物色日記−2006年2月

※頻出語句解説はこちら
  2月28日
収穫はなし。省略しました。ワキャー

  2月25−27日
▼26日は鶴舞KDハポンにて31KNOTSジャパンツアー最終日行ってきました。一昨年クラブドーターでの和やかかつ全力なパフォーマンスにはそりゃ度肝を抜かれたものであったので今回も大いに期待。前座1番手は地元名古屋のURTHONA。チャーリーさんヒゲと髪が伸びて別人のようでしたが長身っぷりは相変わらず。曲も昔のDON CABALLERO+DRIVE LIKE JEHUてな変則プログレッシヴポストコアで最高。何か変なものが出てきそうなモクモクしたあやしさがたまらん。展開の妙に更に磨きがかかり、終わると見せかけて…とか、続くと思いきや…みたいな楽しい驚きが連発でした。あと今回は特に不穏なベースラインがよく聞こえてカッコ良かったなあ。

▼2番手は何と自分らでしたな〜。出来の手応えとしては「納得の入選圏外」でしたが、それでも会場の温かい反応に恵まれたのは何よりでした。今後に期待したろうかなと思って頂けた人がいたならひとまず今回は成功です。CD買って下さった方々もありがとうございます!

▼3番手は昨年のTRAINDODGE以来に見る東京のBALLOONS。初期BRAID的な変拍子の扱いとSTEELY DANみたいなプログレッシヴなコードワークの効いた楽曲、それと何より安定した演奏力は今回もバッチリ健在。無機質なもののなかに人の感情が見え隠れする感じが正に東京サウンドの真髄ですな。踊れや泣けやといった方向に安易に走らず(それをやる国産バンドが余りにも多い中)、内面に向かって突き詰めるストイックさがこのバンドは良いっす。

▼4番手はベテラン54-71。人だかりの奥にいたのでステージングが全く見えなかったのが残念でなりませんが、揺るぎようがない鉄壁のアンサンブルはもう仙人の域ですね。1曲目"Idiot"で始める最近の流れは、警報!みたいな危機感をポーカーフェイスで突き付ける感じでかなりカッコイイ。うーむ唯一無二の存在。世界的にも。

▼そしてメインの31KNOTS。いきなりサンプラーをカラオケ的に使ってフリーハンドで激アジテイトするヴォーカル/ギターのジョー、既にかっこよすぎ。ギターを持てば意味不明の両手タッピングを伴奏にしながら熱く歌い、一人和やかなテンションでポチポチ〜と指弾きをこなすベースのジェイと向かい合ったり、横並びになったりして、両楽器の緊密な絡みを空気レベルから構築。この長身コンビの仲良さそうなやりとりが彼らのライブの大きな醍醐味です。一方ドラムのジェイ(ファーストネーム被ってます)は、普通に激ウマなんだけど更に無理のあるフレーズを力技でこなしてて、人間にあるまじき動作を必死に繰り出すのがこれまた非常にアツい。たまに無理すぎて回ってないのがまたイイ。弦二人に勝るとも劣らん変態アイディアの宝庫です。それらの事象が全部、至極音楽的に統合されて、最終的にヴォーカル(ロッド・スチュアートのようにちゃんと歌う)のもとに集められるというこのバンドの円熟したヴィジョンはやっぱりCDよりライヴの場においてことさら鮮明に伝わりますな。サンプラー使用も楽器持ち替えも何でもやって、3人分のマンパワーを限界まで酷使するというスタンスはトリオバンドの鑑(かがみ)。ここまでやってこそと思わされる。

 ジプシー的な泣きとドタバタした性急感を漂わせつつ無駄に展開を盛り込まないでボルテージを上げていく最近の楽曲スタイルも、やはり断然ライヴ映えするもの。延々一つのリフの繰り返しの上で歌っているだけの場面でも強烈に気持ちよい。歌いながら調子が上がると片手を高く宙に掲げるジョーのアクションがいいなあ。ギターソロを弾きながら客席に乱入することも度々。それも困惑を誘うような荒らしっぽい感じじゃなくてただただ衝動がとめどなさそうなだけの様子。本編最後の曲ではサンプラーに合わせてリズムを刻み続けるあとの二人を尻目にジョーが二階席(註:小さい会場なので中二階程度のちょっとしたものです)の客にスーツケースを手渡し、PA用のハシゴを上って二階に辿り着き、服を途中まで脱ぎ、スーツケースから取り出した黒のスーツ上下とカッターと赤いネクタイを着用し、手すりからブラーンと一階に戻り、1曲熱唱して帰るという何だかよくわからん体当たりなパフォーマンスを披露。終了後当然の如く大きな手拍子でアンコールが要求され、割とあっさり戻ってくると、「あと1曲やって、酔っ払って、寝て、明日はモンキーパークだ」といってウニウニした単音リフのつかず離れずな絡み&謎の変則キメの嵐に魅了される名曲"We Still Have Legs"でシメ。前回の来日で一番感銘を受けた曲だったので嬉しい。

▼物販では特に何も買わず、25日の収穫にまたPOSEIDONさんから送って頂いたYOCHIKO SEFFER「CHROMOPHONIE」(ex.MAGMA〜ZAO!80年代初頭の音源集)、PEST「QUINOLONE」(CUNEIFORM)、YETI「THINGS TO COME...」、RUNAWAY TOTEM「ANDROMEDA」。今日27日にはサンプルで内核の波「忘却の河」とFROG FLAVOR「SPACE OF MAGIC」も届きました。ちなみに31KNOTSの最新作「TALK LIKE BLOOD」レビューは過去に取り上げ済みですのでこちらを是非ご覧下さい。

▼休日のゲーセン通いが趣味の姉夫婦がウチにもってきた、うまい棒のギョウザ味(パッケージには「ギョッ!the味」と表記)を食べてみました。口に近づけたときのニオイだけ果てしなく焼きギョウザで、食べると普通のうまい棒でした。あのニオイどうやって作ってるんだろう。とんかつソース味はキャベツ太郎の味でした。

【本日のレビューその1:YETI「THINGS TO COME...」】


CHROMEみたいなジャケですが多分関係ありません。アメリカはテキサス州のシンセ入りインスト4人組。大筋でコンタルコスMAGMAを継承しつつ(ベースの唸りっぷりに顕著)、たまにクリムゾン+DEVOみたいな突撃モードになったり、不協和音の質はどことなくART BEARSやUNIVERS ZERO風だったりと、ダークなプログレをロック然として構築する感じの内容。CATHEDRAL(リー・ドリアンの同名バンドとは別の70年代米美麗プログレバンド)にも通じる「いいところ盛り合わせ」的な効率のよさはやはりアメリカ産らしくある一方、生きたヘヴィネスへのこだわりにはコスプレっぽくない体温が感じられてなかなかグッと来ます。MELVINS同然ですらあったりもする。GUAPOみたいなバンドと共に橋渡しになって、いま変で極端な音楽がもてはやされてるけどプログレは昔からクールなのよというところを全世界にアピールしていってもらいたいところ。

【本日のレビューその2:オフコース「AS CLOSE AS POSSIBLE」】


全曲英詩の「BACK STREET OF TOKYO」を経ての87年作。坂本龍一、ジェフ・ポーカロ、大貫妙子などなど豪勢なゲスト陣が参加しまくりで、当時のオフコースの立ち位置が窺い知れます。本気でドン・ヘンリーとかみたいになりたかったんだろうなあ。しかし都会的で洗練された装いに反して小田和正の歌心自体はフォーク時代とさほど変わらず、例の憂いある声色で造作なく名曲・名メロをスッスッと連れてくる。別にシンセダクダク・リヴァーブボーボーであるから内容も悪い、ということはなく、小田和正のソロ初期同様の良さがあります。バブリーなバック演奏さえ正当化する声のパワー。松尾一彦も歌ってるけど正直歌唱力が凡庸すぎて、等身大の若者としてフォークソングを掻き鳴らしてる分にはいいとしても、ダン・ハフ作曲の英詩曲も見事に歌いこなす一流シンガーに成長した小田氏と並んで比べられると明らかに見劣りしてしまう。こういう布石があって小田氏ソロの成功があったのか…と思ってしまうあたり、やはり過渡期的作品といえましょう。共同体としては終わっているに等しいように思えます。

