタリ合わせ、左手の低音も効果的に絡めてズイズイと押しまくるオープニングの"Senor Mouse"でまずはKOされましょう。南米のTOWN AND COUNTRYか?てな勢い。ただのジャズバラード風のスイ〜トな曲もいくつか挟みつつ、コリア自身のペンによるものはやはり「NOW HE SINGS,〜」あたりで聞かれるのと同質の、眉間にシワが寄るリリシズムが漂っておりどれも最高。安っぽいお涙頂戴とは次元の異なる「躍動する美しさ」がございます。なんか高級車の宣伝文句みたいになってきましたが…ともかく、ジャズファンは勿論、TORTOISE関連やBUBBLE CORE絡みのロック離れが著しい部類のプロジェクト群なんかを追ってる人なんかは早めに押さえといた方が良いでしょう。

  9月21日
本日の収穫STIFF SLACKにてJOAN OF ARC「GUITAR DUETS」、XBXRX「SIXTH IN SIXES」、V.A.「LEAN INTO IT- A TRIBUTE TO DIE KREUZEN」(SEASON TO RISK、BRUTAL TRUTH、マイク・ワット、TRAINDODGE、VOIVOD、COLOSSAMITE、NAPALM DEATHら参加!)。店内で流れていたMARITIMEの新作がえらく良い感じになってました。外盤出たら買おうと思います。ということで秋のMARITIME来日、名古屋はワタクシのやってるドイモイが前座を務めさせて頂きますので何卒宜しく。詳細はこちらで。フライヤーを置いてもらいに行ったサウンドベイ上前津でOVERKILLの「THE YEARS OF DECAY」が流れてたのには燃えた。"E.vil N.ever D.ies"で思わずヘッドバンギングしそうになったけど我慢。

【本日のレビューその1:XBXRX「SIXTH IN SIXES」】


THE FLYING LUTTENBACHERを率いているドラマーのウィーゼル・ウォルターの別ユニット。新作が何とPOLYVINYLから出てしまいました。デスメタルやフリージャズまで股にかけるスカム大好き人間のウィーゼル氏ですが、今回は直線的なよわよわハードコアをベースに、くずれギター・ゴミシンセその他のジャンクサウンドがじゃらじゃらとぶら下がっているといった体裁。高音絶叫ヴォーカルも相俟って最近のTHE LOCUSTに通じるポップ性が漂う。アガりっぱなしの歪んだ多幸感はLIGHTNING BOLT似か。「カジュアルにヘンタイしようぜ」的な軽薄さがあるわけではなく、ポップさの枠(すなわちツカミのいい4拍子と短いリフレインの反復)の中で持ち前のノイズ/フリークアウト趣味を思う存分発揮しているといった塩梅になってます。何をするにも容赦の無い、理性的なまま白目をむくようなテンションが正にSKIN GRAFTの血ですな。RAVEN meets AKSAK MABOUL、あるいはTHIS HEAT(2nd) meets NOMEANSNOなどと無茶な例えをしてみよう。

【本日のレビューその2:OVERKILL「THE YEARS OF DECAY」】


METALLICA、ANTHRAX、SLAYER、MEGADETHが「スラッシュ四天王」、同期のEXODUSがそれに続き、LEGACY改めTESTAMENTとこのOVERKILLがATLANTIC二大スラッシュバンドと言われたのも今は昔。今や微妙なOVERKILL、80年代当時は相当な人気を誇っていたようです。IRON MAIDENにモータースポーツ的な駆動性とバリバリ割れる硬質リフを与えたようなパワーメタル寄りのスタイルで、何といってもダミ声やシャウトじゃなくまっとうに歌うボビー・"ブリッツ"・エルズワースと、とかくベースの影が薄いこの手のジャンルにあってズリンズリンした鋭いトーンで強烈な存在感をアピールするD.D.ヴァーニ両名のキャラ立ちによって唯一無二の個性を確立しておりました。NWOBHM臭さの抜けない初期から徐々に洗練を重ね、はっちゃけ全開だった前作「UNDER THE INFLUENCE」を経ての今作は、その後のMEGADETHを先取りするかのようなビキビキガスガスなサウンドプロダクションで固めて徹底的にヘヴィネスを追求した作りに。スローダウンやダーク化はまだまだ程よい域で済んでます。ANTHRAXの「STATE OF EUPHORIA」での変化に共鳴するようなサイバーっぷりもありつつ、根本はガッツリロック。ZEPばりの瞬間字余り変拍子トリックもこなれてきて"I Hate"みたいな曲で見事に結実。SLAYERを高速化させただけのような初期デスメタルに対してSUFFOCATIONやCANNIBAL CORPSEみたいなバンドが持つ足回りの器用さと妥協なき整合感は、実はこのあたりがルーツなのではと思わせる部分も多々見られます。"Birth Of Tension"なんかそのまんま。しかしやはり極めつけはラストの"E.vil N.ever D.ies"っすね、私は「スラッシュメタル界で一番よく切れるリフは何か」と尋ねられたら迷わずこれを挙げます。テンション最高潮の激展開も凄い。美旋律だツインリードだツーバス連打だばっかりじゃなくて、こういう身に迫るようなパワーとテンションのあるメタルこそ大事にされていってもらいたいところなんですけど、若いメタラー諸氏は興味あるかな〜OVERKILL…

  9月20日
本日の収穫、名駅69にてNICK DRAKE「BRYTER LAYTER」、忌野清志郎「冬の十字架」。今日は何の日かというと小田和正の誕生日だそうですよ。

【只今のBGM:JACK DEJOHNETTE「NEW DIRECTIONS」】


ECMからの78年作。AECのレスター・ボウイ(tp.)、ECM常連ジョン・アバークロンビー(g.)、ビル・エヴァンスの晩年の相方を務めたエディ・ゴメス(b.)とのカルテットです。内容は正に時代とパーソネルとレーベルカラーを反映した、フリージャズ/現代音楽/ファンク〜フュージョンその他がグニョグニョにクロスする音。全曲オリジナルで気合充分ですが、どこがテーマやろかというアブストラクトな代物が並ぶ。そのくせ順番にソロ回しがあったりして完全構造破壊までは至らず、ジャズの大枠は保持する線で未知のアンサンブルを探っているといった印象です。となると結局各人ひとまずやりやすいようにやってしまうわけで、リーダーのジャック・ディジョネットはポリリズム交じりの高速激手数、ジョン・アバは影の薄いペモペモとしたトーンで普通のアドリブからAMON DUULやGONGみたいな効果音系まで、エディ・ゴメスは調性を堅守しつつ変な高音や装飾的速弾きを挿入して遊び、結局AECでブイブイ言わせてきたレスター・ボウイがパラパラプーと早送りで吹き散らして(意外と音数が少ないのがいい)勝ち、という格好。小声で怒涛のフリーセッションからトム・ウェイツ?ラウンジリザーズ?てな嘘臭いベースのループに雪崩れ込んで遂に一同歌いだすという4曲目"One Handed Woman"、ジャック・ディジョネットのリリカルなピアノ(弾けるんですな普通に)を軸に色々と景色を変える5曲目"Silver Hollow"あたりが白眉か。ジャズファンよりはとりとめのないジャズロックが好きなプログレッシャーにお勧め。

  9月19日
収穫はなし。人間の爪、抜くとどんな形をしてると思いますか?1)桜の花弁のような見たままの形、2)歯のように根っこがあるティアドロップ型、3)先端の曲線と生え際の曲線が平行な、長方形を歪めたような形。正解は(3)です。

右足の親指の爪抜けました、どうも。

▼ヤフオクでスピッツのツアー後半の名古屋公演チケット落札しました。行くぜゼップ。

【只今のBGM:ORSO「ORSO」】


PERISHABLEリリース、REXのメンバーによるユニットの98年リリース1作目。ECMっぽい土着音楽転生系ほんのりジャジー・アンサンブルを構築していた2作目ではHIM関連で固めた豪華キャストになってましたが、こちらはブライアン・デック&ベン・マサレラのCALIFONE(およびRED RED MEAT)チームがメンバーとしてクレジットされ、あとのゲストはバンディ・K・ブラウン他。デジタルなエディットと這い回るベースでグルーヴを組み立てるブライアン・デックの得意スタイルが全面発揮された、チューニング不全のAMラジオとリアル砂嵐のコラボレーションの如き荒野の音響フォークになってます。というより殆どCALIFONE。不定形ユニットらしく無茶な音響実験も妥協のないところまでやり尽くしてるのが聴きどころでしょうか、あくまでアメリカンフォークの伝統的なスタイルを踏まえて楽器もそういう物を使うという明確なコンセプトのもとでやってるあたり、方角は違うがケヴ・ホッパーのソロに近いまとまり方をしてるようにも感じます。総じてPERISHABLE的なセンスをあらかじめ理解している人を対象にしてる感が強い。あるいはアメリカ人なら大抵身についている感覚ということなのか。積極的に感動を呼び込むのは2枚目の方かも知れません。変な音が音楽を成すのがとにかく好きという人はこっち。

  9月17日
収穫はなし。今日は愛知県のかまやんさんから頂いたハナちゃん(9ヶ月)とマサムネ君(6歳)でございます。ありがとうございます。

↑黒っぽい口元が幼ーい!!

