物色日記−2006年9月

※頻出語句解説はこちら
  9月30日
収穫はなし。街中でMETAL CHURCHのTシャツを「いわゆるロックTファッション」として着こなしていらっしゃる女性を発見。お前それメタラーの間でさえどんだけ微妙なチョイスか判っとんだろうな。

 それでロックTシャツ屋が近くにあったのを思い出して足を運び、RAINBOWの「LONG LIVE ROCK'N’ROLL」のジャケそのままのデザイン(生地の色も一緒!)の超カッコイイTシャツを1890円で発見したので即時回収、階上の古着コーナーも覗く。オシャレに着こなすのがもはや不可能なSTRYPERの激ダサダサなやつが6000円台とか、何故かRUSHが人気商品っぽい扱いだったりとか、なんか意味わかりませんでした。RUSHとRATTRIOTROOTROTの違いくらい判ってからそういう格好はして頂くか、さもなくばチロルチョコの「黒ごまたると」を300個買った方が彼らは幸せなのでは。何書いてあるか分かりにくかった方、今日の要旨は「チロルチョコの『黒ごまたると』はたかだか20円のひと粒から濃厚なひと皿が本当に広がる逸品であった」でした。「わらびもち」に次ぐ全員買いの名作です。

【本日のレビューその1:ROOT「THE TEMPLE IN THE UNDERWORLD」】


謎のチェコ産デスメタラー4人組。BATTLESやOXESを出してるのとは全然関係ないMONITOR RECORDS(在チェコ)からリリースされている92年作です。ひとまずマイク・ポートノイ級に上手いドラムに面食らい、MERCIFUL FATEがプログレッシヴになったようなトラックにオペラティックなテノールとヘボいデス声が代わる代わる乗ってくるという、辺境産ならではの常識御破算メタルが炸裂。お決まりの高速2ビートなどが登場するのはごくまれで、むしろ初期QUEENSRYCHEのような正統派メタル的側面も。デスメタルによって自由化された変則オカルティック・メタルとするのが順当ですかな。変なのにやたら完成度が高い。シンフォニックなアンサンブルへのこだわりもハッタリでなくきちんとキマッてます。あ〜この恥ずかしいまでの豪快クサクサ感、デスメタル通過型ならではのエクストリーム感、早すぎたヴァイキングメタルと思えばよいのか。EINHERJERとか好きな人マストっすね。地味シブの極致。

【本日のレビューその2:RATT「INVASION OF YOUR PRIVACY」】


デビューミニに続く84年の1stフルが「OUT OF THE CELLAR」、これはその次の2ndです。グラムロックやポップパンクをVAN HALEN以降のハードロック的パラダイムで毒々しく再解釈したかのような、いわゆる「LAメタル」、世界共通の呼び方でいけば「hair metal」の王道中の王道。モトリーよりグズッと鈍く湿ったような感触が独特です。スティーヴン・パーシーのにゃあにゃあ絡みつくヴォーカルも暑苦しいことこの上なし。ギターはさほどフラッシーなことはやりません、速弾きが苦手な人でも大丈夫です。これといって潰しが効くようなポテンシャルを持っていたわけでもなく、一過性の流行りに上手く乗っかれただけの不器用な正統派さんだっただけに、モリッと迫る勢いがあったデビューミニを最高点としてそれ以降ツカミ度はどんどん下がる一方ですね。このアルバムはまだファンから「息切れした」とか言われないギリギリの生気を保っていた頃。「質は高いが省略可能」といったポジションでしょうか。ダウンチューニングを効果的に活用したビート感の多彩さとメロディの確かさで90年の「DR. FEELGOOD」まで中だるみせず走り続けたMOTLEY CRUEとはやはり器が違いました。リリースを重ねるごとに洗練はされていったがヴォーカルの非力さゆえいまいちリスペクトが薄いDOKKENといいとこ勝負か。1枚だけ買うならデビューミニ。あれはジャケもクールです。

【本日のレビューその3:RIOT「RESTLESS BREED」】


アメリカンメタルの雄、RIOTフロムニューヨーク。これは初代シンガーのガイ・スペランザが抜けて二代目レット・フォレスターが加入した82年4th。一旦解散ののちカムバック作として引っ提げてきた88年の強力盤「THUNDERSTEEL」からはガッチガチのスピードメタルバンドとして生まれ変わり、今もそのイメージで通してますが、この頃はやっぱり本場イギリスと比べると重厚感の点で及ばず、BLACKFOOTやTHE RODSとさほど違わないような妄想上のUSスタイル叙情ハードロックをやっていました。それでも極初期に比べると泣き成分は随分と増し、中低域の翳りに魅力のあるレットの声(張り上げるとデイヴィッド・ウェイン/METAL CHUCH〜REVEREND似)との相互作用で、RIOTにしてはえらくシットリ深く仕上がっています。たまにWHITESNAKEかと思うほど("Showdown"名曲!)。かと思えばスラッシュメタルを先取りするような異様なテンションの爆走2ビートチューン"Loonshark"みたいなのもあって全然油断できない。94年にカージャックに遭って殺されてしまうレットがRIOTで歌っている作品はこれとその次「BORN IN AMERICA」のみなので、そういう有り難さも手伝ってどことなくスペシャルな佇まいを見せる盤です。

  9月29日
▼今日はIS COLLAGE COLLECTIVE招聘第1弾、JOAN OF ARCに参加歴ありな人達のユニットSHARKS AND SEALSのジャパンツアー千秋楽、名古屋・鶴舞KDハポンへ。知ってる人に大量に会うのだけど、中村健太さんはいつも遠くから手を振ってくれます。ども!

▼1番手はスティーブジャクソンでギターを弾いている紙谷さんのバンド。そのままKAMITANIと名乗ってました。自身がギターでほかにドラム、キーボード、女性ヴォーカル×2という編成。myspaceで聴けた一人音源から勝手にドイツ寄りなのを想像していたら、意外とアメリカ/イギリスなパーツで組み上がったアンビエント・和み・ポストロックになってました。といっても日本によくいる型押しの量産タイプみたいなのと違って、軸をなすギターフレーズの煽情性が常時高水準なので、1曲1リフでも快適に聴き通せます。サポート陣の好演も手伝ってのっけから調子上がらせてもらいました。

▼続いては鶴ロックでも見たGURA。ジャズ通過型のドラム+ベース+ガットギター+エレクトリックギター+ソプラノサックスというクインテットで、何となく「禅」な間を感じるインストを聴かせます。オシャレなようで結構アグレッシヴ。超個人的見解ですが、RETURN TO FOREVER+IRON MAIDEN、あるいはパット・メセニー・グループ+TRISTEZAなんて風にも聴こえました。着想とアンサンブル構成はポストロック的なのにニオイが決定的に異質。ユニークです。

▼3番手はジョンのサン。今回は落ち着いてじっくり堪能。結果的に歌ものとして収束するハプニング・ローファイ・ポップをやってるわけですが、細部までよく聴くとかなり精巧(ギリギリともいう)に曲が練られているのがわかって、これはSHARKS AND SEALSのメンバーも喜ぶだろうと思いながら感服しきりで見てました。事故寸前のスキマの多さ、フライング的呼応で強制進行する展開、歩きながら人から犬へ、犬から机へと変形していきながら最後は案外ケロッと家の玄関に着いてしまうような不条理な安心。意外とファンキー(そういう時の立石くんのガクガクする動きがかっこいい)。更に色んなバリエーションが期待できそうなので、今後もあれこれ試していっていただきたい。

▼そしてメインのSHARKS AND SEALSは、シカゴ、フォーキー、ポスト××…、といったキーワードから想像されるど真ん中からはちょっと外れて、60年代風の毒々しさや滲み感も色濃く映す、とにかく妙(もちろんポジティヴな意味で)な音響サイケフォークでした。日本人好きのする音かどうかは判りませんが、今更バンディ・K・ブラウンが10年前にやったようなことを練り直されても意義は感じないので、個人的にこの路線は大歓迎。今日の会場の反応もおおむね好意的だったようです。真ん中に陣取ってやたらメタルな歪み(BOSSの黒〜いコンパクトエフェクタ使用でした)で複雑なパッセージを捻じ込みまくるギタリスト氏がだんだんロバート・フリップにしか思えなくなってきて、それからは「そうかこれはGILES, GILES & FRIPPか」「ボブ・ディランのバックにフリップが加入したらこんなんか」などと勝手なことを考えながら楽しんでました。興に乗ると唐突に掛け声を発するドラマーもまさに外人ノリ。なんか末梢的なことばかり先に書いてますが、曖昧なのにスキがないアンサンブルの成熟具合がやはり飛び抜けていたことは漏らさず記しておきます。2回のアンコールにも温かく応えてくれて、全編終了。動員もあったしこれは成功でしょう、スペース君お疲れ様でした!!

▼終了後、物販の近くにしばらく張り付いていたものの、人山を分け入る気力が出ず直帰。収穫はなしです。ヨードのCD-Rを勧めてくれた畔柳さん、「裏7586」聴き直してからまた買いますから!

