物色日記−2006年7月

※頻出語句解説はこちら
  7月31日
▼颯爽と本日の収穫、サウンドベイ上前津にてALBERT AYLER「SPIRITUAL UNITY」、NEW YORK ART QUARTET「NEW YORK ART QUARTET」、GARY SMITH「FUTURETHOUGHTREVEAL」、ESA HELASVUO「Q」。誰がいつ何て言いましたかね。

【只今のBGM:BEYOND DAWN「LONGING FOR SCARLET DAYS」】


以前から贔屓にしているノルウェーのトロンボーン入り個性派ゴシックメタルバンドのデビューEP。このごろ個人的に注目しているフランスのADIPOCEREリリースでした。知らんかった。最近の作風はどんどんオルタナ&デジタル化して、ほとんどRADIOHEADみたいになってますが(それもまた良い)、昔はさぞ凶々しかったんだろうと思って聴いてみるとこれが意外。確かにデス声率高め(普通声もあり)なものの、既に2ndフル「REVELRY」までの路線と殆ど変わらない、とろ〜んと怪しい雰囲気で若干ニューウェイブも入ったオルタナ・ゴシックを完成させています。クール!BAUHAUS+QUEENSRYCHE+HOELDERLINとかムチャクチャ言ってみよう。とにかく排他的なガチガチ・メタル・モードではありません。そこにプフォオーと呑気に切り込むトロンボーン。何とも調子狂ってイイですね。PARADISE LOSTフォロワーで溢れ返っていた94年当時としては異色といえるほど独創的です。やっぱり本物は最初から本物だ。他の作品もすべて同様にオススメなので、見かけたら買ってみて下さい。

  7月30日
収穫はなし。だがしかしドラマ「誰にも言えない」で使われていた謎のカリプソの出自が判明し、また海外にオーダー。たまには1枚を愛おしむように買うのです。

▼昼間は鶴舞でハポンエイド2が開催されている頃、私はシロクマのライブの手伝いで覚王山祭り真っ只中の「覚王山バー」前にいました。厳しい日差しと、着ていったOVERKILLのTシャツ(Sサイズ)の余りの窮屈さに演奏前からグッタリしてしまい、曲のキーを一瞬間違えるというひどい失態をしながら(澤田君本当に申し訳ない…)、何とか元気よくトライアングルをツョ〜ンツョ〜ンと叩いてきました。あとで多分「あの向かって右の人、いらないよね」という会話が生まれていたことと思いますが、カシオトーン(リズムマシンとしてのみ使用)をタイムリーに操作するという大役もあったのだよ!!8月11日(金)、鶴舞KDハポンにてスティーブジャクソンと共演させてもらいます。

▼ついでにDOIMOIのライブも決まってきてるので簡単にお知らせしてしまいます。まず8月25日(金)、東山BLにてジョンのサン企画。9月2日(土)は今池パラダイスカフェにてEGOISTIC 4 LEAVES企画。少しとんで10月末に1件(詳細はいずれ)、そして11月3日(金・祝)は新宿MARZと東京のABOUT TESS共催のSWAN SONG COUNCILにお呼びいただきました。場所は新栄クラブロックンロール。その前にALLieのメンバー主催の自主フェスが、岡崎市くらがり渓谷弓道場8月6日にありまして、多忙な大学院生ドラマー曽我部が九州に出張中なので旧3人編成にて出演+私の一人ステージ(今んとこDARK SOLやるつもりです)もある予定です。バーベキューやりたい人は遊びに来て下さい!25日以降の分は4人編成になって以来初の新曲もバッチリやります。どうぞよろしく。

【本日のレビューその1:CARLA BLEY/PAUL HAINES「ESCALATOR OVER THE HILL」】


元々はLP3枚組だったという71年リリースの問題作。製造流通はECM。カーラ・ブレイは室内楽からビッグバンドまで手広い前衛ジャズの女流ピアニスト/コンポーザーで、ポール・ヘインズという人はここでは作詞家として参加している模様。マイケル・マントラー、ドン・チェリー、チャーリー・ヘイデンなどのJCOA=THE JAZZ COMPOSER’S ORCHESTRA ASSOCIATIONの錚々たるメンバー達をバックにリンダ・ロンシュタットやジャック・ブルースが歌ってしまうというハイブリッド・ジャズ・オペラ作品となっております。(フリー・)ジャズおよびジャズをとりまいていた雑多な民俗音楽と現代音楽/電子音響と、クラシック風スコアとが融合したこの音楽は、当然というか何というかART BEARSや「キュー・ローン」などHENRY COW周辺人脈の試みと非常に近いですね。不穏な無調パッセージを女性がおどろおどろしく歌い上げるあたりはまんま元ネタという感じです(録音開始が68年からということでこちらの方が先)。これだけのボリュームを費やした長大な表現のすべてに作り手として本当に必然性を感じていたのか、あるいはただ単にでかいことをやってみたかったのか、まあ両方なんでしょうけど、とにかく「地上で未だ見ぬ音を下ろしてくる使命」にかられた人間が大真面目に取り組んでしまった妄想の痕跡ということで、21世紀の我々は権威どうのといったことは気にせずORTHRELMPAN.THY.MONIUMらと同列に楽しめばよいのです。作品完成までの苦労の量は半端じゃない差があると思いますが…。プログレ以降、とりわけRIOの思想に大きなとっかかりを作った1枚(というか3枚、CDでは2枚)として、前衛音楽に理解のある方は皆さん有り難がりましょう。大仰で謎めいたゴシックメタルが好きな人にも無理して勧めてみよう。何も知らずユニクロのECMシャツ着てる高校生やおっちゃんオバチャンもたまには買って下さい。

【本日のレビューその2:KRISIUN「BLACK FORCE DOMAIN」】


難しいのや変なのが続いてたので久々にスカッと。今やブラジル産ナンバーワン・デスメタルバンドとなったKRISIUNの97年作。何と豪快な…。音楽性としてはSLAYERからの順当な発展の系譜上にあるもので、とにかくノンストップで押しまくり。よくデスメタルの淡々とした高速っぷりを表すのに「パタパタパタ」とか「スコスコスコ」といった表現がありますが、このバンドはドスボコバコ!といった調子で、今にもアンプが火を噴き、ドラムのヘッドというヘッドが破れそうな野獣パワーを炸裂させております。大昔のSEPULTURAが筋トレマニアになったかのような凄まじい演奏に、ブラックメタルにも迫る際限なき憎悪の激流。僻地産ゆえの過剰な濃縮は恐るべしです。もう少し後の作品は既に持っていまして、そちらも相当な野獣っぷりだったのですが、形は整わないながらもより初期衝動溢れるこちらの方が誰にでもグッと来るかも。ファストコアやグラインド好きでもきっとイケます。

  7月29日
▼届くものはしょうがない。本日の収穫、随分前に注文してあったDEMETRIO STRATOS「STRATOSFERA」(AKARMAリイシュー、CRAMPSからのソロ5作品のボックスセット)。おひょほー。

【本日のレビューその1:DEMETRIO STRATOS「CONCERTO ALL'ELFO」】


バルカンから中東に及ぶ地中海音楽と、ジャズやR&Bまで飲み込んで"international pop group"を自称したイタリア産のプログレ/ジャズロックバンド、AREA。看板シンガーであったデメトリオ・ストラトスの死去により活動は短命に終わりましたが、ボアダムス界隈をはじめ各方面のイケてる文化人の皆さんからのリスペクトが未だ絶えないバンドです。その夭逝の超人デメトリオ、人間の声を学術的に研究しようとしていた変な人で、ロック界としては異例のヴォーカル・ソロ・アルバム(!)を何作か出していました。そのレアな5作品を、胡散臭い再発専門レーベルAKARMAがまとめてリイシューしてくれたのが、今回私の購入したボックスセット「STRATOSFERA」。今日はその中からこの1枚を取り上げてみます。

 まずジャケが最高にかっこいいですね。壮絶な形相でマイクにつかみかかるデメトリオ。渋い目つきとともにくわっと開かれたその口からはどんな声が出ていたんでしょうか…その中身こそこのCDに収められとるわけですが、ま〜凄いですね。1曲目はひたすら18分間のホーミー。おぅーユーウィーイーィユーオュ〜という立派なホーミーが断続的に繰り出されっぱなしです。中盤から色々バリエーションが加わって、だんだん人の声聴いてる気分じゃなくなります。不思議。セットが終わると観客の大歓声。これライブ盤なんですね。次はテープ高速再生の人力再現!「人身事故全然エアロスミスずる休みミジンコずるんずるん猿投ジーザスリザード味噌汁ピュエパパマパマペペピュエパパマパマペペ…」みたいな謎の早口がとめどなく5分間も続きます。3曲目はカウボーイとインディアンの戦いの一部始終(あらゆる物音、犬や牛や馬の鳴き声、銃声その他も)を怒涛の如く模写。「オーマイガッ、あれはジョン・ウェイン!」などとセリフも挟んでちゃっかり笑いを取っています。次は民族楽器の笛の再現。一瞬だけピヨッと音程がはね上がる特殊奏法や、音の立ち上がりの息の漏れ方まで忠実にやっています。ディジュリドゥみたいなのと2タイプ使い分けてえらいことに。次は胡弓みたいな弦楽器の模写でしょうか?AREAでもよく耳にする「おひょほおひょほ…」というヨーデル風唱法がここでやっと登場。最後もまた笛系で締め。とまあヴォイスパフォーマンスの常識を覆す破天荒な内容だったわけですけども、後味は意外にジェフ・バックリーの盛り上がる曲をじっくり聴いたあとのような、「ハァ〜聴いた聴いた」という清々しい満足感と感動があります。かつ表現の種類としてはデレク・ベイリーとかに近いですね。楽器の特性を可能な限り利用したトーン探しとその並べ方のみによって音=音楽を突き詰めて、詩的表現として成立させる即興空間芸術ということで。勇気のある方は買ってみて下さい、一生の宝になると思いますよ。

【本日のレビューその2:CADAVEROUS CONDITION「IN MELANCHOLY」】


期待膨らむダメジャケ。オーストラリアが誇る世界屈指のド変態エスニックサイケデス・ALCHEMISTをリリースしていたオーストリアのLETHAL RECORDSから93年にリリースとあればもう間違いありません。しみじみ変なヨレ系デス声ロックをやっていましてまさに理想、最高。リズム感は悪く、ギターの音に高域はなく、焦らず猛らず終始ローテンションで垂れ流されていく、屈折しきった美学の奥ゆかしさよ。品のいいアヴァンギャルドじゃなくてただのシュール&ナンセンスですが、何を標榜してここまで踏み外したのかわからない地味すぎる奇想天外さがとにかく愛せるのです。唐突に絡むアコギにクリーントーン!デス声でネオアコ?ごく易しいIRON MAIDEN風の単音フレーズを全く弾けてないヘタヘタなギタリスト、景気よく切り込むウッドブロック。おー神よ。一歩間違えばサムラやエトロンですな。初期ALCHEMISTやSUPRATION(現SUP)がたまらんという人には是非是非探し出してもらいたい、アウト・メタルの超逸品。

  7月28日
▼うーむキャパオーバー。しばらく断ちます、本気で断ちます。欲しがりません、聴くまでは…。本日の収穫、御器所ホーリーハウスにてPYOGENESIS「SWEET X-RATED NOTHINGS」(ジャーマンゴシック94年2nd)、NARO「PRESS PLAY」(LONG ISLAND)、WWIII「WWIII」(トレイシー・G!)、SWEET DISEASE「NIHIL」(チェコ)、DISTANT CRY「DISTANT CRY」(LONG ISLAND)、CADAVEROUS CONDITION「IN MELANCHOLY」「EISBAR 90210」(オーストリア)、EARTHCORPSE「BORN BLEEDING」(SHIVER)、MORGANA LEFAY「KNOWING JUST AS I」(スウェーデン)、FLEGMA「BLIND ACCEPTANCE」「FLESH TO DUST」(スウェーデン)、CELESTIAL SEASON「FOREVER SCARLET PASSION」(ADIPOCERE)、同サウスオブヘブンにてBEYOND DAWN「LONGING FOR SCARLET DAYS」(デビューミニ!ADIPOCERE)、EROS NECROPSIQUE「PATHOS」(ADIPOCERE)、DECORYAH「BREATHING THE BLUE」(フィンランド)、MELEK-THA「ASTRUM ARGENTINUM」(ADIPOCERE)。この一か月でいくら落としてったことか分かりませんな。移転費用の足しになったでしょうよ。ディスクヘブン名古屋新店舗、繁盛しますよーに。

【今日のレビューはパスして寝ます。】

  7月27日
本日の収穫、通販専門の中古HM/HRショップDINEXIONから購入のABYSMAL「THE PILLORIAN AGE」(94年AVANTGARDE MUSIC、ノルウェー産アトモス・ブラック)、DISSOLVING OF PRODIGY「LAMENTATIONS OF INNOCENTS」(SHEER、初期ANATHEMA似チェコ産シンフォゴシック)、ETHERIAL WINDS「FIND THE WAY ... TOGETHER」(CYBER、オランダ産シンフォニック・ドゥームゴシック)、HYPNOTIC SCENERY「VACUUM」(95年、チェコ産パワー・ゴシック・ブラック)、LET ME DREAM「MY DEAR SUCCUBUS」(95年ADIPOCERE、MANOWARイズム漂うフィンランド産勇壮ゴシック)、MYSTIC CHARM「SHADOWS OF THE UNKNOWN」(SHIVER、CELTIC FROST似のオランダ産ドゥームゴシック)、NEOLITHIC「FOR DESTROY THE LAMENT」(96年ADIPOCERE、ポーランド産プログレゴシック)、TEMPERANCE「KRAPAKALJA」(SHIVER、スウェーデン産変則展開プログレゴシック)、V.A.「APPOINTMENT WITH FEAR VOL.3」(CYBER MUSIC編集コンピ94年版!)、XERXES「BEYOND MY IMAGINATION」(93年GENERAL INQUISITOR TORQUEMADO'S RELEASES、スイス産D級プログレハード)。いやいやいや素晴らしい。何も言うことない。度重なる御器所サウスオブヘブンでの実地調査は今回のオーダーで大当たりするためだったのかと思うほど、仕込んだ知識をフル活用してピンポイントで良品ばっかり釣れました。神と崇める初期MISANTHROPEの作品(1〜3作目)に出会って以来、長年本当にこういうのが聴きたかったのです。90年代ユーロゴシックの変態さん達よ永遠に。

