物色日記−2006年8月

※頻出語句解説はこちら
  8月31日
本日の収穫、STIFF SLACKにてCHANNELS「WAITING FOR THE NEXT END OF THE WORLD」、DROPSONIC/TRAINDODGE「XERXES」、タワーレコード・パルコ店の515円均一ワゴンにてWADADA LEO SMITH「LAKE BIWA」(TZADIK)、VISTA「VISTA」、RAFAEL TORAL「CYCLORAMA LIFT 3」、MUSLIMGAUZE「AZZAZZIN」、HUGH STEINMETZ「NU!」、PURE「LOW」。

TERRORIZER、NAPALM DEATH、LOCK UPといったバンドで最強のリフを鳴らしてきたグラインド・ゴッド、ジェシ・ピンタードが、27日に糖尿病による昏睡で死亡とのこと。悲しい知らせです…。

【本日のレビューその1:TERRORIZER「WORLD DOWNFALL」】


多分10年くらい前、まだ私がいたいけな高校生だった頃、ディスクヘヴンの新入荷やオススメなどがゴチャゴチャと載ったチラシみたいなのにこのアルバムのことが書いてありました。隅から隅まで激賞の言葉が並び、果ては「デスメタル好きを自認する人でこのアルバムを聴いてなかったらモグリ」とまで言っていて、とにかく買いなさい、聴きなさいと懇願するかのような興奮した文面。そうかあ〜と思い、それから1・2年くらい経ってから中古盤屋で運良く発見、大学1年の夏に即購入したのでした。

 ラフに刻むハードコア的なリフとリズムのストップ&ゴー、切り込むベースリフのクールさ、言葉数少なめに吐き捨てるヴォーカル、息の上がる様子を全く感じさせないノリノリ超高速ブラストビートと、何もかもが完璧な内容にうおーかっこええーと思いながら、その時はまだヘヴンのチラシに書かれていたことの真意は半分も理解してませんでした。その後グラインドと呼ばれる人達のCDを、数はそう多くないながらぼちぼち買うようになってみると、この「WORLD DOWNFALL」を上回ると感じる正統派グラインド作品には見事に1枚たりとも出会うことがなく、その存在の絶対性を痛感し続けて今に至っています。あの超かっこいいBENUMBもROTTEN SOUNDも、89年に録られたこの音の活用変化でしかないという事実はもうしょうがないです。

 その後ドラマーのピート・サンドヴァルとベーシストのデイヴィッド・ヴィンセントの活躍はMORBID ANGELで耳にすることができ、ギターのジェシはといえばNAPALM DEATHに加入してモダン&複雑な方向へ進む音楽性の変化を共にする傍ら、各界の名手を呼んでLOCK UPというユニットを立ち上げ、TERRORIZER時代さながらの直球グラインドを好演。更にはTERRORIZERの奇跡の再結成ニュースが今年になって舞い込んで、その復活新録アルバムがちょうど先週あたりにリリースされたばかりでした。まだまだ伝説を作ってくれるはずだったジェシ・ピンタードが37歳という若さで亡くなってしまうとは、全てのデスメタラーにとってこれ以上ないほどの嘆かわしいニュースであります。まだこれ持ってない人はすぐ、全速力で買って、故人の死を悼みましょう。

【本日のレビューその2:CHANNELS「WAITING FOR THE NEXT END OF THE WORLD」】


先生、師匠、兄貴と敬愛するミュージシャンは世界に何人かいますが、J・ロビンスもその一人。BURNING AIRLINES(以降BA)解散後プロデューサー業で多忙にしていた彼の久々な本気バンドCHANNELSの、デビューEPに続く1stフルはDISCHORDから。後期JAWBOX〜BAで見せていたスタイルの延長線上にあるガッツィー、ポップ、ほんのりニューウェイブなJ先生節で今回もフルスロットルです。先のEPでも振りを見せていたとおり、BAの1枚目で顕著だった男泣きの哀愁はやはり後退の一途で、開放感ある「攻めのメジャーキー」路線が完全に主役。ニューウェイブ世代の彼の自然な感覚なんでしょう。その分ヴォーカルラインのキャッチーさは幾らか失われていますが、バンドアンサンブルにおいては、プレイヤーの人間力がものを言う奥の深いヘヴィネスが更に進化。ライブで体感したら強烈に酔えるであろうことがもう目に見えます。ほれほれ変拍子〜!と声を大にはしないがこっそりトリッキーなことを練り込んでしまうという技巧性の奥ゆかしい使い方もたまりません。いつまでも往年の男泣きを期待せず「歳食っても変わりながら全力で現役」というつもりでじっくり対峙すれば、滲む凄味が伝わるはず。RETISONICと併せて是非。

  8月30日
収穫はなし。女性ファッション誌による無理矢理な価値観捏造はもう何年も前から目に余るものがありますが、最近気になるのは「プリプラ」です。プリティ・プライス、可愛らしい値段、すなわち安物を略してそう称したいそうで。安いって言葉を使うとがめつさ漂うから、何とかして「『敢えて安い』のも選択肢のうち」みたいなセレブの余裕を醸し出したいんでしょう。まあその姿勢は百歩譲って容認するとして、字面から咄嗟に「プリブラGORGOROTH?」と反応してしまいそうになるから本当にヤメてほしいのです。ちなみにゴアグラえらいことになってるそうですね

【本日のレビュー:CARCASS「NECROTICISM -DESCANTING THE INSALUBRIOUS」】


ということでお約束過ぎるこの流れです。医学ゴアグラの偉大過ぎる唯一の開祖にしてメロディック・デスの先導者でもあったイギリスのCARCASSの3rd。このアルバムってもしかして、ゴアゴアな初期2枚とメロディック方向にスッポ抜けた「HEARTWORK」「SWANSONG」の狭間にあって今や中途半端な扱いを受けてたりするのでは…と危惧してのチョイスです。

 かの有名なNAPALM DEATHから枝分かれして、常軌を逸したダウンチューニング、ピッチシフターでゲッボゲボに下げたガテラルヴォイス、ずるんずるんと下品に歪んだリフに狂気のブラストビート…と、デスメタルの何たるかもまだ定まっていなかった時代にゴアグラインドの全てを引っ提げてデビューした88年の1st「REEK OF PUTREFACTION」、同路線の2nd「SYMPHONIES OF SICKNESS」は実際、神のような盤でありました。そこに元CARNAGEのマイケル・アモット(現ARCH ENEMY、SPIRITUAL BEGGARS)を迎えて92年に世に出たのが本作。スウェーデン人の血が加わったからなのか、心なしかENTOMBEDやDISMEMBERのような豪腕オルタナティヴなエッヂが加味され、持ち前の屍臭プンプンなリフがグッとストレートに整えられて、ブラスト一辺倒に拘らないリズムの多彩化も相俟って何とも堂々たるデスメタル新次元に踏み込んでいるのです。現代音楽的でもある不条理な音の並び、ダウンチューニングのエグさを際立たせる明快なフックの数々。この時代のほとんどのデスメタルバンドがネガティヴィティの発露にエネルギーを費やしていたのに対し、CARCASSのこのアルバムは単純に作曲として優れているように思うのです。デスメタルでしか描けない表現を真面目にやっているというか。こういう極端なのは歳とったからもうついてけないな…と思うことなく、グイグイと心に響きます。

 この次の「HEARTWORK」では更に大幅なポップ化(あくまで体裁はデスメタルのまま)が断行され、それもまた素晴らしいのですが、シブ好みには親切になりきらないこの3rdが丁度よろしいのです。現在では超グラインディングな名盤EP「TOOLS OF THE TRADE」とカップリングしてのリイシュー盤が出回ってます、ダウンチューニング好きが高じてデスメタルも聴いてみようかな〜とお思いの御仁はまずこのアルバムからどうぞ。

  8月29日
収穫はなし。流行りのチューニング用クリップマイクを購入。これでギターとアンプの間にあるものはエフェクタ2個とケーブル3本だけになりました、いい気分。

【本日のレビュー:PHLEBOTOMIZED「IMMENSE INTENSE SUSPENCE」】


94年CYBER MUSICリリース、オランダの7人組メロディックプログレデス。7人組!?て感じですが、専任ヴォーカル、ツインギター、ヴァイオリン、キーボード、リズム隊でその数になります。まるでツインキーボードが売りのLOCANDA DELLE FATEやな…と思った方は鋭い。正に豪華絢爛な妄想的シンフォプログレのデス化というべき内容になっているのであります。クラシカルなアンサンブル構築を駆使して暑苦しい激展開の嵐、しかも変態方向への脱臼ではなくて直球ドラマのダメ押しがこれでもかと。デス声抜いてギターの歪みも抑えたらREPERTOIREからポツッと出てても全然イケるなあ…と思いつつ、ボルテージの上がる場面ではデスメタラーらしくブラスト炸裂です。この猛烈なるクドさはさながら、メロデス版LATTE E MIELE、五人戦隊的BAL-SAGOTHとでもいったところ。演奏も録音もそこそこにソツなく整ってるのがカワイくないですなあ。もっと隅々までインチキ臭かったら良かったのに。ということで順当にRHAPSODYミーツPESTILENCEみたいなのが聴きたい欲求不満なメタラーさん方に推薦。

  8月28日
▼最近あれをやってます、これをやりました、と宣言ばっかりして全くその様子を明らかにしない人は信用できないので、今日は左手文字の練習成果でも公開します。

