物色日記−2007年1月

※頻出語句解説はこちら
  1月31日
本日の収穫、米アマゾンのマーケットプレイスで購入のBEATS THE HELL OUT OF ME「ROLLING THUNDER MUSIC」。色々とやることリストが山積する中から、今日は来月の一人ライブに向けて構想を練りました。やることがというよりただ部屋中に物が山積してるだけな気もします。「日常的に部屋の片付けをしたくなる脳みそを育てるソフト」ってのを任天堂DSで出してくれんかなあ。

【本日のレビュー:ETRON FOU LELOUBLAN「BATELAGES」】


レビュー文中によく「サムラやエトロン」と書くことがありますが、サムラはスウェーデンのSAMLA MAMMAS MANNA、エトロンはこのETRON FOU LELOUBLANTです。ZNRやART ZOYDと並ぶフレンチレコメンの代表選手。これは77年の1作目。80年代初頭までは本家HENRY COW〜ART BEARSの影響でシリアスげに屈折するバンドが多かった中、胡散臭さ満点のズッコケスカスカ変拍子サウンドで転げまわる彼らはちと異色。パンクの空気を吸ったと思しき無責任な景気のよさも加わります。ドラム・サックス・ベースという珍しいトリオ編成を更に非効率的に運用し、1+1+1が3を下回る不条理アンサンブルで18分に及ぶ大曲も無理矢理乗り切ってしまうアホっぷり。この世の終わり的な適当さを備える一方、笑える変拍子を鮮やかにキメる演奏能力の方はしかし実に卓越しているのです。ブラックメタル色を抜いたTHE FLYING LUTTENBACHERSか、ドリフくさくなったARAB ON RADARか、HELLAのザックの新ユニットか、とにかくそんな感じで全然21世紀を戦える内容。逆インテリ系体力派スカムに目がない人は必須のバンドでしょう。

  1月30日
本日の収穫、サウンドベイ金山にてDIVINE EVE「AS THE ANGELS WEEP」、ETRON FOU LELOUBLAN「BATELAGES」(仏レコメン名バンド、単独リイシュー盤!)、BOUD DEUN「FICTION AND SEVERAL DAYS」、TANGERINE DREAM「ATEM」、西城秀樹「ゴールデンベスト」。

【本日のレビューその1:BOUD DEUN「FICTION AND SEVERAL DAYS」】


レコメンテイストなアメリカのバンドの95年作。CUNEIFORMからのリリースもあったと思いますがこの作品はよく知らないところから出ています。内容はヴァイオリンを激・激・激フィーチャーした、ストイックにしてマスロッキンな現代ハードプログレ。土台はよくあるクリムゾンの部分拡大的変拍子サウンドでありながら、やたらアンサンブルがスカスカなのと、常に妙な湿り気を含む哀愁を漂わせているあたり、31KNOTSCHEVAL DE FRISEみたいなバンドを彷彿とさせる雰囲気を持ちます。全編インストで通していてポーカーフェイス一辺倒なのもなかなかシブくて良い。ヴァイオリンの音色がやっぱりかなりムードを左右してますね。そのせいでDIXIE DREGSっぽくも聞こえるけど、これを歪んだギターに置き換えたらちょっとFATES WARNINGやSIEGES EVENみたいかも。だらついたオルタナ風プロダクションで生々しく仕立てられてるので、ポストロッカー諸氏でも聴きやすいんではないでしょうか。もろカウとかもろクリムゾンだったりしない分、90年代以降のレコメン系バンドの中ではちゃんと聴き応えがある方だと思います。UPSILON ACRUXとか集めてしまうような変拍子マニアはどうぞ。