【本日のレビューその3:BILL FRISELL「IS THAT YOU?」】


パット・メセニーの流れを汲みつつ独特のトーン作りとモダン・アメリカーナな世界観で今や孤高の地位を築くギタリスト、ビル・フリーゼルの若かりし頃、89年のリーダー作。ELEKTRAなんぞから出てます。他のメンツはウェイン・ホーヴィッツ、ジョーイ・バロン、デイヴ・ホフストラといずれも同じ界隈で仕事を共にしてきた/することになる人ばかり。中古で見掛ける度に必ず安値なのでどんな内容なのか確かめたいと思っていたのでした。とりあえずプロダクションが完全にロックの音で、ディストーションギターの鳴りも果てしなく80年代。ノリとしては"Englishman In New York"(STING)間奏の「ドン、ダン、ドンドドンダン」もOKだと言いそうな調子(?)。そのツラさで早々に聴く気が失せてしまいそうなところをグッと耐えて耳を傾けてみますと、時にデレク・ベイリー、時にジョン・フェイヒイ、時にPRIMUSやMATERIAL風だったりする非常に混沌としたアンサンブルの奥に、確かにこの人のアメリカ心がありました。全体的にどちらかというとMATERIAL方面に近い雰囲気なため(ジョン・ゾーン人脈だし)脱線ジャズというよりはアヴァン/エクスペリメンタルな匂い。今のイメージと違いますね。光るアイディアは確認できるものの、依然「ただ自由な自由」といった段階。これを通過したからこそ現在のように斬新なアンサンブルを狙い撃ちできる眼が備わったということなのか。イマジナティヴで面白いと言うこともできましょうが、熱心な研究家でないのなら、スッキリ完成した後年の作品を聴けばよいと思います。

  2月23−24日
23日の収穫はバナナレコード四谷店にてオフコース「AS CLOSE AS POSSIBLE」、今池グレヒにてTHE STOOGES「FUN HOUSE」。先日ブラシを購入して以来何故かすっかり心がバップづいてしまい、よくある12小節進行にのって朝から晩まで脳内アドリブの止まらぬ日々を送っております。サックス吹けたい。

▼THUNDERHEADのテッド以外の3人が新バンドを結成、CDもリリースしているが手軽なところだとドイツのアマゾンでしか買えないとの情報を得、購入に踏み切ろうとするも送料が高く、それなら規模の経済で割安にしようと日本のアマゾンやカイマンでは扱ってない商品を中心に久々のオンライン大物色。さすがACCEPTはSPVの2004年リマスターが全部揃ってました。しかも1枚800円程度だったので当然まとめ買い。ヨーロッパ盤のみしかないSLAYER初期2作(と「LIVE UNDEAD」+「HAUNTING THE CHAPEL」)のデジパックリマスターや、"Baka"で有名なジャーマンスラッシュASSASSINのレアな1st(再発になったもののすぐに姿を消してしまった)も発見。そんでページ右端に表示されるユーザー作成の「マイリスト」を見ると、何故かSIX FEET UNDER(CANNIBAL CORPSEの初代シンガーのバンド)とかが人気だったりして興味深かったことですよ。以上、メタル日記でした。

【只今のBGM:CHARLIE PARKER/DIZZY GILLESPIE「BIRD AND DIZ」】


てことで(註:今日の日記前半参照)バップの大した演奏を聴こうという気になって物凄く久し振りに引っ張り出してきました。買ったのは2〜3年くらい前だったか、当時はフーン普通なんだねえくらいにしか聴こえてなかったわけですが、多少なりとも基本イディオムおよびを理解した今再び対峙したらホゲー!でした。高ぶるテンションに完全についていくこの指と歌はそりゃ天才的ですわ。後の歴史によって定番となってしまった数々の常套フレーズも、オリジナルであるから有り難いという事実以上に、この場で生ものとして踊っているさまの如実さが凄すぎて心動かされるしかない感じです。上質のブラックメタルを聴くときの感覚と同様、「何ゆえにここまで溢れだすものがあるねん…」という感嘆。そんでこの録音、ピアノがモンクでドラムはバディ・リッチなんですね。モンクはやっぱり真の変態でした。バップ耳でついていける範囲内の脱線ではあるんだけど、"An Oscar For Treadwell"イントロの奇跡的な外し方(続くテーマフレーズのアタマ部分との呼応がアクロバット)や"Mohawk"のソロで燃えたぎるディジー・ガレスピーの直後にいきなりへべれけになる不敵な落差などは「うわーモンクや〜」と思わずにいられませんな。バディ・リッチはハットを派手に使ってラウドかつ鋭い。バスドラを四つで激踏みしながらの爆撃ドラムソロなどは明らかに異質。総じて、どんなアイディアに発展したとしても即時性とインタラクティヴィティがすなわちジャズであるとするなら、こういう盤は間違いなくその髄であることです。

  2月22日
▼トラックのエンジン音が明らかに自宅の間近で止み、ほどなく玄関のチャイムが鳴るのって快感です。それで大抵はアマゾンからCDがどっさり10枚くらい届いて、ワーイと早速開封して喜んだりするわけですが、今日はCD1000枚来ました。ということで本日の収穫は遂に到着のDOIMOI「THE MORE YOU TANGLE, THE MORE WE HEAVY METAL」×1000!!演奏・プロダクション・アートワークとも、あれが不充分これが早計といった後悔は数限りなくあれど、こうしてパッケージングされていざ大量に届くと意外と納得してしまうというか、せざるを得ない感じです。何せ1000枚、標準的な大きさの段ボール丸4杯分。この眺めはなかなか感慨です。まあ、頑張って売るのみですな。よろしくお願いします。

▼それと今日はなりゆきで赴いた藤が丘にて更に収穫がありまして、P-CAN FUDGE藤が丘店のあとに入ったFLIGHT RECORDSという店でLAMB OF GOD「ASHES OF THE WAKE」、SON VOLT「STRAIGHTAWAYS」、DON HENLEY「ACTUAL MILES: HENLEY'S GREATEST HITS」、UFO「STRANGERS IN THE NIGHT」(リマスター)、BILL FRISELL「IS THAT YOU?」、WIDOWMAKER「BLOOD & BULLETS」(300円)。品揃えが良くて値付けももともと安めだった上にたまたま10%OFFバーゲン中で最高でした。どの程度回転してるか判らないですけど、未だ行ったことのない方は一度訪れてみるといいですよ。韓国・香港・台湾の新品に何故か手厚く、ユーロロックプレスで度々紹介されているヴァレン・シューなんかもありました。

【只今のBGM:WIDOWMAKER「BLOOD AND BULLETS」】


最近めっきり埋もれ系メタルと変なジャズしか登場してないですが、そういうのばっかり買ってるんで許して下さい。これは「昔BURRN!で低得点だったやつって今聴くと実はオイシイんじゃないか?」と気付き始めたメタラー諸氏にはきっと気になる存在であろう、元TWISTED SISTERのディー・スナイダーが率いるバンドの92年1stです。ああ別にTWISTED SISTERと大差ないじゃないか。中高生向けっぽい雰囲気をほんの若干アダルト方向にシフトさせた形跡があって、たまにBADLANDSやWHITESNAKEみたいな感じの曲が出てきたりするものの、まあそれもSKID ROWが2nd「SLAVE TO THE GRIND」で少しだけ見せたシブもの趣味のフリ程度(というか「SLAVE〜」に感化されてるっぽい)。ただただ中庸をいく典型的な80年代末〜90年代初頭のUSヘアメタル以外の何者でもないです。しかしそこはディーの堂々たるヴォーカルに引っ張られているだけあって安心・納得の金太郎飴な出来。質は高い。キッズを扇動する感じの派手さを出さなくても普通に上手い人なんだなと再確認しました。92年に敢えて新バンドでこれをやろうと思った神経はよく判りませんが。あっさりPANTERA系に寝返ったという次作「STAND BY FOR THE PAIN」の方が妙なことになってそうでそそられます。あっ中頃に出てくるアップテンポナンバー"Snot Nose Kid"とか歌メロが印象的で名曲だなあ。