【本日のレビューその1:NEOLITHIC「FOR DESTROY THE LAMENT」】


今回の買い物で一番マトモに彫り深かったのがこのバンド。強烈に世界観のあるアートワークからして何かあるなと思わせます。ポーランドの5人組の、ADIPOCEREというフランスのレーベルからリリースされている96年作。キーボード入りでクラシカル&シンフォニックな手法をとりつつ、よくある美麗系には陥らずにねっとり這うようなドゥーム・ゴシックを聴かせます。非デス声で低く悩ましげにうめく変なヴォーカルも随所でウォ〜ン、オァ〜ンと炸裂。正にマニアのツボ狙い撃ちですね。大昔のMISANTHROPEが何も間違えずに優秀に仕上がっていたらこうなっていたかもという感じでしょうか。PARADISE LOST系、THE 3RD AND THE MORTAL系、MY DYING BRIDE系のどこにも属しない異端派です。感動を誘うのではなく、悶々とした引っ掛かりを聴き手の心に投げつけまくる、ネガティヴ文学みたいな余韻の深さ。スッキリしないよー気持ち悪いよー。どうもまだ現役のようで、他の作品も見かけたら買ってみようと思います。アングラユーロゴシックフェチは要チェック。

【本日のレビューその2:TEMPERANCE「KRAPAKALJA」】


これまた強烈にあやしい…。95年にベルギーのSHIVER RECORDSからリリースされているスウェーデンのバンドです。CYBER MUSIC編集の名コンピ「APPOINTMENT WITH FEAR」の第2弾にも収録されてました。1曲目アタマからいきなり、不穏なドローンと共に「どぅーいーぅあーうえーゆお〜…」と偽ホーミーのような胡散臭いヴォーカル。その後はCELTIC FROST+MANOWARて感じの大仰かつ拍子抜けな世界が延々繰り広げられます。曲展開の強引さや意味不明さもさることながら、スラッシュメタル風の野太い叫びから豹変して三流役者みたいに唸ったりつぶやいたりするこのシンガー氏がとにかく変です。躁鬱病の果てにあっち側へ行ってしまったSAVATAGEのような。順当にいけば初期ALCHEMISTなんかが好きな人に勧めるべき品なんでしょうが、このムチャクチャにも程がある破天荒さは、ジャンルの垣根を越えて全ての変態好きにアピールするんじゃないでしょうか。もう普通に売ってなさそうなので勧めても仕方ないですが…。そんなものをこの欄で取り上げたのも、こういうシーンの裾野を紹介するという意味で、ということでご堪忍ください。それにしても酷いアートワークだな〜。表ジャケ、裏ジャケ、内ジャケ、内トレイ裏に至るまで、ここまでどうしようもないのは初めて見ました。

  7月26日
収穫はなし。今日はただの日記です。中学校の頃から家にあって、一時期ステッカーをベタベタ貼りまくっていたJACKSONのギター(GROVER JACKSONになる前のやつ)をいきなり大掃除してやりました。ステッカー類を全部サッパリと剥がして、もとの美しい塗装(白いボディに光が当たるとうっすら紫色に反射するのです)がよく見えるようになって満足。ちなみに今ついているストラップはESP。これ持ってライブして場違いなアーミングでドン引きさせたい。うーむ、ただの日記ってのはつまんないですね。

【本日のレビューその1:BIG'N「DISCIPLINE THROUGH」】


前から名前は見知っていて、HAYMARKET RIOTの暴君ドラマーが参加していると少し前に知って購入に踏み切った品。ドイツのGASOLINE BOOSTなるレーベルとSKIN GRAFTのハーフリリースなんでしょうか。内容的には昔のSHELLACとDAZZLING KILLMENの中間といった感じの邪悪極まりないポストコアでカッチョイイです。要するにシカゴジャンクの王道ですね。ホギャ〜とブラックメタルばりにわめく(鳴く?)醜悪ヴォーカルが痛快。SKIN GRAFTはこういうやり過ぎ感が最高です。それ以外はまあ別段変わったところがないようにも思えますが、96年という時期を考慮すればむしろこれでオリジナルなわけで、それ相応の太さや貫禄はビシバシ感じます。HAMMERHEADとかのAMREP〜TOUCH & GO系がお好きな人には是非、所蔵カタログに加えておいてもらいたい好盤。

【本日のレビューその2:UTUMNO「ACROSS THE HORIZON」】


93年、オランダのCENOTAPH RECORDSなるレーベルからリリースされていたスウェーデンの5人組。この時期にSUNLIGHT STUDIOにてトマス・スコッグスベルグ録音というだけで安心できます。中身は無骨なスウェディッシュスタイルが基調ながら若干エキセントリックな傾向もあるドタバタ・パワー・ロッキン・デス。おしゃれだなあ。ドガーッ!オラァーッ!と体当たりアタックを繰り出してくるかのようなリズム感覚と、デスメタル然とした禍々しい音使いを混ぜてくるこのリフメイキングのセンス、スウェーデンのバンドはみんな凄いっす。このバンドのように無名だからといって別に目立って劣るところがあるわけでもないというのがまた凄い。(成功したバンドはやはり突き抜けたものを持ってましたが。)もうこれがDESULTRYだったか、GRAVEか、SUFFERか、ブラインドテストされたら正直わからんと思いますけども、それでいいのです。よく聴くとかすかにCARCASSに近いニオイがあって、力技だけではない彫りの丁寧さや偏執っぷりがなかなか味わい深い。ENTOMBED、DISMEMBER、CARNAGEなどに飽き足らないマニア向け。充実の全6曲。

  7月25日
収穫はなし。でっきたてのープ〜リプリ、という歌が遠くから聞こえてくるから何かと思ったらわらび餅売りの車でした。焼きイモならわかるけどもさ、どう見てもドライバーのおっちゃん1人しか乗ってないのに「できたて」とはこれ如何に。

【本日のレビューその1:MAYFAIR「BEHIND」】


オーストリアのプログレゴシックバンドの、93年リリースの6曲入りEP。リリースはスイスのGENERAL INQUISITOR TORQUEMADO'S RELEASESという聞き慣れないレーベルから。これは相当あやしいです。デス声が聞こえてきそうな雰囲気のところに何故か、B級ジャーマンメタルみたいな弱腰ハイトーンがひょろひょろと登場。奇怪な裏声スクリームも交えるスタイルでDEVIL DOLL(!)のミスター・ドクターをちょっと彷彿。が決して上手くはない。曲はSANCTUARY(NEVERMOREの前身)がちょっと酔っ払ったような妙なテンションで、変則展開を頻発しつつもトータルでの浮き沈みは地味。どういうわけかやけにドラムが上手い。目立つほど。ニール・パートをよく研究してる系のやり手です。そのへんで軽くマスメタル的な印象も受けつつ、う〜ん何とも収まりの悪い…。「NORTH FROM HERE」の頃のSENTENCEDがグッダグダになったようでもあります。あるいはPSYCHOTIK WALTZの数少ない仲間といったところですかな。変なのマニアには激推薦。「わからねえ…」と悶えて下さい。

【本日のレビューその2:PENTAGRAM「DAY OF RECKONING」】


活動歴が何と70年代に遡るというドゥーム・ロック・オリジンの一角、アメリカのPENTAGRAMの87年2nd。PEACEVILLEからデジパックでリイシューになってます。これはもう普通にロックとしてクールですね。3rd〜5thあたりのBLACK SABBATHの、泥臭さを少し抜いたところにオカルティックな妄想を加味したような、ファンタグレープじゃないですが「サバスよりサバス味」(?)な超絶レプリカ。華々しいオーヴァーグラウンドに向かってモコモコとこもりまくったギターサウンドで喧嘩を売るこのプロダクション、80年代のものとは思えません。サバスサウンドを髄の髄までよーく理解していて、ドンヨリ具合だけでなくそこはかとない泣きや、時に尻軽ロッキンなリズムのバリエーションなど、思わず膝を打つマメな仕込みがそこかしこに。それらは決して今の耳を拒むことなく、むしろ「今には絶対ないかっこよさ」を凝縮して見せてくれます。焦点が充分に絞れてる分、実はなかなか実験的なバンドであった本家よりも濃度は高い感すらあり。お、軽くMETAL CHURCHみたいな6曲目"Madman"なんかは独自解釈が冴えてて面白いですな。ともかく凡百の小粒ストーナーバンド達にいたずらに金をばらまく前に、これだけ買っといて下さい。

【本日のレビューその3:EX-VAGUS「AMES VAGABONDES」】


スイスのGALILEO RECORDSから直で送られてきたサンプルです。以前も同じ所から来て、日本語と英単語のチャンポンという実験的な文体に挑んでみましたが、まあ変なので普通に日本語で書きます。頑張って誰かに訳してもらってください、GALILEO RECORDSの人!さてこれはフランスの正統派シンフォプログレバンドですね。EL&P的なクラシック趣味が幅を利かせるANGEって感じで、仏語ヴォーカルも含めてねっとり濃いです。デジタルシンセバリバリで質感は80年代ポンプロック寄り。現代的なエッヂは殆どと言っていいほど見当たらず、愛ある伝統芸てなスタンスを感じます。これもまた「プログレ」。ピーター・ハミルみたいな大袈裟なスタイルで歌うヴォーカルが、旧世代プログレ愛好家にはなかなかグッと来るんじゃないでしょうか。もうひとつガッと掴みの大きい個性が欲しいところではありますけども、懐かしい感じを美しくまとめるのが彼らの使命なのでしょう。安心できる内容をフレッシュな演奏で聴きたいという人向け。

  7月24日
▼もうだめだ、廃人だ。本日の収穫、先週末バーゲンがあったばかりのサウンドベイ金山にてXT「XT」、JESTER「IT'S TIME」、MAYFAIR「BEHIND」、MORHO「MORHO」(ex.TRUST!)、TENACITY「TENACITY」(LONG ISLAND)、NELS CLINE「THE GIANT PIN」(DEERHOOFのグレッグ参加!)、PATTY WATERS「SINGS」(ESP)、AMM「AMMUSIC 1966」、ANTHONY BRAXTON & DEREK BAILEY「FIRST DUO CONCERT」。バーゲン中の店内って、「買い取りでお待ちの○○様〜…」という呼び出しをかなり頻繁に耳にします。バーゲンのときくらいしか店に来ない人が、ついでに要らんものも持ってきて売りに出してるわけです。で一週間もすれば、それらの入荷も店頭に並ぶ頃だろうと。更に、通常棚でいつまでも売れ残っていた盤が値下がりして、スペースの空いた500円商品の棚に移籍することもあろうと。病めるヘヴィ・バイヤーはそう読むわけですね。そこをサッと早摘みです。結果は上記のとおり上々でした。うーむ。

【本日のレビューその1:NELS CLINE「THE GIANT PIN」】


先月紹介したマイク・ワット(MINUTEMEN)のソロにも登場したギタリスト、ネルズ・クラインのグループの2004年作。CRYPTOGRAMOPHONEリリース。XIU XIUのアルバムにクレジットされていたりするデヴィン・ホフがコントラバス、TZADIK界隈で録音のあるスコット・アメンドラがドラムその他、ゲストにはJELLYFISHやEELSのアルバムに参加しているジョン・ブライオンと、何とDEERHOOFの鬼ドラマー、グレッグ・ソーニアの名前が!中身はまったくもって一筋縄ではいかず、持て余すイメージを自由に泳がせてかなり手広く攻めてきます。チルアウト&フリーな冒頭曲で「オッ意外とジャズ然としとるやんけ…」と思わせて、その後は何だかクリムゾン+スローコア+気難しめのパット・メセニーてな雰囲気。曲によってはジム・ブラックすら手ぬるく感じるほどハイテンションだったりもします。VAN PELT似の憂いがまた良いですな。ロックをやってもジャズをやっても全然中途半端にならないのが嬉しいっす。こりゃインディロッカーがグレッグ君参加曲のみを目当てに買ってもお釣りがくるような充実盤でしょう。トンガリ系にそそられはするがTRICOLORとかだと淡々とし過ぎて…というジャズリスナーにもオススメ。

