物色日記−2006年3月

※頻出語句解説はこちら
  3月30−31日
▼31日はSHIPPING NEWSのライブに行ってきましたが4月アタマの分に書いてます。

  3月29日
▼(昨日の続き)遂に携帯にカメラがついてしまいました、MP3も聴けてしまいます。おおテクノロジー。古巣TU-KAを離れ、遂にauと長期契約。CASIO製の端末です。CASIOっていまひとつ貧乏くさい感じもありますが、これは最新型カシオトーンなのだと言い聞かせて、着メロ自作しまくってデータフォルダを満杯にしてやろう。70MBくらいあるけど。

本日の収穫、POSEIDONさんから送っていただいたELTON DEAN/MARK HEWINS「BAR TORQUE」、FINISTERRE「STORYBOOK」、DFA「WORK IN PROGRESS -LIVE AT NEARFEST 2000」(以上3枚MOONJUNE RECORDSの品)、A TRIGGERING MYTH「THE REMEDY OF ABSTRACTION」(KBBのヴァイオリニスト参加!)、PEKKA POHJOLA「SPACE WALTZ」、カナダのNEW WORLD RECORDSから直接購入のROB LAMOTHE「WISHING WELL MOTEL」、CRAIG CHAISSON「IT'S ABOUT TIME」(ex.BADLANDS!)。カナダからの品は、6枚くらい注文したはずなのに2枚しか入ってなくて、英語でクレームのメールなんて書けないし参ったな…と思っていたらこんな書き込みが端の方に。↓

心温まりました。英語圏ネイティヴの人が書く筆記体としてはムチャクチャ丁寧ですよね?そこに感動。早く送ってね!!

【本日のレビューその1:A TRIGGERING MYTH「THE REMEDY OF ABSTRACTION」】


POSEIDONシリーズその23。アメリカの現代プログレバンドの最新作のようです(今年リリース!)。輸入盤特有のコメントつきステッカーには「NATIONAL HEALTH、BRUFORD、HAPPY THE MANファンに」と書いてありますが、確かにそんな雰囲気の、プログレともジャズロックともつかぬインスト作品。デジタルながらも慎ましい音色選びのシンセがホワッと温度を作り、そこで各楽器が火花を散らすでもなく自由に飛び回る、平和なんだかスリリングなんだか判らない不思議なテンションに引き込まれてしまう。冷笑抜きのカンタベリー風味というか。緻密にして牧歌的。日本のKBBのヴァイオリニストがゲストとして参加しており、作品の優美なムードによくマッチした演奏を添えています。この組合せはひたすら正解ですね。SPOCK'S BEARDあたりよりもう少ししっとりアダルトなのをお求めの御仁は是非どうぞ。

【本日のレビューその2:HAYMARKET RIOT「I KNOW WHAT YOU DID」】


来日直前!日本のSTIFF SLACKからリリースされたばかりの5曲入りEPがこちら。中心人物ケヴィンの経歴についてはこっちを参考にして頂くとして、内容の方も大筋で同路線ながら更にシンプル&頑固度がアップ。FUGAZIにも迫るクラスのいぶし銀です。ダウンで刻まれる単音リフの太いことよ。変拍子や妙なハーモニーのリフも交えて派手に捻じくれながら、どっしりとした貫禄を守り通すのはさすが。何故だか漂うこのナチュラルな脱臼感はSWEEP THE LEG JOHNNYの元メンバーであるクリス・デイリー加入の影響も大きいことでしょう。オリジナルパンク〜80年代初期ハードコアの空気をたんまり吸い込んでいるであろう荒々しいヴォーカリゼイションもライヴで更にブチブチ来るところを見てみたい。ロックすることのプリミティヴな快感を謳歌するような大きい構えで押してきたこの方向性には諸手を上げて大賛成です。極ワル版STOOGESといった感すらあり。踊れも泣けも壊れもしないド直球でこうやってウンと言わせるのは偉業です。来たるジャパンツアーではゴリゴリのステージを期待しましょう!

  3月28日
収穫はなし。最近こんなハガキが届きまして。↓

 TU-KAユーザであることをいっそ逆ステイタスにしてやろうと決め込み、他社に乗り換えず使い続けてもう7年目になるみたいです。しかし今回はこの割引の話に加えてauの「MY割」までいきなり適用され基本使用料が45.5%OFFからスタートとのことでさすがに揺らぎ、しかもこのハガキ、今月一杯が締め切りのくせに届いたのが先週末くらい。2週間足らずの短い猶予で焦らせてやろうという魂胆が見え見えなわけですが、コッチもトントンとそれに乗っかって、明日私はauに宗旨替えしてこようと思っています。TU-KAの同志の皆さん、さようなら、すいません、ありがとう。骨伝導スピーカー全然使えなかったよ。もっと早くにTU-KAを見捨ててJ-PHONE(現VODAFONE)とかに乗り換えたという人は今頃、ソフトバンクに買収されて「『ヤフーフォン』になったらどうしよう…」と狼狽してることでしょう、ヒヒヒ。

▼数日前のことですが自転車も新しいのを調達しました。サークルの先輩に余りパーツで組んでもらったMTBをサークルの後輩のおさがりで3000円で購入して見事乗り潰してしまい、以来ママチャリ生活が続いてたのですが、ママチャリの罪は「重い」ところですね。てことで買ったのはルイガノの親切なクロスバイク。26インチでフロントキャリアつき、泥よけ・スタンド標準装備で、どの店の紹介文を見ても「女性にぴったり」と書いてあるようなやつです。選ぶ段階では結構色んなメーカーで迷ったんですが、決め手はやっぱりルイガノがカナダの会社だったことです。カナダといえばVOIVODRUSHジュリー・ドワロンGORGUTSブライアン・アダムスリック・エメットブルース・コックバーンなどなど、どうも心に響くアーティストが多いので。勿論乗り心地などもしこたま気に入っています。

【本日のレビューその1:RIK EMMETT「THE SPIRAL NOTEBOOK」】


ろくに評価もされず、バーゲン棚ですら見かけない、忘れられた名盤。カナダにTRIUMPHというハードロックバンドがいて、そのフロントマンであったギターヴォーカルの人がこのリック・エメットです。これはバンド脱退後のソロ3作目にあたり、前2作では80年代の面影を多分にひきずるゴージャスな産業ロックをやっていてフラッシーな速弾きなどもビシバシとキメていたのですが、95年リリースのこれは一気にレイドバックして凄くいい感じになってます。STINGを更に赤面AOR寄りにしたような雰囲気でしょうか。アコースティック主体で音数控えめなところに、ズンッと腰に来る低音を効果的に滑り込ませるアレンジワークの、達観した構えは何だか最近のアート・リンゼイのようでもあるかも。(違うかも。)軽くスティーヴ・ペリー(JOURNEY)+ゲディ・リー(RUSH)っぽい声質には好みが分かれるかも知れませんが、「メインストリーム・ミュージックならではの気持ちよさ」に鼻をつままず楽しめる人にはもう本当に心地の良い作品だと思いますよ。COPELANDやPERNICE BROTHERSあたりと大して変わらんじゃんというような曲も全然やってます。

【本日のレビューその2:HAREM SCAREM「VOICE OF REASON」】


カナダ絡みでもうひとつ。超優秀メロハーにウルトラC級ギターテクを盛り込んでややヘヴィめに攻めた2作目「MOOD SWINGS」が大当たりして一躍ビッグ・イン・ジャパン・バンドと化したカナダの4人組HAREM SCAREMの3rdです。あっここで「俺違うな」と思った人、我慢してもうちょっと読んで下さい!デビュー当初は純なメロハーだったのが、徐々にグランジ的ヘヴィネスを吸収していって、いよいよガッツリ重く鍛えあがったこのアルバムは、今思えば全く順当な流れに沿った進歩の結果だったと思うのですが、日本のファンおよびプレス(というかBURRN!)は「グランジ化しやがって…」と揃って酷評。以後そのリアクションに素直になびいて毒にも薬にもならないお利口君になってしまってこのバンドは、もう終わったと思っているので、その前の最後の輝きともいえるこのアルバムを、リリースから丸10年経っている今全力で再評価してみようと思います。
 まず冒頭のタイトルトラック、このアルバムはこれに尽きます。ALICE IN CHAINSを曲解したかのような変拍子混じりの豪腕リフと、もともとの持ち味であるポップな歌メロ。しかしどことなく沈んだ色調。ああこれはSHINERの世界じゃないですか。その後続く煮え切らないパワーバラードみたいなのはまあ寝るとして、たまに混じっている「ピリッとくる曲」が何とも、恐れ知らずにハードロッキンかつ、適度にズルッと気怠いグランジ仕上げかつ、根っからのメロディ礼賛傾向で、強圧感と開放感が居合わせるような独特の快感を醸し出してます。常々プッシュしているKING'S Xやカンサスエモ一派と共通の感覚。あっという間だったグランジブームの通過と共にこの手の試みをやるバンドはメタル畑から一掃されてしまったので、まさに蝶がサナギから孵る瞬間を捉えたような貴重な記録です。同系統の秀逸作品としてはスウェーデンのMASQUERADEの2nd「SURFACE OF PAIN」など。今更メタル入門する気がなくても、こういうアウトローな奴をちょいちょいと押さえてみると楽しいんではないでしょうか。

  3月27日
▼CD激買いが止まらない本日の収穫、バーゲン直後の補充狙いで行ってみたサウンドベイ上前津にてZS「ZS」(VOTHOC!)、HENRY GRIMES TRIO「THE CALL」(65年録音、ESPリリース)、アマゾンから到着のTHE SCIENCE GROUP「SPOORS」。世の中、茶番でしかないプログレもあるし、思考なきレコメンもあるし、眠いマスロックも、麻痺してるメタルも、虚しいフリージャズやご苦労様なだけの現代音楽もあるんだろうけど、ともかく一般にそう呼ばれるところのものがクロスする辺りの「ンッ?」と引っ掛かってくる音に最近はよく反応してる気がします。ひとくちで何と説明したらいいんでしょうね。名前が存在を制限するようなことはアホらしいですが、単純に感覚の正体がいくらかクッキリすっきりするという点で、意味はなくとも名前って知りたくはあるものです。「アコムのお姉さん」と「小野真弓」の隔たりは果てしなく大きい。さておき、一応「アウトジャズ」ってのがタームとして認められてるようなので、それに倣って試しに「アウトロック」で検索してみたところ、OUTLOOK EXPRESSの読み違いばっかり引っ掛かりました。それはルックですから…。残念…。(波田陽区…。)とにかくそういう身を削って聴くような音楽にどんどん惹かれる傍ら、和める音に対してはハードルが高くなる一方です。巧妙にパッケージされた「和み系の装い」に呑まれて自分の和みポイントを見失いかけた時期の反省によって。新しい物を好きになると、それに似たものまで好きになったつもりになりやすくなるから危ない。CD屋店頭で気になった品を買うか買わないかの葛藤、あるいは自宅の売りCD裁判といった行為は、ある種の精神修行ですな。乗り越えると何だか清々しい。散漫も度を越してきたあたりで「CDの出張買い取りを頼もうと思うが先月きれいにした自室が早くも魔窟状態に散らかってしまって呼ぶに呼べない」という困った話でシメておきます。困ったな〜。