【本日のレビュー:GILES, GILES & FRIPP「THE CHEERFUL INSANITY OF GILES, GILES & FRIPP」】


ということで超ひっさびさに取り出して聴いてます。クリムゾンの「宮殿」で叩いているマイケル・ジャイルズ、「ポセイドン」にベースで参加したピーター・ジャイルズと、御大ロバート・フリップによるトリオ。68年にDECCAから出ている、知られざるプリ・クリムゾンの記録です。少しジャズその他も導入しつつ大筋ではブリティッシュ・サイケ・ポップと呼べるもので、60年代的なマッシュルーム臭と同時にカンタベリー似の諧謔臭も。ストリングスやコーラス隊が優美に入れば入るほど空恐ろしい冷笑に聴こえてしまうのは、クリムゾンの前身だと知っているからか?いや、実際随所で変です。スポークンワード+フリーフォーム・ソロ・ギターの"The Crukster"、"Circus"の導入部あたりの雰囲気を早くも予見させるような"Call Tomorrow"、けたたましいトロンボーンにすわ精神異常者かとビクついてしまう"Elephant Song"、フリップのクラシカルな速弾き炸裂(!)の"Suite No.1"などなどなど。狂気の天才の覚醒直前はやっぱりそれなりにエキセントリックでした。まさにフリップ王のめざめ。話逸れ続けますがHELDONは今年の12月に日本来ますね。

  9月27−28日
収穫はなし。オッ最近CDを買ってない!

【本日のレビューその1:WEIDORJE「WEIDORJE」】


MAGMAにも同名の曲がありましたが、これは元MAGMAのベルナール・パガノッティ(b.)とパトリック・ゴーティエ(key.)らによるプロジェクトです。唯一のリリースとなる78年作。MAGMA関連はZAOでもどれでも、本家の面影を強く映しているのが常ですが、これも例に漏れず。1曲目から"De Futura"を思わせる強力な暗黒グルーヴで16分半ぐらぐらと煮込まれて早くも糸コンニャク状態(?)に。この精神力と信念は何なんでしょうか、やはりコバイアの使者だからなのか。凶悪に歪んだ液状化現象的ベースラインの上にエレピやシンセ、管楽器、何語か判らないヴォーカルが層をなして、とにかく得体の知れぬプレッシャーの嵐。続く2曲目ではマイク・オールドフィールド風ミニマリズムとアグレッシヴなジャズロック/フュージョンサウンドが合体して未曾有のファンクネスを演出。低音を効果的に強調してくるため、脊髄を引っ掴まれるような有無を言わせぬ揺さ振り方です。本家MAGMAでは、どの曲も根底に多かれ少なかれ「愛に満ちた神性/霊性」が敷かれているものですが、こちらはよりアグレッシヴに畳み掛ける傾向が強く、ヴァンデ不在ということもあって「MAGMAの部分発展」の秀逸な成果といった感じ。しかし本家よりこっち、という人がいてもおかしくないくらい充実した内容の傑作です。

【本日のレビューその2:DAVID S. WARE「WISDOM OF UNCERTAINTY」】


96年リリース、AUM FIDELITYリリース番号1番。マシュー・シップスージー・イバラ、ウィリアム・パーカーという屈強の3人を従えたカルテットです。いわゆるドシャメシャ・フリーを通過してテーマ(らしきパッセージ)なども程よく盛り込んだ、非常に完成度の高い現代NYスタイルのフリージャズの理想形。高速かつ冷徹になったファラオ・サンダースか?物凄い運動量で各自這い回り続けているのに何故かゆるやかに束として収まり、えも言われぬ詩情や哀愁すら浮かび上がってくるという見事さよ。怒って錯乱中のマッコイ・タイナーといった趣きのマシュー・シップのピアノがやはり強烈に香り高く、本作で聴けるロマン度のかなりの部分は彼の功績によるところが大きそう。「逸脱しても音楽」的な大義にのっとった上でそれなりに親切な聴きどころも設けておく、という古典的なフリージャズの流儀とはどこか異質なものがあり、オーソドックスなアコースティックのコンボ編成でこれだけ改めて彫りの深いヴィジョンを提示できたというのはなかなか偉大なのでは。「驚く」、「笑える」、「困る」など色々とパターンがありますがこれは「惚れ惚れする」フリージャズでした。レーベルのファーストリリースなだけに気合も満点、名盤です。

  9月26日
収穫はなし。ここ3年間くらいほぼ毎朝、決まった道のだいたい決まった地点で、大竹まこと似のMTB乗り紳士とすれ違い続けています。家を出る時間が30分遅ければ、その時間分だけズレた場所で。この前は奇跡的に日暮れ過ぎに逆方向でも(つまりお互い家に帰るところで)すれ違い、更に別の日にはいつもと反対側の歩道(普段は車道の南側を走るのですが、その日は北側)でもすれ違いました。そろそろ挨拶をしたいのですが、どうでしょうか。

【本日のレビュー:ATOMIC OPERA「PENGUIN DUST」】


ハードロック畑の人達ですがこれはSHINER/THE LIFE AND TIMES〜TRAINDODGEラインのエモグランジファンに個人的に大推薦なバンドです。94年のデビュー作は初期KING'S Xを手掛けていたサム・テイラーのプロデュースでWARNERからリリースされて、シングルカットされた"Justice"は当時MTVのメタル専門番組「HEADBANGERS BALL」などでもオンエアがありました。コンパクトでセンスのよいグランジポップという感じの作風が、BURRN!誌には「陰鬱なKING'S X」と一刀両断されてましたが、KING'S Xより憂い成分が強く、THUNDERのダニエル・ボウズ似のハスキーなヴォーカルもキャラ立ちが良くて、当時従順な中学生メタラーだった私もなかなか気に入っておりました。

 そこから3年後にひっそりとリリースされたのが2ndとなるこのアルバム。ドロップチューニングを多様する変則ガッツィーリフと、ややサイケでダークな雰囲気も醸し出すクリーンのアルペジオとが効果的に絡み、ガキッゴキッと角の張ったビートでもって攻めるヘヴィロックに磨きがかかっております。ヴォーカルラインがちょいクサめ&メジャーかぶれ風かも知れませんが、恥ずかしいほどではないし、どんよりした全体のグルーヴはかなりオルタナ的空気を汲んでいて同時期のSHINERともかなりリンク。メタル贔屓ゆえの狂言じゃございません、次の次のアルバムならこちらで試聴可能!DESOTOとは言わないがせめてTOOTH & NAILあたりに拾われていれば今頃…と惜しまれる逸材です。一応現役っぽいので次のアクションがあった時は皆さん追っかけてあげて下さい。今からブレイクしたって遅くはない。

  9月25日
収穫はなし。夕飯時、たまたまついていた『HEY!HEY!HEY!』のスペシャル版を少し見る。恐ろしい番組でした。『Mステ』も恐怖のあまり目と耳を背けずにはいられません。どこの誰が買って、あれらの音楽は売れてるというのか、全くもって現実感が持てないんですが、不思議です。とにかく最近の「とりあえずアイドルに歌わせておく歌謡曲」ってつくりが丁寧じゃないですよね。あと、一定の年齢を通過したそれなりにまともな人間なら誰でも思ったことがあるような完全省略可能な事柄を、尾崎豊に触発されたごくごく問題のない高校生が新聞の「青年の主張」欄に投稿するような言葉でしゃあしゃあと吐く歌詞、特に擬似ブラックミュージック系についていることが多いですが、ああいうものがそこはかとなく「マス消費に耐えうるプロダクツたるものの今日的クオリティ水準」の形成を担っていると思うと、それを嗜好品として受け入れて育つ日本人はどんどんアホになりそうで更に恐ろしいです。さて、今日のこの日記も完全省略可能でしたかな。

【本日のレビュー:ZS「KARATE BUMP」】


ポストコア界で本格チェンバーレコメンサウンドをブチ鳴らすニューヨークのド変態ダブルトリオ(テナーサックス×2、ギター×2、ドラム×2)・ZSが2004年にリリースしている3曲入りEP。VOTHOCからのデビュー作は以前に紹介済み。その次作となるこちらの作品では、更に深化が進行してまして、執拗な持続と予測不可能な突発展開を含む奇数拍子のシーケンスで気が狂いそうになる1曲目から一発KO。ライヒ系ミニマルの発展形で片付く気がしなくもないですが、MOONDOG的多国籍/無国籍感やどっしり太いグルーヴもあって、つまるところ「鳴り」そのものが豊かで全然貧相さがありません。方法論音楽ではないなという充実感。次第にブレスノイズその他の物音に移行しながらじわじわ盛り上がったかと思いきや、極小単位のユニゾンが断続的に乱入してきた挙句プッツリ切れるという不条理極まりないエンディングに脱力していると、2曲目はアンソニー・ブラクストン×ワダダ・レオ・スミスかというようなテナー2本のみの変態ユニゾンで延々6分間。ほどよくパーカッシヴな演出をしているためかグッタリせずに聴き通せます。3曲目では再び6人揃って、アフリカの夕暮れでバッドトリップ中のビーフハートの如きダラダラしたワンテーマミニマル。無数のはてなマークを脳髄に植えつけて過ぎ去るトータル19分、短いようですがお腹一杯です。フリージャズとプログレとエレクトロノイズ(ここで実際聴かれることはないものの、鋭いブツ切り感は多分にデジタル的)を同軸で捉えるような御仁には垂涎ものの1枚でしょう。ZNRのその次を見るかのよう。かっこいい。

