物色日記−2006年6月

※頻出語句解説はこちら
  6月30日
収穫はなし。サウンドベイの夏バーゲン、今年は7月15日(土)から17日(月・祝)とのこと。夏や冬はいつも、開店前に行列作ってると、通りがかる近隣住民に凄い変な目で見られます。確かに暑い/寒いけどもさ。我らこういう仕事なんだわな。

【只今のBGM:FRANK PAHL「REMOVE THE CORK」】


80年代後半からアメリカでONLY A MOTHERというアヴァンフォークバンドを率いていたという人。フランスのKLIMPEREIとの共演作もあったりするらしいです。これは98年リリースのソロ作で、ジョン・ゾーンからジャド・フェアーまで幅広く仕事をこなすバンジョー奏者のユージン・チャドボーンなどが参加。中身はアメリカーナなKLIMPEREIとでもいうべき朴訥とした素っ頓狂ガラクタ小唄集。マリンバやウクレレ、雑多な吹奏楽器、ハーモニウム、カリンバ、プリペアド・ピアノなどを使って、古楽とも民族音楽とも現代音楽ともつかない曖昧な音象を全23曲ズラズラッと。何かを出し抜きたそうな邪まな野心が漂わず、手にした楽器の音色にインスパイアされるがままに録った短編詩てな佇まいがよろしい感じです。おちゃらけたDIRTY THREEみたいだったり、リック・ウェイクマンのソロワークのインチキ版みたいだったり。拍子とか展開とかいった概念はそっちのけで淡々とパッセージをつづれ織っていく手法はMOONDOGと相通じるところも。巷の小洒落た雑貨屋はこういうのをBGMに使うがよい。

  6月29日
収穫はなし。久々に飲みました、村さ来でいいじゃないか。

▼今月の月刊PLAYBOYがマイルス特集。店頭で発見して即立ち読み。彼の語録を読んでから生前の写真を見ると、その目つきを前に「こんなんでごめんなさい」という気持ちになってしまいます。

▼昨晩は圧殺しそびれた蚊の妨げにあって全然寝付けませんでした。蚊という蚊はすべて死んで下さい。

【只今のBGM:BOTCH「UNIFYING THEMES REDUX」】


HYDRAHEADの極悪番長BOTCHの、95〜96年にアナログでのみリリースされた音源をコンパイルした編集盤「THE UNIFYING THEMES OF SEX, DEATH, AND RELIGION」に更にコンピ提供曲や未発表曲を追加した16曲入りヴァージョン。旧ヴァージョンと同じシアトルのEXCURSIONというレーベルから出ています。BOTCHといえば大名盤「WE ARE ROMANS」がやはり最高ですが、初期はあんなうねうねした変拍子も単音リフもなく、暗くて悶々としたノーマルな極悪ニュースクールをやってるのが意外というか順当というか。後期に移行するに従ってノイズ度が増していくものの、唸らされるほどのオリジナリティを確立するのはよほど末期になってから。2002年のEPの頃の音源かと思われるラスト収録のインスト"Sudam"では、見事MASTODON+FARAQUET的な壮絶屈折バイオレンスワールドに到達。ここまで来ればそりゃ解散もするわな…というひとつの極北です。品物トータルとしてはまあどう考えても熱心なファン向け。未体験の方は「WE ARE ROMANS」からいくしかない。

  6月28日
本日の収穫、米アマゾンから届いたATOMIC OPERA「PENGUIN DUST」、同マーケットプレイスで購入のCADAVER「...IN PAINS」。新品のはずがジャケに難ありで、交換を要求するたどたどしい英文メールをレーベルに送る。TOEICのスコアなんざ実践の場で何の意味もございません。オンライン辞書よ今夜もありがとう。

【本日のレビューその1:FLEETWOOD MAC「THE PIOUS BIRD OF GOOD OMEN」】


英ホワイト・ブルーズ名グループ、半ばジャケ買いな69年作。1st・2ndの曲の再収録とシングル音源などで構成されたコンピレーションとのこと。この怪しい大きい鳥は何て種類なんでしょうか?ブルーズのブの濁点も語れない筆者ですので薄〜い内容ご容赦ください。とりあえず冒頭を飾る"Need Your Love So Bad"、これメタラーにはWHITESNAKEがオルガン+ヴォーカルのみというヴァージョンでやってることでお馴染みですね(「1987 VERSIONS」収録、非メタラーには意外な事実)。本場アメリカ産に肉薄する高純度なブルーズフィーリングの気持ちいいこと。しかしオリジナル曲となると途端にサイケな煙がドヨヨンと漂ってくるのが面白い。"Rambling Pony"の空中を歩くような無重力感、"Albatross"は「おせっかい」でのPINK FLOYDの如し、"Jigsaw Puzzle Blues"はなんかSTACKRIDGEみたいにクラシカルだし、規格外の領域にもの凄く適当に踏み出してしまっている冒険心に今の常識からすると驚くばかり。まだロックが未熟で何にでもなれた頃ゆえのフラフラした感じ満載。ほとんど僻地メタルを聴くのと同じノリで楽しんでしまいました。んでラストは"Stop Messin 'Round"で気楽にパーッとシメるってのがまたいいですなあ。

【本日のレビューその2:AGITATION FREE「SECOND」】


お次はジャーマンロックのちょいマイナーバンドAGITATION FREE。随分前に3作目を取り上げたことがありました。これはタイトルが示すとおりの2作目、リリースは73年。乾いた土の割れ目から植物の芽がニョロッと出てくる表ジャケを裏返すと、モサッと茂った水中植物なのか、菌類の顕微鏡写真なのか、よくわからん緑色の群れに光が差す写真。こういう自然のランダムさや生命感を描きたかったんでしょうか、吸い込まれそうな絶望的な虚無感も、基点という基点を見失いそうな浮遊感もなく、生気ある高揚感で煽る硬質サイケジャズロックをやっています。イギリス産と言われても信じそうな雰囲気もちょっとありますが、フレーズを自由奔放にコラージュするセンスや、電子音オンリーでピヨピヨやってくれる場面などはさすがにドイツ的。少しばかりPOPOL VUH的な神々しい香りもあり。あーそうか、この生演奏と特殊音響が交錯しながらドラマをじりじりと盛り上げていく展開、MICROPHONESの遺作「MOUNT EERIE」に似ている。ということでジャーマンロック気質のドリーミー・サイケ・インディポップが趣味な方は、TANGERINE DREAMやCANから遥々まわり道しなくてもストレートでこっちへどうぞ。

  6月27日
本日の収穫、御器所ホーリーハウスにてPARAMAECIUM「EXHUMED OF THE EARTH」(WITCHHUNT)、XENON「AMERICA'S NEW DESIGN」(LONG ISLAND)。

こういうことをやるとまた来訪者数が減りそうですが、今日のレビューはLONG ISLAND RECORDS祭りになりました。今一度ご説明しておきますと、LONG ISLANDはドイツに短期間存在したB級産業ロック専門レーベルで、超一流バンドに迫るクオリティを誇るがどうしようもなくB級な佇まいという、ある意味奇跡的なアーティストを世界中から探り当ててはコツコツ真面目にリリースを重ねる一方、NWOBHMちょい後くらいの無名音源のリイシューもやるという採算度外視慈善企業として、シブ好みのメタラーからの支持を密かに集めていました。現在は閉鎖になってしまったため全カタログ廃盤のはずですが、別にそれで余分に有り難がられることもなく、安値を誘うアートワークも相俟って500円以下でよく見かけます。過去に紹介した盤はこちら(→その1その2その3その4)。500円であったら買うとか、680円だったらとか色々書いてますが、もう見たら見ただけ買うことに決めました。

【本日のレビューその1:XENON「AMERICA'S NEW DESIGN」】


89年。イモくさいのが売りともいえるLONG ISLANDでこのバンドは少々異色な、非常に垢抜けたサウンドを持っています。アルバムタイトルで大風呂敷広げてるだけのことはある。DEF LEPPARD、SURVIVOR、後期NIGHT RANGER、WINGER、TNTなどの清涼系メロハーを更にサイバーな感じに洗練したような、半ばプログレハードともいえそうなスタイルで、曲も演奏も一級品、ヴォーカルはややエリック・マーティン似で確かな力量。プロダクションは貧乏くさいです。ジャケはもう最低級ですね。でビックリしたのが、WINGERのレブ・ビーチとDANGER DANGERのテッド・ポーリーが参加とある!その絡みでメジャーに拾われて普通にブレイクしてもおかしくなかったものを、当時この系統のバンドが飽和してたとはいえ、明らかに頭一つ抜きん出る逸材なのに鳴かず飛ばずに終わったとはもったいない。後半ちょっとHAREM SCAREMの"No Justice"を先取りしたような大胆な曲もあったりして、単なる発掘モノというより続きが見たかった幻の名バンドとして今更でも何でも評価されてもらいたいところ。無理か…。

【本日のレビューその2:TIGHT FIT「THE FINE LINE」】


96年。このジャケは凄い。よくよく見るとメンバーの服装もヤバイです。全面にクエスチョンマークがあしらわれたエナメルパンツとか。更にバンド名「タイト・フィット」て…、と聴く前から既にツッコミどころ満載のこの人達、中身は案の定、超安全運転な快適AORでした。不器用なのに気張り過ぎるヴォーカルが少々クドいが、大筋でFOREIGNERやドン・ヘンリーあたりの渋め路線をよく踏まえたカーステ・オリエンテッドな高品質作に仕上がっています。というか未だに日本のFMじゃこういうの平気で流れてるよな。と思う。全くもってこの音楽を楽しむのにこの人達を選ぶ必然性を感じませんが、誰に似てようと自分の好きな音楽を自分でやりたいんです、誰にでもわかる「普通にいい曲」を携えて世に出たいんです、という立候補者はこのように世界中にいて、彼らはたまたまマイナーレーベルに落ち着いてしまったという不運なケースですね。異なるシーンで昔も今も起こっている似たような状況と重ねて色々考えてしまいます、凄く良く出来てるだけに。それでもつい手に取ってしまうLONG ISLANDマジック…輝かしくも哀しいのであります。

【本日のレビューその3:HEARTLAND「WIDE OPEN」】


"She's Gone"のスマッシュヒットで軽く有名なバンド、と思っていたらそれはSTEELHEARTでした。ああショック。この人達はというと91年のデビュー以来現在に至るまで活動を続けているイギリスのユニットで、これは94年の2nd。ハスキーで汗っぽいヴォーカルがうなる哀愁系産業ロックになってます。アメリカ勢2連発のあとに聴くとやはり全然空気が違う。足取りのテキパキ具合はUS産に譲るものの、ニール・ショーンの世界(BAD ENGLISH、HARDLINE他、勿論JOURNEYも)やSHYなどに近い湿度90%以上な感じがなかなか良いですな。とにかく堂々として表情豊かなヴォーカルの存在感が圧倒的で、フ〜ン○○ー○・○○ーに似てるんだねえ、とかで終わらない引っ掛かりがあります。時に往年のロブ・ラモス、時にルー・グラムばりにソウルフルな熱唱が冴える。やっぱりそれなりに上手くいってるバンドは奇抜なことやらなくても何か違うなあと、申し訳ないが前出のTIGHT FITと比べてそう思ってしまいました。B級マニアでなくとも(金かかってなさそうな貧弱なプロダクション以外)普通に楽しんで頂けそうな品ですのでどうぞ。

  6月26日
本日の収穫、サウンドベイ上前津にてORNETTE COLEMAN「FREE JAZZ」(リマスター紙ケース)、CHARLIE CHRISTIAN「CELESTIAL EXPRESS」(DISCONFORME編集の39〜41年音源アンソロジー)、AGITATION FREE「SECOND」、METALLICA「THE $9.98 CD -GARAGE DAYS RE-REVISITED」(レアだったオリジナル盤、1260円にて普通にゲット!)、FRANK PAHL「REMOVE THE CORK」、RIP SLYME「MASTERPIECE」(525円にて)、アマゾンマーケットプレイスからGRAVEYARD RODEO「SOWING DISCORD IN THE HAUNTS OF MAN」。「GARAGE INC.」にリマスターで丸々再収録されてるにも関わらずわざわざピンで買ってしまったMETALLICAのガレージデイズは、やっぱりメタラーの夢なので。盤自体はレアなんだから2000円くらい付けりゃいいのに、中古市場におけるオールドメタルは暴落の一途ですな。凄いありがたいけど。

