物色日記−2006年12月

※頻出語句解説はこちら
  12月29−31日
▼連続で更新を怠っていましたが、「忘年会シーズンですね」という無言の日記を読み取って頂ければと思います。2006年にレビューで取り上げたCDのベスト10は、掲載順でBRUCE COCKBURN「HIGH WINDS WHITE SKY」TIM BERNE「THE SUBLIME AND」ROB LAMOTHE「WISHING WELL MOTEL」DONNERKOPF「KRASHMASCHINE」SADNESS「AMES DE MARBRE」SHY「SUNSET & VINE」TRAINDODGE「WOLVES」CELTIC FROST「MONOTHEIST」DEMETRIO STRATOS「CONCERTO ALL'ELFO」SAMURAI「SAMURAI」でした。特にDONNERKOPFとCELTIC FROSTとROB LAMOTHEに金銀銅賞をあげたい。では皆さん良いお年を!

【本日のレビュー:STEVE COLEMAN「LICIDARIUM」】


80年代中盤に登場してデイヴ・ホランドやカサンドラ・ウィルソン、ヴィジェイ・アイヤーなどと共演し、THE ROOTSのアルバムへの参加歴もあるサキソフォニストのスティーヴ・コールマンが長年率いている大編成グループ(メンバーは流動的)の2003年作。54-71・ミーツ・オーネットコールマンな変拍子ハーモロディックファンクを、あくまで熱くなり過ぎずにキメつつ、コーラス隊も絡んで更にあやしさを醸し出す、フリージャズの新形態を探る感じの作風になっています。ティム・バーンのようにレコメンプログレと化すでなし、バリバリ・バークリーな若手のようなポスト・バップのよくある感じでもなし、ルールによる拘束を拒みながらもベタなファンクネスを浮き彫りにするのが主といった調子で、黒人としてのルーツ意識が強い人なのかも。不穏なコーラスはESP風、もしくはちょっとコバイア風。オッ新しい音楽なのか?と思って聴き始めると、そういう曲とそうでない曲があって途中で若干トーンダウンする感は否めませんが、調子の乗る曲ではなかなか凄いです。ちなみにクレイグ・テイボーンやドリュー・グレスなどの大御所も参加。ヨロシイんでないでしょうか。

  12月28日
収穫はなし。今日はステレオの電源周りとスピーカーケーブル(とついでによく誤作動してポインタがぶっ飛ぶマウスのケーブル)に、10個700円で買ったノイズフィルタを装着しまくりました。ステレオ一式はPCと近接して設置してあるので、デジタルノイズもよく拾うことだろうということで。効果のほどはというと、多分ですが、なかなかあると思います。芯が据わって(レンジが上下に広がって?)音にバイタリティが出たような…だんだん発言がオカルトじみてきましたね。危ない。

【本日のレビュー:THE EX「STARTERS ALTERNATORS」】


ポストパンクとプログレ/レコメンを股にかけて活動してきたオランダのベテランバンドです。マイナーレーベルやら自主リリースやら転々としていたところから、90年代後半に何とTOUCH & GOへ籍を移し、これはその第1弾となった98年作。エキセントリックな変拍子とノイジーリフを若手オルタナバンドの如くキビキビと使いこなし、どこかヨーロッパの山岳フォーク調のワッサワッサとせわしいリズムも混じる、ラディカル辺境パンクとでもいった音楽性。録音がアルビニというのは正にドンピシャ。ほとんどUZEDAやJUNE OF 44同然のノリで聴けてしまいます。80年のデビューから20年近く経ってこの生命力とは、実に恐れ入ります。シカゴ〜ルイヴィルあたりの荒れたやつがお好きな方なら必聴。

  12月27日
収穫はなし。結局東急ハンズでインシュレーター用に黒檀の円柱を6個買ってきました。私が見ていたのと同じ棚の前で、しゃがみこんでずーーっと、かなり必死に、木材の直方体ブロックを吟味していたおっさんも多分オーディオマニアだったんだろうな。

▼最近増えてるCDがデスメタルばっかりなのに、あんまりレビューでそういうのばっかり取り上げると訪問者数が減ってしまいそうだから、これぞという盤を結構ガマンして聴けずにいます。今日は解禁で二つ登場してもらいました。↓

【本日のレビューその1:VERMIN「PLUNGE INTO OBLIVION」】


ひどいバンド名です。何となくマイナースウェディッシュデス・クラシックス・プチ特集ということで、一発目はこのVERMIN。確か現役で、最近はHELLACOPTERSや一時期のTHE CROWNみたいに爆走ロックンロール化してイマドキぶってるようですが、94年のこのアルバムでは、FIGHTやPANTERAを通過した感じのゴリつく重さをフィーチャーした、デスメタルのようでデスメタルでない中途半端なスタイルになっています。ツービートを裏返したスネア頭打ちのリズムを多用してドスドス迫る感じはちょっとANTHRAXのようでもあり、しかしあそこまでのキレはなく。ぼえ〜っ!と野蛮に吼えるヴォーカルだけはやはりスウェディッシュデス以外の何者でもありません。トマス・スコッグスベルグがSUNLIGHT STUDIOで録ったこの時期のデスメタル作品って、全部ギターのトーンが同じなのが不思議ですが、これはギタリストの音作りに関係なく後から無理矢理EQでこうしているのか、それとも「このアンプをこのセッティングで使え!」と強制でもしていたんでしょうか?巨岩のような独特のゴバゴバトーン。まあかっこいいからいいですけども。ENTOMBEDやDISMEMBERで満足していれば全然要らない1枚ですが、スコッグスベルグ・ワークスのファンなら持っておきましょう。ちなみにプロダクションの質は悪いです。

【本日のレビューその2:GRAVE「INTO THE GRAVE」】


こちらはかなり初期世代のバンドの91年1st。ENTOMBED然り、スウェーデンのバンドはデスメタルのエッヂを保ったままオルタナ化するのが上手い人が多かったですが、このバンドは運悪くコケてしまったクチなので、今やあんまり存在感がなくなってしまってます。デビュー当時はやっぱりかっこいいです、その1で取り上げたVERMINと続けて聴くともっと上級のオーラが出ているというか、有無を言わさず飲み込みにかかってくるエネルギーみたいなのがありますね。Bまで下げたチューニングといい、ディープなガテラル声の猛々しさといい。リフにかすかに漂うムチムチびちょびちょした感触が初期CARCASSっぽいのも良い。うむ、これはブラストが上手く出来ないCARCASSですな。単細胞ゆえにこうなってしまったという豪快さがいいじゃないですか。ちなみにこちらもSUNLIGHT STUDIOにてスコッグスベルグ録音。DESULOTRYとGOD MACABREとこのバンドとかでブラインドテストをやらされたら、もはや正答できる自信がないです。しかしマニアは必携。やっぱりオリジンには何かが潜んでいる。

  12月26日
収穫はなし。そろそろ3億円の使い道を考えないといけません。今年は1等が300何人とか言ってるけど、50年後には日本の総人口が9000万人を割るとかいう話が本当なら、宝くじってのもいつまでも成り立つもんじゃなさそうですね。音楽その他の芸術で食える人もほんとにひと握りになってしまって、心の豊かさというのはいよいよどうなるんでしょうか。国土が端からどんどん海に沈んでいってそれどころじゃなくなってますかね。道楽じいさんやってる余裕あるのかな。

【本日のレビュー:ROBERT PLANT「PICTURES AT ELEVEN」】


82年発表の初ソロ。何と参加メンツにコージー・パウエルとフィル・コリンズがいるのですね。やはりドラマーは最上級の人材がよかったようです。で内容は、これがもうフヌケに腑抜けた80年代アダルトロック風のもの。紋切り型の商業オリエンテッドなアレンジが施される楽曲群。しかしそれとセットになっているはずの胸キュンメロはどこを探しても見当たらない。ツェッペリンのあらゆるアイディアとグルーヴを取り去って、つかみづらさや曖昧さだけが残った変なロックアルバムになってます。これはユニ〜ク!ペイジの諸々のプロジェクトが覇気なきツェッペリンの焼き直しだったのに対し、こちらは正にプラント以外に体現し得ないポスト・ツェッペリン・ミュージック。微妙すぎて、20余年過ぎた現在でも誰にも踏み入られていない真っ更な新鮮さをもって響いてきます。コージー・パウエルの激フィル炸裂でRAINBOWミーツZEPの様相を呈する4曲目"Slow Dancer"なんて名曲の域。いやーその気で聴けばなかなかに刺激的ではないですか、この人凄い人だなー。当サイトとしてはお勧めの品です。

