物色日記−2006年4月

※頻出語句解説はこちら
  
ショッキングなことに、誤ってこの月の分のhtmlファイルを消してしまいまして、キャッシュを見つけて復元を試みたものの27・28日の分が欠けたままです。あ〜残念…

  4月30日
収穫はなし。今池シネマテークでやってたフレッド・フリスの映画見に行き忘れた…終わってしまった…。何かとウッカリで損してることの多い今日この頃、これが八方塞がりなのか?いや、もっと下等なもんですな。とほ。気が付きゃ2006年も3分の1が経過、クリムゾンの「宮殿」でいえばもう"風に語りて"始まってます。このままグダッと"エピタフ"にもつれ込んでしまっては、四捨五入で全部終了したも同然。仕切り直すぞ〜ホイ。

【本日のレビューその1:RED HOUSE PAINTERS「RED HOUSE PAINTERS」】


当欄では度々紹介している、4ADのアメリカン歌心バンドRED HOUSE PAINTERSのこれは93年作。ひとつあとのアルバムとほぼ同じ路線をここで確立しています(といっても全キャリアを通じてそうスタイルに大きな変化はないのですが)。ローファイっぽくヘタヘタにやるでもなく、歪んだギターの塊を威勢良くぶつけてくるでもなく、インストに必要以上にこだわりを見せるでもなく、歌をまっとうに大事にしながらゆったり行くフォーク派インディロックといった趣き。耽溺してなんぼ的な音響主導の陶酔感が売りというわけではないので、スローコアとは似て非なる物とも思う。今でこそこういう界隈のSSW連中にはポピュラーなスタイルになったけど、当時としてはかなり独特だったことでしょう。IDAと双璧を成す不動のオリジンですな。楽曲の質や表現のほどに全く不足はないのですが、ケバめのリヴァーブがやや古臭くもあるので、このバンド未聴の方はもう少し後のアルバムから入った方がいいかも知れません。ファンにとってはマーク・コゼレクのノドの微妙な若さ具合が聴きどころか。

【本日のレビューその2:ROB LAMOTHE「WISHING WELL MOTEL」】


カナダの超優良フォーキーSSWの2001年作。お〜最高。古くからのメインストリーム系の熱っぽい歌い手の流れを汲みつつ(=激しく上手い)、今様な落ち着き具合も併せ持って総じてしっとり穏やかに聴かせるヴォーカルがとにかく最高。もちろん曲も素晴らしく、非常にメロディアスかつノスタルジックで、IDAが「WILL YOU FIND ME」路線のままメジャー対応型に進んでいたら辿り着いていたであろう、透き通るような良心と誰にでも好かれるような心地よいポップ性が両立した現代フォークの理想形。慎ましいアコースティックアレンジ(ドラムは入ったり入らなかったり)の中にも気配りの細かい添え物類が光っていて、どこまでまったりしても眠くなることはありません。ジュリー・ドワロンと肩を並べ、OWENを凌ぐ逸材といっても過言ではないこの男、何を隠そう、元DIOのヴィヴィアン・キャンベルと90年代初頭に幻の名バンドRIVERDOGSをやってた人なのです!!!いや〜「またハードロックかよ」と敬遠されまいとここまで必死に伏せました。実際もはやおおかたのハードロッカーには守備範囲外の、完全フォーク指向の仕上がりだからいいんですが。ここまでやられたらもう畑違いとか言ってられません、むしろIDA云々すら置いといて普通にロン・セクスミスとか好きな人までクラッと来ること必至。一刻も早くWARNERあたりからバックカタログ全部再発して全世界に華々しく紹介されるべき逸材!地元レーベルに直接メールオーダーしてでも買って下さい。

  4月29日
▼いきなりですがDOIMOIが新たにドラマーを迎えて4人組になりました。少し前から一緒にスタジオに入ってはいたものの、何せ最年少での加入とあって当人がビビリ気味であったため、公式なアナウンスをしばらく保留にしていたのですが、週明け5月3日の鶴舞ロックフェスティバルも間近ということでこの度晴れて公表の運びとなりました。私は念願のギタリスト復帰が成就です。よろしくお願いします。

▼今やっている卓球の世界選手権、35年振りの王座奪還を目指してRAINBOWの"Kill The King"をテーマ曲にもってきたテレ東はやっぱり最高だ。ここぞとばかりに自局の番宣CMだけしか流さないという捨て身のアピール戦略も泣ける。結果は銅になってしまいましたが、選手団とテレ東の頑張りに惜しまぬ拍手を贈ります。収穫はなし

【本日のレビューその1:DIO「INTERMISSION」】


日記の文中にRAINBOWの名前が出たのついでに今日はこれを。言わずと知れたRAINBOWの初代シンガー、御大ロニー・ジェイムス・ディオ大先生率いるDIOの86年のライブ盤です。内ジャケの写真を見る限り既にギターはクレイグ・ゴールディのようですね。ソツない超速弾きマン。全6曲とコンパクトめの構成で選曲も大変地味(しかも何故か1曲は冴えないスタジオ新録)で、殆どクレイグ・ゴールディのお披露目目的のみでリリースされた代物なんでしょうか。しかしラストの2トラック、"Rock'n'roll Children"に挟まれたRAINBOWメドレー("Long Live Rock'n'roll"〜"Man On The Silver Mountain")から"We Rock"への流れで全部許しましょう。むしろ曲が何でもそこは問題ではなくて、ロニーの堂々たるパフォーマンスを深々と堪能することこそが大義たるべき。恐ろしくダイナミックなこの波動、どうですか。ライブだからといって歌い出しや言葉尻をお座なりにすることなど一切無く、スタジオ盤に全くひけをとらぬ完璧さ、更に生ならではのスポンテニアスなヒネリも加え、ガッシリ力強く歌い上げています。ヴィニー・アピス(ds.)も上手いな〜。でもギターがヴィヴィアン・キャンベルじゃないんじゃ、初期DIOのライブ音源である意義半減ですな。まあRAINBOWの「ON STAGE」と同等ということはない、ファン向けの品。ただしファンは全員必携ですが。

【本日のレビューその2:EAST WIND POT「EAST WIND POT」】


ちょっと久々のPOSEIDONシリーズその26。70年代東京プログレ人脈によるカンタベリー派真打ちとの叩き文句のとおり、GILGAMESHやNATIONAL HEALTHの雰囲気を正統に受け継いだカンタ・スタイルのプログレジャズロック。バンド名のPOTという響きのせいかGONGのイメージも多少よぎる。今の時代性を踏まえた技術を身につけていたり(ツーバス連打が混じったりする場面も)、普通に録音がキレイだったりするあたり、EVERONやCAIROのような「革新性は求めないが、過去の美しい遺産を愛をもって現代にリインカーネイトさせる」というスタンスでいる感じが窺えます。こういうバンドが日本でも現役で活躍して、由緒正しいカンタベリーサウンドを生身のものとして伝え続けてくれるというのが何より意義深いですね。そのミッションにかなうクオリティは充分に誇る好盤。

【本日のレビューその3:COWS「CUNNING STUNTS」】


UNSANEやHELMET、HAMMERHEAD、CALVIN KRIMEなど数々の名バンドを擁したミネアポリスの伝説的レーベル・AMPHETAMINE REPTILEにいたバンドの91年4th。時代的にKILLDOZERやLAUGHING HYENASみたいなジャンクテイストもありつつ、こちらはもっと発奮しててパンク寄り。トゲトゲと危なっかしくも渋ロッキンな往年のAMREPらしいスタイルですな。ヘヴィさや屈折感はそこそこで、ひたすらワルそう。ちょ〜っとだけJUST A FIREっぽいかも?何が飛び抜けて強烈ってこともない、煮え切らないといえば煮え切らない茹だり具合なので、今の耳にはどこを聴いたらいいのか当惑するかも知れませんが、本場アメリカにおけるハードコア→アングラジャンク→ポストハードコアの流れを観察する素材としては恰好。ともかくAMREPはロゴやアートワークがかっこいいので、安く買って持ってるには気分がいいのです。ちなみにベーシストは後に何とMELVINSに加入し(99〜2000年のIPECAC3部作から)、更にTOMAHAWKのメンバーでもあるようです。

  4月26日

収穫はなし。再び大規模な売りCD裁判を催行。今まで「この列はまず売ることはないよな」と思って手をつけてこなかったあたりが、改めて聴いてみるともうドンドン放出決定。ほぼコンプリートしているものを部分的に切り崩すというテクを身につけて俄然加速。また逆に「微妙だけど揃っちゃってるし持っとくか…」くらいに思っていたものがやたら良くなっていたというパターンもいくつか。TRUMANS WATERは途中からビーフハートみたいになってて最高だったなあ〜。経験を重ねて再び会った旧知の友人と凄く「今」な会話ができたみたいな感覚。そんで初期はリリースがHOMESTEADだからもったいなくて売れないし、結局今後も棚の肥やしとして静かに佇んでくれることでしょう。

【本日のレビューその1:TRUMANS WATER「FRAGMENTS OF A LUCKY BREAK」】


ローファイと言われたり、PAVEMENTタイプと言われたり、その本質を変に踏み外すような括り方をされたまま(確かにどうしようもなくローファイなんだけど…)ここ日本では大して知られることもなく鳴りを潜めているスカムジャンクバンドTRUMANS WATERの97年作です。屈折したリズムパターンに破滅的な鼻歌の如きリフがまとわりついて、奇声ヴォーカルはやけにノリノリだし何だか知らないがテンションが上がってるという、CAPTAIN BEEFHEARTにポストパンク以降の破れかぶれなブチ壊れ感を大幅導入したような(ダンス方向に寄ったビーフハート自身の80年前後の作品とは異なる)、あるいはインストパートでは70年代のオーネット・コールマンやAMON DUUL、MASSACREなんかも思わせる、けっこう鋭く狙いを突いた音になっています。初期作での収拾のつかない悪ふざけっぷりからすると、随分と(これでも)音楽的、芸術的になりました。普通にMELT BANANAやPOLVOと同じ感じでアピールするのでは?おすすめ隠れ名盤。

【本日のレビューその2:DEREK AND THE RUINS「SAISORO」】


フリークアウト系続きで、故デレク・ベイリーと日本が誇るRUINSがTZADIKに残した共演盤をご紹介。うっかり見過ごしそうですがDEREK & THE DOMINOSをナチュラルにパクッたユニット名がまずクールでなりません。で中身はもうこの顔合わせから想像がつく通り。ドッパンドッパンと威勢良く暴れまわるドラムは、相手がデレク・ベイリーだろうと構わず「ロック」で、対するギターはというと意外にマイペース。しかしドラムに爆音で崩壊されるとやはりそこはノッていかねばということでいつもの解析不可能な脱語彙ノイズが更に早口に。どっちかというと聴き所は、時々出る吉田達也の強引なフリー・スキャット(それ単体でもかなり見事)との絶妙な協調ぶりの方でしょうか。騒がしく盛り上がる場面よりむしろスリルがあります。吉田氏はやっぱりクリスチャン・ヴァンデとチャールズ・ヘイワードになりたくてしょうがない生粋のプログレ馬鹿一代ですね。んでベースはやはり脇役的。そりゃ脱退するわ…。結局あんまり驚くほどの掛け合いとかは見られないまま、メンバー各人の味は堪能できたからいっかみたいな後味になってしまうあたり、インプロヴィゼーション作品として成功してるのかどうか判りませんが、まあこういうものを記録された音源だけ聴いてシノゴノ言っても仕方がないでしょう。演奏風景を見たらデレク・ベイリーの周りだけ凄いセンシティヴな緊張感が渦巻いてたのかも知れないし。脂の乗った極東の爆音プログレッシャー二人とウン10年間ノイズ一筋のおじいちゃん、という絵だけでも何だか有り難い。 color="666680">

