物色日記−2005年11月

※頻出語句解説はこちら
  11月30日
▼レゲエ7インチ特集とか、R&B50枚新入荷とか、あまり関心のない内容が来ることの多いバナナレコードのメールマガジンに昨日は「デスメタル/ハードコア/グラインドコアのCDが大量入荷、30日(水)より店頭販売開始」との記載が。赤紙が届いたら潔く往くのが男子のつとめです。本日の収穫はバナナ栄店にてINCANTATION「DIABOLICAL CONQUEST」「THEINFERNAL STORM」、NEVERMORE「ENEMIES OF REALITY」(5thのリマスター&ビデオ3曲分追加)、MASSACRE「FROM BEYOND」(EARACHE、4曲追加の2000年リイシュー)。20時に閉まる栄店に19時45分頃に駆け込み、同55分には役を終えスッと店を後にしていました。デューク東郷の気分。

【本日のレビューその1:PAN AMERICAN「QUIET CITY」】


KRANKYを代表する希死系スローコアグループLABRADFORDの中心人物によるソロユニットの2004年作。以前は暗〜いエレクトロミニマルドローンをやってたはずが、VANDERMARK 5のドラマーやCALIFONEORSO他に参加のベン・マサレラなどをゲストに起用して、本家LABRADFORD同然の人力演奏チューンも多々やってます。まーしかし大筋の作風は全く不変で、葬列のTOWN AND COUNTRY、彼岸のYO LA TENGO、カゲロウのDIRTY THREE、諦念極まったSIGUR ROS、ほとんどULVER、といった趣き。最近のULVERが一番近いな。戯れでそういうことをやるんじゃなくて、描写に無駄がなくてちゃんと世界があるのがいいです。不思議と寛大な優しさもある。心地はいいけど体熱をじわじわ奪ってくる微妙な温度の水中に沈みかけて「でももうどうでもいいや」と捨て鉢な気持ちになってしまったような、頭を空っぽにしてネガティヴになれる音響。うーむエクストリームミュージック。

【本日のレビューその2:MASSACRE「FROM BEYOND」】


一日おきにデスメタルのしかもEARACHEですいません。東京大阪にも支店を置き、「愛想は悪いが品は良い」と全国にその名を轟かすHM/HR専門CDショップ・ディスクヘヴンの名古屋本店に勤務のナイスガイ、ビル・アンドリュース君がまだアメリカにいた頃、DEATH(勿論チャック・シュルディナーのあれです)の後にやっていたバンドが91年に唯一発表したフルアルバム。同年リリースの4曲入りEPを同梱してのリイシューが2000年に出てました。これの前に幻のデモが存在するらしく、そちらはOBITUARYとタメを張るほどのデスメタル黎明の香りプンプンでアツイ内容らしいのですが、このアルバムはEVILDEADにデス声シンガーが加入したといった程度のごくオーセンティックな出来になってます。リマスターのせいか異様にプレゼンスが持ち上がったギターサウンドが気持ち悪い(オリジナルのミックスは何とコリン・リチャードソン)。ジェイムズ・マーフィー(g/OBITUARY、DEATH、DISINCARNATE、TESTAMENT他)がいるからとCANCERを買ってみてえらい普通でションボリしたのと似てます。ヴォーカルの節回しがトム・アラヤの影響受けすぎで全曲"Angel Of Death"かと思う。ビルちゃんのドラムは以前一度ヘヴンのマスターとやっているコピーバンドでのライブを見たことがあるんですが、まあ変わったことはやらないパワーヒッターという感じ。というわけで初期EARACHEの中でもかなりツブ立ちの弱い方かと思います。あ、ボーナス収録のEPの方はBROKEN HOPEや3rd以降のCARCASS風のエグエグ・テイストが加味されててちょっと良いか。今日はやけに難癖ばかりつけてますけども、褒めちぎるのはいつもやってるので、たまには「皆ちょっと気になる盤の実体解明」に徹してみました。

  11月29日
本日の収穫、昨日からの勢いで行ってしまったサウンドベイ上前津にてSUSIE IBARRA「SONGBIRD SUITE」(クレイグ・テイボーン、イクエ・モリ参加!2002年TZADIK)、アマゾンマーケットプレイスにてHELLA「TOTAL BUGS BUNNY ON WILD BASS」(2003年)。利き足が左であったことを再認識して以来、自転車を漕ぐときに何となく心に感じる表・裏を、左右逆(今までは左が表でした)にして生活しています。これが最初はなかなかどうして、力のかけ方がよくわからなくて膝が痛くなったり、足首がドン臭くて酷く効率の悪い動きをしたりしていたのですが、半月ほど続けてみた今や随分スンナリと動いてくれるようになりました。そこで浮上してきた別の思わぬ問題が「左の軸足化」への壁。利き足の反対は軸足になるわけで、軸足の安定なしに利き足の自由(特に重心のコントロール)はないわけで、右を酷使するだけでは矯正は完璧でないようです。こっそり片足立ちを試みるなど努力してますが、おいそれと簡単にはいかず。うむ。

【只今のBGM:BRIAN BLADE「PERCEPTUAL」】


ノラ・ジョーンズ、ブラッド・メルドー、ボブ・ディラン(!)等と仕事をする売れっ子ドラマーの2000年のリーダーアルバム。ゲイリー・バートンやポール・モチアンとの共演で頭角を現したカート・ローゼンヴィンケルを含むツインギター・2管・鍵盤・ベースとブライアン本人の7人編成です。ギターの片割れがペダルスティール担当ということもあり、70年代後半のジョニ・ミッチェルのようなあの雰囲気をビル・フリーゼル風アンサンブルで形にしたような、適度に緊張感と翳りのある上品な柔らかさを備えた現代ジャズを堪能できます。ただの毛布やさざ波ではなく、映画的なスケール感を伴った、知性と精神力に支えられるこの刺激性ある大らかさは「和み」どころか「許し」のようでもある。ジャズ/フュージョンの語法からの逸脱はそうないものの、主導権はアドリブよりアレンジされたパートにあって、非常に楽曲然とした作り。ジャズは60年代までと括りを固めてしまう向きにとっては少々の当惑があるかも知れませんが、これはインストロックなのか何なのかなどという論議は余りに徒労。ジャズもポップスも(意図的な接近/脱却という形を取らず)自然に消化吸収した現代的な感性、新しいアイディアと技術(やっぱり古い人より格段に巧い)によってこそ具現化され得た、心広きグッド・ミュージックでありましょう。絵に描いたようなアダルティ〜さを差し引いても(ジョニ・ミッチェルがOKなら気にならない程度ですが)一聴して何かしらムムッと感じるところのある作品かと思います。

  11月28日
▼サウンドベイの年末バーゲンは12月23日(金・祝)スタートだそうですよ。本日の収穫はサウンドベイ金山でMEDINA AZAHARA「PASEANDO POR LA MEZQUITA」「CARAVANA ESPANOLA」、GOD MACABRE「THE WINTERLONG」(初期スウェディッシュデス名バンド!7曲入りフルアルバム+3曲入りEPをリマスターにて丸々コンパイルしたコンプリート盤!!)、V.A.「GODS OF GRIND」、BRIAN BRADE「PERCEPTUAL」、PAN AMERICAN「QUIET CITY」(2004年作)、カイマンから届いたLANDING「SPHERES」(K!)。ガンガン放出する代わりに欲しいCDはガンガン買う近頃でございます。

【本日のレビューその1:MEDINA AZAHARA「PASEANDO POR LA MEZQUITA」】


スペインのヴェテラン様式美HRバンドの記念すべき1st!93年頃になっていきなりキャプテン和田こと和田誠がやっていたラジオ番組で大プッシュされ、輸入盤専門店で俄然フィーバーしてしまったという、90年代前半が青春だったメタラーには懐かしい名前です。音楽的にもその頃の作品はエキゾチックな後期RAINBOWといった風のシンセバリバリ・クラシック趣味(ネオクラシカルではないのがポイント)様式美HMをやっていて一番脂が乗っていたのですが、79年のこのデビュー作も意外とバッチリRAINBOWしてます。柔らかな表現にも気を遣ったややプログレッシヴな展開中心で、全編"Catch The Rainbow"をKAIPAかMONA LISAが演奏してるような雰囲気。それにしても耳を引くのがこのGIPSY KINGSソックリなヴォーカルと、スパニッシュなんだかアラブなんだかとにかく怪しいメロディ!曲の途中でいきなりマジ・フラメンコ(勿論アコギ使用)を挿入してきたり、間抜けなワルツ風リズムにポッポケポ〜とチープなシンセを乗せてくるこのセンス、90年代中盤以降の開き直り系変態メロデス(DARK REALITY、MISANTHROPE他)そのまんまじゃないですか。オイシイなあ。こういう豪快な踏み外し方は僻地ロック特有ですね。それにしてもリリースがCBS/SONYなんで驚いてます。フランスのTRUST(ANTHRAXがカヴァーした"Antisocial"のオリジナルをやってたバンド)もここからだったし、当時は世界中のご当地ハードロック発掘に精を出してたんでしょうか。とりあえず未体験(大多数かと思います)でこのバンドに興味を持たれた方(あんまりいないと思います)は中古で比較的発見率の高い大名盤「SIN TIEMPO」あたりがオススメ。

