物色日記−2006年10月

※頻出語句解説はこちら
  10月31日
本日の収穫、御器所ディスクヘヴンにてATTACK「DANGER IN THE AIR」(ポンコツジャーマン伝説バンド!幻の1stのリマスター再発!!)、NEW RELIGION「NEW RELIGION」(QUEENSRYCHEクローンチャンピオン!何故かグランジ化した96年フル)、以下中古でUNHOLY「THE SECOND RING OF POWER」(フィンランドカルトドゥーム2nd)、OLD「THE MUSICAL DIMENSIONS OF SLEASTAK」(EARACHEクラシック!BIG BLACK+ザッパ+デス声な変態ユニットデビュー作!)、UNCANNY「SPLENIUM FOR NYKTOPHOBIA」(ダン・スウォノプロデュース&リードギターで参加)、RAZA DE ODIO「LA NUEVA ALARMA」(SADIST〜NECRODEATHのペソとSADISTの2ndで歌っていたザンナらによるイタリアンサイバーデス!)。あとAQUARIUS RECORDSから届いたTRETTIOARGIA KRIGET「TRETTIOARGIA KRIGET」(デジパックリマスター!)、MAGMA「BABA YAGA LA SORCIERE」(子供の合唱団が"M.D.K."を歌う衝撃のアルバム!!)。心なしかビックリマーク多めでいきました。

▼ライブ終わったばかりですがまたライブあります。今週金曜と12月、詳細はこちら!ワタクシ正直、国内のライブハウスシーンに関しては相当不勉強なので、共演陣も聴いたことのない方々ばっかりだったんですが、試聴してみると軒並みハイレベル過ぎてどのツラ提げて首振ってこようかとびびってます。行こうかどうか迷ってる方のために、発見できた試聴可能ページをズラッとリンク。

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 どちらの日も我々だけ浮きまくること請け合いっすね、むしろハードロック代表として振り切れてくるですね。温かいメロイックサインをどうぞよろしくお願いします。

【本日のレビューその1:MAGMA「BABA YAGA LA SORCIERE」】


フレンチプログレ孤高の怪バンドMAGMA。当サイトでも再三取り上げております。これはファンの間で「これ聴かずして…」的な語られようをしている95年リリースの珍盤です。ピアノ、ブラス隊、エレクトリックベース&ドラム、パーカッショニストと子供パーカッション隊、そして総勢約60名にのぼる子供合唱団に、往年の大名曲"M.D.K."を歌わせてしまったライブ録音!インストパートの圧縮、歌詞を若干平易な響きに崩す(コバイア語とフランス語のちゃんぽんな気もする)などといった改変以外は、非常に原曲に忠実にやらせてます。奇数拍子頻発で調性も複雑で、アンサンブルは入り組んだ多重構造で、唐突なリズムチェンジも当たり前な30分近くノンストップの難曲を、どれだけの労力を注いで子供達にマスターさせたんでしょうか…無垢な歌声によって曲のもつ神聖性が引き立って、ファンには本当にたまらない出来、というかもうプログレ云々を逸脱してただただ素晴らしい音楽作品となっています。大フィナーレ後の鳴り止まない拍手喝采にもひたすら納得。SEVENTH RECORDSのお買い物ページから全員今すぐ買ってそして泣いて下さい。

【本日のレビューその2:OLD「THE MUSICAL DIMENSIONS OF SLEASTAK」】


2nd「LO FLUX TUBE」を中古叩き売りワゴンで見まくるEARACHEの古株トリオです。BIG BLACKさながらのチープでバシャバシャした打ち込みドラムに、ジャンクギター、暴走シンセ(微妙に当時流行りのインダストリアルに感化されてるフシあり)、醜悪なデス声を乗せて脱線しまくる有害闇鍋ロック。ボアダムスに憑かれたJANE'S ADDICTIONか、泥酔中のルパート・ハインにリミックスされたザッパか、もうとにかくブッ飛んでます。真性でドン引き上等の荒くれぶり。シャッフル具合だけではなくてフレーズ自体の気持ち悪さも相当なもの。フュージョンや現代音楽も踏まえてるんでしょうか?リリースは93年ですが、この頃のアングラデスメタルは本当にやりたい放題で驚きます。BLACK DICEやANIMAL COLLECTIVEやマイク・パットン関連などを熱心に追う向きならこれは外せないでしょう。SKIN GRAFTやTROUBLEMANのオーナーあたりもきっとリスペクトしてるはず。

【本日のレビューその3:GUAPO「HIROHITO」】


DCのEL GUAPOではないイギリスのバンド。過去にも紹介しました。これはそこで取り上げたものより古い98年作。クリムゾン〜BASTRO風暗黒リフのミニマル展開と、FAUST的カットアップ、MASSACRE的八つ裂き感がごっちゃになってオルタナ/ポストロックの質感のもとにまとまった、今昔アヴァンロックの正統的な系譜の続きというべき音。後期HENRY COWやそのフォロワーのカーボンコピーに興じる凡百のレコメン・スタイルなバンドにはない眼力の鋭さがあります。そしてやはりイギリス産だからか、アメリカのマスロックバンドのような体力勝負っぽさとは異なるくぐもった暗さが全体をドンヨリと支配。あぶらだこやキリヒトに感化されたついでに日本を誤解したフレッド・フリスがいきなりMELVINSに喧嘩をふっかけに行くような破天荒っぷりがなかなか面白いです。筋金入りの変態さんは勿論ZAZEN BOYSのファンなんかにもオススメ。

  10月29−30日
▼29日はTHE LIFE AND TIMESジャパンツアー千秋楽の名古屋得三へ。TLATのリハ入り予定時刻に会場に着くとまだ御一行が到着したばかりで、こんな時「今日1番目に出るバンドの人です、今日はよろしく」という軽い挨拶すらどうやったらよいのか判らず立ち往生。ほどなく共同レコ発で帯同しているTHE UNDERCURRENTのバンも到着し、ギターの山崎さんと5月の東京以来の再会。俄然安心して場内へ。

 元SHINERのアレン(g./vo.)は、出力端子がステレオで二つあるBOSSのディレイからVOXとORANGEに分岐させて同時鳴らしというセッティング。普通にDIGITECHのリヴァーブとかIBANEZかどこかのあやしいグライコ、300円くらいのカラーパッチとかがバシバシ並ぶ足元にアメリカ人らしさを垣間見る。チューブアンプでモリッとやれば確かに微細な音ヤセなど誤差範囲ということか。ベーシスト氏はトレモロにダンエレの黄色い小っちゃいやつを使っていた!同じの持ってますがな。音出しでしきりにLED ZEPPELINやVAN HALEN("Unchaind"など!!)を弾くアレン、やはりあなたはハードロック育ちなのですね。曲であわせるとフロアにいる出演者から普通に歓声があがるほどの貫禄。

 続いてTHE UNDERCURRENT、NAHTとリハを済ませて自分らの順番が回ってきた頃には押しに押してて開場20分前。ギターの二人とも新機材導入後間もない上、普段の練習とまるっきり違う音量と場所で鳴らすということで多少調整に手間取っていると、「何か問題ありますか?あと7分で開場なので早く曲でやって下さい。」とPA氏に冷徹に畳み掛けられ、ろくにフルコーラス演奏も出来ず終了。そりゃトップバッターの若造共ですけどもさ。

▼ということで開場後もなかなか埋まらぬフロアに15分押しの登場で我々DOIMOI、新曲3曲含む計7曲やってきました。ありがとうございました。二日前に組み上がったばかりの足回りがおおむね好評だったようで安心です。これでJC-120があれば身軽にどこでも戦えます。

 しかしダンエレとムスタングという二人なので、演奏中のチューニングは結構えらいことになります。ということでUSA製の上等なブリッジとネックを早速注文しときました。PayPal万歳。チューニングを狂わせにくくて音楽的内容に支障のない弾き方というのも要研究ですな。

▼二番手はNAHT。以前見たときは大柄なサイドギター氏やらヴァイオリン奏者やらが参加してプログレメタル寸前のテクニカルロックと化してた印象ですが、今回はスッキリ三人にシェイプアップ。iPodやボンゴ(さすがのSONOR製)を導入して、ミニマムな編成でカラフルな演奏でした。現在の音楽的方向性としては、BURNING AIRLINESを日本に呼んで一緒に廻ったこともあるだけに、J. ロビンスの近年の作風に同調してかニューウェーブ的リズムアプローチのヴァリエーションでスタイリッシュに見せる感じの、思わずこうしてカタカナが大量に並ぶ感じの作風。東京じゃこういう雰囲気がまだ全然リアルなんでしょう。ギターヴォーカルのセイキ氏はやはりベテランという堂に入ったパフォーマンスで、高音でも乱れないヴォーカルはさすがです。