  9月24日
収穫はなし。いかにもA・B・サビで簡単に終わらなそうな曲ができかけると、完成するまで頭の余暇はそれに支配されまして、ほとんど偶然のような確立でバッチリ通る展開を見つけたときは、何週間も取りたかったカサブタがようやく取れたような心地です。で結局えらい難曲に仕上がってしまってちっともバンドで完奏できないという。まあそれだけです。今日は1曲できたので満足。

【本日のレビュー:THE 3RD AND THE MORTAL「SORROW」】


HEAD NOT FOUNDのリリース番号2番、93年の4曲入りEP。これがデビュー作だったんでしょうかね。のちにポストロック同然のサイバー音響路線に走る女性ヴォーカル・アトモスフェリック・ゴシックの旗手、ノルウェーのTHE 3RD AND THE MORTALでございます。MOGWAIやEXPLOSIONS IN THE SKYにブラックメタル的な寒々しい和声感を加味したかのようなトラックに、オペラティックまではいかないが妖精のような美声ソプラノを聴かせるヴォーカルがきて、何ともいえない神聖で幽玄な世界が繰り広げられております。予測のつかないテンポチェンジを入れたり、やけにゴリ押しなリフを挟んできたりと、ただの雰囲気モノに終わらずかなりエキセントリックでもあります。気が触れたような3曲目"Ring Of Fire"強烈!93年にこれは早いなー。PARADISE LOSTやTIAMATあたりの流れから予想のつくメタル然としたゴシック・メタルとは出自から違う感じですね。使う楽器を変えたらシンフォプログレとしても成立しそう。頻繁に入るアコギパートは普通にプログレしてます。あ〜これは、名盤だ。ダークでアンビエントで轟ギターなポストロックが好きな現代人は絶対これで悶死します。全くダサくない。ドラムがやけにセンスあるのも良い。こりゃ買って下さい。現在は編集盤「EP'S AND RARITIES」に丸々収録。

  9月23日
本日の収穫、今池P-CAN FUDGEにてSCHOPのU原夫妻と遭遇!ワタクシ次号にもちょこっと寄稿予定です、よろしゅうお願いします。ではなくて購入したブツの方はART FARMER「THE SUMMER KNOWS」(76年)、DON CHERRY「COMPLETE COMMUNION」、珍しくDVDでANTONIO FERRERA「MASADA LIVE AT TONIC 1999」。TZADIKはDVDでもあの黒オビが縦長に伸びただけのデザインで通してて、軽く笑えました。

【本日のレビュー:WHITE WITCH「A SPIRITUAL GREETING」】


CAPRICORNリリースのフロリダのバンド。2枚しか残さなかったうちのこれは2nd(74年発表)のようです。サバスに対抗して「白魔術ハードロック」を謳ってみたものの結局鳴かず飛ばず、当時売れ残ったLPは溶かされてディッキー・ベッツのソロアルバムにリサイクルされてしまったという哀しいエピソードまであるとか。綺麗なゴールドプリントの装丁でリマスター再発してもらえて良かったですね。ひしゃげた十字架が燃えているジャケにこのバンド名ということで、PENTAGRAMみたいなのを期待して買ったんですが、今よく聴いたらやっぱり全然違って、サザンロック・ノリで少々緩んでるツェッペリンてな感じ。ヴォーカルの無理のある声帯模写っぷり(昔のゲディ・リーにも勝る)はなかなか滑稽です。オルガンとギターが絡んでクラシカルなフレーズをなぞるパートもわずかながらあって、そのへんは微妙にパープル風だったりも。つまるところ「大西洋を隔てたブリティッシュハードに憧れた南部アメリカ人によるハードロック」そのまんまですな。至らないレプリカとしてのインチキ感が、却ってTHE DARKNESSやSCISSOR SISTERSみたいなのに近い雰囲気を出してて、今ならクールかも?七色変化の強烈なニセ・プラント・ヴォーカルが光る2曲目"Slick Witch"がちょっと名曲です。

  9月21−22日
収穫はなし。相変わらずモンテールにハズレなしです。あと数日前に自室で見かけたゴ○○リの安否が日々猛烈に気遣われています。というか否である確証が早く出てきてほしいです。安ならどこに隠れてのうのうと家族増やしとんのや。部屋に入って、照明をつけるその前に、視界のどこかに不意に茶黒い楕円が見えても驚かねーぞ…、といちいち心の準備をしなきゃならんのはもう沢山なんですが。

【本日のレビューその1:UNHOLY「FROM THE SHADOWS」】


フィンランドのカルト・ブラック・ドゥーム。初期ALCHEMISTもリリースしていたオーストリアのLETHALから92年に出てます。現在はイタリアのAVANTGARDE MUSICからリイシューになっていて、今回はそちらを入手。昔この次のアルバムを買ってサッパリ理解できず売ったことがあるんですが、よせば良かったですね。ギョビ〜!とムチャクチャな音に歪んだギターがまず病んでます。BURZUM的。で曲はひたすら低速。ここに込められたスピリットを見出さないことには、この音楽に同調するのは難しいです。サバス経由のドゥームではなくてCELTIC FROST側からのそれで、かつオリジナルな不協和音や突拍子もないシンフォ展開(突如アコギだけになったり、仰々しいオルガンが被さってきたり、普通声ヴォーカルも有り)も大フィーチャー。昔のMISANTHROPEがドゥーミー一辺倒になったみたいで超あやしいです。ああこれは本物だ。思い込みでも何でも、ここまでの世界を見せられるともうウンと頷くしかないっす。収録曲は軒並み7〜8分でトータル1時間を越す大作。録音が悪いのも一生懸命な感じが伝わって全然OK。この欄で7月頃からチラホラ紹介している90年代前半の闇ドゥーム/闇ゴシックを掘り下げたい向き(いるか?)にはマスト!大粒です。

【本日のレビューその2:THIRD EAR BAND「THIRD EAR BAND」】


続いてはこちら。70年代英サイケプログレの異端バンドとして名を知られるグループですが、上のUNHOLYと完全に共振してます。あやしい打楽器類の執拗なシーケンスと、ランダムに絡んでくるオーボエ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなどの管弦楽器とで、ヨーロッパの古楽に根差したプリミティヴな祭祀音楽風のものを妄想的に再現。60年代のサイケ・イズムがアートロック〜プログレへと実を結んでいく流れの中で(本作リリースは70年)、よりダイレクトにサイケデリアの核をキャッチしようとしたんでしょうか。10分前後の長尺作品が4曲収録のトータル約37分。オール・アコースティックであるため、テンションの上げ下げはテンポの変化やアンサンブルの疎密具合によって巧妙に行われ、上品ながら強烈なトリップ感が得られます。電気でグシャグシャに破綻したりピヨピヨピヨピヨ…と非人間的な信号を発したりするジャーマンサイケとはそこが性質の異なるところ(下世話なドイツ産も良いですが)。長い1曲1曲を踏破してじわじわと頂に登りつめていく感覚は何だか修業的で、ドゥーム/ストーナーの上質な部類と似たカタルシスがある気がします。あるいはKRANKYあたりの不親切音響にも直結。バッドトリップして凶悪化したTOWN AND COUNTRYが見てみたい方、野生化したAMBER ASYLUMに会いたい方はこのアルバムをすぐどうぞ。胡散臭いBGOリイシューですけど。

  9月20日
本日の収穫、まだまだバーゲン続行中のサウンドベイ上前津にてJOHN ZORN「THE BIG GUNDOWN」、STINKING LIZAVETA「III」、CELESTIAL SEASON「SOLAR LOVERS」、PARADIGMA「MARE VERIS」、THE 3RD AND THE MORTAL「SORROW」(93年のEP)。5枚で1680円、妥当。

【本日のレビュー:JOHN ZORN「THE BIG GUNDOWN」】


イタリアの映画音楽家、エンニオ・モリコーネのスコアを地下NYシンジケートのオールスターで録音した85年作。リマスター、リパッケージ&ボーナス追加で2000年に15年記念エディションとして出直したものをゲットです。なんとクールなアートワークよ。参加メンツが本当に豪華でして、ビル・フリーゼル、アート・リンゼイ、ティム・バーン、ウェイン・ホーヴィッツ、フレッド・フリス、アントン・フィアー、ネッド・ローゼンバーグ、ヴァーノン・リード、他々。更に追加収録の新録ボーナスではマーク・フェルドマン、マーク・リボー、ジョーイ・バロン、マイク・パットン、デレク・ベイリーまで登場ときた。

 で内容の方、ゾーンというと絶叫ノイズサックス!というイメージだけで敬遠されてる方も多いと思いますが、きちんとヴィジョンを持った音楽家です。ここではマカロニ・ウエスタン特有の荒涼としたムードと、プラスチック製のまな板の上にゴロッとオブジェクトを置くようなポストモダン的丸裸感(??)が一体となって、えも言われず不安や焦燥に駆り立てる宙吊りナンセンス・ドラマ・ミュージックが完成しています。なんだFANTOMASはもう要らないじゃないですか。ボケが長いボアダムスというか、破滅した現代音楽というか、そんな感じで劇画調のフレーズ群と度を越したノイズ群が錯乱。その中に一貫して感じられる見えない秩序は、ジョン・ゾーンの狂気じみた創造性ただひとつ。本人はほとんど音出してないのによくここまで支配してます。15年を経て新たに録られたボーナス曲の方は多少やんちゃっ気がひいて、「エクスペリメンタル」を超越した男ならではの「含みとしての異常性」が穏やかに堪能できる出来。どちらにしても、ANIMAL COLLECTIVEやBLACK DICEみたいな音を好むような人は踏まえておいた方が話の早い古典です。