  2月21日
収穫はなし。最近ンッと思ったことは、トリノ五輪日本選手団のユニフォーム(?)の右肩付近にあるマークがPRESTIGEのそれによく似てることです。これジャズファンの間で話題にならないんですかね。

北京はクニャッとCONTEMPORARY風にいってくれませんかな。

(註:その後PRESTIGE似の矢印はDESCENTEという国産スポーツウェアメーカーのものであるとの御指摘を頂きました。)

【只今のBGM:THE BLACK LEAGUE「MAN'S RUIN REVISITED」】


以前も紹介した元SENTENCEDのタネリ率いるバンドの2004年作。SPINEFARMのサブレーベルとおぼしきRANCHなるところからのリリース。基本路線は不変ながら、全盛期URIAH HEEPとBLACKFOOTの中間の音にジェイムズ・ヘットフィールドばりに若返ったレミー(MOTORHEAD)が加担したかのグレイトな出来!手垢のついたリフに妥協なき気迫を込めて荒くれまくる佇まい、その気になれば便乗できそうな昨今のガレージブームに敢えて足の裏を向けてハードロッキンな哀愁に徹底的にこだわる愛深さには心底惚れます。ガサつくヴォーカルは更に味わいを増して(もう専任ベーシストがいてタネリ氏はピンでヴォーカルやってるみたいです)現代にあるまじき紫煙くゆる貫禄。ジョニー・ウインターかテッド・ニュージェントかってな本気のギターソロも今時貴重でかっこいい。いつまでもサバスのカーボンコピーしか能がなかったり、使用楽器や頻出フレーズばかり真似てはレトロな雰囲気を稼いで肝心のロックな推進力が感じられない凡百の懐古趣味ストーナー〜ハードガレージの連中はこれくらい勉強してきてもらわんと困ります。うおお中盤でいきなりSAXONみたいなスピードチューン炸裂!激クール!THE HELLACOPTERS超えてしまったなあ。前から好感だったけどこれでファンになりました。心あるメタラーの皆さん、THE BLACK LEAGUEを盛り上げましょう。

  2月20日
収穫はなし。いま最もシュールだと思うものは、「カーリング試合中のハイライトシーンのスローモーションVTR」ですな。

▼自宅でのドラム練習用にブラシを購入したらこれがいい。実にいい。意外とちゃんと反動が来るし、何よりちょっと硬い所を叩けばツシャッとそれらしい音色がするので気持ちよい。ルーディメンツ練習も楽しくなることでしょう。音量が小さいからCD聴きながらでもやりやすいですし。もう太腿を赤く腫らしたりパッドの置き場に四苦八苦したりする必要はございません。(さすがにダブルストロークとかはスティック+パッドじゃないと練習になりませんが。)これにカズーでもくわえて「一人シーツ・オブ・サウンドォォッ!!」などと言いつつ宴会でパサササとやれば、会社のお偉方から一目置かれること請け合いじゃないでしょうか。別にドラマーじゃなくてもブラシが家にあるってのは何かいいですよ。勢い余って息子のクリスマスプレゼントにキッズドラムセットを買い与えてしまった友人M田君の騒音対策にも勧めてみよう。3000円前後で買えますが、切れたギターの1〜3弦をひたすら集めまくって頑丈に束ねてもだいたい同じものが作れそうです。

【只今のBGM:YEAH NO「SWELL HENRY」】


この欄に度々登場しているクリス・スピードが率いるグループの4枚目。相変わらずジム・ブラックが相方務めてます。仲いいなー。リリースはJAGJAGUWARとハーフでSTIGMA ROCK UNITを出していたSQUEALERからということで、内容もこの人の一連の作品の中では最もポストロック色の強い雰囲気に。変拍子でユルユルと倦怠感を漂わせつつグルーヴの切り口はしこたま鋭いという、THE UP ON INやHIMとGASTR DEL SOL、TOWN AND COUNTRY、DIRTY THREEらへんがリンクする音にTZADIK系新手クレツマーやKAMPEC DOLORESみたいなエスニックな哀愁やらダビーな横ノリまで絡む、何とも所在不明な塩梅。ケン・ヴァンダーマークのこれといい、こんなロック耳でも余裕で感動できるのを作られてしまっては、嗚呼、生半可な憧れと妄想だけでジャズらしきことをやりたがる自称ジャジーな一部のポストロッカー達の立場がいよいよ無いじゃないか。プログレッシヴでリリカル、演奏も録音も完璧、全くもって不足なし。むしろソロであんまり温度を上げない感じがジャズファンには向かないのか。PIT ER PATやJOAN OF ARC(途中にモロMAKE BELIEVEな曲あります)好きな人に勧めてしまおう。

  2月18−19日
収穫はなし。バンドで作ったCDを展開するにあたって要求され得るという「メンバー写真」を調達するため、名古屋の真ん中の練習スタジオを出てどんどんどんどん人気(ひとけ)のない場所を求めて移動、結局何故か知多市の海釣り公園に至る始末。三脚なし、カメラマンなし、ひたすら「光源」と「手頃な高さの平面」を求めてウロつき、時には後ろに人の気配を感じながら芝生に腹ばいになりつつも、セルフタイマーを酷使して何パターンか撮影を敢行してきました。

↑ありがちな遠近

↑ありがちな階段を利用した高低差

↑ありがちな見下ろしアングル

↑ありがちな車内照明

↑更に寄って車内照明(とSUFFOCATION)

↑タイマーの10秒までに笑いが止まりませんでして
夜の公園おもしろかった。

【本日のレビューその1:JOHNNY GRIFFIN「THE LITTLE GIANT」】


久々にOJCものを。モンクのカルテットにいたテナーの人の59年録音盤。ブルー・ミッチェル、ウィントン・ケリーを含む3管セクステットです。豪快で気持ちよい普通のハードバップ以外の何者でもない内容であるわけですが、いやはやテンション高くてイイですね。サービスのよいバラードなどは一切盛り込まず、ちょいワル系なレパートリーをひたすら極太に吹きまくってくれるという、最近の若い人よりはこういう古い録音で聴きたい感じの内容。全員爆音でブチかますのっしのっししたブルーズフィーリングが最高だ。全体に若干割れ気味の音質もむしろプラス方向にマッチ。ジョニー・グリフィンのアルトはソニー・ロリンズほどフルフルフル〜!と流暢さを前面に出すタイプというわけではないものの、威勢良くえぐりまくるブロウがとかく爽快。いずれの曲も好演です。ジャズのジャズ然とした醍醐味をまっとうに堪能するのも楽しいですなー。

【本日のレビューその2:MONSTROSITY「MILLENIUM」】


久々にノーマルなフロリダものを。シンガーのジョージ・"死体粉砕屋"・フィッシャーを後にCANNIBAL CORPSEに送り出したバンドの96年作。恐らくまだ現役で活動している中堅カルテットです。DEICIDEやMALEVOLENT CREATIONなどに準ずる普通のブルータルデス以外の何者でもない内容であるわけですが、オーソドックスながら激ウマでイイですね。まどろっこしいSEやメロディックな展開などは一切盛り込まず、SLAYER進化型のキレのあるデスラッシュをひたすら正確無比に叩き出してくれるという、正にスコット・バーンズ録音(勿論MORRISOUND)で聴きたい感じの内容。PANTERAみたいなスローダウン・スラッシュ風のグルーヴには脇目もふらない高速16分カミソリリフの嵐が最高だ。全体に若干クリーン過ぎる印象もあるプロダクションも、ヘッドフォンで音量上げめに聴くと逆に細かいエッヂの殺傷力が際立ってプラス方向に作用。ジョージ君のヴォーカルスタイルは極めて王道なものの、深いところからよく声が通っている感じでとかく爽快。楽曲にバラつきもなく最後まで充実です。デスメタルのデスメタル然とした醍醐味をまっとうに堪能するのは楽しいですなー。