▼三番手は今回のツアーのメインその1、THE UNDERCURRENT。スタック2個積みが両サイドにそびえるセッティングからして猛烈な威圧感。その頂にはいかついHIWATTが黒々と鎮座。祈りを捧げるかのように絡んで伸びるオールドロッキンなギターリフと、クリス・スクワイアばりにゴッキゴキに歪ませたベース(そしてYESのTシャツ着用!)、女性とは思えぬ超パワーヒッティンなドラムとで、津波のような轟音の壁が圧倒的。お手軽な荒涼系ドシャメシャノイズとは含まれるものが全く違って、とにかく求道的でスピリチュアル。随所に挟まれるドゥーミーなユニゾンリフのフックも生で聴くとことさら強烈でした。基本的にオーディエンスをそう簡単には甘やかさないダウンテンポのゴリ押しで、それゆえラストの曲で大団円を迎えたときにはどこか聖地に辿り着いたかのような解脱感すら覚える。ライブパフォーマー然と振る舞って客をキャッチしようとか、ミスらない潔癖な演奏で技術的な溜息をつかせようとか、そういうモヤシ民間人くさい偏狭さなどどこにも見えず、ただ音楽に従って演奏する器になるというストイックなステージングは日本人としては本当に稀なものだと思います。

▼そして最後にTHE LIFE AND TIMES。地面から足が浮いたような不思議な響きのアルペジオを目一杯歪ませて、これまたダウンテンポなスピリチュアル・ロックを展開。ロック古来のアグレッションを統合してリパッケージするTHE UNDERCURRENTとは方向が似るようで微妙に異なり、シューゲイザー〜グランジ世代が練り上げた柔らかい歌心に、ポスト変化球な奥ゆかしい捻れを加えて体現せんとするかのよう。3人とは思えぬ厚みであると同時に、3人だからこそ可能な見通しのよさでもありました。

 …と思って見ていると、2曲目の途中あたりでベースが鳴らなくなり、トラブル元究明のため長い中断。運悪くベーシストが左利きだったためスペアも容易に調達できず、結局NAHTセイキ氏がもってきた接点復活剤でなんとか回復したのですが、その間のつなぎでアレンが何気なくつま弾いていたフレーズが、RUSHの"A Farewell To Kings"や"A Passage To Bangkok"(!)だったことは見逃しませんでした。やはりアメリカのこういうあたりの人達はRUSHやVAN HALENからセンス・オブ・ワンダーを分けてもらってきているのですね。LED ZEPPELINの曲をドラマーと合わせたりもして(ついでに素手ドラムソロを披露して「ミスター・ジョン・ボーナム!」と紹介されてました。やはり向こうのドラマーは足が違います)、却ってなかなかレアな姿が見られたのは不幸中の幸いというべきか。

 復活してからは調子も上々で、何事もなかったかのように熱の入った演奏。全弦1音下げで随時オープンチューニングも導入するギターの手元は近くでまじまじ見ても本当に自由自在で、ヴォーカルラインとつかず離れずの複雑なパッセージを腹話術師のように難なくこなしておられました。最後は最新EPラストに収録の名曲"The Sound Of The Ground"でググッグッと胸をえぐられ終了。

 ステージから一旦捌けたりせずそのままアンコール要求に応え、ツアー最終日最後のもう1曲、をやっている途中でまさかのベース再死。もう修復も諦めて早々とストラップを外し、サンキューといってステージを去ってしまいました。ホントかよ〜と騒然とする客に、手際よく浴びせられる客電とSE。聞いた話だと楽屋に戻ったメンバーは激凹みと怒りでちょっと大変なことになっていたそうですが、打ち上げでは気を取り直してTHE UNDERCURRENTとの対談(どこかに載るインタビューだそう)で楽しそうに盛り上がっていました。

▼やはりライブ活動にKYは大事だね。というしょうもない後味になってしまったのが残念でなりませんが、機会があるならまた万全状態のステージを日本で拝みたいものです。そして29日の収穫、アンカレ山崎さんが東京のCD屋でバーゲン段ボールから保護しておいてくれたMOLLY McGUIRE「LIME」。

【本日のレビュー:MOLLY McGUIRE「LIME」】


TRAINDODGEにも甚大な影響を与えたというカンサス産屈折オルタナバンドの96年作。デビューが91年というからSEASON TO RISKあたりと同期ですね。このアルバムはFAILURE〜YEAR OF THE RABBITのメンバーにして近年はICARUS LINEやCOPELAND、A PERFECT CIRCLEなどのミックスも手掛けるケン・アンドリュースのプロデュース。非常にガッツィーで若干メタリックな感触を持ちながら、グランジ世代らしい和声感と体温でまとまった、パワー・エモ・グランジの開祖的な音をしてます。快活で筋肉隆々だけどそれなりに色白なALICE IN CHAINSというか。SHINERSHIHADと並び評すべしですね。こんなものを今まで見過ごしていたとは…。恐るべきセンスとテクニックを持ちながら、金にはならなそうな頑固さで通しているあたりがまた最高。いくらこういう時代だったとはいえEPICリリースというのはなかなか凄い。おっ中盤でFAITH NO MOREばりのブチ切れ系チューンや「ANGEL RAT」の頃のVOIVODみたいなのまで飛び出しましたよ、大変!マストバイ!

  10月28日
収穫はなし明日ライブです!ひとつよろしくお願いします。

▼何ナニナニ、EXTREME THE DOJOのVol.16がSATYRICONCELTIC FROSTおおおオオッッ…!!!!死にそうです。人生の何と被ってもこれだけは行かねばなるまい。おおおおお。

【本日のレビュー:SHINER「LULA DIVINIA」】


THE LIFE AND TIMESの前身であるカンサス変則エモグランジ浮遊派(?)の開祖です。これは97年の2nd。久し振りに聴きましたがこんなにクソかっこよかったとは。形容しようにもこの音楽がどこから出てきたのか見当がつかなすぎて困ります。LED ZEPPELINの偏屈さとのれんや湯気のように揺れるギターワーク、JAWBOXの骨太な変則ガッツ、KING'S Xの奥ゆかしいヘヴィネスと裏道へ裏道へ回り込む歌メロ、そういう要素がポストグランジ世代のアメリカでミックスされて生まれ落ちてしまった、BARKMARKETと並んで(タイミング的には一歩遅れてですが)孤高すぎるヘヴィロックの新次元ですな。10年近くも前の作品を新次元というのもおかしいですが、未だ多くのバンドがこの圧倒的な完成形を標榜して到達せずにいるという状況を思えば当然。リリースから現在まで他のどこでも聴いたことのない音がここには満載で驚きます。ギターの色艶が主力を担うロックがお好きな向きならば、老いも若きも、グランジも何も興味なくとも聴いてみて下さい。

 そしてこのSHINERの中心人物アレン・エプリーの現在形がTHE LIFE AND TIMES。ヴェテランの貫禄と現役の覇気で素晴らしいライブを見せてくれることを確信しております。名古屋公演の模様は明後日あたりに更新される当日記のリポートをお楽しみ、にしないで直接見に来るといいです!!

  10月27日
▼久々にやりました。本日の収穫、今日からバーゲンのP-CAN FUDGEにて、まずは315円均一フロアからSCREAMING TREES「UNCLE ANESTHESIA」、STEEL POLE BATH TUB「SCARS FROM FALLING DOWN」、KINGDOME COME「IN YOUR FACE」、CHICAGO「18」(86年)、CHEAP TRICK「BUSTED」(90年)、以下全てNAXOSでLISZT「PIANO MUSIC VOLUME 1」、PAGANINI「24 CAPRICES, OP.1」、STAVINSKY「FIREBIRD/PETRUSHKA/2 SUITES」、BARTOK「PIANO MUSIC 4」、V.A.(?)「SWEDISH ORCHESTRAL FAVORITES」。そして1階通常フロアではAREA「CAUTION RADIATION AREA」、JULIE DRISCOLL, BRIAN AUGER & THE TRINITY「STREETNOISE」(リマスター)、THE ALLMAN BROTHERS BAND「EAT A PEACH」(リマスター)、NEIL YOUNG「NEIL YOUNG」、LEE KONITZ「SUBCONSCIOUS-LEE」。セシル・テイラーの「UNIT STRUCTURES」をまた安く発見して見送ったんですが、あれはRVGリマスターになってないんでしょうか?