  9月19日
本日の収穫、まだまだバーゲン続行中のサウンドベイ金山にてTEN YEARS AFTER「ALVIN LEE AND COMPANY」、STONE「STONE」(現CHILDREN OF BODOMのメンバー在籍、フィンランド産80年代スラッシュ!)、A CANAROUS QUINTET「SILENCE OF THE WORLD BEYOND」、NIGHT IN GALES「SYLPHLIKE」、JIMMY PAGE & ROBERT PLANT「NO QUARTER」、MR.BIG「GET OVER IT」、DON HENLEY「INSIDE JOB」(2000年)。7枚で3115円でした。妥当。あと米アマゾンのマーケットプレイスにて購入のUNHOLY「FROM THE SHADOWS」も到着。

【本日のレビュー:MR.BIG「GET OVER IT」】


一昔前は「みんな知ってる洋楽といえばミスタービッグ」てな時代もありました。ハードロックを通ってない人でも名前は知っていて、何となく取るに足らない存在だろうと思って見過ごされていそうなMR.BIG、本日は彼らが何者なのかというところから今一度、懇切丁寧に解説してみようと思います。

 まずリーダーというか発起人はベーシストのビリー・シーンでした。TALASというB級ハードロックトリオを経たのち、元VAN HALENのシンガーであるデイヴィッド・リー・ロスのバックバンドに大抜擢され、スティーヴ・ヴァイ(ザッパ〜WHITESNAKE)やビソネット兄弟と激テクの火花を散らしたことはあまりにも有名(メタラーの間で)。そのDLRバンドを離脱し、自らの理想を具現化できる新たなスーパーグループを結成せんとして、MR.BIG立ち上げの構想が始まったのであります。

 80年代末当時、ガンズなどの影響でハードロック界では70年代ブルーズロック/カントリー回帰が大ブームになっていて、MR.BIGという名前も"Wishing Well"で有名な60〜70年代ブリティッシュロックバンド・FREEの曲名から拝借しているわけですから、当然そういった音楽性を標榜したんでしょう。ソウルフルに歌えるフレッシュなシンガーということで白羽の矢が立ったのが、ソロシンガーとして(厳密にはERIC MARTIN BANDを率いて)活動していたエリック・マーティン。彼には他にこれといったキャリアがないんですが、ビリーはたまたま気に留めていたんでしょうね。DLRバンドでショウビズの極みを体験した反動で、有名人だらけのマンモス集団みたいなバンドになるのを避けたかったのかも知れません。

 でギターは当然、技術的に卓越したプレイヤーがゴマンといた当時のシーンの中でも、ベースの鬼神と恐れられたビリーと互角に渡り合えるレベルの実力者である必要があるわけです。めでたく抜擢されたポール・ギルバートは、GIT(アメリカの有力なギタリストの専門学校)卒業後、速弾きギタリストの作品ばかりをフォローするSHRAPNELレーベルのマイク・ヴァーニーに拾われ、RACER Xなる超絶技巧スピードメタルバンドで2枚のスタジオ盤と1枚のライブ盤をリリース、若手ナンバーワンとも言われるポジションにいました。しかし実は彼のルーツはトッド・ラングレンやCHEAP TRICKのようなポップスにあり、これが以降、ブルージー志向のビリー&エリックと折り合いがつかなくなって結局脱退に至る一因となるのですが、まあそれは後の話。

 ドラムのパット・トーピーは一番影の薄い人でしたかね。テッド・ニュージェントや何故かIMPELLITTERIのバックで叩いていたという微妙な経歴の持ち主。二枚目ジェントルマンな風貌に似合わずツーバスも操るテクニシャンでした。なかなか良い声を持った立派な歌い手でもあり、そこが良かったのかも知れません。ライブでは"イエスタデイ"を歌いながらドラムソロをやるなどしてちゃっかり目立ってました。

 と4人揃ったところで満を持してシブいブルーズロックをやるのかと思いきや、やっぱりキッズの期待に応えて超絶技巧ハードロックナンバーや、メジャーレーベル(ATLANTIC)なだけにAOR風のバラードなんかもやったりするわけです。どちらかといえばそっちの側面ばかりがウケてしまい、皆さんご存知のアコースティックバラード"To Be With You"のスマッシュヒットは、実はそういう不本意な傾向にトドメを刺す形となっていたのです。その後色んな面で歪みが大きくなり、テンションも下降気味な中で発表された4枚目「HEY MAN」を最後にポール・ギルバートが脱退。"Green-Tinted Sixties Mind"などの人気曲を多く手掛けたポールの脱退は当然音楽性に大きく響き、バンドはいっそ本来の原点であった渋ロッキンな方向に立ち返って再出発を図ることに。そこで引っ張られてきたのが、このアルバム「GET OVER IT」から登場するリッチー・コッツェン!いや〜〜長いイントロダクションでした。

 リッチーはポールと同じくSHRAPNELから数枚ソロアルバムをリリースしていた80年代速弾きギタリスト軍団の一員なのですが、早いうちから自身のルーツであるソウル/ファンク色を前面に出す作風を確立していました。悪名高きC級ヘアメタルバンド・POISONに一時加入したのちにリリースした「MOTHER HEAD'S FAMILY REUNION」などは、THE BLACK CROWSファンにも受け入れられそうな秀作です。でMR.BIGではどうかというと、テレキャスターの枯れた音色でさりげなくテク弾きをこなすという持ち前のキャラクターをそのまま活かし、ほとんど違和感なく溶け込んでいるように見えます。

 しかし「昔のロックバンドみたいにフィーリングでボボボッと作ろうぜ」的なノリと、依然冷めきったバンドのやる気(エリックとビリーの不和が囁かれていました)とが悪しき相乗効果を生み、それらしいグルーヴだが印象には残らないという曲ばかりが並んでしまったのが敗因か、奇跡の起死回生はならず。やたら外部ライターとの共作曲が増えてしまった次作「ACTUAL SIZE」リリース後には何と創始者のビリー・シーンが脱退(解雇?)、そのまま解散という散々な顛末を迎えました。

 ということで結局ただのMR.BIGヒストリーになってしまいました…。要約すると「リッチー・コッツェンを聴くなら『MOTHER HEAD'S FAMILY REUNION』が良いアルバムです」ということです。ブックオフでもぼちぼち拾えるので500円以下を目安に探してみて下さい。ちなみにMR.BIGは3枚目「BUMP AHEAD」が一番好きです。

  9月17−18日
▼17日は台風接近が警戒される中、さるお方のお祝いのため、自転車にミニアンプくくりつけてギター背負って日没後にギコギコと栄へ。大多数の人が人生で経験するであろう事柄のうち「結婚」とあと「車の運転」だけは、やれる人のことを無条件で尊敬します。結婚凄いっす、アツイっす。S川御夫妻、いつまでも仲良いお二人で!

▼本日18日は祝日らしく過ぎました。この前ロイヤルホストに行って(割引券があったから)、何でこのコストパフォーマンスで成り立っとるんや…と不可解さに苛まれてきたばかりだったせいか、デニーズの最近のクオリティの高さを改めてよくよく認識。敢えて書き記しておきたいほど、フレッシュパセリのみじん切りひとつから紅茶の出具合に至るまで、もちろん料理本体もですが、ほーそうですか、あらまー、と感じ入ることしきりでした。あれじゃ中途半端な洋食屋は立つ瀬なしですな。セブン&アイ・ホールディングスの看板が何だか、旧セブンイレブンのロゴがデポちゃんに取り込まれて食われようとしている図みたいに見えて気持ち悪いですが。企業合併は気持ち悪いよー。

【本日のレビュー:LAUGHING HYENAS「MERRY GO ROUND」】


25周年で盛り上がっているTOUCH & GOの初期リリースです。87年録音の7曲に、88〜90年の4曲を追加したもので、通し番号は25番。以前も紹介しましたが、大筋で作風は変わらず非常に痛快なヘヴィジャンクとなっております。NOMEANSNOがKILLDOZERをやったような天才肌変態の泥酔模様。裏声交じりで絶叫するヴォーカルが初期筋肉少女帯の大槻ケンヂのようでもあり、強烈なアングラパンク臭がまたたまりません。そして今やジャズまがいの世界に足を突っ込んでいるジム・キンボールのドラムはこの頃既に上手いっすね。ローファイでムチャクチャなように見えて、実はエンジンは超高性能というのが凄味です。既に死滅してしまったスタイルの音楽ですが、ロカビリーやパブロックなどもそこはかとなく吸収した絶妙な色気があり、充分にクールだと思います。ジャケがかっこいいのもいいです。TOUCH & GO言うてもSHELLACとJESUS LIZARDくらいしか知らんわという方も、あと一歩踏み込んで是非こっちまで。