【本日のレビューその1:RIP SLYME「MASTERPIECE」】


54-71のボボ氏参加でくるりとのコラボシングルが出てるからというわけでもなく、いきなりリップスライム買ってしまいました。今売れてる邦楽アーティストの中では何か突き抜けた存在だなあと、実は以前から気にはなってたのでした。このアルバムはビデオクリップがちょっと好きだった"GALAXY"が入ってるし、525円で拾うにはいいじゃないかと。初めてアルバムを通して聴くわけですが、思ったとおり感覚的にはBECKとか、そこいらの生音指向のエレクトロニカみたいですね。黒いものへの無理やりな憧れが全然なくて、MCの声作りやライム(というんですか…韻ですね)も適当に素人くさく、他の和製ヒップホップ〜R&B系の連中がやるように意味なくポジティヴなメッセージを押し付けることもなし。尻軽だが感覚は鋭い合成ファンクネスがなかなか楽しく快適です。友達にはなれそうにないけど喋ることは面白い人の話を傍観するような感じで。作りではない素のノリを上手く見せ物としてプレゼンできてるから、そういう受け入れられ方もアリになるんでしょう。そこがこの人達のポピュラリティの源泉だな。アートワークもいい感じだし、満足な品でした。

【本日のレビューその2:THE BAD PLUS「SUSPICIOUS ACTIVITY?」】


チャド・ブレイクプロデュースのハミ出しジャズトリオの2005年最新作。メンバーのリード・アンダーソン(b.)、イーサン・アイヴァーソン(p.)、デイヴィッド・キング(ds.)それぞれNY界隈を中心に活動を盛んにしておりますが、グループとしても2001年のデビュー(FRESH SOUND NEW TALENTから)以来通算4作目ということでかなり精力的です。内容は相変わらず体当たりロッキンなオールアコースティック・ミクスチャー・バカ・ジャズ。PE'Zみたいなのかといえば全くもってさにあらず、こどものバイエルとホーギー・カーマイケルを変拍子で同時演奏するABCS(ドラマーがORTHRELMにいる変態アートジャンクトリオ)か、ブラッド・メルドーが加入したSTORM&STRESSかという、そりゃもうやりたい放題の悪ノリ・ハイブリッドミュージックです。吉田達也も山塚アイもビックリ。しかしあくまで終始アコースティックのピアノトリオ体制を堅持してるあたり、ジャズを信じるがゆえにジャズを破壊するという愛ある野心を感じます。ポストロックへのジャズからの回答みたいな感じのあるCLAUDIA QUINTETあたりともまた違う。日頃この欄で紹介してるような脱線気味なトンガリジャズに興味はあるがイマイチ踏み出せないという人には、入門編に非常に適した1枚です。ちなみにメジャー第一弾のアルバムでは"Smells Like Teen Spirit"のびっくりカヴァーで度肝を抜いてくれたのですが、今回は聴けばわかる"炎のランナーのテーマ"をコテンパンにやっつけてます。痛快。

  6月25日
▼サポートで参加しているシロクマのライブでした。叩きながら自分に萎え続ける下手糞なドラムはやっぱり金取って人に見せる代物ではなく、見せられてしまった皆様には毎度本当申し訳ない限りでございます。しかし先月の鶴ロック以来改めてじっくり見た葉っぱの裏側シスターズが最高でしたな〜、TZADIKやMOIKAIらへんからポッとワールドワイドデビューを飾ってしまえばいいのに。

本日の収穫、大須グレヒでNEIL YOUNG「RUST NEVER SLEEPS」、THE BAD PLUS「SUSPICIOUS ACTIVITY?」、PHIL RANELIN「VIBES FROM THE TRIBE」、FLEETWOOD MAC「THE PIOUS BIRD OF GOOD OMEN」。

【只今のBGM:QUIEN ES BOOM!「CAST YOUR BURDEN ASIDE」】


PAUL NEWMANやRHYTHM OF BLACK LINESなどディシプリン・クリムゾン色の濃いマスロックバンドを出してるイメージが強いSIX GUN LOVERからのニューリリース。GHOST & VODKA、TESUO、AMERICAN HERITAGEなどに在籍してきているスコット・シェルハマー(ドラムだったりギターだったり)がエレクトロニクスで参加してるバンドです。シンセも活躍する歌入りポストロック。和みポストロックというとPELEやC-CLAMPやAMERICAN FOOTBALLみたいな人達がしっかりした雛形を作りすぎて、それ以降の新しいバンドに期待することはあまりないなと思ってたのですが、このバンドは歌入りということもあってポップであることに臆面がないというか、かといって「インディポップをポストロック的アレンジで包んで揚げました」みたいに中身と外装がパカッと離れてしまうこともなく、カクカクと細かく頑張るマスロック的演奏が楽曲の芯まで必要充分に組み入りつつも総体として歌もの的な人懐こさが前に来るという出来上がりに。ひとしきりの実験結果はもはや常識として咀嚼吸収されてることが当たり前な時代に相応しい、味わい重視の1枚になってます。雰囲気的にはMARITIMEの名作2ndが人力エレクトロニカ風に音数を増やした感じでしょうか。意外とTHE BYRDSあたりをリアルタイムで愛でていたおじ様方にも喜ばれるかも?潔癖オサレな感じになり過ぎず楽に聴けるのがいいですな。

  6月24日
収穫はなし。今一番心に引っ掛かっていることは「一昨日NICE VIEWのドラムの人が着ていたECHO(註:知らなかったので調べたところ横須賀のハードコアバンドだったようです)のTシャツがカッコ良かった…」です。DOOMみたいなUKハードコア王道風のロゴと、四角い枠線内に弾痕のような点が二つだけ描いてあるというシブ過ぎるデザイン。うーん音源聴いてみたい、Tシャツのカッコ良さゆえに。

【本日のレビューその1:BANCO DEL MUTUO SOCCORSO「GAROFANO ROSSO」】


イタリアンプログレ筆頭バンド、バンコの75年作。オールインストの映画のサントラとして制作されたらしく、看板シンガーのジャコモおじさんは何と一言も歌っておりません。クレジットには「documentazion(=documentation)」とありますが何やってんでしょうか…。初期の突進するような威勢のよさは微妙に落ち着いていて、室内楽的アンサンブル(使用楽器ではなくアレンジ面)とロックサウンドとのストレスなき一体化、盛り上がりやスリルを意識し過ぎず1曲1テーマでまとめる短編集的構成、特に柔らかくてうっすらした風情を丁寧に描く感じなど、翌年リリースのGENESISの「TRICK OF THE TAIL」あたりに近い温度を感じます。この頃のプログレシーンの流れだったんでしょうかね。「変わったこと」をやろうとするバンドが現れ過ぎて全部「普通のこと」になってしまった時節に何を表現できていたか、プログレバンドたちのアーティストとしての真価がよく測れる年代です。この人達はオリジネイター世代なだけあって、ストライクゾーンの内側に立ち続けることに易々と見切りは付けず、更にその核心を奥までめくっていくような深化を遂げているといえます。さすが。だけど歌抜きのバンコなんて…という声もおありでしょうが、逆に暑苦しくないバンコも新鮮かと。結局ファンは買って下さい。充実の79年作といい、一般に評価の高い初期以外も見過ごせませんね。

【本日のレビューその2:DJAMRA「紙一重」】


POSEIDONさんから送って頂いたシリーズ。前作から大幅に体制が変わって、ギターとシンセを加えて管はサックス1本というクインテットになりました。で音楽的には、中欧に度々招かれたとのオビタタキどおり、サムラやFARMERS MARKET、X-LEGGED SALLYのようなザッピング風おちゃらけ激展開がより大々的にフィーチャーされ、ディストーションギターの暴れぶりも相俟ってミクスチャー化が更に進行。一方で演奏自体は確実な基礎に裏付けられたフュージョン的な硬度があって、依然圧倒的な安定感を誇ります。ヨーロッパのプログレ系フェスに出たりしても海外の現役バンド達と対等に渡り合っている様子が容易に想像できる堂々の完成度ですね。日本人の陥りがちな勤勉学生っぽい佇まいがなくて、表現に余裕とナチュラルさを感じられる大人なバンドです。この勢いでどんどん(音楽においても、地理においても)ボーダーというボーダーを踏み越えていっていただきたいもの。

  6月23日
21日の収穫を書き忘れてました、POSEIDONさんから送ってもらったDJAMRA「紙一重」。そしてこれは昨日の話になりますが、いわゆる「透明ビニ傘」にささやかだが劇的な革新が訪れていることを知り感銘を受けたのでした。最近の奴は骨が(中心の軸ほか一部分を除いて)よく曲がるプラスチックで出来ていて、開いている内側に向かって風を受けるといとも簡単にベローンと裏返ってしまうかわりに、何のダメージもなく再びポコッと戻せてしまうんですね。その視界性ゆえ進行方向に大きく傾けて使われることが多いという透明傘特有の性質から、その向きの強度さえ確保できればよいというように用途を絞り込み、従来型の薄っすい金属製のやつだとグニャリとへし折れたら御臨終だったところを、持ち堪える硬さではなくフレキシビリティの向上で延命を図るとは新発想。こうして世の中少しずつ洗練されていくのだなあとしみじみ思うとともに、ビニ傘風情に洗練の余地を見つけてしまった開発担当氏に心で拍手。

【只今のBGM:TIM BERNE'S CAOS TOTALE「NICE VIEW」】


これ昨日取り上げれば良かったですね。オリジナルリリースは94年(手元にあるのは2005年のWINTER&WINTERリイシュー)なので名古屋のNICE VIEWの結成時期と重なりそうですが、ここから名前取ったってことはないでしょう…そうだったら一生ついていきます。さておき、当欄ではクドイくらいにプッシュしている(→その1その2その3その4)ティム・バーンのまた別のグループ名義作です。コントラバスにマーク・ドレッサー、ギターにマーク・デュクレと揃った危険物かと思いきや、これが意外と聴きやすい。インプロヴィゼーションの鍋にコンポジションの具材が浮かんでいるようなバランスの、現代音楽がかった管弦楽プログレ、というかすなわちHENRY COWの進化した生まれ変わりですなもはや。スコアに支配されない純粋な演奏を実録するフリージャズ/フリーインプロとは似てるようで異なり、強大な拘束力をもつイメージの種を祈祷的な演奏であぶり出すかのような、かといっていわゆるスピリチュアルジャズの手法には全く則らない、新興の宗教音楽とでも思いたい雰囲気。3管アンサンブルがあやしく唸る不穏な足取りは極初期MAGMAさながら、一歩間違えばスカムの神に仕えるウィーゼル先生諸作の隣人。入ってるはずの具材が崩れきって、輪郭もわからなくなって意味不明の神秘的な流動体と化している最近の作風(そっちも素晴らしい!むしろ推したい)と比べると、幾分か構造が見えやすく、またその後の進化の原型の提示にもなっているという点で、今を生きるプログレッシヴ・ミュージックたる彼の創作におけるマニフェスト的作品といえるでしょう。

  6月22日
収穫はなし。SOME GIRLS名古屋公演を見に新栄トーラスへ。メタルな店長氏とアスベスト剥き出しの天井がナイスなライブハウスで、結構好きな所です。1番手は去年からバンドをイベントに誘ってもらったり何かとお世話になっているTAPI君率いるALLie。ENVY世代っぽい雰囲気の叙情激情ニュースクールにSIGUR ROSみたいなポストロック風パートも混ざったようなスタイルで、初の外タレ前座という檜舞台を渾身の奮闘。腕っぷしの強い女性ドラマーがいるのは以前見て知っていたんですが、今日見たらツインドラムになってて、パーカッション類を猛烈な音量で叩きまくるその新加入ドラマー氏がまた強力な逸材。ダブル打楽器の気迫に「あの音どうなってんの?」て様子で後ろの方からゾロッとステージの方を覗きにくる客もけっこういました。この調子でガンガン名を上げていっていただきたいですなー。