  12月25日
▼今日はスピーカーケーブルを短くしました。次はアルミ箔。本日の収穫、まだバーゲン中のサウンドベイ金山にてSTEVE COLEMAN AND FIVE ELEMENTS「LUCIDARIUM」、MATS/MORGAN「THE TEENAGE TAPES」、MORGAN OBERG & G.U.B.B.「VALLING & FOTOGEN」、DEREK BAILEY「INCUS TAPS」、ROBERT PLANT「PICTURES AT ELEVEN」「SHAKEN'N STIRRED」、MEDICINE WHEEL「FIRST THINGS FIRST」。

【本日のレビュー:THE CURTAINS「VEHICLES OF TRAVEL」】


DEERHOOFのギターの片割れだったクリス君と、同ドラマーのグレッグとあと一人がいるバンドの2004年作。おとぎ話とオールドアメリカンと現代音楽をウヤムヤにリンクさせた夢うつつのアカデミック・毒メルヘンな作風はかなりDEERHOOFと共通するところがあり、特にアヴァンギャルド度の高かった2002年の「REVEILLE」あたりのスタイルに近い。男声でヴォーカルも入ります。映画のスコアのオーケストラ演奏をデフォルメしたような複雑な和声展開と大胆なパート振りは、つくづく個性的で面白い。ともすればマニアックになり過ぎそうなこの試みをただただ愉快に仕上げてしまっている彼らは、子供の心を忘れてないんでしょうね。本気で。レコメンとインディポップを無垢な戯れであっさり繋げてしまっている、地味に大した人達なのではと思います。DEERHOOFファンならずともオススメ。

  12月24日
収穫はなし。M-1グランプリ見ました、優勝したチュートリアル抜群に面白かったっすね。しかしきょうびの漫才の筋書きてのは、昔からそうなのかも知れませんが、誰がやってもほとんど「コンテクストの混乱」のみによって成り立っているのですね。素材になる経験の断片が見物人の中にあるのが必ず前提になっている。そこにハード固有の性能(声、動作、体形など)と、あとは心地よく感じる繰り返し回数の上限などといったテクニカルな要素が加わって、各芸人の個性、面白さの程度というものが出来ている。まったく大衆音楽と同じだなーと思いました。コンテクストをどうこうする以外の手段で「新しい笑い」「ピュアな笑い」を存在せしめ得るのか?疑問です。アッと驚くハードの登場以外期待できるところがないのでしょうか。ウド鈴木とか、構成美の概念を一切持たず末梢要素ごとに体当たりで笑わせてしまうジャーマンロックみたいなスタイルで凄いと思うんですが、滅多にネタやりませんからねえ。いずこの世界へ行っても「言語」と「約束」から免れることは難しいのだなあと、芸をすることの世知辛さを確かめたのでした。

 上の話と焦点がまったくズレますが、今回のチュートリアルに関しては、オーソドックスな形式にのっとりながら巧妙に陳腐さを避け、「それは1回多い」などと客に思わせる瞬間が一切ないまま次々と燃料を注ぎ込んで最後まで畳み掛けたこと(大原則に思えるが他にこれをやれている組は全然いなかった)、あとは表現の方向と当人達の(少なくともはた目に見える範囲の)パーソナリティが合致していたことが、見ていて気持ちのよいポイントでありました。いずれかだけが勝(まさ)ってもダメなものです。ここも大衆音楽と同じですな。何かとそんな置き換えばっかりしながら色んなものを見聞きしてしまうわけですが、ハイレベルまで突き詰められている場ではやはりこういう普遍性のある真理がくっきりと出ていて、ためになります。

 それにしても審査員席には何故ナンチャンが?

【うっかり遅くなったので本日のレビューは割愛します。】

  12月22−23日
▼22日はカボチャ食って柚子湯入りました。

本日23の収穫はバーゲン初日のサウンドベイ金山にてFLESHGRIND「DESTINED FOR DEFILEMENT」「THE SEEDS OF ABYSMAL TORMENT」、SIX FEET UNDER「GRAVEYARD CLASSICS」、ALLAN HOLDSWORTH「ROAD GAMES」、NELS CLINE「THE INKLING」、V.A.「RELAPSE SINGLES SERIES VOL.1」(INCATATION他収録!)、SWANS「OMNISCIENCE」、MOHOLO/STABBINS/TIPPETT「TERN」、同上前津にてDON CHERRY「MU」、BLACK WIDOW「SACRIFICE」、VERMIN「PLUNGE INTO OBLIVION」、THE CURTAINS「VEHICLES OF TRAVEL」。よく絞った。

▼貧乏オーディオ日記が続きます。簡易サブウーハー、基本的にないよりあった方が断然良いのですが、なかなか扱いが難しいのでありました。元々がただのPC用スピーカーなので、パライコ程度では不要な帯域がバッサリ切りきれず、メインの左右と変に混じって位相が乱れてしまうという問題が浮上。加えて指向性もかなり「点」な感じが強いので、もう少し間接照明のような具合に自然に広がってもらいたい。ということで、段ボール箱にエアパッキンを詰めて覆ってやりましたところ、一挙に改善。現在は足元に謎の段ボール箱を転がしながらCDを聴く生活になりました。

【本日のレビュー:FLESHGRIND「DESTINED FOR DEFILEMENT」】


イリノイの極悪グラインダー97年作。SUFFOCATIONを直線的にしたところにBROKEN HOPEのようなエグエグ感を加味したような、醜悪極まりないデスメタルをやっています。と思ったら本当にギターヴォーカル氏がBROKEN HOPEの作品に1枚だけ参加してる人だった模様。あちこち渡り歩くのも納得のディープなガテラル声が見事です。楽曲にこれといって個性はないものの、リズム面でCANNIBAL CORPSEほどゴキゴキに屈折せず、気持ちよい流れでデスメタル然としたエッヂを堪能できる(スラッシーなスピード感とはまた異質のドドドド…とまくし立てるようなやつ)のが魅力か。ダウンチューニングをこれでもかと強調しつつビヨビヨとハーモニクスを挟む変態リフもかっこいい。現在はGORGUTSと同じOLYMPIC RECORDINGSに移ってるようですが、妥当ですね。わかる人は黙って買って下さい。

  12月21日
収穫はなし。引き続き、片付いた部屋とサブウーハーが最高。次はインシュレーター自作といきます。待ってろよダイソー。

 …と書いたあと、3年くらい前に一生懸命集めていたムーミンの食玩の土台部分を6つ外してきてスピーカーの下に置いてみました。お、にじみが晴れてガチッとして、各パート明瞭に分離してよく前に出る感じになった気が。スピーカーの筐体の木箱感も以前より生々しく感じられます(ゆえにアコギの鳴りなどは最高)。10円玉でも充分効果があるらしいので皆さんやってみて下さい、これ面白いっすわ。

【本日のレビュー:BEN VIDA「MPLS.」】


TOWN AND COUNTRYのギタリストのソロ作。2000年リリースの品ですのでBIRD SHOWを立ち上げる前です。内容は徹底的にアコギ独演。オープンチューニングでポロンポロンと、というよりポ…ポ…と、和やかなような暗いような和音をゆっくりこぼしていく静謐の世界です。TOWN AND COUNTRYみたいな近代クラシック風の少しおどけた雰囲気はなく、とにかくシリアス。ジョン・フェイヒイ〜ジム・オルークの流れのアメリカーナ音響ギターを更に無口にしたようなスタイルでしょうか。余韻と余白にこそ表現が詰まっているという点で、日本の俳諧に通じるような時間感覚も味わえます。ラストの1曲には同じくT&Cのジョシュ・エイブラムスが参加。T&Cファンもしくはポストロック界隈の音響フォークがお好きな方はどうぞ。でなければ先にジョン・フェイヒイのどれかを買って一発解決をお勧めしますが。

  12月20日
収穫はなし。部屋がきれいなので毎日家に帰ってから清々しい。

【本日のレビュー:BEYOND DAWN「IN REVERIE」】


ADIPOCERE〜MISANTHROPY〜PEACEVILLEとマニアックなレーベルを渡り歩くノルウェーの変態ゴスバンドBEYOND DAWNが、99年にEIBONなるレーベルからリリースしていた3枚目のフルアルバム。デビュー時はもっとメタリックながら独特の歪んだ耽美世界を確立していて、そこからグッとオルタナティヴロック寄りの感触を身に付けたこれの前作で一気に垢抜けた印象です。その前作のタイトルが「REVELRY」で、何やら関連がありそうな本作はそこからのリミックスが2曲と、歪んだエレキギターやドラムスを殆ど登場させないアコースティック+エレクトロニックな新曲6曲という構成。そうと言われなければメタル畑の出とは思えない内容になってしまいました。何なんでしょうかこれは…アンプラグド版LOWというよりももっと深刻な、ジェフ・ミュラー(JUNE OF 44〜SHIPPING NEWS)のソロ作にケヴィン・ムーアのダークサイドを被せたような、あるいはRADIOHEADミーツULVERな彼岸系陰鬱ゴシックスローコアか。TEMPORARY RESIDENCEやJAGJAGUWARからのリリースすら許されそう。随所で存在感を放つトロンボーンもいい味出してます。死にそうな音楽がお好きな方はすべからく入手すべし。