【本日のレビューその2:LEMMING PROJECT「HATE AND DESPISE」】


へぃあー!といきなり元気よく叫んでおります。ドイツの硬派デスメタラーの92年2nd。何やら変わったバンド名ですが誰かのプロジェクトではなくてちゃんとバンドのようです。ガシ!ゴシ!と粗く角ばったリフで押す力技スタイルがユニーク。DISMEMBERが更に重量級になったような。ドイツのこういうバンドはやっぱり、ナチュラルにインダストリアル風のムキムキ感を備えているのが面白い。初期デスメタルの特にアングラな層って、「とにかくこれくらいオドロオドロしくやればいいんだな」とだけ見込んであとは適当に手探りでやってるようなバンドが多いので、地方ごとの「オドロオドロしさ」の解釈の違いがひたすら興味深いのであります。このバンドは猛々しい雄叫びとリフ攻勢にもっぱら重点を置いて、デスメタルの売りのひとつであるはずの「超高速2ビート」には全くといっていいほど食い付きません。結果、90年中盤に流行る「スローダウン=垢抜け」の流れをはじめから地で行っちゃってるわけですね。老けた中学生みたいなもんです。同郷のATROCITYが「BLUT」「WILLENSKRAFT」あたりで一気にシンプル化した頃のスタイルとも殆ど変わりません。なーんだ立派な隠れ名バンドじゃないですか。よくわからんなりに独特の世界観を感じるアートワークもナイスといえばナイス。こういう彫りの深いバンドに行き当たると発掘人冥利に尽きます。スカンジナビア系の豪腕ものがお好きな方は番外編として是非チェックを。

  7月23日
本日の収穫、P-CAN FUDGEにてBLUES BROTHERS「BRIEFCASE FULL OF BLUES」、THE JAZZ COMPOSERS ORCHESTRA「THE JAZZ COMPOSERS ORCHESTRA」、CARLA BLEY/PAUL HAINES「ESCALATOR OVER THE HILL」、御器所ディスクヘヴンにてFM「BLACK NOISE」、DER TOD「DER TOD」、MAYFAIR「DIE FLUCHT」、KINSKY「COPULA MUNDI」、同ホーリーハウスにてTIAMAT「THE ASTRAL SLEEP」、PORE「ROTATION」、VISCERAL EVISCERATION「INCESSANT DESIRE FOR PALATABLE FLESH」。相変わらず貧乏で何か間違ってそうなメタルCDを見た目で判断して買い漁り続けてるわけですが、今日は外しまくりです、棘の道です…。90年代アタマは「何事かありそうなアートワークで中身はMINISTRYくずれのインダストリアル風」な奴が地雷のように潜んでるので注意ですね。

【只今のBGM:KINSKY「COPULA MUNDI」】


KINSKIってバンドがいますが全然関係ありません。こちらはポーランドの超絶アバンギャルドスラッシュ!レーベル名はよく読めません、とりあえずSPV配給で93年リリース。この時期のSPVはかなりヘンタイに寛大なので期待が高まります。で聴いてみればこれが想像を上回るどころか、かつて耳にしたこともないような恐ろしい内容。ポーランドといえばポーランド楽派なんてのがあるほど現代音楽が盛んで、またジャズ界においてもポリッシュ・ジャズという括りが存在したりするような国ですが、そういう空気をたんまり吸い込んで、メタルをアヴァンギャルドにやってみましたというより図式的には逆の、メタルバンド編成によって現前化されたアヴァンミュージックになっています。これ以上ちょっと形容の言葉がないですね…。宇宙船のようなヘヴィドローンが唐突に鳴るわ、フリージャズみたいな千鳥足ソロ(勿論ギターで)はあるわ、ヴォーカルは無駄にオペラティック、ノンビートなキメはあぶらだこ以上に強引、拍子不明のブラスト挿入あり、不協和音の質はやけに高級、うーんもう不可能です。完全にSKIN GRAFT向けじゃないですかこんなの。PAN.THY.MONIUMCARBONIZEDCOLOSSAMITEも超えてしまいました。VOIVOD+ペンデレツキ+セシル・テイラー+GURU GURUなのか…?MASTER'S HAMMERに笑っちゃった人もこれは探さねばなりません。スゲー。

  7月22日
収穫はなし。あまり会ったことのない叔父が亡くなる。リアル。自分は死にたくないし親にも出来れば死んでもらいたくないけど、親がそろそろその階層に近づいていると知らされるのは随分とこたえる。何十年と一緒に暮らした配偶者や子供や親しくした友人を残していく人の感情とか、残される方の感情とか、自分がそろそろ所帯を持っててもおかしくない年齢にきてる分想像が働いて、近所に住んでいた祖父や祖母が亡くなったときよりも何だか実感が強い。この実感を繰り返して自分も死ねるようになるのだな。少し前、通りすがった病院のエレベーターホールで、初老のオバチャン達の立ち話が聞こえてきて、「このハンカチくれた人。ウチの旦那の友達。」「あの人も死んだ。」と余りに平然と、昨日かぼちゃの煮付けを食ったと言うのと変わらないテンションで言い放ったのに半ば笑い、半ば愕然としたものです。

【只今のBGM:PFM「PASSPARTU」】


イタリアンプログレの代名詞PFMの78年作。プログレッシャーの間ではやはりブッちぎりで初期の評価が高く、コンパクト&ポップ化してもなお良しといった評論はあまり見たことがありません。いやいやこれは充分に、プログレあがりでしかあり得ない優れた音楽じゃないですか。南欧版CHICAGOみたいでサイコーです。室内楽を消化したアンサンブルや変拍子などをサラッと練り込みながら、来るべき好景気時代に向けてパーッと開放的になっているこの感覚、むしろ「何か実験的で新しいものを…」と躍起になっているかのような70年代初頭のプログレ全盛時代の作品群よりも、ミュージシャンとして自然な表現をやれてる感じさえします。映画のような壮大な感動とかはないですが。ギリギリ70年代ということで質感はまだ全然アナログ的で、イタリア特有の粘る暑苦しさも抜けきらず面白いアクとしてプラスに作用。個人的にPFMは「サッパリと善人っぽい」ところが独特だと思っているんですが、そのへんもちゃんと活きて、ポップな音楽性に上手く馴染んでいます。メインストリームミュージック全体がうっすらとフュージョンソウル色がかっていた70年代後半のあの感じとプログレを同時に愛せる向きなら、これはもう楽しくて仕方ない盤なんじゃないでしょうかね。ジャケもいかにもヨーロピアンアートで良し。

  7月21日
収穫はなし。突然ですが昔から人生で最もやれたいことの一つは「正確無比な速弾き」です。いかに速弾きが不必要でナンセンスか、理路整然と揶揄する文章なんかもよくありますが、その文章の方が更に必要ない。うむ、着地点がないので以上です。

【本日のレビューその1:HADES「IF AT FIRST YOU DON'T SUCCEED」】


同名のデスメタルバンドがいますがこちらは80年代ハイトーンテクニカルパワー(おお、専門店用語…)の方。のちにWATCHTOWERの名盤「CONTROL AND RESISTANCE」で高音スクリームの嵐を披露するアラン・テッシオがいたバンドです。1st・2ndが新録曲追加でカップリングリイシューになって、今聴いているのは88年の2ndの方(左上ジャケ写真はそのリイシューのもの)。スラッシュメタルとパワーメタルの中間派の更に屈折寄りな、初期MEGADETHミーツOMENの早回しといった趣きの非常にマニアックなスタイル。青々しくなってしまったCONFESSORというか。狂気じみてるのに神経質な、メタル純正培養の果ての歪んだカタルシスに満ちております。美味しい泣きメロなどには目もくれずひたすら鬱屈しまくり。線の細いハイトーンでホア〜!と絶叫するアラン・テッシオのヴォーカルは既に全開で、効用としては歌メロどうこうというよりもうテルミンのような、曲のテンションをつり上げるための化学燃料的存在感。アガるわ〜。VIO-LENCEファンなんかにもオススメできます。マイナーな存在なので是非光を当ててあげて下さい、もう遅いですけど。

【本日のレビューその2:MANOWAR「INTO GLORY RIDE」】


どメタルついでにこの人達も。メタルのマッチョイズムを無駄なまでにデフォルメしたイメージ演出で有名で、畑違いのリスナーでも名前くらいは聞いたことあるという人が多いであろう、アメリカの鋼鉄の男(日本のファンの間では「魔の王」「真の男」などと当て字される)4人組の83年2nd。「偽メタルに死を」などと大口叩く連中ですが、この冒頭曲などを聴くと何のことはない、JUDAS PRIESTの誤読版ですね。しかしその誤読の部分が重要で、様式美でもない、暗さやヘヴィネスでもない、筋肉としか言いようがない隆々としたシルエットがえも言われず異様。特にミッド〜スローテンポの曲で見られる悲壮なまでの本気モードは、10年先まで飛び越えてブラックメタルの奴らが持っているのと変わらない質感です。または街宣車が大音量でブチまけていく戦時中の軍歌の如し。もはや「妄想宗教・HM教」の様相。お〜凄い、一気にディープな展開になる3曲目"Gloves Of Metal"以降、だんだんDARKTHRONE聴いてるような気分になってきました…。メタル全体の中で見れば比較的どころか間違いなく異端だと思われます。しかしメタルにしかあり得ないであろう情緒表現の極北。これは立派なエクストリーム・ミュージックです。戦士達の忠誠と士気を高揚させ、流血の殉死を迫る危険極まりない賛歌集。マイク・パットンがわざとやってるとでも思って一度聴いてみて下さい、全員。

  7月20日
▼よ。

【本日のレビューその1:HSAS「THROUGH THE FIRE」】


内ジャケのベーシスト氏の写真が凄すぎる…。初期MONTROSEの看板シンガーでありその後VAN HALENへ加入したサミー・ヘイガー、人気絶頂中のJOURNEYから一時離脱していたニール・ショーンの二人を中心に、リック・デリンジャーのバックでベースを弾いていたケニー・アーロンソン、SANTANAのドラマーだったマイケル・シュリーヴをリズム隊に迎えて編成されたスーパーグループの唯一の録音です。84年GEFFEN。甘さ抑えめで汗臭くセクスィ〜に燃え上がる(??)哀愁のアダルトオリエンテッド・ハードロックをやってます。AC/DCみたいなでっかいリズムに、コブシ握る系の暑苦しいリフ、ハスキーなハイトーンを震わせまくるヴォーカル。ニール・ショーンの妄想はいつも同じですな。その後BAD ENGLISH〜HARDLINEでも相変わらず追究し続ける、無駄にカロリーの高いギトギト筋肉質産業ロックそのもの。変な例えですがWHITESNAKEミーツQUEENSRYCHEってのが意外とシックリ来るんじゃないでしょうか。ジョナサン・ケイン(key.)が知性を光らせているJOURNEYでは目立つことがありませんが、この男真性の妄想ロック野郎ですわ。こういうのがど真ん中だった時代に、狂乱する観衆の間でだだっ広いステージからこれをぶつけられたらそりゃ我を忘れるだろうなという、何にせよ強烈なヴァイブレーションは感じます。何故か後半にPROCOL HARUMの代表曲"Whiter Shade Of Pale"のカヴァー入り。うーん中途半端。総じて、JOURNEYファンよりはニール・ショーン個人の趣味に心酔できる人向けですな。といっても隠れた伝説的存在ではあるので、押さえて満足なアイテムには違いなし。

【本日のレビューその2:CADAVER「...IN PAINS」】


英EARACHE初期の大名盤。SATYRICONがエキセントリックに大化けしたアルバム「REBEL EXTRAVAGANZA」でもギターを弾いていたアンダース・オデン率いるノルウェーのバンドの、92年リリース2nd。まあタイトルどおり痛そうなジャケです。右目の眼窩からギターの弦が刺さって、中でカクッと曲がって左目を突き出しているという。オールドスクールブラックのようになってしまった復活後の作風とは全然違って、この頃はVOIVODPESTILENCECARBONIZEDが悪魔的になったような、変拍子や性急なリズムチェンジをフィーチャーした屈折テクニカル路線をいってます。勿論初期デス然とした高速2ビートも随所で炸裂させながら、不穏なメロディをなぞる単音リフの数々がいちいち冴える。クラシック畑の現代音楽家でもこれは芸術表現として認めるんじゃないでしょうか?ショック目的ではない薫りの高さと文学的な深みが素晴らしい。聴いた印象の上位に来るのは「巧い」「激烈」より「邪悪」「冒涜的」といった類のもの。悲しいかな後続が現れず、表舞台からは半ば途絶えてしまった音楽であるため、敢えて再評価される機会があまりないですが、屈折メタル好きは当然のこと、イマドキのメタリックな極悪マスロックなんかが好きな人もガッチリ魅了されるはずです。伝説扱いに相応しいグレイトな盤。

  7月19日
収穫はなし。昔、理科の授業の「石灰水の中にストローで息を吐くと沈殿ができる」という実験で、誤って石灰水を吸って飲んだ気がする…と言い出した同級生が、実際飲んだかどうか(本人も「気がする」と言うだけで)定かではなかったのに、思い込みが高じたのか本当に気分を悪くして、保健室行きになったということがありました。今朝私は泡のついた歯ブラシを口に突っ込んだまま荷物をあれこれやっていて、たぶん泡を微量ながら飲み込んでしまって、その後「歩く振動と、あと体温とかで、胃から食道にかけて体内でブックブクに泡立ってんじゃないだろうか…」などと妄想し始め、半日くらいよくわからない満腹感に苛まれ続けてました。思い込みはスゴイなあ。

 ↑のようなどうでもいい話は短く書けたいこの頃。「極端な話、1文字だけで全てが伝わるならそれが最高だ。」と、中学校の国語教師が授業で俳句の概要を説明するときに言っていましたが、そうだわな。