ここからギタリスト日記です。いわゆるハイエンド・オーバードライブの類を、思い立って遂に購入してしまいました。比較的マイナーなTC ELECTRONIC社(デンマークのメーカーだとか)のVPD-1という製品です。基本的にはチューブっぽい上品で浅い歪みを得られる品のようです。ON/OFFのほかにブーストスイッチがあり(歪みの前で効くのでゲインが上がる)、更に簡素かつ的確なアンプシミュレータのようなものまでついてて(普通にそこそこ使える)非常に便利。その上軽くて小さいとくればもう何も言うことなし。ギター本体のPU出力の弱さのせいもあってこれ単体では歪みが足りないので、メインで使っていくつもりだったPROCO RATを手前に置いて割とガッツリ歪ませて、VPD-1はそのあとに色づけ的に足すことにしてみたら、これが大成功。RATはやはりジョギーーン…とどこまでもまっすぐ伸びる太いサスティンが魅力です。安いし、ツマミはでかいし、抜群に好きですRAT。

 ついでに重かったグヤトーンのパワーサプライを引退させて、電源は1SPOTというあやしい軽量小型アダプタを分岐させることに。そこに装着する予定のノイズフィルター(パソコンの電源ケーブルとかによくついてる小さい円柱みたいなやつです)は既に注文済み。日曜までに届くか!?基本的に自転車で後ろに背負って移動することを前提としたいので、軽いことは必須なのです。走行の振動で傷まないように段ボールを切って頑丈な専用ハードカバーも製作。あー買ったばかりのMXR MICRO AMPにエレハモMETAL MUFF、愛しのダンエレDADDY-Oよしばしさようなら。彼らも使い道はある奴らなので大事にしたいです。

【本日のレビュー:MICHAEL MANTLER「SOMETHING THERE」】


マイケル・マントラーはデビューして早くからカーラ・ブレイやゲイリー・バートンなどと絡みのあったトランペッター。「KEW RHONE」への参加でプログレッシャーにもその名が知られております。83年にECMのサブレーベル(?)であるWATTからリリースになっているこのアルバムでは、件のカーラ・ブレイ(pf.)のほかに80年代マイルスと連れ添ったマイク・スターン(gt.)、ジョージ・ラッセルなどイカれた知性派との仕事が多いスティーヴ・スワロウ(ba.)、そして何とPINK FLOYDのニック・メイスン(ds.)が参加!更にロンドン交響楽団を従えてえらいこっちゃな態勢です。ここからどんな音が出てくんねんと思いきや、微妙に想像通りな中身。脱サイケ以降のPINK FLOYDそのままの淡々としたリズムに、オケ隊が現代音楽風の謎なキメ・ラインを悠然と乗せ、マイク・スターンをヒュルヒュル泳がせ、マントラー本人は総本山よろしく仕上げのフレーズだけじっくりと吹いていくという。プログレ/わずかに前衛ジャズ/現代音楽/80年代ビーツの影がゴッチャになった映画音楽のスコアのようなものに仕上がってます。うーん不思議。リズムをシンプルにしないと生き残れないという80年代前半の強迫観念から挑んだものなのか、そんなものは関係なくただピンポイントでここが狙いたかったのか、なかなか察しかねますが、とにかく時代錯誤とも何とも言い難いユニークさが興味深い。DEVIL DOLLやMARILLIONの延長で聴くことも可能か。参加各メンバーの誰のファンが一番喜ぶかといったらニック・メイスンでしょう。

  10月26日
本日の収穫、バナナレコード・ジャズシンジケートにてMICHAEL MANTLER「SOMETHING THERE」、ART ENSEMBLE OF CHICAGO「A JACKSON IN YOUR HOUSE / MESSAGE TO YOUR FOLKS」、SUN RA「HELIOCENTRIC VOL.1」「HELIOCENTRIC VOL.2」。日本シリーズ、意外と見てます(今日で終わりましたが)。SHINJOは"Crazy Train"をその日の初打席入りのテーマ曲にしてるんですね。べべっ、べべっべべっ、アイアイァィ…カ〜ン!べべっ、べべっ、ギュイイィィ〜…となるあたりであっけなくフェイドアウトするんでほとんど意味わからんですね。それよりSHINJO自身が本当にオジーが好きなのか、どこまで好きなのか、いつから好きなのかが問題です。事によっちゃ個人的に株が上がりますので。

【本日のレビュー:OZZY OSBOURNE「BLIZZARD OF OZZ」】


言わずと知れた屈指のメタルアンセム"Crazy Train"はこのアルバム収録。長年在籍したバーミンガムのゴッドファーザー・オブ・ドゥーム・ロック=BLACK SABBATHのシンガーの座を元ELF〜RAINBOWのロニー・ジェイムス・ディオにバトンタッチし、QUIET RIOTのランディ・ローズ(gt.)、RAINBOWのボブ・デイズリー(ba.)、TOE FAT〜URIAH HEEPのリー・カーズレイク(ds.)らを集めて始動させたソロ名義での初リリースが81年のこの作品。リッチー・ブラックモアやウリ・ロートなどとも異なる角度からクラシカルなアプローチを持ち込みながらにして新世代コマーシャルハードロックのエッヂも踏まえたランディ・ローズのソングライティングに、キャラは強烈だが圧倒的にヘタウマなオジーのヴォーカリゼイションが乱暴にのしかかる、よく聴けばなかなか壮絶な塩梅の内容です。MXRの「DISTIRTION PLUS」でカコーッと歪ませた軽くてトゲトゲの体当たりギターサウンドが何ともレトロな風情。

 オジーのBLACK SABBATH在籍時後期は、商業的成功を望んでか、ダークでおどろおどろしいというバンドのそれまでのイメージに反するような内容のアルバムを何枚か作って、結局ファンにも非ファンにも受け入れられず失敗に終わったという経緯がありました。オジーがこうして単体で離脱して完全にアイドル化して、心置きなくメタルの様式美を拓いていった本家と真逆の道を行ったのは、双方にとって有益な選択であったといえましょう。結果本家はリフマスター・アイオミの魔力が復活してより強力な信奉を集めたわけですが、じゃオジーはアイドルになって何をやってたのかというと、ジャンキーまっしぐらになりながら相方のギター弾きに全部作らせとったんですね。ランディはごく当然の如くQUIET RIOT時代と変わらないポップなヤング・ロックを書き下ろして、それをまっとうに歌うオジーも意外に変じゃなかったと。それだけならもっとぬるーく終わっていたのかも知れませんが、このアルバム(とその次)が切ないのは、前半でも少し触れたとおり、クラシックギターの素養があるランディが何曲かでロック界に類を見ぬ悲愴な泣きを振りまき、また実にワイルドでユニークなリードプレイを多数残し、そして悲運のセスナ事故で夭逝してしまうところなんですね。

 オカルティックで重厚なムードをナタで八つ裂きにするかの如く荒々しい速弾きをブチかます"Mr. Crowley"(特にアウトロ壮絶!!)は未だにメタラーの間で語り草になっていますし、トッド・ラングレンのバラードかと思うくらい優しく柔らかい"Goodbye To Romance"はカテゴリの枠を超えてオールドロックの名曲として記憶されるべき逸品。またラスト前の"Revelation (Mother Earth)"では20年早くゴシックメタル的なダークであやしい耽美性を見せています。次作タイトルトラック"Diary Of A Madman"にも受け継がれるランディのこのオカルトセンスは本当に孤高で、未だにこの系譜に続くバンドは思い当たりません(強いて言うならSAVATAGEやCANDLEMASSくらい?)。その中にあって"Crazy Train"はとってもノーマルな曲ですが、メインリフの強力すぎるツカミや随所にフィーチャーされる破天荒なリードギターが「時代を作った1曲」としての重みを未だ伝え続けております。RHAPSODYやLAMB OF GODみたいなバンドから入る最近の若いメタラーはこういうのをわざわざ通らないのかも知れないけど、人生の中でいつかは聴いてもらいたいですね。ヘヴィメタル/ハードロックの心を知る1枚かと思います。

 ちなみにランディを乗せて墜落したセスナを操縦していたのは、リッチー・ブラックモアが「こいつの運転する車には乗りたくない」といって乗車を拒んだ移動車の運転手だったそうです。「炎」読者だけが知る事実。まだ生きていたらどんな音楽をやっていたんでしょうね。この人とクリフ・バートンが死んでいなければ、メタル界は今とすっかり違うものになっていた気がします。

  10月25日
本日の収穫、米アマゾンのマーケットプレイスで購入のTHYMME JONES「WHILE」。少々値は張ったがレア盤ゲット!!と思ったら、昨日見つけた本人のオフィシャルで10ドルで売ってました。がーんががーんががーん。

▼前回部屋の大掃除をしたのがいつだったか、この日記で調べたら(サイト内検索とても便利です、自分のことをグーグルに教えてもらえます)たった4ヶ月前でした。長いもの(ケーブル類)、薄いもの(中古CD屋の袋やその中に入っているチラシなど)、薄くて透明なもの(CDのビニールカバー)はちょっと広がるだけで簡単にカオス感を醸し出すので厄介ですね。ということはちょっと整えれば簡単にカオス感が消えるはずなわけですが、何せカオスなのでどこから手をつけてよいのかにわかに分からなくさせるのですよ。更にその合間に散らばっている小さいもの(謎の小銭、ピックなど)とのカクテルがめっぽう強力で、こうなると完全に前後不覚。

 つまり、「いろんなものが散乱しすぎ」というだけの話でした。

【本日のレビュー:SAMURAI「SAMURAI」】


サムライというかヤクザのカップルのジャケが強烈。WEBというバンドを母体とするイギリスの7人編成ジャズロックバンドの71年作です。後にGLEENSLADEに行くデイヴ・ローソン(key.)がおります。手元にあるのは現在AKARMAから出ているリマスターではなく、ボーナスで5曲のライブ音源が入った未リマスターのオーストラリア盤。とにかく淫靡なジャケのイメージがしっかり音にも反映されてるわけですが、それだけではなくかなりカロヤカでオシャレな身のこなし。アコギ+ラテンパーカッションでSTEELY DANよろしく屈折したコードワークも乗りこなし、かつブラスやフルート、ヴィブラフォンも入れてプログレな感触も。ほんの時々クリムゾンばりの不穏&重厚なリズムも顔を覗かせます。「潔癖にならず程良くダサい天然おしゃれレトロ」といった線でまとめられるでしょうか、とにかく最高のシブさです。あまり例えようのない感覚。もろクラブノリなぬるい奴は嫌いだがそれなりに達観していて気持ちよく酔えるヴィンテージロックはないものか、という向きには大・大推薦。むちゃかっこいいと連呼したい、心に残る秀逸盤です。AKARMA盤で容易に入手可能ですのでどうか今すぐポチッとどうぞ。