  12月19日
本日の収穫、ひさびさのバナナ名駅店にてDEATH「INDIVIDUAL THOUGHT PATTERNS」(CENTURY MEDIAからのリマスター)、GRAVE「INTO THE GRAVE」(スウェディッシュデスオリジン世代!1st!)。大きいライブも終わり、目下の関心事はもっぱら「リスニング環境の整備」となっております。BBE導入で高域はそれなりに良くなったとして、やはり目の高さに置いてある30cm程度のスピーカーでは低音に限界が。次はサブウーハーか…と思ってアンプの裏側を見ると、出力端子はついている模様。ここですぐさまヤフオクに駆け込んでポチッとやらず、試行錯誤の末に登場したのが、以前使っていたパソコンの付属品だった小っちゃいアクティブスピーカーと、売ろうと思っていたBOSSのギター用パライコ。結線し、しかるべきイコライジングののちスピーカーをPCデスクの脚あたりにトントンと二つ並べてみると…おお、相当鈍さはあるものの一応サブウーハーとしての用を成すではないですか。これのお陰でBBEの高域補正量も増やすことができて(低域とのバランスが取れるので)、解像度は大幅アップ、ドンシャリにならない自然なレンジ感とささやかな臨場感を得るのに成功。費用0円!これで次のレコーディングのミックス作業も多少はやりやすくなりそうです。やっぱり「音が良い(と感じる)」というのは非常に重要ですね、何をするにもモチベーションに直結します。

【本日のレビュー:DIXIE DREGS「NIGHT OF THE LIVING DREGS」】


以前も紹介したアメリカのフュージョン〜プログレハードバンドDIXIE DREGSの79年作。前半が普通のスタジオ録音、後半が78年にモントルージャズフェスティヴァルに出演したときのライヴレコーディングという変則的な構成です。デビュー作と比べるとイケイケフュージョン化がぐっと進行し、しかし全楽器とも硬すぎない音色づくりで依然土臭さをアピール。T-スクエアみたいなのとは似てるようで全く違います。激しく脳天気なアメリカ版RETURN TO FOREVERか?軽妙なヴァイオリンが絡んでくるのも愉快感に一役買ってますね。そしてロカビリーやカントリーの伝統的なフレーズを変拍子混じりで高速に繰り出すスティーヴ・モーズはやっぱり凄い人。クラシックギターみたいなのもサラッと弾くし、硬派路線を捨てた後のパット・メセニー風のスタイルもこなす。やはり圧巻は6曲目"The Bash"でしょうか。ブライアン・セッツァーが電動洗濯機に落ちてしまったかのような歌心ありまくりの猛烈高速16分をノンストップで正確無比にキメてしまう怪演。ワウをかませたエレクトリック・ヴァイオリンとのバトルの末に非人間的ユニゾンでジャン!と終わった時には、CDに収められている歓声と一緒に思わず拍手したくなります。総じて、テクニックの無駄遣いではなく、その技がなければ表現できない世界というものに挑んでる感じで、テクニカル系によくあるうざったさは希薄に仕上がっているかと思います。穿った視点からTHE POLICEを聴いてる人なんかには是非オススメしたいところ。

  12月17−18日
▼17日はクラブロックンロールにてDOIMOIのライブでした。5年前の12月13日に脳腫瘍で他界したチャック・シュルディナー(DEATH)を偲んで、名盤「INDIVIDUAL THOUGHT PATTERNS」のTシャツを着て臨む。新曲を前半に固めたゴリ押しのセットで今後の展望も伝わったことでしょうか?演奏もなかなかやり切った感の残るものになりました。とりあえず「Tシャツかっこよかったよ!」と言ってもらえれば満足です。

▼ひとまず全バンド所感を。トップバッターは地元名古屋のSU:。メンバーが入れ替わってタイトになったとの最近の評判どおり、格段に芯の据わった印象に。PC周りの機材の点数を減らしてシンプルになり、頭数相応の音が鳴るバンド然とした充実度がグッとアップ。やんわりオシャレなだけでなく若干のアグレッシヴさが加わっていた気がしたのも歓迎すべき変化でしょう。終了後、「ドイモイって散々名前は見かけてたけど一緒にやったことなかったねぇ〜」とリーダー(?)のスズキさんが声を掛けてきてくれまして、いやあ気さくないい人でした。新しく出るというEP売れてくれるといいっす。

▼2番手FLUIDは、Q AND NOT UやNO KNIFE、LADDERBACKあたりがクロスする熱情エモに更にMELT BANANAが割って入ったような超ハイテンションスタイル。外国人さながらのあのエネルギーはやはり関西ならではなのか?入り組んだ曲展開に恐ろしく的確に噛み付いていく演奏、特にギターヴォーカル氏の鮮やかな足芸が凄かった。ワーミー、ディレイ、ラインセレクター、リングモジュレイター、何やらサンプラー役のようなペダルを、拍単位で完璧に踏み分けまくる。余談ですが、メンバー全員がそれぞれサークルの後輩や先輩など身内の知り合いに激似で、ああ〜平尾君が歌って叫んではるわ…と不思議な気分になりながら見ておりました。

▼3番手は我々なので飛ばすとして、続くはnhhmbase。THE DISMEMBERMENT PLANが更にプログレッシヴになったような素っ頓狂ファルセット・変拍子ファンクグルーヴバンドでした。転調に次ぐ転調のアクロバットはもはやGENESIS級。ポリリズムや奇数拍子の嵐で畳み掛けていく割に、ノリの質は終始どことなくユーモラスで穏やかなのが何とも独特です。

▼5番目は三重のSLOWの中心人物のひとりユニット・黒澤コリン。ギターのみならず声や手拍子もディレイループで重ねていって、自暴自棄なまでに愛を語るパフォーマンス。どんどんヒートアップして何だか分からない大団円を迎える構成は、何というか壮絶でした…。

▼そして6番目、重鎮PANICSMILE。ビーフハートやSST時代のヘンリー・カイザー、あぶらだこその他の80年代アングラアヴァン一派から地続きのフットワークで21世紀に鋭利な一撃を放つ大変なバンドでした。いやー凄かった。ネルズ・クラインばりににょろにょろと奇怪なフレーズを紡ぐ外国人ギタリスト氏を筆頭に、謎だらけのグルーヴで終始圧倒。どこにも「誰々のように変態っぽくやろう」という気配が感じられず、俺らの音!と有無を言わせず叩きつけてくる潔さがひたすら気持ちいい。しかしギターヴォーカル氏と名古屋の松石ゲル氏(ザ・シロップ、GUIRO、etc.)がいとことは驚いた〜。

▼最後は全員白ずくめで登場したCLISMS。何度もスペルを読み上げてもらえたので覚えました。KEROSENE454とTHE BAND APARTの間をいくような東京スタイルの屈折エモ。いつ終わるとも知れぬエンディングで引っ張りに引っ張って、この日の一大イベントを豪勢にシメてくれました。

▼ということで、当初は全7バンドって多いな…と思っていたのが、終わってみると各バンド方向が似ているようでいてそれぞれなりに異端で、あと真ん中近くで自分たちが出演したこともあってか、あまりダレを感じずに最後まで見ていることができました。と完全にお客さん目線でまとめてしまってますけども。我々DOIMOI次回のライブはまた未定です、めぼしい物件があったら呼んで下さい

▼今日18日はネットで購入してあった物資がいろいろと到着して、開梱・試用し悦に入っております。BBEソニックマキシマイザーいいっす。

【本日のレビュー:THE FIRE SHOW「ABOVE THE VOLCANO OF FLOWERS」】


ダグ・シャリン絡みティム・キンセラ関連などもリリースするシカゴの優良マイナーレーベル・PERISHABLEのバンドです。あらゆるクレジットが不在のパッケージで、中に「download cover art at www.fire-show.com」というフザケた紙切れが。音楽の方もなかなか変態でして、XIU XIU31KNOTSPOLVOの中間みたいな未来派骨細系軟体ジャンクパンク。多分シカゴということでPIT ER PATや90 DAY MENともリンクしますかな。シンセやリズムマシンも導入してやけにレトロSF的であったり、ヤケクソ気味にダブ化したWIREみたいであったり、不敵な酔拳でひょいひょいと弄ばれてしまいます。ライブ見たら相当気持ち悪いんだろうな〜。AKSAK MABOULやレジデンツがお好きな熟年プログレッシャーにもオススメ。