【本日のレビューその1:SHARKS AND SEALS「IT USED TO BE KNOBS AND MACHINES NOW IT'S NUMBERS AND LIGHT」】


JOAN OF ARC本体および周辺に関わってきたジョー&トッドによるユニット。シカゴのBRILLIANTEというレーベルからのリリースです。JOAでティム兄の周りをフラ〜ンフラ〜ンと漂っていた変な音が主役になってしまった感じで、素でブッ飛んだ脱力フリーフォームフォークの濃い世界が展開。エレクトロニクスやパーカッション、物音などもどんどんぶち込み、レコメン〜AYAA(KLIMPEREIやエトロンなどをリリースしていたフランスのレーベル)とDRAG CITYの中間のような感触の、やんわり尖った抽象アート的仕上がりを見せています。もう「ローファイ」とか「エクスペリメンタル」といった形容は相応しくないかも知れないですね。演奏が至らなくてこうなってるわけじゃないし、結果無視の試行音楽といった風でもないし。もはやブランド化してしまった「ポストロック」とも違う。とりとめのない雰囲気ながら各曲それぞれに違ったモチーフがあり、独り言に付き合うような徒労感に陥ることなく音楽作品として最後まで楽しめると思います。当人達の思い描く時間感覚や空気感というものを是非ライブで実体験してみたいところ…と思ったらこの秋の来日が決まりつつあるそうで。楽しみっすね。

【本日のレビューその2:LUGUBRUM「HEILIGE DWAZEN」】


2004年の前作を紹介したばかりのベルギーの天才肌シケシケブラックメタルバンド、今月2度目の登場です。これは今年リリースの最新作。正にSHARKS AND SEALSの次にぶつけたい感じのとんでもない内容です。暗く湿っているがどこかアホくさいアルペジオ、場違いなサックス、終始無駄に醜悪さを振りまくがイマイチ頼りないヴォーカル、完全無加工っぽいトパトパした音のドラム、たまに入るブラスト…といった要素が、同時に鳴ってもてんでバラバラのまま、何か目に見えないヘンタイパワーに導かれてゾロゾロと一定方向に移動し続けるという壮絶な様相。B級スラッシュ化したKING CRIMSONなのか?気合いというものがあるのかないのか、とにかく全てが宙ぶらりんで収まりが悪く、しかし恐らく全てに自覚的で、その徹底したキモチワルさが最高に脳みそを翻弄してくれます。ちょっと初期MISANTHROPEやMASTER'S HAMMERを思い出す部分もあるけども、それらはデスメタル洗練の過程で偶然発生した一過性のエラー現象のようなもの。そんな音楽性をいま真面目に標榜しているとはこれクール過ぎます。意外とゼニゲバあたりのファンにもイケるかも。流通が弱いのが難ですが気になった人はレーベルから直買いして下さい(試聴も可)。何とLPもあるようですよ。

  7月17−18日
本日18日の収穫、御器所サウスオブヘブンにてROOT「THE TEMPLE IN THE UNDERWORLD」、PAN.THY.MONIUM「DREAM II」、MORDOR「ODES」(スイスゴシック/ドゥーム)、DUSK「DUSK」(CYBER!アメリカ産ゴシック)、CASTLE「CASTLE」(MMI、オランダ産ゴシック)、UTUMNO「ACROSS THE HORIZON」(スウェーデン、SUNLIGHT&スコッグスベルグ)、LEUKEMIA「SUCK MY HEAVEN」(同じく)。どんどんデス系のCDばかり買い込んでるのでしばらくレビューもそっち続きになりそうです、またアクセス数減るんだろうな。しかし皆さんそこはLUNGFISHやPOPOL VUHと同じです。すなわち「理解できようができまいが、ジッとそれに身を晒し続けていると、いつか何かが見えてくる」という原理。毎日読んでれば、自然と有名レーベルや有名エンジニアの名前も身に付き、次に中古盤屋に行ったときにはふとバンドロゴのジャキジャキぐねぐねしたCDを手に取ってレジに駆け込んでいることでしょう。ブレインウォッシュよし。

【本日のレビューその1:DUSK「DUSK」】


CYBER MUSICリリース、アメリカのゴシックデス4人組95年作。CYBER MUSICは、デスメタルを単なる「スラッシュメタルの上位版」でなく「あらゆる制約から逃れて極端さを追究できる無法音楽」として早くから認識し、90年代初頭から中盤にかけて個性的なリリースと恐るべきコンピレーション2編を残しているオランダのレーベルです。所属バンドの国籍は本当に節操がなく、このDUSKはヨーロッパのアングラレーベルとしては珍しくアメリカのバンド。音のほうも正に欧州志向の米産といった感じで、シャレにならないダウンチューニングで軽くブラストもたしなみながら、初期MY DYING BRIDEやANATHEMAに触発されたようなべろ〜んとたゆみまくる低調リフを陰鬱につないでくれます。デス声がごっつくて垢抜けてるのもアメリカっぽい。INCANTATIONやSUFFOCATIONのスローパートばっかり集めたような感じというか、何とも煮え切らなくていいですね。濃厚さは飛び抜けてます。謎めいたアートワークといい、ワンワード言い切りの不敵なバンド名といい、センスいいっす。

【本日のレビューその2:SOLITUDE AETERNUS「THROUGH THE DARKEST HOUR」】


こちらはデスメタルとは似て非なる、CANDLEMASSやST. VITUSなどの流れ上にあるドゥーム・メタルバンド。ハイトーンシンガーが普通に歌います。80年代のドゥームメタルは、サバス的な煙っぽい倦怠感を受け継ぎながら様式美メタルの要素を汲み入れる者もいて、この人達はそっちの仲間。しかし95年リリースの本作(3枚目)、やはり世間の風潮になびいたのか、ややヘヴィ寄りのアプローチを強めています。ちょうどCONFESSORの復活作の変拍子抜き版のような感じで非常にクール。一方でCANDLEMASSやSAVATAGENEVERMOREのようなドヨドヨと濁った美も消え去りはせず要所要所で漂わせていて、2006年の今でも充分戦えそうな良いバランスです。ヴォーカルも力強く歌える逸材だし、全体的にツブがでかいのがよい。ダークで遅い轟音に揉まれるのは最近、NEUROSISだの何だので随分と流行ってますが、全然そのノリで聴けます。お、シタールソロもあっておしゃれ!DEAD CHILDの次に聴ける渋メタルは…とお探しだった御仁などには激ストライク請け合い。

【本日のレビューその3:ASHADA「CIRCULATION」】


POSEIDONシリーズ。歌とピアノの女性デュオにKBBのヴァイオリニスト・壷井氏ほかフルバンドでのサポートが入って制作された作品のようです。エスニックなようでやっぱり所在不明なヴォーカルとそれを包むピアノが、異世界系のジブリ作品(ナウシカとか…)やRPGのサントラのような、不思議に色めいた風景を作る、フォーク/プログレ/アンビエントが交錯したみたいな音になってます。最近個人的にゴシックづいてるせいか、THE GATHERINGやON THORNS I LAYとかの、女性ヴォーカルで恐くないゴシックメタル(のほとんどメタルと呼べなくなってるようなやつ)寸前にも聞こえつつ。少女声でスーッと伸びて、切々とした表情をたたえたヴォーカルには、日本語だからというだけではなくかなり耳を惹きつけられます。この手の内容だと海外アーティストの作品でも、プログラムされたオケ楽器に萎えることが非常に多いですが、本作はピアノからヴァイオリン、アコーディオン、マンドリンに至るまで徹底して生楽器使用ということで、音楽そのものの世界観も相俟って完成度はかなり高いといえます。ドパンドパンとドラムが音量を上げる6曲目の盛り上がりがハイライトか。プログレ/ゴシック(?)問わず幻想系好きの方にはオススメです。

  7月16日
収穫はなし。続きといっても(註:昨日の日記参照)書き漏らした収穫があるわけじゃございません。バーゲンに出掛けると、色んな音楽好きさんがいるもので、たまに面白い場面にも遭遇します。オシャレ眼鏡に帽子着用のハタチそこそこっぽい男子とその連れが、床に座って購入候補の山から一枚一枚手にとって品定めしている中に、BLACK SABBATH「VOL.4」のアナログを発見。お〜そんなん聴きそうにないのに、いいじゃんいいじゃん、と思っていると彼らの会話。
:「何これ、4枚目のアルバムってこと?」つまり彼、10枚組のアンソロジーの中の1枚とかだったりするのではと怪訝に思っている様子です。サバスのことはこれから知るのだね。
:「でもこのジャケよく見るよね。」よく見るし、かっこいいです。
:「でも買っても聴くかな〜…」とにかく買えばいいのよ。
:「300円ならいいじゃん。」何、その値段なら迷うんじゃない!
:「でもさ、300円でも10枚買ったら3000円だよ。」ごもっとも…。
:「そうだけどさあ」返す言葉ないよね…。
:「ていうかさ、買って聴かないのが一番もったいないじゃんね」
君、バーゲン会場でソレ言っちゃおしまいよ…。結局「VOL.4」は棚に戻されたのかどうか、知る由もありません。一方、物色をひとしきり終えて会計待ちでレジに並んでいるとき、眼鏡オタと呼んでも差し支えない風体の男性が前方で、アニメのサントラとおぼしきCDばかりをパッと見100枚近く買っていたのにも度肝を抜かれました。人それぞれだなあ…と思いながら、胡散臭い古そうなデスメタルのCDばかり20枚ほど両手につかんで精算を待っていた私です。

▼上前津も廻って、昼からは大学のサークルの同期や先輩らと、かねてから計画していたメタルカラオケを催行。最近コピーバンドでライブやったりもしないので、久し振りに気持ちよく吼え猛ってきました。選曲は"Blackened"(METALLICA)、"Into The Pit"(FIGHT)、"Kings Of Metal"(MANOWAR)など。SANCTUARYの"Future Tense"があったのには驚いたが、DIOが1曲もないってのはないだろう。DAMよ。

▼明けて本日は、個人的な宅録やらバンドのデモやらの録音で潰しました。部屋の機材たちは使ったあと、形状記憶素材ばりに勝手に元の位置に戻ってくれないだろうか。ただいま布団が彼らに占領されてて寝れません。

【只今のBGM:OTEP「SEVAS TRA」】


いわゆるミクスチャー/ラウド系の棚でよく見かけていて「まあ、よくある流行りもんだろうな…」とスルーしていたバンドなんですが、ANTHRAXのmyspaceのフレンドリストで目立つところに見つけて、試聴したらなかなか肝の据わった出来だったので購入。これヴォーカルは女性なんでしょうかね。極端に豹変する抑揚のつけかたといい、ザビーネ・クラッセン(HOLY MOSES〜TEMPLE OF THE ABSURD)がKORNのヴォーカルの人になったような感じの人材。やっぱりラップ風に歌う場面もあるわけですが、そんなものより超重量級のリフが壮絶でそっちに耳がいきまくります。PANTERA以降のグルーヴ系をたしなんだスローダウン版デスメタルみたいな雰囲気で、全然ちゃらちゃらしてないですね。先人たちのマニアな心意気をしっかり汲みながらも、どど〜んとメジャー映えするスケールで仕上げてきてて、色んなレベルでの気持ちよさがあります。こりゃオススメですわ。極悪極悪。

  7月15日
▼今日も朝から仕事でした。本日の収穫、今日からバーゲンのサウンドベイ金山にてANACRUSIS「MANIC IMPRESSIONS」、SCUM「MOTHER NATURE」、NECROSIS「ACTA SANCTORUM」、FEAR OF GOD「WITHIN THE VEIL」、GOLGOTHA「MELANCHOLY」、LEMMING PROJECT「HATE AND DESPISE]、CATHARSIS「PATHWAYS TO WHOLENESS」、SINISTER「DIABOLICAL SUMMONING」、DECEASED「FEARLESS UNDEAD MACHINES」、KRISIUN「BLACK FORCE DOMAIN」、GANAFOUL「FULL SPEED AHEAD」、MANOWAR「INTO GLORY RIDE」、OTEP「SEVAS TRA」、EDGE OF SANITY「PURGATORY AFTERGLOW」(外盤買い替え)、SENTENCED「AMOK」(同じく)、IMMOLATION「HERE IN AFTER」、FM「NO ELECTRICITY REQUIRED」、CLUTCH「THE ELEPHANT RIDERS」、GENTLE GIANT「THE MISSING PIECE」、DEREK BAILEY「AIDA」。同上前津ではPAT METHENY GROUP「PAt METHENY GROUP」、DIO「KILLING THE DRAGON」、PFM「PASSPARTU」、山崎ハコ「綱渡り」。続きはまた明日。

【本日のレビューその1:IMMOLATION「HERE IN AFTER」】


渋い!NY老舗デスメタラーIMMOLATIONの96年作。ジャケイラストはジャーマン系に仕事が多いアンドレアス・マーシャルですね。このバンドはINCANTATION同様、激烈さで押してくると同時にムチムチドロドロした腐肉感が気持ち悪いハイテンションいぶし銀タイプで、訳のわからない地味な変則拍子および変展開と、12音技法的なあやしい響きのリフ、バスドラを濫打する異常な足癖など、諸々揃ってかなり独特の「あうんの呼吸」を成立させています。味わい深くて大変よろしい。世界がありますね。機能性を追及するほどに没個性になりかねないブルータルデスの土俵において、大事なのはこういう彫りの深さだと思います。むっちゃあやしいキメいっぱいあるなあ…デスメタル化したあぶらだこと言えそうな場面もちらほら。スラッシーな気持ちよさを求めるメタラーよりも、DAZZLING KILLMENとかの延長で聴けそうな非メタラーにオススメできるかも。