【本日のレビューその1:ZS「ZS」】


ORTHRELMのミック・バー監修、BEHOLD... THE ARCTOPUSと同じTROUBLEMAN内VOTHOCシリーズの第1弾。ギター×2、サックス×2、ドラム×2という変態ダブルトリオ編成にて、TOWN AND COUNTRYが狂犬病になったような、或いはあぶらだこに触発されて拍子を完全に捨てたABCSが更にチェンバーロック寄りになったような(?)、意味不明のオール・ユニゾン・アンサンブル!こういうガタガタしたフレーズをユニゾンでやるとえらいことになるってのはオーネット・コールマンがわかりやすく流布してくれた手法ではあるんですが、この人達の場合は土台からして崩れきっててどうしようもありません。無茶するなあ。1秒あたり5枚くらいのそれぞれ脈絡のないイラストを矢継ぎ早に見せられて、そのストーリーまで同時進行でパタパタと説明され続けるような、脳みそが強制シャッフルに遭う感触。勿論激テクによる裏打ちあってのもので、ただ変態ぶりたいだけでは到底実現できない次元。サンクスリストを見るとCOPTIC LIGHTやTHE FLYING LUTTENBACHERSに並んでありました、TIME OF ORCHIDSの名前が。やっぱリンクするみたいです。

【本日のレビューその2:THE SCIENCE GROUP「SPOORS」】


レコメンの総本山ReR MEGACORPリリース、クリス・カトラー(ex.SLAPP HAPPY、ART BEARS他)が現在形でやっている4人組バンドの2004年2nd。といってもシュテヴァン・コヴァッチ・ティックマイエルなる旧ユーゴ出身の鍵盤走者が中心人物のようで作曲のクレジットも全部その人になってます。ART BEARSの発狂変拍子系レパートリー(必殺"Rats & Monkeys"あたり)の雰囲気にフュージョン色をほんのり足したものがベッコベッコと絡まりながら全力疾走していくかのような、これまた壮絶な内容。シンセやサンプラーがかなり派手に使われてて、ただ単にフレーズが暴走してるだけじゃなく楽器の音色や定位までフルにコントロールして、聴き手の集中力の先をランダムに振り回しにかかる、何とも偏執的極まりないアクロバット・アート。そのくせノリはやたらと陽気だったりするというこの常人離れした絶倫パワーにはもう白旗を揚げるより他にない感じ。一体平均年齢何歳の集団がこれやってるんでしょうか。未知の音楽への飽くなき探求欲と熱意にはただただ頭が下がります。「これHELLAの新作、雰囲気変わったけど相変わらず凄いね〜」といって聴かされても違和感なし。レコメンとか興味はあるけど、古いバンド掘り下げるのしんどいッス…という方はこれで全然何とかなります。真打ちでシビレて下さい。

  3月26日
本日の収穫、アマゾンから届いたGILGAMESH「ANOTHER FINE TUNE YOU'VE GOT ME INTO」、BURZUM「DET SOM ENGANG VAR」、ENTHRONED「CARNAGE IN WORLD BEYOND」。バーゲンの収穫もあるのにまだ到着待ちの品も山ほどあるし、ヤバイな〜。在宅リスナーっていう職業ないかいな。

▼立て込んでいた諸々の所用もひと段落ついたところで、今日はいっぱいレビュー書きました。↓

【本日のレビューその1:BIG SATAN「I THINK THEY LIKED IT HONEY」】


当欄で激賞のティム・バーンが率いるトリオの97年作。WINTER & WINTERリリースでいつもの重厚な紙ジャケがかっこいい。バリトン/アルトサックス、ギター、ドラムという変則的な編成で、中身はいつもの、どこまでインプロでどこから作曲か全く不明な現代音楽的プログレッシヴ前衛ジャズ。スゲー。パッと聴いた感じはクリムゾンやカウみたいな幽霊屋敷系インプロのようにも聞こえて、しかし何だかモヤモヤグニョグニョとした中にビートの芯がある気がするな〜、どことなくだんだんボルテージ上がってる気がするな〜…と思いながらいると、いつの間にかギターとサックスがビシッと奇怪なユニゾンを紡いでいることに気付いて唖然とするしかないという、全くもって一般人の理解を超えた世界。電波な人(死語?)のうわ言に思わぬタイミングで哲学的真理が混じっててハッとするような感覚とでも言いましょうか。インプロパートのフリーソロにしても、調性などの類は一切見当たらないのにやたらと途切れなく流暢だわ、何の合図もなくいきなり一斉にリズムチェンジはするわ、知力と体力の恐るべき高次なるバランスに圧倒されます。神なのか?デスメタルにも迫るようなグボグボ太い感じはこの作品ではさほど出ていないものの、繊細にコントロールされた魑魅魍魎を果てしなく堪能できる仕上がり。こりゃびっくり。

【本日のレビューその2:CLUTCH「PURE ROCK FURY」】


冴えんバンドロゴに冴えんジャケです。日本でほとんど話題になってないんじゃないでしょうか。それでも結構なキャリアになるようなので本国じゃそれなりに支持があるんでしょう。グランジの生き残りのような商業ストーナーなようなアメリカのバンドの2001年作。少し前にMTVで偶然見かけたビデオクリップが異様にカッコ良かったので買ってみたところ、これは当たりですね。SOUNDGARDEN、FU MANCHU、「DELIVERANCE」の頃のC.O.Cの中間をいくようなオールドロッキンでいかつい楽曲の上で、ハスキーかつ野太い声質のヴォーカル(FORBIDDENの人にちょっと似てる)が逞しく歌う、90年代オルタナ好きにはたまらない内容。演奏にしろ曲のフックにしろ全てが恐ろしく垢抜けてて、いかにもわざとやってる感じを肯定的に受け流しさえすれば他に何も文句はない音です。作風が一定な割に曲数が多くて後半ちょいダレますが。とにかくMELVINSにも匹敵しそうな極太グルーヴが凄い。下手にブランドにこだわってMAN'S RUINとかのイマイチな無名バンドまで熱心に買い集めたりするよりよっぽどコッチですな。中古での相場は相当安いと思うので、外盤800円程度で見かけたらサクッと買いです。

【本日のレビューその3:TAI PHONG「LAST FLIGHT」】


こんなもの中古で発見するとは。ベトナム系メンバーを含むフランスの叙情プログレバンドの79年3rd。うーん何とも言えないジャケ。アメリカのPAVLOV'S DOGと並ぶポップ&激泣きの秀逸バンドとして、初期2作はプログレッシャーの間で重宝されているのですが、その次となるこのアルバムは時流に倣ったコマーシャル化が不評を買ってイマイチってことになってます。しかしそのつもりで今聴けば、あやしいアナログシンセやしみじみしたアコギの響きなり、間奏のインスト部分でついつい大仰に盛り上がり過ぎる性癖なり、多分にプログレ然としたものでちゃんと楽しい。GENESISでいう「WIND AND WUTHERING」〜「DUKE」あたりの感じですな。(そういえば普通にGENESIS似かも。ややゴダイゴ風でもある。)妄想で描くアメリカっぽい明るさが微妙にポイントを踏み違えてるあたりもまた、この時代の欧州産ならではの趣きです。いいね〜。前半3曲をポップ系で攻めて、4曲目(恐らくB面トップ)以降は打って変わってシケシケと翳るのですが、やはりこっちが本領なのか、泣きっぷりが明らかに上質なのが一聴して判るのはさすが。旧来路線しか許せんというファンも、この白熱の後半戦のために買わねばならないでしょう。

  3月25日
収穫はなし。大学のバンドサークルによくある、いわゆる「コピーバンドたくさんで卒業生追い出しライブコンパ」みたいなのに、卒業済みのくせに顔出してしかも出演してきました。やった2バンドともギターだったのですが、ギターは演奏しながら存分に首振れるからいいですね。普段ライブを見に行ったりしても思うに、私はヘッドバンギングがとにかく好きです。特に翌朝残っている首まわりの鈍い筋肉痛、それで「そういや昨日の晩は首振ってきたんだっけ」とライブの記憶を思い返して心でニンマリ、みたいなのがたまらん。曲調とかに応じて「片膝と連動するパターン」「上体ごと大振りのパターン」「腰の前後動を伴って表拍/裏拍を作るパターン」などを使い分けるのも楽しい。上手く出来ないのはフィストバンギングですな。あれをカッコ良くやり続ける人(大抵外人)は尊敬します。

【只今のBGM:TIME OF ORCHIDS「SARCAST WHILE」】


TZADIKの「COMPOSER SERIES」から。珍しく普通のヴォーカル入りバンド形態で、音の方もユダヤ云々といった雰囲気はほとんどなし。金管の代わりにディストーションギターを投入したスローコア〜変態マスロッキン・サイケ・レコメン・メタルてな感じです。変わってる。X-LEGGED SALLYなどのようにここは激リフモード、ここはエスニックモード…と楽曲内で色がパッカリ分かれているタイプと違って、「CYNICとHENRY COWって他人の空似じゃんホラ〜」と遠隔地住まい同士の面影を強引に溶け合わせてしまうような異次元型ハイブリッド。MATS & MORGANやジム・マーティン在籍中のFAITH NO MOREからSHIPPING NEWS、NEUROSIS、90 DAY MEN、PIT ER PATあたりも彷彿と。ドシャーッとアガる曲とドンヨリいく曲の落差が激しいですが、いずれの曲も迷宮のような歌メロが何ともレコメン印。カウ/ハッピー合体バージョンやこれとかの匂いプンプン。THE MUFFINSのそのまたソックリさんみたいなCUNEIFORMによくいる感じのバンドにはない真新しい解釈におおーっと感銘を受けます。プログレもポストコアもないぜとばかりにジャンルの垣根を踏み越しまくりながら、ビシッと鋭く焦点を狙い撃つこの不敵な確信度はひたすら痛快ですな。TZADIKに拾われたのも納得。音楽の自由かくあるべし。