  4月25日
収穫はなし。唐突ですが一番好きな芸人は江頭2:50です。並ぶ者のない特異なキャラ設定、テクニック、イマジネーションなど、長年の経験と研究で培ってきたそういう備えを背負ってとにかく場に跳び込んで、ハプニングを即時的に次のアクションのための前提に変換していく鮮やかさ、結果的に不可解に思われがちなノン・イディオマティックな笑い…これを上質のフリー・インプロヴィゼーションと呼ばずして何と呼ぶ。まあ、フリーインプロって言いたかっただけですけど、とにかくあの、次の瞬間の行動が予測不可能で常に見るものを不安に陥れる芸風には感服します。んで多分意外に普通の人だと思う。

【只今のBGM:FUDGE TUNNEL「CREEP DIET」】


先月のこの欄でも取り上げて激賞したばかりの、アレックス・ニューポート率いるFUDGE TUNNELの93年作。たった1年前なのに作風は結構違って、かなりNIRVANA臭にかぶれてます。「BREACH」の頃に顕著だった、独特のズルズルツンツンした危なっかしいノリが。あとはDANZIGとか?聴きようによっちゃPANTERAやスローダウン後のSEPULTURAともリンクできるんだろうけど、なにぶん音作りが軽いのでそれに妨げられる。やっぱりどっちかといえばメタルよりハードコアが原料っぽい雰囲気。90年代の空気を触媒にして様変わりしてしまったPRONGやC.O.C.みたいなパターンか。うーん時代ですな何とも。つまるところ骨格はロックとしか言いようがないのにどうにも鬱っぽくひん曲がって、CELTIC FROSTとBLACK FLAGを両足に穿いたSTOOGESみたいなもんですね、グランジとは。そのどっちつかず感をグダーッと煮えきらぬままに体現するこのFUDGE TUNNEL、今こそオススメです。

  4月24日
収穫はなし。ギターの弦は何となくダダリオです。ダダリオって、1弦から6弦までのワンセットをひとつのビニル袋(破って開けるしかない感じのやつ)に入れてあるという形の梱包なので、たまにギターの弦が切れたとき、必要なのを1本だけ取り出すと、袋のルーズさゆえ他の使わない分もついでにそのへんに飛び出てしまったりして、でも弦交換なんて滅多にやらないし(私は弦切らない方です)まあいっかと自室のあちこちに散乱するがままにしていました。

 以前部屋の掃除をしたときにとりあえずそれらの未使用弦たちは無造作にひとまとめに片付けてあったのですが、今日それを改めて「1弦はこの袋、2弦はこっち」というようにゲージ別に整理したところ、どの弦もそれぞれ3〜5本くらいずつあることが判って愕然としました。要は、新しく開ける必要のない袋を破っては残りの中身をでろーんとそのへんに転がしておいて、次切れるとまた「替えの弦、無いなあ」といって新しく袋を破いてはでろーんと…というのを繰り返していたようです。何てだらしない輩になったんだ。と自分ではショックなんですが、大したことない話の割に説明が煩雑になり過ぎて、皆さんは状況がよく飲み込めない上に別に笑えなかったと思います。すいません。

【只今のBGM:オフコース「ワインの匂い」】


75年。冒頭曲、"雨の降る日に"だからって、雨音のSEの奥からピアノがフェイドイン…なんてベタな。小田和正はこうやってちょっと映画みたいな幕開けにするのが好きなんですね。イントロに静かな小曲を配する趣味はその後も度々見受けられます。全般的にはまだ鈴木康博との二人時代ということでしっかり国産フォークの空気かと思いきや、全然。アコギがいっぱい出てくるってだけで、基本的な世界観はバンド化〜小田和正ソロ以降と殆ど変わらないものを既に大成してる感。勿論バブリーな80年代産業ロック色はないですが、代わりにキャロル・キングとかみたいなこの時代の音からの影響がよく出てて、結局舶来ものへの憧れを糧にするスタンスは昔からずっと同じな訳です。そして全編にそこはかとなく横たわる、若さゆえの前向きさと鬱屈、日本人的な距離感/スケール感、あ〜何かこれサニーデイみたいだなあ。ある意味「若者が自力で組み上げるインディ・フォーク」に変わりはないわけで。押しも押されぬ超大物ベテランになった今の余裕ある雰囲気とは違って、まだ少ないノウハウで一生懸命名曲を探り当てようとしてる感じが何だかフレッシュで良い。「昔の良い音楽って良いからねえ…」みたいなつもりで聴くと、そんなこととは関係なく普通に良くて驚かされると思います。ラストの"老人のつぶやき"泣ける。あ〜、全員買いです。

  4月22−23日
収穫はなし。久々にギター用のエフェクタボードを構築しようとして結線に悩む。一瞬しか使わない飛び道具系のものとかは極力省きたいので、代わりに今更スウィープ8フィンガーでもちゃんと練習しようかと思います。そっちの方がよく飛ぶ。

【只今のBGM:JAN JELINEK「KOSMICHER PITCH」】


よっぽど新品で買おうと思っていた去年リリースの新作を中古でゲット。よし。~SCAPEの顔ヤン・イェリネックです。この欄では過去に何度となく(その1その2その3その4)紹介してますが、性懲りなく。今回はこれまでにないほど生音による生グルーヴを重視した作りになってますね。SAVATH+SAVALASが南欧かぶれにならないまま人肌っぽさを増していったらこうなってたかもという感じ。ジャズ色はやや後退し、一周してジャーマンロックに立ち返ったようでもある、オーガニックでナルコティックでノスタルジックでラウンジーな新境地。ピンピンと鮮やかな細部のツブ立ちはデジタルパワーによるところだがあくまで表現の中核は動的で熱を持った、超高画素デジカメで撮った亜熱帯の森の如しか。「ジャズとかそういうアナログっぽい感じをふんだんに取り入れてますけど何々トロニカです僕ヨロシク」みたいな何々トロニカ文化に耽溺・硬直しきった寂しい順列組み合わせの類とは根本的に異質な、詩情をともなう絵としての空間/環境をエレクトロニクスで投影するアート。さりげなくも奥行きが深いのがよい。スタンス的にはどっちかというとDIRTY THREEとかPAN AMERICANみたいな方に近くなりました。うーんますますリスペクト。

  4月21日
本日の収穫、最近ホント連日買ってますが、今日はサウンドベイ上前津でJAN JELINEK「KOSMICHER PITCH」、WADADA LEO SMITH & ANTHONY BRAXTON「ORGANIC RESONANCE」(PI RECORDINGS)、SUBWAY「SUBWAY」。かなり絞った。

▼夜はまた鶴舞KDハポン。もう出演者としても見物客としてもホームグラウンドと呼びたい場所です。今日は客としてTHE FUCKING CHAMPSとNICE VIEW見てきました。このクラスの外タレにしては珍しく前座が1バンドということで、やっぱりというかフロアはガラガラ。堂々の30分押しで始まった本日の先手NICE VIEW、壮絶!!!何だあのドラマーは!!上半身裸、それっぽい短パン、丸刈り、という完全ボクサースタイルで登場し、フリージャズ風の即興数分間ののち突沸したかの如くロケットスタート。ファストコアってイメージだったけどもっと複雑で、かつカオティックとかいう表現が全くもって適切でないような、キメるも止まるも崩れるも自由自在にビタビタッと合う驚愕の変則スピードダッシュ・ミュージック!それこそボクシングの試合映像の早回し再生かのように全身(顔面も含む)を使って正確無比に叩きまくるドラミングにひたすら圧倒される。素早い、細かい、全力!以前今池ハックフィンで見たときは全然判んなかったけどこんな風にしてたとは。でまたギターが、オシャレ系ギターポップかと思うような複雑なヴォイシングを効果的に使いこなしてて、抜群の駆動力と相俟って何とも孤高の世界観を確立してました。伊達にGO FISHやってないですな。うっひゃーと腰を抜かしたまま一気に10数曲のセットを堪能してしまったのですが、全く麻痺してくることなく最後までサプライズ感が持続してしまいました。名古屋が世界に誇るとんでもないバンドです。この会場で間近に見れて本当に良かった。もう少し人がいりゃモッシュできたのに!

▼そして後手のTHE FUCKING CHAMPS。見た人も少ないはずなので音楽性の説明からしておきますと、ヘヴィメタル・サウンドの陶酔的なドラマ性を徹底破壊したあとに残る末梢の成分(ブリッジミュートを気持ちよく挟んだ単音リフ、あざといキメとビッグなリズム、緻密なツインリードなど、誰に対してもフィジカルに作用するであろう快感要素)を、更に奇数拍子や不条理展開でベコベコにひん曲げて、半ば乾燥しきった静物のようにひたすら羅列していくという、全力・ポーカーフェイス・シュールレアリスティック・アート・バンドでした。首を振れる感じのリフが来たかと思ってもすぐ変拍子で煙に巻かれ、楽曲としての体を成してるかどうかさえスレスレ(ベースレスでツインリードをやってしまうあたりからして確信犯と思われる)。メタルにしかあり得ないエキサイトメントを豪腕マスロック的な文脈に開放しようってことなのだろうと、なんとなく解釈しました。しかしそのメタルっぽさの中身を、日本の一般人からすると相当マニアックな領域(末期CARCASS、MEGADETH、時にATHEIST、あとは数多の80年代メタルたち)に求めてしまったため、そもそもそのへんがカッコイイということになっているとの了解がない人や、冷めた構えをとってしまう人には、いくら手荒に料理しようとあまり効き目を発揮できなくもあるわけで。序盤はさすがに音の太さなどでテンションが上がっていた客席も、次第に反応が薄くなってきて、結局アンコールもないまま終了。そんなー。そりゃ確かにちょっと淡々としてはいたし、NICE VIEWのが盛り上がったけどさ。これでMAP企画も名古屋飛ばしが増えるのではと心配。

【本日のレビューその1:TRANS AM「TA」】


ということでTHE FUCKING CHAMPSとメンバーが被っているシカゴ名物TRANS AMの2002年作です。当然THRILL JOCKEYリリース。ポストロック的視点でエディットしたハードロックのインチキデフォルメおよびテクノポップの人力蘇生を身上としてきた人達なわけですが、ここではすっかりニューウェイブ傾向が強まって、ほとんどDEPECHE MODEかDEVOのようになってます。しかしダンサブルな中にもどことなく今っぽいロッキンな肉感があり、曲によってはそれがかなり暴力的。じゃ巷のニューウェイブ/ポストパンク再興系バンドとどこが違うのかというと、圧倒的にダサさを煮詰めて煮詰めて真正面にフィーチャーしてるところだと思います。オシャレな「ダサかっこいい」などには留まらない、愛溢れるリアルなダサさの謳歌。いいんじゃないでしょうか。個人的にはえせハードロッキンな初期3枚くらいまでの作風の方が好きでしたけども。

【本日のレビューその2:GRAND PRIX「SAMURAI」】


こちらはダサいのを地で行くGRAND PRIXのラスト作3rd。THE BABYS(全盛期JOURNEYに加入して大活躍キーボード奏者ジョナサン・ケインを擁したイギリスの産業ロックグループ)とタッチの差で現れた人達で、マニアの間で名盤と誉れ高いこのアルバムではその後MSGに加入するロビン・モッコリーもといマッコーリーが歌っています。これがもう赤面シンセ満開のクサクサ・メロハー。FOREIGNERとかの旧世代に比べて明らかに一段階クサ度が高い。しかしまだ80年代前半とあって完璧に丸くはなりきらず、AC/DCみたいなリズムの無骨さも売りにしてたり、同時期のKANSASやYESみたいなプログレハードサウンドの影も時々さすのが面白い。にしてもこの、どこまで分け入っても果てしなくホワッと甘酸っぱいという感覚、同郷のSHYの名盤「EXCESS ALL AREAS」あたりを彷彿とさせるほどディープで上質。何でこれがサムライなのかよくわかりませんね。ともかくSHY、THE BABYS、SURVIVORなどの諸作と並んで、クサ好きなら是非とも押さえておきたい1枚でしょう。

  4月20日
本日の収穫、今池グレイテストヒッツにてオフコース「ワインの匂い」、CLUSTER「CURIOSUM」。近頃女性ファッション誌の表紙などで頻繁に目にする「愛され」というフレーズ、今はこうなのか〜くらいには思ってましたが、そのちゃんとした由来を今日「JJ」誌の街頭看板広告で知ってナルホドと思ったので書いておきます。何でも「『モテる』は卒業、愛されなくっちゃ」だそうで。スラッシュメタルのワンランク上のデスメタルみたいな、段階の問題だったんすね。う〜ん、愛されか…。着こなしだけで一方的に愛されたら実際、怖がるでしょう…。まあしかし「愛されたい」という欲求を漠然と持ってる人が多いんでしょうな。(ターゲットとなる読者層に関わる限りの)人の世の愛の感じられなさ、愛なる観念そのものの軽化ぶりを物語る現象である気がします。そこで個人の直感までパッケージ化して消費行動につなげようとする企業主導の価値操作社会の恐ろしさよ。百歩譲って愛をファッションにするのは勝手としても、本当、ハードロックTシャツをファッションにするのはヤメてもらいたい。RUSHの「POWER WINDOWS」の古着Tシャツに8000円の値をつけてたアホなリサイクルショップよ、そのアルバム(およびアルバムジャケ)が、輝かしいRUSHの歴史の中でどんだけ冴えない扱いかなんて知らねーんだろう!!