  12月16日
収穫はなし。人の家や人の車にあがり込むと、真っ先にCDプレイヤー係を買って出る私ですが、自室にいるときは実はあんまりCD聴いてないのでした。何と!これだけCDを持て余しておきながら!というのも、今まではPCデスクと向かい合わせにある学習机(すなわちPCデスクに向かうと学習机は自分の背面に来る)にステレオ一式がセットしてあって、しかも音飛びしがちなので、振り返ってCDをセットするのすら億劫だったんですね。自分の部屋では全てのことに恐ろしく億劫になるタイプです。で、そろそろレビュー書くかあ〜という時間帯になるとヘッドホンを持ち出してPCのディスクドライブで聴く、という何とも心の貧しい音楽生活を、ここしばらくずっと送っておりました。

 しかもPCデスクは窓際びったりの位置。明るくていいじゃんということはなく、逆にカーテンを全面開けきることが出来ず、薄暗い部屋の塞ぎこんだ隅の方に毎日生息しているような形でした。ちょっと録音などしようものならケーブル類がゾロゾロ這いっぱなし、ついでにCDもCD袋も手袋もゴタゴタに重なって酷い様。(ここまで書くと本当に酷いみたいですが、実際このとおりです。)ゆえに録音へのモチベーションも上がらず、暇なら暇で無為にヤフオク巡回その他。生産性のあがらない生活にうんざりし、とうとう今日、ウン年振りに軽く模様替えを決行しました。

 (ここまで読むのが面倒だという方、要は「今日模様替えをした」と言ってるだけです。)

 結果が下の写真群。CD聴取および録音行為をするのにわざわざ腰を上げなくてもいいように、システマティックな構成となりました。

↑これがPCデスク周りの全景。ガラス戸から少し離れたことで一気に圧迫感を解消。いやー住みやすい。(カーテンの柄は私のチョイスではありませんが…)

↑コンポのスピーカーでディスプレイを挟み、CDプレイヤーも手を伸ばしやすいベストポジションに。いま再生しているCDを1枚だけ立てておくディスプレイもこのように活躍(ちなみに撮影時のBGMはBODY COUNT)。更に目の前にハードディスクレコーダーを置いて、創作意欲を促します。SCSI端子しかないため、この位置にあってPCとは全くリンクしてないというのがポイント!ディスプレイの上には本秀康氏のキャラクター人形を両面テープで整列させています。

↑機材セクションにはVOXの5000円で買える優秀なミニアンプ、PATHFINDER10が鎮座。土台は中学校の技術家庭科で作った意味不明の棚。GUYATONEのパワーサプライも結線済みでスタンバイ。ちゃんとしたレコーディングの時くらいしか出番のないマイクスタンドやマイクも適当にセットしてそれっぽい雰囲気に。PC本体もこのように足元に移動させて、スペース確保に役立ってもらいました。

 こんなにしょぼいのかよ!とちゃんと音楽制作やってる人には言われそうですが、この程度の設備で頑張っております。それよりとにかく、色々気の進む部屋になったので満足。作業完了してから今まで、とりあえずCDは何かしら再生しっぱなしです。以前は頑張って1枚セットしてもそれが終わると放置という状態だったからこれは進歩。未聴CDの山の消化も早まることでしょう、バックグラウンドの整備というのはやはり重要ですな。「充実した一日を過ごすには?」との問いへの最良の回答が「よく寝ること」であるように。

 そういえば、秋頃に突如姿を現したっきり消息不明になっていたゴ○○リも、取扱説明書類を乱雑に突っ込んであった段ボール箱の底で息絶えているのが無事確認されました。一代限りの命に終わっていて本当に良かった。

【本日のレビューその1:JADED HEART「INSIDE OUT」】


ドイツ出身、LONG ISLANDの美旋律系産業ロック。もうこのひと言だけで全てを言い表せてしまえる内容です。わかる方だけどうぞ。ヴォーカルはイモくなく、録音と演奏はまあまあ良し(ドラムはエレドラもしくは打ち込み)。総じて高品質ですが、ドイツ産なだけに爽やかになりきれずどこかドロッとメタリックな粘りが出てしまうのがカワイイところか。

【本日のレビューその2:ART FARMER「THE SUMMER KNOWS」】


夏の哀愁を爽やかに綴ってくれそうな綺麗なジャケに惹かれてけっこう前に買った品。76年の録音で、バックはシダー・ウォルトン(pf)、サム・ジョーンズ(b)、ビリー・ヒギンス(ds)。アート氏本人はここではフリューゲルホルンとしてクレジットされています。選曲もゆったりしたスタンダードばかりで非常にリラックスした内容。生活(または薬代)かかっとんねんワレという気迫もなく、優美な音楽を優美に演奏、刺激がなさすぎる気もしますがこれはこういう収まり方でよいのではないでしょうか。ボッサな"黒いオルフェ"もあまりボサボサ〜と洒落込み過ぎず、あっさり上品。硬くてクリアな録音(特にピアノ)はちょっと面白くないが、腹は減ったけどクドくないやつを…と残暑の時期にそうめん的に手に取るには良さそう。

  12月15日
▼その後寝違いは快方に向かい、昨日より斜めじゃなくなりました。本日の収穫、大須グレヒのバーゲンコーナーからLUBRICATED GOAT「PSYCHEDELIVATESSEN」(AMPHETAMINE REPTILE)、GOD BULLIES「WAR ON EVERYBODY」(同)、HALO OF FLIES「MUSIC FOR INSECT MINDS」(同)、V.A.「UGLY AMERICAN OVERKILL」(同)、SACCHARINE TRUST「THE GREAT ONE IS DEAD」(昔SSTにいたジャジー・ハードコアバンド!2001年新作!)、THE FIRE SHOW「ABOVE THE VOLCANO OF FLOWERS」(PERISHABLE)、BEN VIDA「MPLS」(ジョシュ・エイブラムス参加)、WILLARD GRANT CONSPIRACY + TELEFUNK「IN THE FISHTANK」、THE EX「STARTERS ALTERNATORS」(98年)、FUCK「CUPID'S CACTUS」、ARRESTED DEVELOPMENT「3 YEARS, 5 MONTHS & 2 DAYS IN THE LIFE OF...」、以上の品をおおかた315円にて。ひとつは525円、ひとつは31円(!)でした。依然ヤバイですあのバーゲン棚。そして更に名駅69にてRUSH「FEEDBACK」(最新カヴァーアルバム!)、大貫妙子「SIGNIFIE」("夏に恋する女たち"収録)。今日は安物買いの神の気前が良かったようです。

【本日のレビュー:SACCHARINE TRUST「THE GREAT ONE IS DEAD」】


まだ活動していたとは!BLACK FLAGやHUSKER DUを輩出したUSアンダーグラウンドハードコアの名門SSTで、フェイクジャズとハードコアをクロスオーヴァーさせたようなユニークなスタイルを身上として80年代から活動していたバンドが、2001年にドイツのレーベルから出した新作です。調べてみたらやっぱり長いブランクの後の復活作だったようで。これがまた、時代が彼らに追いついて追い越したのも気にせず完全に我が道をいく強力な内容。初期KARATEとKING KONG(SLINTの1stにいたイーザン・バックナーによるユニット、B-52'S風のDIYパブロック)とFUGAZIの近年作が合体したみたいで無茶苦茶クール!おお〜。屈折度はますます上がり、枯れきったNOMEANSNOと思うことも可能。以前のようにハードコアパートとジャジーパートが唐突に切り替わるのではなく、それぞれを感触レベルまで咀嚼して巧妙に融合させるようになるなど、進化の跡さえ窺えるのが凄い。そして上質の円熟グルーヴ。楽器の上手い若者が寄り集まって取って付けたようにでっち上げる「何々+何々+何々」なミクスチャー・ミュージックとは次元違い。やっぱりヴェテランの味は違います。エンジニア等の表記がないですが録音も非常に今日的で良好なもの。老いも若きもこいつは買いですわ。

  12月14日
▼寝違いについて調べました。「寝違い」「寝違え」「患部を強くもんだりしない」「首と肩口の間に効くツボがある」「冷やす」「熱を持っていないようだったら温める」「寝相が原因」「内臓が原因」等々…情報化社会の世知辛さを思い知るのみに終わりました。ともかく現在は湿布で冷やしています、朝からツライっす。ほんとに。

本日の収穫、御器所ディスクヘヴンにて中古でPARCHE「SON OF A HEALER」(THUNDERHEADのテッド他参加!)、THRENODY「AS THE HEAVENS FALL」、SECTION BRAIN「HOSPITAL OF DEATH」(チェコ産オールドスクールデスラッシュ)。