↑グデッと休憩 正面図も見たいですね
背景が散らかってるのは旅行先での撮影ゆえとのこと。犬猫同伴で遠出とは良いですね。お宅の(または勝手に隠し撮りしたヨソの)動物写真まだまだ募集中、トリやネズミや魚でも歓迎ですよ。

【只今のBGM:FOO FIGHTERS「IN YOUR HONOR」】


昨日から大ネタ続きで。今年出た新作をやっと入手です。US盤はCCCDになってますが運良くEU盤で発見。コンセプトアルバムでも何でもなく普通に2枚組とは大胆なことをしてくれたもんです。Disc1がまずロック・サイドになっとるわけですな。前作「ONE BY ONE」でもその片鱗は見せていたものの、PROBOTを経てるせいかポップパンク〜オルタナ色がより抜けて、随分とハードロッキンになったものです。あるいはSCREAMがズバズバと垢抜けていったらこうなったかも?恥ずかしい寸前の熱血リフとか結構平気で叩きつけてきます。80年代末期のサウンドプロダクションで同じことをやったらそれこそSCREAMやその他の微妙なライン上のバンドのように聞こえる危険すら漂いかねないところを、空気読める大人のプロデュースセンス&有無を言わせぬ人間力で見事に2005年仕様に。そのへんの音もデイヴが吸ってきた空気そのものですからね、「流行り廃りと無縁のオレ音楽」という頼もしさ度は過去最大級に違いない。今のヒットチャートで本作収録"Best Of You"ほど必死に叫んでる曲が他にありましょうか?使う小道具群に拠らない、単純な意味での「エモさ」がこれでもかというほど堪能出来ます。Disc2は打って変わって全編しみじみのアコースティック・サイド。口ヒゲ逆立てて吼える延長でソファーにひっくり返ってアコギもつま弾くぜ、ってな人並みに歳食ったアメリカ人としての自然体が垣間見れてこれもまた良い。これまではこういう曲は、燃えるロックアルバムに差される冷却水として、1枚中2・3曲ポツネンと置かれてきたものですが、こうやって静かなものばかり集められると逆に「早く次、次」みたいに焦ることなくジックリ浸れる気もします。ブルース・スプリングスティーンの「NEBRASKA」的佇まい。果たしてこの2枚組、ガンズの「USE YOUR ILLUSION」、スマ・パン「MELLON COLLIE〜」のような伝説盤となり得るか。なるでしょうね。

  9月16日
▼今日は鶴舞K.D.ハポンにてTHE EVENS見てきました。というかイアン・マッケイ(FUGAZI)拝みに行きました。名古屋公演は珍しくチケット売り切れてたようで、そんなことも知らず当日券で入る気まんまんで行った私は、キャンセル待ちの末運良く中に入ることが出来ました。トップバッターは三重のSLOW。DIRTY THREEとMOGWAIを足した感じの轟音叙情ポストロック。2番手のOGRE YOU ASSHOLEは相変わらず良い。5月にセーター、6月に長袖を着ていたギターヴォーカル氏が今日は遂に半袖Tシャツ1枚になっててビックリ。もう外寒いですよ!!この人達はホント成功してもらいたいです。

▼ドラムセットごと総入れ替えしてメインアクトのTHE EVENSが登場。イアンは若干ずんぐりとしたガッチリ骨太体形の人で、もうちょっと眉毛が太くなったらスコット・イアン(ANTHRAX)と区別つかない感じ。ドラムのエイミー・ファリナは細長くて迫力がありました。彼女はKARATEのジェフの妹にしてTHE WARMERSの元メンバーということで、実はかなりありがたい人です。普通のギターより5度低いチューニング(最低弦はA)のダンエレクトロをやっぱりアンプ直で構えるイアンが赤いTシャツ・黒いハーフパンツだったのに対し、エイミーは黒いTシャツと赤いパンツ。両者ともイスに腰掛けての演奏で、格好から徹底的にイーヴン(ズ)。曲はもうMINOR THREATやFUGAZIのシンプルめのレパートリーをTHE CRABSとかみたいなローファイポップスタイルにリミックスしたようなのを延々とやる訳です。ここぞというところであの猛々しいガナリを繰り出すイアンかっこいー。しかも普通にギター上手い。ずっと指弾きのままで、ベースとギターを兼ねるような相当幅のあることをやってました。エイミーはというと、ジャズドラム的洗練は見受けられないし別段パワーが凄いわけでもないけど、やらんとする領域に関しては聴き手を感嘆せしめるだけの技量とイメージが充分あるといった感じで、ホ〜ッと思うハイライトを結構何度も作っていました。デュオ演奏にして必要充分だったのがとにかく良かったですな。

▼ストレイトエッヂの提唱元でもあるイアンのこと、進行は結構黙々といくのかなーと思いきや、ジョークもよく飛ばす上、そのジョークを外国人客に通訳させたりして、客とのコミュニケーションを大事にしてくれる人でした。「こうやってショウをやってバンドと客が一体になる、これが素晴らしい。これがパンクロックだ。俺らの演奏とJRの騒音(※会場のK.D.ハポンは鉄道の高架下に作られている)も一体になる。カンペキだな」などと笑いを混ぜつつも熱く語ってくれました。他にも客に合唱を要求したり、口笛その他を要求したり、何かと絡み好きの模様。演奏中は歌詞にあわせてたまたま視線の先にいた客の顔をジッと見つめる場面が多々。見られてた人は皆直視し返せてたんだろうか。歌わないパートではイスに掛けたままヘッドバンギング。ハードコアであります。エイミーはひたすら淡々と。眉が濃くてギョロ目気味(ジェフに似てる)なため基本的に神妙そうに見える。客の拍手はいちいち盛大で、アンコールまでテンション落ちぬままやりきって清々しく終了。その後のサイン攻め、写真攻めは過去に見たことがないほどの賑わいぶりでした。さすがミスターDISCHORD。私も握手してもらってきました。

▼んで今回は写真がないんであります、すいません。物販でも特に何も買わず収穫なし。次はLUNGFISHっすか。

【只今のBGM:HENRY COW「WESTERN CULTURE」】


レコメンの大元締HENRY COWの78年発表ラスト作。第3期クリムゾンよりも更にフリージャズ/現代音楽色が強く、ライヒ的ミニマリズムには殆ど色気を見せない、猛烈に体力を消耗するアヴァンジャズロックスタイルがデビュー当初から強烈なバンドでした。この作品ではよりインプロの比重が減り構築性が増して、クラシックに根差す部類の現代音楽をロックの筋肉で具現化したような作風に。サックスやオーボエ、クラリネットなどが乱れ飛ぶキメキメフレーズの嵐が圧巻です。設計的には高度化してるけど、フリーアンサンブルをもっと多用して何が出てくるか判らない混沌が渦巻いていた初期作からするとやはり、自覚された「カウらしさ」のもとで丁寧に作り込んだという、ある意味無難な感はあります。これで解散というのも頷ける。ダモさんが「FUTURE DAYS」を最後にCANを抜けたのと似てますな。そういうイデオロギー的なものや作り手主体のコンテクストを気にせずに接すれば、キャリア中最もスムースなプレゼンがなされた1枚であるともっぱら褒めちぎるべき完成度。時代柄ポストパンク的な笑える破綻も出てきたりするし、これ近頃の体当たりでやってるっぽい現役若手インディアヴァンバンド(ALL SCARSとかSKIN GRAFT一派とか)を理解する上でも最重要な気がしますよ。ちなみにこの枠ありジャケはオリジナルミックスのリマスター(ややこしいですけど)版のもので、ボーナスに1曲、ダグマー・クラウゼが鬼婆の形相で歌う凄い壊れた曲があってたまりません。