【本日のレビューその2:SENTENCED「AMOK」】


メロデス・オリジンと目されるフィンランドのバンドの3rd。話題作「NORTH FROM HERE」に続いて95年にリリースされ、メロディックデスのノーマルメタル化に一気に拍車を掛けた問題作です。出てすぐの頃に新品で買ったんですが、やっぱり外盤が圧倒的に美しいので買い替えてしまいました。さて内容、当時のBURRN誌では、革新的な試みと評されながらも「IRON MAIDEN風になった」「ここまで普通の曲をやるなら何故デス声が乗らねばならないのか」といった浅めの見解で不当に済まされてしまっていた感がありました。今よくよく聴けば、このアルバムはそんなもんじゃないことが判ります。ヴォーカルはダミ声ながらも明確にメロディラインを歌っており、楽曲との乖離や不和は全くなし。余談ですがBURRN誌はザッカリー・スティーヴンス(SAVATAGE)といいマーティン・ウォルキーア(SKYCLAD)といい、いわれなきダミ声バッシングの度が過ぎます。ウド(ACCEPT)は問題なしなのに…。さておき、音楽的にもMSGやVAN HALEN、QUEENSRYCHE、更にはHANOI ROCKSから脈々と受け継がれる北欧不良ロック系の血など、到底IRON MAIDENのみに一元化できない多様な影響源が端々から窺い知れて、つまるところ「メロディックなデスメタル」というよりは「デスメタル的な空気を読んでそういうエッヂを含みつつ、古いハードロックを今に再構築するアルバム」というところまで踏み込んでしまったとするのが妥当かと思われます。デスメタルのエクストリミティに慣らされてしまった耳には、昔ながらのことを昔と同じようにやっても、強化された免疫ではじかれてしまう。そういう状況ゆえ誰もが安易に新しい表現に飛びつく中、古いものを今様に再臨させるのに成功すればそれはえらくクールなのではないか…と彼らが目をつけたのかどうか判りませんが、とにかくそういう出来です。そしてそのスタンスは、本作と次のオマケEPをもって脱退したヴォーカル兼ベースのタネリ・ヤルヴァの新バンドTHE BLACK LEAGUEの方に受け継がれ、残った本体は憂鬱なパワーゴシック路線を取ることになって、このアルバムの内容とは全くの別バンドと化してしまいました。そんな分岐前最後の奇跡としても今なお光る大傑作。普通にオールドロック好きのおじさんとかに聴いてもらいたいです。

本日のレビューその3:ACUSTIMANTICO(PROMO CD-R)】
POSEIDON増田さんから送っていただいたシリーズです。地中海音楽を演奏するイタリアの女性ヴォーカル・アコースティックユニットで、昨年の愛知万博に来日して演奏していったことから存在を知られ、日本でもこれから展開しようとしているところとのこと。イタリアンフォークを基調としながら、バルカン変拍子を炸裂させたりクレツマー風のノリが入ってきたり、MOONFLOWERS寸前のオシャレラテンをあっさりこなしてみたりと、雑食プログレ的な面もナチュラルに備えているのが面白く、それでいてよく澄んで真っ直ぐなヴォーカルがしっかり舵を取っているために、総体であまり小難しい印象は与えません。打楽器や管楽器も交えて彩り豊かなアンサンブル構築も見事だし、これは確かにかなりの逸材。然るべき売り出し方さえされればプログレ畑/ワールドミュージック畑双方でスグにでも好評を博しそうな垢抜けぶりです。しかもこれからもっとユニークなスタイルに化けていきそうなポテンシャルも漂わせてます。万博で偶然見た人はラッキーでしたね。

  7月14日
▼また髪を洗おうとして洗顔料のフタを開けてしまった。人生もう終わりなのか。本日の収穫、STIFF SLACKにてTRAINDODGE「WOLVES」(最新作!!)、SHARKS AND SEALS「I USED TO BE KNOBS AND MACHINES NOW IT'S NUMBERS AND LIGHT」、JOAN OF ARC「THE INTELLIGENT DESIGN OF JOAN OF ARC」(7インチのみの音源やコンピ提供曲などの編集盤)、POSEIDON増田さんから送っていただいたLU7「EFFLORESCENCE」、ASHADA「サーキュレーション」、ACUSTIMANTICOのプロモーション用コンピCD-R。

▼夜はサポートで手伝っているシロクマのライブで新栄ロックンロールへ。去年DOIMOIで愛知県立大学の学祭ライブにお邪魔したときに一緒だったPIGGYをまた見ることができました。以前チラッと見れた限りでは、じゃがたらみたいな変態ファンクがベースになっているという印象だったのが、今はもっと手広く、ナチュラルになって、隙を突いて剥きまくる白目をはじめステージングも物凄くて、非常に感銘を受けてきました。

【只今のBGM:TRAINDODGE「WOLVES」】


一昨年の大傑作2枚組「THE TRUTH」、その路線を受け継いで昨年リリースされたこれまた秀逸なEP「UNER BLACK SAILS」に続き、早くもという感じでこの夏また投下されてきたTRAINDODGEの新型爆弾!どっひゃー!前作でセカンドギター兼キーボードの人が加入したはずだったのが早くも脱退し、また3人に戻ったて今までどおりに…と思いきや、ドラムのロブがキーボードパートまで力ずくでこなしていたライブでの経験が活きたのか、今回はむしろ以前に増してシンセ類が大々的に聴かれるようになりました。それがもう創作の部分にまでガッツリ踏み入って、単なる被せ物としてではなく大活躍。恐ろしく野心的な内容になっています。

 1曲目からMINUS THE BEARやDISMEMBERMENT PLANを雪男3人がやったような「ちょいアーバンオシャレ&腕毛モッサリ男節」という新次元でアッと驚かせてくれます。後半でビヨビヨ鳴きまくるピッキングハーモニクスの嵐!彼らは前回の来日の名古屋公演で、私のTシャツを見て「MASTODON!」とツッコんでくれた人達なので。そして2曲目はKING'S XPOUNDHOUND路線まっしぐらでファンキー、ヘヴィ&スウェッティに。たまらん、もうたまらん。その次は何とサミー・ヘイガー時代のVAN HALENのバラードをKRAFTWERKがやったようなシンセバリバリのビックリ・サイバー・チューンときた。この流れはもう全曲解説いくしかないっすな。その余韻を引き継ぎつつ不敵に抑えたムードのタイトルトラックが4曲目。シンプルなものの太さ・強さを最高の状態で見せてくれる男の料理。うわー終盤のキーボードとギターが絡む単音フレーズのシーケンスなんかもうENCHANT(アメリカのマイナープログレメタル名バンド!)みたいだなあ…ここまでやっていいのか…。続く5曲目は終始スローテンポ、メジャーキーかつ咆哮モードで、力一杯なハードロックの真新しい在り方を見る心地。3曲目からここまで曲間が切れ目なく続いてきてて、ここで道程半ばの小フィナーレという形になります。大局的にはもはやPINK FLOYD聴いてるような感覚。

 さてアナログなら間違いなくB面アタマに来るであろう6曲目、ここからまた邪悪なうねりがグリグリと巻き上がります。しかし大人になったもので、鬱屈した変拍子は卒業して、4拍子の中で充分な重みを伴う変則的なキレみたいなのを追究する方向にきてる模様。続く7曲目がまた新しい…モッズの香りをほんのり忍ばせつつ、インド象の行進のように重い、これもまたTRAINDODGE節。一体このアルバムの中だけでどれだけの発明をしでかしてくれるんでしょうか。しかもここまで余りに自然に受け流してましたが、歌メロがどれも凄くキャッチーなんですね。贅沢だ、やりすぎだ。次はまたシンセ主導のスペイシー系。「THE TRUTH」ではこの手の試みは曲間のインストとして短めにあしらわれてただけでしたが、今回はもう普通に曲になっちゃってます。いよいよ終わりの近づく9曲目、MC5とRUSHが結婚したみたいなサプライズのダメ押しで全く息切れの気配なし。FOO FIGHTERSに喧嘩売っても勝つかも知れません。そしてフィナーレは青々しいアップテンポ+変拍子チューン。これも今までにないエモさ。暴風の如くエンドロールをドバーッと回して、最後はいつの間にやらヒョ〜ンヒョ〜ンとシンセの彼方に消え入ります。うーん、もう一周!私は本当に突入してます。

 ということで、どうでしょうか、何なんでしょうかこの稀代の勝負作は。今月はCELTIC FROSTの新作といいこれといい、ロックの歴史に特大のくさびを打ち込むような、存在の大きいアルバムに出くわしっぱなしです。誰でも聴くがいい。こんなものそうそうありません。

  7月13日
収穫はなし。昨日の○○ブ○1号は昨晩のうちに、家族の手によって無事タイホされたそうです。無論その場で圧殺刑だったそうですが。小学校の頃の友人は「うちのばあちゃんなんか、素手で掴んでそのまんまゴミ箱にクシャクシャポイだ」と語っていたなあ、そういえば。また民家に奴らが侵入することの滅多にない北日本の人々は、奴らを見ても「ツノのないクワガタじゃん」といって至って平気だという話を聞いたことがありますが、本当でしょうか?

【本日のレビューその1:CHARLIE CHRISTIAN「CELESTIAL EXPRESS -GENIUS OF THE ELECTRIC GUITAR」】


私の敬愛するバーニー・ケッセルのそのまた心のお師匠さんのチャーリー・クリスチャンの、39〜41年の録音のうちベニー・グッドマンとの共演ではない音源を集めたアンソロジー。この時期の人達はアルバム・オリエンテッドな活動をあんまりしてないはずなので、聴いてみたいのにどれを選べばよいやら…とずっと思っていたのですが、EMBRYOのリマスター再発と同じDISCONFORMEの編集とあって安心して購入したブツです。メンツは曲によってさまざま。30年代のレスター・ヤングやディジー・ガレスピーも一緒に聴けてしまいます。

 ということでチャーリー師のギター。レスター・ヤングのサックスに大きく影響されているとのことですが、アタックの音色の微細なコントロールや、滑らかなようでいて目が覚める抑揚の妙などは、もっぱら伴奏楽器扱いだったギターの古い通念を覆したものであったことが容易に想像されます。一発一発が引っ掛かるようなタメ感・質量感、チョーキングも駆使してのブルーズ・フィーリングは実に粋なもので、これはバーニー・ケッセルがしっかと受け継いでいるところ。どこに振れても常に物凄い説得力。スウィングしようかとかブルーズでっせとか、そんな枠組みも何もなくただ歌っているという確かさと太さ。未分化の混沌の中にいつも恒久的真実は埋もれているものですな。この盤は後半にいくほど自由なインプロヴィゼーションが聴けて、ベニー・グッドマンがスタジオに現れるまでの暇潰しを実録してしまった"Waitin' For Benny"、ビバップ直結型の長いソロが堪能できるラスト2曲と、いずれも凄い瞬間を目撃してしまった感いっぱいな音源です。これを取っ掛かりに各時期の個別音源に手を…のばすとやばいことになるんでしょうなきっと。

【本日のレビューその2:VAGABOND「VAGABOND」】


さてこちらはノルウェーメタル界が誇るエレクトリックギターのヴァーチュオーソ、ロニー・ル・テクロが、長年やっていたTNTの解散後に結成した短命プロジェクトの唯一のアルバム。この頃のハードロックはJANE'S ADDICTIONやレッチリ、FAITH NO MOREあたりのカタマリの影響からなのか何なのか、ファンクを曲解したようなメカニカルで屈折した16ビートの熱に毒されていて(WINGERがやった"Purple Haze"のカヴァーに顕著…こういう方向に何故活路を見出したのか理解に苦しみます)、この人たちも御多分に漏れず、まあ94年にこれは出遅れすぎな気もしますが、そういう不思議にカクカクしたサイバー・ファンキー・ロックをやっています。もともとロニー・ル・テクロは一筋縄でいかないプチ変態なエッヂの持ち主なので、これでも意外とシックリきてるのが面白い。クラシック的(QUEEN的?)なスケールのセンスとスティーヴ・ヴァイ似のドライな音色でもってバッキング時からひねくれまくり、ソロではブリッヂ・ミュートを多用したプツプツいう速弾きで背中をかゆくしまくり。吹っ切れて変ではないのだが地味にどこまでも変。かといって何やら説得力はありそうな完成ぶりで、誰がどこに感動する音楽なのかまったく読めないがゆえに一瞬たりとも耳が離せません。漂白されたSATYRICONか?はたまたメタル版JERRYFISHか。と思っていると終盤でまともにキュンと来る曲もあって(ラス前の"Better Ask Yourself"名曲!)「何だかんだで凄かったようだ」という後味に持ち込んで終わらす荒技。更にプロダクションが死ぬほど良好で、タムやカウベルのひとつひとつまで異様にソリッド&ロウに響くというオマケつき。ヴォーカルのヨルン・ランデはその後、元CONCEPTIONのトゥーレとのARK、元HELLOWEENのローランド&ウリとのMASTERPLANなどを渡り歩いて名を上げているようです。彼のキャリアのスタートとしては余りにも謎めいた盤ですな。本当に玄人の方だけどうぞ〜。