【本日のレビュー:THRENODY「AS THE HEAVENS FALL」】


オランダ産プログレッシヴデスメタルグループ、93年1st。ジュエルケースに貼られたステッカーには「AVANGARDE-DEATH FROM HOLLAND! INNOVATIVE AND UNIQUE!」と何のひねりもない叩き文句が躍っています。リリースはドイツのMASSACRE RECORDS。これが意外に侮れない内容でヨロシイのです。「HUMAN」〜「INDIVIDUAL THOUGHT PATTERNS」期のDEATHからあの恐るべき手数を取り除いたような、妙な歌心のある単音リフに彩られた屈折スタイル。軽く初期ATROCITY風でもあり、FEAR OF GODと並んでNEVERMOREの先取りっぽくもあります。普通にCYNICあたりに近い評価を得てもおかしくない逸材じゃないっすか。ブラストはないがダウンチューニング&ガテラル声で凶々しさ充分。プログレデスというと安易に激テク合戦に走ったり、聴いて疲弊するほど重厚長大に武装したりする輩が多い中、このバンドはおおよそ4分台の楽曲で焦らずゆったりと捻じ曲がった世界観を語ってくれるような感じが快い。地味だが彫りが深く味が長い、大人のメタルです。

  12月13日
収穫はなし。10Wのミニアンプからヘッドホンの音漏れ程度の極小音量を出してスタック風?に録る細工を検討、それなりにうまく行く(当社比)。少なくともアンプシミュレータよりはいい感じ。これに際し購入以来初めてつないでみた通称クジラ、定評どおり低音のスピード感が気持ち良く、さっきまで意味なく部屋の物音をヘッドホンでモニターして過ごしてました。メーカーサイトのデザインと同じような配色の紙の外箱がまたオシャレ。あとは激安チューブマイクプリと立派なケーブルを調達して次のレコーディングはばっちりだ。色々見てるうちに勢い余ってうっかりこんなもの(スピーカーシミュレータ、約7万円)やこんなもの(特殊構造メタルポップガード、約9千円)までポチッとしそうになってしまってました…危ない。結局ただの買い物好きのようです。

【本日のレビュー:JOAN OF ARC「THE INTELLIGENT DESIGN OF JOAN OF ARC」】


シカゴポストロックのオピニオンリーダーかのように登場し、どんどん勝手に変態になっていった、つまるところ「孤高系泥酔音響アメリカーナ・フォーク」なJOAN OF ARCの初期からつい最近までの、7インチのみでリリースされていたレア音源などを集めた編集盤。プライベート感5割増のへろへろ&ノイジーなトラックが多く、ある意味彼らの実態がよくわかる内容ともいえます。ぼーっと散歩中のジョン・フェイヒイの頭の中を混線したAMラジオで無理矢理受信したような。あらゆる「いわゆる」に属するのを拒み、全部違って全部新しい、しかもそのどれにも一見してJOAN OF ARCとわかるハンコが押してあるという、底知れぬ創造性の源泉は何なのか…聴いてえげつねーなと思わないアルバムはないですね。毎度。よくも鼻歌のように飄々と。こうして年代順に並べて聴くと、古いものは本当に属するところがなく宙ぶらりんな印象で、新しくなるにつれ敢えて「いわゆる」にスレスレまで接近しておいて、持ち前のアクの強さで全くの別物にしてしまうという悪ノリがエスカレートしている感じを受けます。どちらにしろ手荒な脳みそマッサージには違いない。ファンの方はコレクションのコンプリートに、未聴の方は最初の1枚にもOKな充実の全19曲。余ったB面曲だけでここまでやってしまう余裕って何なのさ一体。

  12月11−12日
収穫はなし。先日ヤフオクで購入したきたない古いボリュームペダルをサビ落としで磨いてキレイに掃除。以前から一人演奏でライブが出来ないかと目論んできたのですが、物も揃ってきてそろそろ形が見えつつあります。

▼やりきれないニュース、テレビ東京「ポチたま」のまさお君(7歳)が悪性リンパ腫のため急逝。まさおーー。

【本日のレビュー:LOUIS MOHOLO/THEBE LIPERE/DEREK BAILEY「VILLAGE LIFE」】


91年、イギリスでの録音。INCUS RECORDSから出ています。キース・ティペットやピーター・ブロッツマンなどその道の名だたるプレイヤーと共演してきた黒人ドラマーのルイ・モホロ、素性はよくわからないが80年代中頃から録音があるテーベ・リペレの二人がドラムとパーカッションを担当し、フリーインプロギターの神デレク・ベイリーがそのタッグと渡り合うというライブレコーディングです。アフリカ出身のパーカス両名は静かながらトコトコトコ…と素早く、5km先の草原を走るシカのような音でおおむね繋いでいて、対するベイリー大先生も詩情は抑え目にランダムな風を吹かすといった具合。この人、いつも同じような音を出してるように聴こえて、ここでは例えば「AIDA」などの美しさとはまったく異質の演奏。普段の間の多さを思うとややフリージャズ的なタイミング感で流れていっている感もあります。音数が多い分やや緊張感には欠けるかも知れませんが。何をやっても出る音出る音「然るべき眺め」として納得してしまうこの表現力というか構築力というか、やはり筆舌に尽くし難いものがあります。ハイハイと簡単に承知して済んでしまう「よくあるノイズ」とは月とスッポン。STORM AND STRESSあたりが好きでベイリー先生が未聴という方は、取っ掛かりの1枚にいいかも知れません。

  12月10日
▼マニさんこと元GURU GURUのマニ・ノイマイヤーのライブを見に鶴舞KDハポン、の向かいのDAY TRIPへ行ってきました。

▼到着すると1番手のDRUM DISKOが演奏中。フロア後方にブースを構え、iMACとミキサーの同時操作でオーソドックスな四つ打ちテクノをやっていました。ほどなくして2番手ボトムミンチ。実はこれが今日の目当てのひとつで、というのもここのシンセ氏と私が同じ所で働いているのです。彼はNIRVANA大好きで近頃もっぱらトランスづいていたという話で、どんな音が出てくるのか皆目見当つかずにいたのですが、これが今時珍しいDIANOGAHやATIVIN、C-CLAMPタイプのポストロック。97〜99年くらいの、エモとポストロックが渾然一体としていた頃のあの感じです。手数を詰め込みすぎずゆとりのあるドラムを後ろに、ギターとベースの中低音が泳ぎ、効果音に近いシンセが更に景色を描き込むといった構図。日本に掃いて捨てるほどいるPELE似のがっつき系ポストロッカー達とは全く空気が異なり、非常に和やかに見れました。余談ですが、ギタリスト氏が某STIFF SLACKの新川さんに髪型・骨格・眼鏡とも激似で静かにビックリ。しかもMERCURY PROGRAM好きだという(でも過去の来日のことなどは知らなかった)彼、一度店に行ってご対面してもらいたいところです。

▼続いてはミラーボールズ。5月の鶴ロック以来に見ましたが、ミラーボールの回るライブハウスで聴くのもまた良し。毒々しい60年代サイケフォークブルーズを更に昭和初期の娼婦街に持ち込んだような独特の作風は、既に揺るがぬ円熟の域ですな。誰かっぽさの全くない憑依系ヴォーカルも圧巻。そして目つきがすげーです、うわーホンモノだ〜という貫禄。CDが発売になってタワーにも置かれてるとのことで、売れてもらいたいです。

▼続く出演者は何やらソフト・ヴィジュアル系のようないでたちの人達で、これは何だと異変を察知した客がフロアからサーッと引く。VALLEYと名乗るバンドでした。私も外には出ないまでもスルーするつもりではじめは座っていたのですが、陰陽座+HIGH ON FIREみたいな和テイストの若干ドゥーミーなヘヴィロックが聴こえてきて、途中からけっこう楽しんでました。やっぱり必要以上に上手いのはメタル畑の人だ。メンバー全員、音楽専門学校の講師級に上手い。特にドラマー氏は外人レベル。今週金曜にレコ発があるそうで、頑張って下さい。

▼そしてメインのマニ・ノイマイヤー。皿を回したり民族楽器を叩いたりオモチャを鳴らしたりしていた3年前のステージを見て、そのアイディアとあほらしいまでの行動力に感服するとともに、多分手の内はこれでだいたい出尽くしてるんだろうな…と思っていたら案の定。今回も「日本人の奥方と一緒に出てきて骨のような音の高い打楽器を叩き、続いて小さいタイコを使った1〜2曲(歌あり)」→「ドラムセットに移動してドラムソロ」→「きんちゃく袋からブチまけた大小各種の金属製の皿を回したり叩いたり」というお馴染みの内容でした。神のように技が凄いかといえば、バークリーで講師をやってるような職業ジャズドラマーの方が多分上手いし、グルーヴが最高かといえば、黒人の本物のアフロビートのように強烈とはいかず、ルーディメンツの応用と発展みたいな叩きまくりをひたすら続けるだけではあるんですが、先端技術博覧会の類いではなく、紛うことなき「マニ・ノイマイヤー・オン・ステージ」をやってくれる人です。喋り倒して人を微笑ませる囃家のノリ。加えて、もう50〜60歳にもなろうというじいちゃんが一切の淀みもなく何十分もドラムを叩き続けるという精力にも恐れ入ります。