  3月24日
▼時系列順にまずは昨日のLOSTAGEレコ発のリポートから。開演の19時間近になるにつれだんだんと人の入りが良くなってきて、手狭なハックフィンのフロアがだいたい埋まる程度になったところで1番手DOIMOIが15分押しのスタート。あ、自分ですね。ヘタクソに生きる価値は全然ないので割愛。2番手は中部地方発・若手最有力エースOGRE YOU ASSHOLE。ひとヒネリありつつも最小限に削ぎ落とされたリズム隊の上で2本のギターが織物の如く絡むアンサンブル作りと、キャラのある声質できちんと彫りの深いメロディを歌うヴォーカルがいつもながら魅力。どんどん場数を踏んでるだけあって世界観がクリアに見通せて、完成度が安定して高い。堂々たるものです。バチバチッと硬めでオンなPAの音作りゆえか、普段に増して馬力が上がってるようにも感じました。CDも売れてたみたいだしLOSTAGEファンの耳にガッシリと引っ掛かっていったことでしょう。

▼そしてメインのLOSTAGE。アルバムどおり"Television City"でスタート、これは燃える。前回見たときはKDハポンで、客席と地続きの演奏スペースでドッシャドシャに転げながらの凄まじいパフォーマンスがとにかく衝撃でしたが、今回はステージ上で3人並んでという固定ポジション(それでも勿論アクションはありますが)で、見た目のショックの代わりに堅実で風格ある演奏を隅々まで堪能できました。EXTREME THE DOJOの会場にいるような感覚にすら陥るほど本当に堂に入ったもの。ドラマー氏のヘッドバンギング叩きが凄いのにステージ背後の黒い幕と同化してしまって振り乱れる髪が見えにくかったのが残念!2本のギターが前よりよく聞き取れたお陰で、実はMINERALみたいな美麗系エモっぽいところも多分にあることを再確認(もっと荒くれ寄りのイメージだったので)。しかしシケシケ〜と浸りきることなくォオラッ!と噛み付いてくるような気迫がとにかくカッコイイ。インディロックに愛はあっても不必要に耽溺することは選ばない、剥き出しのロッキンな駆動力が何よりこのバンドの稀有たる所以。叫んでるようで確実に歌っているヴォーカルの乱れない表現力も見事。

 MCはあまり挟まず結構立て続けに演奏していく感じなんですが、やる曲やる曲グイッとえぐるフックがあって、個人的にはイントロでシェイカーを振るAC/DCっぽい曲がど真ん中にヒット。半ば伝統芸ともいえる「オーソドックスなロックのノリ」をあんな風に響かせてしまうなんてズルイ。この時ばかりは軽くヘッドバンギング状態で聴いてました。本編が終了するとアンコールが起こり(得意の大音量拍手で私がかなり手拍子誘導しましたが)、飛ばし系の曲でガガッと盛り上がり直して終わるかと思いきや、スケールのでかい泣ける名曲で壮麗・盛大にシメ。しっかり満腹になりましたが、更に長くても全然もっと楽しめたであろう、頼もしいことこの上ないステージでありました。

▼で一夜明けて本日の収穫、今日からバーゲンのサウンドベイ金山にてTAI PHONG「LAST FLIGHT」(フレンチ叙情プログレ3rd!)、MEMENT MORI「LA DANSE MACABRE」(ex.TAD MOROSEのシンガーが加入しての96年作)、CLUTCH「CLUTCH」、HIRAX「BLASTED IN BANGKOK」、LIBERTY ELLMAN「TACTILES」(PI RECORDINGS!)、FUDGE TUNNEL「THE COMPLICATED FUTILITY OF IGNORANCE」(300円にて)、同上前津でZAKARYA「SOMETHING OBVIOUS」(TZADIK)、THE VANDERMARK 5「ACOUSTIC MACHINE」、CLUTCH「PURE ROCK FURY」、ついでに寄ったバナナレコード・ジャズシンジケートでBIG SATAN「I THINK THEY LIKED IT HONEY」(ティム・バーン!)、FRANK KIMBROUGH TRIO「QUICKENING」(OMNITONE)、更に帰宅したらカイマンから届いていたTIME OF ORCHIDS「SARCAST WHILE」(TZADIK、COMPOSER SERIES)。少数精鋭である。

【只今のBGM:FUDGE TUNNEL「THECOMPLICATED FUTILITY OF IGNORANCE」】


94年EARACHE。このバンドの存在はレーベルのよしみで当時BURRN!やヤングギターで紹介されてたのでメタラーもよく知ってます。しかしデビュー当初の「イギリスからのNIRVANAへの回答」といった評判やら何やらで、とりあえず昔は敬遠してました。今になってここのメンバーのアレックス・ニューポート(SEPULTURAのマックス・カヴァレラとNAILBOMBをやってたりもした)がエモ/ポストコア界隈でエンジニアとして名前を聞くようになったので今更ようやく安値で回収する事業を始めてみました。
 さてこれは94年の3rdで、フルアルバムとしてはラスト作になる模様。NIRVANAっていうより全然HELMETやBARKMARKET寄りですな。インダストリアル風の角ばった響きを醸し出すリフ作りが結構独特。ヴォーカルスタイルこそ違えどそれこそSEPULTURAの「CHAOS A.D.」あたりと、影響されてるというよりは共鳴してる感じ。EARACHEのレーベルカラーにきっちり応えて全編とことん無慈悲に押し切ってます。場の鳴りや時間感覚まで意識したリフおよびリズムの表現はしかし、なかなかに色気がある。ガリッと生々しいサウンドプロダクションにもそういう視点が活きてます。曲に派手さはないので活動中当時に頭ひとつ抜きん出ることは結局なかったですが、遡って今聴くと、こっちからつついてみたら中身はとんでもなく濃密だった、みたいな「語らなさ」がシブくてよい。注意深さとダイナミックさが同時に成立するこの異形ロックっぷりは、今後年月を経てヘヴィロック/グランジがヴィンテージと化していくほどに、その味わいが認められていくんではなかろうかと。いやー思ったより良かった。全作買おう。

  3月22−23日
22日の収穫はバナナ四谷店でBUDGIE「DELIVER US FROM EVIL」、P-CAN FUDGEでWEASEL WALTER/FRED LONGBERG-HOLM/JIM O'ROUKE「TRIBUTE TO MASAYUKI TAKAYANAGI」、JONI MITCHELL「COURT AND SPARK」。今晩のライブの模様は、サウンドベイの収穫とともに明日の更新で。

【只今のBGM:JONI MITCHELL「COURT AND SPARK」】


最近は、主に収納スペースや聴取時間の都合によって、良いと思ってる人でもよっぽどでなければ無駄にコンプリートを目指すのはヤメようと決めているのですが、ズラッと棚に並びつつ普段そんなに取り出して聴いたりもしないジョニ・ミッチェルをまた1枚増やしてしまいました。だってこれジャケがいいですよね。何てことのないシンプルな図柄ながら、彼女の諸作の中ではあまり見かけない家庭的でたおやかな雰囲気に惹かれてしまいました。
 これは74年リリースの6作目ということで、基本ラインはまだアコギorピアノ+バック演奏およびウワモノという体裁で、ヴォーカルスタイルもあの歌と語りの中間のような早口全開ではなく割と普通寄り。しかしジャズ/フュージョンとの高い親和性を見せる独特のコード使いが初期作に比べると顕在化していて、バックアレンジの方向性も相俟って「フュージョンの空気をナチュラルに吸い込んだフォーキーSSW」といった具合にまとまっています。STEELY DANあたりよりもっと人間的。本格的にジャズ畑の先鋭プレイヤーを起用し始めて音響実験的ですらあるアブストラクト・スタイルに踏み込む寸前の、整った美意識の集大成といったところでしょうか。曲調もどちらかというと明るくて柔らかなものが多いです。適度にピンと張りつつ美しさがパーッと広角でひろがるようなこの感覚、ズバリ今の若手のキレイ系ニューヨークジャズ連中が目指すところなんではないでしょうか?この人自身が参加しているこんな作品もあることだし。タイムレスなヴィジョンをさらっと提示してしまっていた名盤という扱いで良さそうですよ。

  3月21日
▼CDプレス費用によるマイナス資産が埋め立てられてきたのをいいことに、最近カード決済のネットショッピングが火を噴いてます。ドイツのアマゾンで2万円分くらい、一昨日の日記で書いた分と、久々に聴き直したRIVERDOGSのロブ・ラモスが余りに良いのでカナダのウェブショップで入手可能分をまとめて直買いなんてこともしてしまいました。海外直販は一度やると恐いもんなしですね。意外と送料が高くつきますが(カナダでも26$)。しかも本日の収穫はどこぞのハードオフでSTEVE VAI「FLEX-ABLE」、どこぞのブックオフでRIK EMMETT「IPSO FACTO」、DIRTY LOOKS「BOOTLEGS」。んで24日金曜からサウンドベイ両店バーゲンか…。その前に23日木曜がLOSTAGEOGRE YOU ASSHOLEDOIMOIが今池ハックフィンでライブですな!!豪華な顔合わせです、東海〜近畿の新世代フェスの様相!さながらMETALLION第3号(スラッシュメタル黄金時代の87年発刊)にリポートが載ってるニューヨーク・RITZでのDEATH ANGEL、WARGASM、VOIVOD、EXODUSのようです!まあ我々はその中だと間違いなくWARGASMですが…。目指せVOIVODで頑張ります。字面も似てるし。チケット取り置きメール下さい。