【本日のレビューその1:SCHOOL DAYS「CROSSING DIVISION」】


こんなところにもケン・ヴァンダーマーク。彼のクインテットのメンバーでGASTR DEL SOL、THE FLYING LUTTENBACHERSやCHEER-ACCIDENT、STEREOLAB、PORTASTATICほかの録音にも参加するトロンボーン奏者のジェブ・ビショップと、あとはオランダ人リズム隊2名というグループの2000年作。OKKA DISKなるシカゴのレーベルからのリリース。フリーインプロも軽くたしなみつつIMPULSE!前期コルトレーンやオーネット・コールマン、60年代中期ジョーヘンあたりの音を現代的に練り直したような、いわゆる90年代以降の正統派ポストバップとなっております。名義を使い分ける以上「こう名乗るときはこれでいく」みたいなテーマ設定があるはずですが、調性の逸脱や現代音楽的ポリリズムを忍ばせながらも基本的にはジャズ然としたスイング感をベースにするあたりが「学生時代」てことなんでしょうか。目新しいクロスオーヴァーなどは追究せず、ジャズの流儀の範疇で不良生徒やってる感じです。てことで普通といえば普通寄りなんだけどディープなジャズファンにはきっとこの方が、ケンさんのリード奏者としての何者たるかを見定めやすいことでしょう。ロックリスナーはTHE VANDERMARK 5からどうぞ。

【本日のレビューその2:CLUSTER「CURIOSUM」】


ジャーマン・アンビエント・シンセミュージックの草分けグループの81年作。81年といえばこの人達、昔からマイペースに模索していた音にいきなりニューウェイブと名を冠せられて、でもスゴイ流行っちゃってるしどうしよう、みたいになってた頃でしょう(想像)。そこへきてこのアルバム。「GROSSES WASSER」からの流れを汲んで更に単純化したジャケが物語るとおり、(試行錯誤を経て確信度が高まったがゆえに狙い撃ち可能となった)よりプリミティヴというかロービットなアプローチへと進んでいます。ドラムなどの生楽器は登場せず一切をシンセのみで表現していて、リズムパートとベース音の区別を敢えて曖昧にするかの如く狭めに密集した音色、ノイズなようでも何となくフレーズとして機能するウワモノ群の絶妙ないい加減さ、気にするまで気が付かないリフレインの存在、曲展開で作る親切な盛り上がりなどは完全排除しているのに終始集中力を引きつけるランダム性のコントロールなど、総じて「何だこれ?」という面白さが自由に(しかし最良の形で)転がっている。アルバムタイトルもそのへんをそれとなく言い表したものなんでしょうか。あんまり名盤とかいって取り沙汰されてるのを見たことがないからてっきり、惰性の産物的な中の上クラスの1枚かと思いきや、全然イイですわ。よーし聴くぞォ〜ジャーマンロック…などと肩肘張らず、親戚の小っちゃい子と一緒にニコニコ楽しんだらいいです。

  4月19日
▼すっかり物欲盛んな今日この頃、本日の収穫はサウンドベイ金山でDIO「INTERMISSION」「ANGRY MACHINES」、FUDGE TUNNEL「FUDGECAKE」「CREEP DIETS」、DEREK AND THE RUINS「SAISORO」、TRANS AM「TA」、以下4枚はバーゲン棚からRED HOUSE PAINTERS「RED HOUSE PAINTERS」、CELESTIAL SEASON「SONGS FROM THE SECOND FLOOR」、NEIL YOUNG「HARVEST」、CHARLES HAYWARD「SURVIVE THE GESTURE」。更にバナナ金山アスナル店のバーゲン段ボールからSHIHAD「SHIHAD」、THE ALMIGHTY「JUST ADD LIFE」。

【本日のレビューその1:SHIHAD「SHIHAD」】


またBURRN!読者に懐かしいネタですいません。デビュー当初確かカーク・ハメット(METALLICA)が「HELMETミーツKILLING JOKE」とかいって推薦していたバンドの、96年3rd。ニュージーランドの人達だったのですね。このアルバムでは全然ゴリゴリリフもインダストリアルな感触も消えていて、見事に緩めのポスト・ハードコア・スタイルに移行しています。うーん順当。鳴りを潜めつつも重厚なギターサウンドで、ダウンチューニングが時々ズシッと来る。ヴォーカルは男気系で割と上手い。これは何だかRIVAL SCHOOLSやBLUETIP、YEAR OF THE RABBITあたりの線ですなあ?またはBURNING AIRLINESが3枚目を作っていたらこんな風になっていたかも。普通にカッコ良くてびっくりしてます。味付け程度にニューウェイブっぽいシンセが入ってたりするのもカンサス系の最近の流れとぴったりリンク。10年前なのに。垢抜けてるんだけど何となく売れなさそうな一連のパワーオルタナに反応する人なら、これ相当な穴馬ですよ。うおー後半でFIRESIDEばりの熱血アップテンポチューンが。しかもその次の曲がどう聴いても今のTRAINDODGE!何でこんなもんがドイツのNOISEから出てるんでしょうか、一刻も早くASCETICかSILVER THREEから再発されるべき。中古では大抵800円以下で見つかるので発見次第買うべき。

【本日のレビューその2:CHARLES HAYWARD「SURVIVE THE GESTURE」】


昨日のHENRY COWに続いて連日カンタベリーです。今日はQUIET SUN、THIS HEAT、CAMBERWELL NOWのチャールズ・ヘイワードを。CAMBERWELL NOW解散直後の88年に発表になったソロアルバムを運良く500円で拾ってしまいました(裏ジャケにウォーターダメージ有り&カビっぽい?)。これが見事にCAMBERWELL NOWの延長線上。ニューウェイブとナチュラルに親和する直線的でループ感の強いリズム、場の感覚を狂わせる音響細工の数々や子供のような直感で綴られる若干アホっぽい(テレビゲームっぽい)シンセ使い、美声とはいえないトーンでモリッと歌い上げるヴォーカル。POPOL VUHと「ZERO SET」(メビウス/プランク/ノイマイヤー)とTHE SMITHの中間に発生した底無し穴とでもいうべきか。どんどん焦点の見えにくい作風になってる気もしますが、おっしゃ実験、と息巻いていた頃よりずっとパーソナルな表現をするようになったのは確かです。ヴォーカルのフィーチャー度からしても。単なる錬金術の痕跡ではなく、いち個人の詩情の薄皮にそれとなく収まった「作品」として出来上がってます。キャリアってのは積むもんですな。この人の過去の仕事を知らない人にまで、教科書の太字の重要項目として知らしめるべきアルバムかどうかは判りませんが、覗き込むとどこまでも深い欄外註の如し。

  4月18日
▼マルフク券行使の旅が続く本日の収穫、バナナ名駅店にてPSYCHOTIK WALTZ「INTO THE EVERFLOW」、LOVERBOY「WILDSIDE」。今日はレビューばっかり書こう。

【本日のレビューその1:PSYCHOTIK WALTZ「INTO THE EVERFLOW」】


昔からDISK HEAVENイチオシだったドイツの激マイナープログレメタルバンドの92年1st。10年近くその名前を気にし続けて、やっと買いました。レーベルはDREAM CIRCLE、知らん。プロデュースはラルフ・ヒューベルトとある。おお、あのMEKONG DELTAの人。で内容、FATES WARNINGやDREAM THEATERの1stあたりに感化された順当なるプログレメタル…と思いきやそれは1曲目だけ。あとはWATCHTOWERをデスメタリックにしたような変則的かつズドズド重いリフに妖しいハイトーンがひょろ〜んと乗っかる、かなりエポックメイキングな世界に踏み入っています。CONFESSORもしくはCYNIC的!こりゃNEVERMORE(直系!!)やCONCEPTION(3rdの頃)、CONTROL DENIED、ATROXあたりのスタイルを完全に先取りしてますね。何てこった。ちょっと向きを変えれば最近のTOOLみたいにも聞こえる。「表通りからは見向きもされないマイナーバンドが不器用ゆえに偶然やってしまった変な音」などではない、確固たるオリジナルなヴィジョンの提示です。MESHUGGAH景気で変なアングラメタルがにわかに各方面から脚光を浴びてきたところで、この人達も時代の闇からサルヴェージしてあげようじゃないですか。

【本日のレビューその2:ROTO「THE LOW POWER HOUR」】


メタルではないですがサルヴェージしようシリーズその2ということで。ローファイ寄りで実直なマイナーポストコアバンドを扱うワシントンDCきっての隠れ良心レーベル・RESIN(EL GUAPOを輩出してます)が2001年にひっそりリリースしていた盤。RESINはその後閉鎖してしまって、当然全カタログ廃盤なので、もはや救出も困難なのですが。でこのアルバム、何とQ AND NOT Uのジョン・デイヴィス&ハリス・クラー、EL GUAPOやANTELOPE他のジャスティン・モイヤーらがサポートとしてバリバリ参加してるんですな。レーベルメイトであるLANDSPEEDRECORDのメンバーも混じってるようです。音楽的には何ともRESIN的としか言いようがない、泥臭アメリカンフォークロック調の朗々としたヴォーカル&アコギとポストコアマナーでカクカク変則的にへし折れまくるリズムとが全然混じりあわないまま同居したような、世にも妙な塩梅。…シブい、シブ過ぎる。ダメダメな田舎版BEAUTY PILLなのか(褒め言葉)。いや、更に天の邪鬼というか、アルバムタイトルからして確信犯でナメきってる感じすらある(褒め言葉)。体温的にはカンタベリーのポップ系作品と近いものを感じます。安直なローファイではない、味わいの脱力。激しく玄人好みだが深い。

【本日のレビューその3:RICK DERRINGER「TEND THE FIRE」】


カッコイイ男でした、リック・デリンジャー。すっかり歳を取った姿も気になって随分前に購入した96年作。まあ買わなくてもだいたい想像がつくとおりの内容でした。持ち味である哀愁系男気アメリカンロックスタイルが更にルーツっぽい方向に回帰しつつ、一方で時流にあやかって軽くサンプルループやホーン隊を投入したりして、レイドバックしたハイクラス・アダルトの装いとなった、おおよそ今の商業ベースには乗らない音。いや、日本でいえば谷村新二の新譜を買い続けてるようなおっさん達に相当する層には普通に喜ばれるのかな。絶妙であります。音楽としての新しさはまるでないが、収まりは変に悪い。もはやこの男の何たるかを知り尽くしたファンが、憧れのアイドルの経年変化を噛み分けるためだけにある音。しかし何十年とかけないと絶対に辿り着けない境地。ある意味エクストリーム・ミュージックです。若い頃のような覇気を敢えて望まずとも、ドロドロな泣きのスローブルーズでは何ともディープなソロを披露してくれたり、ポーズだけではない優しさを漂わせる秀逸な出来のバラードもこなしていたり、やっぱり色んな意味で納得のいく内容に仕上がっている気もします。うむ、ヨロシイんじゃないでしょうか。