【本日のレビューその2:DIVINE EVE「AS THE ANGELS WEEP」】


アメリカのどマイナーなデスメタラー3人組。93年に唯一発表されたオフィシャル作品であるこの4曲入りEPが、今になって世界中のマニアに探されまくっているとか。今日はコンディションやや難ありの品を運良く300円でゲットできました。内容は確かにこの時期のアメリカにはあり得ないといってもいい、ロッキンにかっ飛ばすスウェディッシュど真ん中スタイルになってます。スローパートの貫禄がまたかなり立派。CARNAGE+AUTOPSY+初期CELTIC FROSTとでもいうべき、ありそうでなかなかないバランスですな。92年の録音でこの達観したセンスは凄い。プロダクションもSUNLIGHT STUDIO諸作品に迫るロウな迫力。今ポッと出の新人がこれと全く同じ内容の作品を(録音状態も含めて)作ってきたとしても、「アングラ・ロックの極北たる正統派デスメタルの美味しいところを非常によく踏まえた秀逸作」だとかいって歓迎されるはずです。CONVULSEとかで飽き足らない人は是非探してみて下さい。

  1月29日
収穫はなし。いま、強く推したいのは、おとうふ工房いしかわの「きらず揚げ」です。ゴキゴキとベイエリアクランチな感じの銘菓。

【本日のレビュー:CRYPTOPSY「NONE SO LIVE」】


大名盤2nd「NONE SO VILE」をもじったタイトルからして最高。バディ・リッチ・ゴーズ・デスメタルなカナダの最強テクニカルブルータルデスメタラーCRYPTOPSYの、2002年モントリオールでのステージを収めたライヴ盤。それまでのデス/グラインドの常識を覆す光速ブラストビートと、SUFFOCATIONを更に目まぐるしくしたかのような恐ろしく複雑かつ緻密な展開、そして人間語にはとても聞こえない醜悪なナチュラル・ガテラルヴォイスで、登場した時にはとにかく度肝を抜いたバンドです。本作では既にシンガーが交代済みですが、演奏の破壊力はやっぱり凄まじいです。これ人間か…という、道路工事のドリルを持つ手をウッカリ離してそこら中をボボボボと暴走させてしまったかのような超高速激手数ドラミング。そこにビッタリ張り付くギターとベース。ベースの激テクっぷりがやたら目立つのもこのバンドのミソですな。デスメタルというものにある程度の免疫がない人は、多分まったく意味がわからないと思います。これ演奏?曲?音楽?何のために?という感じで。私も久々に冷静に聴いたんですが、以前思っていたよりも物凄い人達であることを改めて思い知りました。音楽的な深みとかの話は、スタジオ録音を聴く分には「あっ少しメロディックになったな」とか感想を持つんですが、ライヴ演奏だとそんなことは殆ど忘れてしまいます。考えたり感じたりする余裕などないのです。(だけど"Cold Hate, Warm Blood"〜"Phobophile"の流れはやっぱりキラーだった。)HELLAやLIGHTNING BOLTのライヴを見て「すげー!でもずっと一緒!」と中途半端に萎えてしまった経験のある方、騙されたと思って3月の来日を是非見に行ってみて下さい。後生に残るトラウマになるかも知れませんよ。

 最後にマニアックなツッコミもひとつ…このバスドラはトリガー使用ですかねえ。そうじゃなくてもし本当に全部このパワーで激踏みしてるんだったらフロは真の神ですわ。

  1月27−28日
収穫はなし。アコギを弾くと、ピックによって音が変わるのがよくわかりますね。というか今までピックでこれだけ変わるとは知りませんでした。ジャズピックと称して売ってるもの(小振りで厚めのティアドロップタイプ)はやっぱりジャズらしいぽてぽてした音がするんですな〜。ギター歴15年目くらいにして初めて認識した事実。…今、改めて年数を数えて、本筋と関係ないところで愕然としてます。10代当時の見通しじゃ今頃スウィープとかバリバリ流麗にやれてるはずだったのに…のうのうと15年も何を…。永遠の夢は無論アレックス・スコルニック級の速弾きです。"Eerie Inhabitants"未だにあんな風に弾けん。

▼次があるだろうと昨年のLOUDPARKを余裕こいて見送ってたら何と、ANTHRAXからジョーイがまた脱退してしまいましたか。ガーン。金など惜しまず行くんだった。しかしBRUTAL TRUTH+VADERの次回EXTREME THE DOJOにもうひとバンド、CRYPTOPSYが決まったので、元気出していきたいと思います。ヴョーー。