▼2番目に当初告知されていなかったもうひとバンドが急遽増えていて、名前は結局わかりませんでしたがRADIANミーツPINK FLOYDみたいな感じ。続くはお待ちかねNICE VIEW!4月にFUCKING CHAMPSの前座として鶴舞KDハポンでまじまじと見て、非人間的な進化型ハイパーハードコアに完膚なきまでにノックアウトされてきたものでした。今日は前半、いまひとつ噛み合いきらない感じだったのが、途中でモニターの存在に気付いたドラマー氏が目一杯の返しを要求すると、その後はもう冬眠から覚めたかのようにビタビタッとあらゆるキメがシャープに決まる。ギターポップみたいなカッティングやコード使いをするギターも今日はよく聞き取れて良かった。いやーこのバンドには言葉を失います。世界に誇る名古屋の奇跡っすわ。

▼そしてラストにSOME GIRLS。どうも今日の客のほとんどは「元THE LOCUSTの外タレバンドの前座でNICE VIEWが見れるって〜」て感じで来てた様子で、さっきまでグルングルンに猛っていたモッシュの輪も消え、曲間に温かい声援は送りつつも割と淡々と見守られてました。というのもSOME GIRLSの音自体、この手の人達に我々が期待しがちな「タガの外れた天然変態」という感じがあまりなく、気持ち悪いパフォーマンスも別にやらず(表面的にだけではなくてムードとしても)、サンディエゴサウンドの王道に真面目に取り組んでいてサプライズはさほど大きなものがなかったというせいもあるかも知れません。ただどのパートも生音にコンプがかかってるかのような鉄壁の安定度を誇り、完成品のCDを聴いているような「太さ」があったのはさすが外タレといったところ。一切音量の落ちないブラスト凄い。外人は凄い、しかしNICE VIEWの凄さはもう意味わからん…という、ちょっと予想していたとおりの後味で帰路に就いたのでした。

【只今のBGM:山崎ハコ「飛・び・ま・す」】


恥ずかしながらこの人の存在は電波少年の企画(山崎氏作の曲を室井滋が歌って引きこもり更正に挑むというもの)で初めて知ったクチですが、薄型ケースでの再発シリーズ「CD選書」は好きなので中古で見つけておいそれと買ってしまいました。小指を立て気味に草笛を吹きながら無心に宙のどこかを凝視する少女の意味深なジャケ、「個性が凝縮された名作デビューアルバム!代表曲何々収録」と謳うオビ…とくればもう充分。(勿論試聴はしましたが。)未熟なノドを枯れきった歌心で振るわせる不思議なミスマッチがどうにも両耳をグイとつかまえて離してくれません。凡百の歌謡フォークとは一線を画すディープ&ムーディなインスト陣のアレンジも素晴らしく、無理矢理ジャズ風な"さすらい"での日本風に崩れたブルーズフィーリング、ほとんどの曲に一貫して漂うシャノン・ライトSPOKANEにも迫るうらびれた悲壮感、これが18歳になるかならないかの少女の声と違和感なく組み合ってしまうという事態はいささか普通でないですなあ。ジェフ・バックリーばりの熱唱で震わす"サヨナラの鐘"から間髪入れず切り込む"竹とんぼ"イントロのリコーダー三重奏でもう死亡確定書。"気分を変えて"なんてアンプラグド版"Children Of The Grave"(BLACK SABBATH)じゃないか…!知名度云々を抜きにすればRHINOからワールドワイドでリイシューしたいくらいの内容です、オールドSSW好きは是非にどうぞ。

  6月21日
▼あ〜ひどい、本日の収穫はサウンドベイ金山にてSOLITUDE AETURNUS「BEYOND THE CRIMSON HORIZON」、BABYLON SAD「KYRIE」、MORTIFICATION「BLOOD WORLD」「PRIMITIVE RHYTHM MACHINE」、DECEASED「LUCK OF THE CORPSE」、KORPSE「PULL THE FLOOD」「REVIRGIN」、TIGHT FIT「THE FINE LINE」(LONG ISLAND)。2・3枚だけ厳選して買って帰るつもりだったのにこの有様。またCD売るか…。

【本日のレビューその1:KORPSE「REVIRGIN」】


OPETHの成功やEMPERORの再発で大儲けしてしまったイギリスのCANDLELIGHTの初期リリース。通し番号14で96年録音とあります。珍しいスコットランドのデスメタラーで、これがなかなかエグエグなグラインドロックをやっておりまして最高です。末期CARCASSや初期CATHEDRALに通じるデロンデロンのたるみ感がひたすら心地よい。この当時こういうアプローチを試みるバンドは大抵、オルガンを入れたりして一生懸命サバス周辺の70年代ロックの本格的模倣に走っていたものですが、このバンドはあくまでデスメタリックな屍臭を全開にしたまま(高速2ビートも随所で好調に炸裂)、ストーナー云々というより単純にオルタナ的な感覚で図太さを追究してくれてるのがいいですね。ENTOMBED、XYSMA、KINGSTON WALLあたりと等距離にくるような匙加減がシブ好みにはたまりません。こりゃよっぽどセンス良くないと成立しない音楽でしょう。またひとつ隠れた名バンドを掘り起こしてしまった。

【本日のレビューその2:BABYLON SAD「KYRIE」】


一昨日のSADNESSに続いてまたスイス。93年リリースですが録音は91年に行われているということで、デスメタルバンドとしては全然初期の部類ですね。ご丁寧にジュエルケースに「ドゥーム/プログレ風パーツありのゴシックデス」みたいなことを書いたステッカーが貼ってあって、確かにそんな感じの内容。サンクスリストに勝手に名前を挙げているWATCHTOWERの影響(特に2nd)が色濃いんでしょうか、調性不明の変なアルペジオのユニゾンやら切り返しの細かい変拍子やらが頻発し、しかしそれだけに終わらずやけに荘厳な雰囲気もあってそのへんは初期ANATHEMAやMORBID ANGEL的。そこに更にELENDみたいなオーケストラ風シンセも絡んできて、全くもってどこに山をもってきたいのか判らない謎に満ちたドラマが展開されまくります。プログレッシヴ!いいねいいね。当時既にMY DYING BRIDEやMISANTHROPEみたいなバンドがいたことを思うと、憧れ半分の追従者的な香りがなきにしもあらずですが、世代的にまだリアリティを感じられる範囲内なので全然OKです。微妙すぎるジャケに「これはもしかして一周してアタリなのか…?」などと心惑わされていたB級好きのマニア諸氏は、安心してすぐ買ってください。SADISTの2ndを神と崇める人にはかなりストライクかもですな。あ、ラストに収録のボーナス2曲はMESHUGGAHの5年後を先取りしている!!

【本日のレビューその3:MORTIFICATION「BLOOD WORLD」】


本日は3発ともデスメタルでまとめさせてもらいます。最後はこれまた貴重なオーストラリアのバンド。94年にメルボルンで録ってらっしゃいます。一応NUCLEAR BLASTとのディールを獲得してるだけあって、ローカルなりに堂々としたものがあります。1曲目からシャン、シャン、シャンシャンシャンシャン「ウォーーイ!!」て…。全然ジメジメと暗くなく、MOTORHEADとかそれこそAC/DCあたりを素材に想像と思い込みでデスメタルをでっちあげてるのが楽しい。こういうの、僻地モノのカガミです。ヴォーカルは高音でアジるFORBIDDENやSICK OF IT ALLの人みたいなタイプで、ドラムサウンドもドコポカドコポカと変に生々しくガレージ的。そしてこの妄想を押し通すための、猛烈に先走るアグレッション!アメリカはおろか無骨がとりえの北欧のバンドですら聴いたこともないような乱暴なフィルでドバドバドバと強行突破するさまが痛快極まりなし。これはもしかしてハードコアの人でも普通に聴けてしまうんではなかろうか?初期ALCHEMISTといい、豪州産はこういうもんなのですかね。デスメタルというより「重いTANKARD」みたいなつもりでオールドスラッシャーにおすすめ。

  6月20日
本日の収穫、東別院ブックオフにてB-THONG「SKINNED」(94年PAVEMENT MUSIC)。本当はもう1枚買ったのですがそれはハズレ。昨日書いたようなことの流れでまたOSMOSEリリースのマイナーそうなデスメタルを買ってみたら、高校生の学祭レベルのどうにもならないEMPERORもどきでした。ニュージーランド産ってことだけが面白かったですが…。8割以上のハズレの中にまぐれで錬金術に成功した者が紛れているだけという事実を改めて肝に銘じつつ、同じ轍をいくらでも踏みそうだな〜。今日こそはマトモなもん食うぞと思って注文して出てきたものがやっぱりゲテモノで、それでもまた行きたくなるという、杁中の名店「喫茶マウンテン」に似ている。

【只今のBGM:CUONG VU「BOUND」】


2000年OMNITONE。リーダーのクオン氏はトランペットおよびヴォーカルで、YEAH NOのメンバーにしてデイヴ・ダグラスやパット・メセニーなどの大御所と共演する傍ら、ロン・セクスミスのアルバムでゲスト参加してたりもする人のようです。他にはジム・ブラックジェイミー・サフトといったこの界隈の常連と、ストム(Stomuとの表記…ツトム?)・タケイシなる日本人ベーシストがいます。内容的には完璧にCUNEIFORM系の、USレコメン過激派の流れを汲む突撃マスロッキンなアヴァンフュージョン。これTHE SCIENCE GROUPの新作だけどちょっとジャズ寄りになったよ、といって聴かされても普通にへぇ〜と納得しそう。サイドメン勢ではビル・ブラッフォードよろしく鉄板をパシ!パシ!と叩きまくるジム・ブラックの360度ドラミングがやっぱり目立ちますが、複雑怪奇なテーマに更に一筋縄でいかない寄り添い方をするあとの二人もお見事。でクオン氏はというと、無調のパッセージを淀みなく繰り出して「即興=作曲」のように聴かせる天才肌。感情の発露云々というより彫刻師的プレイヤーですね。歌うと憂いを帯びた中低域が魅力的で、ややケヴィン・ムーア似の素朴な風情がよい。後半、人力ブレイクビーツのダメ押しに固執するジム・ブラックにちょっと食傷気味になりますが、それを差し引いても全体として秀逸な出来。ジェフ・パーカー関連(CHICAGO UNDERGROUND TRIO/QUARTET、TRICOLORその他)あたりのジャズやりたげなシカゴポストロックがお好きな方は今すぐ買ってブッ倒れて下さい。

  6月19日
本日の収穫たまーに行く名駅69にてURIAH HEEP「SALISBURY」(オリジナルジャケのCASTLE盤に買い替え)、SADNESS「AMES DE MARBRE」、山崎ハコ「飛・び・ま・す」。SADNESSはまだHOWLING BULLが外盤にオビと解説つけて国内ディストロをやってた頃のスイスのバンドです。この時期(93年)あたりの「ドゥーム・メタル現象」が最近もっぱら興味深いのです。元NAPALM DEATHのリー・ドリアンが世界最速の次に世界最遅を目指して始めたCATHEDRALの登場によって注目を集めたジャンルですが、意外と同時進行で他のヨーロッパ諸国でも似たようなスタイルのバンドが現れていて、「CATHEDRALが唯一の開祖であとはフォロワー」とは言い切れない状況だったことが、BURRN!誌で50点以下をつけられていたような不世出の貧乏芸術家的マイナーバンドたちの作品を発掘することによってだんだんつかめてきました。そして今ではゴシックメタルかストーナーロックのいずれかに統合されてしまって、90年代初頭だけに存在していた「遅いプログレ」とでも言うべき濃厚で不安定なスタイルは既に絶滅種になってしまってるわけです。ロマンですね。同じく一過性の現象に終わった「グランジ・ブーム」ともども(勃興から失速・終焉までの時期がドゥームメタルとキレイに重なるのも面白い)、つまるところあれは何だったんだろうと頭を抱えて人生過ごして参りたいと思います。

【只今のBGM:SADNESS「AMES DE MARBRE」】


ということでSADNESSです。まずジャケの白塗り原住民みたいな人達の写真にただならぬものを感じます。そしてこれは何なんですか…スイス産で前衛ドゥーム/ゴシックといえば真っ先に思い出すのがCELTIC FROSTで、その影も大いに見出せるのですが、もっとフレーズの一つ一つが宙に浮いているというか、GONGが真顔で怨霊になったような空恐ろしいトリップ感にフワーッと巻き付かれて窒息しそうになります。これは変だ。英ゴシックの先駆けMY DYING BRIDE、フランスきってのド変態MISANTHROPE(サンクスリストに名前あり)、フィンランドの知られざる芸術肌PHLEGETHON(同じく)、オーストラリアの異端サイケ・デスALCHEMISTなどの同時期の作品と共通するシュールで大仰な世界観。悲壮だとか美麗だとかいった理解に易い感覚ではなくてもっとドロドロとした、人間の罪とか精神の黒さとかそういうものを静物的に描き出す感じです。ドゥーム・メタルが期せずして内包していたヴァイブレイションと、欧州の血とが呼応してしまった結果なんでしょうか?ロック界においては後にも先にも似たものがなく、完全に孤立。多分直接リンクするのは現代クラシックとかでしょう。ディープなゴスメタラーもしくは、RACHEL'Sを心で愛せる人なんかにも挑戦してみて頂きたい。