もの凄い雷雨のときでした。もう一発。

「ことわざが間違ってるよ!」という素直なツッコミだけはご容赦を。

収穫はなし。この夏好きな食べものはナムルです。

【本日のレビュー:PIP PYLE'S EQUIP OUT「UP!」】


56歳とは早過ぎる。パリにて28日未明、ピップ・パイルがお亡くなりになったそうです。(POSEIDON Daily Newsより。)初期GONGに始まりHATFIELD & THE NORTH、NATIONAL HEALTHとカンタベリージャズロックの最高のバンドを歴任してきたドラマーで、ウキウキする躍動感にキリッと鋭いスリルを忍ばせるスタイルが本当に魅力でした。まだまだこれからオヤジパワーに脂が乗るという歳だったはずなのに…。

 ということで本日は彼が80年代末から率いていたグループ・EQUIP OUTの91年作をご紹介。この前にヒュー・ホッパーの参加する1stがあったそうですが、ここではポール・ロジャースというBAD COMPANYの人とは同名異人のベーシストに代わり、あとは言わずと知れたエルトン・ディーン(KEITH TIPPETT GROUP、SOFT MACHINE、etc.)とソフィア・ドマニシなる女性ピアニストとのカルテット編成。のっけからカンタ節全開の牧歌酔拳フュージョンな雰囲気で静かにフルスロットル。各人の奔放なソロが回る間、ピップ氏もグワングワンと振れ幅の大きいアブストラクトなドラミングで応える。詩情のクッキリしたところはおおむねエルトン・ディーンがわかりやすく担当してくれてますが、全体に漂うどこかユーモラスな引っ掛かり感はやはりドラミングによるところが大きそうです。デコボコ道の心地よい振動を楽しみながら先の景色に想像を馳せるような。プログレ畑のミュージシャンがやるジャズロックならではの風情ですね。まあ言ってしまえばジャズとしてもプログレとしても、そう突出して新奇なヴィジョンを切り拓いているような内容というわけではないですが、深くまでじっくり味わえる出来になっていると思います。カンタ心のわかる方は是非とも。そしてピップ氏に冥福を。

  8月27日
本日の収穫、パルコ東館島村楽器にてELECTRO-HARMONIXの「METAL MUFF」。

まず箱がイケてますね。

がっつり厚みのある大きめな筐体(左のBOSS製品はサイズ比較用)で、太くてよく効きそうなツマミ群の存在感がシブイ。実際EQはガンガン効きました。今まで愛用していたRATでは、ディストーションツマミを12時より右に捻るともうグジグジに潰れてしまっていたのですが、これならその先のゾリッとしたハイゲイン・エリアにスムースに踏み込めて大満足です。アンプで歪ませた感じに近い音色で、試奏では敢えてJCを使いましたがANTHRAXとか弾いても全然映えました。中域を上げればぬるめのオーヴァードライブ風にもなるし、普通に9Vで動くし言うことなし。名前も最高(それが決め手と言っても過言ではない)。

▼と今日は一念発起して2万もする買い物をしてしまったわけですが、限界を感じてどうしようもない場合以外、基本的に機材に金は使わない主義で通しております。(CDは1日30枚とか買うくせに。)ケチというより、ジェフ・ベックがごく普通そうなマーシャルと小っさい歪みだけであのライブをやってしまう姿にひたすら正しさを感じて。何かあったらまずは自分(演奏者自身)、次に手元足元、入れ物は最後。でっかい重いアンプを引っ張ってきてライブに臨むのも何だか、じゃこれから繰り広げる演奏は本当にその大仰なハードウェアを不可避的に要求する内容なんですな?と問うてしまうクチなので、分不相応にならないように常に可能な限りのミニマムな状態でいたいわけです。実際未だひどいライブはするし…。余暇と金銭をはかりにかけて金銭を使うことを選ぶしかない人は、その方向でドーンと解決していただければよい訳ですが、暇人ならばアンガス・ヤング・モデルを所有しようとする前に自分がアンガス・ヤングになることを考えた方がいいですよね。

【エフェクタの新しい配線の組み合わせを考えていたら夜が深くなってしまったので、レビューはお休みします。】

  8月25−26日
▼25日は東山BLにてジョンのサン企画「バンド赤信号」に出演してきました。我々DOIMOI以外はローファイ系ばかりだったけど楽しかったな〜。以下簡単にリポートを。

▼1番手ペペ&プリマは、ギター×2、ドラム×1でたまにギターを管楽器に持ち替えたりする変則的な男女混成ローファイポップトリオ。商業ポップスがファミレスの豪華冷凍ランチだったらペペ&プリマはたまご焼きとおひたしの手作り弁当といった感じの簡素な装いながら、崩そう崩そうとするのではなく「普通にいい曲を自然にやる」というスタンスが根底に感じられて、充分ヘンなんだけど非常にストレートに和めました。また見たいなあ。

▼2番手は数年前の鶴ロックで目撃した回転木馬。その時の記憶が既に曖昧ですが、現在はラディカル・アフリカン・アメリカンのジャパニーズアングラパンク的解釈みたいな超フリーキースタイルになっててかっこよかった!ドラム+テナーサックス+ギターヴォーカルのトリオで、たまにギターの人もテナーに持ち替えてテナー・マッドネス!なダブル攻撃になったりも。選任リードの方はローランド・カークばりにソプラノサックスとの同時演奏などもかましてくれて最高。KNITTING FACTORY対応型のツワモノではないでしょうか。

▼3番目は何やら必死の暑苦しい人達が出てたようです、まあ割愛。チューニングがどれくらい狂ってたかだけ教えて下さい。

▼空調の故障している会場の暑さもいい加減つらくなってくる頃(主催者の配慮によりウチワが無料配布されました)、4番手はKOI。ギター+ベース+ドラムのオーソドックスな編成の女性トリオ。妙なリフと変則展開てんこ盛りで、歪んだ暗さとユーモアの交錯する、これまたアングラパンク的な音楽性でした。執拗なミニマリズムも効いててなかなか濃い。にせんねんもんだいあたりと火花散らしてもらいたい感じですね。「私の全てをおじさんに」で一本取られました。

▼5番手に本日の主催バンド・ジョンのサン。大筋でローファイポップを基調としながらハプニング的要素も強く、ペペ&プリマの例えの延長でいくなら、理科室の水道台で作ってしまったエクスペリメンタルめしという感じ。注意深く耳をやると普通にいい曲を演奏してるんだけど、子供用バイオリンとかウッドブロックとかの付加的な小道具が随時ひょいひょいと投入されまくる雑然とした感じが、また見せ物の一角として押し出されてるという。炭酸水素ナトリウムも確かに食い物という。葉っぱの裏側シスターズでは高速ワウトレモロで度肝を抜く古賀さんの、出そうとする音に向かって体が飛びついていく様子の異様な俊敏さにこの日もやっぱりビックリしました。

▼ラストは最初にも演奏したペペ&プリマの第2部。ゲストを迎えての大所帯編成が少々とっ散らかって聞こえた気がするのは、会場内のリアル温度が上がり過ぎてもはやライブを見るどころじゃなくなってたせいだったのかも知れませんが、最後の最後にブラス×3の大騒ぎで然るべきまとまり方をしてくれたので全てよし。ふ〜暑かった、とグダグダ残っているうちに流れ解散。会場ではライブの時くらいしか会えない面識ある同業者の方々にお目にかかれて良かったです。4ヶ月で5本も新しいベースを買ったというURTHONAの松本さんにどなたか「DOIMOIの杉山君が一緒にバンドやりたがってますよ」と伝えて下さい。その後、会社からの直接ハシゴで疲れきって先に引き揚げたボーカル二村以外の3人+創立メンバーの戸田さんで本山ワタミへ。いつの間にか28時近くになって、そこから自転車で1時間弱かかって帰宅。こっちは長い一日の終わりとして家に向かっているのに、その時間既に世間は「これから」な空気になってて、朝刊配ってたりするので切ないです。スズメの声はギリで聞かなかった。

▼明けて26日は眠るように働いて時々左手文字の練習をしました。収穫はなし

【本日のレビューその1:小田和正「MY HOME TOWN」】


大名盤「OH YEAH!」のフォローアップとなる93年作。後期オフコース〜ソロデビュー以来の路線を堅守した高品質AORとなっております。舶来志向が相変わらず強く、アレンジからヴォーカルの確かさから全部含めて日本的な間違ってる感が皆無なのはさすが。ネイザン・イーストも引き続き参加してます。この人は爽やかで誠実なフリして、恐ろしくしつこいのが面白いですね。あウッと力の入る歌い出し、ねちっこい愛を偏執的な表現で綴る歌詞など。いたたまれなくなるほどの念力に折れて、何枚でも買ってしまう。まだピュアにアーティスト然としていろいろ模索していたオフコース時代と比べると、90年代以降のソロワーク群はひとつひとつ注意深く追うほどのものでも正直ないんですが、出来映えが素晴らしいのは確かなので買えばいいです。250〜500円で。いやーいい声だ、それで充分。名曲は全曲です。

【本日のレビューその2:DEREK BAILEY「AIDA」】


81年。78年に亡くなった間章(あいだあきら)というジャズ評論家への追悼録音である模様。完全なるアコギ独演の長尺フリー・インプロヴィゼーション3編。何とリリカルな…。少しの淀みもハッタリもなくたった一人でこれだけ歌い繋げられる精神とイマジネーションにただただ頭が下がるしかない。取り上げておいて何ですが、わざわざ添える言葉など何もなかったですな。20分でもいくらでも呼吸を忘れる、ギターの美しいアルバムです。