  9月16日
▼最近、欲しいものはサウンドベイでよく見つかります。今日も良かったな。本日の収穫、バーゲン初日のサウンドベイ金山にてDON ELLIS「PIECES OF EIGHT」(67年のライブ2枚組)、VANDENBERG「ALIBI」(85年3rd!)、NIGHTWING「NIGHTWING」(80年代マイナーブリティッシュHM、LONG ISLANDからのリイシュー)、SILVER JEWS「TANGLEWOOD NUMBERS」(スティーヴ・マルクマス相変わらず参加の2005年作)、STEVE LACY「THE FOREST AND THE ZOO」(63年ESP、エンリコ・ラヴァほか参加)、KING CRIMSON「IN THE WAKE OF POSEIDON」(30周年リマスター)、NEIL YOUNG「OLD WAYS」(85年)、ALLAN HOLDSWORTH「I.O.U.」(85年)、BADLANDS「DUSK」(幻の3rd!)、WHITE WITCH「A SPIRITUAL GREETING」(リマスター)。同じく上前津ではDAVID S. WARE「WISDOM OF UNCERTAINTY」(マシュー・シップ、ウィリアム・パーカー、スージー・イバラとのクインテット!AUM FIDELITY1枚目のリリース)、BEGGARS OPERA「WATER OF CHANGE」(2nd)、LAUGHING HYENAS「MERRY GO ROUND」(ジム・キンボール!87年)、WEIDORJE「WEIDORJE」(ベルナール・パガノッティ&パトリック・ゴーティエ!!MAGMA/HELDON周辺の重要フレンチプログレプロジェクト!)。他にも何枚か買いましたが、ここのところC級マイナー初期デスとかを熱心に漁ってるうちに、ストライクゾーンの狭小化が猛烈に進行してました。イイだろうと思って買ったあれもこれも好きではなかった。それらが誰かにとって良い音楽であることは判るし、そういうものに心酔する人達を「へッ浅はかな…」と鼻で笑う気もありませんが、まあとにかく私の思ういくつかの種類の基準をパスしてくれる音でないと、こちらの精神を対峙させる気持ちまでいかないというか、聴いて覚えておくだけの価値が見出せなくなってきてます。こうして偏屈な年寄りになっていくんだな。と開き直って宣言したところで、今後は(今後も?)より堂々とディープで頑固なセレクトでお届け致しますのでよろしく。

【本日のレビュー:ALLAN HOLDSWORTH「I.O.U.」】


MESHUGGAHのギタリスト、フレドリック・ソーデンタルに「人生をメチャメチャにされた」と言わしめたアラン・ホールズワースの85年作。たまにヴォーカルが入る以外はシンセも何もない硬派なギタートリオ編成です。ポワーッと広がる上質の布のようなコード弾きの雰囲気はちょいとパット・メセニー以降な感じに染まっているものの、アメーバな変拍子、数学を駆使して編み出す奇怪なスケール、そして何より独特の高速レガートプレイはもうホールズワースの世界以外の何でもないっす。STEELY DANがあの都会性を維持したまま激しくプログレに目覚めてしまったかのような転調・脱調づくしの変態フュージョン。自由自在とはこのこと。やっぱりソロキャリアの初期寄りの作品(しかもその後長年連れ添うことになるゲイリー・ハズバンドとの初共演)というだけあって、精気が冴えに冴えてて聴き応えがしっかりしている。いいですね、さすがに名盤です。ディシプリン・クリムゾンと並べて聴くもよし、WATCHTOWERマニアが参考書にするもよし、インディロッカーが超絶技巧マスロックの延長で楽しむもよし。生きてるうちに聴いておきたい系の一枚でしょう。

  9月15日
収穫はなし。バーゲン前夜は遠足前夜の心地です。といって大量に買い過ぎても凹むだけなのに。「未聴、または飛ばし飛ばしにしか聴いてないCDの平積みの山」が最近は山脈を築きつつあるのでどうしようかという感じです。まあ、10時前から並びますが。

▼顔を出せとは言わないから、生きてるか死んでるかくらい教えなさい。数日前のゴキブリよ。というか死になさい。

【本日のレビュー:HUGH STEINMETZ「NU!」】


デンマークのトランペッターが66年に発表した初リーダー作。3管セクステットを率いてのバリバリ・ユーロ・フリージャズですな。フリーといっても爆裂、漫談、リリシズム追究、アフリカ帰り、外見上だけの逸脱、などなど色々なパターンがあるわけですが、このグループはひたすら「混線」してます。ジャケで吐き出されている黒いモジャモジャのとおり。ダイナミックにビュンビュンと飛び回るのではなく、当てられ続けると眠れない拷問のような細かい不規則な振動がずっと持続する感じ。いっそバッカーン!と爆発してくれよ、というフラストレーションをよそに、病的な執拗さでいやらしく揺すり続けます。拍子はおおむね崩壊しきっているものの、各人の技の細部は実にジャズ然としたもので、聴きやすいといえば聴きやすい方か。総じて先人が提唱した「自由」に準じた上での新しさに収まっている気はします…アルバムタイトルはいささか大風呂敷でしたね。60年代後半のオランダやデンマークのあの感じはプンプン漂ってるので、このアメリカ産とは質の異なる暗さを楽しんで下さい。ブッちぎりで心に残ったのはやはりジャケでした。変な絵。

  9月13−14日
収穫はなし。毎日欠かさず「とくダネ!」を見ている私ですので、「日本人のお笑い芸人がエアギターの世界選手権で優勝した」という今朝のニュースも知り及んでおります。エアギターは今盛り上がっとるんですね。私の思い込みが間違いでなければ、ギターソロが長かった昔のハードロックバンドで、間奏のあいだ手持ち無沙汰になるシンガーが軽いアクションとしてやっていたり、70年代末のイギリスに存在したヘヴィメタルディスコに詰め掛けたキッズ達がヘッドバンギングと共にやっていたりしたのが、エアギターが文化として定着していった起源のはずなんですが、そんなHR/HM界発祥のならわしが今や茶の間に浸透してしまったというのはちょっといい気分ですね。あとメロイックサイン(人差指と小指を立てて悪魔の角を表現するジェスチャー)も完全メタル由来ですので、注意して下さい。

【本日のレビュー:THORR'S HAMMER「DOMMEDAGSNATT」】


PROBOTもリリースしていた現代ドゥームの有力レーベル・SOUTHERN LORDの記念すべき第1弾リリース。ライナーを読む限り、アメリカ人メンバーに当時17歳のノルウェー人女性シンガーが加入して完成したバンドだったようです。ジャケもその彼女とおぼしき女性が歌う写真になってるわけですが、恐ろしい…。ザビーネ・クラッセン(HOLY MOSES)より更にロウ&ディープな、完全なるガテラル声を操って、極初期CATHEDRALやTHERGOTHONらへんの音を直系で受け継ぐ低速フュネラルドゥームを見事に歌いきっております。94〜95年にこの音ということでオリジナリティの面では多少弱いところもありましょうが、SLINTに対するRODANみたいな、ウソやニセに終わらないピュアさがあって全然かっこいいです。むしろISISとかが胡散臭く思えてくる。この妥協なき低速一辺倒ぶり、一切の光のなさと悲愴、初期LOWのデスメタル版といっても過言ではありません。死のうかどうしようか迷ってる人は聴くのやめて下さい。

  9月12日
収穫はなし。あーあ参ったな。昨日レビューを書いてる途中で、まさにそのとき手をつけて打っているキーボードの向こう端(ディスプレイ側を向いた垂直面)に、ゴキブリの黒い足が動いとったんです。「無断で侵入しやがって、この腐れ真っ黒野郎…」という怒りで猛烈な攻撃を仕掛けたものの、よりによってこの物陰だらけの部屋の中で捕り逃がしてしまいました。どこのCDの山の間に潜んでるかわからなくて今も非常にスリリングです。いや、そんなジョークかましてる余裕全然ないです。部屋を明るくしてればノコノコと日なたに出てきて寝てる私を踏んづけていくこともなかろうと、昨晩は本当に電気つけっぱなしで寝ました。想像以上に寝れんかった。今朝一番から異様なフットワークで部屋の掃除機がけをし(食料根絶のため)、今夜は殺虫スプレーを枕元に備えて寝ます。

【本日のレビュー:LADDIO BOLOCKO「THE LIFE AND TIMES OF LADDIO BOLOCKO」】


COLOSSAMITEやSICBAY、YOU FANTASTIC!などに発展していったSKIN GRAFTの名バンド・DAZZLING KILLMENからのもうひとつの枝分かれ組。ドラマーが元DAZZLING KILLMENです。これは全て限定プレスで入手困難となっている過去音源を、2枚組で完全網羅したアンソロジー盤。ムジーク・コンクレート、ノイズ、ミニマルなどが入ったインスト版LED ZEPPELINといった佇まいの猛烈にシブい作風!妙にロック然としたTHIS HEATともいえそう。アメリカ産ながら凡百のポストロックものとはとにかく一線を画していて、相当に野心的な「変形ロック」となっています。それだけにフレンドリーの対極のような頑固な作りですが、オールドロックやプログレの「鳴り」に理解がある人にはたまらないはず。ノイバウテンばりのメタルノイズからサンラ的(?)フリージャズ、CANミーツAMON DUULなプリミティブ・サイケトランス・ビーツへと雪崩れ込んでいくdisc2終盤収録の10分の大曲"The Going Gong"が個人的には白眉でした。