  10月23−24日
収穫はなし。また部屋を大掃除。これで人を呼べる。掃除しがてらCD裁判も同時開催し、また数百規模の身柄移送者が出そうな気配です。ピンと来てたものが来なくなるのはどういう何なのか、わかりませんが、とにかくいろいろ網羅しようという欲が薄くなってきたのは顕著に実感。「楽しんで聴ける音楽」と「買って持つべき音楽」(必ずしも「頻繁に聴く音楽」でもない)の見境が年々シビアになっております。量が増えてタイヘンだから大物だけに絞って小粒はオミット、とかそういう単純な線引きでもないんだな。愛とか心とかの問題と思います。

▼でそうやってCDを減らして、今欲しいものは機材とTシャツです。在イギリスのメタル系大手ディストリビューター・PLASTIC HEADにたった今こまごまと注文してきました。

【本日のレビュー:YOU FANTASTIC!「PALS」】


SKIN GRAFTの隠れスーパーバンドの17分1曲というEPです。97年リリース。メンバーは泣く子も黙る元祖最強ブルータルポストコアDAZZLING KILLMENのギター&ベースと、最近紹介したばかりのCHEER-ACCIDENTの中心人物シム・ジョーンズ。ゲストでヴィオラやエレクトロノイズが入るほか、シム氏は得意のトランペットも披露。適当なようで不穏なコードをてれてれと鳴らしながらスローテンポでじわじわとテンションを上げ、しまいにはPCによってリアルタイムでぐるんぐるんに重ねられたドラムの壮絶なノイズで超新星爆発に至り、寝息のような静かなアウトロで終結するという、まあ今となってはノイズ系大曲の典型的なパターン。しかし不協和音の質や轟音の質がやはりそのへんのカップラーメン的くされ轟音バンドとは圧倒的に違う。際限なく手数を増していく壮絶なドラミングといい、ピーク時の密度の物凄さといい、クリムゾンの"Starless"の失語症ヴァージョンとでも言いたい感じです。嫌がらせ音楽にアートを見出せる向きなら楽しんで頂けるかと。

  10月22日
収穫はなし。羽を乾かしている最中のカワウはかわいいなあ。

▼DIGITECHのホームページでこんなものを発見。絶対使わんけど思わず欲しくなります。スコット役を欲しているANTHRAXのコピーバンドが名古屋にいるなら今日これとつけマユゲ買って明日加入します。

【本日のレビュー:GROUNDHOGS「SPLIT」】


紛らわしいタイトルですが別に誰かとのスプリットではありません。イギリスのハードブルーズバンドの71年5th。英国産ホワイトブルーズの系譜を汲みつつ、派手なアーミングやワウを駆使するなどジミヘンにあからさまに感化されまくっていて、コメカミから掴まれてグワングワンと振り回されるような酩酊感が強烈。そのくせ何故か1曲目から4曲目がタイトルトラックのパート1〜4ということになってたりと、当時全盛のプログレも軽く意識してるようなフシがあり、どうにも一本の軸にまとまらないあたりがいかにも初期ハードロックのマイナーバンドやな〜という風情。再発元は意外にもREPERTOIREではなく、何とEMIがかっこよくリマスターしてくれてます。MOUNTAINとかよりもっとえげつないやつが聴きたいという人に激しくオススメ。破壊的なノリはほとんどHIGH ON FIRE寸前。QUEENS OF THE STONE AGEもFU MANCHUも立つ瀬なしですわ。B面アタマを飾る"Cherry Red"かっこよすぎ!!!

  10月21日
▼やることある、時間ない、と思いながら水洗トイレの如く時間を無駄に流すのが得意な私です。収穫はなし。かなり前にCDを大量に注文して未だ全部届かないAQUARIUS RECORDSから一ヶ月前に受信したはずの「バックオーダーの品が入ったよ」というメールを見返したら、"let us know if you'd like us to send out what we have"との1行があったことに今更気付き愕然。英語わかんなくて気付かんかったっす、まだとってあるなら今から送って下さい、と必死の作文で返信したら「いやいや思ってるより書けてるよ、そのへんのネイティヴの客とのやりとりより全然意味わかるよ」みたいな返事が来て嬉しかったので記念に書き記す。ちなみにここでも今トップページの一番アタマにCHAVEZの再発が紹介されてますね。愛の長文レビューに泣ける。

【本日のレビュー:BELLADONNA「SPELLS OF FEAR」】


先日のLOUDPARKは盛況に終わったようで、10ウン年振りにオリジナルメンバー(厳密には幻の第1期がありますが)で日本の土を踏んだANTHRAXもメタルファンのハートをガッチリ掴んできたようです。やはり日本のファンはジョーイ・べラドナが歌ってた頃の方がお好きなようで。そのジョーイ、「ATTACK OF THE KILLER B'S」を最後にバンドを離脱してから、新バンド・BELLADONNA名義でアルバムを作っていたことは今となっては殆ど知られざる事実。しかもリリース当時ビクターから国内盤も出たデビュー作(本国ではMAUSOLEUMリリースでBGM配給)のあとに、ひっそりと2枚目が作られていたことはANTHRAXファンですらご存じない方が多いでしょう。ジョン・ブッシュ支持派の私も実は大のジョーイ好きなのであります。

 このBELLADONNA、1stには元MAMMOTHのジョン・マッコイや、のちにANTHRAXのツアーギタリストに引き抜かれるポール・クルックらとジョーイとが作っていた楽曲を全く別のメンバーで録ったものが収められておりまして、屈折したモダン(当時)&ヘヴィ・リフにジョーイのメロディックなヴォーカルラインが乗ったなかなか面白い音楽性でした。また録音時のメンツで新たに作った何曲かも出来が良く、センスあるなこのギター弾き…と思ってたのですが、この2ndではどういうわけかメンバーを一新。見事にFIGHTの成り損ないというか、締まらないPANTERAというか、そんな内容になってしまっています。しかし今となっては懐かしいこの塞ぎこんだ90'sテイスト、「100からの失望」よりも「0からの発見」のつもりで改めて対峙してみると、ジョーイの歌唱は衰えてないどころか昔よりパワフルになってるし、まあシンプル&ガッツィーでそれなりにかっこいいし、いいじゃないいいじゃないと結構喜んで聴けました。やたらとスムースにオーヴァードライブして覇気に欠けまくるギターの音色が恐らく最もたるマイナス要素ですな。それ以外は悪くない気すらしてきました。グランジに寛容なジョーイ・ファン(難しい限定ですが…)は探してみて下さい。

  10月18−20日
▼3日とも収穫はなし。たまに人に貸すCDを選んだりするときなどにうっかりTHIS HEATの1stを聴いてしまうと、バンドマンなんてヤメて、持ってるCDも5分の4くらい処分しようか、と本気で思いかけます。更新を怠っていた3日間で一番印象的だったのが"Horizontal Hold"のイントロ。なので、所持CDから選りすぐりの80枚くらいを大学時代のサークルの後輩の皆さんに売却してきました。

 そしてその場で何となく宣伝しそびれてしまったライブ2件!

10月29日 (Sun.) 名古屋 今池得三
stiffslack presents THE LIFE AND TIMES JAPAN TOUR 2006
18:00開場 / 18:30開演(注意!)
w/THE LIFE AND TIMES
THE UNDERCURRENT
NAHT
前売り 2,800円 / 当日 3,300円

11月3日 (Fri.) 名古屋 新栄クラブロックンロール
「SWAN SONG COUNCIL vol.5」
18:30開場 / 19:00開演
w/about tess
KOI
あたしよしこ
bronbaba
マヒルノ
前売り 2,000円 / 当日 2,300円

 チケット取り置き歓迎中です、直メール掲示板で御名前と枚数をよろしくお願いします。この前CDを買っていった君ら(意外に若い人がSAVATAGEとかに興味を示していってくれたのが嬉しかったですよおじさんは)、今からでもCD代20%キャッシュバックするからな!