【只今のBGM:STEVE VAI「FLEX-ABLE」】


ハードロック・ギターヒーロー界きっての奇人ヴァイの84年リリースの初ソロ。ザッパのところで弾いてる作品は未聴なんですが、これを聴くになかなかザッパの影響が濃いですね。曲によって正統派ザッパ風からRUSH風、STEELY DAN風、SOFT MACHINE風などコロコロと色を変えてきつつ、変拍子や変なユニゾン、変なスケール、狂ったパート構成での凄い変なオーケストレーションなど、あらゆる妙チクリンな事象の突拍子もない組み合わせで、どうしようもなく変態な激脱線プログレッシヴワールドを展開。根底に匂う諧謔と気品の質がそこはかとなくカンタベリーっぽいのが意外。となるとやっぱりアラン・ホールズワースの導きもあってこっちに来たんでしょうか。収録曲は結構な確率で歌入りで、「超絶ギタリストの弾きまくりアルバム」というよりは全然「ギターを持った変態コンポーザーの妄想ひろば」的な仕上がり。録音やミックスも本人の手によるものらしいですし、ドラムの打ち込みさえ自分自身でやってます(ゲストが人力で叩いてる曲と半々)。制作年代の割に過剰なリヴァーブなどの一切見られないドライで引き締まったプロダクションも聴きやすいくて良い。肝心のギタープレイに関する感想が出てませんが、当然激しく巧くて変態なんだけどそれらを余りに楽曲的に消化してしまっていて、ギターだけ取り出してどうのという印象を持てないほどそれらはナチュラルに響いているのです。美談。ということでこれはレコメン〜カンタ好きのプログレッシャー、THE RESIDENTSファン、SKIN GRAFT/LOAD/5 RUE CHRISTINE周辺を追っかけてる人、あるいは突然段ボールやジャド・フェアーが好きな人にお勧めします。後にWHITESNAKEに加入する男のアルバムだとは、リリース当時、誰も夢にも思うまいて。

  3月20日
本日の収穫、ナディアパーク内ヤマギワソフトにて格安新品でデス・リバー「唄殺皆衛門」(500円)、JIMMY PAGE & ROBERT PLANT「WALKING INTO CLARKSDALE」(100円)。

【只今のBGM:デス・リバー「唄殺皆衛門」】


「武士コア」を標榜する日本人バンドの95年2nd。今も活動してるんでしょうか?当時BURRN!のレビューに取り上げられてちょっと話題になりましたね。このアルバムは何とMORRISOUND録音でリッチ・ホーク(ex.BRUTAL TRUTH)がプロデュースという超豪華なお膳立てつきで、しかし内容はまあ大筋でオーソドックスなグラインドコア。随所に笑える日本語の叫びが入ったり、芝居がかった展開が挟まれたりする程度で、件の「武士」成分は割と取ってつけたような感じ。あーこれはヌンチャクのデスメタル版ですな。演奏に関しては、高速16分リフにしろフィルにしろ結構粗くて、やっぱり日本人とアメリカ人じゃ馬力が違うな〜と思ってしまいますが、ブラスト時は逆にこのヤケクソ全開具合が味だったりもする。ヘタに聞こえる崩れ方をしてるわけではないですし、デスメタルリスナーがちゃんと楽しんで聴けるクオリティです。狙ってブラックメタル風にした"轢き逃げ人力車"、初期CARCASSそのまんまの"時代愛好癖"(タイトルも確信犯ですな…)、和製BLOOD DUSTERみたいな"御奉行の一日"など、親切なボケで最後までつないでくれます。ちなみにラストはVENOMの"Black Metal"のカヴァー。「佐藤君今日も遅刻かい?おえ〜!」と壮絶にシメた後、リッチ・ホークもちょっと喋ってます。

  3月19日
本日の収穫、STIFF SLACKにて新品でJUST A FIRE「SPANISH TIME」、HAYMARKET RIOT「I KNOW WHAT YOU DID」。CDを作るとこうなるらしいです、いやはや。(→その1その2)こういうのにいちいち喜ぶのも何か田舎者くさいですけど、まーともかく初めてだし感慨っすね。お世話になってる方々には感謝が尽きません。この日記には音源作って業者に出す段階から色々と書いてきてるので、ひとまず「人は斯くしてCDを作ることが出来る」という公開記録の仕上げとして。無論、本題は売るか売らんかですな。

【只今のBGM:JUST A FIRE「SPANISH TIME」】


HOOVER関連人脈作品の収集をライフワークとしている人間には待望の新作です。少し前に出てたものをやっと購入しました。HOOVERほかCROWNHATE RUIN、JUNE OF 44、THE BOOM、SHIPPING NEWS(まもなく来日!)、HIMと渡り歩くフレッド・アースキン、CHISEL DRILL HAMMERからABILENEへ行ったスコット・アダムソン、SWEEP THE LEG JOHNNY他のクリス・デイリー、というシカゴ〜DCオールスターな三人組。HOOVER周辺組に特有のダブっぽいリズムアプローチをチラつかせつつもパンキッシュな突撃っぷりが痛快だった1stから、更にストレートなポストコア/初期エモ色を強めてきて、EMBRACEや昔のQ AND NOT U、ヘタすりゃナンバーガールにも届きそうなハッスル系へと変貌。メンバー一同若くはないだろうにこのハツラツっぷりは凄い。時代錯誤寸前の燃えるリフもあくまで鋭利に轟かせてしまう手腕、「フレッシュに響くトラディショナリズム」のこういう体現は、やはりベテランの専売特許。これまた来日が近いHAYMARKET RIOTあたりと肩を並べてきましたね。ヴォーカルは相変わらず激しくヘタウマ(失礼!)ではあるものの、ライブでガッツリ攻めてる画が目に浮かぶタイプなので全く問題なし。いやー味が深い。いつの間にか無条件降伏。この感じはどっちかというと、イースタンユースやブッチャーズ以降の日本のそういうバンドが好きな人にアピールしそうですな。該当する方は買ってみるといいですよ。

  3月17−18日
収穫はなし。アマゾンで今月一杯どちら様も5000円以上の買い物につき500円OFFキャンペーンをやっているのに今更気が付く。そういえばそれとは別にギフト券還元プログラムの250円分があったことも思い出し(それも今月中が期限)、対象外となるマーケットプレイス以外で一生懸命新品で買ってもいいブツを物色していたら豪快に時間を潰してしまったなあ。結局BURZUM、ENTHRONEDGILGAMESH、THE SCIENCE GROUP(クリス・カトラー他が今やっているバンド)に絞って注文。今回は見送ったけど、いろいろ探す途中で元RIVERDOGSのシンガーのロブ・ラモスが未だにソロで音源作ってることを知る。試しに本人のサイトを訪れてみたら何故か"Lucy In The Sky With Diamonds"を弾き語りしてるビデオが置いてあって、いやー素晴らしい、CDの曲の試聴も出来たけど同じく最高。知らん間に男性版エリザベス・ミッチェル(IDA)みたくなってました。んでRIVERDOGS→SHADOWKING→DIOという道を辿った現代USインディフォークファンがロニー大先生を崇める時代になったりすると本当にいいのですが。

【只今のBGM:DON CABALLERO「2」】


たまにやります、言わずと知れた名盤シリーズ。久々に聴いてみると何のことはない、土台自体はメタル・クリムゾンの進化型ですな。凶暴に歪んだトーンでノイズとも信号ともつかない変拍子フレーズを飛ばしまくるギターのフリップ度に改めて気付く。低音リフのゲッスゲッスと尖った刻みは明らかにスラッシュメタル経由。手数と速さをこれでもかとアピールするスタイルのタコドラムはニール・パート愛してます宣言に他ならず、しかしインスピレーション勝負でつんのめりまくる威勢の良さでマイク・ポートノイあたりとは一線を画す。乱れに乱れる拍子の中で不意を付くアクセントを入れたり伸び縮みするタイミング感を出すセンスはやはり抜群です。
 そこまでならATHEISTやSIEGES EVENと同列に語られて終わっていてもまあおかしくはない訳ですが、彼らはそれプラス音響面での実験性に貪欲で、音楽言語としてのノイズ扱いや、本来はパートの増減やズレで変化をつけるライヒ的ミニマリズムを「ニュアンスを微妙にフラつかせながら繰り返すギターリフ+自由自在に脱線するドラムソロのような激手数ドラム」という体裁で強引に体現したりしていたこと、更にリリース元がポストコア〜ジャンクの名門TOUCH & GOであったことなども絡み、今日に至るまで誰にも抜き去られることのない伝説をうち立ててしまったんですね。
 彼らのフォロワーとして出てきたいわゆる「マス(=math)ロック」バンドの多くは、同じようなことをやろうとしても本家が有していたダイレクトなメタル愛(そんなものが本当にあったかどうかはこれを聴けば確認可能)をあくまで二次的に受け継いで本質的には別物になっていたり、変態フレーズの組み立てに熱中するあまり「ギリギリの駆け引きの飛び交う演奏空間」を感じさせられずスリルの質で本家に及ばなかったり、この盤が世に出て10年経っている今でも孤高の独自性とクオリティは揺らいでいません。(メタル的であるか否かは優劣の問題ではないですが、フォロー達成度の評価軸として)
 以後の2枚では、ここで聴かれるようなディストーションギターは次第に鳴りをひそめ、穏やかな調性感とミニマリズムがより強調されていくのですが、その芽を覗かせるだけに留まっていたこのアルバムは、ポストロック畑におけるメタル肌最強盤というのみならず、テクニカルスラッシュの面目すら脅(おびや)かしかねない存在として、THIS HEATやBATHORYさながらの歴史的重要度をもって語り継がれていくべきでしょう。解散後、音楽性推移の原動力となったイアン・ウィリアムズがBATTLESを編成し、こっちはこっちでRELAPSEから返り咲いたという顛末は、あまりにも妥当。

  3月16日
▼「数年前から丸暗記していた英詞を何となく頭で反芻している最中、ふと初めて文意を理解する」という瞬間がたまにあります。今日は「ファラオ・サンダース」と「カーネル・サンダース」が同じファミリーネームであることに突然気が付いて一人でびっくりしました。本日の収穫、本人から直買いで大学のサークル後輩の大型有望バンドライナーノーツの「ライナーノーツ」(CD-R)。バチッと硬くマスタリングしてハイラインレコーズあたりに流せば普通に全国で喜ばれそうな内容なんだからとりあえずホームページに試聴サンプル置いたらいいのに!スグに!試聴サンプルの置いてあるホームページといえばこんな感じとかですよ。と華麗に自分の宣伝にすり替えてしまいましたが、来週木曜の3月23日、LOSTAGEレコ発にOGRE YOU ASSHOLEと共に我々DOIMOI出演します。なので、チケット取り置き大歓迎中です。よろしくお願いします。サポートでドラムを手伝っているシロクマも4月11日にやります。ネット上で出来る姓名判断によると「シロクマ×××」と後ろに何かをつけると運気が俄然最高になるらしいので、我こそはという妙案がおありの方は名乗り出てみると、うーんどうなるんでしょうね。