  6月18日
▼昼からKDハポン救済野外ライブへ出掛けました。祝・復活(7月から)!今日は当初一番手がOGRE YOU ASSHOLEと告知されていて、新曲増えてるみたいだし最近見てないなーと思って間に合うように行ったら、出順が変更になって終わりの方とのこと。ということで鶴ロックでも見たのうしんとからのスタート。まだ客もまばらで、盛り上がり過ぎずユルユルとやってるのが逆に良かったな〜。スマイル&イルな天然ダブはひたすら野外向き。2番手はそーいちさんという弾き語りの人。止まりながら(風で飛ばされた歌詞のカンペを拾いにいく間がそのまま臨時ブレイクになってしまったりする)ゆったり、はっきりと、温かい歌を聞かせてくれる歌い手で、初めて見ましたがこれまた良かった。物販(?)ではココナッツカレーを頂きました。うまかった。

▼ここで鶴舞公園を離れて友人M田君と合流し、予定されていたCD聴き会のために帰宅。何でも「最近久し振りにクリムゾンをチラッと聴いたら、その存在のでかさに改めて感嘆した。今の耳(彼はかつてメタラーで現在はジャズ一直線の二児の父です)で昔スルーしていたプログレを聴き直したい」との話。私に先鋭ジャズへの道を教示してくれたM田君にカンタベリーやレコメンを聴かせまくるのは楽しく、順当にHATFIELD & THE NORTHやMUFFINSなどを気に入って頂きました。意外とEMBRYOやTHIS HEATにも理解があってなお楽し。そして本日の収穫、リマスター入手につき手放すつもりだったSEPULTURA「SCHIZOPHRENIA」の旧盤とトレードでCUONG VU「BOUND」をゲット。イベント二本立ての一日は何だか充実感が残るなあと思って今に至ります。いつの間にか時間が深くなってたので、今日の聴き会でのヒット賞の紹介で代えさせていただきます。

EMBRYO「WE KEEP ON」
RESCUE「RESCUE」

  6月17日
収穫はなし。唐突ですが今日はちょっと親切企画を。最近気軽に使ってしまっている海外通販ですが、全部英語だしわかんねー、出来ねー、とお困りの諸兄のために、一般的な通販サイトにおけるオーダー完成までの手順を簡単にレクチャー致します。今回はイチオシ優良サイトCD Connectionを例にとってやってみます。あっでも生活圏内のリアル店舗で買えるものは是非そちらでご購入ください!外資系大型店じゃなくて個人セレクトショップとかの話です。そういう店がなくなるとアナタの街はダメになりますよ!!

▼さて、まずはお好きな商品を探して「Add to Basket」しまくって下さい。これで注文してしまおうという量の品が揃ったら、「Shopping Basket」ページの下の方から精算に進みます。
1〜2:気になりますが、あらかじめ送料を知りたい場合のみに使う欄ですので無視。
3:ここをクリックして次のページへ。

▼次はアカウント設定です。
4:初めての方はとりあえずこれをクリック。先へ進んでアカウント新規作成に入ります。

▼基本情報を設定します。
5:メールアドレスを入力。
6:確認のためもう一度メールアドレス。
7:下の名前を記入します。
8:こっちは名字を。
9:パスワードを適当に決めて打ち込みます。
10:上で打ったのと同じパスワードをもう一度。
11:先へ進みます。

▼次は品物の送り先情報です。
12:名前をフルネームで。
13〜15:住所を、普通に日本語で書くときの順番どおり、ローマ字で記入していきます。海外の業者とのやり取りではありますが、配達先は日本にあるあなたの家で、当然配達人も日本の郵便屋さんなので、prefectureとかcityとかに無理して訳さなくても「ken」「shi」「cho」のままで充分ですし、番地→区→市→…のように海外式の順番に(日本と逆順で)書く必要もありません。「Number and Street」の欄に「Nagoya-shi」と書こうが全く問題ナシなのです。
 ただ、記入が必須となっている15の「City」欄に数字で番地を書くのは変かも知れないので、問題ないんでしょうが一応そこには都道府県を、13・14には市区町村以下を書いておきます。
 またこの例では14が空欄になっていますが、13で市区町村を書いていって、字数が足りなくなった場合に適宜使います。
16:州名は「アメリカの場合必要」とあるので無視。
17:郵便番号を記入。
18:また「Japan」を選びます。
19:ここから次へ。

▼次は輸送方法を選びます。日本でいえば「冊子小包か、クロネコメール便か」てな場面です。
20:値段と所要日数の兼ね合いで納得のいく選択肢をここから選びます。ちなみに私は「4〜11日」のものが4日で届いたことがあります。
21:先へ進みます。

▼次は送り先情報および選択された輸送方法でかかる料金の総計の確認と、ちょっと緊張の走る決済方法の選択・設定です。ここではクレジットカードを使う方法でいきます。
22:VISA、MasterCard、Discover、JCBカードのいずれかをお持ちの方はまずここが選択されていることを確認して下さい。
23:16桁のカード番号を、ハイフンは入れずに打ち込みます。
24:お手持ちのカードの期限を記入します。カードのオモテ面に書かれているとおりに打って下さい。
25:3桁の「セキュリティ・コード」を入れる欄。お手持ちのカードの裏面の署名欄のふちに何桁かの番号が書かれていますので、その下3桁だけを打ち込みます。
26:昼間に連絡のつく電話番号を書き入れます。
27:同じく夜用の電話番号。使われることは滅多にないでしょうから、日本って何番だっけ…とかは気にせず市外局番から打ってしまえばOKでしょう。
28:ギフト用途でメッセージを添えたいといったことがなければ、このチェックボックスおよび下のフォームは無視。
29:先へ進みます。

▼この後に最終確認ページが来て、「これでOK!」(バナナ王懐かしい…)的なボタンをクリックすれば晴れて注文完了となるはずです。今回は例として実在しない住所やカード番号で進めていったので、最後に「そんなカードはないよ」と言われてその画面は表示させられませんでしたが、実際は多分迷いようもなく注文確定して終わりだと思います。お疲れ様でした。
 2回目以降の利用時は、ここで作成したアカウントが有効になって手順が簡略化されます。CD Connectionの場合、すぐ上の画面の2425だけ毎回再入力が要求されますのでお忘れなく。

 リアル店舗に在庫が常備されるほどでもなく、アマゾンでもかなり高くなってしまうようなきわどいヨーロッパ盤などは、こういう直販で安くイケることが多いですので、諦めていたあんなものやこんなものを一度探してみては。アンカレ山崎さん、使えそうですか〜?

【本日のレビューその1:BRUCE COCKBURN「DANCING IN THE DRAGON'S JAWS」】


71年作を当欄で激賞済みのカナダ人アコースティックSSWの79年作。これはDELUXE EDITIONとのことでスリップケース入りのボーナストラック追加版です。相変わらずギターはアコースティックのままですが、ポップス的なバンドサウンドをいい具合に導入し、フォーク由来の爽やかさとの絶妙な融合が素晴らしい、うーん。リッキー・リー・ジョーンズ風の軽く小っ恥ずかしい80年代寸前アレンジを取り入れたCURRITUCK COUNTY(ワシントンDCのギターポップバンドADENのヴォーカルの人のソロユニット)みたいな感じでしょうか。出過ぎない程度に木琴がポンポンと切り込んできたり、リズム表現の変化の幅が凄く贅沢だったり、当然主役のアコギは激ウマで、レイ・バービーみたいなラウンジ感も併せ持ってたりします。そしてやっぱりカナダ産はどこか「木製」って雰囲気がありますね。人肌に優しい手触り。歴史的にもスゴイんすよ…とか言うのをヤメようと思うほど、単純に感じ入ってしまいました。変に何かになろうとか、あるいは避けようとしてる様子もないし、かといってナイーブで手抜きな自分好きではなく、とにかく実直に自分の中の出せるものを突き詰めていったんでしょうね。出会ったことのない陶酔に聴き手をたちまち没入させて、しかもいささかの緊張感がずっと持続する音楽って、なかなかお目にかかれない最上級の芸術だと思います。SNAILHOUSEやTEASI好きな人も是非。あっボーナストラックのインスト2曲が異常に最高!!リマスターで揃えるべしか、参ったな。

【本日のレビューその2:ROB LAMOTHE「I AM HERE NOW」】


ということでカナダといえば何度でも登場します(→その1その2)、元RIVERDOGSのロブ・ラモス。これは99年の作品。何てことない写真をPCでちょいちょいと加工しましたみたいなジャケがやや安っぽいですが、内容はバッチリです。インディポップファン的にもOKそうなモダンで優しいアコースティックフォークに、そこはかとなく産業ロックな香りのフックも天然で溶け出した、美しくも秘めたる熱さのある極上な歌ものに仕上がっております。この頃はまだ昔の反動で(かどうかは知りませんが)レイドバックした感じでいきたかったんでしょうか、ドラムセットの代わりにパーカッション類で、またはリズム楽器抜きで慎ましくまとめてる曲が多いです。全体的にゲストの女性ヴォーカルがフィーチャーされ気味なところがますますIDAっぽい。あるいはEASTMOUNTAINSOUTHや、KEPLERからスローコア臭を抜いたみたいでもありますね。と、ハードロック畑じゃない人も引っ掛かりそうなキーワードを散らばしては「誰にでもアピールしまっせ〜」と呼びかけたい一心なわけですが要するに、何々リスナーとか関係なくいつの時代もただ素晴らしいグッド・ミュージックをやってる人なのであり、こんな人が細々と自主制作に近い状態でCD作り続けてて、それも殆どが入手の難しい状態なんておかしいじゃないすか!?と訴えていきたいわけです。あと30年経ったらRHINOのハンドメイドシリーズから再発になってもおかしくない至宝。まだ出回ってるうちに入手をば。

  6月16日
本日の収穫、バナナ名駅店にてKILLDOZER「TWELVE POINT BUCK / LITTLE BABY BUNTIN'」、TOE FAT「TWO」、CRAIG TABORN「JUNK MAGIC」、アマゾンマーケットプレイスで購入のSTRESSBALL「STRESSBALL」。中日ビル屋上のビアガーデンは来週水曜からですと。近頃食欲も落ち着いてきたので以前ほど燃え上がりませんが、夜風にあたりつつ灯りの消えないビル群を尻目に「まだ働いてる人もいるんだね、フーン!」と偏狭な優越感を軽く味わいながら食うジャンクな串カツやその他がたまりません。今年も行かねば。

【本日のレビューその1:STRESSBALL「STRESSBALL」】


93年、CROWBARCARBONIZED!!)をリリースしていた零細アングラレーベルPAVEMENT MUSICから。昔某誌のレビューページで見かけて、何じゃこりゃ、ジャケも凄いし絶対ゴミみたいのに決まってる…と思っていたものが今自ら望んで手元にあろうとは。これ現在SUPERJOINT RITUAL(ex.PANTERAのフィル在籍)のメンバーになってる人がいる、立派なニューオーリンズ・スラッジの一角なんですね。内ジャケのサンクスリストにはDOWNやEYEHATEGOD、SOILENT GREENらの名がズラッと。チューニングを6弦B♭まで下げ、CONFESSORを複雑度やや軽め、ズルズル度重めにしたような最高の超重量級変拍子スラッジをやっています。うおお。CONFESSOR似というのもTROUBLEがルーツとして共通してることを思うと納得。リフは冴えてるし、ヴォーカルはこれまたCONFESSORっぽく無意味に張り上げるハイトーン(こちらの方がもっと潰れまくってて半ばダミ声)でテンション高く、止まりそうな低速ビートに不意打ちでバスドラ高速連打をドブブッと挟んでくる一触即発的ドラミングもかっこいいではないですか。プロダクションもゴリゴリとドライな感触で93年にしては全然イケてます。何の問題もなく大名盤としか言いようがない出来。ちょっと3rd以降のMESHUGGAHっぽい感じもあるし、何だこりゃー。久々に変なもの掘り当ててしまいました。来たるべき「リズムのおしゃれなガッツリ・エクストリーム・ハードロックの時代」に向けて(来るかな〜…)早急に手に入れてください。