【本日のレビューその3:RAGE AGAINST THE MACHINE「RENEGADES」】


バンドのラストリリースとなった2000年のカヴァーアルバム。うーん彼らは90年代の偉大な遺産です。オールドロック回帰リフ(+特殊音響プレイ)+ラップヴォーカルであるからアツイ、という喜び方は別にしないのですが、尽きることなく太い絶倫グルーヴはどう聴いても圧倒的と言わざるを得ない。もてはやされていた時代が過ぎてもまったくダサくなってないですね、正真正銘の本物でした。さてこのアルバム、収録曲の元ネタの方は、半分くらいがラッパーのもので、もう半分がSTOOGESやらMINOR THREATやらと、大筋で順当なチョイスになってます。DEVOの曲では普通にメロウに歌っていて、誰かに似てるなと思ってJ・マスシスが思い当たってからは何だか笑えてしまう。もとがラップの曲は多分特に驚きどころもなくちゃっかりレイジ版になってるだけなんだろうなと想像するとして、ブルース・スプリングスティーンとかは相当とんでもないことになってます。これでも強引に捻じ伏せて納得させてしまう存在のしたたかさよ。方法論の限界をみっともなく露呈しないうちに(しかけてた気もしますが)、こうやってちょっと余分なポテンシャルもチラつかせながら、潔く解散したのは良い選択だったんじゃないですかな。

  8月24日
本日の収穫、新店舗移転後初めて赴いた御器所ディスクヘヴンにてATTACK「RETURN OF THE EVIL」(85年2nd!)、FLEURETY「LAST-MINUTE LIES」、MAUDLIN OF THE WELL「MY FRUIT PSYCHOBELLS...A SEED COMBUSTIBLE」。雑然とした雰囲気は相変わらずながら、棚の高さの上限が下がって非常に見やすくなりました。無駄にヘブン(本体)→ホーリー(中古)→サウス(デス)とハシゴしなくても全部ワンフロアに収まってるというのも嬉しい。名古屋在住のメタラーは新聖地に是非お越しを。

▼小倉智昭の夏休みが長いな…。

【本日のレビュー:ATTACK「RETURN OF THE EVIL」】


段ボール箱を叩くようなスネアサウンドと笑撃のキメ満載の伝説盤「SEVEN YEARS IN THE PAST」で日本のコアなメタラーにもその存在を知られる、裏ジャーマンメタル・キングATTACKの85年2ndです。再発とはいえこんなものが転がってるとはヘブンの店頭在庫は凄い。この頃はいかにもジャーマンなクサさや筋肉感が薄く、IRON MAIDENの影響のあからさまに色濃い、(信じ難いことに)なかなか垢抜けた出来上がりの超正統派メロディックHMになっています。音質も普通。冒頭曲などあまりの"22 Acacia Avenue"っぷりに笑えますが。唯一その後の姿と変わらずチープなのは、中心人物である御大リッキー・ヴァン・ヘルデンのうわずった弱々ハイトーン。この線の細さがたまらんのですわ…。あっ途中で"Aces High"も完全にパクッてる、ひどいなあ。このメイデンクローン状態から脱却せんとした結果があの「SEVEN YEARS〜」でのイモイモ・クサクサなスピードメタルスタイルだったのか…。才能があるのかないのかよく判りませんが、とにかくロマンです。おっとバラードではモロSCORPIONSかい、ここまでくるともうツッコミ待ちでやってるとしか思えません。きっと今や出回る数も少なくて貴重な品になってるはずなので、愛あるメタラー以外はくれぐれも買わないようにして下さいね。

  8月23日
収穫はなし。昨日左手で字を書く練習をした紙をスキャンしてアップするつもりで、それを家に持ち帰ってくることを忘れたので、今日は特に何もないのです。ライブ直前なのでこれから深夜練習に出掛けます、23〜25時。普通に夕飯食べて結構満腹なのに「出掛ける前、よかったらコレあるよ」とさっき母親が部屋にオニギリを見せに来ました。そういうもんですよね。

【本日のレビュー:ESOTERIC「EPISTEMOLOGICAL DESPONDENCY」】


イギリスの零細ドゥームメタルレーベル・AESTHETIC DEATHの第一号リリース。タイプライター使用かと思うほど貧乏臭いフォント使いですが中身はいきなりCD2枚組です。ぬお〜濃い…。disc1・2とも、20分前後の大曲が5分以下の小曲を挟むという構成で、トータル6曲収録。YESの「海洋地形学の物語」に勝るとも劣らん大作。各種サウンドエフェクトを駆使し(しかもどこまでもアナログな感触)、超サイケなスピリチュアル・スペース・ダブ・ドゥームともいうべき壮絶な挑戦に出ています。初期ASH RA TEMPELのテープを低速再生させた上から更にディレイの濃霧で覆い尽くしたかのような、際限なきディープ&アブストラクトな世界。短い曲は一応「デスメタルですから」とばかりに高速2ビートをかましたりしてますが、やっぱり何だかんだでブラックホール行き。これは多分、今のアーティストが同じようなことに取り組んだとしてもただの利口な「ニッチミュージック」になってしまうんでしょうな。デスメタル隆盛に端を発するメタル界限定の音楽解体ブーム(ポストパンクから遅れること10年…)がまだ熱を帯びていた94年というタイミングで、そこに乗じてやってしまった「適当な反音楽」としてのムチャクチャさ、フットワークの単純さ、生み出してしまったとてつもない結果に対する自覚の薄さなどが何ともリアルでたまりません。安易にCATHEDRALに感化されてしまったサバスもどきのもどきに興味はないというリアル・ドゥーマーには全力でオススメ。

  8月22日
収穫はなし。常に憧れていることといえば右脳の開発ですので、左手で字を書く練習を始めました。

思い立っていきなり画策中の別名義ユニットのロゴが完成。

コンセプトは「全て楽譜から作曲する、聴いても困るノンディストーション・レコメン・ゴシック」です。ロゴは思いっきりブラックメタルになっちゃいましたけど。これに頑張りすぎたんで今日のレビューはパスします。早く音源作りたいなあ。

  8月21日
本日の収穫、タワーレコードパルコ店にてGARY THOMAS「BY ANY MEANS NECESSARY」「THE KOLD KAGE」、STARSHIP BEER「NUT MUSIC 1976-88」(ATAVISTIC UNHEARD MUSIC SERIES)、EVIL MOISTURE「KILLER NUTS」(DECO)を全て515円で。

▼思い立ってCONFESSORのTシャツを直販でオーダーしてしまった。ペイパル便利。

【本日のレビュー:EVIL MOISTURE「KILLER NUTS」】


ひっさびさのエレクトロニカ。2004年、DISCOMをリリースしていたDECOから、これまた大概スカミーな代物です。だいたい1トラック1分以下で、雑多な音源や電波(ラジオ音声そのもの含む)をズタズタにカットアップしまくった性急ザッピングノイズの嵐。あほでいいです。ホワイトノイズをガンガンに歪ませたような聴覚破壊攻撃もボチボチ。どこにもない音象風景の捏造というよりは、元をただせば日常で耳にしてるはずの音が変わり果てた姿で連なってる感じでしょうか。ナンセンス・ゴミ化したPREFUSE73というか。目も当てられないジャンク改造っぷりには作者の「お前らバーカバーカ!」という世間へのそしりがたんまり込められてるかのようです。何も考えたくないときにヘッドフォンで大音量でいくのが良いでしょう。MEGO好きには良いレーベルですねDECO、響きも似てるし。オフィシャルサイトが消え失せてるけど存命なのか??

  8月20日
以前お知らせしたライブがだんだん迫ってます。まず直近は今週金曜、東山BLにてジョンのサン企画です。取りおき歓迎中。詳細はいずれと書いてあった10月の件は、なんとex.SHINERのアレン率いるTHE LIFE AND TIMES名古屋公演でした〜!10月29日(日)、ジャパンツアー5公演の千秋楽となる名古屋得三です。ほかの出演陣は、完成したばかりの新作(9月リリース予定)が超強烈なTHE UNDERCURRENT、そしてジャパニーズエモの草分け・NAHTっちゅうエライことになってしまいました。ということで本日の収穫はSTIFF SLACKにてTHE LIFE AND TIMES「THE MAGICIAN」。

【本日のレビュー:THE LIFE AND TIMES「THE MAGICIAN」】


STIFF SLACKエクスクルーシヴでリリースされた最新5曲入りEPです。前身のSHINERは、グランジ末期とエモ草創のちょうど間くらいに登場し、メロディックでヘヴィで変則的な、どこにも属さない歌心で道ひとつ拓いてしまった偉大なバンドでした。今もアメリカのそこかしこで地味に増え続ける「SHINER系」の音に引っ張り出されてか、G./Vo.のアレン・エプリーを中心にまずは2003年に54-40 OR FIGHT!からTHE LIFE AND TIMESとして復活EPをリリース、2005年にはDESOTOでフルアルバムを作り、今年の秋このEPを引っ提げて日本にやって来るというわけです。