【只今のBGM:OTOLITHEN「S.O.D.」】


BLASTのベーシストともう一人によるユニットの97年作。打ち込みのリズム(これがまた激アブストラクトまったり変拍子)に重ねられたギター、ベース、管楽器少々がリフレインともうわごとともつかぬラインをひょろひょろとつないでいく、いわゆるところのアヴァンミュージック。リリースはCUNEIFORMってことで、クリムゾン〜カウ系の変態レコメンの…、とか現代音楽的な高度な…、みたいな目で見ればその通りに納得なんだけど、このスカスカくしゃくしゃな大雑把さはもっとスカミーな、一人モード時のTHE FLYING LUTTENBACHERSやらOCTIS(ORTHRELMのミックのソロ)を遅回しにした感じにむしろ近い。全然ポストロック扱いでいいじゃないですか。爆音ではないというだけで、LOADやSKIN GRAFTあたりのヘンタイ君たちの立派な同類。全曲ポーカーフェイスのまま横歩きにスササッと通り過ぎていくような不気味さはFANTOMASのようでもある。まあいかにも「知能犯で前衛音楽やってる人が余暇に田舎で気楽にやってる宅録プロジェクト」的な軽さはありますが、無心になって聴いてると意外にドップリ楽しめるようになってきます。

  3月15日
収穫はなし。2〜3ヵ月後に最も死語感を漂わせてそうなスマッシュヒットは「イナバウアー」ということでよろしいでしょうか。

【只今のBGM:LULLABY FOR THE WORKING CLASS「SONG」】


先日の売りCD裁判の際に発掘〜復活を遂げた1枚。素性はよくわかりませんがとにかくネブラスカ出身の大所帯アメリカーナ・フォーク〜スローコアです。99年作。リリースはBAR/NONEですがブックレット内にはSADDLE CREEKの連絡先も。バンドアンサンブル自体はインディロック的なそれ(とはいってもヴァイオリンやバンジョーなどが沢山入ってるのでPULLMAN+VERY SECRETARYといった趣き)ながらも、パンクあがりの香りがほとんどなく、ハスキー&ダンディな中低域ヴォーカルが頑張るせいもあってか、もうちょっとアダルトな印象。かといってメインストリームくさいわけでもなく。この塩梅は何処かで覚えがあるような…という引っ掛かりの正体に途中で思い当たりました、AMERICAN MUSIC CLUBですね。ということはIDAHOやRED HOUSE PAINTERSあたりとリンクする感じとも言えます。工芸品のように丁寧な楽器陣のレイヤリングに愛と心を感じる。シケシケしてるようでしてないあたり、好みが分かれるところでしょう。インディロックファンには不向きか。ビル・フリーゼル好きの人とかの方が馴染みやすいかも知れませんね。以前は何てことねーな、ちゃんとし過ぎじゃん、という程度だったところから今回の聴き直しでグッと印象が好転したのは、多分歳取ったせいだと思います。背筋の伸びるような真面目さがめっぽう心地よくなってきたこの頃です。

  3月13−14日
収穫はなし。私が勝手にやっている一人デスメタルユニット・HECATOMBの大量の過去音源を最近ちょっと整理しています。5年くらい前の録音で楽しそうにロード・ワーム(CRYPTOPSY)の物真似に挑戦してたりして、改めてじっくり聴くとなかなか微笑ましい。HELLOWEENの"Ride The Sky"のカヴァーなどを含む17曲のコンパイル盤が近々出来上がりそうです。メタルなCDを作るとジャケに物珍しいゲジゲジなフォントを使えるので嬉しいです。他にも録りっぱなしで製品化までもってってない諸々の別名義音源どもをマトモにパッケージして(CD-Rですが)販売できる状態にしようと画策中。以上、ただの宣伝でした。こういう下らんことを書いてる暇があったらルーディメンツの練習でもするか早く寝ればよいのである。

【只今のBGM:DISSECTION「STORM OF THE LIGHT'S BANE」】


おお懐かしい。上述のCDのジャケ制作の参考(主にロゴ部分の光沢など)に引っ張り出してきて、ついでなので中身も聴いてます。まだ日本にコアなブラックメタルファンの層など存在しない頃、メロディックデスのムーヴメントと混同してEDGE OF SANITYらとともに紹介されたスウェーデン産元祖メロディックブラック・DISSECTIONの95年2nd。スウェーデン産であるからして根っからの悪魔崇拝者ではない模様で、パンダメイクもしてないし音としても鬼気迫るヤバさは希薄。だがしかしこのスピードに乗せて慟哭のハーモナイズド・リフを走らせてしまった手柄ひとつで、未だに語り草となってる存在です。泣きの質としては、IRON MAIDENをビッタビタに湿らせたようなのをベースに、不穏系クラシックみたいな大仰さもプラスした感じ。イェテボリ系とEMPERORみたいな雰囲気のちょうど中間でしょうか。不必要に深いリヴァーブやら、ミドルコードを16分でキョリキョリキョリ…とストロークしまくるバッキングやらで、ブラックメタル然とした空気を何とか醸し出そうとしてますが、駆動力自体はスラッシュ的。「COMA OF SOULS」の頃のKREATORがブラスト&泣きリフに手を出したら間違いなく同じ音になります。至極シンプルな方法論ゆえ、この手の高性能なフォロワー達がひとしきり出尽くした今となっては、「やっぱりオリジナルは××が別格なんだよ〜」としみじみするほどでもない気もしますが、依然株が落ちてないのは多分、ドラマーが普通に上手くてパッと聴いた感じが凄く垢抜けてるせいもあるんじゃないでしょうか。高速ツーバスはよく乱れるとしても、全体としてちゃんと弾むビート感があるし、ブラストも美しい。軽めのプロダクションがちょっと残念ですな。荒削りに暴走する1stの方が多分グッと来やすいかと思います。IN FLAMESやAT THE GATESどまりになっている叙情ニュースクールリスナーの方がいたらこのへんまで漁ってみるといいのでは。

  3月12日
本日の収穫、バナナ名駅店にてV.A.「BORN TO SHINE CHICAGO IL 09.13.2004」。昨日のライブでやっぱり自覚した得意技は「人より拍手の音がでかい」です。

【本日のレビューその1:KING CRIMSON「LARK'S TONGUE IN ASPIC」】


言わずと知れた「太陽と戦慄」。実はクリムゾンの旧譜は、一度だいたい集めたあと、全て30周年リマスターに買い替えることを誓って一時的に売り払っていたのです。その後ボチボチ中古で集まったものの、何と「宮殿」と「ポセイドン」と、これが抜けたままだったという失格プログレッシャーであったことをここに懺悔します。てことで改めてじっくり聴き直し。
 昔は「たりー前置きやな〜」といって飛ばしていた冒頭のタイトルトラック(パート1)のイントロ、カリンバやら何やら、ワールドミュージックに根差すポリリズム混じりのミニマリズム(というかライヒ)を意識しまくりだったのですね。のちのディシプリン・クリムゾンへの伏線なのか。そして続く本編、緊張と破壊、複雑怪奇な構築性と噛み合うインプロヴィゼイション、ああ太陽と戦慄。シュール過ぎ、アート過ぎ。テクニカルスラッシュも変拍子ポストコアもここにある種(たね)からの派生でしかないという真理は受け入れないわけにはいかんでしょう。序章であるパート1は静かなまま幕を引き、一転して叙情的な小曲"Book Of Saturday"を挟んでの"Exiles"は、1st以来続く"Epitaph"系の大仰な泣きチューンながら、前作「ISLANDS」で実践した室内楽的な空間作りが部分的に効いていたり、より荒涼とした叙景度が上がっていたりと、全てのゴール地点となる"Starless"に向かって着々と歩を進めるさまをよく記録しています。
 ここでLPだとB面に返って、"Easy Money"は音の密度に反してどうしようもないヘヴィネスが浮き彫られる恐怖の1曲。後半でボルテージが上がるに従ってあらぬ方向から被さってくる変な打楽器群に気が触れそう。"The Talking Drum"はお約束のインスト・インプロとして、ピキョー!とわななくヴァイオリンの高音に導かれて始まるタイトルトラック・パート2の冒頭は、シンプルながら変拍子ロックの有史以来最もクールなリフの一つなんじゃないでしょうか。間奏部に至ってはVOIVODどころかHELMETさえも暗示するゴリゴリ変則ポリリズム。この曲は割とキメキメなまま進み(その後の"Red"路線につながる)、不気味な余韻を残してまた静寂に戻ると。「今通り過ぎてったの何だったんだろ…」とブルブルするしかない、冷徹でパーフェクトな47分間でありました。理屈ぬきで「プログレッシヴ」であると思える。
 さて、フリップ/ウェットン/ブラフォードの三頭政治と思われがちなこの時期ですが、下絵にまぶされるような形で要所要所、コントロールされない狂気性のオーラを演出するデイヴィッド・クロス&ジェイミー・ミューアが意外と重要な働きをしてたのだなと、今回の聴き直しで認識を新たにした次第。脇役的ではあっても、彼らなくしてこうは仕上がってなかったことでしょう。フリップ翁の采配力には恐れ入ります。これほど強大な意思に統べられた穴のない宇宙を見せてくる「ロック・アート」作品はやっぱり他になかなかないですね。何年経っても朽ちる気がしない。勿論33年経過してる現在、全くもって激ヤバ盤です。

【本日のレビューその2:FROGFLAVOR「SPACE OF MAGIC」】


POSEIDONシリーズその22。ばんどびびるのギタリストを含むというこれまたインストトリオの、今月下旬に発売予定の1作目。大作時代のRUSH(「HEMISPHERES」あたり)の入り組んだインストパートが端からダラーッと溶けてきたような、プログレというにはやたらファンキーだし(ベースはスラップの嵐)、フュージョンというには弾きまくり度が容赦なく、ギターインストをやりたいだけというでもない屈折性に耳を引かれる、不思議な塩梅のインスト・ミュージック(としか言いようがない)が提示されてます。こりゃー不思議。ばんどびびるを既にご存知の方は、あそこからサイケ度/アーシー度を抜いたところにサムラ的な素っ頓狂度を上乗せしたようなのを想像して頂ければOKです。割と近いといえば近い音にも関わらず全然「どっちかでいいじゃーん」という気がしないのは、ひとえにこのギタリスト氏の生気溢れる弾きっぷりゆえでしょう。ジェフ・ベック似のニュアンスでうねうねっと魅せてくれる相当な実力者です。易しい大衆性とは無縁な内容ですが、是非このまま貫いていってもらいたいところ。