  9月14−15日
▼MAGMAを見届けに大阪行ってきました。大学の先輩にフラッと連れられて行った京都で前回の来日を目撃してからというもの、たちまち最も畏敬するバンドの一つになって、その凄さを周りに言いふらし続けて早4年。大阪だろうとどこだろうと見送るわけないっす。昼過ぎからのCD屋物色を満喫した後会場のクラブクアトロ(心斎橋パルコ内)へ到着すると、空調設備から隔絶された裏階段みたいなとこにすし詰めで並ばされ、予定時刻をほんの少し過ぎてやっと開場。客は無論半数以上が30〜40代ばかり。通例ライヴ会場ではその日の出演バンドのTシャツを着てる人はあまり見掛けない(当日の物販で買ったのを着てる人は除く)のが常な気がするんですが、今日に限っては皆揃いも揃って例の鷲の爪Tシャツを着用。何とOFFERINGのを着てるおじさまも1人や2人ではない数。若い客は若い客でただのサイケ気取りみたいなのは一切皆無で、AREAのTシャツ(丁寧にCRAMPSのバックプリント入り)を着てたりするツワモノすら発見。あれよあれよとフロア前方の列が膨らんで、機材テクのスタッフが出てくるだけで大歓声が飛ぶ。

▼やがて場内暗転、ステージそでからゾロゾロとメンバー登場。客のテンション激高。今回もステージ後方の中央に御大クリスチャン・ヴァンデ(ドラム)、そのすぐ両隣にギター(左)とベース(右)、更にそれぞれのわきにコーラス隊が2名ずつ立ち、ステージ前方両端のエレピ2名までU字型に連なるというセッティングに変わりはなし。ただコーラス隊が前回は男×2、女×2だったのが男×1、女×3になってました。全員定位置につき、一旦ふーっと落ち着いて呼吸を合わせると、組曲"Ementeht-Re"がスタート。現代音楽風の奇怪な和音進行を完璧にハモり続けるコーラス4人、いきなりあり得ない。読経の途中で不規則に入る「チ〜ン」みたいな一撃をドラムとベースが毎回完璧にユニゾン(目くばせ無し)。あり得ない。彼らのライヴは個々の技量が恐ろしく卓越しているのは勿論、プレイヤー冥利とかそんなものは二の次に、意識を統一した先にある音楽にメンバーそれぞれが無心で従事しているように見えるのが大きな特徴。その模様はあたかも見えない神がすぐ上にいるかのようです、本当に。途中でヴァンデが立ち上がって、右手でシンバル、左足でハットを鳴らしながらハンドマイクでヴォーカルソロを取ったりするとしかし、アイドル歌手に向けられるような大喝采が湧き上がる。コバイア語はやっぱり彼自身によって歌われるのが一番です。曲の後半ではジャズロック的なインストパートが中心となり、楽曲への捧げものたるミュージシャンシップが大爆発。常々「全ての音楽は3拍子で成り立っている」と語るとおり、ドラムパートでは収まりの悪い三連符や意表を突くポリリズムが、時々地表に噴き出る川の伏流の如く平然たる別の流れとして顔を出しては消える。一切惑わされず激テク変拍子を刻み続ける残りのインスト隊。あり得んってば…。どんどんエキサイトして各メンバーの手さばきやヴァンデの顔芸に注視していると、いつの間にかコーラス隊がスッと復帰。今どこで数えて歌い出した?という瞬間がいくらでもある。名曲"De Futura"に似たベースラインが登場するラストパートでドンドンドンドン盛り上がって長〜い1曲目がやっと終了。滝のような拍手に圧倒され気味のメンバー一同。

▼続くは今回のメイン「KA」。回り始めたら40分間止まらない曲をスタートさせる気分やいかに…。"Wurdah Itah"などのようなダークさは余りないものの、信じられない高速ベースとナチュラルかつ入り組んだ変拍子が地味に凄い曲です。後者はノレてない客多数を見て改めて確認。前者は人山で手元がなかなか見えなかったにも関わらず圧倒されました。指弾き16分で意味不明に動くフレーズを完璧にループ、突発的に挿入される横すべりヴィブラート(振れ幅がまた凄い)も表情ひとつ変えずにこなす。おお、HELLAで見たジョナサン君と同じスタイルではないか。ヤニック・トップのスタイルを研究すると皆こうなるんでしょうか。あとコーラス隊がステージ上を縦横無人に立ち代わり、曲展開に合わせたポジショニングで時に1対3、時に2対2の掛け合いを視覚面でわかりやすく見せてくれたのも良かった。というか4人全員に明確なコンセンサスがあって当然の如くそれをやりのけられるという事実が既に凄い。とにかく見てて一切の迷いがないステージングです。あと今回はコーラス隊のひとり、ステラ(ヴァンデの妻)の活躍が目立ちました。あの観音のような面持ちのままで変則拍子を指揮するかの如くタンバリンを的確に打ち鳴らす姿には思わずゾクッと。美声も全く衰えないし。3部構成のラストパートではいつ終わるとも知れぬ「ハレルヤ」の連呼(しかも変拍子なので一緒に歌えない)で絶頂に達した後、やたらダーク&ロウトーンな2・3小節で不敵にシメて終了。これまた限りない拍手が何分も続く。

▼一旦メンバーが全員引っ込み、アンコールという形で呼び戻されて、予定されていた3曲目"Kobaia"がスタート。1stアタマ収録の記念すべき1曲です。サイケロッキンなリフをステージ上一同笑顔で演奏。しかしヴァンデの屈折フィルは容赦なく割って入る。ヴォーカル中心の神妙なノンビート・パートを経てやっぱりハイテンションなインスト応酬パートでは盛り上がりまくり、やっと終わるとまた凄まじい拍手。メンバー紹介などをしてかわすものの勢いは収まらず、ステラが「クリスチャンが何か歌いたそうよ」と言ってアンコールその2を仕掛ける。すかさず裏方君がマイクスタンドを持ってきたからこれも想定内の演出だったのか?ドラムセットに埋もれていたヴァンデが真ん中に進んできて、エレピとベースだけをバックにタイトル不明のバラードを歌い始める。これ4年前にアンコールでやってたのと同じですな。んにゃらは〜、んにゃらほ〜、と他の曲では耳慣れないような響きの歌詞と綺麗めの曲調で、客は皆ジッと黙って聞き入る。途中から一度引っ込んでいた残りのメンバー(ギターとコーラス4人)も復帰…実はこの曲が始まったときからステラが涙目で、戻ってきてからも涙は止まらない様子。温かく熱心な日本のファンの歓迎の中で歌う我が夫を見て感極まったのか何なのか。ヴォーカルのフリーソロのパートがあるんですが、今回は疲れきっていたようで余り凄いことにはならず(前回はヤバかった)、それでも100%以上のパフォーマンスに客は再度惜しみない拍手。ここへきて更にアンコール要求が上がったりもしたけど、さすがにこれ以上はやれない状態になってたみたいです。客電がついて2時間に及ぶショウは完全終了。