  9月11日
収穫はなし。朝、アンパンをひと口かじるや否や、中の餡が糸を引いたらビックリします。う〜む、これ小豆のフリして甘納豆か?などと、よくよく考えれば見当違いな想像をし、口をつけた箇所のわずか数センチ横に薄ら緑色のモフモフを発見した時は、やっぱりそうだよなと妙な安心感を覚えてしまいました。今日のところは腹の調子を悪くすることはなかったです。以上、「カビの奇襲」でした。

【本日のレビュー:ASHRA「BLACKOUTS」】


マニュエル・グートシェンク(日本で長らく一般的だったゲッチング、ゴッチング等の表記は発音上誤りだったようです)一人になってASH RA TEMPELからASHRAに短縮しての第2弾となる78年作。ちなみに大名盤中の大・大名盤「NEW AGE OF EARTH」が最初です。このアルバムでも病的な量のオーヴァーダビングによる開放的で明るいミニマルミュージックが展開するわけですが、フレーズが少しずつ移ろいながら全体の色をゆっくり変えていくという趣きだった前作と比べると、より「人の手でギターを弾いてます」という感じが前に出るようになりました。下地となるシンセやリズムマシンの完全固定ループの上を、ひとつのパッセージを数回繰り返したら次へ、また次のパッセージへ、とつなげていく要領でおおむね進行。アウーンと熱くチョーキングしてしまうような普通のソロも結構弾いてます。これをオシャレじゃないと取るか、一周してクールと取るか。SGのピックガードに氏の目元だけが映っているというイラストのジャケは少なくともクールだと思います。あ、曲によってはニューウェイブの影がかなり来てますね。決して迎合しきらない絶妙の譲歩具合が面白い。さすがドイツは何があってもマイペースです。と1〜5曲目であちこちに振っておいて、B面を丸々費やしての17分に及ぶ"Lotus"が、のちの「E2-E4」の片鱗を窺わせる渾身の大作となってるわけですな。なるほどこれは「NEW AGE OF EARTH」の先をちゃんと見ている。組み上げた足場を踏みしめながら次の新しい足場に取り掛かっているさまが美しく記録された、充実の過渡期作。ファンおよびジャーマンエレクトロ研究家はスルー不可の方向で。

  9月10日
収穫はなし。数年前にリタイアさせたっきり使っていなかったJACKSONのランディV(フライングVの羽根の右だけが短いやつです)を先日久々に開けたら、金属部分のサビがひどいことになっていて、今日は金属磨きを買ってきてサビ落としに励んでみました。するとゴールドのパーツが全部シルバーになってしまいました…。写真は撮り忘れたのでまた今度。スルーネックのいいやつなのに、何故かそれを7000円で売ってくれた先輩は今元気かなあ。

【本日のレビュー:ALEX SKOLNICK TRIO「TRANSFORMATION」】


レスポールとミラージュのシルエットが重なり合うジャケに、アレックス・スコルニックって、そうあのサトリアーニの弟子で元TESTAMENTのアレックス君です。「THE RITUAL」を最後にTESTAMENTを脱退し、その後ATTENTION DEFICITというエクスペリメンタル・フュージョン・ユニットを率いていましたが、ここへきて遂にアコースティックジャズ作品を出してきました。ファンなのに知りませんでしたが2004年にリリースになってたようです。しかも調べたところこれの前に同じ主旨の第1弾があったそうです!早速注文しました。

 てことでこちら、オリジナルも半々くらいで交えつつ、ハードロックのスタンダードの数々を至極まっとうなアコースティックジャズアレンジでやってしまうという前代未聞の試み。RADIOHEADやNIRVANAまでは既にやられてますが、JUDAS PRIESTの"Electric Eye"を軽妙な7拍子でやってしまったのは彼が世界で初めてでしょう。若かりし頃のTESTAMENT諸作での録音では、どこでピッキングしてるか判らないくらい流麗なタッチでもって、往来の激しいダイナミックなフレーズを身上としていたアレックス、ジャズをやってもスケール感に不自由は全くなく、やっぱり抑え目のトーンでスルスル〜と滑らかにつないでいってくれてます。歌心的な引っ掛かりとしてはさほどアクの強いものはないですかな。まあしかし演目がいいじゃないですか。SCORPIONSの"Blackout"、IRON MAIDEN"The Trooper"、DIO"Don't Talk To Stranger"、そしてラストをシメるDEEP PURPLE"Highway Star"(中近東風の長いソロがなかなかアツイ)。ジャズを通ってないメタラーが聴くにはツライものがあるかも知れませんが、メタルを通ってきたジャズメンは膝を打って喜べるであろうナイスな盤です。先に出ている第1段ではオジーの"Goodbye To Romance"なんかもやってるらしく、早く聴いてみたいっす。ミュージシャンシップとしてはこういうものを目指していても、きっちりメタルを愛する男だったんですなアレックス。

  9月8−9日
▼We believed〜、We'd catch the rainbow〜、ということで虹出ましたね。niji。銀嶺の覇者です。アマメ〜〜ン!アマメ〜〜〜ン!!

異なるアングルで撮った3枚を合成して作りあげた手製パノラマ写真なので、継ぎ目になってる部分がところどころ変ですが、まあこのサイズならわかんないですね。上のボケ倒しの方がわかんないよという人は今すぐに第一期RAINBOW全部買って下さい。買って泣け!!ロング・リブ・ロニー・ジェイムス・ディオ!!!

本日の収穫、CD CONNECTIONから届いたALEX SKOLNICK TRIO「TRANSFORMATION」、OPPRESSOR「SOLSTICE OF OPPRESSION」、VOIVOD「KATORZ」、NUCLEAR VALDEZ「IN A MINUTE ALL COULD CHANGE」、TERRORIZER「DARKER DAYS AHEAD」。CD CONNECTIONで買い物するときは、ピンポイントに厳選しておいたものが一挙に届くんで毎度大変です。全部レビュー行き。

▼そして今日は上前津ZIONの入っているビルに最近できたデス系専門ウェアショップ、NO REMORSE名古屋店に行ってみました。何のことはない、DISK HEAVEN系列名古屋3店舗の統合によって消滅したSOUTH OF HEAVENの元マスター、DISGUST(筋金入りグレイト国産ベテラングラインダー!)のベーシスト氏が番をしておられるじゃないですか。帽子やローカルバンドのCDなどもありつつ概ねTシャツ中心の品揃えで、サイズは海外製メタルTには貴重なSまで選べるものが多く、THORR'S HAMMERやASSUCKなど激しく信用できるチョイスが黒々と並ぶ中から今日は、VOIVODとHIGH ON FIREの超カッコイイやつを買ってきました。また行こ。

【本日のレビューその1:VOIVOD「KATORZ」】


ちょうど去年の今頃亡くなったギタリスト、ピギーことデニス・ダムールの遺作となった最新アルバム。生前にデモとして録ってあったギターをもとに、残りのメンバー達の手で完成させたものだそうです。オリジナルシンガーのスネイクが戻り、元FLOTSAM AND JETSAMのジェイソン・ニューステッドが加入して制作されたセルフタイトルの前作は、シンプル&ストレートにガッツリ来る作風になってはいたものの、変に若ぶって力み気味なスネイクのヴォーカルといい「いや、VOIVODってこんなんだったか…?」という違和感もやや否めぬ出来でした。今回はといえば、景気のよいドライブ感と独特の屈折不協展開とが黄金比で混在する、「ANGEL RAT」〜「THE OUTER LIMITS」の頃の"勘"がかなり復活。バッキングらしい厚みもへったくれもなく中高域で妙な和音をかき鳴らす、孤高のピギー節があちこちで堪能できて感涙です。スネイクもいい塩梅に脱力ロートーンに戻ってるし。リフと一丸になって小宇宙を醸し出すアウェイ先生のドラミングもまた健在。今やPROBOTのジャケまで手掛けてしまう画伯っぷりは相変わらず、ブックレット内のイラストでバリバリ全開です。総じて、最近の流行りに合わせるという意味ではなく、結成以来経てきた年月相応のテンションで味わい深くまとまったという意味で、「今のVOIVOD」のとてもいい姿が捉えられていると思います。あ〜何と、ピギーに「今」がもうないというのは何と嘆くべきことなんでしょうか。あなたのようなギター弾きはどこにもいませんよ。