【本日のレビューその2:V.A.「GODS OF GRIND」】


世界中にショックを与えたNAPALM DEATHに続いて英米欧のエクストリームメタルバンドをどんどん発掘し、90年代初頭にひと時代築いたデスメタルブームの立役者といえば言わずと知れたイギリスのレーベルEARACHE。これ重要タームですから非メタラーさんも知っておいて下さい。そのEARACHEが企画した売出し中バンド4組のパッケージツアーにあわせて編集されたレジェンダリーなコンピレーションがこれです。といっても内容はENTOMBEDの「STRANGER AEONS」、CARCASSの「TOOLS OF THE TRADE」、CATHEDRALの「SOUL SACRIFICE」、CONFESSORの「CONDEMNED」(フルアルバムと同名ですが違う盤)といういずれも別個でリリース済みだったEPを、それぞれ丸ごと寄せ集めて曲順をゴッチャにしただけのもの。正にこれから流行るぜデスメタル、って時にゴアグラ、正統派デスラッシュ、ドゥーム、テクニカルと方向性を散らしてきたのが面白いですね。CONFESSOR以外の3組はその後のフルアルバムのリイシューの際に丸々追加収録されたりして現在でも普通に入手可能なのですが、CONFESSORだけは何故か再発の機会がなく、唯一のアルバムともども今やレア音源と化しておるのであります。ということで当然目当てはCONFESSOR。件の「CONDEMNED」がどれほど凄いかはこちらを参照して頂くとして、ここの2曲(もう1曲はアルバムにも収録の"Condemned")はというと、何と両方とも80年代シカゴの伝説的ドゥームメタルバンドTROUBLEのカヴァー。しかも片方は有名なコンピシリーズ「METAL MASSACRE」のみに収録の曲というからそのマニアっぷりに恐れ入ります。出来はというと、テクニカルなだけではない持ち前のドゥーミーなヴァイブが活きた、どこをどう聴いてもCONFESSORにしか聞こえない仕上がり。ジーン・ホグランがジョン・ボーナムになるまでスローモーションにしたような異常なドラミングにその半分のスピードで絡むズルズルゴリゴリ・リフ、意味なく必死なハイトーンで浮きまくるヴォーカルと、こんなバンドは本当に後にも先にも、どこを当たってもいません。カッコ良すぎ。
 それにしても不思議なのは、いわゆるグラインドコアと呼べそうな音楽性でやっているのはCARCASSしかいないのに、ツアータイトルが「GODS OF GRIND」だったこと。ブラスト中心でハードコア的ストップ&ゴーがあって歌詞は概ねポリティカル、という現在のグラインドコアのパブリックイメージとは関係なく、重くて凶悪でスラッシュメタルより一段階上の(スピード如何に関わらない)過激さを備えた音楽はすべからくグラインドという形容が当てはめられたのでしょうか。そうなるとグラインドコアというタームも、デスメタルよりむしろファストコアとの差別化のためにパンク側の視座から出てきたものなのかなとも思います。その推論が正しいかどうかわかりませんが、ともかくそんな曖昧な空気まで記録した実に興味深い一枚。これまた壮絶極まりないBLACK SABBATHのトリビュート共々、数あるEARACHEのコンピレーションの中でも殊更際立つ盤といえましょう。

  11月27日
収穫はなし。先日のCD棚整理以来、微妙そうなのを見つけてはよけていっていているのですが、そうして出来上がった審判待ちの山が200枚分くらいになっててどうしようかと思ってるところです。バナナの出張査定でも頼もうかと。

【本日のレビューその1:RAGE AGAINST THE MACHINE「THE BATTLE OF LOS ANGELES」】


改めて聴き直したりしたわけでもないのに最近何故か自分の中でこのバンドの再評価熱が勝手に高まってまして、実際聴いてみたらやっぱり思った通りでした。バカみたいにロックで(安っぽくない)、グルーヴに求道的で(54-71みたい)、フロントマンのツブ立ちはとにかく稀代のもので、シンプルイズベストが単なるエクスキューズにならない必要充分なアイディア群、ヘヴィメタルに代わるヘヴィネスの新解釈。ロックをやるバンドとしてひたすら優れていたよなあと思うわけです。1stなんか既に10年以上経ってるのにプロダクションを含め別にキツイ部分はないし。そうかオルタナ+ヒップホップかあ〜と身のない模倣に走った後続たちは今やダサい存在でしかなくなってますが、どういうわけかオリジネイターのこの人達はいつまでも登場当初のショックを保ってる気がします。あーやっぱり全部揃えよう。

【本日のレビューその2:SEVEN STOREY MOUNTAIN「LEPER ETHICS」】


後にSEVEN STOREYと改名してDEEP ELMに移るバンドの恐らく1stフル。どっちにしろツカミの悪いバンド名であります。リリース元の激マイナーインディレーベルART MONKはTHE VAN PELTのEPなんかを出してるところ。買って以来2〜3年振りに聴いてますが、完熟です。FIRESIDEとNO KNIFEの中間のようなゴッツリ男泣き系パワーエモでヴォーカルがちょっとTRAINDODGEのジェイソン似という最高の逸材でした、むざむざと何年も寝かせたままだったとはこれ不覚。SMALL BROWN BIKEあたりに非常に近いですがこちらの方がもう少しDC風のシブさがあります。2002年にBRANDTSONとCAMBERとのスプリットを出して以来全く音沙汰がないのを見ると、既に解散してしまっている気配が濃厚ですかね…。ASCETIC界隈の新世代JAWBOXチルドレン好きからFOO FIGHTERSの最新作でグラッと来てしまった人まで(両方なら尚更)、見掛けたら即捕獲といって下さい。その文脈で光を当ててあげないと90年代末エモ・バブルの沼から二度と這い上がって来れない気がするので。ヴォーカリストは録音や他のバンドのアートワークなんかも手掛けたりする多才な人のようですから、別バンドででもカムバックしてくれんものですかなあ。

  11月26日
本日の収穫、昨日からバーゲン中のバナナ名駅店にてTHE EXPOSURES「LOST RECORDINGS 2000-2004」、TODAY IS THE DAY「LIVE TILL YOU DIE」(ライヴ音源集)、BERLIN「COUNT THREE AND PRAY」("Take My Breath Away"収録)。もっと散財しようと思えば出来たけど(ORIGINの2ndとか…)最近は踏みとどまれます。それどころか特定のアーティストがまとめ売りされてるのを見ると「この人全部放出って新しいな、いいな」と自分もやってみたくなるばかり。CD減らして整理していくと、自分が音楽のどこを聴いてるのか認識させられるから面白いです。

【只今のBGM:THE EXPOSURES「LOST RECORDINGS 2000-2004」】


この欄で登場頻度の高い~SCAPEの看板クリエイター、ヤン・イェリネックの新名義はスコット・ヘレンのEASTERN DEVELOPMENTSから。ヒップホップを親切にくずしたエレクトロニカというイメージがある(個人的に)レーベルなだけに、この人のストイックな作風とどうマッチするのか、何かこれあんまり歓迎せん展開やなあ…と思いつつ買ってみたのですが、まったく心配無用の出来でした。ジャジーなダウンビート使いやアナログノイズ風音響処理は確かにレーベルカラーを意識した痕跡があるものの、水中を一定の速度でまっすぐズヌヌ〜ンと進んでいくような独特のスクロール感は健在。不用意な親切展開やクサメロを設けて大衆のポップス耳に媚びたりはしない無機質さと、それでモノトーンに陥ることもない緩やかな各種エレメンツの移ろいとの釣り合い加減が毎度お見事です。メリハリだけ効かせた色目のいい菓子パンみたいなエレクトロニカにはもうめっきり食傷気味なので、この「雰囲気ある無口な人」の佇まいはとても快いなあ。2〜3分台の比較的短いトラック中心で全8曲、トータル24分ほどで終わってしまうのは何とも物足りない。

  11月25日
収穫はなし。普段よく履く靴がそろそろ自家製ヴィンテージな風合いを出してきたのを受け、最近一挙に2足新調しました。したのですが…「良かったら履いてみて下さいね〜、サイズ出しますんで」と声を掛けてくる店員達よ、君らがこちらの望みどおりに28.5cm以上のを出してくる確率は半分以下じゃないかよ。靴屋に限っては人の足元見てハナシせい。あっ今上手いこと言った人がいますよ誰かー

▼大学のサークルの人達とセッションをしてみた。成り立たないものです。サイケな色模様もスチールウールの写生みたいなのも黒のベタ塗りも、そうと称すれば全部インプロ。同じ黒でも理知的な黒と粗野な黒がありましょう。海藻とキリンと飛行機を並べて描いた絵を総体で何と呼ぶか?習作の中に課題を見つけるのはしかし意義深い。今日の様子も録音されてたけど「訓練する」と並行して「作る(≒区切る)」を続けていくってのを積極的にやるといいんだろうな。

【只今のBGM:KING'S X「OGRE TONES」】


出ました〜というか出てました〜、テキサスの生ける伝説KING'S Xの最新作!どんどん複雑な薄味になってきて評判が悪かった最近の作風(私は好きでした)をごっそり改めてやけにハツラツとしてしまった前作「BLACK LIKE SUNDAY」が全然好きじゃなかったので、今回は特に期待もなく殆ど習慣的に購入したんですが、ATLANTIC時代ラストの2枚「DOGMAN」や「EARCANDY」、あるいはもっと前の「KING'S X」(92年4th)の頃を思わせる、男の安らぎ的多重コーラス+ガッツリヘヴィグルーヴ方式に返り咲いててたまらない内容になってます。ちょっとわざとっぽいけど大人しく白旗揚げます。少し鳴りをひそめたジミヘンと枯れ気味のビートルズとゴツいギターリフに目覚めたスティーヴィー・ワンダーと信心深そうなU2が合体したらQUICKSANDやSHINER同然になってしまった、みたいな激ヤバ・歌ものパワーオルタナなんですけど、相変わらず日本じゃ売れてませんね。もう無理ですね。アルペジオにしろリフにしろセンスの塊のようなバッキングといい、決して甘々にならないメロディアス具合が絶妙過ぎるハーモニゼーションといい、こんなに最高なのに。アメリカじゃメタル系以外の人の口からもフェイヴァリットとして挙がるようなミュージシャンズ・ミュージシャンですから、とにかく全員今すぐ買ったらいいと思いますよ。ああ終盤に1st収録の大名曲"Goldilox"の再演(細部まで殆どアレンジが変わってないにも関わらず本編と完全にマッチ、20年近く前から既に凄い)が入っている。最高だ。

  11月24日
▼池下の中華料理屋「四川園」に行く。オーダーに迷う男5人。中華ってご飯/麺ものと同じ価格帯でおいしそうな単品がいっぱいあるから迷います。全員迷い過ぎて、「ライス大盛り(250円)と単品4〜5皿頼んで一人1000円超えない程度に収めたら勝ちじゃないか?」という方向に意見が統一。そこから更なる紆余曲折を経て注文したのは以下の4品。(1)野菜と牛肉の激辛煮物、(2)牛肉とタケノコその他の細切りの辛口甘酢あん炒めのようなもの、(3)揚げ豆腐の醤油風味炒めのようなもの、(4)五目そば。まず(1)が到着。具材が浸っているスープの辛さに唖然、レンゲひとすくいでその3倍の量の米がさばける程。続いて来た(2)も異なるベクトルながらやっぱり辛く、辛い熱いうまいのスパイラルに完全にのまれる。"Battery"〜"Master Of Puppets"の如き冒頭からの容赦ない展開に胃腸が猛然と活性化。いい加減口がヒリヒリしてきたところで(3)登場。プタッとした豆腐の感触と醤油の優しい味付けで少し落ち着くかと思われたが、辛みで傷んだ口腔に今度は熱さが鞭を打つ。しかも食べ進むにつれ意外と辛い代物であることが判明。それでも最初の激辛スープで勢いづいた胃は「まだまだこれから」と言っている。そこに最後の(4)。これは日本人にも親切な大人しい味付けで、あんの何とも分解し難い旨味に吸い込まれるかのように一瞬で完食。これが飲みの最後のお茶漬けのようにきれいにシメてくれるかと思いきや、「『MASTER OF PUPPETS』を早送りなしで最初から聴いてきて"Welcome Home"で止めるとは何事!!」と胃がB面を強烈に要求。一番星にハシゴしてちゃんぽん食うかと言ったのがジョークに聞こえなくなりながら、ともかく御愛想をお願いする。持って来られた伝票を見て一同唖然、小計4,990円也!!!完全目分量で誤差10円に収めたことを知った瞬間俄然満腹になり、幸福のうちに帰宅。収穫はなし