 さて本作、フラフラ浮いているようでクッキリ濃い絶妙なヴォーカルラインと、そこにつかず離れずで絡みながら宇宙的なスケールを醸し出す独特のギターとがいつも通り全開な、心配無用のアレン節そのもの。変化球をストレートに響かせるワザは本当にセンスの塊です。今回は更に、グワ〜ンとひしゃげたような遠い轟音感がこれまでになく強烈にトリッピーで、グッと落としめのテンポと相俟ってじんわりじんわりと飲まれていくような感覚があります。ミクロな趣向は違えど再結成CELTIC FROSTやJESUみたいな人達と大局的なベクトルは同じですね。あのスピリチュアルな揺らぎですよ。ラジオ的ではなくなったはずなのに即効性は以前より増しているという熟練の妙技。今しか成立しない流行り云々にしがみつかず、ロックの根源的な領域の果敢なる新解釈になってると思います。ロックを見捨てかけた大人でも長く味わっていただけるはず。勿論末期GLORIA RECORDとかが好きっていうエモいヤングでも全く問題なし。さー早く買いましょう。

  8月19日
収穫はなし。調べによると、今私ができかけてる気になっているのは、別に鼻じゃなくて普通のホーミーだったみたいです。発声法をレクチャーしているサイトを見てるとどうも、舌の形や口の開き方に関する指示が、低いデス声を出すときに心掛けていることと途中まで全く同じことが書いてあったりして興味深いです。デス声のいろいろも倍音次第なのですな。

【本日のレビュー:DEMETRIO STRATOS「METRODORA」】


以前購入した5枚組BOXからもう一発。CRAMPSの前衛アーティストソロシリーズ・DIVERSOの5番としてリリースされた76年の作品。ちなみにこのシリーズ、他のラインナップはデレク・ベイリーやスティーヴ・レイシーなど。デメトリオはやっぱりヴォーカルソロにて参戦です。うめきや絶叫など、奇声といって差し支えないヴォイスパフォーマンスを多重録音したシュール&ストイックな作風。あまりどこどこの笛の模写だとかバリエーションつきのホーミーだとか、ライブ盤でやってるような芸の展覧会はやらず、とにかく奇声です。じゃ誰にでもやれるんじゃないのかと言えば、さにあらず。声そのものやその連続性、時間を埋めていく感覚など、型を逸脱してはいるがフリー表現として成立する強烈な説得力を伴うもの。それこそデレク・ベイリーなんかのソロパフォーマンスを聴くのと同じ心構えで向かえばOKかと。ショックとユーモアの溶け込んだ奔放過ぎる詩情と、器用極まりないノド使いの技術とが組み合って、人の口から出てくるとは誰も思わない(が人の口からしか出てこない)音を自由に謳歌してくれます。オーケストラの演奏に匹敵するかと思うほど感動のレンジは広く、ヘッドホンで集中して聴いたあとはすっかり胸を打たれました。吉田達也氏やマイク・パットンへの影響も甚大、文化人のたしなみと言われてもおかしくない偉大な遺産。おひとつどうぞ

  8月18日
収穫はなし。新聞の見出しに「悪質リフ」って書いてあるから何かと思ったら、折り目を広げた先に「ォーム被害3倍」と続いてました。悪質リフであって欲しかった。HEMLOCKみたいなやつですか?悪質デスヴォイス、悪質ブラストビート。

▼鼻ホーミーをかなりマスターしてきました。

【本日のレビュー:HEMLOCK「CRUSH THE RACE OF GOD」】


最近再結成して話題になっている90年代屈指のグラインド・ゴッド、BRUTAL TRUTH。ベーシストを務めていたダン・リルカは、古くはANTHRAXの初期メンバー(1stのみ在籍)であり、その後S.O.D.〜NUCLEAR ASSAULTといずれ劣らぬスラッシュ/クロスオーヴァーの伝説的バンドを渡り歩く傍ら、解散前末期のHOLY MOSESに参加したり、MALFORMED EARTHBORNなるノイズ〜インダストリアル・ユニットを動かしていたり、最近ではAUTOPSYのクリス・ライファート、NECROPHAGIAのキルジョイらとTHE RAVENOUSを結成するなど、常にハードワーキンな人です。そのダンがBRUTAL TRUTHと並行して90年代初頭からやっていたローファイブラックメタルバンドがこのHEMLOCK。さて長い能書きでした。

 本作は92年からの作曲をまとめて96年に録音したアルバムで、HEAD NOT FOUNDとVOICE OF WONDERのハーフリリースか何かである模様。粗悪なプロダクションから胡散臭いメンバー名から、DARKTHRONEや初期EMPERORのようなシブいノルウェイジャン・プリミティブ・スタイルをきっちり踏襲しています。ブラストしきらない中途半端な高速2ビートは常にバタつき、ギターはジョギジョギした異様な音色、ヴォーカルはほとんど必死の悲鳴の域。レプリカなりに超本気の下品さで、聴き応えは上々です。ダン・リルカは昔インタビューで「スカンジナビアのメロディックデスやブラックメタルは、悲壮なメロディがありながら凄く邪悪で、胸に迫るものがある」といった主旨の発言をしていたように記憶してますが、まさに胸に迫る、尋常でない想念をよくパッケージしてます。うーんクール。ブラックメタルほど徹底的に特定方向に過剰に振れきった音楽は他にあるまいとさえ思ってしまいます。その道に興味がおありならBATHORYやMAYHEMやBURZUMから入門するのが筋ですが、何たるかを手っ取り早く俯瞰するにはこれはなかなか良いチョイスでしょう。無論コアなプリブラマニアやダンのサイドワークチェッカー諸氏も必須。

  8月17日
収穫はなし。しばらくCD買ってないですが(いつからのしばらくだ…)、買わないなら買わないで割と平気です。今日はこれからこの暇どうしようってな局面になると「うん、サウンドベイだね」と深層意識のパッション屋良が囁いてくるのです。まあ、病気ですな。

【本日のレビュー:DIO「MASTER OF THE MOON」】


今年の夏フェスも大きなものがボチボチ片付いてきてますが、10月にMEGADETHとSLAYERがトリという一大メタルフェス・LOUDPARK06というのが控えてまして、スラッシュ/デス/ニュースクール系のメンツで揃えられた中、何故か決まってしまったDIO。というわけで今日はDIOです。

 これが2004年リリースの目下の最新スタジオ録音となるわけですが、全くもってライブの予習には役に立ちません。何せ昨年の来日公演でさえ、ここから演奏されたのは"Shivers"1曲だったので…。じゃ駄作なのかというと、そうではなく、初期3作のスタイルに忠実な完全DIO印の力作なのです。もうこれは「ロニーはまだ生きているよ」という便り以外/以上の何者でもないわけですね。ここでの収録曲はあくまで往年の名曲群のダミーであって、ライブではオリジナルの方ばかりもっぱら演奏されると。まあ20ウン年ものあいだ同じスタイルを求められて、途中果敢にグレながらも(→その1その2)結局もとの道に戻ってきた人ですから、現役であり続けるためにこれより他にやりようはないし、これで誰もが幸せだからいいんでしょう。先のライブでこのアルバムを代表する1曲として、ヘヴィであやしげなムードでやや浮き気味の"Shivers"を敢えて選んでくれたというのは何だかいい話です。齢六十過ぎにして衰えぬ野心よ。ヴォーカルパフォーマンスの方も、多少かすれっぽさが目立ってきているものの、気力や存在感はまったく昔のまま。ああ尊敬、崇拝。よくメタル系レビューサイトで「〜のみならず音楽好きならきっと気に入るであろう…」といってムチャクチャなものを勧めてるのがありますが、DIOおよびロニーに限っては本当に全員聴いてもらいたいです。「HOLY DIVER」買って下さい。

  8月15−16日
収穫はなし。ザ・ダイソーで、ザ・ダイソーでちょっとしたコマゴマとしたものを探していたら、五線譜のルーズリーフなんてものを発見してしまったので思わずリングファイルと一緒に購入。勿論五線譜として使います。ザは要らんよな。

▼昨日なんとなく、久々にスピッツの謎多きEP「オーロラになれなかった人のために」を熟聴しましたが、やっぱり意味の判らん盤でした。以前レビューに取り上げたときは、リリース当時世間がアンプラグド全盛だったということをすっかり忘れておりました。90年代前半の音源は、ジャンル・国籍関係なく意外なところでアンプラグド現象の横線にブチ当たることがあるのが面白いっす。「あ、そうか」と気付いては苦笑。

【本日のレビューその1:PARAMAECIUM「EXHUMED OF THE EARTH」】


スイスのWITCHHUNTリリース、オーストラリアのドゥーム/ゴシックバンドの93年作。この時期のマイナーバンドにしては非常に垢抜けてて堂々としたスケール感があって、ヘヴィリフとミニマリズムによる邪悪なサイケトリップの相当上質な部類を見事体現。初期MY DYING BRIDEをスロー一辺倒かつ野獣化した感じといいましょうか、今NEUROTあたりからリリースされたとしても大絶賛間違いなしの出来です。時間感覚のコントロールが非常に巧みで(普通にドラマーが上手いってのもある)クソ遅くても疲れず、ディープながら器の小さいマニアックさはなし。随所に配されるヴァイオリン・フルート(!)の類やオペラティックな女性ヴォーカルも学芸会的にならず効果的に作用。このクオリティならEARACHEでもイケたのになあ、それなら「初期EARACHEの名盤!」とかいって未だに語り継がれてたろうに。アートワークが美しいのもよい。世界があります。何とまだ現役だったようで、この頃と全然変わらない作風で新音源もバリバリ作ってます。90年代ドゥームのファンからイマドキのサイケ激音系リスナーまで、見かけたらどれでも買い。