【本日のレビューその2:KILLDOZER「TWELVE POINT BUCK / LITTLE BABY BUNTIN'」】


上のレビューに名前の出たTROUBLEと同じ時代の同じシカゴに存在した、初期TOUCH & GOが誇るヘヴィジャンク大将KILLDOZERの89年・87年作のカップリング。泥酔してMELVINSになったBIG BLACKがBLUE CHEERとクリムゾンとツェッペリンのカクテルで更に朦朧としたかのような、狂気の変則スラッジ・ブルーズが最高。この派手すぎるリヴァーブ温泉サウンドも、当時のアルビニプロダクションを模した一種のステイタスですな。テンション的には全編べろんべろんの千鳥足一辺倒ながら、アルバム冒頭からいきなりマンドリンか何かがポロロンと鳴ってたり、それこそクリムゾンの"Red"のワンフレーズをチラッと借用してたり、機知に富んだ金太郎飴で飽きることなしに心地よく酔えます。今月登場のOPEN HANDでも思ったことですが、ヘヴィネスをひたすら煮込んでいくとそのうち宇宙が出てくるってのは真理のようですね。脳みそクラクラします。現存してたなら激しくライブ見たかった。HIGH ON FIREファンの人なんかにもオススメ。ん、この煙に巻くようなユラユラした長い変拍子はちょっとMAKE BELIEVEっぽいか?そして早回しにしたらJESUS LIZARDやBASTROになりそう。この感じがシカゴアンダーグラウンドの伝統なんですな。特に後半(87年「LITTLE BABY BUNTIN'」の方)がトチ狂っててナイス。

【本日のレビューその3:TOE FAT「TWO」】


更に遡って1970年イギリスへ。マイナーレーベルもののREPERTOIRE再発です。URIAH HEEPへ行ったケン・ヘンズレイを擁していたバンドの、彼が離脱した後の2作目。残飯にたかる虫を接写したエグい写真の至るところに、首から上が親指の先みたいになった全裸のミクロ人間(しかも何やら淫靡なマネをしている)がうろちょろと合成されているという悪趣味極まりないジャケが凄い。内容は総じてブリティッシュサイケハードの王道、のB級。CREAMあたりの影が未だクッキリ残る中、サバスに負けじと毒々しさを醸し出そうとしたり、唐突にフルートやシンセノイズを突っ込んでみたり、安易にPINK FLOYDにかぶれてみたり、とにかく力一杯「他の何か」になろうとするバイタリティの氾濫がいかにもこの時代の空気を表してます。色々胡散臭くても古いってだけでリアリティ3割増になってしまうのはこういう音源の特権で、ガギョーッと歪んだ(「ひずんだ」より「ゆがんだ」と読みたい)ファズギターも、短いブレイクを臆面なくただの8分連打フィルで埋めてしまうドラムの腕っぷしも、うわー本物だ!という興奮がもれなく付属してくるのはズルイ。WOLFMOTHERがフジロックに出てしまうような当世、余裕と冒険心のある向きはこのへんまで分け入ってみると楽しみが増えることでしょう。

  6月15日
収穫はなし。J-POP最新ヒットみたいな有線放送が流れている場に長時間いると、これを本当に誰かが知っててCD売れてるわけか…と信じ難いものも沢山耳にしますが、そんな中で宇多田ヒカルが流れると空気変わりますなあ。

【本日のレビューその1:TOM BECKHAM「SUSPICIONS」】


2000年FRESH SOUND NEW TALENT。ヴァイブ奏者の若きベッカム様は、参加作品を調べると、演奏よりアートワークで名前がいっぱい出てくる多才な人のようです。若手エースのクリス・チーク(sax)、THE BAD PLUSのリード・アンダーソン(b.)、80年代中頃からボチボチ録音のあるジョージ・シュラー(ds.)とのカルテットで臨んだ本作、1曲目からイカれた変則カリプソで豪快かつ優雅に飛ばしてくれます。いきなり半端じゃないです、THE DYLAN GROUPよ申し訳ない…。それ以降は一見割とオーソドックスなハードバップ風だったり、気難しくない昔のECM風だったりもしますが、空気読める上手い若手が前を向いてやってる作品なだけあって、シャキッとして聴き応えありますし、野心的になり過ぎない程度に随所でさりげなく溶け込む今らしい気配りが快い刺激に。ベッカム様はテクもフレーズも上々、ボビー・ハッチャーソンとかより上手いんじゃなかろうかという流暢で陰影のある演奏。もっそり優美にタメつつ刺すところでは刺してくるクリス・チークも好演ながら、ひねくれた泳ぎまわり方をするくせに死ぬほど安定感のあるリード・アンダーソンがお見事です。普段OJCものしか買いませんって人にもオススメできそうな1枚。

【本日のレビューその2:KIX「BLOW MY FUSE」】


以前から当欄で贔屓にしている、愛すべきアメリカ版暴走型AC/DCことKIXの88年作。音楽性は過去にご紹介したとおり(→81年作91年作)、要はモトリーの"Kickstart My Heart"ばっかりやってるようなバンドです。これぞロック・イン・アメリカ。イメージづくりは終始一貫していて当たりも外れもなく、と思ったらこのアルバムはバラード入ってますね。タイトルは"Don't Close Your Eyes"…ベッタベタでいいじゃないですか。何年も前、名古屋の栄えてるエリアの大通りに面した若者向けの靴屋で、大音量でCINDERELLAの1stが流れていたことがあって「うお、クール!!」と普通に感動してしまったことがあったんですが、でっかいリズムとでっかいリフと青筋ハイトーンスクリームでバッドボーイを謳歌するこういう一昔前のメインストリームHRって、年端も行かぬ高校生男子がオシャレのつもりで何も知らずにLIZZY BORDENのTシャツなんか着てOKになってしまうのと同様に、今や「ダサかっこいい」の「かっこいい」寄りとして通用するんじゃないでしょうか?いつまでもガンズだけが聖域扱いになってるのはおかしい。KIXは特にイモくさくない方ですから、無理してDOKKENやWASPに手を出してみて「アカンかった…」と諦める前にどうぞ。

  6月14日
本日の収穫、4月のバーゲン以来ひさびさに行った今池ピーカンにてJOHN COLTRANE「IMPRESSIONS」、YUSEF LATEEF / RALPH M. JONES III「WOODWINDS」(93年YAL)、BANCO DEL MUTUO SOCCORSO「GAROFANO ROSSO」、LARD FREE「III」、BRUCE COCKBURN「DANCING IN THE DRAGON'S JAWS (DELUXE EDITION)」、NEIL YOUNG「AFTER THE GOLD RUSH」「COMES A TIME」「ZUMA」「LANDING ON WATER」。ついでに今池ツルヤで靴買いました。29cm以上のコーナーのある店、名古屋市内で他にあったら教えて下さい。

【本日のレビューその1:NEIL YOUNG「LANDING ON WATER」】


大昔にCSN&Yを買ってみた以外は全くのニール・ヤング初心者な私ですが、今日ようやくまとめ買いしてきた中から真っ先にこれを聴き始めました。中途半端にダメになってそうな雰囲気がたまらない86年作。のっけからトシャーッ!と伸びるゲートリヴァーブでニンマリさせられるが早いか、憂えるダメなおっちゃん的なへろへろのヴォーカルが切り込んできた瞬間から空気がまるで一変。脳天気に聞こえていたシンセのシーケンスが途端に冷笑的な響きに感じられ、執拗な繰り返しがどんどん質量を増すようにして重くのしかかる。おおおマジック!続く2曲目ではTHE POLICEがすっかり捨て鉢になったようなノリに無駄に大仰な子供コーラスまで割って入り、その中でやっぱり一人マイペースなニール先生。エキセントリックというかプログレッシヴというか、語弊もありそうですがほとんどチャールズ・ヘイワードのソロに近いものを感じます。ニューウェイブ〜80年代MTVポップス風パーツに飲まれるかに見えて完全にオモチャといじり倒すこの余裕。適度にモスッモスッとアンビエンスを拾ったドラムサウンド(リヴァーブ病は1曲目だけでした)の不敵な遠近感は何だかSILKWORMのようでもあるじゃないですか。奇を衒ってそう言うわけではなく、こんなワンダー満載の全10曲は名盤と呼ぶよりほかないっすね。今くるりか誰かがこんなアルバム作ったら、きっと皆好きだと思います。

【本日のレビューその2:LARD FREE「III」】


変態の多いフレンチプログレ勢の中でもアヴァン寄りな存在として知られるLARD FREEの77年発表3作目。吹雪のようなシンセノイズの渦の合間にギターフレーズやリズムトラックの切れ端が見え隠れする、一聴するとジャーマンサイケか?と思うような混沌とした音ですが、何ともいえない歪んだリリシズムとクドクドしさがあり、確かに70年代後期HELDONも思わせるフレンチサウンド。更に現代音楽くささも巻き込むこの破天荒さは80年代日本アングラパンク〜ジャパノイズや、それこそきょうび「轟音・サイケ・トランシー・ポスト・ロックです!」と自称する奴らがやってるような音の理想形そのままにも思えます。リリースから年月が経ってひとりでに増した年輪のせいかも知れませんが、言葉が確かで視界が凄くクリアで、すなわち演出は相当モヤモヤしてるんだけどそのモヤモヤ自体が細部までクッキリ浮かび上がってくるような出来上がり。DIRTY THREEしかり、抽象的な表現形態をとる音楽でこういう感覚を得ると「上質だなあ」と思います。普通にボアダムスとか大友良英とか好きな人が聴いても良さそうですよ。プログレの遺産侮れず。

  6月13日
収穫はなし。最近ままならないのは「布団に入ること」です。22時から26時が意味もなくあっという間すぎて毎日びっくりしてます。

【只今のBGM:THE BAKER GURVITZ ARMY「THE BAKER GURVITZ ARMY」】


GUNTHREE MAN ARMYの残党とジンジャー・ベイカーが合流したトリオバンドの74年リリース1作目。THREE MAN ARMYは70年代ブリティッシュハードを突然変異的に筋肉質化させた、さながらプロト・IRON MAIDENとも言えそうな音楽性を誇っておりましたが、ここではアートロック方向に幅が出て、YESの香り(コーラスワークと角ばった変則ベースが特に)のする初期オジーバンドなどというあり得なさそうな形容が案外シックリ来る、絶妙な風合いへと更に進化。シンセの終末的なフレーズがいきなりビンビン来る1曲目冒頭なんか、紋切り型を武家の商法でムリヤリ受け売りしてくるような強引さが笑えます。あと元CREAMというドラマーの出自がひびいてか、ギターまで時々、かつてあまりフィーチャーすることのなかった大仰な哀愁のブルーズ風リードを聴かせるようになってるのも面白い。この都合のよい流されっぷりや血迷いがB級ならではの楽しさでもあります。しかしこれではエイドリアン・ガーヴィッツ(G./Vo.)の暑苦しさは存分に伝わりませんかな…。これはこれで完成した音ですが、先にTHREE MAN ARMYでキャラクターを把握したのちにコッチも聴いてみるという順序を踏むと、楽しさ倍増となることでしょう。

  6月12日
本日の収穫ROB LAMOTHE「I AM HERE NOW」。カナダのNEW WORLD RECORDS、また小分けに送ってくれました。あんた達、これじゃ売っても送料でトントンじゃないですか…泣けるなあ。依然3作品が「バックオーダー中のブツは入り次第送るっす。待たせて申し訳なし」との状態になってますが、この遅さは本当に再プレスしてるのか?良心的なんだかレイジーなんだか判りませんな。

▼某筋から送って頂いたANTHRAXの「AMONG THE LIVING」リリース直前の東京公演のブートを聴きました(ありがとうございます!!!)。2nd収録の幻の名曲"The Enemy"やら、のちに「I'M THE MAN」EPにも収録される"Sabbath Bloody Sabbath"(BLACK SABBATH)、更に意外な"Living After Midnight"(JUDAS PRIEST)のカヴァーなんかもやっててもう最高。実はこれがブート初体験だったりしますが、本当に好きなバンドだったらいいものですねブート。