【本日のレビュー:ALEX SKOLNICK「GOODBYE TO ROMANCE: STANDARDS FOR A NEW GENERATION」】


ということでSAVATAGEで1枚だけ弾いている元TESTAMENTのリードギタリスト、アレックスです。HM/HRのスタンダードを大真面目にアコースティックジャズ/フュージョンに移植するという企画の第1弾。先月紹介したのが2作目でした。さてこのアルバム、のっけから高速スウィング&ちょいラテンな"Detroit Rock City"(KISS)で景気良くスタート。このヴァージョンは大変良い!ソロでは思わず得意のメタル風中近東スケール高速降下もかましてくれます。AEROSMITHの"Dream On"はブラッド・メルドーよろしくポストロッキンな変則8ビートでしっとりダークに仕上げ、SCORPIONSの"No One Like You"はあの哀愁をほんのり南欧な泣きに転化。タイトルトラックにもなっているオジーの"Goodbye To Romance"はそのままキレイに慎ましく。もともとメロディックな曲を多く選出しているせいか、2作目よりもドップリ酔わせてくれる出来ですな。演奏も自然体度が高く、時々プルプルプルッ!と走る速弾きにもニンマリ。あ、枯れ泣きワルツ仕立ての"Still Loving You"も出てきたけどアレックスはSCORPIONSファンだったんでしょうか?知らなかった。オリジナル2曲とTHE WHOなんて意外なチョイスも挟んで、最後はBLACK SABBATHの"War Pigs"で例のキメを楽しみつつ長いソロを弾きまくってシメ。こりゃ普通にアコースティックフュージョンの秀逸盤として、原曲を知らないジャズファンにも聴いてもらいたいくらい良い演奏/アレンジです。元ネタ知ってる人ならなおのこと。自主リリース(SKOL PRODUCTIONSなるところから出してる模様)っぽいので入手困難になる前にゲットをば。

  10月17日
▼(昨日の続き)しかしせっかくマルフク券があるので本日の収穫、バナナ名駅店にてYOU FANTASTIC!「PALS」、GROUNDHOGS「SPLIT」(リマスター)。

▼ここのところにわかに燃え盛ったヤフオク熱と、CD購入で培った海外通販術とが合体して今、「海外から機材直買い」という人間として最も危険な領域に踏み込みそうです。ダンエレのレスリーシミュレータなんか本当に要るのか?そのオートワウはデカ過ぎないか?うーんよく聞こえませんな…

【本日のレビュー:A CANOROUS QUINTET「SILENCE OF THE WORLD BEYOND」】


以前紹介のデビューEPに続く1stフルは96年にNO FASHIONから。相変わらず潔く爆走する正統派スウェディッシュメロデスのカガミです。プロデュースが前作はダン・スウォノ(EDGE OF SANITY)で本作はピーター・テクレン(HYPOCRISY)というからなかなか鳴り物入りですな。キリキリ刻む16分ハーモナイズドリフ、突発的に挿入される3拍子展開、エトセトラエトセトラ、IN FLAMESやDARK TRANQUILLITYの着想にそのままあやかったどこまでも類型的な音楽性が今や懐かしい。そんな中積極的にブラストや超高速ツーバスを導入してやたら迫力があるのがこのバンドの良さか。しかしこういうスタイルはもう95〜96年頃に完全に完成しきってますね。先の見えない膠着感もいくらか。それを今更叙情なんとかと称して蒸し返すニュースクーラーに新しさはないと断言できます。(最近は変態激テク系に押されてもう下火なのかも知れませんが。)近頃のスクリーモ系でも味わえない慟哭に次ぐ慟哭の激情メタル、たまにはどうですか。

  10月16日
本日の収穫、バナナ栄店にてBLACKSTAR「BARBEDWIRE SOUL」、CLEARLIGHT「FOREVER BLOWING BUBBLES」。しばらく行かないうちにバナナは全体的に少し高くなった気が。この前の四ツ谷店でも思いました。絶対わかってなさそうなマイナーメタルにとりあえず1365円がついてたりして、品自体の面白さはある程度保ってるんだけど掘り出し物(値段的に)不在という感じ。サウンドベイの謎の継続的な珍品大量入荷に対抗して買い取りを頑張った結果なのか。クラブ系とオヤジ系でいよいよ住み分けが激しくなってきましたね。

【本日のレビュー:CHEER-ACCIDENT「YOUNGER THAN YOU ARE NOW」】


当欄にて執拗に激推し、ジム・オルークも激賞のシカゴ産ディープ・プログレ・ポストロック・グループの初期音源集です。81年から84年の録音を集めたものだそうですが81年てあんたら幾つやねん(正式デビュー作が91年)。リアルタイムのプログレ〜ポストパンクから地続きで現在の音楽性に行き着いていることがバッチリ伺える内容となっており、これがもう大変グレイトです。当時まさに旬なNEW YORK GONGにTHIS HEAT、AKSAK MABOULその他世界中のバカレコメン、FAUSTやGURU GURUのようなクラウト・ロックまでも徹底的に私物化した、ローファイテイストにして激テクな諧謔アウト・ロック。意外と真面目にプログレ然とする場面ではさながらイタリアあたりの田舎出身のマイナーバンドのような風情をたたえ(シム・ジョーンズの生ピアノやトランペットが効いてます)、かと思えば奇声をカットアップしたり延々ドラムソロをバックに喋り倒したり、とにかく半端じゃない音響的冒涜が続く。既存の音楽の解体/再構築の解体作業真っ最中て感じです。音楽のアカデミズムというものをしっかり睨みつけた上で極めて非アカデミックなやり方でそれらを踏みにじった、どんな変態もここまで変態だったことはないとすら思わされる、ある意味空手バカボンや初期ANAL CUNT的な衝撃。ここからあの薫るロマンティシズムを身につけてスラッと大人になったシム・ジョーンズは大した器です。

  10月14−15日
収穫はなし。朝晩冷え込み昼暑いこの微妙な時季、ベタに風邪気味です。で食後ウトウト〜と寝入っていたら、その間にオークションで入札中の案件が終了時刻を迎えており、私の控えめな最高入札額プラス250円でさっさと横取りされてました。冴えねーっくしょい。

【本日のレビュー:VED BUENS ENDE「WRITTEN IN WATERS」】


ULVERやSATYRICON、DODHEIMSGARDなどに関わるメンバー3人によるノルウェーブラック・オールスターなプロジェクト。95年のデビュー作をリミックス&リマスターして2002年に再発したもののようです。いわゆるノルウェーブラックの典型とは大きく異なる、かなりプログレッシヴなスタイルでびっくり。ヴォーカルは普通声中心で、大胆な不協和音や変拍子をガンガン駆使した、CADAVERアラン・ホールズワース的浮遊感を身につけたかのような前代未聞の魑魅魍魎オカルティック・テクニカル・ゴシック・アート・ブラックに。初期MESHUGGAH+初期BRAID+初期JUNE OF 44などと無茶な例えもしてみよう。(あながち無茶でもない!)これは物凄ーく変です。手直し済みのプロダクションは、原音をいじり過ぎることなく今日的なレンジ感でバランスを取った秀逸なもの。古臭い風情は求めるべくもありませんが逆にキレイになり過ぎでイヤってこともないと思います。コアで寛大なブラックメタラーは勿論、近年どんどんメタル寸前に寄ってきた過激派マスロックがお好きな向きにも大推薦。CANDLELIGHTなんで流通も大丈夫だと思います。あっほら

  10月13日
本日の収穫、バナナ金山店にてSAMURAI「SAMURAI」、サウンドベイ金山にてRUPET HINE「UNFINISHED PICTURE」、LARD FREE「LARD FREE」、LA DUSSELDORF「LA DUSSELDORF」、JADED HEART「INSIDE OUT」、FORTUNE「FORTUNE」。先日見たALOHAでプログレの素晴らしさを思い出して以来、すっかり心はプログレです。

【本日のレビュー:LA DUSSELDORF「LA DUSSELDORF」】


言わずと知れたNEU!の後身。基本的に何も変わっちゃいませんね。反復するビートを死守した上で、更にヴァリエーションを加えた状態といいましょうか。前半2曲はASHRAがTHE CLASHになったかのような、満面の笑顔でスクワットを半日くらい続けるみたいなテンション。いつ途切れるとも知れぬこの危険な多幸感こそジャーマンロックの醍醐味です。対して後半2曲はシンセやアコギ主体でゆる〜く通してて、こちらはCLUSTER化したニール・ヤングか。とても大味なフォークトロニカの原始胚。MARUMARIとかモロこのあたりからの派生だな〜と思わされます。それにしてもこれの録音が75年ってことで、ポストパンクのポの字もない時代によくもまあロックをこれだけズタズタに解体しとったなあと、思いつき一発で道を拓いてしまうジャーマンロッカー達には畏敬の念が絶えません。

  10月12日
本日の収穫、もの凄く久し振りのバナナ四ツ谷店にてPATTO「PATTO」、FLASH「OUT OF OUR HANDS」(ex.YESのピーター・バンクス在籍)。あと2枚、バート・ヤンシュの5枚目のソロというやつのリマスターと、セシル・テイラーの58年頃のCONTEMPORARY録音盤も試聴して、悩んだ挙句絞って太字の2枚になったんですが、店員には「背伸びして試聴してみたがる割に趣味悪い奴…」とでも思われるのでしょうな。OJCものは見つけただけ買っててもキリないし、リマスターって逆にそれで揃えなきゃいけない気がしてプレッシャーになる(よっぽど心酔してるわけじゃない人ならば未リマスターで安く揃えたい)し。1365円という至極適正な価格がまた微妙。それより多少世間から疎まれてるくらいのやつの方が、救出してあげようという気持ちになります。ひと言「天の邪鬼」と言いたくないという天の邪鬼、病気っすな。