【本日のレビューその2:SLAYER「LIVE UNDEAD / HAUNTING THE CHAPEL」】


新作リリースで随分と騒がしいことになっているSLAYER、その新作は買ってないのでこれで。85年のライブアルバムと84年のEPをカップリングしたドイツ盤デジパックリマスターです。スタジオアルバム2枚出していきなりライブアルバムリリースとは、いかに肉体勝負に自信があったかが察せられますね。妙に現実的なサイズの歓声がリアリティをそそります。演奏は若々しくアグレッシヴながらも全楽器ほとんど乱れやノイズがなく、特にドラムは抜群に安定。何でも巻き込みながらドゴーッと一定の勢いで流れていくストップ不可な濁流の如し。ドラムにしても、ギターにしてもそうですが、SLAYERの上手さってのはあくまで人間の腕が猛烈に速く動いてる感じを失わないのがアツイところだと思います。

 さて後半にカップリング収録の「HAUNTING THE CHAPEL」EPについて、これの冒頭の"Chemical Warfare"は「リリース当初プレスからは『世界最速の曲』と言われていた、しかし今聴くと全然どこが〜ってな程度のスピードである」という話で有名なんですが、確かに何故この曲がとりたてて一番速いと言われたのかよくわかりませんね。SLAYERにしては珍しく全編リバーブ病が酷く、そういう聴きにくさもあってまあどっちでもいいかなという感じはあります。「HELL AWAITS」の前にここまでいってましたという意義か。貴重なのは1st制作以前に名物コンピ「METAL MASSACRE」に提供した"Aggressive Perfector"の収録でしょうか。(といっても今では「REIGN IN BLOOD」のリマスターにあっさり再収録されてますが。)上がりきらないテンポとちょっと可愛いトム・アラヤのシャウトが微笑ましい一品。

 最近彼らを知ってバックカタログに手を出そうと思っている人が「手っ取り早くライブ盤かなあ…」と考えているのであれば、全然悪くないチョイスでしょう。ただスタジオ録音の方がドロドロした世界観の隅々まで描ききってる感もあるので、演奏集団として本物かどうかの確認よりそういうところを堪能したい向きには「HELL AWAITS」の方をオススメしておきます。

  8月14日
収穫はなし。何か前の方がカタカタ緩んでるな〜と思っていた自転車(今年の3月末に購入)が既に危機的状況になっていたことに気付く。大いに凹んで今日は終わり。

▼といって終わらせたりすることの多い最近の物色日記、ドイモイの篠田君に先日「遊びやネタが減ってレビューに特化している最近の傾向は、何だかIN FLAMESみたいな高性能メロディックデスのようですよ」と言われてしまった。そうですよね。ここのところ生活が相当ルーティン化してきているのと、あと昔の日記は明らかにモテたそうだから、今見ると「よくこんなうるさく書けるなあ…」と思ってしまうのですな。いつの間にかアクセス数も倍近くになって(ありがたい)、今ではたまたま通りかかった方々をゲンナリさせないことに専ら気が行ってしまいます。こうして人はそのうち何も語らなくなるのか…と思うと寂しいので、軽いホーミーの話や犬や猫の話で茶菓子代わりにしているつもりなのですが。ともあれレビューが茶ですので、よろしくどうぞ。

【本日のレビューその1:MORHO「MORHO」】


うーん凄いジャケ、そして凄いバンド名です…男性同性愛者の業界用語とかではなく、70〜80年代に活動した数少ないフレンチHMバンド・TRUSTの元ギタリストの御名です。これは彼のソロ名義作のようで、ブックレットを見ても制作年は不明。聴いた感じ多分83〜86年くらいと思われます。TRUSTってのはまたムチャクチャなバンドでありまして、過去に掲載したレビューは当サイトでも歴代屈指の壮絶な内容でした。このアルバムでは随分と品性ってもんが出てきて、GRAND PRIXSHY、あるいはHUGHES&THRALL(奇跡的なことに時々声質が似る)みたいなクッサクサメロハー/AOR路線に。英詞だし普通に完成度が高い、というか非常によろしい。煮詰めすぎですよっていう濃さは僻地産ならではか。ポップ化以降のMEDINA AZAHARAみたいな嘘臭さがたまらん。ほとんどTRUSTとは関係のない音になってますが、元TRUSTだからこそオイシイ1枚ともいえます。LONG ISLANDやMTMやSPITFIRE再発ものまでくまなく買い漁るようなマニアだったら当然マスト。何と再発元がSPALAXなので、ちょっと頑張れば入手可能でしょう。

【本日のレビューその2:絶対無「花魁」】


久々POSEIDONシリーズです。83年結成、89年レコードデビューの老舗国産バンドが昨年リリースした目下の最新作4th。ドラマーは日本のインディーズコーナーでよく名前を見る割礼というバンドの人である模様。ただならぬ雰囲気のジャケにどんな内容かと思っていたら、1曲目から再生し始めるや否やいきなりクリムゾン+人間椅子みたいなディープな一撃に首から上をくわえこまれてビックリ。オールドロックと和テイストを融合させようとする試みはこれまでにも数あれど、これはかなり突出した成功例じゃないでしょうか。変則展開や変拍子をさりげなく利かせて1曲を手短にまとめるポップ職人としての手腕も見事。そこに錯乱したアイドルみたいな強烈な女性ヴォーカルが対等に渡り合ってます。サイケ/アンビエント/フォークと多様に展開する表現も、無理やりな見本市にならないスムースさで美しく紡がれる。まだ凝り固まったスタイルがなくて色んなバンドが各々のルーツを自由に謳歌していた初期プログレ〜アートロックの気風を見るかのよう。オルタナ的な不敵さを演出するヘヴィなサウンドプロダクションも国産ロックとしては異色で良い。こりゃ世界で堂々戦える音です、ANEKDOTENとかをばんばん食っていって下さい。

【本日のレビューその3:NEIL YOUNG「COMES A TIME」】


昨日から濃いの続きなのでここで一旦中和を。あー何て最高なイントロだ、名盤のイントロでしかない。病んでる、やさぐれてるイメージで語られることの多いこのお方、勿論そういう側面なしには語りきらないんでしょうけど、何の変哲もない大らかなフォークサウンドを一切のブレや無駄もなく弾き出すこの佇まいの美しさよ。思わず感嘆の助詞で言い切ってしまう。若い時期の最高傑作と呼ばれるアルバムもひとしきり出した後の78年作ということで、燃える野心とかではなく妥協なき居住まいの良さのために作られている感じです。エネルギーを費やして心酔しなくても、少し調子を合わせればどこまでも深く浸ることができるというか。垢抜けポップ的なキレイな調性感を天然で漂わすカナディアンフォーク独特の乾いた優しさを、アコースティック主体の穏やか〜なアンサンブルで十二分で堪能できます。ただの農夫になり下がらない緊張感もどことなく潜んでいる気がするのは先入観ゆえか?いや、吸い物の中の柚子の皮程度に実際あるはず。全作品たしなんでない身でしか言えないですが間違いなく大傑作の域だと思います。これが最初のニール・ヤングでもいいくらい。

  8月13日
▼我々DOIMOIも掲載していただいているSCHOP最新号を捕獲。名古屋のインディミュージシャンがドップリ語る濃厚な一冊になってます、鳥の表紙を見かけたらスッと、イヨッと持ち帰るのがいいですよ。

▼それをどこの配布先でもらってくるか色々迷った挙句、練習スタジオからほど近い古着屋「LUNATIC DULL TONE」へ行ってみたのでした。若い親切な店主さんは自身もちょっとバンドをやっておられるとのこと。はっぴいえんどの流れる店内で、普段買わない「非・バンドTシャツ」に長々と迷い、結局ハーフパンツ一丁購入。良い午後になりました。

▼帰ると姉夫婦が来ていてやたら豪勢な手巻き寿司。こういう時くらい食べ終えてすぐに部屋に引き返すのもどうかなーと思って食後横になってたら、次に気が付いたときは「世界ウルルン滞在記」の時間でした。短い一日をはかなんで今に至る。

【本日のレビュー:EDGE OF SANITY「PURGATORY AFTERGLOW」】


懐かしいっすEDGE OF SANITY。日本でメロディックデスメタルが注目され始めた頃には既にスウェーデンのシーンでクリエイター/エンジニア双方として大御所になっていたダン・スウォノの本丸バンドです。名盤3rd「THE SPECTRAL SORROWS」、ポップな隠れ大傑作EP「UNTIL ETERNITY ENDS」に続いてリリースされた94年の4thがこれ。一連のメロデス系バンドの中でもEDGE OF SANITYは老成していたというか、闇雲な部分がなくツルンと垢抜けている印象でしたが、このアルバムは更に堂に入った出来上がりを見せています。どこぞのAORやねんと思わせるイントロに続いて極悪ポップに豹変する1曲目からして「凶暴なものと美しいもののそれぞれ最高の部分をミックスさせたい」と語っていたダン・スウォノの意気込みをズバンと提示する明快さ。各曲ごとに焦点が絞れた上でブラスト有りの爆走ブルータル系、普通声で歌い通してしまうパワーゴシック系など非常にヴァラエティに富んだ構成で、ほとんど雰囲気のカブる曲がないというのはデスメタルアルバムとしては異例なほど。クリアな(少々軽すぎの感もあるが)プロダクションも相俟って、94年という時期にあるまじきあっさりとした上質の感触です。叙情ニュースクールと称して未だに商用メロデスもどきをやってる連中は10年以上前にこういう作品があったことをよく分かっといてもらいたいですね。アクのなさがまあ寂しくもありますが、デスメタルをちゃんと聴きやすい音楽としてここまでの完成度に押し上げたのは偉業というべきでしょう。