【只今のBGM:SANTANA「AMIGOS」】


"哀愁のヨーロッパ"収録76年作。スピリチュアルジャズ方面への傾倒があったあと再びラテンに返り咲いたという経緯があったようで。どうりで初期3枚のようなブルーズロックとアフロキューバンの渾然一体とした感触とはラテンっぷりの発色度合いが異なるはず。こちらの方が狙いがはっきり絞れてる上、シンセもたんまり取り入れたフュージョン通過後のアレンジになってて、悪く言えば胡散臭さ倍増。ラテンパーカッションの凄味とかを本当に体験したいならモロなラテンを聴きゃいい話だし、アイディアありきのあざとい足し算的交配の域を出んのかなという気はします。いや、わかっててそれに付き合うのがロックの醍醐味といえば醍醐味だからいいんですけど。ロック生誕の熱がまだ落ち着かずみんな不安定な70年前後までのモワモワした雰囲気がお好きな方にとっては冷めた硬直死体としか思えない作品かも知れんですが、現行の彼ら(というかカルロス・サンタナ)のパブリックイメージを確立したのはこのへんからなんでしょうね。ともかく人とオールドロックを語るときの共通言語として"哀愁のヨーロッパ"を知っとくという意味でも、たしなんでおく価値はあるんじゃないでしょうか。

  11月23日
本日の収穫、アマゾンから届いたMAGMA「KOHNTARKOSZ」。これにて解散前のスタジオフルアルバムを1stから「MERCI」までやっとコンプリート。最高だ。そこそこ好きなミュージシャンでも無闇に全部揃えようとするのはヤメようと思う昨今ですが、MAGMAは別格。SEVENTH RECORDSの黒赤白がズラッと並ぶこの壮観な眺めにウットリしないではいられませんがな。

左上にちょっと写ってる緑のCRAMPSマークはAREAかな?というツッコミを受けたいがために公開。この引き出しはやばいです。

【只今のBGM:MAGMA「KOHNTARKOSZ」】


傑作中の傑作「WURDAH ITAH」の次にリリースされた74年作。各パートの切れ目が割と明確で構成がガッチリしていた従来路線と違って、このタイトルトラックは15分半のパートIと16分のパートIIがあるのみ。その中でこれまで以上にミニマリズムを強調しながら超ロングスパンでじわじわと絶頂まで上り詰めるという、演奏するのにより強靭な精神力を要する作曲となっております。IMPULSE!初期のコルトレーンと、同時期(ちょうど「RED」を発表したばかり)のクリムゾンの暗黒面とごく最近のMESHUGGAHの中間のよう。しかしシュールさはなくあくまで強烈な念力か呪詛みたいなもので統べられてる感じです。静けさがひたすら続くパートも怖いし、どこまでもヒートアップしていきそうな加速度に追い立てられる場面もまた怖い。このかつてないヘヴィネスの表現に大きく貢献してるのが何といってもヤニック・トップのベースですな。グエ〜ッと歪んだ邪悪極まりないトーンでグボグボと這いずり回るこの破壊力はロック界最凶じゃないでしょうか。後半の2曲はいずれも小曲で、"Ork Alarm"はチェロとクラヴィの執拗なスタッカートが精神を圧迫するJACULA+ライヒってな雰囲気。NEUROSISファンにもイケそう。ラストの"Coltrane Sundia"はスピリチュアル調のピアノその他が重なったキレイめのインスト。これもMAGMA。とりあえず初めての人はこのアルバムから聴くのはよした方がいいと思いますが、ファンならば聴かねば始まらんですな。ここまで暗黒一徹なのはこのアルバムだけ。

  11月22日
本日の収穫、カイマンから到着のSIEGES EVEN「THE ART OF NAVIGATING BY THE STARS」、KING'S X「OGRE TONES」、バナナ本店にてKILLDOZER「INTELLICTUALS ARE THE SHOESHINE BOYS OF THE RULING ELITE」。試聴して明らかに良くてちょっと好きでも買わない、という技を習得しました。今日聴いたあと2枚、昔なら買ってたのにな〜。「オッと思える箇所が入っている」のと「家に所蔵してまで聴きたい」の間が複雑ですよねえ。

【只今のBGM:SIEGES EVEN「THE ART OF NAVIGATING BY THE STARS」】


知る人ぞ知るドイツの超絶マスメタルバンド、寝耳に水の復活作6th。活動休止中にドラマーをBLIND GUARDIANに貸し出したりするようなテクニカル集団でございます。WATCHTOWERスタイルの模倣に始まりRUSH化、アクロバティックフュージョン化を経ての今作は、個人的にベストだと思っている3rd「A SENSE OF CHANGE」の作風をややヘヴィにしたような内容になってます。と思ったらギターが3rdまでの人に戻ってるじゃないか。4thから加入した人はドンキャバやFARAQUETもビックリの超高速変則アルペジオでずっとバッキングをし続けるエキセントリックな人材で良かったんだけど。ヴォーカルは代々とてもイモい方が歴任してきたのですが(初代の酷さは特に壮絶)、今回多少垢抜けた感じの人を入れてかなりポイントアップ。全体としては、う〜ん、今までどおりのもっとあられもない変拍子や物凄いユニゾンの嵐を期待してたのに、しっとりした場面が多くて少し前のFATES WARNINGのようになってしまったとの感。しかしその分素直な泣きが増えたってのはプラスといえばプラスで、COPELANDとCHISEL DRILL HAMMERとQUEENSRYCHEでも合体したかのようなこの塩梅は近年どんどん大仰かつ派手になってるクサクサ系エモへの反対側からの回答とも言えましょう。あるいはプログレメタル界のAMERICAN FOOTBALL。あっそう思うと俄然イイな。

  11月21日
▼今、部屋がキレイすぎて(※昨日の日記参照)自分自身がグレードアップしたような錯覚を満喫しています。収穫はなし。いつも利用している練習スタジオをネットから予約できるIDとパスを問い合わせて、もう受付に電話しなくてもメールチェックやサイト更新のついでにスタジオが押さえられるようになったので、それでまた「昨日までの俺とは違うぜ」気分が増長。小さい。

【只今のBGM:EDIE SEDGWICK「FIRST REFLECTIONS」】


今年新作が出た、元EL GUAPO〜現SUPER SYSTEM、ANTELOPEのメンバーのジャスティン君の別ユニット1st。二人組の片割れがSECRETLY CANADIANから出ていたTHE PANOPLY ACADEMYというヨレヨレ脱臼ポストコアバンドの人だったりします。HELLAやLIGHTNING BOLTを筆頭にFRENCH TOAST、THE EVENS…と最近デュオが流行りっすね。このバンドはその中でも初期FRENCH TOASTに近い、アヴァンギャルドで手数は多いが弦楽器(全編ベース一本)が単音ゆえにスッカスカで更にヴォーカルも無脊椎系という、オーネット・コールマンのトリオやらMINUTEMENやらの空気を思い出すスタイルです。技巧を費やしてあらゆることが起こっているのに何も起きてないかのように聞かせる、破れかぶれのハッスルとグダグダの無気力が紙一重で隣り合うようなノリが愉しい。夜中にトイレに行くためだけにむくむく出てきたZAZEN BOYSかの如し。単なる実験の記録公開にとどまらない、新種の芸術を存在せしめんとした静かな気合の痕跡は、レコメン〜アヴァン方面が主食のプログレッシャーにも引っ掛かることでしょう。ドンキャバがやり過ぎたようなハッタリ刺激物系はどんどん優秀なのが出てきてるけどこういう注意深くてダシの効いたのも個人的にはよいですなあ。

  11月20日
収穫はなし。最近何をするにも腰が重いのはこのせいかと、一念発起して部屋中に散らかったCDの大整頓を行いました。買った順に無造作に積まれていくだけな上ときどきシャッフルされるせいで(探し物があるときなど)いい加減混沌としてきていた平積みの山の中から、まずはジャズ、次はSKIN GRAFT界隈…とピンポイントで引っ張り出して棚に収めていくつもりが、落葉の季節の公園の地面の如く部屋の床がCDで埋め尽くされてきてもうどこから手をつけていいのか全然考えられないまでになってしまったので、一旦全員整列させて、そこから仕分けして適宜棚に入れていくという解決をとりました。合計6〜7時間の格闘の後何とか布団を敷くスペースを確保。失くしたと思っていたペンや銀行のクレジットカードなどがいっぱい出てきて良かった。

↑一番落ち込んだと思ったときの光景

↑もっと落ち込んだときの光景
既に所有しているものの場所を変えることだけで半日潰すなんてああ愚かしい。物は持たないで生きられるに越したことはないと思いました。30枚くらいで一生幸せならそれがいいという心境です。

【本日のレビューその1:CROWBAR「CROWBAR」】


部屋の整頓にともなって久々に掘り起こされたものを。ヘヴィロック系を扱うアメリカのアングラレーベルPAVEMENTから送り込まれた極悪巨漢バンドの1st。フィル・アンセルモがプロデュースでしたがメンバー4人中3人の肥満体形がもっぱら話題となって「音のみならずルックスからヘヴィ」と当時はよくジョークのように言われたものです。音楽的にはPANTERAにOBITUARY的ズルドロ感を足したような懐かしの90年代サウンド。のちにここのメンバー2名がEYEHATEGODのメンバーとフィルとでDOWNというユニットを始めるだけあって、デビュー作なのにやけに風格があります。搾り出すザリザリのハイトーンで割とちゃんと音程をとって歌うヴォーカルもかっこよい。中盤でやっているLED ZEPPELIN"No Quarter"の物々しいカヴァーはなかなかキマッてます。探せば300円くらいで見つかる盤ですので、10年前のHEADBANGERS BALL気分を味わいたい方は是非どうぞ。こういう時代でしたなあ。