  2月17日
収穫はなし。一昨日ジャズシンでの買い物のついでに、とある特集目当てで「ジャズ批評」のバックナンバーを購入してきました。その中にあった松永貴志という日本の若いピアニストのインタビューで、一日にどれくらいピアノを弾くのかという問いに対し「ピアノ弾いて、ご飯食べて、ピアノ弾いて、プールで泳いで、ピアノ弾いて、ご飯食べて、本読んで、散歩して、寝る。ピアノの下で寝てる」との回答。そりゃイカンなと私も、右手はこれまでどおりネット徘徊で猛クリック、耳はヘッドホン着用でCDを聴きつつ、左手はそれに合わせて練習パッドを激打する生活を始めてみました。思えば去年の引退ツアー前のソニー・ロリンズのインタビュー(何故か朝日新聞の夕刊に載ってました)でも「今だって一日1〜2時間は必ず練習をする。これで完璧だと思う演奏をしたことは人生で一度もない」と語っていました。うむむ。

▼にしてもメダルの取れん日本勢ですが(と臆面もなく時事ネタに乗ってみましたが)、メディアの「4回転、成功するか!?」みたいな口調は何だかな〜。ヘビメタさんで有名になってしまった元MEGADETHのマーティ・フリードマンはかつてギター誌「ヤング・ギター」の連載コラムで、「『これ以上速く弾けません』という限界を見せてしまうのはとってもださい。ああ、コイツはこれで全部なんだな、と知れてしまう。能力の限界はヒミツにしておいて、その少し手前をいつでも完璧にこなせるのがプロフェッショナルなプレイヤーだと思う」みたいなことを語っていたように記憶しています。けだし名言。飛び道具で出し抜いて偶然頂点に立つか立たないかのヒヤヒヤするショーより、スティーヴ・ヴァイが無理ならスコット・イアン、バッキングひとつで溜息つかすようなパフォーマンスで唸らせて頂きたいところ。

【本日のレビューその1:OFFERING「A FIIEH」】


フレンチプログレの怪巨星・MAGMAの休止後、中心人物のクリスチャン・ヴァンデ(ds./vo.)が編成したグループの93年リリース5枚目(しかし1stと2nd、3rdと4thは元々それぞれ1枚にまとめてリリースされていたので実質3枚目。ややこしい)。奇跡的に全作品中古でコンプリートしちゃいました。さてMAGMAは独自の神話体系と言語を軸に、東欧現代音楽とジャズロックの中間をいくかなり暗黒かつ長大な音楽性を標榜していたのですが、このOFFERINGではヴァンデの最大のインスピレーション源である夭折のサキソフォニスト、ジョン・コルトレーンとそれを取り巻いた人々(ファラオ・サンダース、妻アリス、マッコイ・タイナーetc.)の音楽性を独自に進展させ、神々しさと愛に満ち満ちたスピリチュアルジャズ風のアプローチが聴かれます。固定された編成を持たず、もっぱらヴァンデ自身がヴォーカルを取ることによって、MAGMA時代から常に背後にあったイメージが更にディープに具現化されております。もろ多幸的なスピリチュアルテイストだった先の4作に比べるとこのアルバムは往年の重々しさがやや揺り戻しており、しかしそこで激烈なリズムやボグボグ歪んだベースギターの地鳴りではなく、布敷きのようなピアノの上にひたすら人間の声を重ねることを手段としているあたり、MAGMAとのステップの違いを明らかにしています。26分強に及ぶラストの大曲がやはり圧巻。暑苦しいフリージャズ風インタープレイをバックにJBばりの激饒舌コバイア語ヴォーカルが延々炸裂!宇宙。唯一無二過ぎてMAGMAファン以外の誰が心酔したらいいのかもはや判らぬ音楽になってますが、この世で屈指のハイエナジーな芸術作品には違いなし。

【本日のレビューその2:CHRISTIAN VANDER TRIO「JOUR APRES JOUR」】


こちらは純粋にジャズドラマーとしての89年録音盤。現在のMAGMAのメンバーでもあるエマニュエル・ボーギを擁するピアノトリオ編成で、リリースはちゃんと彼ら自身のレーベル・SEVENTH RECORDSからです。内容はといえばATLANTICでのエスノ・モードの習作を経てIMPULSE!初期に固まったコルトレーン・カルテットの音に酷似したもの。変則的にレガートしつつ急角度でドッシャドッシャと飛沫があがるドラムはエルヴィン・ジョーンズ以外の何ですねんと。5度フォームの平行移動でリリカルにつなぐピアノも多分にマッコイ・タイナー風ながら、欧州的な響きのする脱調コードの大胆さは微妙に文脈違いでやっぱりコバイアンな香り。またもや27分の長尺曲が収録されてまして、途中MAGMAでは絶対聴けないようなドシャメシャ激フリーセッションに突入するのもまあトレーンの足跡に忠実なアイディア。ラストではトレーンの"Like Sonny"まで取り上げています。何を思ってこれをやったのか、いつでもやれるけどいつかはやりたかったんでしょうか。こういうの。ジャズとして普通に好ましい演奏であると思われますが、普通のジャズセッションと違う変な気迫が一見さんを拒みそうなきらいも少々あります。結局「ジャズもイケるMAGMAファン向け」か。

【本日のレビューその3:FREE LOVE「OFFICIAL BOOTLEG VOL.1 CONCERT 2005 SAPPORO」】


POSEIDONシリーズ17。去年5曲入り自主CD-Rを紹介した名古屋のFREE LOVEのライヴ音源です。今回はPOSEIDONのサブレーベル・VITAL RECORDSからのリリースという形である模様。ほぼモノラルに近い録音状態ながらバランスは良く、曲と演奏を聞き取るのに難はなし。音楽性は上の青字から遡って5曲入りの方のレビューを見ていただくとして、演奏は非常に堂々としたものでカッコイイです。タメを効かせてピリピリ重い緊張を漲らせる空気感のコントロールっぷりは正に70年代ブリティッシュハードの流儀。アナログ機材に拘ったキーボード類の荒々しい鳴りも、ギターやベースとタメを張る(か上回りかねない)存在感でさすがです。愛のコスプレに終わらずきっちり現代に汗をかく現役バンドであることを証明するに充分。全4曲と量は少なめに見えますがラストが14分あるので結構満たされます。URIAH HEEP、LED ZEPPELIN、VAN DER GRAAF GENERATORあたりが好きな人は要注目の存在ですよ。

  2月16日
▼2週間以上前にブックオフで買ったCDを今日初めて聴いたら中身とケースが違うことに気付いてしまった。レシートもないしもう泣き寝入りするしかないわけですが、これだからブックオフは…。クソ…。本日の収穫はかなり久々の今池P-CANにてOFFERING「A FIIEH」、JELLO BIAFRA & THE MELVINS「NEVER BREATHE WHAT YOU CAN'T SEE」、JOHN ZORN「ASTAROTH」(ジェイミー・サフトのトリオが演奏するMASADA新シリーズ第1弾)。

【只今のBGM:JELLO BIAFRA WITH THE MELVINS「NEVER BREATHE WHAT YOU CAN'T SEE」】


2004年のコラボ作。ALTERNATIVE TENTACLESのカタログナンバー300を記念しての顔合わせであった模様で、これでいくらか潤ったんだろうなあ…などと邪推もしてしまいます。内容としては別にそうそう斬新なものを提供するでもなく、DEAD KENNEDYSを踏襲した80年代ハードコアテイストから、スラッジ化したKISSみたいなのまで、メンツから想像が及ぶ範囲内に全然収まってます。ゆえに貫禄一本勝負。ジェロ氏のヴォーカルもなかなかお盛んですが、もっぱらMELVINSが体力あるな〜と感心。レトロタッチのやり口にこれだけリアリティとヘヴィネスを持たせられる人達もそういないのでは。しかし彼らはあくまで客演に徹してるわけでして、歌ってるジェロ氏(およびオールドパンク)に愛がある人こそ聴くべき。ただのMELVINSファンにはマストバイの品でもないかも。NOMEANSNOと共演してたやつの方がハマリ感は強かったような。あ、どヘヴィなラストの曲だけ群を抜いてクソカッコイイです。さすがMELVINS…というのは間違った感想だな何か。