▼終わってみると全然21時半とかで、宿もバッチリ予約して泊まり体制で来たのがバカだったな…と思いつつ宿に向かい、余韻を噛み締めつつアイス食って深夜番組に一人で笑って25時過ぎに就寝。この日大阪に着いて会場に入るまでの4時間ほどと、明けて15日の昼過ぎくらいまで、していたことといえば当然、中古盤屋めぐりに決まってましょう。大した量じゃないですけど14日(心斎橋)の収穫、PURE SOUNDにてMASTODON「LEVIATHAN」(但し書きなしでウォーターダメージ&破れ有り、最悪!全体的に無駄に高い店だった)、MUSIC MANにてHENRY COW「WESTERN CULTURE」(オリジナルミックスのリマスター)、BEN WALTZER「ONE HUNDRED DREAMS AGO」(FRESH SOUND NEW TALENT)、KANSAS「AUDIO VISIONS」(これも隠れウォーターダメージ有り…店自体はジャズとプログレとブラックミュージック中心でいい感じの品揃えでしたが)、ブックオフで764 HERO「SALT SINKS & SUGAR FLOATS」(250円にて)、KING KONG各店にてFOO FIGHTERS「IN YOUR HONOR」(CCCDではないEU盤)、JACK DEJOHNETTE「NEW DIRECTIONS」、ORSO「ORSO」(ブライアン・デック全面参加!)。15日(難波)の収穫はカムトゥギャザーにてORIGIN「ORIGIN」(ex.ANGELCORPSEのDs在籍!)、GORDIAN KNOT「GORDIAN KNOT」(CYNIC、WATCHTOWER、KING CRIMSONのメンバーらによるプロジェクト)、VICIOUS RUMORS「WORD OF MOUTH」(ROLLING STONES"黒く塗れ"とZEP"Communication Breakdown"のカヴァー収録の限定デジパック!!レア!!)、あとは店が移転してたり木曜定休(意外と多い)だったりして探せず。持ってったレコードマップ、2002年版でしたから…。全体的に値付けは東京のように悪どくなく、何となくですがメタルが強い感じがしました。先述の理由で行けなかったけどメタル専門を謳っている店がいくつもあったし(行けたカムトゥギャザーも相当濃い店でした)、ロック関係の棚のジャンル分けが「ROCK&POPS」と「HEAVY METAL」だけになっててメタルばっかりやたらマニアック、という所が多かった気がします。縮小の一途を辿る名古屋の中古メタル市場からすると夢の国でした。あと大阪は信号無視が凄いですね。人も車も。横断歩道を右折する車なんかコッチが渡るぞって意思を見せない限り一旦停止してくれないし(特にアメリカ村が凄かった)。地元人ぶって信号無視歩行者の先陣を切ってみたりして異郷気分を堪能してきました。それと収穫の続き、帰名後大須で偶然見つけたSOUND HUGという店(半分以上ブートの洋盤専門店)でV.A.「THE BOYS ARE BACK -A TRIBUTE TO THIN LIZZY」(DEADLINEリリース、スティーヴ・グリメットがやたら参加しまくるTHIN LIZZYトリビュート!)も。あ〜大阪物色は量絞って選んできたのにダメージ盤つかまされたせいで後味悪い。今週金曜からのサウンドベイバーゲンで晴らすか。

【只今のBGM:VICIOUS RUMORS「WORD OF MOUTH」】


METAL CHURCHと並んでアメリカ産正統派HMの最有力バンドとされながら、シンガーのカール・アルバートの死によって暗礁に乗り上げてしまった不運な人達。これは94年の5th。メロメロ様式美でもツーバスパタパタでも金切り高音キャ〜でもなく、スラッシュメタルテイストを汲み上げたガッツィーなリフと、ロニーによく似たパワフルなハイトーンで、これぞアメリカンといったドライなパワーメタルを身上としていました。このアルバムは時代柄ALICE IN CHAINSみたいな濁ったノリに手を出してる(つもりがBADLANDSみたいになってる)部分も多々ありつつ、それを一切パワーダウンせずにやってるので、却ってカール・アルバートのブルージーなヴァイブが浮き立って好ましいとも言えます。それだけで間が持つ人材ですから。まあ実際名曲は少ないですけど…。わざわざそんな中途半端な盤を買い直したのも、全ては2曲のボーナストラックのため。LED ZEPPELINの"Communication Breakdown"はプラントのキョワキョワ揺れる甲高い絶唱をよくコピーしてます、なりきり系です。そしてROLLING STONESの"Paint It Black"、これはもともとがメタルによく合う泣きの曲調ですから、無難過ぎるほどの叙情HM仕上げに落ち着いてます。ヴォーカルは伸び伸びといつものロニー唱法をブチかましてくれてて最高。メタル史に記憶されていくべき名カヴァーといっても過言ではないかも。何で死ぬんだよー。

  9月13日
収穫はなし。飛んできたギターが直撃した右足親指の爪の件(詳細は今月2日の日記後半)の続報です。その後内出血部分は痛まなくなり、ドス黒い色もひいていったのですが、化膿してるわけではないけど爪の下に血と組織液の混じりあったものが常に溜まっている状態で、それが時々漏れたりしながらしばらく過ごしていました。それがここ何日かで、爪の付け根まわりの一見正常な部分が腫れあがって痛むうえに色も褐色がかった紫に変わってきて、なんか爪グラグラだな〜と思って試しに軽く引っ張ってみたところ、本当にそのまま抜けてしまいそうな手応えが…いっそ抜いたろかとも思ったけど明日の大阪遠征(MAGMA観戦のため)に差し障るのでとりあえずやめときました。でも抜くしかないんだろうな。生え際の白い半月が異様に大きくなってるし(註:爪がなくなるとここからムクムクと新しいのが育ってきます。過去に体験済み)。ということで1・2週間のうちに私は爪が19枚しかない男になると思います。抜けたら爪単体の写真と爪のない指の写真をそれぞれ撮っておいて、いつの日かCDのジャケにでも使おうと思いますよ。ゴアグラをささやかに体現する男になるっす。

【本日のレビューその1:RHYTHM OF BLACK LINES「RHYTHM OF BLACK LINES」】


GHOST & VODKAもリリースしていたカクカクマスロック専門レーベルSIX GUN LOVERの看板バンドの99年発表デビューミニ。SOUTHERNやMY PAL GODから個人名義で何枚か出しているポール・ニューマンはここの人っすね。既に持っている1stフルの方はヘンリー・カイザーみたいなフュージョンテイストの突撃変拍子ポストパンクをやっててなかなか良かった記憶があります。この頃はMINUS THE BEARとWICKED FARLEYSとILIUMの間みたいな、エモっぽくもありつつやけに淡々としたスタイル。あるいはシュール系芸人的な薄ら笑いが加わったTHE UP ON INか、素朴で物静かになり過ぎたTHE DISMEMBERMENT PLANか。アッと驚かないなりにキャラ立ちもそこそこ良く優秀な出来です。まあしかしこれに似たバンドのCDをもう1枚買おうという気にはならないか。先達の方法論が浸透して誰でも完成度の高いマスロックを組み立てられる時代になりましたっていうわかりやすい標本ともいえる。ちなみに現在はもっと路線変更してシド・バレットみたいになってるそうです。90 DAY MENパターンっすな。

【本日のレビューその2:スピッツ「インディゴ地平線」】


4日前の1stからやっとここまで来ました。このアルバムはロウミドル(主にベース)がボコボコうるさくて高域はサッパリ出てなくて、空間処理的にも置きっぱなし感が強い、ラフにしようとして大失敗した酷いミックスだったので、リマスターには大いに期待してました。結果は(元の悪さを思えば)上々。下っ腹が引っ込んだうえ、中高域を潰して底上げしたお陰でヴォーカルが立ってリヴァーブ成分もちゃんと耳に届くようになり、インディロック然とした生っぽくガシャガシャした音に生まれ変わってます。"花泥棒"のイントロで震えるスナッピーの音もよりクリアに。内容の方は、バンド自ら金字塔と認める「ハチミツ」を踏襲する部分もありつつ、もっとオーバードライブギターでガッツリ迫るロックバンドらしいエッジ作りにこだわった跡が目立つ。ガッ、ガッ、と切り込むパワーコードとほんのり感傷的なピアノの絡みに導かれてサビではグルタミン酸全開のマサムネ節が炸裂する2曲目"初恋クレイジー"、フロアタムの派手な刻みが若々しい"ナナへの気持ち"あたりは元々の歌心と上手くマッチングした成功例。昔ではやらなかった大胆デジタル風アレンジのシングル曲"渚"などの存在も良い香辛料になってます。あとは数曲を除いて比較的地味な曲が多いという印象が強い。別にこれまで全作捨て曲なしで来たバンドではない訳ですけど、ポスト・ハチミツという立ち位置と、あまり身を削らずに悠々とJ-POP市場対応型クオリティをこなしているような雰囲気(スムース過ぎる歌詞も一端)が相俟って、「名曲も入ってるつなぎアルバム」だなあというイメージが拭いきれない。ひとまず俺らロックバンドですからっていうところをきっちりアピールして、今後につながる身の振り方をスタートさせたという点では、大いに有意義なステップだったと言えましょう。