  7月12日
収穫はなし。人ん家の天井でポケーとしてんじゃないよ…こん畜生…。今シーズンのゴ○○○1号見ました。捕獲ならず、穏やかでない夜が続きます。

【本日のレビューその1:KEPLER「MISSIONLESS DAYS」】


穏やかでないレビューが続いていたので今日はひと息、カナダのスローコアフォークグループKEPLERの2001年作を。次作となる2004年のアルバムのレビューで素性を細かく紹介しているジェレミー・ガラ君が入ってるバンドです。沁みに沁みる寒々しさ、夏向けの雰囲気ではないですが、とても良い。オールドフォークの再現に戯れるでも、スローコアの雛形のコピーに浸りきるでもなく、この人達自身の声がある感じがするのが何より良いですね。しっとり静かなリズムとパラパラ散り広がるアルペジオと、気配としてのみ薄塗りされた鍵盤類の持続音とが、やんわり重なるこの雰囲気、HERMAN DUNEと組む前のジュリー・ドワロン諸作のあの感じです。カナダの木と地面のにおいは優しいですなあ。この人然り、またこの人も。ヴォーカルは押し殺したように囁く人で、ほれほれとアピールし過ぎず、インディ気取りにもなり過ぎず、誰にも快く聴けるタイプといえましょう。あー聴き進むごとに素晴らしい。「染み系」だの「和み系」だの言い切ってしまいたくない心づくしのグッドミュージック。

【本日のレビューその2:SHY「SUNSET & VINE」】


いつもならここで「じゃ『その2』は打って変わってチェコのB級暗黒ゴシックの…」などという運びになるところですが、上のKEPLERが最高で、あんまり雰囲気を切り替えてしまおうという気にならないので、引き続き胸打つ美メロに酔っていきたいと思います。
 このSHYはNWOBHMちょい後くらいに登場してブレイクしかけたイギリス産の伝説的極上メロハーバンド。しばらくの休止期間を挟んで今世紀初頭に(って凄い響きですが)復活して以来、なかなかコンスタントにアルバムを作っていまして、これは昨年リリースになった最新作。HARDLINEを思わせるアコギのアルペジオにピョピョピョと駆け上がっていくハーモナイズドギター、胸キュンをゲル状に煮詰めたようなマイナーキーのめくるめく展開…最高です。エモ過ぎ。無人島レコードを10枚、これ系ばっかり強制的にセレクトされてしまったとしても余生を幸せに過ごせるくらい無類の赤面メロハー好きな私です。さておき、例の甲高いヴォーカルも健在、作風は大名盤「EXCESS ALL AREAS」の頃と寸分違わぬどころかより洗練されてグレードを上げ、濃縮還元180%のあざといJOURNEYてな超ハイクオリティ作に仕上がってしまいました。新しさなど求めようもないこのジャンルでこんな名盤がまだ作れたのかと驚かずにはいられません。名曲ばっか!広瀬(BURRN誌編集長)失禁、政則(同特別顧問)号泣、藤木(同編集者)ガッツポーズ。この濃さは門外漢の皆さんが聴いてもきっと伝わるはず。ハッキリ言ってGLORIA RECORDやCOPELANDと何も変わりません。何故これを選ばない…ハードロックだからか?いや、好き好きだからに決まってますが。それでも手に取って頂きたい必殺盤、今すぐどうぞ

  7月11日
収穫はなし。モスバーガーは全部おいしそうだ。

【只今のBGM:ULVER「BLOOD INSIDE」】


悪魔系続きで今日はノルウェーブラックの最重要バンドのひとつ、ULVERが昨年リリースしたばかりの最新作を。彼らのおおまかなキャリアに関してはこのEPのレビュー内で紹介しておりますのでご参照ください。最近はもっぱら映画音楽くさいエレクトロニカな作風で来てたと思ったら、今回はそういう側面も残しながら生ドラムを大幅にフィーチャーして、かつクラシック的なアンサンブルや旋法を強く意識。BJORKの「HOMOGENIC」の暗黒版、もしくはPAN AMERICANCHROMA KEYのロックオペラ版みたいな壮大なスケールの作品に仕上げてきました。FAITH NO MOREのラスト作のようなイッちゃってる感もありますな。スピードや荒々しさには拠らず、他の誰もやったことのない「世界初の音」をこれでもかと盛り込みながら、ブラックメタルの正統的な狂気性を最深部まで映し出してしまうこのイメージ力、やはり圧倒的です。もう現代音楽にしてポスト・ロックの域。ディストーションギターこそ殆ど出てきませんが、昨日紹介したCELTIC FROSTの新作と正に本質を同じくする内容だと思います。RELAPSEやNEUROTあたりが最近よくリリースするようなスローコア一歩手前のポスト爆音・ゴス・コア(?)に入れ込んでる向きは、何も言わずに買って下さい。うおー最後の曲が猛烈に異形ブラックメタルで凄すぎる〜。

  7月10日
▼私も貴方も凹む本日の収穫。まずナディアパーク内ヤマギワソフトの中古コーナーにてRICHARD MARX「RICHARD MARX」(87年1st)、TUPELO CHAIN SEX「4!」(CARGO、レッチリ〜FISHBONEタイプのラテン寄りミクスチャーバンド)、WRETCHED「CENTER OF THE UNIVERSE」(HELLHOUND、C級ストーナー)、DEAD ALLISON「TOYS AND DREAMS」(HANOI ROCKS風のフィンランドのバンド)、THIERRY GALAI「ULTIME ATOME」(フランスの一人前衛ギタリスト)を全て50円もしくは100円にて、タワーレコード名駅店の315円ワゴンでSAIGON KICK「SAIGON KICK」(WOUNDED BIRDリイシュー)。一応どれも註をつけてますが、リチャード・マークスとSAIGON KICK以外は完全に知らないのばっかりで、「つくりが貧乏そうだから」という理由だけで買いました。ここまでで総額700円。

▼今日はこれで終わりではないのです。家に帰ると少し前に注文してあったLUGUBRUM「HEILIGE DWAZEN」、そしてCD connectionの荷物が遂に到着!濃すぎて自分で卒倒中。HADES「RESISTING SUCCESS/IF AT FIRST YOU DON'T SUCCEED」(WATCHTOWERの2ndで歌っていたアラン・テッシオ在籍!!)、SHY「SUNSET & VINE」(英クサクサメロディアスハード名バンド、2004年の新作!!)、HSAS「THROUGH THE FIRE」、ULVER「BLOOD INSIDE」(2005年最新作)、SOLITUDE AETERNUS「THROUGH THE DARKEST HOUR」、CELTIC FROST「MONOTHEIST(ゴシック/ブラック/ドゥーム開祖!奇跡の新作!!!BIG'N「DISCIPLINE THROUGH SOUND」(SKIN GRAFT、HAYMARKET RIOTの現ドラマー在籍)、EXHORDER「SLAUGHTER IN THE VATICAN/THE LAW」(ROADRUNNERクラシック!)、KEPLER「MISSIONLESS DAYS」(ジェレミー・ガラ在籍のカナディアン極上フォークロックバンド)、RAFT OF DEAD MONKEYS「THOROUGHLEV」(ex.DSIDE MONUMENTのメンバー在籍)、FM「INDISCREET/TOUGH IT OUT」(カナディアン産業ロック名バンド、BGOから86年作と89年のカップリングリイシュー)、ENTHRONED「THE BLACKENED COLLECTION」(ベルギーのオールドスクールブラックメタル、BLACKENDリリースの4作品同梱リイシュー)。こんなにあってどうするんでしょうか、勿論聴くんです。しかし度を越したまとめ買いはさすがにゲンナリ来ます。CD connectionのブツ、こんなタイミングで届かなくてもな〜…とか言いながら今週土曜はバッチリ休み取ってサウンドベイのバーゲンに並ぶ予定の私です。

【本日のレビューその1:CELTIC FROST「MONOTHEIST」】


いや〜今日はこれしかないでしょう。やっと手に入れました、スイスが産み落とした悪魔の化身CELTIC FROSTの再誕作。前身HELLHAMMER時代からノイズと邪気にまみれた異端スラッシュを身上とし、徐々にオーケストラルなアレンジ、更に何故かインダストリアル趣味なども導入され、90年代ゴシック/ドゥーム/ブラックメタルの礎を87年までに語りきってしまった恐ろしいバンドなのです。解散後に中心人物のトム・G・ウォリアーが始動させたAPOLLYON SUNでは、NINE INCH NAILSやMARILYN MANSONに強く感化されたデジ・ゴシックともいうべき音楽性になったものの、本質は往年と何ら変わるところがなく、健在ぶりをアピールしてくれていたものでした。しかしEPとアルバムを1枚ずつ作ったきり、再び音沙汰のない状態に。

 その彼らが再結成する、すると言い続けてはや数年、やっと新作を届けてくれたわけです。トム以外のメンバーはベースのマーティン・エリック・アインだけが残り、ギターの片割れとドラムは知らない人。黒を貴重にミイラをあしらったオカルティックなジャケからして完全攻めモードですね。1曲目イントロ、プィ〜と立ち上るフィードバックノイズ、おお「MORBID TALES」の世界!と思っていると、低いBでえげつないうめきを上げるギターと硬質なリズムで、KILLING JOKEにも近いサイバー・ゴシック・スラッシュな新機軸でバキバキと圧殺にかかる。うおー本気だ…。解散前のようにリズムチェンジを沢山盛り込んで展開していく手法はやめて、PORTISEHEADかと思うようなアンビエント感すら漂わせつつ、シンプルなリフに過去最凶の憎悪を込めて王者の何たるかを見せつけてくれます。…しばらく何書いていいか判らんくらい圧倒されてしまいました、こりゃ〜参ったな。ラストの電化ABRUPTUMみたいな組曲とか本当に死にそう。どんなブラックメタルもここまで完全で優美な地獄絵図を体現できたことはなかったでしょう。汚いし恐いんだけど、それが極限まで行くとかくも芸術的なのかと。昔からのファンは勿論、ISISやNEUROSIS、更にはSIGUR ROS、GODSPEED YOU BLACK EMPEROR、LABRADFORDみたいなバンドが好きな人にも絶対聴いて卒倒してもらいたい作品です。欧州デカダンアート最上の果実に間違いなし。トラウマ級の感動あります。

【本日のレビューその2:RICHARD MARX「RICHARD MARX」】


上の「その1」と同じ系統のを今聴いてしまうと、「スケールは小さいが頑張ってるね」みたいな感想にしかならなそうなので、いっそ完全に真逆のを選びました。ルー・グラムやドン・ヘンリーを若くしたみたいな、ロックバンドを後ろにつけた80年代AORの人ですね。87年、CAPITOL傘下MANHATTANからリリースの1作目。どうにも没個性ながら、時代を感じさせる良い出来でなかなか。これ以上何も言わなくても、"Endless Summer Nights"だの"The Flame Of Love"だのといった曲名を紹介しておけば、あとはめいめいイメージを補完していただけることでしょう。質には何の問題もないどころか、傑作と呼んでもよさそうなレベルまでいってるくせに、どうしようもなくツブが弱々しいというこのポジション、どっちかというとLONG ISLANDのノリですな。よくバーゲン棚に格安で落ちてるんで、落ちぶれたAORが好きな人はサクッと買っといて下さい。50円で拾えて良かったっす。

【本日のレビューその3:RAFT OF DEAD MONKEYS「THOROUGHLEV」】


上ので予想以上に拍子抜けしてしまったんで仕切り直しで。これは最近ご紹介したPATROLと同じくROADSIDE MONUMENTからの枝分かれ組…と思っていたら、PATROLをやってるダグ本人のバンドでした。ダウンチューニング&屈折ギターという体裁はいつもと同じながら、もうちょっと人を食った妙チクリンな雰囲気があって、初期Q AND NOT UがTOOTH & NAILに移籍してしまったような不思議なテンションのポストコアになってます。もしくはCANDY MACHINEであったり、何にしろどことなくDCノリを感じる気がします。それとは別に、ROADSIDE MONUMENTの頃から感じていた「『ANGEL RAT』〜『THE OUTER LIMITS』期の微妙なVOIVOD臭」がやっぱり生きてて、やっぱりなという感じです。パワーグランジ的ゴリゴリ感はPATROLの比ではないながらも、ROADSIDE MONUMENTのラスト作の延長からPATROLの路線に踏み切るちょうど中間の姿を捉えてるということで、ファンなら否応なく興味をそそられるところ。ヴォーカルパートを分け合っているもう一人のシンガーがやたら筋肉くさくて個人的に馴染めんですが、ダグが歌うとやっぱり雰囲気あります。熱心なファンか、この際VOIVODファンも買ってみたらいいと思いますよ。

  7月9日
▼今日も御器所サウスオブヘブンで墓掘りしてきました。行くたびに長時間棚にへばりついては古くてダメそうな盤ばかり買っていくので、いい加減店の人(DISGUSTのベーシスト氏!)にも「何だこいつ…」と思われてることでしょう。本日の収穫V.A.「APPOINTMENT WITH FEAR」「APPOINTMENT WITH FEAR VOL.2」(ともにオランダのCYBER MUSIC編集の初期ヨーロッパアングラデス〜ゴシック貴重音源コンピ!現役時代のMACABRE ENDやGROTESQUEほか大量収録)、DISSECT「SWALLOW SWOUMING MASS」(CYBER、オランダの突撃オールドスクールデス)、PHLEBOTOMIZED「IMMENSE INTENSE SUSPENCE」(これもCYBER、オランダの7人編成シンフォゴシック)、SANCTUM「RAPED OF YOUR RELIGION」(ALCHEMISTをリリースしていたLETHAL RECORDS、イギリス産ブラックデス)、MACERATION「A SERENADE OF AGONY」(デンマーク、ちょいテクニカルオールドスクール)、SUFFER「STRUCTURES」(スウェーデン、SUNLIGHTにてフレッド・エストビー&トマス・スコッグスベルグ録音!)、CARPATHIAN FULL MOON「SADNESS IN BLOOD MINOR」(AVANTGARDE MUSIC初期リリース)、TRIFIXION「THE FIRST AND THE LAST COMMANDMENT」(PAZUZUのドラマーのソロユニット)、NOMICON/SARNATH「THE ME/NORTHDOX」(ベルギーのSHIVER RECORDS、フィンランド2バンドスプリット)。もはや本来の目的である「日陰の変態ドゥーム/ゴシック救出」から離れて、ヨーロッパのマイナーレーベルの初期音源を漁る旅になってしまいましたが、よいのです。ブックレット内のサンクスリストなどを見回すにつけ、ファンジンやデモテープ(文字通りカセットテープ)などを通して当時のアングラデスメタルシーンがかなり活発に動いていたことが判ってきました。フランスだのオランダだの、チェコやオーストリアだの、色んなところに零細レーベルが興っていたようだし。んで音の方もみんな闇雲で元気がよい。10余年越しになぞっても伝わる熱気、この時代のユーロ・デスは凄いっす。まじで。