【本日のレビューその2:THE PRESIDENTS OF THE UNITED STATES OF AMERICA「THE PRESIDENTS OF THE UNITED STATES OF AMERICA」】


久し振りなのをもう一枚。日本でやけにブレイクしてしまったPUSAの言わずと知れたデビュー作です。何で今更気になったかというと、低いチューニングで緩く歪んだギターのぺらっとしたカッティングにカロヤカな手数系ドラムが絡むこのポーカーフェイスなアンサンブルが、THE EVENSやEX HEXあたりの最近のDCサウンドと他人の空似でウリ二つだからなのであーります。もともとはPOPLLAMAというインディレーベル出のこの人達、売れはしたけどやってた事は多分に屈折したインディロックであった訳で、その気で聴くと相当面白いと思いますよ、今や。普通に激ウマだし、アイディアの宝庫みたいなバンドでした。サンボマスターとMODEST MOUSEが合体したみたいでもある。パワーポップ化してしまった2ndより素っ頓狂なユーモアが冴えるこっちがオススメです。これも中古で安いんでスッとどうぞ。

  11月19日
収穫はなし。夜遅いといっそう乱文になりますな、一刻も早くアップロードして寝たかった様子(昨日の日記)。最近時間の使い方が悪くて遅く寝ることが多く、届くメールも内容を確認したっきり返信を無意味にタメてしまったり(被害に遭ってる方々、単なる怠惰であって悪意はございません。すいません)、緩んでいるので、いけません。

▼などとここで宣言をしても仕方がないのでとりあえず、今日買ったとっても微妙なYESのTシャツの写真を載っけておきます。

ロゴの中身が「こわれもの」のジャケの一部になっていて、洗いまくって褪せたようになっているのは最初からの仕様。今年作られたもののようです。元値が3000円ちょっとだったのが何故か980円で、鶴舞のイオン1Fの通路にあるちょっとした雑貨コーナーみたいなとこに何故かこれだけブラ〜ンと売られておりました。公然とこれを手にとって悩むのすらちょっとためらいつつ、結局安いということで購入。"ロンリーハート"も知らないファッションロックT野郎の手元に行くくらいなら。ここまで書いておいて何ですが本当は「後ろに写っているCDのジャケを全部あてよう」という企画でした。

【只今のBGM:KAMPEC DOLORES「EARTH MOTHER SKY FATHER」】


以前にも紹介したことのある、レコメン界隈で活動するハンガリーの5人組の今年発売予定(日本先行)の最新作。何と来日が決まってます、詳細こちら。さて内容の方は、ブルーズ以降からオルタナティヴに至るロックの歴史で鍛錬されてきた枯れ感や土っぽさと、うら悲しくもどこか生活感のある東欧フォーク特有の哀愁、そして8±n拍では把握しきれない奇怪な割りの変拍子とが実に今日的なポイント上でバランスを取って、普遍性あるコンテンポラリー・アヴァン・トラッドに仕上がった快作!金管を交えたチェンバー風アンサンブルはレコメン的でもあるし、言葉数を減らしたスキマ・グルーヴの中で高いミュージシャンシップと結びついた情緒表現をさりげなく聞かせるあたりはKNITTING FACTORY界隈にも通じ、ジャズもダブも消化しつつロック然とした鳴りでまとめる音響面の気配りはワシントンDC〜シカゴ周辺のポストハードコア/ポストロックにさえ余裕で対応。母国語であるマジャール語で歌い込まれるヴォーカルがまたビョークやGOD IS MY CO-PILOTのシャロン・トッパーに通じる朴訥としてやけに艶やかな声色で、ユーロロックファン必殺型の郷愁充分。それらの要素の集まりをあくまで渾然一体としたネイティヴな営みとして見せてくれるのはやはり20年を超えるキャリアゆえでしょう。THE EXやNE ZHEDALIからPACHORA、KARATE、THE ETERNALS、THE 3RD AND THE MORTALと、アピールできる層は幅広いはず。日本では未だ知られざる存在ですがいつどっちの方面からブレイクしてもおかしくないだけのことはやっていると思います、お早めにチェックをば。

  11月18日
▼口内炎が痛い、今日は理不尽なことがあった、生理だ、などを上回るどうしようもないウェブ日記の話題ワーストワンといえば「ゴキブリに遭った」ですわな。そんなことを書く奴は大抵、出先の帰りの20時前くらいにふつふつとCD屋に寄りたくなって何となく21時までやってるサウンドベイ(の何となく上前津)に赴いてみるものの収穫がなかったりして、無駄に酷くなった空腹と深くなった時間に猛烈な勢いで後悔しながら、とぼとぼ帰宅してそのことを詳細に綴ったりしているに違いない。いや、昨日のゴキブリはね、でかかったの。

【本日のレビューその1:AUTOPSY「FIEND FOR BLOOD」】


今月3日以来久々のデスメタル名盤/裏名盤紹介企画の第3弾ということで。AUTOPSYは時代に密葬されてきた全てのアングラスラッシュとドゥームロックの血をいぶし銀のスラッジーなオールドスクールデスメタルサウンドのもとに呼び戻した、が結局カルトヒーローに終わった(しかしその後ABSCESS、THE RAVENOUSへと受け継がれていった)伝説的存在でございます。MORBID ANGELよりもMOTORHEADに似た荒々しいスピード感で転げ回り、CATHEDRALというよりMELVINS的なドロドロパートも虚勢ではない本気の説得力。こわい。アゴァゴァと汚いダミ声を撒き散らすヴォーカルはデスメタルのスタンダードとはちょっと異質なもの。古いB級ホラーでも見るような、半ば笑えもするけどどうしようもなくオドロオドロしい雰囲気がとにかくシブイです。どれが名盤かと言われればだいたいどれも同じとしか言いようがないのですが、今回この6曲入りEPを挙げたのは、ベースにヘルプでSADUS〜DEATHの超絶フレットレス激弾き王スティーヴ・ディジョージオが参加している唯一の音源だから!ルート感など平気で犠牲にしてブベモベブベモベと動き回るこの人のベースはもはや巧いのかどうなのか判らんですけども、ローテク&パワープレイが売りともいえるAUTOPSYのメンツの中で妙に浮きつつも頑なに独り早弾きをやめない姿に私のようなファンはグッと来るというわけです。相乗効果はないが相殺もしてないのでダブルクリームシューみたいな感じで聴いて頂けると良いでしょう。他の作品も勿論全部オススメ。

【本日のレビューその2:SADUS「CHEMICAL EXPOSURE」】


スティーヴ・ディジョージオの好演盤といえばDEATHの「INDIVIDUAL THOUGHT PATTERNS」をおいて他にないわけですが、そっちはもう少し勿体ぶるとして今回はこれを紹介。彼の本丸バンドSADUSの88年1stです。基本はスピード一辺倒のマッドなスラッシュメタルながら、しかしいわゆる四天王(METALLICA、ANTHRAX、SLAYER、MEGADETH…順番も当時の人気はこのようであったらしい)系の音の劣化版とは違うし、速いけどS.O.D.のようなハードコア的感触はなく、ジャーマン三羽烏(SODOM、KREATOR、DESTRUCTION)のようなラフさもなし。OVERKILLみたいなメカニカルな響きのリフをそのまま早回しにして前人未到の速度感を手に入れたかのような、(段差はわずかながら)スラッシュメタルの一段上の地平を開拓したバンドだと思ってます。とにかく全てが完璧なコントロールのもとにあるのが驚異。ブラストまで達しないがゆえに息ができるこの野蛮で冷静なキレはそのまま今日のデスラッシュに受け継がれてますね。音作りがぽんぽんと軽く丸く、余分な残響成分が一切目立たず、AC/DCが40倍速でやってるかのように聴けるプロダクションになってるのもまた面白い。うーむ名盤であります。突き詰めたリズムの鍛錬がなされた音楽は何であれ興味があるという人にはスラッシュメタル代表として是非勧めたい一枚。

  11月15−17日
▼3日とも収穫はなし。何してたかって色々です。最新の話題はついさっきゴ×××を生踏みしかけたことです。フサッと。

【只今のBGM:EERO KOIVISTOINEN「LABYRINTH」】


ペッカ・ポヨラとかも絡む70年代フィンランドのジャズロック〜フュージョンシーンの一枚。このLOVE RECORDSというレーベルがだいたい一定して似た傾向の音で出してくるところで、変拍子やエスニズムも混じってきて聴きやすいかなと思ってジャズ聴き始めの頃にちょっと集めてみたりしてました。最近中古盤屋でたまにコメントつきでリコメンドにあがってるのを見るので久々の聴き直し。このアルバムは77年のカルテット作品で、オールアコースティック。ショーターやコルトレーンを思わすモーダルな雰囲気をメインに、北欧らしくキレイめでスムースなんだけど何となく聞き流せないECM的緊張感もともなう。時々ほんのり中央〜西アジアテイストが入る割に演奏自体は総じてアクが強くなく、録音の良さも手伝って非常にクリアな印象です。今マイケル・ブレッカーあたりがジャック・ディジョネットやデイヴ・ホランド集めてやってることとあんまり大差ないですね。わかりやすいスピード感と適度な薄さはどっちかというとロックリスナー向け。ガチガチのジャズロックになってからのSOFT MACHINEとかが好きな人なんかは試してみてもいいかも。

  11月14日
本日の収穫、バナナレコードパルコ店にてGERALD CLEAVER「ADJUST」(クレイグ・テイボーン、ベン・モンダー他参加)、AMY BLASCHKE「AMY BLASCHKE」(THE SORTSも出しているシアトルのLUCKYHORSE INDUSTRIESリリースの女性SSW、バックはMINUS THE BEARのドラマーとex.BUILT TO SPILL〜LYNC〜764HEROのベーシスト!)、カイマンから届いたLANDING「PASSAGES THROUGH」(K!)。めっきりアマゾン利用率が高まっている昨今、中古CD屋へ足を運ぶのは何となしに吸い寄せられるような気がした時だけになってます。「オーラの泉」の影響で今欲しいものは霊感。その手の感受性ゼロと思われる私でも5月に見たロニーから確実に何か出てたのはわかりました。いや、ロニーはすげーよ。