 ちなみに次作「フェイクファー」はだいたい書くことは書いたレビューが過去にあるのでリマスター所感のみ簡単に。ヴォーカルの高域がスンナリ抜けないせいでいまひとつ分離が悪く感じられていたのが見事解消、ベースとバスドラのアンバランスも上手く整って、ドン・ツン・パンと目鼻立ちが良くちゃんとリアルな今っぽい仕上げになりました。無理なリマスター感を一切漂わせない秀逸な完成度。これは絶対従来盤よりこっちをお勧めします。ラストのタイトルトラック泣けるな〜。

  9月12日
収穫はなし。早速送って頂きました、今日は11歳(撮影当時は7歳?)のこゆきチャン2枚。

↑ミュージシャンの丁寧な宣材写真の如く

↑これは反則イヤ〜ン
送って下さったのは愛知県のかつさんでした。ありがとうございます!まだまだお待ちしております、趣旨と要綱は昨日の日記で。

【本日のレビューその1:BONNIE 'PRINCE' BILLY「MASTER AND EVERYONE」】


a.k.a.ウィル・オールダムの2003年作。精力的によく作品を作り続けるもんです。このアルバムはアコースティック主体な上に全編ドラムレスで、普段以上に静謐としたディープな作風。やってること自体は最初からずーっと変わらず、伝統的なアメリカンフォーク/フォークロック/フォークブルーズを現代の空間(≒音響)で鳴らしているだけなわけですが、どういう音楽性にまたがって走っているかというよりも、歌い手としての存在意義がまず勝るという、稀有で価値ある表現者だと思います。この盤はとりわけ音数の少ない、スローコア寄りのつくりになっていて(LOWのクリスマスEPに近い雰囲気)、聴き手に次の1秒を渇望させるような求心力をもつことに成功してるのはひとえにこの男の貫禄ひとつ。これが所謂スローコアスタイルをもっぱらなぞるだけのつまんない亜流バンドだと遅さに苛立ってステレオを止めてしまいたくなるくらいですから、同じ空白の1秒に酔わせられるか、白けさせるか、シビアなところで連戦連勝を収めるこのヒゲはやっぱりひとかどの何がしですわ。いくら買っても全部同じだと知りつつ見ると買う。未聴の人はドラム入りのバンド形態でやってる他の作品の方が入りやすいかも。濃い方がよりよいという人はこれでも。

【本日のレビューその2:スピッツ「ハチミツ」】


あらゆる角度で焦点のばっちり定まったこの盤に今更何の言葉を与えようかという感じですが、流れですので。リマスター効果に関してはもともとが凄く整ったプロダクションになっていたので印象に大差はないか…と思いきや、音量アップと引き換えのダメ押しのコンプのせいで超低域がドブーッと幅を利かせるようになって、奥行きが皆無になってしまった挙句ミッドが時々クリップしてるようにも聞こえます(ヘッドフォンだと結構ツラく感じるほど)。こりゃ良くない、よくある改悪リマスターの類。そりゃ迫力は出たけどオリジナルの方が音楽的内容に見合ったかわいい鳴りをしてて断然よい。さてその内容はといえば、ジャケどおりの垢抜けた、カジュアルな、フレンドリーな、可愛らしい、Kから出世してGEFFENまで行ったような、一般市民が等しく思い描くところのスピッツサウンドに終始。これまでのアルバムに点在してきた"ニノウデの世界""プール""日なたの窓に憧れて""青い車"等の垢抜け予備軍な名曲達を作ってきた何気ないセンスを90年代半ばの賢さ(と当人達が再確認したところの文系学生感)の中に改めて体系化して、いくらでもヒットチャートを戦っていける余裕のデザイナー・バンドとしてガッツリ生まれ変わってます。そのセオリーでやれるだけやった初めての盤なだけに当然無駄はどこにもなく、最初から最後まで一切手を抜かないフルコース。アートワークの一部で軽〜く「PET SOUNDS」をオマージュしてますがそれに踏み切ったバンド自身の充実感も想像に易い。しかも"ロビンソン"みたいな曲はやっぱり彼ら以外誰も作らんという点で、ただ優秀であるから凄いというだけの評価には収まらない人達だよなあと思います。フェティッシュな屈折ファンからするとツッコミどころがなさ過ぎてテンションがいまひとつ上がらない盤でもある…のは私だけかも知れませんが。

  9月11日
収穫はなし。ペットフードのパッケージに写ってる(または描いてある)イヌネコ達ってことごとく美形です。街中で美しい犬を発見すると振り返ってじっと注視し続ける不審者でございます。管理人本人が見たい一心でこの際、LOOBIECOREのネコ写真コーナーみたいに、「お宅のペットちゃん写真」を送って頂ければ当欄にて掲載することにしますので、自慢の美男美女を連れてる方がいらっしゃいましたら送りつけて下さい。写真の画像ファイル(ビットマップ形式のものはあらかじめjpegなどに圧縮して下さい、表示サイズはこちらで調整しますのである程度大きいままでも結構です)とあなたのお名前(HN可)、お住まいの都道府県、ペットのお名前、性別、判れば年齢をお書き添えの上、件名「ペット写真」にてmuzzai@hotmail.comまで。日記がネタ切れの日までとっておく場合がありますので送付日と掲載日の間が空くのはご了承願います(不採用はありません)。犬猫鳥鼠何でもOK、よろしくお願いします。まあ好みは柴犬ですけど。

【本日のレビューその1:DR. FEELGOOD「MALPRACTICE」】


パブロックといえばDR. FEELGOOD(と専らの相場だそうです、全然詳しくないので実感なし)。これは75年の2nd。ノリノリアップテンポナンバー中心の1stに比べてやや地味めの雰囲気、しかし内容充実、というのが一般的な評価なようです。酒場風のワイルドな気前良さは残しつつバンドのダシとなっているブルーズフィーリングをコンパクトに堪能出来るということで、尻軽でちょっとストーンズっぽいTHE ALLMAN BROTHERS BANDか何かだと思って接するといい塩梅なのでは。半分オリジナル半分カヴァーという構成になってて、「えーえよ、ウバドゥバドゥバドゥ、あははは」のフレーズ(ボガンボスも使ってた気がする)で有名な"Don't You Just Know It"も収録。ピアノが躍るアゲアゲ系の曲にはしかしまんまとアガりますね。シャープなカッティングと絡んで乱痴気騒ぎなラスト"You Shouldn't Call The Doctor"のヤケクソな高揚力などは抵抗の術なし。となるとやっぱりまずは1st聴けってことですかな。

【本日のレビューその2:スピッツ「空の飛び方」】


二日前から続くスピッツレビュー、いきなり3枚飛びましたが「オーロラ〜」はこちら、「惑星のかけら」「CRISPY!」はこちらで。リマスター所感は「パシパシ」がちょっと「バツバツ」寄りになったな〜という程度。ビーイング系くさい耳当たりは緩和されてます。しかーしそれは音響に限っての話、音楽的内容はといえばこのスネア頭打ち+急勾配メロの溌剌ポップな1曲目"たまご"を筆頭に、90年代前半の悪しき洗練に呑まれた一過性のアプローチ満載の出来。序盤を聴いてオッなんだ昔どおりじゃんと安心していたらZARDみたいなサビで豪快にはたき落される2曲目"スパイダー"で事の深刻さをいよいよ確信。健全にいける活路を見出だせそうな折り合い具合をもった"空も飛べるはず"でブレイクしたのは幸運だったというべきか。(因みにこの曲のサビは絶対「この胸にあぷれてる」に聞こえます、CD持ってる人は改めてよく聞いてみて下さい。)「フェイクファー」にも馴染みそうな"迷子の兵隊"、場違いなホーンアレンジが残念な大名曲"恋は夕暮れ"、迷走を極める6〜8曲目あたりを経て、力の抜けたPUFFYノリの"ベビーフェイス"、イメージどおりの爽快路線一直線"青い車"、得意の16分シャッフル"サンシャイン"と安心を見せて終わっていくあたりは、グッと素に戻る次作「ハチミツ」へのグラデーションのようでもある。マサムネの歌は前作までの暗い曇りが取れたものの、メインストリーム第一線らしい頼り甲斐をわざわざ醸し出そうとしてるようなフシもあって、小学生というより大学生前半的な発展途上感。あと卒論書いて最終面接勝ち抜けばひとまず大人の男だぜってな希望にも包まれた、ポップス界でひとり立ちする前最後の習作。