【本日のレビューその2:TERRORIZER「DARKER DAYS AHEAD」】


故人追悼の続きということで、まだ記憶に新しいジェシ・ピンタードを。TERRORIZERの奇跡の復活アルバムです。オリジナルメンバーはジェシとピート・サンドヴァル(現MORBID ANGEL)の二人。ダウンチューニングで昔はやらなかったような高速16分刻みリフなんかもやってるんですが、これがモコモコ〜とのろくてリズムについていってなかったり(ときに相当顕著)、ややトシを感じさせる出来に。ピートのドラムはやっぱり抜群に鮮やかでクルクル素早いんだけど、キメのタイミングとかが長年の勘のままにルーズになってる感も心なしかあり。こっちがバカ上手い若手の音源を聴きすぎてるせいか?まあそのへんも含めてオールドスクールのシブ味ですよ。ただ経験の浅さゆえにヘタ、という奴らには出せない、百戦錬磨のグルーヴはあると思います。ライブハウスで「またこれかよ〜!」とクタクタになりながらそれでもモッシュせざるを得ないあの感じ。ヘヴィすぎるギターとベース(ともにライン録音?)に押されてドラムの推進力が発揮されづらくなってる点と、一部あからさまにエレドラか何かだと分かる変なタムの音、ここがもっと上手いこと仕上がってれば全体の印象もいくらか良くなったのではと惜しまれます。あとジャケのロゴにインチキくさい「影」がついてるとこね。これだからCENTURY MEDIAはB級のイメージが消えんわ。ジェシの弱ったギターワークを差し引いても、音楽的なもの以降の制作面にかかわるツメの部分でかなり損してる出来になってしまったと思います。お、唯一"Dead Shall Rise"の再録バージョンだけは、何故か被せられているクリーントーンギターの意味がわからんけど(邪魔!!)ドラムがドコバカとでかくてかっこいいですな。全編これでいけよ。故人を悼みたい方はやはり「WORLD DOWNFALL」を聴いて下さい、しかしファンはこのアルバムも買ってあげて下さい。

  9月7日
本日の収穫、STIFF SLACKにてTHE UNDERCURRENT「GHOST」、SHARKS AND SEALS「IT'S HARD TO NOT MEAN ANYTHING」。はとビル前の南北の道を少しだけ南に行って左手にあるラーメン屋、そこのカレーうどんがめっぽう美味らしいので、いずれ試そうと思います。

【本日のレビューその1:THE UNDERCURRENT「GHOST」】


東京の異端派ヘヴィ・オールドロッキン・カルテットの2nd、一般発売を前にリリース元のSTIFF SLACKから先行放流されたものをゲット!「日本人好きするいわゆる轟音激情エモ」的路線だった前作は、曰く本当にやりたいこととは違っていたそうで、今回はぐぐぐっと重心を低くしてガッツリ攻めてきてます。70年代ブリティッシュの香り漂うハードロックの本来的な鳴りを、ポストハードコア〜オルタナ的文脈の中に堂々と据える、SHINERやBARKMARKETらが拓いた玄人的スタイルを美しく継承。大胆に落としたBPMのもと、歌メロとバッキングギターとが混じりあって成す濁ったロングトーンの揺らぎでもって、スピリチュアルな波動を強烈に発振してきます。スケールでかいっす、参った。1音下げの低いDの響きのイメージが全編を貫いており、やれアップテンポだ、やれバラードだ、などとヴァラエティを稼いだりもしてないですが、そこがむしろ心地よいところ。一度乗っかれば脇見するのも忘れてラストまで引き摺っていってくれるような、神通力ともいうべき集中力が持続してます。シブ好きでなくともこの渾身の気迫にはきっと感じ入るところがあると思いますよ。円熟・飽和・閉塞したおしゃれエモよりも断然こっちに未来を感じます。ASCETICは本当にアメリカ盤出してくれたらいいのになー。

【本日のレビューその2:SHARKS AND SEALS「IT'S HARD TO NOT MEAN ANYTHING」】


JOAN OF ARC周辺組の二人組ユニットの2nd。THE ACT WE ACTでクルクルと転がっていたスペース君が興した新鋭レーベル・IS COLLAGE COLLECTIVEの第1弾リリースです。以前紹介した1stから更にヘロヘロ度が増し、ニック・ドレイクとSWELL MAPSとASH RA TEMPELとサン・ラをグッタグタになるまで煮込んだような、和めるようで結構えげつなくもあるサイケポップ。60年代的な「夢の遊泳飛行」みたいな種類のサイケ感です。しかもかなり躁鬱の気あり。危ない危ない。メルヘンに見せかけて中身が真っ黒だったりするBEACHWOOD SPARKSてな感じも。宙に浮いたローファイなら世界中によっぽど変なのがあるけど、ゆがみきった中にこういうまっとうな深みも隠し持つのはやっぱり、ロック文化のネイティヴたるアメリカ人ならではの仕業か。この分だと多分ライブでも、どこに飛ぶか判らん不敵な歌心をふりまいてくれることでしょう。ポストロックなんてそんなスカしたもんは…みたいに思わず、プログレッシャーのおじ様やフリージャズで生きる仙人様方も、今月下旬の来日公演にひょいっと覗きに行ってみるといいのでは。

  9月6日
本日の収穫AQUARIUS RECORDSから到着のLADDIO BOLOCKO「THE LIFE AND TIMES OF LADDIO BOLOCKO」、ZS「KARATE BUMP」、BURZUM「HVIS LYSET TAR OSS」、THORR'S HAMMER「DOMMEDAGSNATT」、STINKING LIZAVETA「CAUGHT BETWEEN WORLDS」、VED BUENS ENDE「WRITTEN IN WATERS」、BEYOND DAWN「IN REVERIE」、BEHERIT「DRAWING DOWN THE MOON」、MAUDLIN OF THE WELL「BATH」。そしてオフィシャルサイト経由で頼んだCONFESSORのTシャツも来ました。茶色を1枚注文しただけのはずなのに何故か、同サイズ同柄の黒が余分に1枚入ってるではないですか!?PayPalで支払っててレシートメールもあるから、勝手に多く取られることはないと思うけど、手違いじゃないならどういう太っ腹なんでしょうか。ステッカーとかもついてきたしCONFESSORいい奴らですね!

▼色々試した結果ここは常にクオリティ高いっす。

【本日のレビューその1:BEHERIT「DRAWING DOWN THE MOON」】


フィンランド産カルトブラックメタラーの92年録音盤。CANDLELIGHTから今年リイシューになったものを入手しました。非っ常〜に悪質なプリミティヴブラックが展開されており、最高です。ヘタヘタのガタガタなのに何故か醸し出すこの宇宙的な広がりは何なんでしょう、ヴォーカルにかけられた深いリヴァーブのせいだけではあるまい。上質のサイケデリックロックとしての認知を早急に得るべき。ブラスト一辺倒ではなくあやしいスローパートもふんだんに盛り込まれ、ABRUPTUMみたいなドゥームブラック(?)としての楽しみもあります。というか下地はおおかたCELTIC FROSTですな。大昔のRED KRAYOLAミーツPENTAGRAMとか無茶な例えをしても許してもらえそう。最近のMOGWAIに夢中な人なんかもこの際聴いて下さい。あー後半どんどん凄くなりますね、ランダムなシンセのドローンに適当なドラムが絡むHELDONみたいな曲までやってます。シブ過ぎる。

【本日のレビューその2:STINKING LIZAVETA「CAUGHT BETWEEN WORLDS」】


フィラデルフィアのインストトリオの2004年作。これまた一聴して主旨のつかみかねるシブい人達です。REPERTOIRE系の70年代B級ハードロックやマイナープログレ、初期メタルなどを、ポストコア/マスロック的に組み直した感じの、GOLDENやFUCKING CHAMPSあたりのノリに近い音。「HEMISPHERES」の頃のRUSHとCODEINEが合体したような感じでしょうか?オールドロックなドンキャバというか。荒涼としながらも緻密な絡みが光り、何よりロックらしい色気に溢れております。特大のヴィブラートで大袈裟なソロも決めるギターがかなりサイケ。ベースはアップライトを使用している模様で、ぼえーんぼえーんとゆるいアタックと太い低音はなかなかの存在感です。このアンサンブルはライブで見たら絶対腰抜かすんだろうな〜。記譜しきらないフィーリングこそ主役のはずなのに、CDだともっぱら文脈いじりで遊んでるだけのように聴こえてしまいがちだから、我々異国の民にこういうバンドは難しいですね。サクッと来日してくれんかな。

  9月5日
収穫はなし。最近濫用しているものはピッキングハーモニクス。次はタッピングハーモニクスをいこうと思います。色々やって思うことは、エディは本当に偉大だなと。

【本日のレビュー:RAFAEL TORAL「CYCLORAMA LIFT 3」】


中古盤屋で見掛けるとよくコメントカードで絶賛してあって、1470円…、高いな…、と見送り続けていた在ポルトガルの音響ギタリスト。98年録音で2000年にTOMLABからリリースされている全1曲20分強というこの盤を、先日タワーレコードの値下げワゴンから515円で捕獲してきました。フィードバック風のドローンが音数少なめにフヨ〜ンポヨーンと繰り返されながら消えていってまた少しずつ注ぎ込まれる、なるほど美しいサウンド・スケープを描いております。音を物のように無機質に置いてる感じではなく、詩情をともなって綴られるといった趣きで、シカゴ系よりはデレク・ベイリーとかに近い。どう聴いてもエレクトロニカみたいなのにこれ全部ギターでやってるから凄いね、なんて見方をわざわざしなくても、表現物として非常に確かな出来なのでよいのです。フリージャズの極北としても、ジャーマンロックのなれの果てとしても楽しめることでしょう。KRANKY関連を熱心に集めてるような人は当然全買いで。

  9月4日
収穫はなし。「最近はバレーボール中継でバボちゃんを見掛けない気がする」という話をしたら、バボちゃんの存在は知っていてもその名前にピンと来なかったという人が複数いてびっくりしました。皆さんあれが「バボちゃん」だって知ってますよね!?かわいそうに何で干されてしまったんでしょう。あの無表情な目つきが好きだったのに。