▼夕飯にキムチ鍋をたらふく食してすぐ30分くらい寝たら、起きたあと直ちに下痢しました。日記部分までメタルネタばかりになってしまってはマズそうなのでまた食べ物の話題に走る。

▼また機材を1個買う。

【本日のレビューその1:ALBERT AYLER「MUSIC IS HEALING FORCE OF THE UNIVERSE」】


VERVEのこの金オビ・デジパックシリーズは凄く購買意欲をそそられてイイですね。69年IMPULSE!、アイラー生前最後のスタジオ録音。ピアノ、ギター、ベース二人、ドラム、ヴォーカルを従えたセプテットにて、リズムは不定だが1曲ワンコードでビロビロビロ〜ッと凶暴なオーロラの如く眼前にびろつく、かなりラディカルなフリー/スピリチュアルジャズになってます。とにかく全曲鬼気迫るハイエナジーっぷりで、山も谷もなく沸き立ち続けるテンションの異様さはさながらジャーマンハードサイケの如し。だがしかし、何でしょうか、ESP作品のような黒々とした錬金術ムードではなく、愛と信念と生気が漲る演奏。アルバムタイトルからしてそんな感じですし、聴こえてくる歌詞にもやたらミューゼックとかラッヴという単語が多い。コルトレーンが蒔いた種かとは思いますが、ジャケに写る脂汗と眼光を見ただけでもこれが嘘やなりすましの音楽ではないことは一目瞭然。ラストで1曲だけごくオーソドックスなブルーズ進行のトラックがあって、ここでの強烈なブロウはさながらファズでも踏んでいるかのようです。アーチー・シェップの大名盤「ATTICA BLUES」も凌ぎそうなほどの極太感が堪能できる1枚ということで絶叫系や酔拳系が苦手な人もどうぞ。

【本日のレビューその2:BADLANDS「DUSK」】


こんないいものかなり前に買ってたのに、取り上げるタイミングがなくてずーっと先送りにしてました。グレン・ヒューズの後釜として80年代BLACK SABBATHに加入、ライブもこなしていたものの「THE ETERNAL IDOL」収録曲のデモを録ったところで脱退してしまった実力派ブルージーハイトーンシンガーのレイ・ギラン(93年にエイズで他界)を筆頭に、元オジーバンドのジェイク・E・リー、元RACER Xのジェフ・マーティン(先代はKISSのエリック・シンガー)、無名だったがその後ソロアルバムにロブ・ラモスを参加させていたりするグレッグ・チェイソンという4人によるスーパーバンドの、お蔵入りしていた幻の3作目。かなり後になってから人知れずリリースされた品で、どう見てもブートの装いですがどうも正式リリースである模様。

 内容はもう全然、1st・2ndの延長線上にある80年代末〜90年代初頭特有のブルーズ回帰系ハードロックンロールそのもの。デビュー当初より随分とヘアメタルっ気が抜けて、いい具合に枯れてます。どれだけ熱っぽく歌い上げてもまだ有り余る容量を窺わせるレイ・ギランのヴォーカルはやはり絶品。デイヴィッド・カヴァデイルなんかより上手いんではなかろうか。チラつく翳りの妙もポール・ロジャース級。あとの人達もいい感じに頑張っている中、特にRACER Xではヴォーカリストだったはずのジェフ・マーティンのドラムがなかなか冴えてるというのが意外な発見。いいバンドだったんですね〜。存続していても音楽的に先があったとは考えにくいですが、レイ・ギランには生きててもらいたかった。ともかくファンは黙って買いです。

  1月26日
収穫はなし。チロルチョコの「ふんわりいちご」、特別なインパクトはないが相変わらず良質な品でした。松尾製菓改めチロルチョコ株式会社には経緯を表そう。「きなこもち」と「黒ごまたると」という名作を連発してしまっては、開発担当のプレッシャーも相当なものなのでしょうな。