  3月11日
本日の収穫、P-CAN FUDGEにてKING CRIMSON「LARK'S TONGUE IN ASPIC」(30周年リマスターでやっと買い直し)、SIMON & GARFUNKEL「SOUNDS OF SILENCE」(リマスター前の旧盤を525円にて)。夜は得三でMOUNT EERIE+二階堂和美+MOOOLS+WOELVを観戦。二階堂さんのUSツアー時のメンツ3組(WOELV以外)をそのまま見られるってことで迷わず行くことにしました。

▼最初はKの新人WOELV。フランス語使いのカナダ人女性SSWでした。中世以前っぽい西洋古楽〜教会音楽みたいな雰囲気を漂わす楽曲(ちょいミア・ドイ・トッド風)をわさび抜きのビョーク声でキレイめに歌う人。パフォーマンスは地味だったけど(ギターのボリュームノブを演奏中に触ってしまい、伴奏の音が消えてしまって「ウッ…」てな調子でしばらく落ち込んだあと、仕方なくその曲をヤメにしてしまう、などのハプニングはありました)声は良かったし、全身で音楽に没入するようなある種の透明感みたいなものをもった演奏で、何も知らずに見たなりに好感の持てるステージでした。

▼2番手は日本のMOOOLS。ギターヴォーカルの人ヘンな人だったな〜。ユーモアを体当たりでキメまくりつつインディポップ、みたいなバンドだったと思います。歌を歌としてしみじみ味わうっていうより、過剰に仕掛けられたボケどころ(これがなかなかテクとセンスを伴うものでハッとしたりする)をいちいち拾っては膝を叩く感じ。CDよりライブで楽しいバンドでしょうな。

▼3番手は二階堂和美。今日は新曲多めのセットでした。客もそろそろ初めて見る人が少なくなってきてるのか、今まであったような「曲が終わるとどよめきが起こる」「あっけに取られすぎて拍手がまばら」みたいな雰囲気はなく、いつもの二階堂さんを見物してわーっと拍手、という空気だったように思います。あるいは私が慣れ過ぎてしまったせいでなければ、色んな楽器や色んな国がコントロールされずに溢れ出るようだった1〜2年前のパフォーマンスから、最近はやや役者然とした冷静さを身につけつつ楽曲重視のノーマルなやり方に寄ってきてる気もします。そういえば新曲も(世間でそう目されるところの)ポップソングとして成立する感じのものが多いし。なので今日はもっぱら声のキレイさが印象に残ってます。ただしそれも無限大にブースト可能なワット数を隠し持った上で磨かれたクリーントーンであるので、決して本質的なパワーダウンとは思わないですが。最近のスタイルの方がわかりやすいんだろうけど、前みたいな方が圧倒的ではあるし、冗談半分で「紅白出場」を掲げるこの人が今どっちの方向に進むべきか、難しいとこなのかも知れません。ともかく次のフルアルバムが楽しみ。

▼それでいよいよ本編MOUNT EERIE。主役のフィル・エルヴラムに加えて先に出演したMOOOLS全員と、ドラムもう一人(ツインドラム体勢)、パーカッションおよび鉄琴、シンセ、ソプラノサックス/ハーモニカ(以上すべて日本人)、曲によっては二階堂さんのコーラスも交えた8 or 9人の大所帯バンドが組織されていました。ところがこれがガッタガタ。まずPAが最低で、演奏を妨げるほどのハウリングを何分かかっても消せない、明らかにボリューム上げるべきマイクを切りっぱなし、など。フィルも思わず四文字言葉を発するほど。更に追い討ちでMOOOLSの人でない打楽器2人がド下手。タイミングは合わんし抑揚は変だし、場違いな音を出す度にMOOOLSのドラマー氏に睨まれてました。シンセも大して聴こえないなりにお荷物でしかない働き振り。せっかくフィルはいい声だし曲もいい(MICROPHONESのようなカレッジ・ローファイ・フォークからやや脱して、意表を突くような引っ掛かりのある垢抜けたサイケポップになってました)のに、客演陣によるダメージのせいで何も楽しめない状態でした。結局一人でやったアンコールが一番良かったという。こんな幸先悪いツアー初日でいいのかという空気のまま終了。あーあ。

【今日のレビューは省略します。すいません。】

  3月10日
収穫はなし。インド料理屋で巨大ナンとビールを含むセット(その他カレー、チキン、サラダ等もつきます)を食して4時間は経過しようという現在、体内で増えてるのか、満腹度がひとりでに上がり続けて吐きそうです。危険な組み合わせであったようです、皆さん気をつけて下さい。そんなことより昨日の「白夜行」の続きとCELTIC FROST復活作の行方が気になってしょうがないなあ。

【只今のBGM:JOHN ZORN「ASTAROTH」】


2005年TZADIK。ジョン・ゾーン本人は一切の演奏をしていませんで、どういう素性の盤かというと「2004年にゾーンはMASADA向けの300超にも及ぶ曲を書き、MASADA関連人脈からプレイヤーを選りすぐって流動的なユニットを作りそれらをレコーディングさせる『MASADA BOOK TWO - THE BOOK OF ANGELS』という新シリーズを始めた。」と記されています。ということでこれはその第1弾。ピアノのジェイミー・サフトを筆頭に、オーネット・コールマンとも仕事をしているというグレッグ・コーエン、TZADIKからリーダー作も出しているベン・ペロウスキーの二人が脇を固めます。内容的にはいつもとそう変わらない、ユダヤなんだかどこなんだかとにかくあやしい感じのエスニズム(エリントンの"Caravan"みたいな?)を軸にした現代アヴァンジャズ。ゾーンの声が不在とはいえ、メンバー各自求められるヴィジョンをきっちり理解してるようで、ちゃんとMASADAです。曲名はこれ全部天使の名前なんでしょうね。フリーな激インタープレイあり、テーマをしっとり丁寧に歌い上げる曲あり、しかしどこか3人とも、プレイヤー冥利を排したような無心なる「従事感」が漂う気がするのは、特定のコンセプトを背負ってる上にリーダー不在であるがゆえなのか、そういう先入観で聴いてるせいか。宗教的祭祀の如きテンションの上がり方がいかにもTZADIKらしくてコワイ。TZADIKってシリーズごとに目印となるデザインが決まってますが、このシリーズは画像左にある「斜めに二分された六芒星」であるようです。ちなみにマスタリングがPIG DESTROYERのスコット・ハルというオマケつき。

  3月8−9日
9日の収穫、名駅69にて安全地帯「COMPLETE BEST」(05年編集、2枚組)。郵送する荷物があって郵便局を利用したのだけど、愛想が悪いのはわかったからせめてお釣りと一緒に「ありがとうございました」くらい言ってもらわんと、どのタイミングで立ち去っていいのか判断しかねてどうにもマヌケになってしまうんで、どうにかして頂きたい。と新聞に投書したいくらいひどいおっさんに対応されたので記念カキコ。本日のハイライトは「カキコ」でした。

【只今のBGM:BLIND MELON「NICO」】


"No Rain"で有名なBLIND MELONのラスト作となった96年3rd。早死にしてしまったシンガーのシャノン・フーンはアクセル・ローズの従兄弟ということでも知られていました。軽〜くなったPEARL JAM+ニール・ヤング+たまにZEP少々とでもいうべき音楽性だったのが、徐々にアメリカン・ルーツミュージックへの接近がエスカレートし、このアルバムではとうとうSTEPPENWOLFのカヴァーで幕を開ける始末。96年頃のオルタナシーンというとP.U.S.A.がいきなりブレイクしたり、FOO FIGHTERSの2ndリリースがすぐ先に控えていたりと、「適度に屈折してるなりにポジティヴでパワーのある音楽」が良しとされようとしていたタイミングだったのに、むしろデビュー時よりも我が道を往く方向でディープ度を増していったこのバンドはやっぱり、ワンオブ一発屋では済まされない魂があったように思います。どちらかといえばフックに乏しくヒットチャート競争向きではない漫然とした楽曲の数々も、ライブで見たら圧倒的に「立って」たんじゃないかなと今にして感じるようになりました。たまにクリス・リーみたいなパッとする曲も混じってますが。若い感性もOKなおやじロッカー、もしくは90年代前半に一発当てた産業オルタナ世代の顛末が気になりまくる向きにはお勧め。彼らのことを知らない人はとりあえず1stから買うのが妥当でしょう。その1st収録の看板曲"No Rain"のリメイクが本作には入っていますが、特にコメントしたくなるような出来ではなし。

  3月7日
収穫はなし。CDの売買等で最近ぼちぼち、自分の銀行の口座名をPCで打つ機会に出くわすのですが、「東京三菱UFJ銀行」って名前はやっぱり狂ってますよね。セブン&アイ・ホールディングスの看板も何だかセブンイレブンがデポちゃん(89年名古屋デザイン博のマスコットキャラクターです)に侵食されんとしてるとこみたいで気持ち悪いし。と下のレビューを書いた後にこっちを書いているわけですが、今日のレビューはルインズ波止場にでもしておけば良かったなあ。

【本日のレビューその1:YOCHIK'O SEFFER「CHROMOPHONIE」】


POSEIDONシリーズその21。詳細のよくわからない作品ですが、MAGMA人脈のサックス奏者のヨシコさん(男性です)の80〜82年頃の録音をまとめたものでしょうか。基本的にヨシコさんによるピアノやサックスの独奏/多重録音によって成り立っていまして、曲によってはゲストでヴァイオリン等も登場。で、メシアンやバルトーク、コルトレーンなどを咀嚼した現代音楽をやってます。ドラムはおろかパーカッション類が一切不在だし、プログレッシヴ・「ロック」とはもはや言えない域。ほぼ単身自作自演盤であるがゆえに、氏の素のヴィジョンがよく現れているのでしょうが、これを聴くと、過去に経てきたバンド/プロジェクトの数々も別に「ロックを逸脱させてみよう」なんて考えじゃなくて、ロックを乗り物として自分なりの自由な音楽を追求していただけだったのではないかなと思えます。肩肘張った理論は用意せず、ルーツとなる先人の言語を画材として描く抽象画の如き無重力の音象。自由のあり方を色々に定義したアメリカのフリージャズともまた趣旨が異なります。クリスチャン・ヴァンデのもつイデアといかに共鳴し、MAGMAの宇宙体系や(自ら興した)ZAOという皮に何故収まりきらなかったのか、そのあたりもよく窺い知れる気がします。