 後半は名古屋のプログレハードロックバンドFREE LOVEのメンバー3人と、DAY TRIPの社長氏との5人編成でグルグルならぬ「クルクル」を名乗り、数曲セッション。ラストでGURU GURUの代表曲"電気ガエル"が聴けたのが最高だった!ドイツ語でラップともナレーションともつかぬことをやるマニさんのスポークンワードスタイルのヴォーカルがノリノリでたまらんかった。社長氏が暴走して何だかわけのわからない状況になり、マニさん一人のときより明らかに客が減ってましたが…。

▼物販では特に何も買わず収穫なし。マニさんは年が明けて3月くらいにまたDAY TRIPでやるそうなので、一度も見たことないという人は行ってみるといいと思いますよ。

【本日のレビューは省略します〜。】


  12月9日
収穫はなし。何か宅録をしようと思ったがどうにも跳躍力不足だったので、CD CONNECTIONをウロついて久々に買い物リストを作成。初めてちゃんと聴いたバケットヘッドがえらいカッコ良かった。嗜好がどんどん普遍的でない方へ偏っているのを実感。一昨日に続いてまたハードルの話になりますが、近頃の購買行為の判断基準はもはや「どうしても持っておかないといけないもの」というところに来てる感じです。ムダ買い回避と余計な向学心ゆえに。なので、好きそうな界隈に混じっている紛い物も決して許さない。近頃のCUNEIFORMにいる「レコメン系」のバンド群と、90年代前半にうじゃうじゃいたポストPANTERA〜ALICE IN CHAINS系のいわゆる「モダン・ヘヴィ」ものと、精神性は何も違わんですね。と今日改めて確認しました。

 昨日くらいにふと頭をよぎったAKSAK MABOUL(チェンバーレコメンの開祖バンドのひとつ、世界中の辺境音楽の断片を題材にしていたといわれる)の2作目冒頭曲のリズムが、今思えばセカンドラインビートだったということに3年越しで気付き、あーやっぱり音楽の諧謔性とかそういうものは、知るものを知っておかないと判らんのだなと思う。そこでクスッと笑うか笑わないか、劇中のジョークに対する映画館の客に置き換えてみれば、やっぱり笑えたい。
 「酒がうまい」と言うとき、その人は多分うまくない酒とうまい酒のイメージをもっている。漫画もゲームも全部、身を置いている文化で培われた価値基準の助けによって「最高」と「クソ」を分ける。音楽だけが頑なに「無心で感じなければいけないもの」と言われがちなのは、こちらから身を乗り出して解釈しようとしなくても時間の流れさえあれば受容することができる、という表現形態の本来的性質(すなわち「目にした映像から意味性を汲み取る」とか「ことばを理解して文脈を得る」といった作業が不要)によるものなのでしょうが、それがあるとはいえ完全ニュートラル状態で音楽を聴けてる人は誰もいないと思っています。平均律も何もない時代の原始人にビートルズを聴かせてグッと来るかといえば、恐らくノイバウテンやTHIRD EAR BANDなどを気に入る可能性の方が高い。コルトレーンとキャンディ・ダルファーの違いは願わくば判りたいし、ジャズの良し悪しを噛み分けるためにジャズをたしなもうという発想に至るのはどこも悪くない。「誰にでも親しみやすいポップな曲」は正しくは「現代文明に生活する大半の人が標準的に刷り込まれている程度の西洋楽典的音楽言語によって容易に解釈可能な曲」でしかない、と断定した上で、個人的な好き勝手と上述の普遍的基準が一致してもしなくても、好き勝手やるのが大事ですね。そういう点で好きなようにやり切ったと感じられる音楽に今はよく惹かれます。

【本日のレビュー:AKSAK MABOUL「UN PEU DE L'AME DES BANDITS」】


80年、CRAMMED DISCS主宰のマーク・ホランダー自身によるバンドの2nd。彼がART BEARSの欧州ツアーを手伝っているときに録られたそうで、そちらからフレッド・フリスとクリス・カトラーが全面参加。タンゴ、室内楽、パンクまで、徹底的に粉砕したものを木工用ボンドでゴツゴツにくっつけてしまったような、文脈モンタージュ系のインテリ捏造ロック。しかしその感触は時にローファイであったりして(バカテクのくせにロックな突撃感を上手く醸し出すクリス・カトラーは本当に冴えてる)、ぱっと聴く愉しみを度外視はせず。ゆえにコンセプトありきで新しい構築性を追うという調子であったおおかたの70年代プログレとは匂いが違い、HENRY COWあたりに近いようでいてもっとポストパンクやNO NEW YORK系以降のフラフラしたおぼつかなさ、バラバラ感があります。ANIMAL COLLECTIVEとかがお好きな向きでもスンナリ聴ける感じでしょう。安っぽい変態志願音楽とは真逆に位置するアカデミックな求道芸術であります。

  12月8日
収穫はなし。相変わらずDSスーパーマリオのミニゲームで家族内のハイスコアを次々と出してはキープしています。最近非常に気になるものは、「半年くらい前のヒット曲を品のないインストアレンジ(ヴォーカルラインはサックス)にしたダイソーの店内BGM」です。あれをやめて、多過ぎる「ザ」もやめれば、いくらかインチキ臭くなくなるのになあ。オススメの100円ショップはやはり「クリスタル」です。名古屋市内ではかなりレアですが。

 といいつつダイソーでマフラー(210円商品)とニット帽買いました。

【本日のレビュー:CLEARLIGHT「FOREVER BLOWING BUBBLES」】


70年代フレンチプログレバンドの2作目。恐らく76年のリリースです。フランスのプログレはMAGMA/HELDON絡みやZNR、LARD FREEのような前衛系と、ANGEやMONA LISAのようにまっとうなシンフォ系…をやりたかったはずが変にシアトリカルなヴォーカルのせいで気持ち悪くなってる(ホメ言葉)系、の両方ありますが、このバンドは後者。なんと特に変わったところのない内容か。気持ち悪さもあんまりないので非常に普通です。英国5大バンドで系統分けするならGENESIS属ですな。かなり分かりやすく影響が窺えます。また絶えず小さいフレーズを繰り返し弾いているピアノが若干、マイク・オールドフィールド風(もしくはMAGMA「M.D.K.」風)のミニマリズムを醸し出すようなフシも。歌入りなのは全7曲中2曲のみで、インストの盛り上がり/下がりの大きい波がほとんどメインのように描かれている感じです。結局構造的にはMAGMAに感化されてるのか?こりゃ典型的な追従型B級バンドでした、いやはや。しかし準A級といっていいくらいのクオリティはあり、清々しい空気感がなかなか魅力。そういうアンティークとしてマニアの方がどうぞ。
  12月7日
収穫はなし。売れるCDを早く売りたい毎日です。最近は何か、明らかに聴けば楽しそうな盤でも買うのをためらうようになりました。買い控えることをようやく覚えたというか、CDを所有することに対してハードルが上がり続けている感じです。思わず膝を打つくらい何かある音楽以外、わざわざ新しく知って聴き込む時間も置いておく場所も現実的にないよなという、やや寂しい醒めた考えを今は持っています。あるいは聴取を通してその内容と対話できるくらい熟知しているジャンルならばカス盤でも拾ってきますが。ともあれ「なんとなく」や「そこそこ」を自分から排除できれば良いようです。

【本日のレビュー:SATYRICON「THE SHADOWTHRONE」】


何とここのサイト内検索で一年前にもう1枚買っていたことが発覚したというショッキングな品です。久々の二重購入、あ〜あ。それも2枚目を買ってから1ヶ月以上経って気付くという。これだからCDの増え過ぎはロクなことありません。

 さておき本題。来年CELTIC FROSTとともに来日が決まっているSATYRICONは、現在活動しているノルウェイジャンブラックメタルバンドの中では最古参の部類に入る人達で、これは95年にMOONFOGからリリースされている2作目のフルアルバム。ブラスト一辺倒にこだわらずタメのあるリズム展開、ただでさえ現代音楽と相通ずるところのあるブラックメタル界でも飛び抜けて厳かなコードワークなど、現在とほぼ変わらない作風をこの頃既に確立してしまっています。やや締まらずまどろっこしい感じはありますが。狂気のアグレッションや怨念の類とも異なるこのファンタジックな悪魔礼賛ムードは、さながら逆・聖歌とでも呼ぶべきか。日本で紹介されたての頃は「メロディック・シンフォニック・ブラック」みたいな言われ方で、ブラックメタルにメロディがあるなんて凄いという程度の簡単な解釈でしたが、ネガティヴの極みを非常に音楽的な領域で濃く深く表現していたというところに真価を見出すべきかと思います。もはや重さ・速さを追究する「反動の非音楽」の域は抜けてしまっていますね。そういうものもテーマに一致するいち手法として然るべく扱っている感じです。間接的に狂気を照らし出すような余裕こそこの人達の魅力です。