【本日のレビューその1:OPEN HAND「YOU AND ME」】


TRUSTKILLからの2005年作。デビュー作ではよくあるニュースクールくさいエモをやってたバンドですが、このアルバムでえらく大化けしたとの情報を耳にしてゲットしたブツです。のっけからいきなりサバス("Children Of The Grave"系)とSHINERが合体したようなスペイシーな豪快シャッフルでブッ飛ばされてのけぞる。その後もあれこれカラフルな、グランジ/ストーナー/ハードロックがスタイリッシュに統合されたかのような世界が展開され、無理に言うならCOPELAND+QUEENS OF THE STONE AGE≒RIDDLE OF STEELてな雰囲気。商業性も良心も同時代性もひとしきり踏まえた上で、大胆かつ慎重なやり方で、ロックのロックらしい醍醐味を今一度おいしく堪能しましょうという最近のこういう風潮はもうドンドンやれって感じですね。思春期を93〜95年頃に過ごした者の血が騒ぎます。ついでにSOUNDGARDENの偉大さも身に染みる。そしてそんな文脈性をわざとらしく匂わせることもなく、ひたすら己のニュー・ハード・ロックを追及しているこのアルバムは実に素晴らしいですわ、ひと言で。よく知ってるようで見たことのない宇宙を見せてくれるような、でっかさが広がっております。若手でそれがやれたら本当に大したもの。

【本日のレビューその2:PYOGENESIS「PYOGENESIS」】


邪悪度高めのデス系作品を数多くリリースするフランスのOSMOSEから92年に出ている、5曲入りのデビューEP。極初期OSMOSEのこのどうしようもない貧乏臭さと、それゆえの強烈な鬱屈具合が好きです。DARK TRANQUILLITYとかで儲かってからはもう信用出来ん。さてこの人達は少しばかり有名なドイツのバンドで、ゴシックブームの出し抜き開き直り競争の果てに中途半端にオルタナ化(脱メタル)していった、クタクタしたDARKSEEDみたいなスタイルの持ち主です。デビュー当初はどうだったかというとこれがやっぱり、当時なりに見事に時流に飲まれてました。女声コーラスを配したり、唐突にクリーントーンのストロークを挟んだり、シンフォニックなシンセを被せたりしつつ、禍々しいデスメタル然とした姿も多分に残した、始原ゴシックのよくある感じ。PARADISE LOSTの「GOTHIC」が91年リリースだったからまあ耳は早い方だったのかも知れません。MY DYING BRIDEやANATHEMAほどの深遠さも見せられず、好き者が後追いでやってる感モロですけども、色々と至らないのに意気込みだけひしひしと伝わるのがこの手の音源のいいとこですね。ベーシストのクレジットがあるのが間違いだろうと思うほど終始全くベースの聞こえないアナーキーなミックスとか、変にロックなファストパートがあったりとか(しかも「カモーン」なんて叫ぶ)、ファストコアのCDと見紛うような完全モノクロ1色刷りのアートワークとか、愛らしいものです。専門職の愛好家の方々、よろしくお願いします。私も勿論売ったりしませんよ。

  6月11日
▼今日はサポートでドラムを叩いているシロクマのライブで、中心人物澤田くんの地元・岐阜へ行ってきました。岐南町HOCUS POCUSなるいろいろ複合施設みたいなとこで催行されたフリーマーケットのついでの出し物として。で、枠が余ってるからソロでもどうですかという話になってて、久々の一人舞台も便乗してやってきました。ディレイループを濫用(その後ろにピッチシフターを噛ませてループ中のコードチェンジにも対応)してのシブ好みなセットリストで攻めてみるも、案の定反応は引き気味の様子。それでも終演後、女子高生風の3人連れさんがCD買いに来てくれたから良かったっす。
1. Sunrain / ASH RA
2. Europe Endless / KRAFTWERK
〜Human Behaviour / BJORK
3. ルビーの指環 / 寺尾聡
〜Parisienne Walkways / GARY MOORE
〜恋人よ / 五輪真弓
4. Iron Man / BLACK SABBATH
5. 卒業 / 斉藤由貴
6. 渚 / スピッツ
7. 老人のつぶやき / オフコース
〜Islands / KING CRIMSON
8. 赤いスイートピー / 松田聖子
9. あなたに会えてよかった / 小泉今日子
中盤でドロドロし過ぎたのが失敗でした…日曜の昼間のしかも野外で。"Iron Man"はいいアレンジになったのでそのうち録音します。

▼さて岐阜といえば本日の収穫、柳ヶ瀬商店街近くのざうるす蕪城店にてPYOGENESIS「PYOGENESIS」(91年OSMOSE!)、CRAIG GOLDY'S RITUAL「HIDDEN IN PLAIN SIGHT」、SHIHAD「KILLJOY」、バナナ岐阜店にてBOTCH「UNIFYING THEMES REDUX」、MOONDOG「MOONDOG」、THE BAKER GURVITZ ARMY「THE BAKER GURVITZ ARMY」。見慣れない品揃えに興奮しつつも泣く泣くこの量に絞ってきました。特にざうるすの得体の知れぬマイナーメタルの入荷は半端じゃないです。月1くらいで行きたい。

【本日のレビューその1:MOONDOG「MOONDOG」】


50年代からPRESTIGEに録音を残している盲目のマルチインストゥルメンタリストの69年・71年作のカップリング。民族音楽/ミニマルとジャズと交響楽、室内楽がドンブリになった正体不明の音楽、これは何なんでしょうか。現代音楽畑の方でオケにジャズドラム入れてスウィングさせてみました、みたいな試みはあるけど、この人はどっちに足ついてんだか判りません。判らなくてもいいんですが、余りに一般人の通念と関係ないところにあり過ぎてびっくりするので。スコア然とした骨組みはしてるけどその着想に頭デカイ感じは一切ない様子で、ザッパあたりのいつまでもオチを見せない悪ふざけを前にクエスチョンマークを連発させながらただただ座り続けるしかない、みたいな奇特な拘束力。「モンド・ミュージック」とか言われちゃうんでしょうかね。前半はいまいちスウィングしきらないオケの微笑ましい演奏でちょっと余計なハテナが増えてしまってますが、あやしいパーカッションのループと人声ポリフォニーが変拍子で畳み掛ける後半が特に壮絶。AKSAK MABOUL、コーネリアス、スコット・ヘレン、その他後世のあらゆるコラージュ作家のところに手渡ったものの胚がチョロチョロと芽吹くこの短い26曲は、ほとんど超常現象じみてるようにすら思えます。かたやドイツで同年にFAUSTが仕掛けた謎と比べると、実に飄々と無心な身のこなしが却って恐ろしい。何の啓示でこの音を世に下ろしてきたんでしょうね。他人がスタイルだけ真似したとしてもたちまち失効してしまうであろう不思議な「空気のニオイ」なのか「そのもののオーラ」なのか、そういうものを感じます。

【本日のレビューその2:FLOSSIE AND THE UNICORNS「L.M.N.O.P.」】


こちらは現代の堕落派ハイテンションバカ。SKIN GRAFTおかかえのナンセンス・オルガン・ガラクタ・インスト・ユニットQUINTRONの一員、ミス・プッシーキャットのリーダー作みたいです。多分2000年かそのへんのリリース。喋りの早回し再生とカシオトーンのイタズラと物音とアホなギターノイズが12分に渡ってグダグダに交錯する寸劇仕立ての1曲目"Free Guitar Lessons For Animals"(筋書きはタイトルのとおり)の強烈な脳みそ撹拌パワーにいきなりバカになりそうです。いや、バカにされている。多分これ向こうの人は何か悪いものと一緒に摂って楽しむんだろうなあ。もしくはその感覚の擬態化か。退廃的ナンセンス漫画のような後味の悪さがたまらん。70年代ジャーマンロックやRIO周辺や実験音響界の先達が、頭をひねって思考軸を新生することによって少しずつ前進させてきた音楽体系への反逆を、その成果だけかっさらって悪質な愉快犯的福笑いをゲラゲラと繰り広げる、全くもってマトモな音楽ではないですが、音響表現としての完成度(あるいは成立度)は何故か相当な域です。変態だ。救いようのないマジカルパワーマコというか。ホントにSKIN GRAFTは極上のうんこばっかりタメ込んでて最高のレーベルです、参った。

  6月10日
収穫はなし。アボカドはいい食べ物ですなあ。日本ではいつ何のはずみでアボガドになったのか不思議なもんです。関係あるようでない話になりますが、Jaki Byrdがジャッキー・バイアードならTHE BYRDSはザ・バイアーズなんでしょうかね。今更ヘンですね。言葉の正しい使い方についてあれこれ言うとき、もともとのいわれを持ち出して「ゆえにこの用法は本来的に誤りである」みたいな論法がよくありますが、それよりこの「今更ヘン」の感覚で少しずつ現状に見合った形にリフレッシュされていくのが、人の使う言語のあるべきというかあればいい姿ってもんじゃないのかと思います。思いますが、今こうやって誰でもブログとかを通して自家パブリッシングが可能になってて、たまに「あの言い回しってこういう使い方でよかったかな…」と、ありそうな短い文面を打ち込んで検索して知らん人のブログとかで実際使われてる例を参考にしようとすると、結局迷ってる選択肢のどれが正しいのかわからないくらいグチャグチャな検索結果が出てきて途方に暮れたりする(→例1例2例3)こともあるわけで、そこまで是としてしまってはさすがに日本語が危ういなと、まあ難しい問題です。そんだけでした。

【只今のBGM:BUDDY RICH「THE ROAR OF '74」】


いつでも最高、バディ・リッチ・ビッグ・バンド。これは73年録音で翌年リリースの品。時代柄かベースがエレベになってます。奏者はトニー・レヴィンとあるけどあの(80年代KING CRIMSONの)トニー・レヴィン?AMGの人違いでなければそうみたいですね、ハービー・マンやデオダートなんかとも仕事してたみたいです。知らんかった。さておき、パーカッショニストとの同時攻撃で打楽器2人で5人分くらいの音数を連射してくる高速ラテンな1曲目からいきなり最高潮。目が細かくてもビキッビキッと美しく反ったこの強烈なスウィング感はやっぱり卓越してます。本当にマシンの域。1曲目というかこれ全体的にラテン〜ファンク色の濃いアルバムでした、娯楽イェーイ!な60年代末の作風にはない淫靡な湯気がモヤモヤと。ジミヘンや「BITCHES BREW」の余波を物語るアブナいカオス感が自然に入り込んでるようです。音数の洪水と極太の唸り、そして勿論完璧な統率。"Big Mac"(凄いタイトル)終盤のドラムソロなんぞ野生児ボンゾすらなぎ倒しそうなパワー。あ〜こりゃ1曲ずつここが凄いあれが仰天と書いても足りませんな。ビッグバンドまるごとファズ一発踏んじゃったかのような豪快な暴れぶりに白旗揚げるほかありません。ほとんどSUFFOCATION聴いてるのと同等の被撃感。これ仕切ってるバディ大先生、このとき御年56歳。神以外の何でもないですな…。

  6月9日
本日の収穫、英CARGO RECORDS(レーベル業もやってるけどディストリビューターっすね)から届いたROB LAMOTHE「LONG LAZY CURVE」、TWO FIRES「IGNITION」(ex.THE STORM!)。よし来た。

【本日のレビューその1:ROB LAMOTHE「LONG LAZY CURVE」】


日本で一番ロブ・ラモスひいきのサイトといえば当方ということにしていこうと思います。元RIVERDOGSのシンガーで、その後コツコツとソロワークを続けていたカナダ人SSWの、正にリリースしたての最新作。ここ数作のIDAと見紛うようなこれまでのフォーキー&質素なスタイルも一部据え置きにしつつ、シェリル・クロウとかみたいなメジャー感というか日なた感というか、往年のファンも喜ぶような見晴らしのいいロックテイストが曲によって結構大幅に復活。インディロックファンにはキツイのかも知れませんけども、そんな囲い込み云々は超越したオールタイム・グッド・ミュージックに仕上がっとるのではないでしょうか。ともっぱら言ってみたい。80年代メインストリーム完全対応型のブルージーな熱唱スタイルを身に付けていながら、適度に力を抜いたインドア仕様なノリで優しく歌ってくれるのがこの人の素晴らしいところで、聴き応えの気持ちよさと聴き疲れのしなさがこんな風に両立してる歌い手は本当に稀。ムキッと大粒なのに最高に良心的。普通にFMで流れてヒットしてもらいたいなあこんなの。