【本日のレビューその2:CHARLES MINGUS「OH YEAH」】


いいタイトルです。識者諸氏からは「あんまりやり過ぎない方が…」みたいな言われ方もする、ミンガス・オン・ピアノ・シリーズの1枚目。62年ATLANTIC。ベースの代役はダグ・ワトキンス、ブラスには良心的マルチ変態ローランド・カークに肉厚テナーのブッカー・アーヴィンを従え、フリーキーな激情ドス黒ブルーズがやっぱりドッシャー!と炸裂。クレジットではミンガスのところにヴォーカルとありますが、アクセントに合わせてウアッと唸ったり、冒頭曲ではとにかくオーイエを連呼したり、どっちかというと掛け声や雄叫びの類。フリージャズ全盛の頃だからというわけでもなく、如何ともしがたく変則的/フリーキーになってしまうというこの人の絶倫なる創造性をしかと堪能できます。肝心のピアノの方はお世辞にも流暢とか鮮やかとかいう感じではありませんが(心なしか音量小さめのミックスにされてる気もする)、ゴツゴツ無骨で自身の世界観どおりの演奏なんではないでしょうか。BLUE CHEERやSTOOGESのノリで聴いたらいいです。間違っても上流階級のステイタス・グッズたる「おジャズ」ではないな。ある意味アーチー・シェップやセシル・テイラーよりキワモノかも。

  3月6日
本日の収穫、サウンドベイ上前津にてLIFE AFTER DEATH「LIFE AFTER DEATH」、CHARLES MINGUS「OH YEAH」(62年作、紙ジャケリマスター)、NEW RELIGION「NEW RELIGION」(100円)。バーゲンは24日金曜からみたいです。

【本日のレビューその1:NEW RELIGION「NEW RELIGION」】


90年代中盤の風化済みC級メタル発掘事業として購入。100円なら納得です。このバンド、昔BURRN!のレビューで「シンガーが気持ち悪いほどジェフ・テイトにそっくり」という一点においてのみ何だか凄そうなことが書いてあったので、ずっと気になってたのです。いやはやここまでとは。そもそもこの時代のプログレメタル系バンドって大抵ジェフ・テイトによく似たシンガーを見つけてきてたものですが、このバンドは本当にあり得ない域。比較的似やすい高音域以外でも、囁くような低音からヴィブラートの波長から、何から何までウリふたつ。しかも曲の雰囲気からしてデビューEP〜「WARNING」までのQUEENSRYCHEを忠実に再現したもので度肝を抜く。まあ中途半端に成り損なって結局フリスビーと散っていった凡百の同系バンドに比べれば、元ネタそのものとして高い完成度を誇っている分だけ優れているという気がしなくもないが、そんなんでいいのか。良かったんでしょうな。とりあえず初期QUEENSRYCHEファンには抱腹絶倒モンです。これは4曲入りのEPなのですが(デビュー盤がセルフタイトルEPってとこまで同じだ…)次なるフルアルバムが存在するなら聴いてみたいところ。本家さながらにシンセや変拍子がカワイく導入されてたら笑いますな。

【本日のレビューその2:LIFE AFTER DEATH「LIFE AFTER DEATH」】


上と同じく発掘事業もの。ANTHRAXにジョン・ブッシュを引き抜かれて解散したARMORED SAINTの残党であるドラマーのゴンゾ・サンドヴァルを中心に結成されたバンドの、確か1枚限りのフルアルバム。ブックレットには懇切丁寧に、ARMORED SAINT解散からロイ・Z(TRIBE OF GYPSIES)の助けを得てLA界隈でメンバーを集めてこのアルバムをリリースするに至った経緯が書かれています。ジョン・ブッシュがライブを見に来て絶賛してくれただの何だの泣けるエピソードも挟みつつ。内容はというと何故か、フィル似の声質を利用して後期THIN LIZZYオマージュの嵐。1曲目の歌い出しからして"Cold Sweat"をニアミスしてきてるのは絶対わざとでしょう。ガチガチの叙情HRとも言い切れないポップス〜オルタナ的ユルさ(シェリル・クロウ風?)があったり、余り必然性を感じられないダウンチューニングが唐突に出てきたり、ツインリードの泣きがあざとかったりするあたりはいかにもメタル職人モード時のロイ・Z(メンバーとして演奏はしてないが楽曲を共作)がやりそうなこと。しかしメンバー一同のB級な味わいによって、ブルース・ディッキンソン(SKUNKWORKS以降)やロブ・ハルフォードのソロのような「仕事人の工芸メタル」に陥るのは回避されてます。というかそこかしこで「THUNDER AND LIGHTNINGパートII」にしてやろう的なシャレが働いてるのが、何考えてたのか本当によくわかりません。今こうして穿った角度から掘り起こす分には最高なんですけどね。コレでいくぞと当時真剣に思ったんでしょうか。ひとまず重度のTHIN LIZZYファンおよびロイ・Z関連仕事ウォッチャーにはかなり楽しめる作品になってると思います。単に面と向かって聴く分にはとても地味。個人的にはM PIREと並ぶ至宝ですな。あっ最後には"Don't Believe A Word"と何故か"Sunshine Of Your Love"(CREAM!)のカヴァーが入ってました!やりすぎだろ〜。

【本日のレビューその3:PEST「PEST」】


POSEIDONシリーズその20。オーストリアのバンドである模様で、リリースはCUNEIFORM。これラディカル・トラッドといっていいのか何なのか、非常に変わってます。MOGWAIばりの轟音の絨毯と東欧山岳地帯フォークとMAGMA風のダークプログレとが、PINK FLOYD的エディット感で交互に浮かんだり沈んだり混じったりして、終始攻撃的に聴覚をつん裂き続けるという、いわばアシッド・ノイズ・トラッド?取りようによってはMR. BUNGLEミーツNE ZHDALIとか言ってみることも可能か。しかしマイク・パットン関連のような「整頓された変態のプレゼンテーション」とは違い、あくまでカオスな曲がりくねりに意識を振り回される形。やや陶酔的な聴き方が要求されますが、いったん没入できれば強烈です。ライブハウスでのバンド入れ替え時に何気なく流れてたらうわー何だこれはと気にしてしまいそう。最近の90 DAY MENとかに心酔できるような人はイケるかも知れませんね。可能な限り爆音で聴くと効き目アップでしょう。

  3月5日
収穫はなし。在スペインの新鋭ジャズレーベルからのCD直販を目論むにあたって、送料を割安にするため二人分一括で注文しようと、既にそのレーベルからかなりの枚数を直接購入をしていて更に買い足す予定がある友人M田君宅にお邪魔して所有CD群を試聴しまくるという会を催行。裏ジャケ記載のパーソネルや録音年月日などの情報を見つつ飛ばし飛ばしにパーッと聴くという、中古CD屋でやるような試聴行為を50〜60枚分、印象をリアルタイムでああだこうだ言語化し結論づけながら(そうしないと後で何が何だか判らなくなるので)延々数時間。膨大な「良さがあると思う音源」の中から「買いたいCD」を選ぶ作業ってのは相当タフです。お陰で現代アメリカジャズの類型把握やら、自分の感受性の再確認やらがみっちり出来て、かなり有意義に過ごさせてもらってきました。全ての葛藤をメタルに置き換えてしか解決出来ない私(フュージョン以前のものはすなわちDIO、「バークリー・メソッド」ものはSONATA ARCTICAやRHAPSODYであるからして、そのへんをスキップしてNEVERMOREやMESHUGGAHたるTZADIK〜KNITTING FACTORY系ばっかり興味を持つのは間違ってないのだ、など)はやっぱり今後「好きな音楽は」と問われたら「メタルです」と言おう。

【只今のBGM:BEN WALTZER「ONE HUNDRED DREAMS AGO」】


てことで日記に出てきたスペインのレーベルとはこれを出してるFRESH SOUND NEW TALENTのことでした。随分以前に買ったこの盤にもようやく言葉を持てるようになったのでピックアップ。リーダーのベンさんはピアニストであとはジェラルド・クリーヴァーがドラム、マット・ペンマンがベースというトリオ。新しい世代の人達って、演奏のどの部分をとらえてジャズとしてるのかがホントに多様ですが、この人は調性感もリズムもある程度50〜60年代っぽい印象を残しつつ、今日的な質のハッとするキレや快適さをあくまで古典の語彙とその発展によってもたらすという、(ジャズの昔ながらの正装である)スーツをノーネクタイ&首元ボタンやや開きのカッターシャツで着こなすというジャケの写真が物語るとおりの路線。重度のジャズファンじゃなくてもタルくならない、判りやすい頑張りが聴ける気がします。ピアノは若い白人とあって端正かつ身軽な語り口で、豪快さや太さを売りにすることはないですが、すましてるだけではない「賢人のアツさ」は全編静かに炸裂してますね。リズム隊両名の垢抜けた変化球もアンサンブルをより立体的にしてます。ただ匂い立つほどの濃さは不在か。むしろこの「上質の薄口」を求めて手にするべきなんでしょう。ということはやっぱりジャズファン向けだな。

  3月3−4日
収穫はなし。また大学のサークルの人達に来てもらって売りCDをいくらか減らしてもらったのですが、結局まだ高さ70cmくらいの平積みが4本残ってます。なので後日遂に、中古CD屋の出張買い取りを頼むという未曾有の事態を体験することになるでしょう。人生でこれを経験するってのはなかなかないと思うので、実行した暁には必ずや当日記上にて詳細リポートします。バナナレコードさん、そのうち電話します。