【本日のレビューその1:DUH「THE UNHOLY HANDJOB」】


紹介済みのデビュー作に続く95年の2nd。SPAZZのクリス・ドッヂ、FAITH NO MOREにいたらしいギタリストのディーン・メンタらが参加してます。音の方はジャンク色がやや薄れてメインストリームオルタナの影響が濃くなりつつ、ユーモア/パロディ度が上がって更にとりとめのない感じに。HELMETの解散前ラスト「AFTERTASTE」をビーヴィス&バットヘッドに乗っ取られたような、感触はジャキジャキ、流れはグダグダ、という妙な調子になってしまいました。ダメな最近のM.O.D.というか。音楽としての病み加減は前作の方が断然上だったな〜。多分英語のわかる人が半ば寸劇的に楽しむ前提っぽいです、何となくグループ魂とかに近いものを感じる気も。ボーナストラックのライブ音源では「あと5分あるから1曲だけリクエストを聞いてやる、俺らはカヴァーバンドだ!何が聴きたい?」と呼びかけて結局NIRVANAやGREEN DAYなど計4曲のへろっへろなメドレーをやり倒す様子が生々しく収められており、これは普通に笑えます。まあ1枚だけ買うなら順当に前作の方をお勧めします。上の青文字から辿って詳細レビューをご覧下さい。

【本日のレビューその2:SUFFER「STRUCTURES」】


初期スウェディッシュデスの無名バンド。何枚目なのかわかりませんがオーストリアのNAPALM RECORDSから94年に出てます。ストックホルムのSUNLIGHT STUDIOにて、名手トマス・スコッグスベルグとDISMEMBERのフレッド・エストビーによって録られているということでお膳立ては完璧。音楽的にも94年ってことで少し乗り遅れてるというだけで、有名バンドに何ら劣るところのない豪快なスウェディッシュスタイルを聴かせてくれます。ガバーッズゴーッと野太く歪んだギターサウンドに、デス声ではない地声雄叫び系ヴォーカル(死にそうなマックス・カヴァレラ風?)が乗って、オーソドックスな直線的デスラッシュよりも多少のひねりが加わった若干テクニカルな佇まい。リフやリズム展開をちょっと変にしたSEANCEみたいな雰囲気でしょうか。無骨ではあるもののかなりキレのある演奏がこの手にしてはちょっと珍しいですね。ドタバタとヘタウマなのがスウェーデン産の醍醐味なのに。まあ上手くて悪いってことはなく、普通にカッコイイです。GOD MACABREやDESULTORYまで手を伸ばすようなマニア諸氏であればチェックしといて下さい。

【本日のレビューその3:DECOMPOSED「HOPE FINALLY DIED...」】


この消化ペースだと明らかに購入量に追いつかないので今日は3枚目いきます。これはイギリスの老舗レーベルCANDLELIGHTの通し番号3番という、趣き溢れる初期アイテム。バンドもイギリスみたいです。ジャケやタイトルのイメージどおり、初期ANATHEMA〜MY DYING BRIDE似の鬱屈&悲壮なゴシックデスをやってます。やはりイギリス産はどことなく格調が高く威圧的な感じ。適度にテクニカルな展開もあり。ローファイな僻地ものもいいですがこっちにも魅せられてしまいます。んで面白いのが、ゴシックにあるまじき高速疾走パートがポンポンと挿入されるところ。極初期のMY DYING BRIDEはそんなようなこともやってましたけども、こちらの方が幾らかアグレッシヴです。録音が93年ということで、当時まだゴシック/ドゥーム/デスの間の仕切りが曖昧で「デスメタルつったらブラストっしょ」的認識が生きていたことを物語りますね。このどちらにも振り切らないグズグズ感がたまらなく心地よい。却って核心の衝動の部分は、装いの整った最近のバンドより生々しく感じられるのです。オリジナリティという点ではあまり立派なものがあるとはいえませんが、この時代の空気を吸って吐いていたリアルな記録として、なかなかの価値がある内容だと思います。

  7月8日
収穫はなし。「そこが『酒の席』であるなら、必ずしも酒は必要ない」派です。一定量以上のアルコールを摂るとすぐ寝たくなったり吐いたりするだけで、この歳にして「酔っ払う」ということを知りません。こういうこと言うと、酒の喜びを知らんなんて人生損してるよ…みたいなツッコミを受けることが割と多々ありますが、よく飲む人がアルコールに注ぎ込む金銭とバイタリティを、違うところで消費してるから人生トータルでの幸福度は変わらんと思うのです。酒に限らずタバコもマージャンもそう。そんなこと言ったらデスメタルを素通りする人も絶対損してるに決まっとる。以上、要約すると「今日は久し振りに飲んでお腹一杯」でした。近頃たるみ気味でイカンのですこの腹。

【本日のレビューその1:THE VANDERMARK 5「ACOUSTIC MACHINE」】


THE FLYING LUTTENBACHERSのアルバムでのゲスト録音、デュエイン・デニソン(THE JESUS LIZARD)とジム・キンボール(LAUGHING HYENASMULE)とのユニット・DK3への参加など、シカゴ前衛ロック界隈にも片足を突っ込む一方、ジャズ界においても90年代以降のポストバップの寵児として数多くのグループを率いる(→その1その2)サックス奏者のケン・ヴァンダーマークの本丸カルテットです。2001年ATAVISTIC、このレーベルにはちょっと珍しいデジパック。過去の作風と比べるといくらか優しい感触になって、あんまりマスロックばりのバキバキ変拍子みたいなのは聴かれず。順当すぎるくらいオーネット・コールマンやエリック・ドルフィーらの方法論に拠った作風になってます。曲ごとに「アーチー・シェップに捧ぐ」「エルヴィン・ジョーンズに捧ぐ」などと書き添えられているあたりを見ると、敢えてそういうコンセプトなのかも知れません。となると演奏自体をもっぱら堪能すべき盤ということになるわけですが、昔ながらのテイストを美しく生き生きと今に体現するケン氏の貫禄はやはり強大。フリー風の展開でも落ち着きとフィーリングを失わなず快適です。それでもやっぱりTHE SORTS風の5曲目みたいな野心的な作風の方が印象に残りますかな。全体として完成度は非常に高く、ジャケもかっこいいですが、初めての方はもう少し前のアルバムからどうぞ。

【本日のレビューその2:TOTEN/CONTRIVISTI「SPLIT CD」】


一時期INCANTATIONに在籍していた人を含むTOTENと、そのTOTENが前身となって結成されたPROFANATICAというバンドのまた後身であるCONTRIVISTIとのスプリットです。TOTENは87〜88年録音、CONTRIVISTIは95〜96年。劣悪なプロダクションでゲロゲロと爆走するTOTENが凄まじい!これぞ80年代型初期デスのプリミティヴな荒々しさ。不気味なリフメイキングはSLAYERその他のスラッシュメタル色をあまり漂わせず、どちらかといえばブラックメタルにつながる感じかも。そういやBATHORYっぽいですな。下劣過ぎる吐き捨てダミ声ヴォーカルも当時としては相当インパクトあったでしょう。テレコで録ったようなリハーサルテイクがそのまま収録されちゃってるのもスゴイです。後半収録のCONTRIVISTIは、ちゃんとマルチマイク録音が導入されていくらかクリアにはなりましたが、それでもほとんど完全録りっぱなしと思われる簡素なドラムサウンドが哀愁を誘います。路線はTOTENとあまり変わらず、ブラストを半分に減速したブラックメタルてな感じ。ダメダメな1349+ちょいVOIVODというか。シブ過ぎ!!TOTENの方の大雑把すぎるジャケ画も含めて、オールドスクーラーにはたまらん品なのでは。

  7月7日
収穫はなし。ここのところ本当に雨の予報に連戦連勝です。夜遅くだけ降るとか。私助かるわ。

【本日のレビューその1:JOAN OF ARC「EVENTUALLY, ALL AT ONCE」】


昨日に引き続きホヤホヤ新譜レビュー。この人たちはホント制作ピッチが速過ぎです。ほかの再結成後のアルバムレビューはここなど。さてRECORD LABELからリリースの今作、メンツはいつもの人脈とほぼ変わらず。ソロ作がリリースになったばかりのケイル・パークス(ALOHA)なんかもいます。で1曲目イントロからどこぞの70年代北米大陸フォークの名作やねんと目を剥かずにはいられない美麗なアルペジオ。これ殆どOWENっすな。その後はおおむねアンプラグド&和やか版MAKE BELIEVEって感じで、「いつも通りなのにハッとするくらい新しい」というワンアンドオンリーなJOAN OF ARC節を余裕で聴かせます。よれフォークの狭間からささやかに響いてくる隠れファンクネスの妙、あ〜一本取られました。しかも100%歌もの主体では終わらず、BATTLES+CHEER-ACCIDENTてな凝った小曲も後半にサラッと出てきてまたビックリします。誰の追随も許さぬ進化がどこまで続くんでしょうか、「また新作か〜もういっか…」とスルーしかけた向きもやはりチェックして下さい。

【本日のレビューその2:PAKENI「DETERGENT BUBBLE BATH」】


フィンランド産正統派グラインドロックバンドが96年にリリースした6曲入りEP。ここでの紹介で知りました。ガテラル声とエグいダウンチューニングで荒くれガレージロックをデス風味にやっつけてしまうという、数少ないこの手の作品の王道的内容で、ブラストパート(生っぽいプロダクションなのでパタパタパタ…とせせこましくやってる様子が生々しく収められていて微笑ましい)もマメに入れてくれて醜悪と豪快のバランスが程良く、非常にクオリティ高いっす。ク〜ル。端からミスマッチ的構図がそのまま本質となってるわけで、当然笑っちゃう部分もあるんですが、そこをあくまで仏頂面で通すこの黙々とした感じがシブイですね。男のたしなみ、大人のお洒落です。過去に紹介したXYSMAに見事ヤラレたという方はマスト…だが普通に手に入るんでしょうか、わかりません。日本ではそこいらの専門ショップの在庫分だけでしょう。見つけ次第お早めに!

  7月5−6日
▼最近、例えば「ツメを切ったあと、爪切りをゴミ箱に、切りカスを引き出しにしまおうとする」といった調子の無意識なエラー行動が多いのに悩んでいます。これ本当。

本日の収穫はSTIFF SLACKにてPATROL「DESTINATIONS」、JOAN OF ARC「EVENTUALLY, ALL AT ONCE」。店内で流れていたTHE UNDERCURRENTの新作音源(今秋STIFF SLACKからリリース予定)が、それはもうやたらとカッコ良かったな〜。執念と霊力がグワングワンと波打つ求道的ヘヴィロックの快作に仕上がってました。発売&レコ発楽しみにしてますよ、山崎さん!

【本日のレビューその1:PATROL「DESTINATIONS」】


来ました〜、待ってました!荒涼としたユニークなマスロックを標榜し、巨大建造物が高速で疾走するような異様なテンションと重圧に痺れまくる大名盤3rdを残して解散したROADSIDE MONUMENTのフロントマンが興した久々の勝負バンドPATROLの初音源。リリース元のSTIFF SLACKで一般発売(今月23日)に先駆けて放流されたのを早速ゲット。いやーこれは効く。BARKMARKETQUICKSAND、「BADMOTORFINGER」の頃のSOUNDGARDENあたりのガッツリハードロッキンな90'sパワーグランジ路線ながら、単なるレプリカには終わらず見事新たな一角を築いています。チューニングを最低でCまで下げて、時にツーバスまで炸裂させ(!)、沈み込むようなグルーヴに深入りしていくよりも性急なリフ展開に逐一とんでもない質量が伴うという感覚。HAYMARKET RIOTばりのアップテンポな曲もやってます。一方で押し一辺倒ではない緩急のつけ方にも余裕があり、そのあたりはやはりROADSIDE MONUMENTの陰が彷彿と。そしてかつてはエモシーンを牛耳ってきた(?)だけあって、メロディの説得力が確か。決して一緒に歌えたり泣けたりする類ではないですが、「変化球だがこれしかない」という絶妙な線を突いてきます。TRAINDODGEに続く救世主がなかなか現れません神様…とお嘆きだった諸兄はこれ、即入手の方向でよろしくお願いします。

【本日のレビューその2:TROM「BALMOR」】


相も変わらずドゥーム/ゴシック、あんまりまとめて取り上げると皆さん引いてしまうので、こうやって背後霊の如く「その2」にくっつけてしつこく取り上げ続けていきたいと思います。さてこれはジャケ買い以外の何者でもない謎の一品。スイスのバンドらしく、これは93年に録られた5曲入りミニです。ちょっとインダストリアル風の感触を持ちつつ演奏は全部人力で、変拍子や変則展開を取り入れながら筋肉質にガシガシと刻んでいく変なバンド。ヴォーカルもニューウェイブっぽいレミー(MOTORHEAD)て感じでなかなかキャラがつかめない。カクカクしたかと思いきやモヤモヤもし、いきなりゴシック全開な曲も出てきます。何だこりゃ〜…初期EL GUAPOミーツTYPE O NEGATIVE?BAUHAUSからの突然変異?90年代初頭のスイスで、このジャケで(凄い…)、こんな音が産み落とされてしまうという不思議。異端デスメタル文化の闇にはこういう驚きが平然と落ちてるから意味わかりません。マニア以外一生不要。もう一枚、何とライヴ盤が出てるようなので、今度買いに行きます。