【本日のレビューその2:TWO FIRES「IGNITION」】


全盛期JOURNEYのびっくりソックリバンド・THE STORMの元メンバーが今やっているバンドの2ndです。うおー、もっさいドラムサウンド…アンビエンス多めの生っぽい響きをバチッと締めるノウハウがないメタル畑のエンジニアが下手に「よし、今っぽくラウド&ロウにいこう」とかいって失敗したプロダクションの典型じゃないですか。素直にオンマイク全開でバッシャバッシャとゲートリヴァーブ乗せてりゃいいのに。何か全体的にも予算がなかったっぽい貧乏くささですな。そんな指摘はさておき、内容はもうスティーヴ・ペリー激似のヴォーカルを活かしてJOURNEY再臨サウンドのオンパレード。何の工夫もないし、新しさも閃きもないし、JOURNEYの「ESCAPE」や「FRONTIERS」があれば存在する意味すらないともいえますが、その世界を愛するがあまり、もっともっと濃縮したものを求めてしまう哀しきマニアがこの世には結構いるのです。何のことはない、最高ですわ。数あるフォロワーの中でもこの純度の高さは他の追随を一切許しませんね。THE STORM時代からつくづく凄いです。総じてアダルト寄りの湿り足りない雰囲気ながら、ちょっとSURVIVORっぽいドロドロ感も一部で加味されたのが新機軸といえば新機軸か。この4曲目がギターソロまで流れ終わって広瀬と酒井が「いいですね〜」「や、いいですよ」と喋り出す様が目に浮かびます。(何、今は広瀬でない?知りません…)胸キュンメロハーと言われて訳がわかる方のみどうぞ。

  6月8日
収穫はなし。最近やっていることは、荷物を待つことですな。イギリス便とカナダ便早く来んかいな。

【只今のBGM:ZEENA PARKINS「MOUTH=MAUL=BETRAYER」】


TZADIK RADICAL JEWISH CULTUREシリーズの品。96年リリースということでまだ通し番号9枚目です。ジーナ・パーキンスは元ART BEARS組+リンゼイ・クーパーというメンツで結成されたNEWS FROM BABELで世に出て、その後もジョン・ゾーン、フレッド・フリス、トム・コラ、エリオット・シャープ、マーク・リボーほかNYアンダーグラウンドの錚々たるメンツと仕事を共にし、最近ではビョークとも絡んでしまっているという大物にして、ロック界には珍しいハープの使い手であります(その他ピアノとサンプラーとしてクレジットあり)。このアルバムではヴァイオリンやチェロなどの弦楽器とドコスコ鳴りまくるドラム(これまたTZADIK界隈で録音の多いジム・パグリーズ)がNO NEW YORK的にぶつかり合い、更にディジュリドゥ、ドイツ語の響きに近いロトヴェルシュ語(?)なるローマ時代のユダヤ系言語の流れを汲んだ死言語の語りなども導入した、相当にラディカルかつ非ノイズな、現代音楽ロックともいうべきアヴァンミュージックが塗りたくられておりまして、今猛烈に効いてきてます。BLACK DICEやらALL SCARSやらと全然タメ張るどころかボキッと踏み越してしまいそうな異様なテンション、パワー。フリージャズ的アメーバ構造とは微妙に違って、この手の演奏につきものの「次の音待ち」「重圧的な間」が一切なく、かといって黒ベタな轟音暴力になることもなく、360度展望でテンポ良くコラージュがなされていくので(オビの解説文では「タペストリー」と表現されています。正にその感覚)比較的ぼーっとしてても勝手に興奮できます。この自然な深みはやっぱりユダヤ文化の深みなのか?トゲトゲしさが心地よくさえあるという不思議。名作に違いなし、買いです。

  6月7日
収穫はなし。生活圏内でカルガモのつがいに遭遇したので激写してあげました。

その後、鍋にして…

皆ですっかりいただきました。最初の方だけ本当です。

【本日のレビューその1:STACKRIDGE「STACKRIDGE」】


日記中のトリ写真ついでに今日はトリジャケで攻めてみようと思います。あのヒラヒラ飛び立ってくやつあったよな、と最初に思い当たったのがこれ。プログレファンにはお馴染み、ニューウェーブ世代にはKORGISの前身といえばお判りかも知れない、大英帝国の良心を体現する名バンドSTACKRIDGEの71年リリース1stです。マッシュルームくさい多声フォーキーポップと、クラシックへの造詣をナチュラルに漂わすいかにもブルジョワ育ちなアートロック(初期GENESISに近いかも)が良い塩梅にクロスした、何とも優雅で温かみのあるなキャラクターはここで既に確立済み。まだ多少マッシュルーム寄りなため、続く2・3作目ほど好きではなかったんですが、久々にじっくり聴き返してみるとこれがよい感じです。ポスト・エリオット・スミスみたいな扱いで今ちょうどこんなことやってる新人SSWもいっぱいいるんじゃないでしょうか。プログレッシャー好きする2nd以降より却って普通の人にウケがいいかも知れませんね。そんな中にちょっとした意外な和声展開や、大味すぎる定位割り振り(ヴォーカルが左一杯、ドラムが右一杯とか)など、前時代的なサプライズが当たり前の如く存在してるのも楽しいところ。CARAVANの「グレーとピンクの地」と並んで牧歌系レトロアートポップ探検家には必須ですかな。

【本日のレビューその2:FAITH NO MORE「ANGEL DUST」】


本日のトリジャケその2ということで。マイク・パットンが参加して2作目、バンド通算4作目となる92年のアルバム。この頃のFNMてのはどうにもシッポを掴ませないバンドでした。うっすらファンキーな構え、それと乖離しながら無理矢理同居するメタリックなエッヂ、意味不明の大仰な演出、妄想パワーをブチまけるヴォーカル…と、本当はじゃがたらみたいになりたかったのに大槻ケンヂ氏が『ファンク』という単語を知らなかったがために何故か歴代速弾きギタリストを起用してメタルバンドのようになってしまったという筋肉少女帯と、佇まい的にも音的にも何だか近いものを嗅ぎ取ってしまいます。FNMの方がもっと確信犯で「ミクスチャーの未発見ポイント」を手探りしていた感じが強いですが。ちょっと米米CLUBみたいでもあるかも?(声ちょい似!)レッチリかぶれ風のエセファンク味がもう少し濃厚だった前作から、ブラックアルバム・ショックを経た今作では、主にギターパートだけが思い切ってメタリックな重装備でキメてきてて、トータルでのツボをどこにもっていけばいいのか判らないというか、何をどう聴いても収まり悪すぎるのに、表現としては凄く堂々と完結しているという謎な仕上がり。マイク・パットンがガッシリと手綱をひいてグッとストレートな印象になったこの後の2枚(いずれも傑作)でやっと本当の正解が出たのか、これはこれなのか、未だによくわかりません。ジム・マーティンの単独名義作も聴いてみたのに。オルタナ史の永遠のエニグマとして、今後も我々の前に不敵に横たわっていくことでしょう。うーむむ。叫びまくりの"Jizzlobber"は全然MELVINSあたりが今やったとしてもあっぱれなキラートラックだったりします。何なのさ〜。

  6月6日
収穫はなし。10分1000円で散髪ができるQBハウスで夏仕様になってきました。初めて行ってみましたが若者として問題のない出来です。松屋みたいなチケット先買い制で、霧吹き以外の水を一切使わない(カット後の仕上げには据え置き型の超ロングアーム改造掃除機みたいなのを使用!)ことで大幅な時間短縮を実現してるようです。普通の美容室で半強制的にやりとりされるようなどうでもいい会話の類も一切なし。伸びた髪を短くしに行く手間に人間性など求めない私には全くもって充分でした。別に変にスタイリングとかしてもらいたい訳じゃないし、こんなんただ短くするのくらい1000円で妥当だろう…という向きは行ってみたらいいです。あー頭涼しいなあ。

【本日のレビューその1:OMEN「THE CURSE / NIGHTMARES EP」】


666の日にはこれしかないっす。マイナーUSパワーメタルバンドの86年リリース3作目、邦題「殺戮の祈祷」。翌年に出したEP(初期作の曲の再収録+新録)とカップリングしての96年リイシュー版です。スラッシュメタルとパワーメタルの境界がまだ曖昧だった頃特有の硬度をもつ、メロディアスかつダークでオカルティックな作風と、ハスキーなガナりハイトーンとの組み合わせ、これは初期METAL CHURCH、HEATHEN、SANCTUARY(もしくは3作目くらいまでの聖飢魔II)あたりとほぼ同一ラインですな。随所にIRON MAIDENやMERCIFUL FATEの匂いも仕込みつつ。まあ完全にメタル純正培養な音で、メタル墓掘り人のためだけのアイテムの域を出ないスケール感にまとまってはいますが、今のバンドではあり得ないバランス感覚が貴重なだけに(WOLFあたりが上手く再現してくれそうな気もしますが…)一定の需要はあり続けることでしょう。EPの方収録の"Shock Treatment"名曲。

【本日のレビューその2:DANZIG「III -HOW THE GODS KILL」】


せっかくなので不吉そうなのをもう1枚。言わずと知れた元MISFITS〜SAMHAINのグレン・ダンジグが80年代末から率いているグループです。中古市場では国内盤・輸入盤問わず800円以下確定という扱いを受けていますが、ゴミではありません。確かに一時期からNINE INCH NAILSかぶれみたいになってしまってますけども、初期数作においてはMISFITSで実践していた筋肉メロディックパンク、もう少し不穏な空気を強めたSAMHAIN、という流れの線上で更に大胆にゴシック方向に振り切った非常にオリジナルなアプローチを試みているのです。言うなればKISSもしくはALICE COOPER+BLACK SABBATH+BAUHAUS+METALLICAといったところ。
 ということで今回は"Mother"収録の大名盤1st、ではなく敢えてこの92年3rdを。当時PARADISE LOSTが牽引して注目を集めていたデスメタルのゴシック化ムーブメント=ゴシックメタル勃興に同調するかの如く静的表現に磨きがかかっていて、かつNIN的インダストリアルサウンドになびいてしまう前の最後のアルバムなのです。ギーガージャケがイカしてます。ストーナー風とも何とも言えないアナログ感バリバリな暗黒リフの響きも孤高なら、やけにブルーズフィーリングをたしなんだ(本当に随所で50〜60年代の歌い手みたいです)グレン・ダンジグのマッチョな美声ヴォーカルも他に類を見ない強烈な存在感。この7曲目なんぞはさながらDISSECTIONのようでビックリ!べっとりしたQUEENS OF THE STONE AGE、サタニックな初期TYPE O NEGATIVEなどと例えたくなるこの不思議な塩梅は初期DANZIGだけ。次に見かけたときが買い時です、是非ともどうぞ。

  6月5日
収穫はなし。バンドの練習から帰り遅い夕食を摂りつつ「ニュース23」を見るでもなく見ていて、まあ村上ファンドの話なら朝から散々見たわ…という様子の母親が、今日何曜、今何時、などと番組表を確認することもないままにスッと「くりぃむナントカ」にチャンネルを替えたのが衝撃的な夜でした。深夜番組お詳しいのですね…。

【只今のBGM:CHEER-ACCIDENT「VARIATIONS ON A GODDAMN OLD MAN VOL.2」】


当欄で常に激賞中(→その1 その2)のシカゴ産詩情派変拍子プログレポストコアバンド・CHEER-ACCIDENTの、90年代の未発表音源集の類のようです。リリースはSKIN GRAFTではなくPRAVDA。昔からアルビニ録音が多い人達なので多分これもそうなんでしょう。内容の方はこれがまた、寄せ集め盤ならではの好き勝手が炸裂してて最高。GENESISそのまんまのファンタジック変拍子チューンから、TRANS AMミーツEPIC SOUNDTRACKSかと思うサイバーSSW風(?)、THE RESIDENTSの毒電波に乗っ取られたTHE COCKTAILSみたいなの(??)、ビリー・ジョエルのカラオケ音源をデタラメにピッチシフトして遊んでるうちにKRONOS QUARTETが加勢してきたようなグダグダなインスト(!!)など、起き抜けのうわ言の如きあらぬ飛躍の嵐がどこまでも面白い。そして中心人物シム・ジョーンズの歌だけはいつでも至ってマジメなのがまたいいところです。「プレイヤー冥利にがんじがらめになった人の無責任な試行錯誤によるそれらしい生成物」みたいなのには全然なってなくて、あくまで目つきのしっかりしたアート然たる素描集といった佇まい。気合入った20分の大曲とかは入ってないので、正規フルアルバムよりも人によってはとっつきやすいかも?意外と最初の1枚に勧めてしまおう。バンドの本質はこれで押さえられてると思います。