【本日のレビュー:PATTO「PATTO」】


割とたまに見かける、REPERTOIRE再発のVERTIGOもの。70年の1stです。シンガーのマイク・パトゥは79年に喉頭癌で亡くなってるとか。そんな彼のダーティなオヤジ声が炸裂する、フォーク/ジャズロック/サイケが渾然一体となった、「アート・ロック」としか言いようがないこの時期の英国独特の流動体ロック。ジミヘン・リスペクトな感じでグワングワンと弾き殴ったかと思えば、オシャレコードを颯爽と乗りこなして軽妙にスウィングしたり、MAKE BELIEVE級の数えられない変拍子をもってきたり、相当侮れません。「ロックがどうなるかわからない」という空気の中にあった世代ならではの真なる自由。今ではこういうミクスチャーはもう体現不可ですね。しかもオーソドックスなブルーズロックに腰まで浸かった状態で無茶しようとしてるから、何をやっても下味がしっかりして薄っぺらにならないのが良いです。体当たりなジャケに怯まず買ってみて下さい。

  10月10−11日
収穫はなし。最近の流行はこうです。「気になる品物の売値相場をヤフオクで調べる」「ついでに引っ掛かった面白そうなものに興味を惹かれる」「それを詳しく調べる」「調べた結果、そのまま楽天などで普通に購入する」。これダメです、勝てません。何か所有しておいた方が良さそうなものを発見したときはその場で回収すべし、という、長年の中古CDバイヤー生活で培われた散財能力が今、機材に、履き物に、遺憾なく発揮されている次第です。エイメン。

【本日のレビュー:MAUDLIN OF THE WELL「MY FRUIT PSYCHO BELLS... A SEED COMBUSTIBLE」】


昨日立ち読みしたユーロロックプレスで、現在TZADIKからリリースのあるKAYO DOTの前身バンドであったことを知り、しばらく前に買ったのを聴き返してます。男女ヴォーカル、専任トランペット、クラリネットなども兼任するツインギターと、合計6人の大所帯バンドです。多分アメリカ。THE 3RD AND THE MORTALCHEER-ACCIDENTVOIVODMASTODON、MATS & MORGANを足したような…と書いたら分かってもらえるでしょうか、無理っすね。とにかくそんなアンビエント展開ありのプログレッシヴ・ポストロッキン・ドゥームデスなのです。壊れ方がかなり独創的で、「いわゆる変態」のトレースに全然終わってない逸材。1曲たりとも同じ試みをやることがなく、どこへ伸びるかわからないグニャグニャ系です。系譜としてはザッパの流れなのかも。メタル的特徴を多く備えてはいても、エキサイトメントのツボが本質的に異なってるので、規格外の音を好む非メタラーにもばっちりオススメ可能。プロダクションが雑なのだけが惜しいですな。

  10月9日
▼いい天気でした。本日の収穫、突如赴いたハードオフ高針店にてSATYRICON「THE SHADOWTHRONE」。その向かいのとんかつ屋「かつ雅」おすすめです。

【本日のレビュー:ALOHA「SOME ECHOES」】


先日のライブで捕獲してきた最新アルバムです。このバンドを最初に聴いたのは2nd「SUGAR」で、DIZZY MIZZ LIZZYみたいなグッドメロ・エモロックサウンドがなかなか良くて気に入ってました。そこから4年、えらい変わりようです。もともとヴィブラフォンをフィーチャーしてたはずがシロフォンに替わってて、ギターがグッと減りシンセが台頭。POLYVINYLのレーベルカタログにも雑誌のレビューの引用で「初期GENESISにインスパイアされた…」と書かれるほど、思い切ってドリーミー・プログレ・ポップ化してます。妄想世界をフラつくかの如き不思議な転調、速い分散和音でややクラシカルに装うバッキング、変拍子や変則パターン多用なうえにフィルではドドババッ!と無茶に突っ込むドラム、チープに尖ったギターサウンド、そこにエミュレートされたメロトロンが鳴ればもう疑いの余地はなし。ジェントルに翳るヴォーカルの節回しにもピーター・ゲイブリエルの幻影がありありと。といってもINSIDE OUTやMUSEAからリリースされるようなのとはやはり決定的に感触が異なり、アンサンブルづくりやテンションの面でしっかりと2006年のアメリカン・インディ・ロック然たる方向に仕上げてます。SPOCK'S BEARDあたりが上手いことBEACHWOOD SPARKSやIT ER PATのようになれた感じというか。ちゃんと新鮮。ともかくSTACKRIDGE+スティーヴ・ハウ(YES)+トニー・バンクス(GENESIS)+ティム・バックリー?な3曲目"Your Eyes"がキラーっす。

  10月8日
収穫はなし。寝そうになりながら26時も回るほどの深夜に書いた文章を翌朝落ち着いて読むとなかなかびっくりします。マメにあとから加筆訂正したりしてます。夜勤バイト時代から(正確にはそれを辞めた直後に)散々思っていたことですが、実りある生活に最も重要なものは何をおいても睡眠すね。

おととい到着したダンエレの59DCを早速スタジオで使用。いいじゃないっすか。結局METAL MUFFは極度のハイゲインでないと中高域のパカ〜としたダサい成分が目立ってしまって使えないことが判明(低音弦でジャリジャリとスラッシュリフを刻んだりするには最強なんですが…)、しかもシングルコイルPUとの相性もあんまりだし、2万も出しておいて勿体ないけどやっぱりもともと愛用のRAT君に戻します。ブーストとしてこれまたダンエレのDADDY-Oを常駐させるとそれなりに中低域にガッツが出そうなので、あとはJCでもヤマハでも何でも来いですわ。リード用には今日到着したMXRのMICRO AMPを挟むとして、ギター本体まで含めてトータル6万程度のチープな装いでようやく決着です。そんなんでいいの?美容液は?乳液は?ガビガビに…と心配されたいっす。いいえこれ1本で。

 お、MICRO AMPのページにこれを使用している有名プレイヤーのリストがありますね。ギーザー・バトラー(BLACK SABBATH)やジョン・ノーラム(EUROPE)などに混じってGRIM REAPERのギタリストが何故…!そこは売りになるのかいダンロップさんよ。

 以上、趣味の談話でした。すいません。

▼モンテールに続いてリスペクトしている製菓会社はチロルチョコ株式会社です。昨日10個入りの詰め合わせを買ってライブ見ながら食べてたら、全部が全部完成度高くて驚きました。

【本日のレビュー:GRIM REAPER「FEAR NO EVIL」】


NWOBHMには人並みに疎い私が愛好する数少ないバンドです。シンガーのスティーヴ・グリメットはその後ONSLAUGHT〜LIONSHEARTと渡り歩いたことで有名。今は何をやってんでしょう。GRIM REAPERは84年から87年までの間に3枚のアルバムをリリースしていて、これは真ん中の2nd。ローファイでガタガタだが漲る気迫がハードコア的ですらあった1st「SEE YOU IN HELL」、スッキリ洗練されて勇壮な美旋律を堪能できる3rd「ROCK YOU TO HELL」に挟まれたこのアルバムは、良く言えば両者の貴重な折衷点、悪く言えばどちらにも振り切れない中途半端な立ち位置にあるわけですが、品質自体は一貫して落ちることがありませんね。3枚のうちどれか1枚を選ぶとしたら後回しにされがちというだけで、単発で鑑賞すれば全然カッコイイです最高です。何と言っても単純なメロディを暑苦しく歌うスティーヴ・グリメットの太いハイトーン!ロニーを少年声にしたような稀代の逸材。そして当時まさに旬にあった「メタル的な音」をビット数低めにデフォルメした直線的なリフの数々。鮮やかな転調もかっこいい。JUDAS PRIESTにもっと泣きを足した感じなんでしょうか、とにかくシンプルなのにメタル・ハートを即効でがっちり掴みます。マイナーキーにのせてサビでRed!Hot!Rock'n'Roll!と叫ぶ5曲目、タイトルも"Rock'n'Roll Tonight"、ここまでやられりゃ充分神です。神経衰弱の如く全曲同じですが、メタルの正統派の何たるかを手っ取り早く知りたい人は思い切って買ってみて下さい。

  10月7日
収穫はなし。今日は二階堂和美&初イルリメ!を目撃しに、はるばる春日井は名古屋造形大学へ行ってきました。早めに着いたら普通にのうしんとうがリハをやっていて少し見てしまった。時間が余っても芸術大学の学祭というからには見るものに困ることはないだろうと思って行ったら、展示や発表の類はまるでなし。そのへんの町内の夏祭りの如く食べ物か古着の出店が立ち並ぶだけで、ほとんどステージでのイベントがメインであるようでした。

▼ということでまずお目当てその1の二階堂和美。強風吹きすさぶ中(ASANAの人がジョークでPINK FLOYDの"吹けよ風、呼べよ嵐/One Of These Days"を引き合いに出してたけど客の大半はキャッチしてなかった模様…)、寒そうな服でしかも例によって裸足。状況がどうでもあれが正装なんですね。昨年暮れに見たときは、顔芸が激化してやたらエンターテインメント色を強めたステージになってましたが、今日はごく正統派なパフォーマンスで良かったです。