  12月6日
収穫はなし。妊娠初期で調子が安定するまで静養のために実家に戻ってきている姉が、横になっている間のヒマ潰しに任天堂DSを導入し、私も便乗して時々やってます。モグラ叩きが得意。

【本日のレビュー:HOLY TERROR「MIND WARS」】


80年代マイナースラッシュの名盤ですね。イモイモ正統派パワーメタラー・AGENT STEELに在籍していたギタリストが同バンド脱退後、時流に乗ってスラッシュメタルに手を出してみたら大変なことになったという1枚です。これは2ndで、現在は1stとカップリング&リマスターで再発されており、私はそれを所有しているのですが、先日このオリジナルを500円で見つけたので思わず買ってしまいました。で何が大変かというと、そのスピード感の質。これがリリースされた88年ともなると、パワーメタルとスラッシュメタルはかなり明確に区別されており、スラッシュメタルの高速2ビートはもはや普通の8ビートを早回しにしたものとは異質の、速いのか何だか分からないパタパタパタ…という独自のリズム感覚を確立していました。しかしこのバンドは、ギターリフからドラムのフィルに至るまで、メンバーの出自であるパワーメタルをそのままドォーッと倍速回転させたような、尋常ならざるビート感を持っていたのであります。1曲目の仰々しいイントロが過ぎて一気にバーストする展開では、大抵のエクストリームミュージックに慣れている人でも腰を抜かすこと必至。多分、当人達は敢えてこんな無謀なやり方を願ったわけではなく、パワーメタルの素養だけをもとに妄想でスラッシュメタルをやってしまったからこうなったのでしょう。いやーこういう「誤読の音楽」は貴重です。案外こういうのが時代を変えてしまったりするものですが、彼らの場合は地層の深くに埋もれたっきり今に至ります。QUIET RIOTのケヴィン・ダブロウを更にヘタにしたようなヴォーカルも災いしたのか…まあそこに限らず、ジャケを含めて色んな所が胡散臭いですが。胡散臭いメタルを掘り起こすのが大好きな人は絶対買うといいです。

  12月4−5日
▼4日は鶴舞DAY TRIPにてリシャール・ピナス・バンド名古屋公演。70年代フレンチプログレ界においてMAGMAと並んで怪気炎を上げていたHELDONの中心人物です。今回はMAGMAのベーシストであったベルナール・パガノッティの息子にして現在のMAGMAのシンガーであるアントワーヌ・パガノッティが何とドラマーとして参加しているということで、そこも気になって見に行った次第です。

▼遅まきに会場に着くとトップバッターのG-FIGHTERは終わっていて、同じく地元からの出演者FREE LOVEがセッティングしていたところ。ほどなくしてスタート。アルバムのレコーディングまで在籍していたドラマー氏が脱退して、新たに迎えた二人の新ドラマー氏を両方出演させるツインドラム編成にて、猛々しくもサイケ、オールドロッキンかつ祈祷的なプログレッシヴ・ハードロック(タームとしてのいわゆる「プログレハード」とは全く別物)を展開。4月に見たときは激音圧一辺倒のPAにかき消されていた生レスリーのオルガンが今回はバッチリ聞こえました。KINGSTON WALLの如くバシバシテンションを上げていく1曲目が終わると、MCで早くも「次で最後の曲です」との宣告。2曲目はすなわち超・長尺にうねってうねってうねりまくる、RAINBOWミーツMAGMAな大曲。全くサイズ負けせずにこの堂々たるスケール感を出せてしまうのはひたすら見事。そこいらの若いバンドのように轟音に頼ることもなく、曲が意思をもって先へ進むような演奏。特にベーシスト氏の牽引力が凄まじく、ボグボグと歪んだ中域寄りの音でアンサンブルをかき分けていく様はそれこそ往年のパガノッティ父の如し。佳境を迎えるとオルガンに跳び乗って座布団にしてしまう大サービスなパフォーマンスも飛び出し、清々しく燃焼しきって終了。

▼そしてメインのリシャール・ピナス・バンド。リシャール氏は天然パーマでメガネの一見普通のおじさんなようで、学者風の鋭い目つきの持ち主。アントワーヌ君は日本人とのハーフなので見てると落ち着く顔立ちです。背も低めだし。ノートPC担当氏はいかにもノートPC担当といった感じの頭良さそうな長身イケメン。リシャールの足元にはずっとZOOMのあんまり高くなさそうなディストーションペダルがあって、あれ何に使うんだろう?と思って見てたら、ごく普通にメインの歪みとしてギターに使ってました…。オーバーブーストされきった超ロングサスティンの、すなわち70年代ロバート・フリップのトーンを、ちっちゃいZOOMでお手軽に再現というのは少々寂しい気も。(アナログ感のないサイバーな響きが狙いだったなら成功といえますが。)

 演奏の方は、傍らの机にセットされた謎の大型ラックエフェクターでギターシンセの具合をコントロールしながら、減衰の遅いループ寸前のディレイで一人アブストラクト・ポリフォニーを構築し、そこにPCが絡み、人力ドラムがピタリと合わせるという、荒涼としてトランシーな音響彫像の類い。何かそれ以上のトリックやアイディアがあるかと思ったら特になく、なんだ最近のポストロックバンドで見るような感じだな〜と、BATTLESみたいな極端な例を既に知ってしまっている手前、正直なところ若干拍子抜けの感も。しかしこの人こそがパイオニア世代の一員であり、ここはロックギターにおけるクラプトンのような目で見るべし、と心の声で意識を修正。というか逆に、30年前から現在のポストロックに直結する試みをやっていたんですね。TEMPORARY RESIDENCEとかに今でもゴロゴロいるじゃないかこういうの。

 個人的に要注目だったアントワーヌのドラムはというと、これが激ウマ。さすがにクリスチャンの巨大な山脈の如きオーラには敵わないまでも、PCから再生されるシンセベースに寸分の狂いもなくビッタリとリズムを合わせ、ジャズドラムをたしなんだ腕前でそりゃもう大胆に叩きまくってくれました。技量・表現力ともに「上手い外人」を遥かに超えたレベル。かっこよすぎ。MAGMAで歌うときも、目を閉じてマイクを両手でしっかり持ち、呪文を唱えるように集中してあの複雑なスコアを完璧にこなす人ですが、ドラムセットに座っても険しいイイ顔してました。途中盛り上がり始めてからはほとんど彼の独壇場で、魅せられました。やっぱりライブは精神力です。

 1セット1曲(1セッション?)でドーーッとやり切って、ありがとうと礼を述べてステージをさがると結構熱心なアンコール要求が。私も加担して呼び戻しに成功し、もう1曲テンション高めのをやってくれて完全終了。演奏中は偏屈そうに下を向いているリシャールでしたが、客に話しかけるときは普通にいい人そうなトーンになってました。ミュージシャンのこういう姿を見ると安心。あー人間なんだ良かったと思う。演奏中は人間に見えなくなるようなライブをするというのも重要ですね。

▼で4日の収穫は、今池P-CANにてMOHOLO/PIPERE/BAILEY「VILLAGE LIFE」、グレヒ今池にてORNETTE COLEMAN「BODY META」(リマスター)、BRUCE COCKBURN「INNER CITY FRONT」、ROBERT PLANT「NOW AND ZEN」。

【本日のレビュー:HELDON「INTERFACE」】


HELDONの代表作といえばやはりこれでしょうか。ジャケのインパクトも相俟って。77年録音、MAGMA〜WEIDORJEのパトリック・ゴーティエも参加です。やってる内容は今回の来日での演奏と結構近いものがあり、ループするシンセ+自由に絡むドラム+ひょろひょろ〜と乗っかるアドリブギター(これも時々シンセになったりする)という体裁でおおむね進行。テクノ〜トランス方面から再評価著しいメビウス/プランク/ノイマイヤーの伝説盤「ZERO SET」ともかなり共通する作風です。更にこの執拗なシンセのシーケンスがディシプリン・クリムゾンを予見するかのようと言うことも出来る(かも?)。クールにブチ壊れるヒリヒリした温度感はやはり欧州大陸の奥深き芸術観を物語りますね。肉食ってますという派手さはないが、どこまで覗き込んでも向こう側が見えない。19分かけて狂気の絶頂に至るラストのタイトル曲はことさら圧巻。プログレッシャーならずとも買いです。