  2月15日
本日の収穫、バナナ・ジャズシンにてPAUL MOTIAN「HOLIDAY FOR STRINGS」(W&W)。

【本日のレビューその1:PAUL MOTIAN「HOLIDAY FOR STRINGS」】


スコット・ラファロを含む最盛期ビル・エヴァンス・トリオでも叩いていた人のバリバリ新作(2002年)はドイツの前衛雑食レーベルWINTER & WINTERから。90年代初頭から率いているというTHE ELECTRIC BEBOP BAND名義で、若手ホープのベン・モンダー(gt.)やクリス・チーク(ts.)を擁するセクステット。今日性を取り入れたバップの再表現がコンセプトとのことですが、大筋ではECMっぽい静謐・冷涼・優雅なアンサンブル構築がメイン。ないようであるリズム、どこまで引っ張ってもまだ続くアドリブみたいなテーマフレーズ、自由に飛躍する調性、アブストラクトながら芯があるテーマ性と、パット・メセニーやビル・フリーゼル以降の「拡張はするが崩壊はしないキレイめアーティスティック派」みたいな線(?)の王道をいく内容です。ただバブリーなハイソ感やつんざく張り上げがなく、横顔にどこかリアルさというか堅実に歳を取った雰囲気があるのが、リヴァーブどっぷりのニューエイジ寸前系とは違うところ。またダブルサックス・ダブルギターというやや変則的な編成を必要充分に活かして上手く音の海洋を広げるアプローチにも、実験を謳歌する時代とは異なるゆとりと確かさが感じられます。うーん美しいことはいいことです、音楽自体に真新しさはないが瞬間を妥協しない緊張感が常にあり、よくよく香りの立った好盤。

【本日のレビューその2:CALIFONE「QUICKSAND/
CRADLESNAKES」】


メンバーの別プロジェクトORSOなどでREX〜HIMあたりのシカゴ/ルイヴィル/DC人脈とよく絡むポストロッキン・アーシー音響フォークユニットの2003年作。いろんな鍵盤楽器やパーカッション類、ポストプロダクションを駆使して、歌も一応入りますがどちらかというとやってることはアンサンブルの提案。ポップミュージックというより静物アート的ですね。倦怠したビート感(ブラックミュージックへの憧れも少し匂わせる)がUSインディロックシーンの出自であることを物語りつつ、戦前から米国人が脈々と背負ってきたアメリカンフォークのざらついた風合いを大切にして、古いレコードの針ノイズや写真紙の黄ばみのような感覚を、(ロック界においてポストパンク以降に確保された)音程もノイズも見境いない自由な音響工作によって再体現せんとしているかのようでもあります。さりげないが気力はギラついている。何というか、NHK教育の隠れ暴走系番組みたいなノリ。今のVERVEあたり、こういうの出してしまっても大丈夫なんじゃないでしょうか?青々しい和みメロやトリッキーな変拍子がキーワードとなる「ポストロック」のいわゆるところとは全然方向が異なります。アカデミック過ぎてついていけない人多数であろうことは想像に易いながら、まともに食いつきさえすればその先の奥行きは深い。

  2月13−14日
本日14日の収穫、近所のブックオフでMOTLEY CRUE「MOTLEY CRUE」(94年)。今日買ったものの話ではないですが最近、絶対良いだろう。と思って買ったCDを家に帰って聴くと、「予想した通り面白くない」という感想に行き着く珍現象がたまに起きます。好みが変わったんだな。

▼「スポーツには興味なし」を公言していますがトリノ五輪は意外と見てます。タイムや順位を競うばかりでなく「キレイにやり遂げるか」が問われる種目が多くて、解説をよく聞きながら見ていると競技ごとの評価のパラメータが知れてくるのがなかなか面白い。素人目にもオッコイツ美しいなと思った人が上位に入ったりしますし。NHKが仕切ると中継に変に芸能人がしゃしゃり出たりしないのもいいです。何にせよ「世界最高」という次元はいいですなあ。

【本日のレビューその1:MOTLEY CRUE「MOTLEY CRUE」】


「いわゆるところの」世紀の駄盤を集めるとしたらきっと筆頭に挙がるであろうこのアルバム。悪いところは何もないのに、可哀相な話です。モトリーといえばHM/HRファン以外にも名を知られる「LAメタル」(日本のみの括り…海外ではヘア・メタルなどと称されるようです)の権化的バンド。スリージーなバッドボーイR&Rと商業的洗練が非常に高レベルで折衷した金字塔「DR. FEELGOOD」リリース後、キンキンのハイトーンとサラサラブロンドがトレードマークの前任シンガー、ヴィンス・ニールを解雇し、新たにTHE SCREAM(デイヴ・グロールのSCREAMとは別バンド)のジョン・コラビを迎え、プロデュースにはMETALLICAのブラックアルバムを世話したボブ・ロックを起用して完成させたのがこれ。まあ元々の音楽性などは殆ど見る影もなく、STONE TEMPLE PILOTSのような形よくまとまったグランジスタイルに転化してしまったわけですが、メタリックな翳りや長年メインストリーム最前線を張ってきただけある天然のキャッチーさは消し去りきらず、リフの一つからして非常にツブのでかい、堂々たる90年代型真正面ロックになってしまっています。ヴォーカルも全然前時代の流儀を受け継ぐブルージー張り上げ型だし(声が汚いだの当時のメタルファンからは酷評されたが絶対ヴィンスより上手い)。ボブ・ロック&ランディ・スタウブの鉄壁チームによって練り上げられた強烈な打撃感のあるプロダクションはしこたま良好、トミー・リー(ds.)の豪腕っぷりがよく伝わる。ALICE IN CHAINSやSOUNDGARDENは良くてこれがダメってのはひとえに看板とのギャップのせいでしかないですな。RIVAL SCHOOLSやRIDDLE OF STEELが好きな人が300円以下でスッと回収してきて愛聴したらいいです。十中八九ダルイだろうなと踏んで今までスルーしてきたけど、今は買ってよかったと思っています。

【本日のレビューその2:POISON「OPEN UP AND SAY... AHH!」】


こういうのが続くと誰も読んでくれなくなる懸念がありますがまあ物はついでで。もはや戯言的にしか語られるチャンスのない、同じくLAメタルの寵児にしてフェイク・スターの代名詞ともいえるPOISONの88年2nd。う〜ん、数々の同系バンドの作品を聴いてきましたがこの人達は一聴して骨抜き具合が判りますな。出す音から毒々しいルックスから全部、RATTあたりの先代の忠実なるコピーでしかなく、もうちょっとテンション高くやってくれればオッと熱くもなるところを、軟弱に拍車が掛かったドン・ドッケンのようなヴォーカルからして「俺達、一過性でいきますんで」と訴えてくるかのようである。講師級のテクニシャンで固めてくるのが常のこの手のバンドの中では珍しく明らかにヘタがバレてるドラムも情けない。まあしかし変に面白いのは、ガンズ・ショック以降の作品だからなのか、ブルーズロック回帰モードが妙な方向を向いて、時々BLUE CHEERみたいだったりするところか。意外と趣味はシブイじゃんとツッコミを入れていると、サビがDANGER DANGERくずれみたいになったりして結局脱力。概してキャッチーという点では納得できもするわけですが。やけにNIGHT RANGERみたいな"Fallen Angel"はNIGHT RANGERそのものを聴けば事足りる話だし、あーもうちょっと光を当てて上げられると思って買ったのに凄い駄目だなあ〜。中身がのび太の「誰でもLAメタルバンドになれるメイクアップセット」を聴いてるような感覚。途中からむしろそのセットの完成度の周到ぶりに感慨が及ぶという楽しみ方になってしまった。