 彼女を評するとき、大抵真っ先に声のことが書かれますが、名曲づくしの人であるというのも特筆したいところ。今日は久々に「また おとしましたよ」収録の"時が流れても"が聴けた…のに、長い休符のたびに遠くのけたたましいDJの音が被ってきて非常に邪魔だった!!みんなそっちの方向いて迷惑がってました。やたらソロが長いバージョンになっていた"今日を問う part2"はテンション上がりまくりで圧巻。わざとっぽい歌詞にやや違和感があった"Lovers Rock"もこちらが聴き慣れたせいか、本人が歌い込んでいるお陰か、今日は普通に大真面目な直球として楽しめました。

 ゲスト満載のアルバムが出たあとで改めて単身弾き語りのライブを見たわけですが、やっぱりこっちの方が凄味が出るなーと思います。声がオーケストラでギターが手すりみたいな人ですから。他人の敷いた枠組みに合わせず自由に上がり下がりをコントロールしてくれた方が俄然出るものが出ますね。またそういうアルバムを是非作ってもらいたいところ。

▼日が傾くにつれどんどん寒さが増して、しかし温かい汁物なども売ってないので、学祭にまで来て何と自販機のカップラーメンを買ってありがたく暖をとるという奇跡的な展開になりつつ、GUIROを挟んでお目当てその2のイルリメ登場。まだ1曲目を決めかねてるからレゲエ、スカ、チャチャチャのどれがいい?とおもむろに客に問いかけ、チャチャチャに決まると司会の紹介からやり直して再登場という手の込んだ(というか適当というか…)幕開け。LP完全垂れ流しに合わせてMC&ときどき歌を被せるのみという原始的な手法ながら、関西ノリのまくし立てで有無を言わさず場を自分のものにする強烈な求心力をいきなり発揮。

 2曲目以降は肩にかついだサンプラーをひょいひょいと器用に扱いながら、どこまで出まかせでどこから決まってるのか判らないラップを淀みなく速射。おお確かにロックにはない生命感と自由。ジャズとヒップホップとの親和性が高いというのも、表層的な特徴の話だけじゃなくてこういうレベルでの出来事なのですね。大阪人らしく随所に笑いを盛り込みながら、本人の自然なキャラクターと地続きなパフォーマンスで立ち見の観客大勢を魅了し、最後には二階堂さんとの共演もあって、アンコールのひとつも要求したいくらいの盛り上がりの中終了。

▼ということでイルリメすげー、ヒップホップのライブおもろいかも、と小さなカルチャーショックを拾ってきた1日となりました。この引っ掛かりがいずれ大きなものになるかどうかは判りませんが、たまにこうして価値観をペコッと折り曲げてくれるようなものに出くわすと、しばらく楽しくなるので良いです。豪華なイベントをありがとう企画者さん。

【本日のレビュー:NUCLEAR VALDEZ「...IN A MINUTE ALL COULD CHANGE」】


ラテンロッキンな哀愁滲む爽やかAORバンドの久々の復活作。89年のデビュー作「I AM I」はBURRN!誌上で前田氏が取りあげたことでメタラーにちょっと存在が知られてます。その次に「DREAM ANOTHER DREAM」という2ndがあって、10年経った2001年に突然これが出たのでファンはびっくりしたことでしょう。ゆるいコードストロークのバッキングを主体とした、あまりハードロック然としない演奏で、しかし湿りに湿った歌メロとの相性が抜群。不安定と紙一重のヒラヒラした情緒を醸し出すシンガーの声がまた良いのです。南部国境あたりのローカルクラブで演奏するブライアン・アダムスか、アメリカ版THUNDERか、てれっとし過ぎたBACKSTREET BOYSてな(?)感じ。泣き度がやや減ったことを除けば昔とそう変わらん雰囲気ですね。あーキュンキュンする。「I AM I」が好きだった人や、SANTANAと末期GET UP KIDSを同時に楽しみたい人(いるか??)は是非買って下さい。今回も結構名曲あります。1st収録の"Remember"のスペイン語ヴァージョンなんてのもあってたまらんです。

  10月5−6日
好きなものは「安くて真面目な機材」です。

約3万円で突如新ギターを購入。ダンエレクトロは最高だ。左上からSTRYPER「IN GODWE TRUST」、THE STORM「THE STORM」、BADLANDS「BADLANDS」、QUIET RIOT「METAL HEALTH」、端っこだけ写ってるKIX「KIX」。折り返してOVERKILL「FUCK YOU」、SLAYER「SEASONS IN THE ABYSS」、ANTHRAX「PERSISTENCE OF TIME」、SANCTUARY「REFUGE DENIED」、ARMORED SAINT「MARCH OF THE SAINT」。折り返してGLORY「2 FORGIVE IS 2 FORGET」、ほとんど見えないWOLF「WOLF」とKINGSTON WALL「TRI-LOGY」、METAL CHURCH「THE DARK」、NUCLEAR ASSAULT「SURVIVE」。折り返してONSLAUGHT「IN SEARCH OF SANITY」、KREATOR「EXTREME AGGRESSION」でした。

▼今日6日は栄・タイトロープにALOHAを見に行ってきたんでした。以下リポートです。

▼まず1番手OGRE YOU ASSHOLE、相変わらず頻繁にライブはやっているんだけど見るのは随分と久し振り。新曲/旧曲が半々くらいのセットになってました。あまり猛り狂ったりすることもなく比較的淡々と進めていくという大筋のスタンスは以前から変わらず、しかし電気ポットの保温温度でいうところの60度くらいの線(?)をいい感じにキープするような、じんわり熱を帯びた温泉卵アンサンブルが更に熟成。前進的脱力というか、オトナっす。フルアルバム以降の新要素の中では、3曲目にやっていたみたいな大らかメジャーキー路線がやはり個人的に好みですな。ああいうことをやる日本人はなかなかいないんじゃないでしょうか。一方、得意の祭囃子風アプローチはもはや完熟の域で、そろそろフォロワーが出現してもおかしくないくらい。最後はつい最近PVが公開されたばかりの新曲"アドバンテージ"で賑やかにシメ。

▼続いては東京からBALLOONS。アメリカツアーから帰還して以来すっかり精悍になったなあ、と思った前回の印象を更に上回る高精細&ダイナミックな演奏が圧巻。特にドラムは日本人離れした安定度と表現幅。ポットの例えを引っ張ると、90度から30度くらいまで可変域が広いうえ、急上昇/急降下を自在にコントロールする感じ。二人でハーモナイズするアルペジオリフも一人で弾いているかのようなタイトさで、何だか54-71にも近いストイックさが出てきました。東京のポストロックバンドにありがちな美麗アルペジオ一辺倒に終わらずクランチーなカッティングでぐいぐい行くドライブ感もまた魅力。最初に演奏された新曲はそういう面が強調された出来でビクッ!となるかっこよさでした。この方向でますますアメリカン・パワー・オヤジ化していくのでしょうか、していってもらいたいですね。

▼そしてメインのALOHA。実は今回のライブ、かわいいシンセをフィーチャーしたレトロ・インディ・ポップ化傾向が著しい近頃のPOLYVINYLのレーベルカラーに同調してALOHAも今やあんまり私の守備範囲と関係ないことをやってそうだあ〜、と勝手に想像し、行くかどうか迷っていたのでした。しかし直前になってMYSPACEで試聴できる曲を聴いたら、シンセ+レトロ+変拍子が高じてほとんどYESみたいになってて、「そうか今のALOHAはプログレか?」という期待と共に参戦を決定したのであります。

 で予想は的中。ユニゾンの入れ方や転調のしかた、シンセの高速アルペジオによるバッキングなど、端々が5〜4人時代のGENESISに酷似(演奏だけでなくヴォーカルラインにも時々ピーガブ・イズムを感じました)!というのはほとんど二次的な問題で、またまたポットの例でいくと、曲のしっとり度などはお構いなしに演奏開始直後から100度超えを全編キープするという恐ろしい演奏に度肝を抜かれたのでした。そうかロックはアングロサクソンのものだよな、と自明の真理を今更確認。シンセ、シロフォン、ギターを器用に渡り歩くフロント二人の芸達者ぶりと曲の面白さとで、慣れて飽きてきたりせず最後まで感心感心また感心で見ることができました。

 超アグレッシヴなドラミングで暴れまわっていたドラマーがいきなり前に出てきて颯爽とキーボードで高速フレーズを弾きだすなんていう場面もあったのですが、本編最後の曲ではシロフォン奏者が何とドラムセットに鎮座し(しかも普通に上手い)、ドラマーは用意してあったパーカッション(恐らくフロアタム?)をユニゾンで叩きまくるというドラムバトルまで飛び出す始末。これは間違いなくフィル・コリンズ×チェスター・トンプソン…と芸の細かいオマージュに嬉しくなってたのは私だけ?得意技の大音量拍手でアンコールを率先して誘導し、もう1曲見て腹十分目になり完全終了。いやー行ってよかった。

本日の収穫、ライブ前に立ち寄ったSTIFF SLACKにてSELF-EVIDENT「EPISTEMOLOGY」、物販でALOHA「SOME ECHOES」、あと米アマゾンから到着のCHEER-ACCIDENT「YOUNGER THAN YOU ARE NOW」、ALEX SKOLNICK「GOODBYE TO ROMANCE: STANDARDS FOR A NEW GENERATION」。