  12月3日
収穫はなし。日本のことが心配になる要素は生活のそこかしこにあるわけですが、近頃連日チェックしているヤフオクでもよく見かけて心配になります。品物の紹介文の日本語、あれは大変ですね。誤字脱字や単語の勘違いは当たり前、テクニカルな問題以前に論旨の定まらない文章も多く、この間は「〜ですので、〜ですので、〜ですので」とひとつの文中に「ので」を3つ連続で畳み掛ける壮絶なパターンまで発見。決まり文句の類も何だか変で、「新品ですのでノークレーム・ノーリターンでお願いします」「中古品となりますのでノークレーム・ノーリターンでお願いします」の両方とも、よく見かけます。要は原則NC/NRというだけのことを、こういう表現を誰かがやり始めて、それに違和感を覚えず真似する人がどんどん現れて、訂正してくれる先生などもおらず、野放しのまま次第に暗黙のルール化していくという。ネットのお陰で誰もが「作家のセンセイ」になれてしまうこれから、「国語」はどこまで瓦解するのやら。(と言っているド素人の自分のことは棚上げしてお送りしておりますが。)いろんな局面で「強制的な権威の不在」が文化や価値観をもろいものにしていきそうなのは大丈夫なんだろうかと思います。

 ついでなので長く続けます。この前テレビで美輪明宏氏が、「現代は不真面目が礼賛され過ぎている、それは全部企業のせい。日本人は真面目になれ」と口調を荒くして言ってたのを見ました。人から金を儲けるために、人間の本能によりダイレクトに訴えるものを商品にしていこうとする企業の力が、人間の道徳を損ねているということはやはり常々強く感じます。しかし全て野放しの資本主義で「自粛せよ」と叫んでも無理な話。何か市民の倫理観や分別が集約されるような圧倒的な拠り所、例えば国王のようなのがいれば少しマシなのではと少し考えましたが、日本には天皇家がおりますね。年間何億の税金を費やして、統治せずとも君臨するのであれば、時々おテレビでお子様のご成長をご公開したり、時々海外の要人とご挨拶するというくらいでしか庶民に存在感のない、動物園兼外交官一家みたいなことやってないで、もっとまともに君臨するやりようがあるのではと思います。まあここは難しくかつ危険な問題なので特に何も期待できないとして、偉いなーと思うのは儒教、儒教は偉い。おおかた最適と思われる倫理観の体系を教科書的に植えつけておいて、しかし王や神はいないから争いの種にはならないという見事なシステム。何とかしてこれからの世界標準になっていきませんかね。以上終わります。

【本日のレビュー:CHEAP TRICK「BUSTED」】


アルビニ先生も大好きCHEAP TRICK。これは90年発表の通算13作目。デビュー当初のちょい不良ポップはどこへやら、まあ多少は面影を残しているものの、ブライアン・アダムス・ミーツ・U2か、ヤング向けJOURNEYか、はたまた生まれ間違ったJELLYFISHかという感じになってます。いやいや最高じゃないですか。この日和り具合を期待して買いました。ターン!バシャーン!と鳴り響く前時代的ドラムサウンドに、胸キュン要素のオンパレード。ほんと思ったより名曲揃いでメロハー好きにはたまりません。ヴォーカルはTWISTED SISTERのディー・スナイダーがバラードも綺麗に歌えるようになった感じで、幅広い雰囲気のレパートリーを上手くこなす人です。嵐のような速弾きギターソロが全く出てこないので、メタラー以外の方にも聴いていただきやすいんじゃないでしょうか。こういうの、二度と流行らんよなと思っていると、ポツッとFMラジオで流れたりするので、聴いて快く感じる人がそのへんにいるのならもっと派手に復権してもらいたいところです。

  12月1−2日
▼1日は大学のサークルの先輩のバンド・BOOKHOPEがレコ発をやるというので、新栄ロックンロールに来ていたBALLOONSは諦めて(すんません…)今池ハックフィンへ行きました。以下簡単にリポート。

▼1番手はつい先週くらいに見た中村健太さん。内容はおおむね変わらないのでこちらを参照していただくとして、今回は終盤にBOOKHOPEの3分の2を迎えた別名義バンド「CHEAPER THAN YOU」として2曲やってくれました。エレキギターを構える姿は新鮮ながら違和感もなくいい感じ。作風自体は一人でやっている時のハイテンションバージョンといったところで、常に根底にピースフルで正直者(?)なヴァイブレーションのある人なのだなあと、異なる編成で続けて見て改めて確認した次第です。CEHAPER THAN YOUは年2回くらいしか人前に出る機会がないらしく、レアなもの見れちゃいました。

続いてはいきなりメインアクトの片割れのはずのBOOKHOPE。想像していたよりも遥かに精神的殺傷力の高いステージでびっくり。タスマニア島の生態系ばりにオリジナルな深化を遂げたパンクロックでしたとしか言いようなし。若干FOULのような雰囲気もありながら、もっと奇怪な不協和音やその他の脱臼アレンジに富み、あらゆる気力という気力を全力で直接ゴミ箱に投げ込むような意味不明のエネルギー。ナンセンスを観察しながらナンセンスに生きるというか。「やめればいいものを/週末になればなんとなく/隣の町の総合公園/車で出かけマラソンの練習/別に楽しいとかそういうことも無いが走ってる」というラインに集約されてる気がします(ヴォーカルの藤野さんは実際先月の例のシティマラソンにも出場していたようです)。そこらによくある難解・厭世・脱力系リリックをあざ笑うくらい強力にニヒリスティックな詞世界もさることながら、ギタリスト氏の出す音がまた底知れぬ宇宙をもっていて、いやー大変なバンドです。

▼3番目は古賀さん抜きバージョンのジョンのサン。メンバー各自の手元にドラムセットの一部が点在し、ギターなりシンセなりを弾きながらそれをボコスコ叩いて歌うという、かなり野蛮なスタイルになってて非常に良かったです。ただでさえボキボキに折れ曲がったリズムがこの日は更に5割増で湾曲。離散しては集合するアメーバの如くやんわり関わりあう3人のヴォーカルの綱渡り度も上がり、ほとんどART ENSEMBLE OF CHICAGOみたいなノリで聴いてしまいました。しかし素材そのものは普段やり慣れている曲なだけあって、グループ表現としての完成度は本当に見事。終演後「今日は特に良かった」みたいな声がよく聞こえてきたのも納得の名演でした。

▼そしてラストは本日もう一つのメインアクト、サクラショック!(ビックリマークまでが名前)。BOOKHOPEのレコ発のレコというのはサクラショック!とのスプリット(CD-R)だったのです。個人的な話になりますが、なんと高校時代の同学年で多少面識もあった人がギターヴォーカルをやっていることを会場で知り驚愕。学祭でハイロウズのコピーとかをやっていたところしか見たことがなかったのが、まる10年スッ飛んでご対面してみればイースタンユースさながらの熱情ギターロッカーになってるという事実が何というか、とにかく感慨。開放感あるハイコードとズズズズ…というパンキッシュな刻みでコントラストをつける、極東最前線系の熱唱バンドでありました。

▼ということで1日の収穫は件のスプリットCD-R。本日2日は世界バレーのフランス戦を見ました。フランスチームの掛け声がやたらでかくて良かった、あと得点したときの喜び方がキモくて良かった。

【本日のレビュー:ART ENSEMBLE OF CHICAGO「MESSAGE TO OUR FOLKS」】


69年録音。同年の「A JACKSON IN YOUR HOUSE」とカップリングのCDですが、前半は既にまるっと聴いてしまったあとなので、こちらの「MESSAGE〜」の方だけ書きます。(どうせそんなに変わらないし…。)不穏な無限リピートリフにカショカショカショと鈴っぽい鳴り物が寄り集まり、スポークンワードとも呼べない怒号が交錯するという冒頭曲から強烈。もはやフリージャズであることは忘れてパンクを感じます。かと思えば何事もなかったかのように歌い出す。ここに何だか黒人の底力を見ますね。どっちに振れても凄く自然体で、人間がありのままに力強いことの美しさというか、豊かさというか。AECはそういうものを凝縮して体現してくれるグループだと思います。ノレてるかノレてないかというテクニカルな話とは違う、もっと大きな揺れとしてのファンクネスが充満。この3曲目(CDでは8曲目)の"Rock Out"なんてPOP GROUPやLIQUID LIQUIDに先駆けること10ウン年、とんでもない凶暴なサイケグルーヴですな。「脱・楽典音楽」がまとまった形をなしてきたこのあたりの流れが、狂ったジャーマンロッカー達に買われて崇高性をもぎ取られて、ポストパンク〜オルタナティヴ・ロックの源流へとつながっていったんだなあという線もわかりやすく確認できる気がします。おすすめ。

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