  8月12日
本日の収穫、タワーレコードパルコ店にて二階堂和美「二階堂和美のアルバム」。持て余していた音楽ギフト券をようやく行使。

▼さて予告どおり復活KDハポン写真展いきます。

↑入り口 引き戸が開き戸になりました

↑更に二重扉になりました 螺旋階段まわりもスッキリ

↑右上方を見てのとおり、内側の壁が一部板張りになりました

↑外からは見えなくなった裏口の戸も以前のまま 泣けます

↑トイレの方も相変わらず…あっ中村健太さんですね

↑二階席からの眺め ステージの段がなくなってます

ということで、雰囲気は以前と変わらないまま、むしろいい具合にキレイになったという感じでした。よかったよかった。自分の出番のあとは2階席でトコナツカレーとアイスチャイをいただいてきました。

【本日のレビュー:二階堂和美「二階堂和美のアルバム」】


遂に新作、堂々のデジパック・本人顔ジャケ・しかもこのタイトルで来ました。ライブでもよくやっていた"レールのその向こう""虚離より"ほか全13曲、その殆ど(カヴァー以外のオリジナル全部)の作詞を鴨田潤a.k.a.イルリメが手掛け、アレンジを含む演奏はサケロックやテニスコーツなどゲスト陣に一任。ニカさん本人は完全に歌う器に徹しての、スペシャルおめかしアルバムになりました。

 紅白出場を目論んでいるだけあって(本気だろうか)、以前のフラフラと一点に収まらない感じが抜けてポップス仕様に引き締まったとの印象。メジャー規格準拠で作り込んで勝負に出たオケに馴染むように、ゆとりを残して綺麗に歌っておられます。この曲はこれ、次はこれ、という描き分けがハッキリしているので、何だかリミックスアルバムを聴いてるような感触も。身一つでどっちへどこまで行くか分からないライブでのグニャグニャしたエネルギーを思うと、多少の違和感はあれど、それは後々薄れてくるものと思います。ともかくシンガー/ソングライターたる彼女の(激烈パフォーマー的な凄さもある人ですが)まっとうな良さの部分が余す所なく出きった充実の内容であることは間違いないです。「昔は人真似をマスターしては喜んでいたが、ある時から自分の声で歌うようになった」というようなことを本人が語っているとおり、この人の歌は表現動機から声までが実にストレート。「いわゆる実力派ヴォーカル」とは一線を画します。アンニュイ音響、毒レトロ、ジャジー&ラウンジー(?)と色々やっても全てニカさん印なのはさすが。

 ゲスト勢によるアレンジは、元のイメージを順当に後押しするものから、意外な向きにひとひねりするものまで様々。新機軸のヒップホップ〜レゲエ感が心地よく映える"あの子のあの頃"、サケロックが思い切ってLOS LOBOSばりの低重心ラテン仕立てにした"Lover's Rock"などは出色の出来。また唯一7曲目"long torch song"だけはアコギ一本でいつもの如く弾き語られていて、こっちはこっちでやはり落ち着きます。全体として非常に今日的なカラフルさを感じるまとまり方で、これならビョークやクラムボンのファンみたいな層までアピールしていくんじゃないでしょうか?日本を足場に見渡した世界のグッド・ポップスがわいわいとパッケージされた、家庭の豪華な食卓みたいな嬉しい傑作。これが傑作でなくてどうする日本。

  8月11日
収穫はなし。今日はシロクマのライブの手伝いで鶴舞KDハポンへ。改装後初めて中へ足を踏み入れたのですが、あの雰囲気のままむしろ小奇麗になったくらいで、非常に良い感じでした。(写真を明日大量にアップします。)自分達のライブの出来のほどは万全とは言い難かったものの、却って完成形に向かおうとするバイタリティみたいなもんが出た気がして良かったんじゃないかなと思います。関西ノリで仮想バックバンドを従える気のいい弾き語りの林良太さん、ミニマムな音量と寸止めのコンセンサスで穏やかな戦慄ただようスティーブジャクソンと、共演陣にも恵まれ打ち上げまで楽しい夜でありました。CDレビューはまた明日。

  8月10日
本日の収穫、バナナ名駅にてESOTERIC「EPISTEMOLOGICAL DESPONDENCY」。現在のケータイにしてはや4ヶ月、ようやく本体内のデータをPCに転送する方法を勉強。

どうってこたないわけです。


鶴舞公園の池にいたカワウちゃんどこ行ったかなあ。(右は羽をそよそよ振り動かし続けて乾かしている様子、かわいい)


この前はコネコに会いました。

 そう、こんなこと言っておきながら、意外とケータイのカメラを活用しまくっとるのです、チャラチャラと!!次は音楽再生に挑戦だ。

【本日のレビュー:PAT METHENY GROUP「PAT METHENY GROUP」】


GROUP名義での1作目となる78年のアルバム。硬質でエクスペリメンタルな作風もこなす御大、このカルテットでは親切一徹でニッコニコですな。アメリカンフォークのコード感とジャズロック/プログレのアンサンブルおよびリズム扱いを見事にクロスさせた、いわゆる「フュージョン」以外の何者でもない音なわけですが、スーパーマーケットで流れてるようなやれシンセブラス!やれオケヒット!みたいな下品さは皆無。鍵盤は割とアコピメインで、至上の滑らかさと妥協なき鋭さの同時成立によって実現される快適サブアーバン・ミュージックをご提供。2曲目"Phase Dance"なんて爽やかを絵に描いたような鮮烈さです。展開などの面でそれなりの複雑さはあるのに、ムード全体でググッと親しみやすさを創出する方式が、「WIND & WUTHERING」の頃のGENESIS(部分的にかなり彷彿)やDIXIE DREGSのようなプログレ/プログレハード勢にも近い。キース・ジャレットがポップソングとジャズの垣根を叩き潰したのに対してこちらはあくまで「ジャズが反則級にポップ」という具合ですかな。本質は全くもって違う気がします。今聴くと明らかに軟弱な売れ線音楽(しかも売れると思ってやってるフシあり)だけど、当時こんな音は前例がなかったことを思うと、ここに潜在的需要を見出したメセニーはやっぱり凄いのか。

  8月9日
収穫はなし。少し前、出先からの帰路を無駄に遠回りして中川区のなーんもない辺りを通ってきたときに、あまりの何もなさに携帯のカメラ(ツーカー卒業したのでついてます)でその風景を撮ってみて以来、暇な移動時に市街の色んなところを写真に収めながら生活しています。意外にも。今のところアツイのは「夜の赤信号」「見上げるアングルの歩道橋」「トンネル内の照明」などなど。ちょいちょいとかっこつけたフォントで文字を載せれば簡単なフライヤーくらいいくらでも作れそうです。そのうちバンドのCDのジャケにバッチリ使えそうなのを偶然撮って、写真先行でアルバムタイトルを決めてやろうという狙い。

【本日のレビュー:FLEURETY「MIN TID SKAL KOMME」】


ノルウェー産変態ゴシックブラック95年作。あっ投げ出すのはまだ早いですよ!ノルウェーブラックのオールスターユニット・DODHEIMSGARDのメンバーが本丸として構えている由緒正しきバンドなのです。リリースはIN THE WOODS...などを出していたイギリスのMISANTHROPY。ホギャホギャわめく高音ヴォーカルも含めてブラックメタルらしい禍々しさを色濃くたたえながらも、静動のコントラストはSUNNY DAY REAL ESTATEばりにエモく、ブラストはほとんど登場せず、リフは邪悪ながらも激しく慟哭しており、総じて「遅くて変なFUNERAL DINER」てな雰囲気。全然ニュースクーラーが聴ける音です。しかし随所で強烈に主張する変態アーティスティック趣味が心なしかPAN.THY.MONIUM風で気になる。調べたところ、これ以降の作品では女性ヴォーカルをフィーチャーして極端なアヴァン路線に飛んでいってしまうらしく、なるほどそうなるとこれはATROXパターンですか。言われてみればそんな器の大きさを窺わせるフシも。BEYOND DAWNがイケた人なんかに大推薦の秀逸盤。

  8月8日
本日の収穫、SMITHSONIAN FOLKWAYSから到着のTHE BRUTE FORCE STEEL BAND「MUSIC TO AWAKEN THE BALLROOM BEAST」。人生屈指のトラウマであるTBSドラマ「誰にも言えない」で頻繁に使われていた謎のカリプソの出自です。オーダーメイドで2〜3週間かかるとのことでしたが、全然1週間ちょいで到着しました。勤勉!LP仕立ての立派な特製紙ケースに、ジャケ画像およびトラックリストのシール(印刷キレイ)を貼り付け、盤は色の目立たないCD-Rでレーベル面にちゃんとプリントあり。愛あるブートみたいな感じで満足な出来です。これでいつでも麻利夫さん気分。男ーなら〜。