【本日のレビュー:GENESIS「TRESSPASS」】


まだフィル・コリンズとスティーヴ・ハケットが加入する前の2nd(70年)。だからただのプロトタイプかといえばそうではなく、アンソニー・フィリップスの「美しい英国の田舎」的描写が効いててまた独特の世界があるアルバムです。YESがクラシックのシンフォニックな面や重厚長大さを模したのに対して初期GENESISは、薄く包み込むストリングスをオルガンやメロトロンで表現したり、ドドパ〜ンと派手にキメるリズムをドラムセットで表現したりと、クラシック的なパッセージの端々をあくまで雰囲気で汲み取ることを優先したスタイル。そこにのちのち独特のポップセンスが入ってきて、黄金期諸作で聴けるような孤高の個性を確立するわけです。

 この頃から光るのはやはりトニー・バンクスの類稀な和声センスですね。不思議に筋が通る大胆な転調で、広大なドラマをコンパクトに見せる手腕はロック界で誰の追随も許さない域。それとまだ極初期のサイケフォーク色も少し残っていて、このアルバムはまさにプログレッシヴなインディポップそのものな内容なのです。ロマンティックな12弦ギターのアルペジオ、無茶にバタバタと殴打するドラミング、世界はあるがよれよれと不安定なピーター・ゲイブリエルのヴォーカル。そしてEL&Pのように暑苦しくなく、YESほどマニアックではない。ジェントルな英国紳士の昔語りを音にしたような隠れた傑作です。最新のALOHAの作風を気に入っている人には強くオススメ。というか買って下さい。もう少し洗練されて聴きやすいのがよければ、ピーター・ゲイブリエルのシアトリカルさが抜けた直後の「TRICK OF A TAIL」(76年)などはこれと似た柔らかさを持っている気がします。そちらはカウント不可な物凄い奇数拍子もどしどし聴けてよりポストロッカー向け。薫る情緒の濃さならこちら。久々に聴いたら意外と名曲ばっかりで驚いた。

  10月4日
本日の収穫、名駅69にてANGIZIA「EIN TOTER FAHRT GERN RINGELSPIEL」、SAVIOUR MACHINE「SAVIOUR MACHINE」とWU-TANG CLAN「THE W」の2枚は300円段ボールから。久々の69は80年代ポニーキャニオンのアイドル歌謡ものがえらく増強されてました。収集家諸氏はお早めのチェックを。

▼あーあ、あ〜〜あ、衝動買い体質はヤフオクなんか覗いちゃダメですね。いきなりギター買ってしまいました。(結局値段を比較検討した挙句、普通に楽天で注文したのだけど。)詳細はまた後日。

【本日のレビュー:ANGIZIA「EIN TOTER FAHRT GERN RINGELSPIEL」】


オーストリアの孤高のド変態前衛チェンバーゴシック、2004年の作品。詳細はわかりませんがLIMITED EDITIONとあるので枚数限定のものっぽいです。これがまた本当に強烈な、ZSRACHEL'SとMAGMAとNE ZHEDALIがいっぺんにDEVIL DOLLに乗っ取られたような、東欧フォーク+室内楽+ビザール歌劇の笑える地獄絵図。オーソドックスなロックバンドの編成(ギター+ベース+ドラム)にピアノを大フィーチャーした上に、ヴァイオリンやチェロ、アコーディオン、クラリネットにフリューゲルホーンなどもガンガン導入して、UNIVERS ZEROやART ZOIDなどにさえ肉薄する内容に。ディストーションギターは添え物程度にしか登場せず、聴感上のメタル度は割と低いです。あとはポルカ風の間抜けな後打ちビーツ(FINNTROLLにも匹敵)と、狂気じみた男女のアホアホヴォーカルに持っていかれっぱなし。ここは相当DEVIL DOLLに影響受けてるっぽい雰囲気です。うーん「オペラ座の怪人」+志村けん+クリスチャン・ヴァンデとか、昼13時台のドロドロメロドラマの音楽を担当したMR. BUNGLEとか、ムチャクチャな形容ばかり出てきます。気持ち悪すぎて凄い。

  10月3日
▼「偏屈」という言葉の意味を覚えた小学校高学年くらいの頃、そうかぁ〜と思って「じゃ将来は偏屈になりたい」と言っていたことを、2・3日前に急に思い出しました。夢一つ叶えたなあ。もっと小さい頃、NHKの天文番組で「この天体は肉眼でも見ることが…」というナレーションを聞いて「ニクガン買って」とその場で親に頼んだら、ニクガンはゼロ円だよ、と教わったこともついでに思い出しました。収穫はなし

▼あと円谷プロの衝撃の短編もの「ミラーマン」が凄かったことも思い出しました。怪獣のスペック読み上げ(全長、体重、得意技など)と取っ組み合いシーンのみという内容で1回約3分の放送、声の出演は常に一人(ミラーマン・怪獣・その他を兼ねる)、毎回本編に全く絡まない意味深なだけのサブタイトル等、高校の頃ケーブルテレビで偶然見て確信犯のブラックユーモアとしか思えない全体的なしょぼさに大きなショックを受けました。もう一度見れるものなら見たいとYOUTUBEを漁ってみましたが、1回分丸々アップされているものは見当たらず。DVDでも出てようものなら買いたい勢いです。情報求む。

【本日のレビュー:OPPRESSOR「SOLSTICE OF OPPRESSION」】


とっても過小評価されている90年代前半の技巧派USブルータルデスメタラー。これは94年にRED LIGHTなるマイナーレーベルからリリースされていたという1stのリイシューです。「HUMAN」の頃のDEATH、CYNIC、PESTILENCE、ATHEISTあたりを思わせる、フュージョン風テンションコード満載の激展開・崩壊変拍子系ハイパーテクニカル路線で、更にCANNIBAL CORPSEばりにギョピ〜ッとあざといピッキングハーモニクスを挟んできたりヴォーカルは完全な下水道声だったりと、今WILLOWTIPとかから新人として送り込まれたとしたら世界中で「激ヤバ!マニアは即ゲット!」と騒ぎ立てられても全然おかしくない秀逸な内容です。バッキングの合間の予測のつかないタイミングで派手なスウィープが挿入されたりするあたりはNECROPHAGISTにも匹敵するじゃないですか。今でこそこういう目まぐるしい完全体力勝負ものは珍しくないけど、94年当時からするとここまでやってるというのは相当物凄かったのでは?SUFFOCATIONやKATAKLYSMが屈折一辺倒の人生に目覚めたかのようなモーレツさ。GORGUTSあたりのファンはマストです!

  10月1−2日
▼先月あった新品500円ワゴンがあるかどうか偵察すべくパルコ内タワーレコードに出向いたら、「ユニバーサル・ジャズ ミッドプライス TOP200セール」なんてものが慎ましく開催中(ワゴン1杯分)でした。本日の収穫RETURN TO FOREVER「WHERE HAVE I KNOWN YOU BEFORE」、ALBERT AYLER「MUSIC IS THE HEALING FORCE OF THE UNIVERSE」。ちょい高めの中古程度の値段で。

▼「エフェクタを横一列に並べたくない病」保持者の私ですので、帰宅後は明日練習があるシロクマ用の極力ミニマムなセッティングを編み出そうとひたすら順列組み合わせに興じました。以下その成果。

 右上端に写っているプラグ2種は本日購入の品で、Z字型のやつを使って高さの異なるエフェクタ同士も直結させようという目論見です。右下のコンプは思いっきり弾いても歪まないようにする「逆ブースター」。ここぞというところでOFFにするという。ダンエレクトロのこのシリーズは安くて大好きですが、この前ディストーションが知らん間に壊れてました。以上、独り言でした。どうも。

【本日のレビュー:RETURN TO FOREVER「WHERE HAVE I KNOWN YOU BEFORE」】


ギターにアル・ディメオラを配した黄金のカルテットによる74年作。MATS & MORGANの結成当初の理想はこの編成のRTFだったそうです。さて内容、フュージョンと呼ぶにはあまりにアグレッシヴかつ、ヘヴィ!!!野蛮なまでにボキボキと鳴る低音域のグルーヴがとにかく強烈な冒頭曲で一発KO。一応フィーチャリング・チック・コリアということで、彼のピアノ独演が1曲おきくらいに挟まってるんですが、通して聴いての印象では主役はあくまでバンドですね。西南欧フィーリングをそこはかとなく漂わすアル・ディメオラのギターのせいもあって、ほとんどARTI E MESTIERIみたいなジャズロック寄りのイタリアンプログレと大差ない域です。あるいはアメリカンプロレス状態。ん、5曲目"Beyond The Seventh Galaxy"はもろZAO(ex.MAGMAのヨシコ・セファーが率いたジャズロックグループ)かAREAのようだったりしますな。ラストの大曲なんぞはもはやSYMPHONY X!いわゆる「カモメ」盤の気高さからするとノリ的にはほとんど真逆を向いちゃってますが、これはこれで大いに燃えるのでよいのです。プログレッシャーからメタラー、マスロッカーまで、火花散る技巧音楽を愛してやまない人なら絶対聴いてもらいたい強力盤。

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