  6月4日
収穫はなし。「私、一年に何度か部屋の大掃除をします。」と言うと凄くキレイ好きみたいですが、大掃除規模で頑張らざるを得なくなるまで日頃自室のエントロピー増大を放置させているだけです。今日は豊田からヤングミュータントハードコアチーム・THE ACT WE ACTのゴミヘン君と、今度のSOME GIRLS名古屋公演に出演決定したALLieのタピ君両名を招いての自室のメタル/プログレ/フリージャズCD聴き会催行を可能にすべく、また大掃除をしました。いやー片付いた。そして私が矢継ぎ早にドンドン聴かせたブツの中では、ジャック・ディジョネットの初リーダー作、HENRY COW、SIEGES EVEN、ATHEIST、その他スラッシュメタルいろいろを喜んでいただけたようでした。そして近所の韓国家庭料理の名店「プサン」でシメ。ハードレコメンとマスメタルを見境なく流すDJの需要、どこかにないでしょうかね。久し振りに耳にしたTHE MUFFINSや初期ATHEISTがクソかっこよかったので。クロスフェードしまくりますから呼んで下さい。

【只今のBGM:MIKE WATT「CONTEMPLATING THE ENGINE ROOM」】


部屋の掃除で掘り起こされた1枚。MINUTEMENのベーシストの97年ソロです。昔MINUTEMENが好きだから買って、だけど全然聴いてないなと思って売り裁判にかかりかけたところで何気なく裏ジャケを確認したら、ATAVISTICあたりのフリージャズ作品でギョイギョイならしている暴れギタリストのネルズ・クラインが全面参加しとるではないですか(ちなみに後で調べたところドラムは80年代トム・ウェイツのバックで叩いていた人)。と気付いて保護したっきりまたそのへんに転がってました。多分購入以来5年以上振りに聴きますが、これはなかなか、煮崩れて何だか判らなくなってるヴェテランの静かなる意欲作ですよ。フォーク/カントリー、ファンク、パンクがごっちゃになってるのは後期MINUTEMEN〜FIREHOSEと同様ながら、コンセプトアルバムとのことなので曲ごとのテンションの浮き沈みが極端(特に静かな方向に)で、トリオ演奏でその感じを出そうとすると自ずとポストプロダクションも大胆になり、結果「気の利いた音響細工でナイスミドルに仕立てられた変な筋肉質カントリー親父」といった何ともいえない境地に至っています。時にスローコアのように、時にランディ・ニューマンみたいな大仰系アメリカーナSSWのように、ネルズ・クラインの面目躍起で柔軟かつ幅広く対応。あっこれはもしかして、曲にもよりますけども、ヴォーカルをすげ替えればそのまま再結成後のJOAN OF ARCですと言って通用しそうじゃないですか。オサレ感ゼロですがアートしてます。シブ好みの中にもワサビが効いてほしいという人に。

  6月3日
収穫はなし。卒業した大学が昨日今日と学祭です。所属していたバンドサークルでは、学生会館で朝から晩までライブをやってて、自分の出演しない時間帯に控え室の窓から学生会館の屋根っぽいところに出て、ビールをあおる人々に混じって半裸でアイスをむさぼったりという、正月休みにも勝る超絶自堕落な時間を過ごしたものでした。今年はOBの集まり以外完全不参加でしたがそろそろそれも良いでしょう。自堕落が楽しいのは既に普通の人より多めに思い知ってるので。(単位のギリギリの計算間違いによって殆ど履修すべき授業もないのに無駄に1年留年してしまったことがあります。アーメン。)あーしかし後輩がやったOGRE YOU ASSHOLEのコピーバンド見たかった〜。

【只今のBGM:SATYRICON「INTERMEZZO II」】


本国ノルウェーでは新作が出るとタワーレコードで平積みの山が売れまくるというブラックメタルのスターバンドSATYRICONの、99年リリースのフルアルバムに先駆けて同年に出したEP。オリジネイター世代のバンドというのはやはり「ブラックメタルに聞こえる条件を満たすようにやる」といったせせこましさがなく創造的で、新しいパラダイムを軽々と提示していってくれるのが凄いですね。こういうバンドがまだ元気に頑張ってるからこそ、生誕15年余も経とうとするこのジャンルが未だにフレッシュであり続けてるのかも知れません。B級スラッシュの香りを絶妙にブレンドしながらも荘厳かつ邪悪に組まれたリフに、一瞬たりともブラストを乗せずして聴き手の精神を強烈に圧迫するこの冒頭曲からして、「チェックシートをクリアする体操競技」のような定型的なものに思われがちなブラックメタルが本当は「強い信念の芸術」であると証明するかのよう。一変して道路工事のような激ブラストが暴走する2曲目では正統派としての底力を見せつけられます。1349でも叩いている名手フロスト先生凄過ぎです。あとは3作目「NEMESIS DIVINA」タイトルトラックのミックス違い(多分)と、最後にULVER(もしくはCELTIC FROST)っぽいアンビエント&インダストリアルなエレクトロニカ風トラックの合計4曲収録。この分量にこれだけの内容をあっさり盛り込むとは、さすがの一言。未体験の方はとりあえずアルバムの方から入ってもらうとして、ファンはスルーせず拾っときましょう。

  6月2日
収穫はなし。「でぶや」はいい番組ですな〜。デブネタの汎用性の高さから来るお約束とサプライズのバランスが気持ちよくて飽きません。長続きするバンドの良さに似ている。

【本日のレビューその1:QUIET RIOT「THE RANDY RHOADS YEARS」】


オジーのソロ名義初期2作に多大な貢献を果たした夭逝のギタリスト、ランディ・ローズを輩出したことと、彼を引き抜かれた後の3rdアルバム「METAL HEALTH」のスマッシュヒットとで名を知られる元祖80年代USヘアメタルバンド・QUIET RIOTの、ランディ在籍時の貴重音源10曲をコンパイルした盤です。RHINOから93年に出てます。これが編集盤だからといって全く侮れない内容。ハードロックがまだ金属質じゃなかった時代の、しかしVAN HALENの登場によって明らかにエンジン性能が上がってて、THE SWEETみたいな蛍光グラムロック色もEAGLESみたいな良心アメリカンな香りもツェッペリンへの生半可な憧れも新鮮なままに混じりあった、「いい時代のヤング・ロック」としか言いようのない音になってます。トッド・ラングレンがブレイクちょい前のJOURNEYになってしまったというか。とにかく無垢で清々しいのがよい。ランディのギターはかなりエディに触発された雰囲気ながらも、独自のクラシックの素養もちょいちょい顔を出し、単なる追従に終わらない深みが既に垣間見られます。荒々しいトーンと大雑把なハンマリング&プリングの中にも繊細な調性感への気配りが光るというあのスタイル。いやーこれは、LONG ISLANDのマイナーメロハーを必死こいて買い集めてるような人間にはマストでしたわ。10年以上見過ごしていたとは情けなや。

【本日のレビューその2:SAVATAGE「DUNGEONS ARE CALLING」】


ランディ・ローズがオジーのもとで開花させたオカルト様式美の数少ない後継者といえばSAVATAGE。先月予告のとおりまとめ買いのリマスターを小出しにピックアップするシリーズその2ということで。これは85年COMBATリリースの2作目。RAINBOWの"バビロンの城門"を彷彿とさせるあやしい冒頭曲からいきなり最高潮です。歌のバックに豪快なオブリを捻じ込む構図などはモロ初期オジー!"Mr.Crowley"や"Mother Earth (Revelation)"や"Diary Of A Madman"みたいな曲ばっかりやってくれてりゃ良かったのにというカルト路線好みの欲張り様式美リスナーを悶死させんばかりのど真ん中剛速球ストライク。その後徐々に希薄になっていくようなNWOBHM的イモ臭さもこの頃はまだ多分にあれど、ジョン&クリスのオリヴァ兄弟が放射するオーラの振り切れっぷりによってか、凄く堂に入った感じに出来上がっているんですな。マニアックな音楽性にも関わらずそりゃ出世するわというポテンシャルをビシバシ感じます。DEAD CHILDみたいな擬似オールドスクールメタルの元ネタを深入りし過ぎずにたしなみたい向きには正に最良であるとともに、AGENT STEELとかOMENとか存在的にマイナーなバンドばかりに焦点を絞ってしまっているマイナーメタル好きの諸兄も「有名バンドじゃーん」と敬遠せず確実に押さえておくべき聖典でしょう。ちなみにリマスター効果のほどは「手荒な音圧アップ系」のよくある感じ。オリジナルのプロダクションを愛してる人は多分ガッカリしますから、ボーナストラック3曲(スタジオ録音の未発表曲のようです)が不要なら買い換える必要ありません。

  6月1日
本日の収穫、STIFF SLACKにてQUIEN ES BOOM!「CAST YOUR BURDENS ASIDE」(AMERICAN HERITAGE他のスコット・シェルハマー在籍!)、OPEN HAND「YOU AND ME」。「とくダネ!」で2006年が始まったとしたら、今既に「スーパーニュース」の時間です。メシ食って寝てるうちに2007年になってしまう、恐ろしや。

MYSPACEにアクセスしたら「サーバメンテのため2時間くらいダウンしてます。」というお知らせ画面に、復旧までのヒマ潰し用にFLASH版パックマンが添えられてて笑いました。ついでに楽しんでしまいました。いやードキドキした。すぐ死んだけど。

【本日のレビューその1:DEADBEAT「SOMETHING BORROWED, SOMETHING BLUE」】


近頃めっきり新規開拓をやめてしまったエレクトロニカ方面で、未だに安心してレーベル買いを続けているのはこの~SCAPEくらいです。これはカナダ人クリエイター、DEADBEATことスコット・モンテイスの2004年リリース作。硬すぎないミニマルビーツを土台、グリッチその他の薄塗りを下地に、表立って主張しないギリギリの量のシンセ類が情景のスクロールにささやかなオブジェクツを添えていく、曇り模様のダビー・エレクトロニカ。ベースラインをオーソドックスなダブ風フレーズのループでまとめていても、背景の動きがこっそり細やかで、程良くメリハリをつけつつ「僕親切ですよ」と正面からは言ってこない奥ゆかしさが心地よい。いつの間にかレールが途切れてディレイの密林に分け入ってしまうような場面では初期TANGERINE DREAM+スコット・ヘレンの様相だったりもします。それにしても全体になんとな〜く一貫して感じられる、木の手触りのような優しさと風通りの良さ、これはやっぱりカナダの水のせいなんでしょうか?ドイツ産とかより熱量的には抑えめな分、気力を吸い取られず楽に聴ける気がします。「帰りの車内」のお供に最適な1枚。

【本日のレビューその2:LOREN STILLMAN「IT COULD BE ANYTHING」】


先月のFRESH SOUND NEW TALENTまとめ買いの中の1枚。リーダーでアルトのローレン君とピアノを弾いているゲイリー・ヴェルサーチ君の二人が若めで、リズム隊は80年代からボチボチ録音のある人達の模様。あやしげな版画ジャケが物語る雰囲気のとおり、やたら含みがあって捻じくれ曲がっていて、しかし人間らしいナチュラルな空気感も何だかよろしい、サティの世界観にちょっと通じるようなスッとぼけポストバップになってます。一見普通のダンディを装ったオーネット・コールマンというか。不協(っぽい)和音もあんまりバークリーくさくなく好感。抑えの効いたトーンでジョニ・ミッチェルばりに素早く囁くローレン君のアルトはいかにも今らしいセンスですね。エロくも甘くもないのに柔らかで香りが立つ。HENRY COW/SLAPP HAPPY共同戦線周辺のジャズ寄りな作品や、KARATEが好きでジャズに行きたいという人などにはうってつけです。頑張ってパーカーから回ってこなくても充分、現役若手がいい仕事してます。

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