  2月12日
収穫はなし。かれこれ5〜6年使い続けているKORG社のマルチトラック・ハードディスクレコーダーD-12、最近は録音中に頻発するエラーに悩まされていて買い替えも考えたのですが、「そうだ、フォーマットしよう。」と思い立ってHDの中身を一掃。気持ちが良くなっているところです。近頃は日記もバンド活動/CD制作ネタと通じにくい音楽ネタばかり、レビューは8割方こわいのか変なのしか取り上げず、フレンドリーさをどんどん失っている気がしてならないこのサイトですが大丈夫でしょうかね。そうこうしているうちにMARITIMEのエリック(Ba.)が脱退してしまったり、「ファイブスター物語」12巻の発売が4月10日に決まったり、大槻ケンヂが40歳になってたり、色々ありますなあ。

【只今のBGM:DAVID KRAKAUER「KLEZMER, NY」】


TZADIKからの98年作。NYクレツマージャズ界に名を馳せるフランク・ロンドンと同じくTHE KLEZMATICSに在籍したクラリネット奏者のリーダーアルバムです。この欄で紹介済みのテッド・ライヒマン、THE LOUNGE LIZARDSにちょっと絡んだオーレン・ブレドウなどが参加のクインテット編成。どっぷりジューイッシュな節回しと、都会的な軽い身なりのファンクネスが至極ナチュラルに混ざり合う、正にアルバムタイトルが言い示すとおりの内容となっております。アヴァンギャルドたることに神経を尖らせ過ぎず、解釈を新たにしても本質を叩き折ることはしない慎重さがあり、キレイにこなれてて非常に楽しいですね。こういうフットワークはこの界隈ならでは。ポストロッカーがユダヤ版CALEXICOないしTHE SORTS(THE METERSかも知れん)と思って聴くことも可能、暴走しないMR. BUNGLEもしくはボケに徹するFANTOMASのつもりでIPECAC周辺が好きな人にもイケるかも。伝統的なジャズとは違って文法的な縛りへの理解が要求されることはないので、楽器とグルーヴとアイディアを堪能したいロッカー諸氏はこのあたりをドンドン聴けばいいと思いますよ。

  2月11日
本日の収穫、どこぞのブックオフでPOISON「OPEN UP AND SAY... AHH!」。勿論250円。見ようと思うでもなくたまたま見た今朝のトリノ五輪開会式、オノ・ヨーコから間髪入れずピーター・ゲイブリエルに繋げるとはまた大胆不敵な。1オクターブ下から不穏げに歌い始められた"Imagine"が"Carpet Crawlers"にしか聞こえなかったというGENESISファンは私だけではないはず。リッチー・ホウティンは見逃しました。オーノー。

【只今のBGM:GENESIS「THE LAMB LIES DOWN ON BROADWAY」】


ピーガブついでに彼在籍時のGENESISを。このアルバムが突出して好きというわけでもないんですが(だいたいどれも好きです)、買って聴いた高校生時分には結局、何かしらの固まった解釈が出せないままやり過ごしていた唯一の作品であるので、この歳で再挑戦しようと。
 その前にバンド自体に関する能書き垂れを。彼らは英国プログレの有名バンドの中でも、このバンドを含む「5大バンド」という括りと、含まれない「四天王」が両方存在する(因みにあとの4つはKING CRIMSON、PINK FLOYD、YES、EL&P)というくらい中途半端な存在なのですが、そもそもGENESISが本当にプログレなのかという議論さえ(AOR路線でブレイクした80年代以降のキャリアを度外視したとしても)ありますわけで、扱いの難しい人達です。寓話的な詞世界をシアトリカルな演出(スリッパ男の着ぐるみなど…)で歌った初代シンガーのピーター・ゲイブリエルの妄想っぷりこそプログレだったのか、絶妙な転調を使いこなしてコード感ひとつでドラマを語るトニー・バンクス(Key.)の出す音がアレンジ次第で単に「プログレ的」であったのか、途中で脱退したスティーヴ・ハケット(Gt.)のロマンスゆえにプログレ的に響いたのか。限りなく「シンフォニック・プログレ」の雛形に近いフォームを取りながら、やれクラシックとロックを融合だの、大衆ポップス的時間感覚からの逸脱だのといった実験意識を背負うことなく、ただ単にストーリーテリングに徹し続けたバンドであったがゆえに後々売れ線シンセポップになっても本質は殆ど動じず、「何だそれじゃ元々プログレじゃないんじゃん」ということになって評価を複雑にしとるんではないかと今では思います。

 でこのアルバム。フォークっ気も漂う英国らしい牧歌性と近代クラシックの硬質な気品を併せ持つシンフォプログレスタイル(大別すればYESと同系)で人気を博してきたGENESISが74年に完成させてしまった2枚組で、現実(都市)と精神世界を往来する長大で不条理なストーリーに基づくコンセプト・アルバム。この作品をもって脱退するピーター・ゲイブリエルが好き放題に暴走しまくった結果、人を寄せ付けない難解な内容になってしまった、しかし完成度は高い、というのが今日の安定した評価です。確かにこれまでのホワッと優しい雰囲気はサッパリ消え、曲調はまちまちだし変なシンセやエフェクトは大量投入されてるし、持ち味のポップさは生きてるには生きてるんだけど怪しさや緊迫感が勝り、それが最初から最後まで持続。倒錯しててもデタラメではなく、意思(=ストーリー性)によってしっかりと操縦された上での予測不可能なランダム蛇行が何だか空恐ろしい。よくあるドローンノイズや崩壊インプロの類には全く頼らずに、きっちり組み立てられた楽曲とその配置の妙のみによって強烈なサイケデリアを描き出したというのが、70年代プログレ界においては異色の偉業であった、と片付けるのが妥当なところでしょうか。我々日本人には想像しづらいけど要は当時のドラッグカルチャーを前提とする「知能と手技で徹底的に準備された脳味噌マッサージのお供」だったのでは?そりゃ、解釈云々するものではないですわな。ということでさっきからこのレビュー文を書きながら聴き流すように聴いてますが、音楽が自分の体を通過していくこと以上に何の意味があんねんという気持ちになって無心に楽しめてます。まあしかし「名盤だ」と思う前に「途方もない盤だ」と溜息のひとつも出る、何ともアート然とした佇まいであります。他に似たような例があまりないけど、これもプログレッシヴたる概念の一つのかたちですかな。

  2月9−10日
収穫はなし。一ヶ月振りくらいに飲酒。その店では何故かケーブルテレビの洋楽ロック専門チャンネルと思しきものが垂れ流されており、老いてなお盛んなアンガス・ヤング、「世界一ルックスの冴えないフロントマン」と称されたゲディ・リー(RUSH)の近影など、有り難いものをバカスカと見れてしまった。SCORPIONSのバラードづくしのアコースティック・ショウのバックに露出の激しい女性達をうねうねうねうね踊らせまくろうと思うドイツ人の心理はしかしようわからん。ハシゴして28時、翌朝8時半。たまのことだから平気だろうと思っていたら、朝は容赦なくツラかった。歳かいな。

【只今のBGM:WOLFSBANE「LIVE FAST, DIE FAST」】


IRON MAIDENの3代目シンガーに抜擢されたものの世界中のファンから激不評を買ってすぐに引きずり下ろされた悲運の男、ブレイズ・ベイリーがもともとやっていたバンドの89年作。ガンズやTHE BLACK CROWSの流れのラフな70年代ロックリバイバルのニオイを漂わせながら、基本路線は「1984」でブレイクする前のVAN HALEN(声が似てます)にMOTORHEADとACCEPTの中間のような荒々しさをプラスしたような一風変わったスタイルでなかなか面白い。全員黒レザー着用のメンバー写真はスラッシュメタルバンドみたいだし。TWISTED SISTERや2ndくらいまでのTHUNDERHEADをもう少しメタル寄りにしたみたいなバランス感覚ですな。バラードが良いあたりも。ヴォーカルはそこまで酷評されるほど下手とは思いません。少なくともこの音楽性には合っているし、キャラクターが強烈でいいんじゃないでしょうかね。無理なハイトーンを歌わされたのが間違いだっただけ。なーんだ良いバンドじゃないですか。