  9月10日
収穫はなし。そういや先日また久々にBURRN!を立ち読みしてきました。編集後記(主に前田や藤木の病みっぷりを確認)→CDレビュー(BURRN!で最もわかりやすいページ)→白黒ページ下方にある輸入盤屋の広告(真の新譜情報チェックはここでする)→喜国雅彦の6コマ漫画→気になったインタビュー、の順で目を通す元・熟練読者の自分。BURRN!は表紙が10年前と変わらない、とは私が熱心な定期購読者だった頃から言われてたことですが、そこから更に10年経った未だBON JOVIだったりして絶句。そのスタンスでメタル隆盛よもう一度なんてあり得ん。懐メロの部類と代謝を是とする部類の間にあるボーダーをよく見て、自ずと扱いも違ったものにしていくべきだろうに、インタビューやライヴリポートのページ数割り当ても相変わらずキャリア序列な上「WARRANTやCINDERELLAがUSツアーをしている。ハードロック復活の兆し」とか「いわゆるニューメタルはそこそこ元気があるのにトラディショナルなスタイルの欧州勢はサッパリ。何故メタルが一丸となって盛り上がらないのか」みたいな明らかに論理的にスカッてる煽りをまだやってるんでしょうか奴等。ゴールデンの司会を西川きよしや欽ちゃんに徹底独占させた挙句「イカン、お笑いが廃れていく」などとテレビ業界が嘆くようなもの。このまま長くなり過ぎそうなので要旨を端的に集約しますと、「NEVERMOREをもっと売れ!」ということでした。

【本日のレビューその1:VANDENBERG「VANDENBERG」】


WHITESNAKE、MANIC EDEN(!)他に絡む長身ギタリストのエイドリアン・ヴァンデンバーグを輩出した(というか彼がリーダーですが)オランダ産バンドの82年1st。叙情HMのお宝みたいに言われる彼等ですがこの時点でそういう色のフィーチャー度は低く、ブルーズフィーリングをやけに押し出したRATT、或いはBADLANDSの先取りのような中に、時々クラシカルなコード展開が混じるといった具合の、現在の完成されきった様式美を既に知るリスナーにはいくらか淡白な内容。特に若年リスナーは「RIOTの『FIRE DOWN UNDER』って名盤と言うけどそんなにかい?」みたいなのと同等の肩透かしは覚悟すべき。しかし歴史考証的視点で5曲目"Ready For You"なんかを聴くと、あ〜ヘヴィメタルって本当に硬くて速くて新しいハードロックだったんやなあ、と実感出来たりもします。ていうかこれ実際CD聴きながら文章書いてる訳ですけどアナログB面にあたる後半はやけに叙情的でメタル然とした曲が連発されててなかなか良い。RAVENとGLORY(ヤン・グラウィックのです…憶えられてるでしょうか)の中間みたいな上品な泣き+荒れるビートのコンボがラストまで炸裂し通し。A面はアメリカでのセールスとかを気にしちゃったんでしょうかね。ちなみに肝心のエイドリアンのリードギターは、構築的な速弾きキメパート以外は大してフィーリングがあるでなし、よく歌うでなし、この時点ではそれほど華を感じません。彼個人のポテンシャルにしろバンドの力量にしろ、名盤とされる次作を聴いて判断したいところ。

【本日のレビューその2:スピッツ「名前をつけてやる」】


おお"ウサギのバイク"イントロのアコギの音色から俄然活きててTHE BYRDSのようである!いいねリマスター効果。低音が出たせいか三輪テツヤのへろへろギターソロが多少引っ込んだ感じになったのも大いに良い。さてこちら、コアなファンからは最高傑作との呼び声高い2ndであります。楽曲の作風、ヴォーカルの歌い方ともども、前作で聴かれたヨチヨチした可愛らしさが若干オミットされ、迷いなき芸術家時代(対するはデザイナー時代)のスピッツをより洗練された形で楽しめる内容に。全体的には爽やかなりに悶々とした和フォーク色より、悶々なりに垢抜けるUKギターポップ色の割合が僅差で勝る。ブレイク後のヒット曲群を思わせる安心のポップセンスは"プール"(間奏がSIGUR ROSみたい)や"魔女旅に出る"あたりで着実に発揮され始めております。一方90年代の国内ポップス消費市場で全く意味を成さないタイプのアマチュアインドアフォーク然とした隠れ名曲"鈴虫を飼う"みたいなのがまだ残ってるのもいいところ。これ以降のリリースではアレンジやら何やらに商業プロダクツ的洗練なる戦略眼が持ち込まれることになり、のびのび自由なバンドの姿は一旦ここで終了。そういうレア感もあってファンがフェイヴァリットに挙げやすくなってるという気もします。無論もともと良い作品に仕上がってるわけですが。ピュアこそリアルという価値観の方なら、売れてからのものよりグッときやすい盤でしょう。

  9月9日
本日の収穫、アマゾンでリマスターまとめ買いのスピッツ「スピッツ」「名前をつけてやる」「オーロラになれなかった人のために」「空の飛び方」「ハチミツ」「インディゴ地平線」「フェイクファー」計7枚。抜けてる2枚は先月に購入済みです。あと来週に迫るMAGMA大阪公演のチケット買いました。7,000円也。生「KA」で踊り損ねてきます。

【本日のレビューその1:ORTHRELM「IORXHSCHIMTOR」】


THE FLYING LUTTENBACHERSに電撃加入してしまったミック・バー(G./ex.CROM-TECH、OCTIS)と、相方ジョシュ・ブレア(Ds./ABCS)のデュオの2001年作。全12曲、トータル16分です。THE DILLINGER ESCAPE PLANの高音キメフレーズ、ランディ・ローズのギターソロ、倍速再生したVOIVODのリフをそれぞれ寸断したものを麻袋にブチ込んだところから無作為に取り出して並べて、更に密度130%まで圧縮したような、この世の果ての病的メタリックスカムノイズ。ある種の可愛さが感じられなくもないHELLAやLIGHTNING BOLTともまた異質の、一切シッポをつかませない底知れぬ狂気を孕みます。恐るべきはこのランダムにやってるとしか思えないギターが全編全てLR2トラックでダブリングされていること。しかもそのフレーズ全部とドラムがこれまた完璧にユニゾンを奏でる始末。ちゃんと作ってこれのようです、本物の天才って奴は読めん。どっから降って沸くねんこんな音楽…と半ば呆れるほどですが、くさび型文字のようなカクカクした手書きのアルファベットと、同じく全部手描きの微生物スケッチのようなアートワークからして、VOIVODにはかなりの敬意を払っているのではないかと思われます。ともあれジャンルに関わらず異様な音楽が好きな人なら必聴。

【本日のレビューその2:スピッツ「スピッツ」】


リマスター一挙購入につきしばらくスピッツが続くと思います。これは91年の1st。EQのバランスは良くなったがリミックスではないためバスドラの残響とかまで重くなってしまって、良くも悪くもリマスターだな〜ってな音像になりました。買い替えを検討しているファンの方は旧盤を売ってしまわないことをお勧めします。しかしこうまっとうにズバンと抜ける音になったためか、以前ざっと聴いた感じではもっと「バンドとして二本足で立つための筋トレ的習作」みたいなイメージがあったのが、音楽自体にグッと頼り甲斐が増した感があり、これは明らかにプラスの効果。内容に関しては、細かいイディオムがバンドブーム期の日本っぽさを感じさせはするものの、海外のフォーク/ギターポップと国内の王道フォーク歌謡双方に影響を受けたマサムネの創作性やら、三輪氏のアルペジオ専門職っぷりやらといった大筋の部分は(時流に従って足し引きされていった要素はあれど)変わらんなあという感想のまま。"月に帰る"なんかアレンジ変えなくても「ハチミツ」以降のアルバムに難なくマッチするだろうし(というか"渚"のプロトタイプですな)、冒頭の"ニノウデの世界"のヴァースは「99ep」収録の"魚"を思わせる。初期の名物である鬱屈した歌詞はやっぱり全開で、一文字一文字先を歌うのを聞くごとにどんどん青ざめるような毒盛り攻撃は明らかに売れ線ポップスの規格外。しかしこの頃と同じロジックの応用編でその後のラブソングも書いてるわけで"うめぼし"あたりに既にその片鱗が窺えます。スピッツというバンドの「3歳までに形成される基本的人格」みたいな本質の部分を覗くには一番見通しのよい作品かと。