  7月4日
▼ミニストップのデザートが相変わらずクオリティ高い昨今、本日の収穫は御器所サウスオブヘヴンにてNEMBRIONIC「BLOODCULT」(93年のEP他レア音源収録!)、PENTAGRAM「DAY OF RECKONING」「BE FOREWARNED」(デジパックリマスター!)、TROM「BALMOR」(93年スイス)、TOTENCONTRIVISTIのスプリット(両者ともINCANTATION人脈)、PAN.THY.MONIUM「DAWN OF DREAM」、ASTRAL RISING「ABEONA ADEONA」(93年フランス)、PAKENI「DETERGENT BUBBLE BATH」、OXIPLEGATZ「FAIRYTALES」(ex.AT THE GATESのギタリスト!)、DECOMPOSED「HOPE FINALLY DIED...」(93年イギリス、CANDLELIGHT初期リリース)。欧州ドゥーム/ゴシック見直し事業につき、今日のレビューはその20年前に同じことをやってたともいえるユーロプログレの気持ち悪いどころでいってみました。ロックはアメリカ/イギリスのものだと思うけど、ヨーロッパの手に掛かるとえらいことになってまた面白いです。

【本日のレビューその1:OSANNA「PALEPOLI」】


プログレッシャーには余りにベタなチョイスですが、後追いで買い求めやすいのを重視して。熱っぽくて泣けるのが多いイタリアンプログレの中でも数少ない脱線系の大名盤です。ニセくさい異国/異時代趣味を落ち着きなくカットアップした大作路線で、2分弱の小曲を挟んで20分前後の大曲が表と裏に1曲ずつあるという構成。動静の展開が激しく、ドゴーッとまくし立てたあと急に切々と囁き歌ったりしてしまうような運びは、ホント不条理系初期ゴシックの思考そのまま。まくし立てパートのやり方がまた激しく下品で、レジデンツに乗り移られたクリムゾンみたいな乱れた和音と荒々しい変則リズムでゴリゴリに攻めてきます。これが本当に常識外れに凄い。まどろっこしい歌パートに飛び飛びで埋もれてるため、連続して気持ちよくのれる時間は短いですが、瞬間最大風速的にデスメタルを陵駕しそうになります。びっくり。不動の大名盤として多分何度も復刻されてるはずなので、未入手の変態ロッカー諸氏はすぐどうぞ。

【本日のレビューその2:ANGE「AU-DELA DU DELIRE」】


こちらはフランスのバンド。74年、堂々のPHONOGRAMリリースです。ガイド本の類では普通に「叙情的なフレンチロック」として紹介されているだけですが、これは変態ゴシックのハシリ以外の何者でもないでしょう。どこに収まりたいのかつかめない不気味な脱力フレーズの数々はバッチリMISANTHROPE似。フランス産はこれですよ。ドラマティックというよりひたすらネチネチとイヤらしい描写には胸を打たれるどころか背をモゾモゾよじらせるしかなく、語り半分のあやしすぎるヴォーカルで更に追い討ち。退廃的かつナンセンスだがやけに必死の前衛劇みたいな感じでしょうか。下世話に簡略化したMAGMAのヴォーカルに志村けん化した西城秀樹が投入されたなら多分こんなんです。と散々な言いようですが、これもまたこの土地なりの「エモーショナル」の形。至って本気なのがまた恐い。純度の高い逸品に仕上がっておりますので、こわいもの見たさで聴いてみたいだけの人も「なるほどこれかあ〜」と満足できると思います。

  7月3日
本日の収穫、バーゲン最終日ということを今日知ったバナナ栄店にてGOMORRAH「REFLECTIONS OF INANIMATE MATTER」(スコットランドのオールドスクールデスラッシュ!)、EPIDEMIC「EXIT PARADISE」(US低速グルーヴィンデス、シークレットトラックでオジーの"Over The Mountain"のカヴァー入り!!)。今「あの頃BURRN!の輸入盤レビューで70点台以下がついていたあのCDこのCD」を見かけると全部買いそうな私です。そこそこ古いデスメタルは、アートワークとバンド名や曲名の雰囲気からおおかた中身の察しがつくから買いやすいですね。恐い落とし穴はドラムが打ち込みになってることですな。ドラマーいるくせに金がないから打ち込みとか、割とよくある話なのです。

【只今のBGM:CRAIG TABORN「JUNK MAGIC」】


2004年THIRSTY EAR BLUE SERIES。ティム・バーンやデイヴ・ダグラス、スージー・イバラ、フランシスコ・モラなど名だたる大御所と仕事を共にしている鍵盤奏者、クレイグ・テイボーンのリーダー作です。マット・マネリがヴィオラということで一瞬怯みますが、その他のメンツはTHE BAD PLUSのデイヴッド・キングがドラム、ヴィジェイ・アイヤーやアンソニー・ブラクストンなどと共演のあるアーロン・スチュアートがテナーというカルテット体制。ベーシストの不在は鍵盤で賄ってます。これがまたインテリジャンクな、生音系エレクトロニカ+フリージャズてな様相で凄まじい。カウント不可能な変拍子で執拗にループする上をランダムノイズ/キメフレーズ/アドリブソロの類がうじゃうじゃ横切る、最近の54-71を更にバクハツさせたようなプログレッシヴなインストアンサンブル。デイヴィッド・キングがやっぱりロック心のあるリムショットで引っ張ってくれる上、大量のエレクトロニクスが導入されていて、聴感上はほとんどポストロックです。しかしこんなポストロックは聴いたことがない。HELLAにリンチされてしまったISOTOPE217か。うむ、ノンビート系の曲ではロシと戯れていた頃のASH RA TEMPELみたいだったりもしますな…何てこった。マスタリングは例によってPIG DESTROYERのスコット・ハル。ニューヨークはかくも大変な街でございます。

  7月2日
▼バンドの新曲が実にいい感じになった。家でデモを録ってただけの曲をバンドで合わせて、思った通りの波が出たときは生きてて良かったと思う瞬間です。

本日の収穫、久々にヘヴン一帯を3軒全部ハシゴ。御器所ホーリーハウスでAS SERENITY FADES「EARTHBORN」、FEAR OF GOD「TOXIC VOODOO」、FLEURETY「MIN TID SKAL KOMME」、PLACENTA「ATOMIC STERILIZATION」、あとOVERKILLの「TAKING OVER」のTシャツ。同ディスクヘヴンでVAGABOND「VAGABOND」(ロニー・ル・テクロ!)、サウスオブヘヴンでBELIAL「3」(WITCHHUNT、IMPALED NAZARENEと絡むフィンランドのバンド)、LUGUBRUM「DE VETTE CUECKEN」、PAN.THY.MONIUM「KHAOOHS」(ダン・スウォノ在籍)。ヘヴンは久々にマスターが店番してました。堂々と客への悪態をつきまくる例の変なバイト二人は、早く悪口の神に呪われて日本を去ってもらいたいところだが、もうどこかへ行ったのかな?

【本日のレビューその1:PAN.THY.MONIUM「KHAOOHS」】


うおお…久々にどえらいもん聴きました。EDGE OF SANITYのダン・スウォノがいるということだけ知っていたスウェーデンのバンドの2nd。まだメロデスやゴシックが開き直りきってないはずの93年、コイツらは下品なダウンチューニングとHAWKWINDが知恵遅れになったみたいなサイケな展開を駆使して、絶句モンのグラインドロックをやりよる。初期ALCHEMISTとCARBONIZEDと「〜THOUSAND LAKES」の頃のAMORPHISが混じったような、時代錯誤のシンセあり、ゴアゴアなブラストパートあり、バリトンサックス(何と正式メンバー!)が唸るフリージャズ風パートありの壮絶な闇鍋。デスメタル版OPUS AVANTRAともいえそうな稀代のド変態。しかもダン氏所有のUNISOUND録音なのでプロダクションはなかなか良好。激しくDIYな横ラベルとその他の垢抜けまくったアートワークの絶妙なマッチングも、SPALAXの雑な再発みたいで最高。ああごめんなさい、今までこんなものスルーしながら変態好きを騙って死ぬ程ごめんなさい。初期SPVは本当に凄いですな。CUNEIFORMでもSKIN GRAFTでもOKな内容じゃないですか。

【本日のレビューその2:LUGUBRUM「DE VETTE CUECKEN」】


こちらは最近の作品です。ベルギーのバンジョー/マンドリン/アルトサックス入り脱線ブラックメタル(!)、LUGUBRUMの2004年リリース5th。ドラムが完全に無圧縮無調整の録りっぱなしサウンド(しかも上手い)で、アナログ機器に過大入力した感じのギターとベース、無駄にリヴァーブの深いヴォーカルと、音作りは完全にプリミティヴ・ブラックの本気モード。そんでスローテンポのドゥーミーなリフに何故かへろへろしたオールドロッキンなギターソロが絡んできたり、現代音楽さながら、もしくはジャーマンハードサイケ寸前の禍々しい不協和音がモヤ〜ンと漂ってきたりして、ブラックメタルにしちゃ何か調子狂うな…と思っていると突如鮮やかに激ブラスト炸裂!がそれも長くは続かず、すぐに元の酩酊スロー展開へ。変態アートを狙い撃ちしてるというより世界観のすべてが歪んでます。何か知らんが雰囲気のある謎めいたジャケ画といい。わざわざクレジットのあるマンドリンやサックスも実にさりげなく、聴こえない程度に入ってくるあたり、奇を衒ってる感じが全然しません。懐深いぜ欧州大陸。完全玄人向けの品ですが、聴ける人は一生聴ける渋い逸品。

  7月1日
本日の収穫、アマゾンマーケットプレイスで購入のGRAVEYARD RODEO「ON THE VERGE」。夜は大学のサークルの同期の二人がやっているSTEREO FABRICATION OF YOUTHというバンドのワンマイライブを見に行ってきました。こういう機会でもないと足を踏み入れることのまずない大須ell、開演ギリギリ前くらいに着いたつもりが、既にバンド演奏のような音が漏れている。見てみると1階の方でジャパメタのリヴィング・レジェンド、EARTHSHAKERが公演中とのこと!うーん興味はないがちょっと見たい、などと思いながら、気を確かにして3階のFITS ALLの方へ。(ellは自社ビルの1階と3階にそれぞれステージを構えています。バブル!)

 入ったのが間際だったせいでは多分なく、3〜4年前くらいに同じく見に来たワンマンのときと客の量が明らかに違う。広めのフロアが後方まで満員御礼。昨年リズム隊が脱退してフロント二人になって、ベース・ドラム・キーボードのサポート三人を加えての今回のライブ、とりあえずドラマー氏はえらく達者な人でしたな〜。レパートリーは1st時代のしかほぼ知らないわけですが、新しそうな曲の、特にメロウ寄りなものはどんどん80年代歌謡化してて(コードチェンジの多さや節回しなど)、東京にうじゃうじゃいるハツラツギターバンドとの住み分けになって良いんじゃないでしょうか。和田君の妄想ロックが江口君の美声ハイトーンにちょっかいを出してうわっと燃える初期のソフトSM的構図も面白かったけども。何と今月から名古屋ローカル番組「PS」とのタイアップも決まってしまったらしく、頑張ってもらいたいもんです。

▼帰宅後、教育テレビでニューオーリンズ復興を追うドキュメンタリーを少し見る。現地のミュージシャン達の口から、家族や音楽に対して当たり前のように語られる言葉の大きさよ。本当に大きい。泥まみれの希望と図太いヴァイブレーションが渦を巻く土地でPANTERAやEYEHATEGODのような音楽が育ったことも想像し、納得。そして仮にもNHKの端くれが、マザーファッカーとか平気で言ってるVTRの音声にピーは入れんでいいのかいとも思った。

【只今のBGM:GRAVEYARD RODEO「ON THE VERGE」】


日本では知名度の低いカリフォルニアの隠れ名物バンド。先月紹介のSTRESSBALLのサンクスリストに名前を発見し、早速まとめ買いしてしまいました。こっちのリストを見るとやっぱりPANTERA、SOILENT GREEN、C.O.C.などのニューオーリンズ系がぞろぞろ登場してます。それに混じって何故かSICK OF IT ALLやSMASHING PUMPKINSのメンバー一同まで。内容のほう、これの前にもう1枚出てる盤は80年代から作りためてきた楽曲をまとめて録ったもののようで、総じて大味な気合系クロスオーヴァースラッシュみたいな調子でしたが、94年リリースのこのアルバムではほぼスラッジと呼べる形に整ってきています。のたうつ変則ロッキンリフ、崩れる拍子、病的な叫び。EYEHATEGODみたいでカッコイイ…はずが、ルーズなプロダクションのせいでやや雰囲気が格下げされてしまってます。惜しい。それでも相当な荒くれ者であることは充分伝わります。凶悪過ぎるヴォーカルは「脳殺」でのフィル・アンセルモに迫るほど。キャリア的にいって、彼らがこの筋のオリジンの一員であることは間違いなさそうなので、MELVINS以降現在に繋がる流れを深く掘り下げたい向きは是非とも拾っておいて下さい。

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