【本日のレビュー:ROBERT PLANT「MANIC NIRVANA」】


言わずと知れた元LED ZEPPELINのナンバーワン・セクシー・シンガー、ロバート・プラントの90年リリースのソロ。それだけで既に恐ろしい。内容がまた想像を絶するムチャクチャさでさっきから仰天しまくってます。おのれここまでやるかというほど、アレンジが腐れAOR一直線。しかしバックメンバーらの気負いによって、随所にどことな〜くペイジ的な和音構成とか、それとな〜くボンゾ的なパワーヒットとかがインチキ臭く鳴り響き、そこで当のプラントはというともっぱら張りもなくフニャフニャとだらしない一方。だらしな過ぎてセクシー、もはや神業です。恐ろしいことに感動的なのは確か。バブリーなシンセも大量に導入され、マドンナとFOREIGNERを足してみたら何故かFRANZ FERDINANDになってしまったという超常現象状態。GOLDENみたいなZEPオマージュバンドの評価がじわじわと高くなってきている昨今、これぞ誰にも超えられない究極の贋物として変な光を当てられるべきでしょう。戯れに参加メンバーの素性を調べてみましたが、ギターの片割れは再結成CARAVANの一員、ベーシストはそのままPAGE&PLANTまで御供しているようです。地味だよ。

  8月7日
▼どういうことだろうか本日の収穫、サウンドベイ金山にてBODY COUNT「BORN DEAD」、CARDINAL SIN「SPITEFUL INTENTS」、CHICAGO「XXX」(2006年新作!!!)、小田和正「MY HOME TOWN」、ED ASKEW「ASK THE UNICORN」、PUNGENT STENCH「BEEN CAUGHT BUTTERING」、LAST LAUGH「MEET US WHERE WE ARE TODAY」、ROBERT PLANT「MANIC NIRVANA」、IN:EXTREMIS「SKIN THICK VISION」。暑くてヘッドフォンを着けられません。サマージャンボは買い忘れたので3億円当たった人は私に簡素なリスニングルームを下さいね。

【本日のレビューその1:CHICAGO「XXX」】


遂に通し番号30です。ここのところベストやコンピ、ライブ盤などでダラダラつないでいたCHICAGOが、91年の「TWENTY 1」以来15年振りに作ってきたオール新曲のフルアルバム。相変わらずなジャケのセンスに泣けまくります。内容は薬にも毒にもならない同窓会的中年AOR…かと思いきや、まあ大筋ではそうなんですけど、アレンジや端々の節回しに何だか軽くBACKSTREET BOYSのようなチャラさが入り込んでまして、年甲斐ねーなあと思うと同時に、ちゃんと現役として勝負をかけてきた姿勢には惜しまぬ拍手を贈りたいところ。ちゃんとブラスも随所でプフォプフォと存在を主張してます。もはや作風が安定しすぎて、どれがとりたてて名曲ってのもない気がしますが、ひょいっとソツなくラジオ映えするクオリティを達成してしまうあたりはさすが。本国ではこれで若い世代のファンを開拓してしまったりするんでしょうか…しないんだろうな。甘いメロディはかなりある上にそんなにダサくもないので、頑張ってアマアマなピアノエモとかを漁ってる若い人達が「ブラスエモも熱くね?」といって挑んでみるのもいいんじゃないでしょうか。全13曲は多いが。

【本日のレビューその2:FLEGMA「FLESH TO DUST」】


94年スウェーデン。もともとハードコアスタイルだったのがだんだんスラッシュ寄りになっていったという経歴のあるバンドのようで、92年のデビューの時点ではもうENTOMBEDみたいなスウェディッシュ豪腕ロックンデスになってます。それに続く2作目となる本作も、同路線で更に時代相応の垢抜けも身に付けてかなりカッコイイ内容。ちょっとGRIP INC.みたいなインダストリアル風のビート感覚を導入してます。ENTOMBED関連プロジェクトか何かの去年出た新譜ですと言われても別に疑わない。何つーかこのあたりのスウェディッシュデス勢は、ロックの本質にかなったラフで図太いアプローチを常としてるから、どれもこれもタイムレスな魅力を備えてて凄いですね。このバンドの2枚はどうも見る限り自主リリースっぽいので、興味がおありの方は現物を見かけたらその場で即ゲットしといて下さい。あっ終盤に何とKISSの大名曲"I Stole Your Love"のカヴァーが!

  8月6日
収穫はなし。今日は岡崎市の山奥・くらがり渓谷近くの、元弓道場として使われていた施設で、ALLieのメンバーによる自主企画に出演してきました。

▼ドイモイはドラマー曽我部が九州帰りで不在なため旧3人編成にて登場。私は気合を入れるために今日はノータムで臨みました。お陰で余計な叩き損ないをいっぱいしてきましたが、偶然の失敗と素のヘタクソが上手い具合に紛れてたんじゃないでしょうか。イスの高さを目一杯下げたのはDEERHOOFのグレッグへ敬意を込めて。膝が鋭角になるくらいの方が何故か右足がほどよく脱力出来て良かったな。セオリー違反なのでこれ読んで真似しないで下さいよ。

▼更に一人ギターインプロ・DARK SOLでも出演。最終的に"Polka Dots And Moonbeams"を演奏してきました。もういつでもライブやれる手応えです、「いたたまれない速弾きデス語り」と銘打ってどこへでも駆け付けますので、お気軽によろしく。こちらまで!セッティング中、ディレイループで遊んでいたらIS COLLAGE COLLECTIVEのスペース君とドイモイ篠田君、今日のトリで出演したALTのメンバー二人が加勢して、ポリリズミック&アブストラクトなそれらしいセッションに発展。HIMの前座くらいやれそうな感じになってて楽しかった。

▼そのALTはトリプルMC+ノートPC+ギター/フルート+VJという大所帯ユニットで、全員大学生という若さながらセンスと世界観のあるステージで面白かったな〜。DARK SOLの前に出演したチャオファイナルは、PAシステムの限界で例のデス声が聞こえなかったのが残念無念。豪快なドラムをもっぱら堪能させてもらいました。今コワモテ・ギャルバンの波が全国で少しずつ来てる気がするので、OLになっても是非頑張ってもらいたいですな。

▼このイベントは続編の開催を近いうちに画策してるとのことで、いい具合に根付くといいなあと思います。熱心なオーガナイザーがいるというのは素晴らしい。タピ君とヒビキ君、ありがとうございます。

【本日のレビュー:BLUES BROTHERS「BRIEFCASE FULL OF BLUES」】


名前だけはよく耳にしていて、映画?何?とよく正体がわかってなかったんですが、昔のANTHRAXがこれの1曲目をライブのオープニングに使っていたと知ってとりあえず購入。その後調べてみたら親切な詳細がバッチリと。元々コメディ番組のコーナーだったんですね。Wikipedia便利だなあ。ということでライブレコーディングで制作されたこの1st、ブラックミュージックへのオマージュといっても、常に含み笑いをたたえた性急なノリはまさしくANTHRAXというかチャーリー・ベナンテの趣味そのまんまですなー。声も似てるし。悪ふざけと体当たりの大好きなアメリカの白人ならでは。いや〜ザッツ・エンターテインメント(アンド・ナッシング・バット・イット)ですよ。アホアホジャイブ+漫談の"Rubber Biscuit"なんて最高じゃないですか。ちょっとサケロックっぽかったりしますな。全てが大袈裟なヤラセという意味でジョンスペのようでも。アートとして成功することを端から度外視したこの徹底的なスタンスは、コメディが元だからこそ堂々とやりきってしまえたんでしょうね。ひとつの最長到達記録としてポピュラー音楽史にその存在を刻み込むに充分な内容なんじゃないでしょうか、意外と。

  8月5日
収穫はなし。昨日羽振り良く買ったものとは、ギブソン純正のペグ6個セットでした。普通だと10,000円強するものが中古として4,200円で売ってたのでありがたく即ゲット。中三の頃から自宅に隠し持っていてドイモイのCDの録音にも使って、ペグが複数箇所壊れてしまったためしばらくリタイアさせていたジョン・サイクス&ザック・ワイルドのサイン入りレスポール(ゴールドトップのデラックス)を修繕。サインの部分にようやく保護シールも貼ったので、そのうちライブに使います。本当?