【只今のBGM:LANDING「PASSAGES THROUGH」】


随分前に買ったKのコンピに入っていた曲が猛烈に良くて、それ以来ずっと気になっていた人達をとうとう新品で買ってしまいました。IDAがKRANKYに口説き落とされたかのような、簡単に言ってしまえば和みドローンギター満載のスローコア〜ポストロックってことになるんでしょうが、そんな模倣犯的な薄っぺらさが全然なくひたすら桃源郷。音楽に憧れる何人かの男女が集まって演奏のために腕を振っています、ロック楽器を通して思い思いの実験を持ち寄っているところです、自分たちの音楽が認められて成功を収められればいいと思っています…なんて所帯じみたセコい実況は一切割り込む余地のない、ひたむきなるイメージの芸術といいましょうか。悠長すぎる時間感覚に眠くなることも忘れて没頭してしまいます。これはUSインディ云々の枠を超えて素晴らしい。シューゲイザー好きにもアピールするでしょうし、PINK FLOYDやPOPOL VUH、イーノなんかに心酔できるという人にとっては生クリームを絞り器から直食いするような幸福をもたらすこと請け合い。白痴と言われてもギリギリ納得しそうなこのピュアっぷりがK印といったところでしょうか。確かにダブでナルコティックですからなあ。初期作はもうちょっと手探り感の強い作風でしたが(過去にこの欄に登場はずなんだけど発見できず)Kに移ってからのものは問題ないと思います。ともかく買いということで。

  11月13日
収穫はなし。天気がめっぽう良かったらしいですが宅録してたら暮れてしまいました。インドア・リヴィング…。

▼遅めの朝食を摂りつつMTV→スペースシャワー→MUSIC ON! TV→MTV…の無限ループというのを休日はよくやってしまいます。小一時間巡回しまくって良かったことは残念ながら「ラウル・ミドンが凄い」と「MY CHEMICAL ROMANCEは普通に歌ウマい」のみ。オーヴァーグラウンドって凄い。AAAとかいう男女混成ダンスグループ、声の原型もないほど堂々と音程補正し過ぎててビックリしますなあ。マックシェイク。日本の新人は、何で皆身なりはそこそこチャラい若者なのに「光の方へ…」とか「空に向かって…」みたいなのしか言うことがないのかが不思議であります。勿論ポジティヴがダサいとかナンセンスはOKとかいう問題ではなく、やり方がどんどんロービット(≠ストレート)化してきてる気がしませんか。今を思うと尾崎は偉かった。

【只今のBGM:HIRAX「EL DIABLO NEGRO」】


以前にも紹介しましたがこれが復活第1弾だったみたいです。2000年の3曲入りEP。トータルタイム8分弱でオールドスクールC級スラッシュがゾガガッ!と(もつれながら)走り抜ける挨拶代わり的一枚ですな。1曲目(ファスト&ショートカットで末期NUCLEAR ASSAULTを思わせる)の高速表打ちの合ってなさといい、さすがに低音はしっかりしてるもののひたすら地下室工作くさい80年代そのまんまのプロダクションといい、奇跡に思えるほどスラッシュ全盛時代のアングラどころのエッセンスを凝縮してます。ラストのタイトルトラックなんかONSLAUGHTみたいでたまらん。喉の内側に汗かいてるようなこの声はどうやって出すんでしょうね。今月の来日は是非とも目撃しないと。コアなスラッシャーというわけではなくとも、いいもん見れると思いますよ。

  11月12日
本日の収穫、ナディアパーク内ヤマギワソフトにてYES「FRAGILE」(デジパック&ボーナス追加の新リマスターシリーズ、外盤630円にて)。遂に手を出してしまいました、従来版リマスターはコンプリートしているのに。まあYESを日々聴くかといったら別にそうそう聴きはしないので、死ぬ思いで再コンプリート目指したりはしませんが。しかしさすがに音質向上はめざましく、よっぽどのファンなら買い直す価値はあります。それよりクリムゾンの30周年シリーズとTHIN LIZZYリマスターの抜けてるとこを早く埋めたい。

【本日のレビューその1:YES「FRAGILE」】


言わずと知れたいわゆる名盤。レビューというより聴き直し所感ってことで。このバンドのリズムはなんてだらしないんでしょうね、クリス・スクワイアのベースがやっぱりメンバー中の誰よりも雄弁(しかもこのアルバムに限らず)。歌って飛んで支えて導くこんなベースを他の誰が弾きましょうか。プログレ云々を抜きにしても大いに参考になる人かと思います。そんであっち側の使者ジョン・アンダーソンのエンジェリックなハイトーンが彩ってもうYESサウンド完成と。リック・ウェイクマンがパトリック・モラーツになろうと、田村正和が鏡龍太郎やってるか古畑任三郎やってるか程度の差ですから。今マニアからの怒声が聞こえたような。さてこのアルバム、メインとなる4曲の合間に各メンバーのソロ的な小曲が挟まっての計9曲って形ですが、なんか無駄に幕間ばっかりの演劇でも見てるような流れの悪さを感じるのは私だけでしょうか?突出した代表曲が入ってるとはいえどうもトータルでの名盤度はこの前後の作品の方が上と感じます。YESを最初に聴くなら絶対3rd「THE YES ALBUM」を推します!プログレ的視座では複雑でスリリングな部分がもてはやされても、初期のコーラスの効いた大らかなフォーク〜サイケポップテイストこそがこのバンドの素の良さだと思っているので。あとはだいたいのことは既に語り尽くされてますね。"South Side Of The Sky"がほんのりZEPノリの隠れ名曲だとか。付け足すならばクリス・スクワイア作"The Fish"とビル・ブラの"Five Per Cent For Nothing"は秀逸なるマスロックです。ボーナスで追加収録されている"Roundabout"の初期ラフミックスは、音作りの違いのみならず編集の過程で切り捨てられたパート(曲展開ではなくアレンジ上の)が残されてたりして、オリジナルを聴き込んだ身には気持ち悪くも面白い一品。こうやって当事者達の手元にいくらでも眠っているであろう未完成品をレアだと見せかけて釣って買い直しを迫るのはしかし卑怯だよRHINOよ。マニア泣かせな…

【本日のレビューその2:PINK FLOYD「DARK SIDE OF THE MOON」】


大名盤にたて突こうシリーズ第2弾、のつもりで聴き始めたんですが、これ大昔に買ってよくわからんかったきりロクに解釈もしないで棚の肥やしになってたんでした。変に偏って身構えずに今改めて聴くと、何が凄いかって要はEAGLES+テリー・ライリーてな要領で上手く時代のポピュラリティに接近したというだけな気がしなくもない。かつての幻惑的なサイケテイストはユルいフェイズドギターの響きにその名残を留めるのみながら、本質まで変わったという感じは何故かありませんね。氷の上を滑る水みたいなフラフラしたこのヴァイブがPINK FLOYDの正体というならば、このアルバムは実に上手くやった一枚であることです。しかしそんな単純計算だけには終わらず、ジャムだのノイズコラージュだのという不確実要素をそこら中に散りばめながらも作品全体に一貫して強烈な意思の筋が感じられるのが、やはり名盤と言われ続ける所以かとも思います。その引き締まった鋭さが正にジャケに写る光条そのもの。要するに何がどうあれ絶対的に完璧な作品ということか…あっ結局一般的な評価と同じになってしまいました。余りにも焦点の定まった創作物には変な誤読の余地なしっすね。あとはこういう種類の完璧さが自分にとって受け容れられるか否かが問題で、世界の名盤が私の名盤である必要はない、とささやかな抵抗を残して締めときます。いや別に結構好きですけども。

  11月11日
収穫はなし。テレビで「11月11日は折り紙の日」とやっていたので(理由はタテの11とヨコの11で正方形ができあがるため)、他にも何かあろうと調べてみたところ、電池の日(プラスマイナス≒十一)、鮭の日(魚の右に十一十一)などを発見。普通に第一次大戦終結記念として世界平和記念日だったりもするそうですが。全然関係ないですけど、靴を買いに行ったらヘッドホン買ってしまいました。帰宅してから調べた風評を総合すると、どうもギターに例えれば大手メーカーの6万前後くらいのクラスのものを買ってしまった感じであることが判明。今まで使ってたのと比べるとレンジは広がったし定位感や余韻もより自然になったが、解像度は同じかやや落ちるといった印象で一長一短。辛うじて長の部分が多い気がするのが救いか…少なくとも日常聴きはしやすくなりましたが。「使い物になるヘッドホン」の道は最低2万くらいからなんですかね〜、こういう買い物は念入りな下調べと貯金の後にきちんと意を決してやるべきだなと痛感しました次第。そして高級オーディオには手が出ない/リスニング環境が向かない(アパート住まいなどで)という人はちょっと頑張ってまともなヘッドホン買ったらかなり幸せになれるんではないかと思いました。6万のシステムコンポ買うなら1万のCDウォークマンと5万のヘッドホンの方が費用対効果は多分高そう。聞いたことない風に聞こえて面白いですよ。

【本日のレビューその1:小田和正「BETWEEN THE WORD & THE HEART」】


88年のソロ1作目。次作となる大名盤「OH! YEAH!」と比べるとチャキチャキした要素が抑え目の全編バラード寄りな作風ながら、何とも日本離れした超優秀AORが真っ盛り。海外(主にアメリカ)のこういう都会的で洗練されていてFMラジオ向きなメインストリームスタイルを変に読み損なうことなく忠実に再現して、歌い手/語り手である自身の声によって単なる「舶来もののレプリカ」を超えるリアルさをちゃんと持たせた、紛うことなき一級品です。歌唱もアレンジもドン・ヘンリーやルー・グラムにも全くひけを取りません(バックバンドは一流ジャズミュージシャンや商業ハードロッカーじゃなくてリズムマシンだったりしますが)。オシャレを意識し過ぎたのかアクの強い恥ずかしさにはやや欠ける分、やっぱり「OH! YEAH!」に軍配が上がる感も。あれは完璧過ぎですから。とはいえ"I Miss You"や"ためらわない、迷わない"といったキラーチューンの存在もあり充分に名盤と呼べる域。安く見たなら買うのがいい。

【本日のレビューその2:JONATHAN CAIN「BACK TO THE INNOCENCE」】


THE BABYSからJOURNEYに移り住んできて赤面シンセ満載のメイクラブ・ポップスに成り下げるのみならずロックの魂をコマーシャリズムに売り渡すことになったA級戦犯として罪深いキーボーディストのジョナサン・ケインの94年発表ソロ作。いやいやそんな悪い人じゃないですよ。私はこの人の加入前のJOURNEYはあんまり聴けません。内容は80年代前半の全盛期JOURNEYよりはもっと渋いトーンで、リッチー・サンボラ(勿論BON JOVI)の91年ソロ「STRANGER IN THIS TOWN」あたりの雰囲気をピアノ・オリエンテッド(デジタルシンセは控えめでもっぱらピアノ中心です)にまとめ直したような、メロ・ハー的ダサさやエセ・ブルージーないたたまれなさの多分にあるAOR(全力で褒めてます)になってます。クッサクサなのを期待するとややスカるかも。本人によるヴォーカルはハスキーだがさほどハイトーンではなく、そのへんがまた地味な印象に拍車をかけているのかも。まーとりあえず「THE BABYS、JOURNEYファンは必聴!」と騒ぎ立てるものではないですね。リック・ウェイクマンはYESにいたから尖って見えたけどソロ作品を聴いてみても今ひとつ…みたいなのと同じ後味に苛まれることでしょう。化学変化の触媒だけを前にしてる感じ。300円で買えた品なので大事にします。