【本日のレビューその4:HENRY COW「LEGEND」】


買い替えついでにいわゆる名盤を改めて検証シリーズということで。レコメン、RIO、etc.、そういった全ての流れの明確なる原点であるこの盤に、今更何の言葉を向けましょうか…という感じですが、まあ何とか。このバンドの活動にまつわる思想的な側面の知識は頑張ってぐぐって頂くとして、ここでは音楽の方を。
 "Rock In Opposition"と聞いて凄く観念的でカタブツな代物が出てくるのではと身構えていた向きは、ポップなようで崩れきっていて、愛らしいようでタチの悪いこの1曲目の冒頭部に面食らい、あれよあれよと展開していく前衛ジャズロッキンなジョークの嵐にひれ伏すしかなくなってるでしょう。同じカンタベリーの大先輩バンドSOFT MACHINEからの影響がやはり窺えますが、商業主義に帰属することへの拒絶としての彼らの諧謔はしかし、ほんのり苦笑を誘うとともに思考停止の脳天に矢を射る。解体された異物群(SOFT MACHINEやクリムゾンっぽくはあるが明らかに意味性が寸断されている)を連ねて楽曲としてオーガナイズしてしまうこのポストモダン的感触は、精緻な構築性に挑むようになる以降のアルバムに比べていっそう顕著に現れている気がします。同じ階層上の何かと何かを引き合わせたりする作業ではなく、その音楽を成り立たしめる階層構造自体に変容をきたそうとする動きを「プログレッシヴ」なものと捉えるなら、このアルバムは間違いなく(現在に至るまで)最もプログレッシヴなロック作品の一つといえます。そしてこれらの内容を実演するメンバー各人の演奏レベルの高いこと。フリージャズや現代音楽をロックの枠組みで乗りこなしてこれだけ複雑な表現をこなすには必須であったでしょうし、ここまでやって見せたからこそ「反抗」として成り立ったとも思います。手探りの詩情たるプログレくらいがせいぜい「変なロック」の駒として認知されていただけの時代に、これをいきなり突きつけられた人々はどうだったんでしょうね…。だんだん文の着地点が見えなくなってきましたけども、複雑で頭脳的な音楽が少しでも好きだと思う方は、これを通るだけで他に買うCD(やLP)をグンと削減できるはずです。お早めに。

  4月17日
本日の収穫、バナナ本店にてHENRY COW「LEGEND」(オリジナルミックスリイシュー盤)、同栄店にてKING CRIMSON「IN THE COURT OF THE CRIMSON KING」(30周年リマスター)、LL COOL J「RADIO」(525円にて)。カウはリミックスが施されていた初期CD化盤からの買い替え、クリムゾンはこのシリーズのリマスターに買い換えようと思って旧盤をまとめ売りしたっきり実は数年間手元に無かったのです。失格モグリ・プログレッシャーでした、すみません。

▼3日続きで更新止まってましたが、それぞれ沢山書くことがあるので普通に一日ずつ項を分けて書きました。遡って見て頂けると報われます。ちなみに大まかな内容は、16日がFREE LOVEライブ観戦、15日がHAYMARKET RIOT名古屋公演(とDOIMOI出演)、14日がBEYONDS名古屋公演と収穫CDのこととなっております。ちなみにレビューは今日の分以外割愛しました。ますますもって日記のページなのかレビューがメインなのかよく判らなくなってますが、レビューがフィギュアで日記が小っさいガムの食玩一式てな感じでしょうかね。

【…レビュー書くつもりでしたが、前の3日分の日記を頑張り過ぎて精根尽き果てたので諦めます。明日以降また。】

  4月16日
▼というわけでまとめて読む方には時系列の逆になってしまいますが(あとで下から順に読んできた方は17日の日記をご参照下さい)、まずはFREE LOVEのライヴのリポートから。POSEIDON増田さんの計らいで行って参りました。プログレのアーティスト招聘およびレーベル業をやっているPOSEIDONさんとは、氏がハンガリーのKAMPEC DOLORESの日本ツアーを企画された際、このサイトで私が以前たまたま書いていた彼らのアルバムレビューをそのプロモーション用に使っていいか、といった話を頂いて、そこからPOSEIDON関連のサンプルCDをレビュー用に送ってもらったりするようになった、という具合の繋がりでございます。レビューに時々ある「POSEIDONシリーズその××」ていうのが何だろうとお思いだった方、そういうことでした。

▼で現在POSEIDONイチオシとなっている名古屋のサイケハードロックバンド・FREE LOVEのライブをリポートすべく、鶴舞デイトリップへ。セッティング中「ちょっと足、運んで下さ〜い」などと聞こえるので何かと思ったら、ハモンドを設置する足となるいかつい木製の台が物々しく運ばれてくるではないですか。よく見りゃステージ上にはどでかい木箱のレスリースピーカーが鎮座済み。ここで既にテンションが上がる。ひとしきりの準備が完了するとステージ暗転、ドヨーンと不穏なSEに導かれ、フェドインするように演奏スタート。執拗にループするリズムにのせてインプロを重ねてじわじわと盛り上げていく、正に70年代サイケハードの流儀。おお。左に鍵盤、右にギター(およびヴォーカル)、中央には新加入のはずのベーシスト氏がいきなりフロントマン的な存在感で堂々と弾きまくる。この方が実に躍動的なフレーズを軽々と繰り出していて、早くもバンドの強力なエンジンとして活躍しているようでした。

 ひと区切りついて始まった次の曲も8割方インスト。その曲とわかる土台やいくつかのパッセージだけは決まっていて、あとは場に即応して自由なペースで波を作っていくという、コンポジションとインプロヴィゼーションが境目なく共存するこのスタンス、ジャズやブルーズからの流れが生きていた頃のロックバンドには結構当たり前だったものですが、その最後くらいの世代になるRAINBOWあたり以降にもしハードロックが様式化せずにいたとしたら、こんな風に進化していただろうなあという像をFREE LOVEは体現している気がします。なのでレトロなようでレトロでない、血の通った現在形。あるいはギタリスト氏が敬愛するというMAGMAがよくやる長尺展開(「KOHNTARKOSZ」などで顕著な…)へのオマージュでもあるかも知れません。ともかくこのへんの感覚は音源で聴くよりグッとダイレクトに伝わりました。

 バキバキで高圧縮な音作りの会場のPA(特にバスドラが不必要に激重)のせいで演奏の細部までしっかり聞き取るのが不可能だったのは残念しきりですが、間違いなく全員「普通に上手い」以上のアピール力があるプレイヤーばかり。技を尽くたショウとしてのロックコンサートの昔ながらのスタイルをしっかと見せる。ドラムのソロタイムなんて去年見たDIO以来。オルガン一式をグラグラと激しく前後に揺さぶるパフォーマンスにはいつ転倒するかとヒヤヒヤしました(結局最後まで無事倒れはしませんでしたが)。オルガンはせっかく本物のレスリーを鳴らしていたのに、轟音に埋もれてしまっていたのが本当に勿体ない!悪条件にもめげず3曲ほどが演奏され、すっかり温まってきたところで「次で最後です、先に謝っときますけど長いです」といってスタートしたラストの大曲は、焦らず的確な歩調でゆっくりとボルテージを上げていってクライマックスに美しく着地する様が見事で、完奏しても前列寄りの客の多くは「もっとやって!」的な反応。凄いノリノリで熱狂していた外国人客の姿が印象的だったなあ。実際、もっとサイズが上のステージで1時間以上のセットをやっても全然モノにしてくれるバンドだと感じました。現在レコーディング中だという新音源が完成した暁には、更に大きいスケールでの活躍の場が巡ってくることを願って止みません。と最後はBURRN!のライター風にシメさせて頂きました。

▼終演後、ギターの柴田さんに挨拶に伺ったら、びっくりするくらい凄く腰の低いお方で、恐縮しきり。そのとき何気なく口にされた「あんなことしか出来ませんけど…」という一言が、昨日URTHONAのベースの松本さんが言っていた話とリンクして聞こえて何だか個人的にタイムリーでした。松本さん曰く、「今自分がやってる音楽は、自分のいいと思うものをひたすら濃く煮詰めてきたものだから、人から理解されないかも知れないし、売れて金になってそれで食うなんてことも考えてないが(あわよくばそうなってもみたいが)、それでいい。『趣味はゴルフです』っていうような意味合いでの趣味としてではなく、音楽はやっていきたい」とのこと。そういう確信と愛と自負(何だか大仰な表現ですが)ゆえの「これしか出来ない」という言葉なのだと勝手に受け取り、いい話聞いたな〜…と思いつつ帰路に就いたのでありました。

  4月15日
▼この日はHAYMARKET RIOT名古屋公演。元THE SKY CORVAIRのメンバー率いるシカゴのバンドです。元SWEEP THELEG JOHNNY〜現JUST A FIREや元CHECK ENGINEもいると聞いて期待度上がりまくり。会場はいつもの鶴舞KDハポンでした。

▼合計6バンドとあって18時過ぎには最初のバンド、A MILLION MILESが登場。TRISTEZAラインの美メロ・インストポストロックを標榜する感じで、ギターが2人にキーボードもいてなかなかアレンジが重厚。演奏も終始安定して巧い。どことなく泣きの質がUSインディっぽくなかったり、シンコペーションのキメがやたら熱かったり、向かって右のギター氏がかなりテクニカルな単音弾きをかましていたりしたので、あとでそのギター氏に「元メタルですか?」と訊ねたらやっぱり正解。「FEAR OF THE DARK」前後あたりから顕著になってきたIRON MAIDENのしっとりサイドをポストロック化したような雰囲気…とか言われても不本意かも知れませんが、優秀なGHOST & VODKAやPELEクローンは首都圏あたりにゴロゴロしてるんだろうから、このまま独自の道を開く方向で邁進してくれるのを個人的には激しく期待してしまいます。

▼2番手はDOIMOI、あっ自分らですな。今回は過去のライブをじっくり反省して臨んだだけあってか、やり終えて爽快と思える初めてくらいの演奏になったと思います。やらんとすることをちゃんとキャッチしてもらえていた様子の感想がいくつか返ってきたのも凄く嬉しい。どうもありがとうございます。

▼3番手は東京からTABLE。女性ドラマーを擁する3ピースで、洋エモっぽさと90年代前半のオルタナっぽさと和ものギターロックっぽさが不思議な具合に交錯する、総じていえば歌ものバンド。ワウでギョワワーと掻き鳴らしまくったりベーシスト氏は終始暴れまくりだったり、かなりロッキンな見せ方のステージ。女性ドラマー氏のカウント時の「いち、に、さん、ハイ」が相当ツボでした、ありゃズルい。

▼4番目はここのところ多忙な、名古屋が誇るインストプログレッシヴマスロックURTHONA(カタカナで発音するときは「ウサナ」と言ってもらいたいそうです)。最近結構立て続けに見てたのですが、今回はセットリストが結構変わっててまた新鮮な感じで楽しめました。いつ見てもドヨドヨあやしいドライブ感と、先読みを心地よく裏切る展開の妙がカッコ良すぎ。フリー混沌パートの比率がだんだん増えてきてる気がしますがそれも大歓迎。ただのヘンタイ指向じゃなくてあくまでアーティスティックにやってるのが日本では稀有なんじゃないでしょうか。「キレ」を追い求めて破綻しまくるバンドはいくらでもいても、こうやって「コク」を出すところまでいく者はそうそうおるまい。