【只今のBGM:DEAR NORA「WE'LL HAVE A TIME」】


売りCDの山(註:今日の日記参照)から見事戻ってきた一枚。女性のギタリスト&ドラマー(両方がヴォーカルも担当)と男性ベーシストの3人組で、ひとくちで形容するならアノラック〜ローファイインディポップと言うのが妥当そうな音楽性。こういうのってそうそう何枚も持っててもしゃーないわけですが、この人達はあくまで装いが簡素になり過ぎてしまっているだけで、中身のピュアさ(頭悪げな言葉ですが…)に大いに惹かれました。おおむねHEAVENLYやTHE CRABSに近い路線ながら、もっと60年代末っぽいヨチヨチしたサイケテイストが効いてて、聴いてると何だか素直な気持ちになってしまいそうな(?)雰囲気が醸し出されてます。天然ものの脱力感はたまにYO LA TENGOや昔のSEBADOHっぽくもある。しかも歌メロが結構しっかりしてるので1st・2ndの頃のスピッツなんかも彷彿と。いやーイイじゃないですかこれは。リズムキープは出来る割に全然フィルの叩けないドラムとかも全然許す。聴きながら書いてて今2周目入ってますがドンドン効いてきます。名盤かも。

  3月2日
本日の収穫、近所のブックオフ(太閤通り店?)でMOODYMAN「SILENTINTRODUCTION」。750円だったけど横ラベルの色褪せすぎです。(帰ってから気付いた。)皆さん、CDの日焼けにはくれぐれもお気を付けを。蛍光灯は割と大丈夫っぽいのでヤバイのは日光ですな。

【本日のレビューその1:LAMB OF GOD「ASHES OF THE WAKE」】


これはニュースクールメタルってことでいいんでしょうかね。この辺の線引きはマニア諸氏がうるさいのでちゃんとしないといかんですがよく判りません。2004年、堂々のEPICリリース。PANTERAの起伏あるリズムとSLAYERの邪悪さとAT THE GATESの媚びない泣きにとり憑かれた、別段新しいところのない内容ですが、やはり本家本元から時間が経ってることもあって全体的にスッキリ効率よくまとまってますね。力漲りつつも聴きやすい。低速だがズルズルしないテンション感があって、たまにストトトッと2ビートが炸裂したりもするこのテンポコントロールは、「FEAR, EMPTINESS, DESPAIR」以降数枚のNAPALM DEATHを彷彿とさせます。最近のNEVERMOREを極悪ヴォーカル一徹にしたかのようでもあるかも。叙情系バンドによくある「ギャーギャーわめき型ヴォーカルが一変してエモっぽい普通声」という展開が個人的にうざくてたまらんのですが、この人達はそれをやらないので良い。IN FLAMES色もないし。ブームと関係なくエクストリームメタルを愛してきたんだなという感じが伝わります。まあしかし総じて「今のリスナーのための現役ヒーロー」である気がしますな。我々じじいには古典の復習で事足ります。頑張って欲しいけど。

【本日のレビューその2:内核の波「殻」】


POSEIDONシリーズその19、日本のバンドの今月20日リリース予定の新譜。全編インストで、DREAM THEATER「AWAKE」のあおりを受けてダーク化した変拍子プログレメタルバンドっぽいような音(最近のFATES WARNINGが近いかも)を一応の下敷きとしながら、そこまでガチガチではなく、ギターの歪みは緩めで相当オルタナ的な響きをしてるし、やたら謎めいたスキマっぷりが却って緊張を煽る。一周して「RED」期クリムゾンに帰ってきたかの印象もあり、何もない暗闇を大きく映したジャケも相俟ってともかく全編想像力を揺さぶられまくるような空気をしてます。ひとつひとつの場面展開をじっくり描く時間感覚は何となく日本的。一方随所でフィーチャーされるフルートはJETHRO TULLのようなイタリアンプログレのようなDARK REALITY(リコーダー入りフォルクローレ・ゴシックの怪バンド)のような。こりゃ不思議な世界観です。何に似てるかと言われると本当に困る。変拍子や高度なユニゾンもさることながら、とにかく一貫してシュールな面持ちでダーク&ヘヴィであることに拘り続けるのがユニーク。メタル側にもプログレ側にもこんなバンドいません。FARAQUET+バンコ+PAIN OF SALVATIONなどと言い切ってしまおう。ライヴを体験する機会でもあればその後全力で応援してしまいそうです。

  3月1日
▼近頃ニュースクール系ばかりでご無沙汰だったEXTREME THE DOJOに行ってきました。今回はEXODUS、NILE、THE HAUNTED。19時開演だろうと思って、余裕をみたつもりでそれより少し前に会場に着くと、既に何やら演奏が!こりゃマズイと思って奥に進むとどうやらそれは日本人の前座バンドであるようでした。EDGE OF SPIRITと名乗った彼ら、王道の叙情ニュースクールを演奏していて、ヴォーカルその他の力量やパフォーマンス度も申し分なく、私にはその手の有名海外バンドとの差が判らないくらいでした。実際フロアの反応もなかなか良く、かなりの歓声と拳があがっていました。「早く見たいなのに邪魔しちゃってすんません、もう1曲だけ聴いてって下さい。EDGE OF SPIRITて名前だけでも覚えてって下さい」みたいなMCにも好感しきり。

▼メイン1番手は何と予想に反してEXODUS!大仰なSEに導かれていよいよドバーンと始まると、あれ…何かしょぼい。往年の名曲"Bonded By Blood"が一発目だったのだけど、ドラマー氏はよっぽどキメフレーズのリズムが苦手だったのか、ブレまくって全然気持ちよく首が振れない。というか現行ラインナップに関して無知のまま臨んだので、ヒゲをたくわえたガタイのいいシンガーがゼトロかどうかも判らず、声は違う気もするけどビリー・ミラノなんか昔と全然ヴォーカルスタイル変わったしな〜と、色んな面でノリきれないままステージは進む。ドラマー氏はだんだん調子をつかんできたようで、高速ツーバスやフィル猛打を繰り出したりするものの、おおむね「速いパワードラム」の域。一方、期待していたギター2本のバトルにはやはり魅せられました。アーミングで乗り切るスラッシュメタルにありがちなノイズソロとは違って、まっとうにメロディックな速弾きもきちんと入ってて流麗極まりなし。

 それでも依然興奮しきれぬまま見続けてると、セット後半でメンバー紹介が。オンドラムス、ポール・ボスタフ!ええー!?デイヴ・ロンバードの後釜を務めたあの人が、普通にフィル前後でリズム乱れたりしとるやんけと、かなりショック。まあこの人も元FORBIDDENとかですから、前時代的なプレイヤーであっても何ら不思議はありません。むしろメカニカルな印象を与えない分、デイヴ・ロンバードの後任には適役だったのかも。バシバシ重くはあるし。帰宅後の調べでゲイリー・ホルトではない方のギターの片割れは元HEATHENの人だったことが判り、文系パワーメタラーだな〜という印象だったのは確かに当たってたようです。んでヴォーカルはゼトロじゃないんですね。ゼトロが逞しくなったものと思ってずっと見てました。あまりEXODUSのレパートリーに精通していない私が一番聴きたかった"The Toxic Waltz"はとうとう演奏されないまま終了。そんなー。

次のNILEは、会場に来る前は一番どっちでも良かったんですが、結果としては今日一番の衝撃となりました。今日というか、過去に見てきた中で最強のアスリートドラマーがいました。あんなに速く動く人間は見たことない。自らやっていたサウンドチェックでも楽しそうに叩きまくっていたのですが、暗転してメンバーが揃って曲が始まると、32分音符猛打を常時キープ!!ブラストはクソ正確、フィルも一切乱れず縦横無尽、教則ビデオの「この叩き方をマスターするとこんなことも出来ます」みたいな極端な例を1曲の間じゅうずーっとやっている感じ。叩く金物の位置に応じてスネアを右手/左手どちらにでも切り替え可能で、甘っちょろい半減速パートなどは滅多に挟まず常にブラスト。もはや体でノリを感じるなんてこともせず、胴体は一切揺らさないで腕だけを目的点まで最短距離で飛ばすのみ。科学的見地での効率のいい動き方を研究しないとああはならんでしょう。客もあんぐり、頭振る余裕なし。誰もが言葉を失っている様子でした。

 ドラマーのみならず弦の3人も負けじと激ウマで、限界越えの高速単音リフを完璧にドラムとシンクロ。どんなリフかなんてまるで聞こえませんがガッチリあってることだけはわかります。しかも3人ともデス声使いで、メインで歌う人はいるんだけど両脇の2人もかなり頻繁にコーラスを取っていました。たまに出てくるドゥーミーなパート(これがまた極端に遅い)では一変してしっかりタメを効かせ、表現者としての底力をアピール。それでも結局曲ごとの違いなんか判らないまま、怒涛の如くやり終えていきました。ありゃ凄い、デスメタル病だ。

▼そしてトリはTHE HAUNTED。前見たときはシンガーが2代目の人で、今回は初代に戻ってるとのことで楽しみにしてました。セッティングが整い、オッあの激テクパワフルドラマー相変わらずブロンドだね、ビョーラー兄弟太りすぎじゃねーの、パトリック・ヤンセンかっこいー!と思っているところに躍り出たシンガーのピーター・ドルヴィングは何だかヤク中のオランウータンみたいな不気味なステージング!!もともと目の周りが何となく暗く見える顔立ちで、その目をギョロつかせながらユラユラぐねぐね身を揺らし、ヴォーカルパートに入ると突然スイッチが入ったように全身全霊であの雄叫びをあげる、天然系のかなりヘンな人でした。声の気迫はもうCDどおり。うおーかっこいい。昔ながらの2ビートをサイコ&ブラッディ〜に彩るパトリック・ヤンセン様(元SEANCE!)がしかしやっぱり一番かっこいい。ギリシャ彫刻のような顔立ちに見事な長髪・長身で、上体をやや後ろにそらしながらあまり動きすぎず冷徹にリフを刻み込む佇まいには惚れ惚れ。フラッシーな技には走らずにオーソドックスな演奏をパワフルかつしなやかにキメるドラムのペルもなかなかに目立ちます。

 "Hate Song""In Vein"等の人気曲が出るとやはりフロアも興奮し、かなり壮絶なモッシュピットが度々発生。ブレイクや曲間で客が止まらないように自然にメロイックサインや拍手を煽るメンバーのパフォーマンスも上手い。ヴォーカルのピーターは喋ると意外といい人そうでした。各バンド結構長めのセットだったからか、最後の出番だったTHE HAUNTEDもアンコールはなしで終了。AT THE GATESの曲も今回はやりませんでした。まあしかし叫んだりする元気も足りなくなってきていた頃だったし、充分満腹になって帰宅。物販はNILEのTシャツだけ買いました。

【今日のレビューは省略にします。明日以降ドサッと。】

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