  9月8日
▼バーゲン前の良品放出チェックに訪れたサウンドベイ金山でバッチリ本日の収穫FIRESIDE「GET SHOT」(2003年)、ONEIDA「STEEL ROD EP」(JAGJAGUWAR)、BRANT BJORK「JALAMANTA」(MAN'S RUINからのソロ)、BEN KWELLER「ON MY WAY」、RHYTHM OF BLACK LINES「RHYTHM OF BLACK LINES」(SIXGUNLOVER!)、ORTHRELM「IORXHSCIMTOR」(2001年)、BONNIE 'PRINCE' BILLY「MASTER AND EVERYONE」、J.J.JOHNSON / KAI WINDING「THE GREAT KAI & J.J.」(60年IMPULSE!)。

【只今のBGM:FIRESIDE「GET SHOT」】


スウェーデン随一の燃える漢気エモ/ポストコアバンドFIRESIDEの2003年作。グランジー&ガッツィーに勇みまくりつつ背中で哀愁を見せるJAWBOX直系の骨太スタイルが本当に魅力だったんですが、ここでは昨今のガレージリヴァイヴァルに感化されていたり、Q AND NOT U(の2ndくらい)みたいになってしまったり、JIMMY EAT WORLDやCOPELANDみたいなオシャレッティ・ポップエモと化してしまったり色々。なんか北欧のバンドはSTARMARKETといいLAST DAYS OF APRILといいこっち側に流れていく傾向が強いみたいですね。しかしよう聴けば、往年のゴリ押しパワーリフの代わりにチャカチャカとタンバリンなんかを入れてしまった程度の違いで、根底を貫く汗臭い男の歌心は未だ健在。若作りし過ぎたFOO FIGHTERSみたいな感じでしょうか。芯までフヤケてはいないのでファンはついていける範囲内だと思います。これで10曲中1曲くらいディストーションギターバリバリの旧来路線をチラつかせてくれたらなお安心だったんですがなー。HUSKER DUの"Don't Want To Know If You Are Lonely"をカヴァーしてズバはまりだったりしたじゃないか昔は。まあ日和り気味とはいえ現役の気概とヴェテランらしい円熟が両方堪能出来るという点で、総じて肯定的に受け止めたい一枚。

  9月7日
収穫はなし。今年もマクドナルドは月見バーガー投下ですか。How can you be lovin' it??以上、「秋らしい話題」でした。

▼全国の犬ファンを震撼させているであろうPasco超熟のCMの赤マフラー犬、フランスの絵本シリーズ「ガスパールとリサ」のリサの方だそうで。ぼのぼのといいスヌーピー といい、目が点の動物に昔から弱いようです。そういえばこれもか…。

【本日のレビューその1:KYUSS「WRETCH」】


1991年DALI RECORDS / ストーナーロック
90年代ストーナーの元祖とされるバンドの91年1st。よっぽど全編グッタリズルズルしてるのかと思いきや全然で、「WOLVERINE BLUES」以降のENTOMBEDおよび北欧爆走ガレージレトロック一派の直接的な元ネタといってもいいほどのスッ飛ばし豪腕チューンが全体の6〜7割くらい、あとはSOUNDGARDEN(年代的に同期)みたいなモヤモヤしたサイケ感漂う曲がポツポツ入っている程度。「つまるところBLACK SABBATHかBLUE CHEERの焼き直しの複合形」みたいなストーナーロックのパブリックイメージとはむしろ遠いのが興味深い(次作以降だんだんそっちに近づいていきますが)。ここではサバスのヘヴィリフを対象化して使いこなすようになってしまったBLACKFOOTもしくは初期BLUE OYSTER CULTといったところ。さすがオリジネイター、若いうちから懐広いっす。ちなみにドラマーのブラント・ビョークは現在FU MANCHUのメンバーになってます。そちらは中古で安く入手しやすいのでもし見つけたら試しにどうぞ。

【本日のレビューその2:KYUSS「...AND THE CIRCUS LEAVES TOWN」】


後期作が本当にサバス化してたかな〜と思って聴き返してみたらえらくカッコ良かったのでついでに。95年のラスト作。サバスというよりスローダウンしてるだけですね。徹底的に高域を落とした激ファズギター&激ファズベースと、それに見劣りすることのない巨象のひと踏みの如きラフ&ヘヴィなロッキンリフの数々、ポーズや飾りじゃないリアルなソウルに溢れております。MELVINSばりの重圧コントロール術も冴えてて、ヘヴィネスの質が極めて今日的。開き直ってレトロック展覧会&リー・ドリアン隠し芸大会な様相を呈するようになったCATHEDRALと比べると圧倒的に「今ここに足を着いてやっている」という現役感が強い。これ以上は無理ってことになって解散になったんでしょうか、ともかくも限界寸前の不気味に落ち着いたテンション感が何ともディープな、最良なる有終の美。

  9月6日
本日の収穫、バナナ名駅店でKIX「BLOW MY FUSE」(88年4th)。風雨フゥ〜。

【只今のBGM:MOVING GELATINE PLATES「MOVING GELATINE PLATES」】


レコメン肌なフレンチ変態ジャズロックバンドの70年1st。以前別の作品を紹介したことがありました。内容的にはあまり変わらずビーフハート+クリムゾン+SOFT MACHINE≒エトロンってな感じなのですが、要は我流妄想ザッパということか。いや違うな…本当に変態なのか、当時流行の変態ムードにドップリ没入してるだけなのかもはや不明。少なくとも余りにも「プログレな」創作物であることは確か。変拍子バリバリでおちゃらけでエスニックなユーモラス系スタイルは、その手の代表格ながら時々シリアスになり過ぎるサムラよりも笑いっぱなしで聴けて非プログレッシャーには分かりやすいかも。後半はどういうわけか80年録音の音源が4曲入っておりまして、全力でMAGMAのフリをするTHE RESIDENTSみたいだったり、KLIMPEREIをゲストに迎えたATOLLみたいだったり、THE BYRDSと4人時代GENSISが合体したみたいだったりと、ジャンキッシュの極みでなかなか楽しい。有名じゃないけど「裏・名バンドの定番」くらいの評価までありついてもらいたい人達です。しかしこのジャケはゴアグラか猟奇ゴシックデスにしか見えんですな…

  9月5日
収穫はなし。雨後の筍の如く新種が現れ続ける何々バトンの横行あれは何なんでしょうね、質問されてる格好になってるのをいいことに余計なことも紹介しようってそりゃミカンズのテーマだけで充分。ということでそんなものは勝手に作って答えてしまおうと思います。

コカコーラの自販機は好きですか。
嫌いです。

サントリーの自販機は好きですか。
烏龍茶。

キリンの自販機は好きですか。
松嶋菜々子別に〜。

ポッカの自販機は好きですか。
「Lemon a day!」というマニフェストを掲げている。素晴らしい。プリンシェイクがある。絶賛。冬場はホットのレモン系がいい。

ダイドーの自販機は好きですか。
昔は。(お婆ちゃんの家からの帰り道にあったから。)