▼5番目は今回のツアーの企画者でもある東京のBALLOONS。USツアー後どんどんダイナミックさを増してきてるとは思ってましたが、この日はまるで外タレの如く吹っ切れたパワフルな演奏で魅了されました。一緒に廻ってきたHAYMARKET RIOTの激烈なステージングに感化されたのか、これまでになくドラムの音がでかい。そして鋭い。ギター2本とベースも何の不安もなくガッチリ噛み合って、BALLOONSってこういうバンドかーと改めて思うような内容でありました。URTHONA同様セットリストに変化があった(以前よりアゲめの並びだった気がします)のも功を奏してました。演奏終了後、早速物販に飛びつく客が何人も。納得の光景です。

▼そして最後にメインのHAYMARKET RIOT。中心人物のケヴィン(G./Vo.)が一番小柄で、あとの3人がガッチリ大男。外タレのライブに行くとドラムのセッティングが異様なのはしばしばあることですが、今回はまた新しいケース。通常のスネアの高さくらいに設置されているのはイスで、それに合わせてタム、スネア、金物類など全てのスタンドを最大まで高くし(ハイハットに至ってはシンバルの上に軸の余りが一切出てない状態)、1クラッシュ1ライド、1タム1フロアのスカスカなセット。高いので叩く人間の姿が丸見え。んで、音がバカでかい!最初から最後まで一切のフレーズを(高速フィルも)フル10で叩きのめす豪腕。そしてオールドパンクっぽい無骨さとともに屈折した拍子割りもフレキシブルに混ぜてくる楽曲のひねくれっぷりはやはりライブでこそ映えます。初期FUGAZIをやや彷彿とさせながらも、P.I.L.っぽいダークなユルさなどは皆無で、かといって荒くれっぱなしではなく「攻撃する構えとしての引きモード」が随所に効果的に挿入されている(そこがかっこいい)。「ケンカの強そうな男」みたいな音です。

 ケヴィンはなかなかの親日家らしく、MCは結構日本語で頑張って喋ってくれました。激なショウをやる人が超善人だとなんだか嬉しい。多少楽器間の音量バランスがおかしかろうとお構いなしに演奏は続き(向かって左のギタリスト氏が終始でかめだった気がするけど本人達はあまり気にしてない様子でした)、アンコールも相当盛大に求められて、いい雰囲気の中で終了。私はTRAINDODGEより生音のでかいバンドを見ることは当分なかろうと思ってましたが、更にそれを上回りかねない、人間ここまでパワフルになれるのか…という演奏を間近で体感できてホント良かったです。それだけでも充分アミューズメントでした(無論楽曲のコクにも激しく感じ入りましたが)。これがKDハポンじゃなくて普通のバキバキPAなライブハウスだったら全然感動度が違ったことでしょう。ホントいい所ですKDハポン、料理や飲み物もおいしいし。

▼打ち上げではもっぱらURTHONAとBALLOONSのメンバーの方とよく話をさせてもらいました。今日のライブのこと、バンドをやりながらの生活のこと、シーンの現況や展望のことなど、落ち着いて深く話せたのがとてもよかった。私は言うても所詮メタラーなわけですが、ジャンルが違えど何か特定の方面を突き詰めてきた人との会話ってのは、考えの大枠の部分で凄く通じることが多くて楽しいものです。いい日になりました。

  4月14日
本日の収穫、バナナレコード・ジャズシンジケートにてSCHOOL DAYS「CROSSING DIVISION」(ケン・ヴァンダーマーク)、DEREK BAILEY「FAIRLY EARLY WITH POSTSCRIPTS」、V.A.「PISA 1980 -IMPROVISORS SYMPOSIUM」(エヴァン・パーカー他大勢)、SCHLIPPENBACH「THE LIVING MUSIC」「PAKISTANI POMADE」(ATAVISTIC UNHEARD MUSIC SERIES、FREE MUSIC PRODUCTION音源)、GATO BARBIERI「IN SEARCH OF MYSTERY」(ESP)、大須店でROTO「THELOW POWER HOUR」(DCの良心RESIN!Q AND NOT Uのメンバー二人参加の脱力ポストコア)、BEAUTY PILL「THE UNSTABLE LIFESTYLE」、CIRCUS LUPUS「SUPER GENIUS」。買い取りアップキャンペーン直後とあってまとめ売りの形跡ですな。

▼夜は昨年10月に対バンでご一緒したFINE LINESのテッキンさん(B.)が参加されているBEYONDSの名古屋公演を見にクアトロへ。クアトロの日本人ライブって初めてですが、客層がやっぱり違う。全員タワーの試聴機で見かけてもおかしくない感じ。いや、それでおかしい感じも判りませんが…。ともかく。1番手MO'SOME TONEBENDER、アルビニサウンドの影響下にあるような言われようをけっこう目にしていた割に、もっぱらベースになっているのはミッシェルみたいな日本好みのビートパンク風の威勢の良さだったように感じました。ハマショー世代のダンディ・スタイルにキメたリズム隊の風貌がシブい。時々THE JESUS LIZARDみたいなジャンキッシュな邪悪さが割って入ってくる場面があって、まんまと燃えました。2番手はBLOODTHIRSTY BUTCHERS。ひたすら轟音。ドラムすら聞こえないほどのギターとベースの轟音。しかしその熾烈な聴覚のシゴキの中に時々、70年代フォーク歌謡のような青臭い情緒もまた確かに見え隠れする。強引にまとめるなら「やりすぎ四畳半YO LA TENGO」といったところでしょうか。大音量ながらも全部が聞き取れるようなサイズの会場で見たら多分もっとオオッと湧き上がるものがあったんだろうと思います。轟音っぷりはバンド側の意図であるにせよ、クアトロの前音ってのは何故にあんなにグシャッとするものなのか…。ちなみに田淵ひさ子氏ってのは実に堂々とギター弾く人ですね。女性のロックギター弾きはサークルの後輩くらいしか見たことがないので、「そうだよな、女の人でもこうやって弾けるもんだよな」と何やら新鮮な感慨がありました。

▼そしてメインのBEYONDS。fOULの前身になったバンドの、テッキンさんとイナザワアヒト氏(ex.ナンバーガール)を迎えての復活バージョンです。最初はヴォーカル氏がハンドマイクだけでオリジナルパンク風の曲を2曲、その後はギターを手にしてもう少し雰囲気の変わった感じにシフト。あとで伺った話ではギターを持ってからの曲は全部新曲だったそうです。あれだけの曲数を既に溜め込んでいるとは精力的な。途中でアヒト氏お得意の「バスドラ4つ踏み+裏でオープンハット」パターンが遠慮なく炸裂するようになってくると、だんだん調子が上がってきてあのダカダカダカ!とワイルドなフィルも繰り出されるように。おーこれだ。しかしヴォーカルパートは何とも酔いどれな余裕感が漂っていて、何ともいえない体温をもったユニークなチームとして成り立っているようでした。若々しい噛み付きっぷりと熟ないぶし銀の共存共栄。一朝一夕では出ない味を堪能できました。

  4月13日
▼マルフク券がまだ使えることを思い出して本日の収穫、バナナレコードパルコ店でDISCOM「SMUGLO」(DECO!)、SHOSTAKOVICH「PIANO SONATA NO.1 / 24 PRELUDES」(NAXOS)、OMEN「THE CURSE/NIGHTMARES」(リマスターではない96年のカップリングリイシュー)。この取り合わせはさすがにディープだな…。

▼一昨日の日記で今月19日にあるとお伝えした鶴舞KDハポンでのシロクマライブ、5月19日(金)の間違いだったそうです。お詫びと訂正をば。ああHAYMARKET RIOT名古屋公演が明後日です、ポストコアを心で感じる御仁は是非!その後はゴールデンウィークに開催の鶴舞ロックフェスティバル、3日(水)の野外の方に我々DOIMOI出演させていただきます。こちらもよろしく。

【只今のBGM:DISCOM「SMUGLO」】


この欄には久々のエレクトロニカ。フランス産です。この人達とGELとが良過ぎるために、フレンチエレクトロニカってあんまり知らないけど勝手に好印象。さてこのDISCOM、平たく言えばエレクトロノイズのコラージュなんですが、ギリギリの線でまばらなビートを成しかけたり、何かのコードらしき響きにカスッてすぐ遠のいたりと、規則性のチラつく複雑系サウンドで非常に小癪。かなりハードな脳みそのマッサージになります。思い出せそうで思い出せない言葉、聞き取れないようで一瞬だけ通じる会話、みたいな感覚の音像化。機械的なようで意外とオーガニック、しかし冷徹に現象的。至極真っ当に取り組んでいて、愉快犯くさくはないあたりがMEGOものとは趣を異にするところ。リチャード・ディヴァインより多少オープンでコマーシャル(?)な感じ。ポヨポヨと丸くて楽しい音色を多用するようになる2作目「AUTOMOTO」の方がより聴きやすいし、達観してる気もしますが、アグレッシヴで実験的なこれはこれ。現代音楽や新しめの極北フリージャズ好きの方にも楽しんでいただける内容かと思います。

  4月12日
収穫はなし。久々に宅録しまくりました。もう5年くらいは使い続けている気がするKORG社のハードディスクレコーダー「D-12」、古くなるとボタンの効きが悪くなるのはこういう機械にはよくあることですが、ボタンの素材(多少弾力のあるゴムっぽいもの)が冷えて硬くなるせいか、冬場は特に、軟式ボールをあんパン状に変形させるくらいの勢いでグググと押してもまったく反応せず(何度かやっていると少しずつ改善する)、そのせいで録音作業自体に意欲が沸かなくなってたんでした。雨だから大学に行かない学生のように。もう暖かくなって今日はバッチリ効いてくれたので、そろそろ色々録ったりしようと思います。春っていいな。(花粉以外。)PCでのマスタリング作業用にフリーの「スペクトラムアナライザ」のプラグインを初めて手に入れてカルチャーショック中。音感を信じるのをやめてチューナーを使い始めるのと似た感覚。うーむ、今日もとりとめなしですな。

【只今のBGM:GEOFF FARINA「ALREADY TOLD YOU」】


先の名古屋公演で購入の品。SOUTHERNからいつの間にか(2005年リリースとなっている)出ていた新作EPです。この界隈の人の弾き語り作品というと、手狭な部屋のつつましい残響とともにすぐ近くにいる感じで収められていることが多いですが、この盤はどこぞのホールで録られていて、プレートリヴァーブ風というわけでもなく減衰の早い初期反射がショッショッと遅れて鳴るちょっと変わったプロダクション。ジェフの真横に立って無人の客席の方を向いて聴いたらこんな感じでしょうか。他に何もない完全独演なだけに、こういう空気感作りも表現のうちですね。曲は総じてしみじみと落ち着いた調子で、IDAのK嬢のソロに少し気取ったダンディズムを足したような雰囲気。陶酔的過ぎず(むしろ意外と淡々としている)、暗くなく、形ばかりの和みや無駄な油断を醸し出しもせず、いい声と綺麗なギターを必要充分かつ最低限に鳴らしてます。そういう意味ではKARATEの美学と相通じるところもありますな。もろにアメリカの古いスタンダード風の3〜4曲目の素直な優しさに泣ける。男が一人で泣くのにとてもいい。(私は実際涙することはありませんけども。)デューク東郷の休日みたいなささやかな1枚。

  4月11日
収穫はなしシロクマのライブの手伝いをしてきました。シロクマは、後日詳細お知らせしますが今月19日(水)にも鶴舞KDハポンにてやらせてもらえることになりました。ハポンはいい所。先日のジェフ・ファリナのライブのときに食べたココナツ風味の「トコナツカレー」うまかった。その前に同じ場所で15日(土)のHAYMARKET RIOT名古屋公演にドイモイですな。いずれも張り切ります、よろしくお願いします。