  11月10日
本日の収穫、大学のサークルの後輩に売ってもらったTHE SHAGGS「THE SHAGGS」(全25曲収録アンソロジー)、アマゾンマーケットプレイスに出品しているIMPORT-CD SPECIALISTSから届いたDEERHOOF「THE RUNNERS FOUR」(最新作!)。ナイス取り合わせ。さて今回初利用だったIMPORT-CD SPECIALISTS、2日深夜に注文を確定した後、5日早朝に発送の旨を伝えるメールが届き、今日10日に商品到着と、なかなか優秀でしたよ。梱包も薄めの段ボール使用でそんなに貧弱じゃないし。ちなみにカイマンで買うとクレアさんから確認メールが届きますが、IMPORT-CD SPECIALISTSはモモコ・バーグさんから来ます。ちょっとびっくりしました。

【只今のBGM:DEERHOOF「THE RUNNERS FOUR」】


コンスタントなリリースを続けるDEERHOOFの今年発表になった最新作。相変わらずKILL ROCK STAR/5 RUE CHRISTINEから。古いアニメ映画のスコアをバンドで演奏したような、愉しくやや大仰で平気に過激なフリークアウト・カートゥーン・パラノイアック・ポップが今作でもバリバリ満開。変態暴走猛打ドラム&天然少女風ヴォーカル(兼ベース)のバッテリーと知性派前衛ギターの両サイドの何食わぬ顔した同居っぷりがシュールでもあり、素直にポップでもあり、必死なのか脱力なのか全くわからないキワドさがとにかく面白いバンドです。3度もライヴ見ただけあって好きだなー。名曲"Panda Panda Panda"を収録した前々作「APPLE O'」からの流れでどんどん(一見)ノーマルな歌もの化が敢行されつつ、よくよく聴くと全盛期のYESみたいな調性使いが出てきたり、2本のギター(片割れはCOLOSSAMITEのメンバー!)が絡んでの不協和音が実は恐ろしく緻密だったりと、アブノーマルサイド支持派も喜ばせてくれる内容。ただ今年出たEP緑のコズモで特に、1曲ごとの名曲度がどんどん上がってるな〜と思ってたのが、今回はちょっとポップソングとしてのツカミは曖昧になった気も。居直って普通っぽくなってきたが故に強引なフックも目立たなくなったというか。とはいえまたライヴで見たりすれば心の名曲が増えて「やっぱり最高のアルバムだ」とでも言い出しそう。そう、結局大して変わっちゃいないです。ノーマルに近づこうともユニークさの彫りはくっきり深くなる一方。こういうバンドは歳とって微妙に変わっていきながら地道に長く続けて欲しいですなあ。

  11月9日
収穫はなし。手が右利きで足が左利きという人は日本人の何パーセントくらいなんでしょうか。私はそれのようです。チッチッチッチッドン、と4つカウントを打ったのちにバスドラを一発踏み込む(その際カウントの続きでスティックも同時に一打ち)という実験をしてみたところ、左足は毎回スティックとほぼジャストで音が鳴るのに対し、右足は予備動作の遅れ程度のモタリが必ず出ていることを今更発見。ともかく足首がへタレであることが更なる細かい検証で分かって、あまりの顕著さに現在ショック甚大です。マトモなドラミングは利き足矯正からか〜…。ちなみに目は右利き、耳は左利きなんですけど、こういうのの組み合わせで「あなたはXXX人間です」みたいな分類を研究してるセンセイはいないんですかね。変なとこに分類されてみたいっす。

【只今のBGM:石川浩司+突然段ボール「ワカラナイ」】


PHEWと同時にデビューし、フレッド・フリスといきなり共演したりPANIC SMILEと合体したりと謎な活動を20年以上に渡って続けている、蔦木兄弟を中心とした天然ローファイユニットの95年作。"さよなら人類"で有名な伝説のバンド・たまでパーカッションを担当していた(らしい)石川浩司の詞と歌に突段が曲を、突段の詞と歌に石川氏が曲をつけるというスタイルでの共演作です。内容は、3000円くらいで買えそうなチープ極まりないキーボードとリズムマシンを使っての、崩壊しきったニューウェイブ〜ジャパニーズ・アングラパンクサウンド。ギリギリで何か形のあるものに聞こえそうで聞こえない、GOD IS MY CO-PILOTや空手バカボンとは似て非なる脱臼具合です。芦屋雁之助みたいな植木等が加入したZNRをイルリメが投げやりにリミックスしたような?それはそれは大胆で思いがけない、ヒュルヒュルした音楽であることです。歌詞は白痴と社会派とスケベと慈愛の間をいくようなこれまた何ともいえないもの。どこまでが石川氏の音でどこまでが突段の音なのかは、余りに自然にマッチし過ぎて初心者にはよくわかりません。もう1枚一緒に作ってるようなのでよほど気が合ったのでしょう。徹底的にナンセンスかつ無心なように見えて、レーベル経営や海外レーベルのディストロをやったりしてるあたりからして前衛音楽に関するしたたかなポリシーは持ってるはず。多分どれを買っても同じようなテンションでやってることと思いますので、気になる方は見つけたものから買ってみればOKかと。

  11月8日
▼好収穫があるとその後数日間更にフットワークが上がってしまいます。誰かこれに病名を下さい。本日の収穫は近頃マニアック系在庫の投売り体勢著しいナディアパーク内ヤマギワソフトで渚にて「ほんの少しのあいだ」(レア音源も収録のアンソロジー!)、イルリメ「www.illreme.com」(04年)、突然段ボール「ホワイト・マン/変なパーマネント」(80年)、石川浩司+突然段ボール「ワカラナイ」(たまのメンバーとの共作!)、友部正人「また見つけたよ」(73年作紙ジャケリマスター)の5枚をすべて300円!にて、UPP「GET DOWN IN THE DIRT」(ジェフ・ベックプロデュース&ギターで参加!!SANCTUARYからのコンプリート2枚組)、JOHN GREAVES/DAVID CUNNINGHAM「GREAVES, CUNNINGHAM」(ex-HENRY COW vs. FLYING LIZARDS!!!91年作リイシュー)、PETER GORDON/DAVID CUNNINGHAM「THE YELLOW BOX」(96年PIANO、アントン・フィアーやジョン・グリーヴスも参加)の3枚を新品約20%OFFで。買って帰るまでがとにかくエキサイティングでした。現在は少し凹み中。

【只今のBGM:イルリメ「www.illreme.com」】


関西が世界に誇るフリーフォーム・チッチキチー・喋り倒しアブストラクトパンク、イルリメの2004年作。初っ端からトラックがMELT BANANAで問答無用の急発進。うおお粗暴。ヒップホップ聴いてる感覚が殆どないです。攻撃的な低音が忙しい(必ずしも速くはない)ビートを成し、雑多極まりない激ジャンクなウワモノ群は無秩序な歩行者天国の如く殺到。過去の作品から確実にスケールアップしてますね。歪みやスピードといった記号群でなく情報の密度感によるハードコア。生だデジタルだと特定の表現形態に拘らず、研究の末にわざわざ囲ったタームとしての自由ではない勝手なボーダー無視をスタンスとしてどこへでも立ち回り、己の声がともかく最終責任を負うという、果敢で不敵なエクスペリメンタル・ポップですわ。ビーフハートやFAUSTやティム・キンセラやダニエル・ジョンストンやビョークと同列に並べても全然遜色なし。ANTICONかIPECACあたりにあっさり拾われたらいいのに。

  11月7日
本日の収穫、久々のサウンドベイ金山にてFRENCH TOAST「IN A CAVE」、THERGOTHON「STREAM FROM THE HEAVENS」(フィンランド激遅ドゥーム名バンド!)、JONATHAN CAIN「BACK TO THE INNOCENCE」(ex.THE BABYS〜JOURNEYのキーボーディストソロ作、500円にて)、MURDER IN THE RED BARN「MURDER IN THE RED BARN」(HOOVERタイプのポストコアバンド、2003年の5曲入りEPを300円にて)、同上前津でPAPA M「LIVE FROM A SHARK CAGE」(a.k.a.デイヴィッド・パホ!99年)、KIRIHITO「DA VI DE BO」、VISION OF DISORDER「FROM BLISS TO DEVASTATION」(500円)、ORTHRELM「ASRISTIRVEILDRIOXE」(500円)。

【本日のレビューその1:KIRIHITO「DA VI DE BO」】


大槻ケンヂのアンダーグラウンドサーチライへの参加で存在を知っていた日本の二人組の、95年のフルアルバムを買ってみました。プロデュースはホッピー神山。ピキピキしたシングルトーンにオクターヴァーを噛ませたギターと崩壊系ドタバタドラムの連携で、変わり果てたサーフロックみたいなノリノリアップビートスカムジャンクを延々15曲40分。オギャオギャ絶叫するヴォーカルがほぼ全編に乗り、突発的にシンセノイズが混じったりもします。大袈裟なレベルオーバー感がいかにもホッピー神山趣味っすな。あぶらだこやMELT BANANAにあやかるフシも伺えつつ、もっぱらLIGHTNING BOLTと激似。しかもこっちが先ですから。80年代から脈々と続く日本のアングラパンクくずれ前衛の系譜を今日のスタイリッシュなインターナショナル・ヘンタイロックに鮮やかにつなげる、結構重要な人達だと思うんですが、今はもうLIMITED EXPRESS (HAS GONE?) とかあふりらんぽとかに持ってかれてますねえ。私が知らないだけで密かにリスペクト集めてたりするんでしょうか。LOAD、5 RUE CHRISTINE、SKIN GRAFT、TROUBLEMAN、THREE ONE G…と聞いてよだれダラダラな人はすぐ買った方がいいと思います。