  2月8日
▼しばらく行ってない店には吸い寄せられるのでいかん。余裕もないのに本日の収穫、サウンドベイ金山にてTHE BLACK LEAGUE「MAN'S RUIN REVISITED」(ex.SENTENCEDのヤネリ・タルヴァ!2004年作)、DR. JOHN「IN THE RIGHT PLACE」(THE METERS全面バックアップの74年作)、O.S.T.「THE GOOD, THE BAD, AND THE UGLY」、以下500円でGARY HOEY「ANIMAL INSTINCT」(QUIET RIOTのフランキー・バネリとTHE FIRM〜BLUE MURDERのトニー・フランクリン全面参加、ダッチプログレバンドFOCUSの迷曲"Hocus Pocus"カヴァー収録!)、WU-TANG CLAN「IRON FLAG」、HERMAN DUNE「MASH CONCRETE METAL MASHROOM」(ジュリー・ドワロン最新作のバックを務めていたユニット2003年作、ジュリー女史もコーラスでちょっと参加)。

【只今のBGM:ORNETTE COLEMAN「THE EMPTY FOXHOLE」】


66年録音盤。ベースはチャーリー・ヘイデンで、ドラマーは何と息子オーネット・デナード・コールマン君、当時10歳。ベースが意地でビートを堅守し、御大オーネットはいつも通り。そこに観念的意味合いでの「フリー」を完全に逸脱した「不全」なドラムが乗る。一応言語として機能してるように聞こえるのが凄いですが、インタープレイっちゅうよりは「まな板で生きたままビチビチ跳ねまくる魚の隣で黙々と念仏をとなえ続ける坊さん、そして淡々と木魚を刻む助手」みたいなシュールな図。こりゃ完全にジャド・フェアー&ダニエル・ジョンストン(「IT'S SPOOKY」名盤!!!)や突然段ボールの世界ですな。どっちかというとスカム・ジャズと呼んであげたい。しかしチャーリー・ヘイデンの(必死の)頑張りゆえか、アルバム全体の印象は意外とカラフル、かつ親しみやすい。父オーネットの歌心っぷりも激崩壊ドラムとの対比でよく浮き立ちます。ラストの曲だけはかなり親切にデナード君のリズムに合わせてあげてて、補助輪なしで自転車に乗る練習をさせてもらってる子供みたいで微笑ましい。ギリで成り立つキメはなかなかスリリング!面白い。

  2月7日
本日の収穫、バナナ大須店でJOHNNY GRIFFIN「THE LITTLE GIANT」。夜、早く寝て、朝早く起きて、夜やろうと思っていたことを朝やると凄くいいですね。一日が二本立てになる感じがしてお得でした。

【本日のレビューその1:DIRTY THREE「SAD & DANGEROUS」】


実生活で、昨日のレビューに登場のジム・ブラックの名を会話に上せようとしたとき「あ〜、ジム・ホワイト!」と言ってしまったことがあったのですが、それはここのドラマーでした。SIGUR ROSやMOGWAIやGYBE!みたいな音響/メランコリックスローコア/ドローンの交錯する音楽が脚光を浴びてきたことで自ずと認知・人気ともに上がってきた気がする豪州産古株トリオ(ヴァイオリン、ギター、ドラム)のデビュー作。セルフタイトルのアルバムが1stだと思ってましたがこっちが先のようです。この頃はあからさまにそれとわかるエレキヴァイオリンを使用してる上に、カリンバやピアノ(キーボード)が入ったり、肝心のミック・ターナーお得意の絵画的アルペジオギターは未だ編み出されてない模様だったりと、目指すところの曲調のイメージは今のスタイルと合致しているんだけどまだまだ手探りの公開実験状態。誰にでも若い時代はあるもんです。ジャケもミック画伯自らのものではないですし。ポストロックなどという括りのまだなかった当時にこの音がどう響いていたのか、興味深いところです。どっちかというとサイケプログレっぽいような。新手のTHIRD EAR BANDのようにも聞こえる。

【本日のレビューその2:ANCIENT CEREMONY「CEMETARY VISIONS」】


時々やりますマイナーゴシック発掘事業。過去にBLASPHERIONPHLEGETHONで大勝を収めておりますが今回はどうでしょうか。この人達はドイツの6人組(ツインギターで専任シンセ、専任ヴォーカルあり)でこれは95年のデビューEP。その後BAL-SAGOTHや初期SIGHなどをリリースしていたイギリスのCACOPHONOUSから2枚のフルアルバムを出しているようです。内容はというと、IN FLAMESや初期PARADISE LOSTやMY DYING BRIDEの美味しいとこ取りを試みただけの、何とも緩みきった変則展開メロディックデスですね。メロディの質やヘヴィリフの扱いっぷりなど、中途半端に一定のクオリティに達してるあたりがまたいかにも狡猾な二番手っぽい。まーしかしドイツの初期メロデスというと基本的に不毛で、売れたといえばDARKSEEDですか。DARKSEEDも「叙情デス/ゴシックの居直りストレート化競争」で出し抜いただけの感もありますから、この人達は一皮剥けなかっただけで本質的には似たり寄ったりでしょう。マイナーバンドをのちのち熱心なマニアが掘り起こすには、「何かになろうとして失敗してる」ような形跡が、そういう層でしか聴けない大きな魅力になるわけですが、ただただ「何がしタイプの優秀な新人!」として当時は輸入盤屋を賑わせたんだろうな〜というものにはあんまり感慨が沸きませんね。この作品に個人的に何か感じ入るところがあるとすれば、チープなシンセの音色がSADISTの1stみたいだなあという程度です。IN FLAMES、CEREMONIAL OATH、GATES OF ISHTAR、THE EVERDAWN…と集めてまだその手の音が足りねえぜ!!!!というコアな御仁はどうぞ。

  2月5−6日
収穫はなし。部屋がCD-Rくさくて困っているのですが名古屋は今「クソ寒い」しか言うことがないくらいクソ寒いので換気もままなりません。あ〜MINUS THE BEAR見逃したのか…

【只今のBGM:JIM BLACK(ALASNOAXIS)「SPLAY」】


STORM & STRESSの2ndでもゲストとして叩いていたジム・ブラックの、ドイツのアヴァンジャズレーベルWINTER & WINTERからのリーダー作2枚目。ずっと連れ添っているクリス・スピードを含むレギュラーグループALASNOAXIS名義であります。内容はもう普通にディストーションギターがバリバリ登場する叙情マスロックそのもの。大人しめのSWEEP THE LEG JOHNNYやATOMBOMBPOCKETKNIFEを恥ずかしげもなく泣き泣きにしたような雰囲気に、ホールズワース的テンション感も多少加えて、あ〜何かどっちかというと昔のSIEGES EVENですなこりゃ。サスティンを短くした金物を上下左右パシパシ乱れ打つドラムは第三期クリムゾンのビルブラを思い出す。マジものインディロック畑のドラマーにはないスタイルです。プロダクション的にちょっとフュージョンっぽく聞こえてしまうせいでいささかのキワドさを醸し出してもいますが、然るべき装いで54−40 OR FIGHT!やそれこそSOUTHERNから出ていれば「金管入りでジャジーな激テク+充実メロ派!」と大絶賛で迎えられることでしょう。

  2月4日
本日の収穫、バナナ金山でSEASON TO RISK「THE SHATTERING」。何度見ても配色が気持ち悪いアスナル金山の、絶対たまたま通りかからない位置にあるバナナ金山店ですが、ちゃんと人入ってんでしょうか…。かつてのパッセ→大須→生活創庫→大須店のように彷徨う羽目にならないか心配です。あとさだまさしって歌上手いですよね。