【本日のレビューその1:BUDGIE「DELIVER US FROM EVIL」】


未聴CDの山がほとんどメタルばっかなので開き直ってしばらくメタル続きにしてしまいます。興味のない方は読み続けるとそのうち多分メタルがとっても気になって仕方なくなりますから、よろしくお願いします。さて今日はツカミ良く、皆さんご存知のMETALLICA、彼らには長らく廃盤となっていたプレミアもののカヴァーEP「THE $5.98 E.P.- GARAGE DAYS RE-REVISITED」というのがありまして(現在は編集盤「GARAGE DAYS」に丸々リマスター収録)、世界中のメタラー共は少し前までそれを血眼になって探し回っていたものでした。NWOBHM(New Wave Of British Heavy Metal、パンクの反動で1980年前後にイギリスから来た若手バンドによる大メタルブーム)からハードコアまで相当マニアックなバンドが選曲の元ネタになっていたのですが、その中に名を連ねるのがこのBUDGIE。BUDGIEはイギリスのヴェテランハードロックバンドで、件のEPでは"Crash Course In Brain Surgery"という曲を取り上げられています。
 今回ご紹介するのはその彼らの82年作。時まさにNWOBHM熱最高潮、ヘヴィメタルと名を変えたハードロックがオーヴァーグラウンドに溢れかえらんとしていた頃。ということなので、エネルギッシュさとアホみたいなポップさが両立して何とも言えんピチピチの内容になってます。「HIGH 'N' DRY」までのDEF LEPPARDのような叙情コマーシャルロック色、更には「PERMANENT WAVES」以降のコンパクト&キャッチー路線RUSHみたいなプログレハードっぽさも若干混じって、いっやー最高ですね。勃興当初のヘヴィメタルがいかにロックとしての新しい響きを持っていたか、すっかり形骸をなぞるようになってしまった今のバンドでは決して持ち得ないようなそういう初期熱がばっちりパッケージされています。またこの頃のメタルは結構バスドラ4つ打ちのリズムパターンを多用するので、FRANZ FERDINANDだと思って若い人は全員聴いたらいいんです。エアギターで踊り狂って首を痛めるといい。うーん最高にクールである。もうすぐ来日のTHE FUCKING CHAMPSとかがイマイチ理解できないという人にも格好の資料となることでしょう。

【本日のレビューその2:BURZUM「DET SOM ENGANG VAR」】


ブラックメタルの何たるか、およびこのBURZUMの中心人物カウント・グリシュナックの幾多の武勇伝については、こんな所で再三説明するのも何なのでWikipediaはてなをご参照ください。その文中にもすぐに登場するこの名前、そうBURZUMは初期ノルウェーブラックの最重要バンドの一つなのです。今回取り上げたこのアルバムは2ndで、ひたすらノイジー一辺倒だった1stに比べると俄然邪気を増していてヤバ過ぎ。2分のイントロに導かれて始まる冒頭曲(CDのトラック表示上は2曲目)アタマの強烈に冒涜的な短四度リフ…そのプリミティヴな破壊性と脱線性において大昔のVOIVODあたりと線でつなぐことも出来ますが、もっと異様な何かが漲っていてちょっと本気で怖いです。ブラックメタルのトレードマークともいえるブラストビートはあまり炸裂させず、代わりに70〜80℃で沸騰しきらない湯のような悶々とした雰囲気の中でホギャギャ〜!とわめきまくる断末魔ヴォーカルの邪悪さ、および呪詛じみたギターリフがひたすらアピールされる。もうこんなの全然きょうびの変態爆音フリークアウトポストコアや極悪激情メタルコアの世界ですよ。しかもフォーマット化された「極悪」「狂気」などではない真性のネガティヴィティの結晶。THE LOCUST、ORCHID、ORTHRELMやTHE FLYING LUTTENBACHERSあたりが好きでブラックメタル未体験という方は、死ぬまでに必ず。

  4月10日
収穫はなし。天気が悪いのでレビューでも書きます。

【本日のレビューその1:MEMENT MORI「LA DANSE MACABRE」】


HOLY TERRORやOMENばかりがカルト・メタルではない、元CANDLEMASSのメンバーによる新バンド…と地味な紹介でデビューするも、肝心の看板巨漢シンガーであったメサイア・マーコリン(NAPALM DEATHのシェーンばりに凄い風貌)が早々と脱退、その後任にマーク・ボールズを頼りなくしたようなTAD MOROSE(SAVATAGE+DREAM THEATERタイプと言われて当時の「ピュアメタル」ファンからボチボチの支持を得ていたスウェーデンのバンド)の元ヴォーカルを入れて起死回生を図り、しかしBURRN!にはあっさり70点台を付けられたというこういうアルバムこそ、時代の闇に本当に埋もれてしまって二度と出てくる道のない真のカルトメタルなのである!と非メタラーの方には未知の外国語同然の文章ですが、我慢して続きを読む必要もありません。興味ないよという方は次行って下さいまし。
 さて残っていただいたメタラー諸兄、このアルバムはなかなか濃いですよ。1曲目イントロが完全にインギー展開でどうしようかと思いますが、すぐにグッとテンションを落としてきて、妖しい中近東モード全開の何とも言えぬサイバー裏様式美ワールドに突入。件のインギーの"Pyramid Of Cheops"やDIOの"Egypt"を少々プログレッシヴにしたみたいな曲ばっかり、これでもかと並んでます。要するにTAD MOROSEと丸かぶりですね。その路線でクラシカルなギターをかなり強調してくるので、何かちょっとSYMPHONY Xみたいです。更にゴシック/ドゥームも視野に収めるかのようなネチっこいこの耽美性、これをもっと容赦なく重くしたら(そしてチープなシンセを減らしたら)今のNEVERMOREのようにもなるでしょう。気付かれなかっただけでなかなか時代先取りな内容だったみたいです。芸のないメロスピやIN FLAMESの猿真似溢れる昨今ではあまり見かけない、濃密なロマン性、アート性がいいじゃないですか。

【本日のレビューその2:JIMMY PAGE & ROBERT PLANT「WALKING INTO CLARKSDALE」】


これ100円だったら買えばいいでしょう。意外と、いや結構良いです。ロンドンのABBEY ROAD STUDIOSにアルビニを呼びつけて録った(アルビニも懐を潤すために受けたという)、言わずと知れた大御所コンビの、ZEPナンバーのアンプラグドライブを収めた94年の「NO QUARTER」に続く完全新曲オンリーの98年作。最近のRUSHにも通じるオールドロックのオルタナ的再解釈サウンドと、ギリギリでフラつくジェフ・バックリーみたいな神懸かり感が合体して、何とも順当な「ボンゾ抜きZEPの新作」に仕上がっています。ジミー・ペイジの世界観ってのは本当に一貫してますね。ルーズなようで挑発的な絶妙なリズムのヨレ、大英帝国の風情とはおおよそ異なる中東〜中央アジアっぽい乾き方などなど。一方のロバート・プラントは、もう若かりし頃の張りや艶っ気は失いながらも、もはや孤高の貫禄でヘタなのか凄すぎるのか判らん(最後の曲は壮絶…)。ともかく、譜面では説明しきれないような空気レベルでの駆け引きが凄く重要視される感覚は、ロックにおけるブルーズ的インプロヴィゼーションがまだリアルだった時代の人ならでは。新しい人でこういう風にやれるプレイヤーはなかなかいませんね。リズム隊はまあ地味。特にドラムは、この二人のバックにいるというだけでパワー不足に聞こえるから可哀相。そしてボスンボスンと響くアルビニサウンドですが、演者が演者なだけに少々質素すぎじゃないかいという気もします。普通にアンディ・ウォレスとかにしておけば良かったのに。とまあ色々ありつつも全体としてはかなり有り難い内容です。300円以下で年中どこでも買えますから、思い立ったときにどうぞ。

  4月8−9日
▼8日は元KARATEのジェフ・ファリナのライブを見にKDハポンへ。月1回以上は行ってるなここ。開場10分くらいの時間に着いたら、先にいる客1名。といきなりジェフ本人!30分くらいかけて10人程度に増えたと思ったら、そのうち4人は前座1番手・YORUのメンバーでした。内容はTOWN AND COUNTRY+DIRTY THREE+KLIMPEREIといった趣きの和みチェンバーミュージック。アルト、ギター×2(アコギ/エレキ)、コントラバスもしくはトランペット(の短いやつ)という編成で、素描的なインスト小曲から歌入りのものまで。ハポンはこういう生楽器の響きが似合います。日本のこういうバンドは根底にどこかフィッシュマンズの空気が嗅ぎ取れるもので、多分この人達も好きそう。名前すらこの日初めて聞きましたが良かったです、かなり。序盤ずっと一定の音程でノイズが乗っていて、相当DIYなアコギまわり(ピックアップをセロテープでペタッと引っ掛けていた)ゆえにそうなってしまっているのかと思ったら、別のところのケーブルの問題だったようです。途中でクリアされてあとはキレイに聴けました。

▼2番目はCLIMB THE MINDのギターヴォーカル氏が一人でやってる果てな。何のエフェクトも使わないアコギ1本勝負。際どく折れて美しく着地する、風変わりなアルペジオを一弦一弦丁寧に弾きつつ、ヴォーカルは正にイースタンユース吉野氏みたいな無骨激情タイプの人がしっとり歌ったらこうなるというイメージそのまま。いい意味で不器用というか、高倉健というか、そんな感じ。どの曲もかなりゆっくりしたテンポながら、その時間感覚に自然と巻き込むような表現の確かさがありました。何に似てるとも言い難い世界観をバシッと提示していたのは偉業ですね。

▼3番手はOGRE YOU ASSHOLE。ハポンで見るのは久し振り。もうそろそろ両手の指で足りないくらい見てる気がします。この日はリラックスした感じで安心の演奏。会場の小ささやメンツ的なとりあわせに考慮してか、ドラマー氏は心なしか抑え目の音量で叩いていたようにも感じましたが、雰囲気は損なわないまま上手くコントロールしてました。名古屋近辺で最近本当に引っ張りだこなので、この際たまには「今日はアンプラグドで…」とか色々ヴァージョン違いを試してみたら面白いかも?そんな姿をちょっと見てみたい気も勝手にしつつ。まあともかくマイペースで邁進していってくれることでしょう。

▼そしてメインのジェフ・キレイな仕上げのアコギ(ガット弦!)を手に「もうちょいギターの音上げて」とかPAとやりとりしてると思ったらそのまま演奏に雪崩れ込む。造作もなくパラパラ〜と5本の指で見事なアルペジオを鳴らしながら、あのヴォーカル。映画のビデオをパッと再生し始めたかの如く世界が変わる。うおお、海の向こうのプロはこれだ。達者な弾き語りの人って、ギターと同化したように聞こえる人やら、ギターを相棒たる別の生き物にしてしまう人やら色々ですが、ジェフは後者。時にハンモック、時に故郷の土のようにアルペジオを敷き、その中で歌う男一人、みたいな、大道具兼役者ってな佇まい。で曲は、SECRET STARS時代のようなインディフォーク調とも、ソロ3rdのような伊達男ジャズ風とも違って、トラディショナルなフォークブルーズやカントリー、20〜40年代のスタンダードもの("Georgia On My Mind"的な…)にひとひねり加えたようなスタイル。アメリカのおっさんそのものですな。KARATEの音楽性は、ポストコアにジャズ・ブルーズ色も交えて云々、みたいな言い方をよくされてますが、むしろこういうアメリカンルーツミュージックが素でバックグラウンドにある人なのだと確認。

 この感じならジッと静かにして神妙に聞き入るよりも、「WALTZ FOR DEBBY」よろしくみんなグラスの音くらい立ててのんびり楽しんだらいいのにと思いながらまあ大人しく聴いていたら、最前列でバッチリ酔った客の一人が途中でシャックリを連発し始めて、ジェフも客も温かい笑い。「ああ、出るよねシャックリは。ほれ、深く息吸い込んで、…止めて、飲み込む。これで俺は効くんだけど、まあ判んないな」みたいな親切な喋りも挟んでくれました。いい人だ。手短な曲を立て続けにたくさんやって(IDAもカヴァーした名曲"Shoe-In"は結構序盤の方であっさり披露されました。歌メロがかなり変わっていた)、アンコール要求もなかなか盛大なものが起こり、場内かなりいいムードになって終了。この内容にKDハポンはベストマッチでしたな。