【本日のレビューその2:ORTHRELM「ASRISTIRVEILDRIOXE」】


変態ついでにこれも。続けて聴くとキリヒトとそう変わらんなあ。この人達以前にも紹介したことがありましたがこの盤は更にちょっと凄いことになってまして、全99曲収録、その大半が10秒以内。iTUNESに入れるとアルバム情報が間違って「効果音大全集」と出やがりますが、もう本当にそんなノリです。江頭2:50が死にもの狂いの一発ギャグ100連発でもやってるかのような腕ずくのヤリ捨ての嵐。ハイフレットに移行したインテリ版ANAL CUNTみたいでもあり、スッ転びながら全力疾走するFANTOMASみたいでもあり、徹底したナンセンスさと脳髄をかき回されるようなサイコなシニカルさはTHE RESIDENTSより壮絶。何を思ってこれを完成させたのか…常人には知りかねます。「前衛芸術の追求」では済まされない異様な信念がとにかく怖い。ある意味ゴアグラインドも超越してます。うーん究極。

【本日のレビューその3:SATYRICON「REBEL EXTRAVAGANZA」】


上の2枚に対抗するようなのをメタル畑から引っ張ってこようと思ったんですが、激&変態メタルというとどうしてもフュージョン的な構えをしてしまうか、あるいはRELAPSE系のように道を踏み外してしまってメタルと言い切りづらいものが多いので、ここはテンションと殺気を優先してこのチョイスに。ノルウェーブラックの中でも昔からアーティスティックな香りが強かったSATYRICONの99年作です。CADAVER(およびCADAVER INC.)のアンダース・オデンがゲスト参加。お決まりの光速ブラストも勿論炸裂しまくる一方、落ち着きなく変わり続ける展開と現代音楽テイスト漂う大仰なリフがとかく威嚇的な異形の美を醸し出し、ある種THE LOCUST的でもある自信満々の大風呂敷をおっ広げながらホレホレオラオラと神経を圧迫してきて不安を煽る。意味なく維持され続けるハイテンションは上述2枚に充分匹敵するもの。不気味なスローパートがやけに長く続いたあとに何の前触れもなくズボボボボボ!とBPM20倍になる瞬間なんかはホント腰抜かします。あ〜何かこの支離滅裂具合といい常軌を逸した殺気といいTHE FLYING LUTTENBACHERSにソックリだなあ。知性的な野蛮音楽ってのはどういう形であれ相通ずるニオイを背負うもんですね。MR.BUNGLEの新譜とでも思い込めば皆スンナリ聴けるんじゃないすか!?凄味に痺れてそういうイカレた音楽聴いてるって人はブラックメタル聴いとかない手はないっすよ。

  11月6日
▼今日も昨日のとは別のバンドのライブで長久手は愛知県立大学の学祭へ。雨天中止ということだったはずが、雨混じりの強風の中野外ステージ(一応屋根あり)にて何故か決行…したはいいものの当然見る人なし。ミュージシャンのインタビューでよくある「売れない頃は2人や3人の客の前で演奏したこともあったよ〜」というやつを今回見事に実践した形です。うむ。そもそも市街地から孤立した山中にあるキャンパス(新しくてムチャきれい、引く)で、外からの一般客と思しき人は殆ど見掛けない相当な内輪指向の祭りだったせいもあり、まあ仮に天候がすぐれていても同じことだったかも知れませんが。やぶれかぶれなりに人間的に語りかける澤田君のMCを遥か遠くの模擬店の人々も耳にしてくれていたようで、終わったときには少し広めのパンで拍手が聞こえた気がしました(思い込みの可能性もあり)。

 しかし月曜、昨日、今日と、週に3回も違う会場でライブをやったことなど過去に一度もなかったわけなんですが、人前で演奏することがに近づくという感覚はいいなあと思いました。「ライブやります」じゃなくて「ライブで何できます」が問題ですからね。色々上手くできんとな。

▼帰りにバーゲン中のバナナレコード四ツ谷店にやっと寄って本日の収穫MARK FELL「TEN TYPES OF ELSEWHERE」、PARADISE LOST「LOST PARADISE」(1st!)、TODAY IS THE DAY「SADNESS WILL PREVAIL」(2002年の2枚組!)。少数精鋭ヨシ。

【本日のレビューその1:MARK FELL「TEN TYPES OF ELSEWHERE」】


SNDの人のソロ名義作品。つつましい紙パッケージに「DOCUMENTING CONTEMPORARY AND DIGITAL MINIMALISM」と潔く書き記してあります。その通り。金属を叩いたりこすったりした音を変調させたノイズとも何ともつかない音響、もう少し音階のあるネタを使ってのスレスレビーツ、シンセっぽい何でもないフレーズのメッタ切りミニマル、etc.、といった調子の、総じてストイックかつシンプルな工作を繰り広げております。エクスペリメンタルながらどこか落ち着き払ったテンション感で攻撃性はきわめて低い。楽曲らしい体裁をなす多層性がないためSNDとはパッと見の構えが随分異なりますが、お笑い芸人のテレビに出てるときとコンビニに行くときの差って感じで基本的にはやはり同じ人です。センスはあるがどこまでいっても独り言な独り言の記録というか。シュールなだけのシュール芸じゃなくちゃんと有機的な楽しさがあると思います。ひどく漠然としてるという意味ではまあ極初期ANAL CUNTともそう変わらない。

【本日のレビューその2:PARADISE LOST「LOST PARADISE」】


今までこれの中古外盤見たことなかったですが遂にきました。特に探してたわけでもないけど、考証家肌の血が騒ぐ一枚。ANATHEMAやMY DYING BRIDEといった同じUK勢より半歩早くデスメタルと退廃美の結びつけにチャレンジし、のちに「GOTHIC」という分かりやすいタイトルの2ndを出してゴシックメタル・ムーヴメントの輪郭を俄然明確化、その後も脱デス声、脱ディストーション、ニューウェイブへの接近…とシーンが向かう先を示し続けた歴史的重要バンドの90年リリースのデビュー作でございます。この当時はまだ完全デス声で、CELTIC FROSTを下地にMORBID ANGELや初期ENTOMBEDのスローダウン時を思わせるポスト・スラッシュメタル世代のドゥーミーさを加味したようなスタイルです。以降はあまり漂わないサバス的ズルズル感もここでは顕著で、録音時期が89年とあってCATHEDRAL(彼らもイギリス)にも影響を与えていた可能性がありますね。直接的な耽美表現(泣きメロ、ピアノなどの導入など)はまだ薄く、代わりに結構展開が複雑だったりします。ゴシックとドゥームが渾然一体として語られていた頃特有のカルト臭。メンバー写真の真ん中でニック・ホルムズが着てるTシャツがCONFESSORだったりするあたりからして納得です。ただのデスメタルと呼ぶには余りにもハッキリしないこの音楽性、今同じことやる人は誰もいませんが、あらゆる発展の可能性を秘めた胚のような盤。貴重な姿です。

  11月5日
バンドのライブで愛知県は豊橋市の愛知大学へ。学祭期間中のバンドサークルのライブにゲスト出演という形でお邪魔しました。会場のまわりは普通に出店でチョコバナナとか色々売ってるわけで、久々にあれだけ大勢の(大学生然とした)大学生を見る。それを見てうら若いな〜と思う自分。万年文系学生のつもりなんだけどおかしいなあ。演奏はこの前より幾分余裕をもってやれた気がします。もてなしてくれた部員の皆さんありがとう。途中ブックオフにでも寄れれば良かったけどそんなタイミングは一切なく収穫なし。むしろCD買って頂けました。有り難いなあ。

【只今のBGM:MASTODON「LEVIATHAN」】


元TODAY IS THE DAYのメンバーが二人いる、今やRELAPSEの看板バンドのひとつMASTODONの目下の最新作。何とも形容し難い音楽性が更にオリジナルな方向に熟成、カテゴライズ出来そうで全く出来ない内容になってしまったので、その解説を何とか試みます。まず基本ラインはきょうびのRELAPSEのカラーに即した陰険系ポスト・エクストリームメタル。初期の売りだったカオティックな要素はどんどん目立たなくなってきて、素っ頓狂な高域単音リフや突発激展開による威嚇は殆ど行わず、ヴォーカルが真ん中にくる曲ものとしての完成度を高めてます。一方相変わらず容赦ないドラムの手数(突飛というわけではないけど殆どずっとフィルみたいな高速連打ばかりやっている)は健在で、シンプル化したリフとの対比が何ともサイコパシック。リフがオールドスクールメタルのヴァイブを多分に漂わせているはずなのに耳当たりが圧倒的にモダンなのも、そのへんのバランス感覚に起因する効果でしょう。もう手っ取り早く端的に例えてしまうならばSOILENT GREEN meets IRON MAIDENってとこです。「KILLERS」までのメイデンみたいな非効率的マッチョ感と妄想ロマン。更にメロディとして歌わせるリフ作りはTHIN LIZZY(前作で"Emerald"をカヴァーしていた)譲りか。薄壁一枚隔ててNEVERMOREと限りなく隣人。KATATONIA+VOIVODとも言えそう。いやはやヘヴィメタルですよこれは。温故知新なスタンスが頼もしい限りであります。メタルの将来はこういうバンドに預けましょう。

  11月3−4日
▼両日とも収穫はなし。うーん携帯の画面が映らなくなりよった。KDDIに吸収される都合でTU-KAは今、番号変更なしでauに乗り換えれるサービスをやってる…はずがシステムが追いつかずしばらく受け付け中断してるのであります(今月2日から一応再開してるようだけどまだ制限つきの暫定)。進退窮まった。俗っぽくケータイの話なんかしてみました。生活に支障がなければそれ以上のことは興味ないのです。写真はカメラで撮りますから。