▼「世界ふしぎ発見」のVTRに登場する女性ミステリーハンター達は何故か、よくあるリポーター喋りの典型とも違う画一的な「ミステリーハンター喋り」をする。

【本日のレビューその1:CLUTCH「THE ELEPHANT RIDERS」】


以前にも紹介したバンドの98年作。外盤はジュエルケースにシャレで「HEAVY -LIFT WITH CAUTION(重いので持ち上げ時に注意)」と書かれたステッカーが貼ってあります。巨大な象の行進を描いたジャケが物語るとおり、グリグリと重いが明快で吹っ切れたオーヴァーグラウンド仕様の商業ストーナー全開。ファズロッキンな勢いや潰れ感のショックを強調するFU MANCHUあたりと比べると、70年代的な「行間の色気」をつかまえるのに気を遣ってる様子で、立派に老成してらっしゃいます。再現芸ではあるがカッコイイ。ZEPばりの地味な奇数拍子トリックも随所でククイッと効いてます。しかしやはり、キャラクターとヴァイブレーションのある優れたシンガーを擁してるのがこのバンドの何よりの戦力ですね。ライブで見たら総てを肯定してしまいそうだなあ。私はこのブツ500円で捕獲しましたので、そのくらいでスッと拾ってあげて下さい。ツブのでかさと有無を言わせぬ気持ちよさという点でFOO FIGHTERSファンにもおすすめ。

【本日のレビューその2:EXHORDER「THE LAW」】


ROADRUNNERクラシック!90年にデビューして、VIO-LENCEあたりと同期っぽいメカニカルなヘヴィスラッシュをブッ放していたバンドの2nd。このアルバムではPANTERAに感化されたとバンドメンバー自らおおっぴらに語っていますが、スピードは維持して緻密さやエキセントリックさを強化したとの印象。お〜カッコイイじゃないか、PANTERAの並外れた硬さ・重さ・鋭角性にノックアウトされながら「"Strength Beyond Strength"や"Primal Concrete Sledge"みたいな曲ばっかりやりゃいいのに…」と欲求不満にも思っていたスラッシャー諸氏がいたら、この盤はもうこれ以上望むべくもないほど完璧です。90年代のガチガチ・バキバキ・イズムと80年代の狂気をあわせもつキラー・アルバム!没個性とか何とか厳しいことは言わず、このバランスを最高の状態で実現してくれた彼らにひたすら感謝しましょう。現在は1st「SLAUGHTER IN THE VATICAN」と2in1リイシューになって容易に入手できますので、全員今買って下さい。おっと中盤に思いっきり"Into The Void"(BLACK SABBATH)の真面目なカヴァーが!!ベタ過ぎる選曲も愛らしいもんです。

  8月4日
収穫はなし。基本「バンドTシャツの上・下・中に何かを着る」というスタイルで年中通している私ですので、ライブ会場以外で買う衣類はズボン類か上着類しかありません。今日は一念発起してユニクロに趣き、こまごまと4点買ったら小計5,660円で済んでしまってびっくりして、「ヨシ俺は今、思ったより金がある」というまやかしのもと(所持金を減らしてることには変わりない)、上の方の階にある楽器屋で変に羽振りよく使ってしまいました。

【本日のレビュー:LET ME DREAM「MY DEAR SUCCUBUS」】


94年、フランスのカルトゴシックレーベルADIPOCEREから。フィンランドのバンドです。ま〜随分と安っぽいジャケであることです(昨日取り上げたパティ・ウォーターズのと偶然似てしまってますが)。中身も想像に違わずアングラ臭プンプンな、ゴシックなのかノーマルなメロデスなのかハッキリしない32度くらいの風呂みたいな内容。ヴォーカルがデス声とオペラ(風)声を使い分ける面白い人材で、のっしりしたビート感も相俟って非常に何かを感じさせます…これはMANOWAR!あんなに筋肉質ではなくて、代わりに何だか昼ドラみたいないやらしさが漲ります。全編被せられているシンセもやたら淫靡。そこはTYPE O NEGATIVEを思い出しますな。後半は重石でのされてクタクタにのびたIRON MAIDENみたいな展開(?)も。あんまり流派をなすほど数のいないタイプです。絶滅種といっていいでしょう、ロマンですね。優等生ぶって冒険しない薄味な連中にはちっとも惹かれねーぜという御仁にはオススメ。

  8月3日
収穫はなし。そろそろ今年も、足の甲にサンダルの跡がクッキリしてきました。日焼けエグイなー。最近は女子のように長袖着用で自転車乗ってます。

【本日のレビューその1:PATTY WATERS「SINGS」】


65年、ESPには珍しいヴォーカルもの。1〜7曲目はピアノ弾き語り独演です。きわどい和音をぽろぽろと落としていきながら、立てた縫い針の先に万年筆を乗せるような緊張感で慎重にじっくり歌い込んでいきます。音数は少ないが非常に重い。ジョニ・ミッチェルが遅回しのUS MAPLEになったみたいなフラつき具合に耳が離せません。ラストに1曲だけ、バックバンド三人を従えた14分の長尺曲"Black Is The Color Of My True Love's Hair"がありまして、これが壮絶。弦を直接引っ掻いて演奏される不穏極まりないピアノを後ろに、歌詞を呪詛のように長ーく長ーく繰り返す前半部。blackの単語が重なるせいか、JOAN OF ARCの「THE GAP」収録"As Black Pants Make Cats Hairs Apear"のイントロをちょっと思い出したりもしますが、もっとムードは怖くてOPUS AVANTRAやPHEWのよう。タガが外れて盛り上がっていく後半のフリーインプロパートは更にヤバイです。AMBER ASYLUM顔負けの形相でひたすら「ブラーック!ホギャー!」と絶叫。怖い曲選手権があったらノミネートしたい。フリージャズリスナーにも好き嫌いの分かれそうな作品ですね。むしろULVERの2ndを愛聴してしまうような、ブラックメタルを心で感じる御仁におすすめ。

【本日のレビューその2:FEAR OF GOD「TOXIC VOODOO」】


怖い女性ヴォーカルものでもう1枚。デビュー作を何故かWARNERからリリースしていた、ダークであやしいパワーメタルバンドの94年2ndです。順当にPAVEMENT MUSICに引っ越してます。そりゃそうだろう。この音で何故WARNERみたいなどメジャーから出せたのか、それは多分SANCTUARY(NEVERMOREの前身、レーベルはEPIC)にソックリだったからだと思いますが、だとしても凄い時代です。このアルバムでは更にヘヴィ化が進み、それこそNEVERMOREを予見するかのような、不協和音を使いこなしつつデスメタルに片足突っ込んだようなストロングスタイルを開拓。ヴォーカルはメロディラインを歌うような歌ってないような、ザビーネ・クラッセン(HOLY MOSES〜TEMPLE OF THE ABSURD)の地声が高くなった感じのシャアシャア唸るやさぐれ激ハスキーヴォイス。時々CELTIC FROSTを感じたり、ディレイをかけてフヨ〜ッとムーディに歌う場面があったりするあたり、ややゴシック的な香りも天然でまとってます。変則展開かっこいい。最近の個人的な興味に何とストライクなことか…。ツボのありどころが非常にマニアックではありますが、強力に濃縮された、大粒でユニークな作品といえます。NEVERMORE+シンセ抜きPESTILENCEか?90年代前半に時々いた「PANTERAによって前向きにインスパイアされた曖昧なダーク・メタル」がお好きな方には大推薦の超・穴馬!

  8月1−2日
収穫はなし。鼻ホーミーの練習してました。

【本日のレビューその1:GENTLE GIANT「THE MISSING PIECE」】


是巨人の巨人の方の出自としても有名かも知れない英プログレ名バンドの77年作。充実の前作も過去に取り上げました。このアルバムは更にシンセがチャラくなって、ファンクやAORの要素が拡大、しかし依然アナログな質感の範囲内に留まっていてプログレ耳で問題なくいける、前作に同じくGENESISで置き換えれば「DUKE」に非常に近いスタンスっぽい内容です。更にSTEELY DANも少々(4曲目明らか!)で、脳天気っぷりはYESの「TORMATO」にも通じる。ギターや鍵盤がやたら支離滅裂な単音同士でアンサンブルを組んでしまうあたりとか、どこか場面展開が緻密なところとか、どう転んでも普通のポップスにはなれない悲しき性。この絶妙すぎる煮崩れ具合が最高です。総じて3〜4分台の手短な楽曲が大半を占める中、唯一7分を越す後半の"Memories Of Old Days"は、THE POLICEが"天国の階段"を盛り上がる手前までやったような変わった雰囲気で、おおこれが本領だねと唸らされます。そこから続くラスト2曲は「IN A GLASS HOUSE」や「FREE HAND」の頃を思わせるバリバリプログレチューン。結局やりたいことは最後にとっといたんかいと少し安心して美しく終了。うむ、楽しいアルバムでした。

【本日のレビューその2:JESTER「IT'S TIME」】


確か国内盤はゼロコーポレーションから出ていた気がする、90年代初頭の次世代北欧メタルムーヴメントの一員…と勝手に思ってましたがよく見りゃカナダのバンドでした。93年に完全自主制作でリリースされている盤。中身も実際、カナダともスカンジナビアともつかない冷涼感のある、ピュアで素人くさいメロディアスHRになってます。なるほどゼロ的だ…。プロダクションは緩く、特にギターの音が遠い。ヴォーカルは安定感はないが聴き辛いほどではなし。シンセはフォアフォア〜ッと霞のように入って全体の甘味を大幅アップさせてます。全てのバランスが奇跡的に噛み合った2曲目イントロの多幸感などはNATIONあたりを彷彿とさせますな。後半にはQUEENSRYCHE版AORみたいな曲が続き、「HR/HM」の表記のちょうどスラッシュ上に位置するような硬度の加減が奥ゆかしい。CAUGHT IN THE ACT改めGUILD OF AGESなんかがもっとイモくさかったらいいのに、なんて思ってるマニアがもしいたら、これは完璧なチョイスでしょう。それ以外の人は一生気にしなくても大丈夫です。

最新に戻る 他の月の分を見る
 
トップページ サイト入り口へ
情報と音源公開 制作活動
管理人のことなども このサイトに関して
リンク 冒険
いつも独り言 掲示板(hosted by Rocket BBS)
サイト内検索(google) 不完全
since 07/04/2002    copyright (c) Sugiyama
inserted by FC2 system