▼8〜9日両日の収穫、まず8日は物販で購入のGEOFF FARINA「5 SONGS」「ALREADY TOLD YOU」、本日9日はヤマギワソフトでSIMON CHASE「THE WITCH DOCTOR」(カナディアンAOR、96年)。

【本日のレビューその1:LIBERTY ELLMAN「TACTILES」】


ヴィジェイ・アイヤーのアルバムでも弾いていた新鋭ギタリストの2003年のリーダー作。リリースはロゴがかっこいいPI RECORDINGS。これがまた落ち着かない変拍子アウトジャズの応酬で実に冴えてます。どこかボタッ、ボタッと不敵にタメる引き気味の構えで、調性不明、拍の区切り不可、しかし圧倒的に揺るがぬ整合感も持つ。このキメキメ・カクカク感はマスロック的ですな。ノイジーな破綻劇も模擬東欧風の民族色もなく、「いわゆる」フュージョン的な小賢しさもなく。空気感はTRICOLORとかに近い。変則的ながらかなりドス黒いダブ的ファンクネスが根底にあって、そのへんはSPACEWAYS INC.にも通じます。先述のタメっぽいノリ、あるいは「どうしようもなく変なパッセージを訥々としながらも言い切る」この感じはオーネット・コールマンの遺伝子なのか。実際は無理だけど何となく踊れる気がしてしまいます。ビル・フリーゼルとかに感化されてると思しき音色勝負の若手が多い昨今、意外にジャズ然としたベタな風情を匂わせてくるこのギターもいいですなあ。聴きようによってはSLAPP HAPPY(カウとの合体バージョン)+KARATE。難解なようで割と明快、これはロッカーでも全然楽しめます。

【本日のレビューその2:GILGAMESH「ANOTHER FINE TUNE YOU'VE ME INTO」】


さてこちらはアプローチが逆転してロック畑からのジャズ的描写です。カンタベリーのほのぼの探検隊的ジャズロックの名バンド・GILGAMESHの78年2nd。レトロ近未来の高性能オモチャといった風で最高の内容だった1作目と比べると、ポッポッと起き上がってくるような鮮度は多少薄まったものの、程よくまったりと煮崩れて牧歌的&諧謔的なカンタ・フュージョンの美しい形へと収まっております。ジェフ・ベック「WIRED」から一切の緊張感をズッポリ抜いたかのような。この口笛みたいなホポホポいうシンセの音色(2曲目後半ほかで登場)なんかアホ和やかで最高。かわいいプログレといったらGILGAMESHをおいて他におりませんね。アーチャー・プレウィット(ex.SHRIMP BOAT〜THE COCKTAILS、現THE SEA AND CAKE)が体現するような屈折型ビンテージッシュ・ラウンジの世界と被るところも結構ある気がします。1stともども買いということで。

  4月6−7日
本日7日の収穫、御器所ホーリーハウスにてTHE ALMIGHTY「POWERTRIPPIN'」(ドニントンでのライブを収めたボーナスディスク付き2枚組外盤!)、DAWN「NIER SOLEN GAR NIFER FOR EVOGHER」(IN FLAMESの名作EP「SUBTERRANEAN」で歌っていたヘンケ在籍)、DIVINE SIN「THIRTEEN SOULS」の3枚を中古で、WHIPLASH「POWER AND PAIN + TICKET TO MAYHEM」を新品で、向かいのディスクヘヴンにてGRAND PRIX「SAMURAI」。久々にメタルオンリーの買い物も気持ちがいい。ホーリーハウスは何だかしばらく行かないうちに充実してました。全体的に値下げして、普通の中古盤屋ではあまり見かけない品もズラズラと。何の有り難みも感じずに「フーン70点台ね…」とスルーしていた90年代のB級無名盤の数々が、気が付きゃ廃盤・レーベル閉鎖などによって入手が難しくなってきてるじゃないかと今更になって気付いて、焦って色々買ってしまいます。メタルに限らずどこの世界も、マイナーバンドのCDは専門店で「何々タイプの新人、ベストセラー!」とかいって盛り上がってるうちに買っとくべきですね。

【本日のレビューその1:THE ALMIGHTY「POWERTRIPPIN'」】


お〜懐かしい。80年代後半のハードロック界にバーッと上がったオールドロック回帰熱の中から登場した、MOTORHEAD的な荒々しい豪腕感も併せ持つイギリスのバンドTHE ALMIGHTY。93年リリースのこのアルバムではまんまとグランジのあおりを受け、ALICE IN CHAINSやJANE'S ADDICTION風のスタイルに呑まれてしまったんですが、これが全然良い出来。当時も結構評判良かったと思います。いまひとつ本格的にグランジぶれてないというか、妄想でやってみてる感じが、逆にもともとの個性も生き残る結果になって、ガッツリ重くて多少ひねくれつつもヴォーカルを主軸に堂々としたメジャー感(80年代の空気で育ったHM/HRバンド達におしなべて備わっている特長です)で支えられるパワー・オルタナと化しているのです。なんと理想的。どんどん赤面直球ロックたることを辞さなくなってる最近のFOO FIGHTERSを平気で好きな人には激推し。PROBOTとの中間だと思って聴けば最高、のはず。(あんまり非メタル耳な人に責任取れませんが…。)ロックにはパワー!という信条の人なら黙って買えばよい。ズボズボ太いプロダクションはANTHRAXのジョーイ在籍後期の名盤「PERSISTENCE OF TIME」を手掛けたマーク・ドッドソンによるものでこれまた良い。あーやっぱり買うしかないですね。
 ちなみにボーナスディスクの方、これは多分同一の内容のものが日本盤の初回版についてた気がしますが、外盤でついてるのは今日初めて見ました。選曲は1st・2nd中心で、フィードバックのトラブルもそのまま、正真正銘のライブパフォーマンス。音源の5割増でつんのめるドライブ感が強烈!割れんばかりの歓声(割れてる)と乗っかりあってテンション最高潮です。ファンの方は2枚買いになっても持ってた方がいいかも知れませんよ。

【本日のレビューその2:PRIDE & GLORY「PRIDE & GLORY」】


上のTHE ALMIGHTYのようなタイプの作品を思うときに最近何となくその影を意識して以来、きちんと聴きなおそうと思い続けていたのがこのPRIDE & GLORY。言わずと知れたオジー・オズボーンの相棒ザック・ワイルドが率いたバンドの唯一のアルバムです。ザックのパーソナリティともいえる骨太サザンロック趣味と時代の要請(70年代的グルーヴ、ラフさ、ヘヴィネス)が見事に結びついて燦然と輝く大名盤となったはいいが、日本でこれを買ったのはヤングギターやBURRN!を読んでるヘヴィメタルファンで、GREATFUL DEADやMOUNTAIN(南部じゃないですが)みたいな世界観に心酔出来る者も少なかったのか、はたまたオジー人気で無駄に売れ過ぎただけなのか、すぐに中古市場の常連となり世間からは「あ、あのハードロックくずれの安レコ定番ね」みたいに思われる羽目になってしまったこの作品を、見直そう!とりあえず、プロダクションが良い。部屋鳴りを生々しく拾ったカッチョイイ音作りで、メタル特有の聴きにくさはここでクリア。曲によってはギターがセンター一本のみという潔いミックスも相俟ってかなりリアルな原初的アメリカンロックの衝動が描かれています。次、ザック君は歌が上手い。桑田佳祐が思いっきりマッチョになったような声をしています。そして、速弾きはあんまりしません。やっても高速ペンタ程度なので「うわ〜メタルの速弾きや…」という寒々しさはありません。うぬ、本題はそんな末梢的なものではない。「メタル野郎が横好きで真似る70年代テイスト+グランジ余波」なんてものとは一線を画す、デッド、オールマン、MOUNTAIN、etc.といったラインの音をよく咀嚼した上でグランジ対応型のラウドな今様ロックに再構築された楽曲の数々、そしてそれを肉付けするグルーヴィンで泥まみれな男三人の腕っぷし。時にはしっとりアコースティックで優しい風情を歌い込んでくれたりもします。これは普通に昔のアメリカンロックを好きな人が「どこぞから出てきた優秀な新人」として聴いたらいい。あるいは今流行りの何々リバイバルのつもりで中高生が聴いてもいいし、GOLDENやCASH MONEYみたいなもんと思ってその手の人が聴いてみるのもいい。一番似合う言葉は「絶倫」。相場は500円。まあ買うしかないですな、これも。終盤に収録の"The Wizard"(BLACK SABBATHのカヴァー)で全員失禁。

  4月5日
収穫はなし。昨年暮れあたりに書店でたまたま見つけ、後日その筋から定評のある名著だと判って購入したデレク・ベイリー「インプロヴィゼーション」を数日前から少しずつ読み始めているところ。論説調の英文のこれまた堅い日本語訳だからとりあえず読解するだけで相当ハードル高いわけですが、即興に限らず演奏行為全般に関して、意識が深まるような内容(頭の悪い表現しか思いつかずすいません…)に、興味深く頁を進めております。あっ、それだけです。

【只今のBGM:ZAKARYA「SOMETHING OBVIOUS」】


ジャケのこの水平ゴールド線といえばTZADIKの「RADICAL JEWISH CULTURE」シリーズ。2003年リリース、アヴァンクレツマーグループ・ZAKARYAの2作目です。アコーディオン、ギター/エレクトロニクス、ベース、ドラムというカルテット。ギターがかなり派手に歪んでて、時にはタッピング混じりのハードロッキンなソロをブチかますことも。インプロ主体というだけでイディオム面でのジャズ色は薄く、どっちかというとエキゾチック・準ハードロッキン・ポストロックと呼びたい雰囲気。東欧の田舎版TRANS AMか、笑い過ぎのKAMPEC DOLORESか。KNITTING FACTORYくさいな〜と思ったら全然関係なくてフランスのバンドでした。なるほど、フランスにはKOURGANEがいたことを思うと納得。ロッカーには比較的聴きやすい出来ですので、CALEXICOあたりの延長だと思ってどうでしょうか、「RADICAL JEWISH CULTURE」入門。ここはひとつ。

  4月4日
本日の収穫、カイマンから届いたINCANTATION「BLASPHEMY」。こりゃー何ともblasphemous(冒涜的)なジャケだ。やっとINCANTATION全作品コンプリート…と思ったらあと1枚、96年に出たのがあるらしい。アマゾンで検索したらマーケットプレイスで引っ掛かって、アメリカから売りに出されてるんだけど、日本円にして現在6,666円。完全に呪われてますな。

【本日のレビューその1:WEASEL WALTER/FRED LONBEG-HOLM/JIM O'ROUKE「TRIBUTE TO MASAYUKI TAKAYANAGI」】


中古盤屋のジャズコーナーでとんでもないもの拾いました。GROBなるレーベルから簡素な紙ジャケで出ている、日本のフリージャズ〜ノイズギター第一人者・高柳昌行のトリビュート。やっているのがTHE FLYING LUTTENBACHERSXBXRXを率いるドラマーのウィーゼル・ウォルター、GOD IS MY CO-PILOTからSUPERCHUNKまで絡むくせものセリストのフレッド・ロンバーグ・ホルム、皆さん大好きジム・オルークの三人!それぞれ「necrodevourer(死体食い)」、「sado-immolator(加虐性愛焼殺人)」、「lycanthrovampyr(オオカミ男吸血鬼)」とサブクレジットが添えられていて、ブラックメタル風のパンダメイクまで施す始末。中身はま〜残忍極まりない高圧縮・超高速ノイズインプロ。31分・11分・4分・15分・12分の計5曲で暴虐の限りを尽くす。しかしただの不快なデタラメなどではない、強固な精神を背負った言語表現として機能しているのが判るはず。ウィーゼル師はドラムでは飽き足らずギターのオーヴァーダブ、エレクトロノイズ(最後のトラックは延々UFOの離陸音みたいなノイズのみだったりする)もやってます。そこはかとなくエクストリームメタルを経過してる空気が漂うあたり(直接的な模倣/再現はないですが)、本家高柳氏とは若干色合いが違ってそうですが、この手の音楽を誰かに似せてやっても全く意味はないどころか恥ずべきことなので、そういう点でこの思い切った再構築にはかなりの敬意が感じられます。あ〜何10分と気持ちよく聴いてます。最高だ。屋外で座ってライブ見たい。