【本日のレビュー:TOKYO BLADE「NIGHT OF THE BLADE」】


SHYあたりと同期になるポストNWOBHM世代のイギリス産HRバンドの2nd、HIGH VAULTAGEのリイシューでゲットです。名前はよく見かけてましたが全然素性を知らず、ブックレットの優秀なブリーフ・ヒストリーを読んだらベーシストがJAGGED EDGE〜SKINへ行っていたことが判りました。細かすぎてわからない小情報。中身の方は極初期DEF LEPPARDのような、メタリックとまではいききらないクサクサ・イモイモ叙情HR。これといってキャラ立ちはしてないですが、紋切り型の澄んだ少年声ハイトーンを聞かせるシンガーはなかなかの素材です。GRIM REAPERとかと比べるとさほど発掘意義は感じませんなあ。特に思い入れもなくこのへんの音を大雑把に知りたいだけの向きにはショートカットの対象です。時代の空気をマイナーバンドの音源から嗅ぎ取りたいというフェチ諸氏ならばしかし、無視して通れないことでしょう。ソツないだけに完成度自体は高めなので。

 …と思ったら後半にボーナス収録されている12インチやEPの音源(本編9曲に対してボーナス7曲…HIGH VAULTAGEはこの太っ腹具合がいい)がB級パワーメタル化した初期IRON MAIDENの如く超ガッツィーに燃え盛っていて最高でした!こっちメインでいけよ!!84年録音にして偶然"Operation: Mindcrime"と全く同じリフが出てくる曲なんかもあって楽しい。軽度のマニアでもこの後半目当てに買いましょう。

  9月2−3日
▼2日はEGOISTIC 4 LEAVES企画にDOIMOIで出演。少数精鋭の聴衆を前に集中した演奏で通せたのでは。会場のパラダイスカフェ21は、テーブルと椅子があって厨房もあるような、ステージつきラウンジといった雰囲気で、爆音バンドが出るには少々場違いでしたがいい感じのところでした。ああいうライブハウスらしくない所で毎度やれるといいな〜。しばらく新曲追加期間をおいて次回は10月29日(日)得三にてTHE LIFE AND TIMES名古屋公演頑張ります。

昨日の収穫はリハ後にソロ活動で訪れたP-CAN FUDGEにてKING CRIMSON「DISCIPLINE」(30周年リマスター外盤でやっとゲット)、HUGH HOPPER AND RICHARD SINCLAIR「SOMEWHERE IN FRANCE」(83年)、GARY MOORE'S G-FORCE「G-FORCE」(SANCTUARYからのリマスター)。

▼今日はまあグダッとしてました。

【本日のレビュー:KING CRIMSON「DISCIPLINE」】


今日は早く寝たいのに強敵を引っ張ってきてしまいました。「RED」発表後解散状態だったKING CRIMSONが81年にリリースした復活作。「フロントにはベースヴォーカル」の鉄則をここへきてあっさり破棄し、昔のスティングがアホになったような鼻詰まり声をもつ元ザッパ門下生のギターヴォーカリスト、エイドリアン・ブリューと、スティック(タッピング専用の8〜12弦ベース)を操るトニー・レヴィンを迎え、ドラムのビル・ブラフォードは据え置き。

 内容の方、これリアルタイムで聴いたファンはさぞガッカリしただろうなあ。フリップ翁はアンディ・サマーズとの親交があっただけあって、ギターサウンドからしてあのほぼクリーン+明るめのコーラスという音色(この頃はサマーズに限らずみんなやってましたが…)になり、ブリューの声質も相俟って「白いレガッタ」以降しばらくの技巧アピール路線THE POLICEや、ブリューの古巣TALKING HEADSなどにガッツリ感化された内容。よーく聴くと新出要素として、執拗なライヒ的ミニマリズムが背景に常にフィーチャーされており、それ以外にも「腐ってもフリップ」と無理やり唸らされる箇所は多々あり。まあしかし70年代まではあからさまに何かにあやかることなく新しいものをリードし続けてきたクリムゾンが、ここで「世間の新しいもののクリムゾン的解釈」という二次的な立場に落ち着いてしまったのはいささか残念ではあります。この盤でしか聴けない音と、違うバンドで済んでしまう音が混在しながら、単純に完成度の高さで名盤の域にいってしまっているという感。局所的には"Indiscipline"のループリフ+フリー猛打ドラムな構図が初期ドンキャバ、"Discipline"の多層ポリリズムがBATTLESを見事に予見しており、ポストロッカーは持ってないといけません。ニューウェイブ好きの人が初めてのクリムゾンとしてこれを勧められたら、やっぱり無視して「LARK'S TONGUE IN ASPIC」を買って下さい。

  9月1日
▼もうだめだ〜本日の収穫、サウンドベイ金山にてELTON DEAN「JUST US」、TOKYO BLADE「NIGHT OF THE BLADE」、HIGH ON FIRE「BLESSED BLACK WINGS」、MEMENTO MORI「RHYMES OF LUNACY」、SLEEP「SLEEP'S HOLY MOUNTAIN」、ASHRA「BLACKOUTS」、DEMON DRIVE「BURN RUBBER」、THIRD EAR BAND「THIRD EAR BAND」。そして朗報、サウンドベイ両店は今月16日(土)〜24日(日)でバーゲンあります!他地方にお住まいの皆さんも17・18日の連休を利用して名古屋来まくりましょう。

▼カルピス製品のテレビCMの最後に決まって流れる「カルピース〜」というサウンドロゴ、あれの最後の「ス〜」がどんどん短くなってることが気になってる人、いませんか?おかしいですよね!!今なんかもう「カルピー(ス)ッ」で切れちゃってます。知らなかった人は気にしてみて下さい、あれは絶対何かあるに違いない。

【本日のレビューその1:DROPSONIC/TRAINDODGE「XERXES」】


ASCETICの看板男汁バンドTRAINDODGEと、54-40 OR FIGHT!で気を吐くガッツ野郎DROPSONICの限定500枚スプリット!ここまで読んでヌオー買うしかねえ、と居ても立ってもいられなくなった御仁は、恐らく日本で唯一の入手可能経路であるSTIFF SLACKウェブショップへ即座にGO!です。内容はDROPSONIC2曲、TRAINDODGE2曲、そして何とメンバー入り乱れてのコラボ曲(!)が2曲の全6曲。豪華絢爛。まずDROPSONICは、ささくれ立ったギターの鳴りをフィーチャーしてのSTOOGES直系なガレージポストコア路線まっしぐら。オールドロッキンに揺らぐサイケ感も見事なもので、いくつのオッサンやねんという貫禄むんむん。そしてTRAINDIDGE、破裂した水道管の如くブホーッと噴き出す激ブースト・フューチャー・ハードロック!屈折した(しかも充分にキャッチーな)リズムや大胆なシンセが必然性をもってガッツリ幅を利かせ、ヘヴィネスの振れ幅はもはやクラシックばりに極端に。先日リリースされたばかりの大傑作「WOLVES」でも片鱗が窺えていましたが、隠れプログレハード化が更に進行してて個人的にニヤニヤしっぱなしです。ところどころにRUSHへの愛を語っているようにしか聞こえないパートがあります、これは絶対確信犯!そして共作の2曲は、互いの異なるヴィジョンとそれぞれの素材の味が絶妙の親和性で混じりあった、いずれ劣らぬナイスで興味深い仕事になってます。「ボキボキに屈折したヘヴィネスとパワーの果てにスペイシーな広がりを見る」という方向で双方合意して美しくシメる、満腹満悦の30分。あーロックの未来はここにありました。最高じゃないか。

【本日のレビューその2:HIGH ON FIRE「BLESSED BLACK WINGS」】


ということで今日は豪腕責めといかせていただきます。史上最も危険なストーナーロック・アルバム「JERUSALEM」で伝説を築いたSLEEPのマット・パイクが、99年から率いている極悪ハードロックトリオHIGH ON FIRE。その3作目は、ベーシストの座に元MELVINSのジョー・プレストン、エンジニアにスティーヴ・アルビニを迎えて、2004年にRELAPSEからリリースされてます。買った!これだけ書けばもうレビューとしては充分なのですが、念のため続きを。あーもうカッコイイなあ、カビっぽいオールドスラッシュからトラディショナルなドゥーム/ハードロック、ファズ全開の70'sガレージまで、竜巻の如くグワングワンに撹拌されてサッカーボール大の雹の如くボコスコボコスコ降り注ぐという、前代未聞のスーパー絶倫・筋肉ロック!!CELTIC FROST、HAWKWIND、BLACK SABBATH、VENOM…と幾多の往年の名バンドたちが脳裏をよぎるわけですが、限界までキャッチーな例えをするならばこの際「SUBPOP時代のNIRVANA+『KILL 'EM ALL』の頃のMETALLICA+BLUE CHEER」でもいいです。ひしゃげまくった野太い絶叫ヴォーカルの終始衰えぬテンションがとにかく凄いし、クラッシュ代わりに全部ライドを使っている爆撃重量ドラムも壮絶、絶句。ヘッドフォンで大音量で聴き続けて今、本当に頭痛くなってきた気すらしてます。あーもういっぺんライブ見てジリジリに痺れ果てたい。

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