【本日のレビューその1:CELTIC FROST「INTO THE PANDEMONIUM」】


引き続きデスメタル手ほどきシリーズで。これ通し番号振りましょうかね。前回に続き2回目です。一般的な入門盤、スルーされがちな裏盤、およびモロではないが重要な外郭系をボチボチ取り上げることをたった今基本理念としました。
 ってことでデスメタルの話する前にこれですよ。ハイジの国スイスの死神CELTIC FROST!!前身HELLHAMMER時代の香りを色濃く残すローファイスラッシュな初期作も魅力ですが、ヨーロッパらしい荘厳な暗黒芸術をスラッシュメタルとの必要充分な関係で表現しきったこの盤がやはり圧倒的。何故かUSニューウェイブバンドWALL OF VOODOOのヒット曲"Mexican Radio"のカヴァーで幕を開けるのにはまあ素直に面食らいましょう。彼らがアメリカでの商業的成功を強く意識していたことは次作「COLD LAKE」でも明らかになるので。続く2曲目以降から俄然満開になるメタルらしからぬしなやかさと妖しさ、これが異常事態。EL&Pの大曲くらいでしか聞かない現代音楽的音使いの呪詛じみたリフに、瀕死の色魔の如きしゃがれ声で唸るヴォーカル、突如飛び込む変な太鼓、ティンパニにストリングス、女性コーラスや語り(伊プログレのJACULAやOPUS AVANTRAを思わせる)、暗黒インダストリアル的サウンドコラージュ…。前例もなく87年にいきなりこれだけの要素を詰め込んで、一切の破綻もなく未だ誰にも破られない金字塔として君臨してるのが奇跡的です。今日のブラックメタルが粗暴に振り撒く邪気も、ゴシックメタルの大仰な耽美性も、全てここに源流を求めることができるといっても本当に過言ではない。そして何より彼らはロックであります。薄暗く湿ったオルタナティヴアートを追求しながらも、シンガーのトム・G・ウォリアーが執拗に繰り返す「ウッ!」「ヘーイ」の掛け声には未だ世界中のファンが痺れ、愛と敬意をもって真似をする者がメタル系に限らず後を絶ちません。あまりの妙味っぷりに、初めて聴いた高校時代は何やらよくわからんな〜速くないし…くらいにしか思ってなかったですが、もっと後の年代のバンド達を色々と当たってみるほどに、影が浮かび上がってきたのは誰よりもこのCELTIC FROSTでした。エクストリームメタルの「要するに」を知ってしまいたい人は真っ先にこれを選んで下さい。

【本日のレビューその2:Q AND NOT U「POWER」】


解散から半年近く経ったでしょうか、stiff slackにいま関連音源がいろいろ入ってるようなので当サイトでも何となく、買って聴いてあまりシックリ来なかったままちゃんと聴き返してなかったラスト作を再びピックアップ。ちなみに購入当初の感想はこんな感じでした。まあ概ね共感。しかしリリースから一年経った今、最初からこれはユルいアルバムだぞ〜と思って聴くと、素直にその真価に触れられる気がします。確かにファンクネスの表現手法は思いっきり借り物としても、80年代ポストパンク〜ニューウェイブやその再現ものとはどこか雰囲気が違う。ビートを四角く切り刻むような硬直した鋭さじゃなくて、ひたすらfunなプライベート・ダンスフロアっちゅう感じとでもいいましょうか。メンバーの面々の素のユーモアやリラックスしたノリをたらたらっと垂れ流したらこうなったという、当人達からすれば出来るべくして出来上がった内容なのだと思います。曲はニール・ヤングみたいなのからSLY & THE FAMILY STONEみたいなのまで、よく聴けば実に幅広い作風だし、楽器の制約に囚われず三人がかりで無茶すれば却って自由になれるという前作での収穫が活きたのか、アレンジの奔放さにも更に拍車が。ダンスを軸に好き勝手の限りを尽くすというバランスはYO LA TENGOとJOAN OF ARCのコラボレーションを見るようでもあります。四つ打ちとそのバリエーション以外にダンサブルさの実現手段を見出せなかったことだけがこの作品にのしかかる手狭感の元凶でしょう。バンドの解散という方法をとってそこから自由になったメンバー各自が今後どういう形で自己表現を続けていくか、チェックしていくのも楽しかろうと思います。

  11月2日
収穫はなし。知らん間にDEERHOOFやKING'S Xが新作出してたと思ったら、BLIND GUARDIANにドラマーを貸し出してたドイツの超変拍子プログレメタルバンドSIEGES EVENまで久々の6枚目を出してることを知り、以前から気になっていたKのLANDINGなどと諸々アマゾンでまとめ買い。今回はカイマンに次いでマーケットプレイスでよく見る海外業者IMPORT-CD SPECIALISTSを初利用、どうなることやら。届いたらまた日数や梱包状態などをここでタレこみますんでよろしく。

【本日のレビューその1:SEANCE「SALTRUBBED EYES」】


普段余りにデスメタルデスメタルと言うばかりでうるさいと思うので、過去にこの欄に登場したことのない個人的なお気に入り盤をボチボチ紹介していこうと思います。一発目はなんとなくこれ。現THE HAUNTEDおよびWITCHERYのパトリック・ヤンセンがその昔やっていたバンドです。2枚のフルアルバムを残していてこれは2nd(93年)。デビュー作からして90年代初頭のスウェーデンらしからぬ整合感と技巧性を誇り、しかしやや没個性のきらいもあったのですが、このアルバムではもう少し豪腕寄りになった音楽性を、よくあるドンシャリデスメタルサウンドではない生々しいプロダクションで聴かせ、もうズバッと5年分くらい垢抜けてしまったという不世出のマスターピースなのであります。ヴォーカルは巨岩破砕系のガッツリスタイル。皮の鳴りの中音域を派手にバツッといわせるドラムサウンドも凄いが、全編に渡ってゴバゴバズゲズゲと荒れまくるベースの音がひときわ印象的。メタルのCDはギターに低音を食われてベースが聞こえんのが多いのでこれは何か新鮮です。そこに北欧最強のリフマスターが血塗れの高速スラッシュリフを彩ると。THE HAUNTEDほどオールドスクールたることに開き直った様子がない分、多少ひねくれた部分もありますが、そうやってブームにリアルタイムで飲まれてる感じがまたアツイといえましょう。今ではやらないような激ブラストも要所要所で炸裂!しかし古臭さは一切漂わない。爽快型デスラッシュの元祖としてもっと崇め奉られてもらいたい盤であります。

【本日のレビューその2:STEELY DAN「TWO AGAINS NATURE」】


2000年の復活作。相変わらずインテリフュージョンとAORの中間のようなことをやってます。変わってなさ過ぎて微笑んでしまう。音数自体はクソ多いはずなのにやたら空間を感じさせるプロデュースセンスは、今の音質で聴くと改めて凄みが伝わります。耳当たりの良いように作ってはあるものの少し潜って聴き入ってみると驚異の嵐が渦巻く仕上がり。STINGやらリッキー・リー・ジョーンズやらドン・ヘンリーやら、ジャズ系の大物ミュージシャンをガバガバ起用するような人のレコードに共通して漂う匂いですね。昔は革新性をウリにやってた人達なんだから何かしら目新しい要素を入れて欲しかったとも思うんですが、見事に昔のままでそこは少々肩透かし。まあワンアンドオンリーには違いないんで良しとしましょう。取りようによってはスティーヴ・フィスク(PELL MELL)がプロデュースしたSTEREOLABみたいなものと思えないこともないような場面もありますし。あるいはナイル・ロジャースの手にかけられたTHE DISMEMBERMENT PLANか。ともかくSTEELY DANの作品である以上一定の刺激性は保たれています。気になる人は安く見たときにどうぞ。

  11月1日
収穫はなし。途端に暇が訪れたので採用かボツかわからない音源のミックスなどをして過ごしました。あまり音量を上げてやっていると階下から文句言われるし、かといって小さくすると100Hzを下回るような低域は聞こえづらくなるしで、最近はヘッドフォンを重宝してます。「EQは原則カット方向で使う、±6db以上いじるのはタブー」みたいな美徳はもともと録りの悪い素人仕事には通用しないと思い直していっそ乱暴にいじってみたらこれがいい結果に。最初のドラムの音作りでバランスが取れないのがいつもその後の全ての苦労の元凶なわけですが、フリーウェアのリズムマシンを拾ってきてその音源と聴き比べながら丁寧にやっていったら一発OKでした。これいいっすよ、簡単に遊べるし。今後の宅録にも活躍しそうな気配です。

【本日のレビューその1:JOHN COLTRANE「KULU SE MAMA」】


買ってしばらく放置してあったのですが、ジャケ写真のコルトレーンの口元に青白い光がモヤッと(人造心霊写真的テイストで)さしているのにある日はたと気付いて、何じゃこりゃと気になりつつもなかなか聴く時間が取れずに数日。やっと聴いてます。相当キテる65年の作で、いつものカルテットにファラオ・サンダースほか数名を加えてのダブル・リズム・セクション体制。全5曲(プラスCD化ボーナス1曲)中1曲だけが例のエルヴィン・ジョーンズ vs. トレーンのガチンコセッションをやっちゃってますが、それ以外は総じてATLANTIC時代以降に確立したのっしり異郷モードスタイルが基調。そこにドシャメシャでも漫談系でもない独自の、いわば数多の神々が相談するような雲の上のフリー〜スピリチュアルテイストが加わってもうえらいことに。形を放棄してもこれほど言葉がある音楽が巷にそうそうありましょうか、いやない。純粋に結果としての前衛。ブヒョープルプルプルと吹き乱れるテナー二人を「どう聴いても適当」という向きもいましょうが、すがる制約のない中で強い意志をもって音響をデザインしている感じは伝わるかと思います。4曲目"Selflessness"の開始5分あたりでノンビートが平然とインテンポに移行する瞬間だって何も特別なアクロバットなんかではないはず。神の世界の愛と悟りを真剣に追い求めた男の修行の跡はかようにも美しく張り詰めたものであったことです。ちなみに3曲目の小品"Welcome"はMAGMAそのもの。

【本日のレビューその2:POCO「COWBOYS & ENGLISHMEN」】


POCOの82年作ってだけでグググッと来てしまいます。70年代USフォークロックバンドの中でもやんわり優しい雰囲気がひときわ光っていた人達なので、80年代の大台に乗ったらそりゃもうシンセをほどほどに導入しつつ、フォーキーなアコギなんかは残しつつ、CHICAGOの田舎版か半分くらいしか垢抜けてないEAGLESみたいになってることだろうと踏んで買ったらもう正にその通り、大当たり。熱心なファンの眼中になさそうなあたりがまた最高です。いや、こんだけ良かったら評価は高いのか?鍵盤がフィーチャーされて少しだけ近代化したアメリカンなフォークバラードの数々がもうたまらん。ペダルスティールがヨワ〜ンと絡んできたりした日にゃ背中をドジョウが下から上に這ってったかの如くゾワッと腰砕けになるしかない。そんでヴォーカルの声質が変に太いオヤジ系じゃないからいいですね。商業ポップスでも全然イケるハスキーなハイトーンで、しかしラジオの向こうの全ての美女に愛を囁くほどの器用さはないという。シンセ導入など主にアレンジの面で道を誤ったかと見せかけて中身は何ら昔と変わらず良心的ということで、BAD COMPANYの「ROUGH DIAMONDS」(ポール・ロジャース在籍期ラスト作)にも似た佇まいですな。これ今ミッチェル・フルーム&チャド・ブレイクプロデュースで全部そっくり録り直したりしたら大騒ぎものの大傑作オブ・ジ・イヤーになること確実なんじゃないでしょうか。素晴らしい。買い。

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