伊藤園の自販機は好きですか。
缶で茶は買わんが100%果汁系が実はいい。中谷美紀もいいんじゃない。

オリエンタルの自販機は好きですか。
さすがに身構える。買ったりもする。

カルピスの自販機は好きですか。
白以外認めません。

ハーフタイムの自販機は好きですか。
ひんやり夏みかんゼリー。

カゴメの自販機は好きですか。
紙パックオンリーという珍種で、余り街中では見掛けないが、何が飲みたいか分からない時に強力。100%果汁充実。

ネスカフェの自販機は好きですか。
印象なし。

何故缶飲料に一言あるかというと、消費行動にあたって妥協を許せないタイプの人間(=ケチ)が悩まされ得る最も身近な存在だからです。以上「ケチバトン」でした。

【只今のBGM:ALL SCARS「LUNAR MAGUS」】


元MONORCHID他〜現FRENCH TOASTのジェリー・ブッシャー、FIGAZIやらFARAQUETやら多数のバックでチェロを弾いているエイミー・ドミングス、元META-MATICSのチャック・ベティスの3人によるDC発ダーク・デロデロ・エクスペリメンタルユニットALL SCARSの、2002年リリースのフルアルバム。別のEPではインストインプロ一辺倒でしたがここでは毛色を変えて、チェロ、フルート、トランペットにサックス、クラリネットといった管楽器を大量導入した上にラガともスポークンワードともつかぬヴォーカルまでフィーチャーし、SMART WENT CRAZY〜NEW WET KOJACKラインの酩酊パブ・ダブ・ポストコアを更に三周ねじったようなDC流ラディカルアヴァンスタイルを大成しております。いやあ渋い、濃い。最近のBJORKのリミックスとかやっててもおかしくない雰囲気。裏ジャケにReRって書いてあっても納得。ただのグダグダ合戦じゃなくて曲ごとの噛み分けが可能な作り込み(演奏後のエディットによるものも大きいと思われるが)がなされてるあたり、金払って所有することにして良かったと思える充実度はちゃんとあります。コルトレーンvs.エルヴィン・ジョーンズのサシバトルを思わせるヴォーカルとドラムだけのラストの曲とかテンション壮絶。イケるかもと思った人だけどうぞ。

  9月3−4日
収穫はなし。ズレた生活リズムを修正するのに一晩ではきかず、重い筋肉痛が3日経っても消えない件。目下の最大の関心事は健康。老人ですな。

【本日のレビューその1:DIRECTIONS「DIRECTIONS IN MUSIC」】


バンディ・K・ブラウン(TORTOISE、GASTR DEL SOL、REX、PULLMAN他)、ダグ・シャリン(CODEINE、REX、HIM、JUNE OF 44他)、ジェイムズ・ワーデンによるプロジェクトの唯一の作品。名義はメンバーの連名とされていたり、DIRECTIONS IN MUSICといわれていたりするようですが、THRILL JOCKEYオフィシャルで確認したところ上に書いたとおりのDIRECTIONSとなっていました。内容は全くもって面子どおりの、一言でいえばアメリカーナ音響ポストロック。アルペジオとプリングとスライドをとにかく多用する例のフォーキーなギターと、感触程度にジャズを取り込んだ変則的かつササササと繊細なドラム、ルート感は踏まえつつギターばりにフレーズを追いかけるベースが絡み、ミックスの段階でのコンポジション的音響処理もところどころで現れる、PULLMANと初期TORTOISEと初期HIMの中間(そのまんまですけど)のようなスタイルです。96年にこの内容。あとは歌が乗るか乗らないか、テンポが速いか速くないか、その程度の差異で、いわゆるポストロック/スローコアの「和み系」に属する部類が拠り所にしている方法論というのがこの頃から殆ど進化してないことが判ります。この盤をTHIS HEAT的な不朽のパイオニアアルバムと見るか、ポストロックカルチャーそのものがヤバイと取るか、解釈は色々と分かれましょう。ともかくもこの手のジャンルのマイルストーン的作品だったことは間違いありません。

【本日のレビューその2:DAVID LEE ROTH「SKYSCRAPER」】


胸キュンメロと技巧オンパレードを平気で見せ付けまくるきょうびの良く出来たエモは80年代アメリカの産業ヘアメタルと本質的に同一であると常々思っている私ですが、VAN HALENを脱退したデイヴ・リー・ロスの2枚目のフルアルバムとなる88年のこの作品はさながらMINUS THE BEARみたいな出来です。先日の合宿(昨日分の日記参照)の車中BGMを選んでいたときに「オッ夏らしくていいね〜」と思って携えていって久々に聴き入ってしまったので唐突に登場。テクニックとアイディアがガッチリ組み合った超人的な立ち回りを見せるスティーヴ・ヴァイのギターにとにかく改めて驚くことしきり。聴き手の先読みをあっさり蹂躙してアラスカからスリランカまでワープするような強制サプライズっぷりはHELLAやORTHRELMに勝るとも劣らん。タッピングが凄いのは勿論、アルペジオの変さ、チョーキングのピッチの恐るべき精度やただのパワーコードのピッキングのタイム感・ニュアンスに至るまでため息の連続。タッピング流行りの昨今、彼のテクニックを再評価する価値はおおありですよ。そのヴァイに拮抗すべくベーシストの座に呼ばれたのが元TALAS、のちにMR.BIGを結成するビリー・シーン。前作「EAT 'EM AND SMILE」では猛烈に弾きまくっていたのですが若干アダルトな色合いの持ち込まれた今作ではやや控えめ。しかしここぞという場面ではあの激弾きが炸裂します。その二人を両脇に、あくまで主役を飾るのは我らがダイヤモンド・デイヴと。歌が全面的に上手いというわけではない気もしますがとにかくキャラクターとオーラですね。王道パーティーR&RからVAN HALEN的高速シャッフル、泥臭フォーキースタイル、4つ打ちディスコポップスタイルまで我流のワイルドな歌唱でこなしてます。白眉はシングルヒットもした"Just Like Paradise"(邦題「まるっきりパラダイス」)でしょうな。BOSTONがワイルド化したような豪快爽快ビールCM系の大名曲。もうこの手の音楽も「メインストリーム・メタルという10年間限定の特異領域」ではなくGRAND FUNK RAILROADからFOO FIGHTERSまで繋がるアメリカン・ロックの歴史の経過点として、冷静かつ順当に語られるべき時に来てると思うのは私だけっすかねー。

  9月2日
▼コーラは好きですか?「はい」と答えた人は、コカコーラの自販機、ポッカの自販機、ハーフタイム(JT)の自販機が並んでいたとき、コカコーラの自販機の前に進んで赤い缶のコーラを買いますか?これに「はい」と答える人が結構いる。

▼卒業した大学で所属したバンドサークルの夏合宿に途中参加で3日間出掛けてました。長野県は北志賀高原。冬にスキー客向けのロッジをやっているような所が夏場はこぞって、スキー板などを置くような部屋に楽器を入れてスタジオに変身させて、我々のような団体を受け入れる一帯になっておるのです。そこへ学生達は出掛け、花火やらバーべキューやらといったイベントを挟みつつバンドの練習をし、最終日のライブコンパで発表して打ち上がると。29時頃まで延々年配部員(もしくはOB)部屋に若い人を代わる代わる連れ込んで詰問しまくったりと、合宿らしいことを色々してきました。自分が出演したSEPULTURAのコピーバンドで威嚇的な大ヘッドバンギングをかましてきたせいで首がガチガチに筋肉痛、重いリュックとギターを背負って移動したせいで腰が痛み、ライブコンパでステージから飛んできたギターがチェストでワンバウンド後足の親指に垂直落下して酷い内出血を起こし、それらトータルで現在何故か全然動けない状態になっています。横になったら3分は起き上がりません。爪は抜く羽目になる気配が無きにしもあらず。とりあえず2週間くらい生活止めてくれんかな俺の。帰りにCD屋などは寄らず、北志賀高原にはそんなもんあるはずもなく(往路の松本あたりで物色してみたい気にはなった)収穫なし

【只今のBGM:SEPULTURA「MORBID VISIONS/BESTIAL DEVASTATION」】


ブラジリアンスラッシュの雄と言うべきか、トライバル派ニューメタルの先駆けSOULFLYのマックス・カヴァレラがいたバンドと言うべきか、ともかくご存知SEPULTURAの1stフル。97年の全作リマスターに伴ってデビューEP「BESTIAL DEVASTATION」とカップリングになりました。若者がバクハツしてますな〜痛快ですなあ、と楽しく乗れるアメリカ勢とは決定的に異質な根の深い暗さがあって、キリキリ刻む16分リフの邪悪さや度を越したスピードの2ビートからしても圧倒的にデス/ブラックメタル的。同郷のSARCOFAGOとよく似たテンションです。演奏はまだ相当ルーズながら、秘めたるパワーのほどは何となく窺われる。注意して聴くととにかくリフの作りが単純明快で、スローダウン以降のスタイルで見られる強引なツカミっぷりに通じるものを随所に発見出来るのが興味深い。まあ総じてドタバタマイナースラッシュの域ですから、「BENEATH THE REMAINS」が良かったからといって買わなければいけない品ではありません。初期DARK ANGELだのLIVING DEATHだのこそ最高という人は、多分もう持ってますわな。

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