【本日のレビューその2:DFA「WORK IN PROGRESS LIVE」】


POSEIDONシリーズその25。90年代後半にイタリアから登場した若手プログレバンドの、2000年に催された「NEAR FEST」というプログレ系フェスでのライブを収めた盤。雰囲気的にはDREAM THEATERのヘヴィ寄りでない部分("Learning To Live"インストパートなど…)を思わせる、シンセ大活躍のテクニカル変拍子路線が主でしょうか。昔ながらのイタリアンプログレっぽさはその気品と熱気のみを受け継いでいて、深みや懐かしさもありつつ駆動力は若々しい、きょうびの新人としてはとても良いバランスだと思います。緻密なアンサンブルと凝った場面展開で結構ストリクトな作りの楽曲ですが、盛り上がりの山谷の演出の巧妙さで、10分を超すような大曲(6曲中4曲がそう)でもスリルが途切れることなく聴き入ってしまう。個人技の派手さよりムード作りの上手さで魅せるのがまた好印象。プログレメタルから半周してまたオールドプログレに帰ってきたような、いそうでいなかったタイプのバンドなのでは。

  4月3日
本日の収穫、POSEIDONさんから送って頂いたROUNDHOUSE「3-D」、あとSTEFANO PANUNZI「TIMELINES」と壷井彰久氏参加音源のサンプラーをCD-Rで。今一番熱中してしまっているものは新ケータイの待ち受けにプリインストールされている「アデリーペンギン」のFLASHです。このページ下方で少しだけその姿を確認することができますが、動くところはヤバイです。遠くない将来にブレイクすること必至です。巷に跋扈する中途半端なゆるキャラ共はハナコアラとこれに早く駆逐されておくれ。

【本日のレビューその1:ENTHRONED「CARNAGE IN WORLD BEYOND」】


BLASPHERIONが縁で買ってみたベルギーの古株ブラックメタルバンドの2002年作。リリースはオーストリアのNAPALM RECORDS。GORGOROTHばりの頑固一徹スタイルで激シブです。随所にSLAYERや、もっと前のNWOBHMみたいなオールドスクール臭がモワ〜ンと漂うのも魅力。MARDUK(スウェーデン)とかよりもう少しクサい感じ。ちょっと本場から離れた国のバンドだととこう、影響源の音楽がある程度デフォルメされて出てくるから、極上の本物だけを…みたいに思わずに接すればなかなか楽しいものです。演奏力や気迫では全然ノルウェー勢に負けてません。鮮やかにドパドパ飛ばしまくるブラストもお見事。ホギャー!とわめく高音デス声はなんか弱々しくもありますが、その必死な感じがイイ。ちょっとSOULGRINDの人に似てますかな。プリミティブ過ぎずメロメロ過ぎず、ブラックメタル版KATAKLYSMみたいなバンドをお探しという方にはベストチョイス。

【本日のレビューその2:PEKKA POHJOLA「SPACE WALTZ」】


POSEIDONさんに送って頂いた品ですがこれ普通に自分が中古で発見したとしても買ってましたね。とりあえずパート24ということで。フィンランドのジャズロック〜プログレ界を代表するベーシストのペッカ・ポヨラの85年作です。長いキャリアを通じての数多いリリースを整理するためか、その名もPOHJOLA RECORDSなんてところからのリイシュー。85年のペッカとはこれいかに…と想像がつかないまま聴いたのですが、のっけからキラキラした胸キュンデジタルシンセの猛烈フック。うわー。これはASIA、IT BITES、KANSASやCAMEL(いずれも80年代に入ってのポップ化以降)あたりのスタイルに更にボブ・ジェームスみたいなフュージョンっぽさも若干加味した、夢の国のシンフォ〜ポンプロックですな。日本のLU7をよりメルヘンにしたような雰囲気ともいえる。そう、このシンフォプログレとフュージョンが渾然一体となった感じは正に、日本のプログレッシャーの好みにばっちりストライクなんじゃないでしょうか。LU7といいアイン・ソフといい。その線をとことん愛好される向きは、是非ともお見過ごしのなきよう。

  4月1−2日
▼しばらく更新怠けてしまいました。先月31日の収穫はSTIFF SLACKにてRETISONIC「LEVITTOWN」、THE LIFE AND TIMES「SUBURBAN HYMNS」。で同じく31日、栄タイトロープにてSHIPPING NEWS名古屋公演見てきました。

▼最初は2年振りくらいにお目にかかるPARKLOAM。知る限りでは初期BOILERMAKER風の変則ポストコアから硬質ミニマルスタイルに数年のうちに変化していたので、今はどうなってるのか結構気になってましたが、徹底的に削ぎ落とされたファンクネスでアピールするバンドへぐぐっとグレードアップしてました。TURING MACHINEやUIラインのミニマルポストロックとHERBERTみたいなクラブミュージック、「IN A SLIENT WAY」以降の混沌マイルスの印象がいずれもイーヴンな感じの音楽性になって、トリオアンサンブルの組み合い方もより緊密で巧妙なものに。特にベースの自由な立ち回りが楽曲に幅を与えているようでした。ちなみにドラムの中井さんはレギュラーグリップ(左手を裏返しにするジャズで一般的な握り方)に変わっていた!ともすれば分かり辛くなってしまう意図的なズレや虫食い的ブレイクといった複雑な表現も普通にクリア。54-71による啓蒙もそろそろ定着してきたところで、この感じで音源作ったらイイ流れになりそう。

▼2番手はURTHONA。この日記では再三登場してるのでもう新しく書くこともないんですが、いつもどおりグレイトなライブでした。この日はドラマー氏が帽子被ってなかったのが珍しかった。名古屋では来月もHAYMARKET RIOT、THE USA IS A MONSTERなどのオープニングアクトとして見る機会があるので、未体験の方はお楽しみに。

▼3番手は東京からZ。往年の日本のエモ/ポストコア大物メンバーによる新バンドということでかなり(メインのSHIPPING NEWSばりに)期待を集めてたようです。大筋では54-71とABILENEの中間のような金管入り変拍子ストイックポストコアながら、やはり年季の入った鋭利で強靭なグルーヴが圧倒的。恐るべき精神統一、脊髄に直接張り手を食らうかの如くグイグイ来るプレッシャー。経文と狂言の紙一重な雰囲気で韻の似た熟語を畳み掛けるスポークンワードスタイルのヴォーカルは、好みの分かれるところかも知れませんが、外人はまず好きそう。こういう日本ならではの世界観をしたたかに映すバンドが増えてきた最近の傾向はいいなあと思います。

▼そしてメインのSHIPPING NEWS。RODAN〜JUNE OF 44という、SLINT以降のルイヴィル暗黒ポストロックの最重要バンドを動かしてきたジェフ・ミュラーの現在形バンドです。大抵重苦しげに囁いているかブチ切れて絶叫しているかという人なのに、セッティング中は終始凄く穏やかな笑顔。ドラマー氏(山男風激ヒゲ)と新加入のベーシスト氏(激眉毛+カーリー長髪)だけはどこぞのドゥームメタルかいという風貌でしたが。曲が始まると途端に空気が変わって、何というか、余韻や空白までもが完璧に「演奏」されている。次の音が鳴るまでの異様な緊張。ギターの淀んだアルペジオが小さく波を立て、そこに重ねて低くささやくジェフ…ときたらそりゃシビレます。音源で聴いた感触より更にズッシリ重々しく、個人的には"Welcome Home"や"One"みたいな静かな曲でのMETALLICAを思い出したりも。(メタルですいません。)慎重で繊細な盛り上げ方は決して安易な「病的さ」「滔々とした轟音」の垂れ流しではなく、佇まいは「語り部」でした。強烈に世界のあるバンドを見るとそう思う。

 他の公演地での感想で「人柄が良い」「紳士的」といったものをよく見かけていたのですが、本当に凄くそんな雰囲気の人達で、MCも必要以上にゆっくり喋ったりはしないものの変にリアクションを欲しがったりせず、しきりに共演バンドやツアー主催者への感謝を口にしていました。軽いジョークも言っていた気がします(チャック・DとPUBLIC ENEMY…とか何とか連呼していた)。あと彼らの出番ではアメリカから同行してきたPAに代わってたようで、バスドラのトレブルがピチピチ言わないナチュラルな音作りと良好なバランス設定が非常に快適でした。1曲ずつがじっくり長いためか、次で最後の曲と告げられたときにはえ〜もう?という感じ。演奏を終えて裏に戻って、SEが流れ出しても当然客は飽き足りず、かなり必死のアンコール要求ののち(客伝つけずにSEだけ流すって作戦はいいですね、音量で負けないように一生懸命手拍子するので)有り難う有り難うとジェントルマンな笑顔でステージに帰ってくるメンバー一同。ジェフはギターを持たずフリーハンドのまま、マイクを薬指と小指の間に挟んで下向きアングルに握り込み、絶叫!体を大きく揺らして絶叫。恐れ入りました兄貴。そりゃ元RODANですわ。心に地獄を隠し持つ紳士なんて、最高な歳の取り方です。尊敬するアーティストがまた一人増えました。

▼今日はせっかくの休みを効率悪く潰しつつバンドの練習。自分が下手過ぎて死にたい一方ですが、あんまりノロノロと潜伏してばかりもいられなかったと思うと(年齢と世間体の兼ね合い的にも色々)、とりあえずドラマーとしてでも世に出ておいたここまでの流れは良かったのかと思います。ギターだけでは考えなかったようなことも勉強できたし、作ったCDは無事店頭に並べてもらってるようですし。ここで頼れるドラマーを迎え入れてギターに復帰するのがやっぱり妥当との思いが強まっています、ライブをするたび「今日は失敗した/しなかった」みたいなことは嘯きたくないもので。ヘッドバンギング!!

【只今のBGM:RETISONIC「LEVITTOWN」】


ex.BLUETIPのジェイソン率いるバンドの最新EP。過去にEPもう1枚とフルアルバム1枚が出てますが、10曲とか溜め込まずにさっさと出しまくるというスタンスは何だかイイですね。この盤もまだホカホカといった感じ。内容はというと屈折ギターやダンスビートを抑えたゴリゴリロッキンな方向性にますます磨きがかかり、しかしどこか絶妙に引っ掛かるコード展開や芸の細かいトリックがシャープに効いてて、「大人なりの激ロック」の新しい展望が提示されてます。BLUETIP時代から変わらぬ飄々としたドライブ感、つかみどころがないようで確実に歌い込まれる独特のヴォーカルラインも健在。いや〜クール、痛快、羨ましい。変態フレーズがとかくもてはやされる近頃のポストコア界の風潮に反して、ズボッと太い低音リフが多いのもカッコイイ。それでいて根はやっぱりパンクですね。わかりやすいトゲトゲしたイメージやラフな歌いまわしなんかを真似するのではなく、THE CLASHあたりの楽曲が孕んでいた普通のオールドロックのエッセンスの活用形みたいなものを受け継いでいる感じです。シブイ。貫禄と衰えぬ熱意の両立によって成しえる業でしょう。ポストJAWBOXの見果てぬ夢を安心して託せるDCの至宝。

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