【只今のBGM:SEASON TO RISK「THE SHATTERING」】


93年かそれくらいに1stをリリースしていたカンサスのシブ激ポストコアバンドの2001年作。寡作ですが存続してたんですね。今はどうなんでしょう。さてもともとQUICKSANDなどと比べられるイカツイ系の音を叩き出していた彼ら、ここでもホントに邪悪でグランジーです。絶叫や派手な変則リズムなどは若干整理されたかに見える一方、ストレートなやり口でこそ活きる芯の太い猛々しさといったものがグオッと牙を剥いてくる感じで、体力は衰えぬままヴェテランらしい威風を手に入れたグレイトな出来。ALICE IN CHAINSやCROWBARやC.O.C.みたいなバンドで占められていた頃のHEADBANGERS BALL状態。しかし微妙にメロディック&キャッチーなサビをもつ曲もあったりして、SHINERやHUMあたりと時代を共にしてきた感じも以前より顕著です。TRAINDODGEやHAYMARKET RIOTが好きな人なら絶対コロッといくはず。

  2月2−3日
2日の収穫、サウンドベイ上前津でRUFFY DUFFY「夏の十字架」、WANDERING LUCY「LEAP YEAR」(K)。地震のあとには火事が来ます、怖いのは火事。じゃないけど(註:CMネタです)、CDプレスのあとは流通です。厄介なのは流通!!激々々大量のCD-Rと不織布ケースを用意したはいいが「サンプル150枚作成」という強敵をどこからどうやって倒そうか途方に暮れそうな次第。不織布ケースが意外と安かったのがここ2・3日一番の感慨です。

【本日のレビューその1:RUFFY TUFFY「夏の十字架」】


グループ名はこう名乗っていますがまあ忌野清志郎です。2000年リリースのこのアルバム、去年MAGMA観戦のために大阪に赴いた際立ち寄った中古CD屋の店内BGMで流れていて、うむうむ、天気がいいのか。政治家がねえ…と歌詞を追いながら普通に耳を傾けていたら途中からどんどん「何もしないなら選挙に行った方がマシ」という強硬なステイトメントに摩り替わっていくこの2曲目"目覚まし時計は歌う(選挙ソング)"にホゲ〜と度肝を抜かれ、発見したら買おうと思っていたんでした。楽曲自体は本当に、対象化済みの70年代ロック的断片の順列組み合わせだけで成り立っている(しかしデフォルメゆえに太い)として、やっぱりフォーク〜ニューミュージック時代の人だなーと、とにかく歌詞が全てを牽引してますね。職業ロックスターの所帯じみた苦悩やら、一介の中年民間人としてのごくごくストレートな疑念やらを、子供から年寄りまで、アホからインテリまで、集中力を巧みにナビゲートしてパッカ〜ンと一発理解に導きつつ、曲ごとに明確に想定された各批判対象に対してもトゲトゲしく食ってかかるこの「文章力」は何というか、ありがたいまでの域。燃える妄想ソウルと社会/世間への諦念を同時に抱えた独特のヴォーカルは孤高でしかないっすね。圧倒的にポピュラリティが見込めそうな反面こんなに危険なものはないという、公然たるやりたい放題が許された(求められる)最高の人生だと思いますこの人。

【本日のレビューその2:TIM BERNE「THE SUBLIME AND」】


以前も紹介したNYベースのアルト奏者ティム・バーンの、THIRSTY EAR「BLUE SERIES」で出している2003年の2枚組。スイスでのライヴレコーディングとのこと。個人的にはこの人、現代アヴァンジャズ界のRIO継承者もしくは偏屈デスメタラーだと思ってるんですが、このアルバムも正に極悪&緊迫一直線!不穏なメロディラインとモゾモゾボクボクした低音重視のアンサンブルは第3期クリムゾンに端を発するテクニカルスラッシュ/デスを再びフリージャズ化したかのような禍々しさ。それこそCYNICがやってもおかしくないテーマ部から、拍子感が浮き彫られるギリギリの線を往来しつつ熾烈なインタープレイでボルテージの波をうねらせていくインプロ部、まさかの伏線に気付いた瞬間にはもう手遅れでウルトラC級のテーマ復帰を果たすエンディング…と10分強まったく息をつかせない1曲目から完全降伏、参りました〜。あとの曲もとにかくフリーセッションと構築性の境界が全く読めない魑魅魍魎としたダーク&プログレッシヴサウンドの応酬。一切の行き当たりばったり感や迷い感を醸し出さずして、80年代以降の過激派レコメン勢すら怯みかねない物凄い体力と知力で、20〜30分にも及ぶ長尺曲がどれも美しく建ってしまいます。手合いの相手を探すならいっそ畑違いでDISCORDANCE AXISとかRUINSとかですな。ジャズ風を騙るそんじょそこらのマスロックバンド共をえびせん状に踏み潰すに充分。ド絶倫、恐るべし!!

  2月1日
収穫はなし。早くも2月、2006年を「とくダネ!」で目覚めたとすると、もう終わっちゃいましたね。名古屋では次は「ぴーかんテレビ」です。うっかり何もしないまま「デリデリキッチン」に突入しないよう精力的にいきたいと思います。

【本日のレビューその1:KAMPEC DOLORES「LEVITATION + FIRST ALBUM」】


POSEIDONシリーズその16。昨年来日を果たしたハンガリーのレコメンバンドで、最新作を過去にこの欄で紹介してます。これは初期2作のカップリング盤。最近の作風がオルタナ的な流れ上の洗練が見られるものなだけに、初期はどんなものか殆ど想像出来ずに聴き始めたらば…1曲目からいきなり拍子不明の超絶メランコリック・マスロック全開で卒倒!まだニューウェイブ由来の高揚感やNYアンダーグラウンド的なリズムの鋭角っぷりが色濃く入り込んでおりまして、SUGARCUBES、NOMEANSNO、MASSACRE、MATERIAL、AKSAK MABOULなどが一堂に会したところに東欧フォークの悲哀が気体レベルで漂うという、現在のスタイルと比べて何ら劣ることのない激ヤバな内容です。私らプログレですーともラディカルトラッドですーとも敢えて宣言してくることなくロックバンドの体裁+αで自然体な創造性を開放させただけのようなカロヤカさが快い。前半が2nd、後半が1stで、1stはリズムマシン使用で変拍子もあまり目立たず、ニューウェイブ〜ポストパンクの語彙に頼った習作的な傾向がややあるものの、基本スタンスは不変。これは効きますな〜。2006年の今新譜としてリリースされたとしても絶賛に値する出来でしょう。

【本日のレビューその2:LOSTAGE「PLAY WITH ISOLATION」】


昨年のTRAINDODGE名古屋公演でその壮絶なステージを目撃してしまって以来気になっていた奈良のバンドの1stフルを新品で入手。堂々のデジパック(高くつく!)でしかもロッキンオンの人がライナー書いてたり、サンクスリストに何故か世界的なマスタリングエンジニア、アラン・ドゥーシェスの名があったりと、立派過ぎます。スゲ〜。中身も勿論、洋楽志向の手強いリスナー層相手に実戦で叩き上げてきた肉体感覚が活きた強力な仕上がり。後期ROADSIDE MONUMENTやBLUETIPのようなズドッと骨太の変化球に日本らしい退廃的な翳りを加味した感じのバンドサウンドを基調に、言語というより響きとして楽曲の孕む感情の舵をグイグイ取るヴォーカルがまた訴求力充分。国内ギターロック市場のツボに全く媚びる素振りを見せない荒くれ(時にロマンチスト)っぷりがとにかく痛快。信念を通して、偽りなくやってれば、ついてくる耳もあるだろ、という地に足着いたしたたかさは意外と、インディバンドシーンでおいそれと見受けられないものです。私が思うところの「ロックバンド的エキサイトメントの世界基準準拠の一意的正答」の方をしっかと指してくれる数少ない邦人バンド。こういう流れが大きくなっていくとすると、いよいよ日本も変わるでしょうな。

他の月の分を見る
 
トップページ サイト入り口へ
情報と音源公開 制作活動
管理人のことなども このサイトに関して
リンク 冒険
いつも独り言 掲示板(hosted by Rocket BBS)
サイト内検索(google) 不完全
since 07/04/2002    copyright (c) Sugiyama
inserted by FC2 system