▼アデノイドの炎症の件で今日は病院で聴力検査を受けてきたのですが、検査機器の出力端子はキャノンプラグでした。ケーブルはやっぱりベルデンなのだろうか。(極小音量の超高音をちゃんと聞き取れるように鳴らしたりもしなければいけないので、質の高いやつを使っているはず。)聞こえの調子はどうですか〜、と尋ねられたら「頭を傾けると時々レゾナンスフィルター回してるみたいになるんですけど…」と答えてみたいのを我慢してまた二週間後に行ってきます。通院って長くなるもんですね。

【本日のレビューその1:BLOOD HAS BEEN SHED「NOVELLA OF URIEL」】


メンバー2人がKILLSWITCH ENGAGEに行っているメタルコアバンドの2000年作。売りCD裁判候補の山に積んであって、久し振りに聴いたらカッコ良かったのでピックアップ。今や凡百のスクリーモバンドばかりリリースしているFERRETも昔はなかなか気合が入ってまして、1曲目からJUDAS PRIESTかと思う壮大&メロディックな展開に驚きます。(これで売るのをヤメました。)歌が入るとDARK TRANQUILLITYみたいだったり、VISION OF DISORDER以降の極悪ニュースクールスタイルだったり。若干MESHUGGAH風の複雑な変則拍子もあり。基本的にはフィル・アンセルモ級にワルいヴォーカリゼイションと、ゴズゴズと硬く刻むリフの冴えだけで、全編気持ちよく聴き通せてしまいます。軟弱な普通声パートは最小限。全体的にミッド〜スローテンポの曲が多く、しかしそこに32分刻みでドコバカ踏むツーバスも入ったりして、ショベルカーに踏み潰されるかのような重圧感がなかなかよろしいんじゃないでしょうか。メタルが好きでメタルをやりたいくせに「コア」を名乗ってスタイリッシュぶる連中には虫酸が走る、という人にもイケると思います。

【本日のレビューその2:BLACK SABBATH「TYR」】


広範な「ロックのディスクガイド」的なものでは、サバスはオジー時代とせいぜい「HEAVEN AND HELL」までで終わってるかのような扱いですが、メタラーにとっては90年代をまたいでもまだリアルな存在だっのです。昨日のトニー・マーティンが最高だったのを受け、今日ももう1回聴いた上で、彼が歌っているこの90年作を10年近く振りにじっくりと聴きました。昔は実はそこまでピンと来てなかったんですが、ロニーの良さが分かった今、これは実に感動的な作品でした。トニー・マーティンの仮想ロニーっぷりは贋物の域を超えた素晴らしさがあり、BLACK SABBATHはトニー・アイオミ。ここを踏まえていかないといけませんでした。そしてもう初っ端から「あっコージーだ!!」と戦慄が走るコージー・パウエルの雷様ドラムよ。曲も粒ぞろい、というか「『ロニーが歌う様式美サバス』が続いていたら…」という想像を見事過ぎるほどに現実化。そういう意味では常にどこか(もっぱら往年の姿が頭をよぎることによって胸が熱くなるという、やや後ろ向きな)切なさを孕む類の感動ではあります。が非常に輝かしい。

 ちなみにこれの次作にしてロニーの1枚限りの復帰作でもある「DEHUMANIZER」(92年)も立て続けに聴いたのですが、そちらもヴェテラン現役の気概と貫禄をギンギン感じる力作でありました。若い者に負けちゃおれんわとばかりに元祖ヘヴィリフ・マスターのアイオミが猛発奮、そしてロニーはロニーであるだけで圧倒的。ソックリさんによる仮想ソックリアルバムか、本人ではあるが時流に敏感になってしまっているアルバムか、どちらが勝るともいえない2枚であることです。

  1月25日
▼給料日だからって本日の収穫、御器所ディスクヘヴンにてTONY MARTIN「BACK WHERE I BELONG」、TROUBLE「THE SKULL」「PSALM 9」。TROUBLEはリマスターにつき放出された旧盤(しかも94年のリプレス)を中古で回収。リマスターは当たり外れを気にするようになってしまったので、元々のまんまなら文句なかろうと、わざわざしょぼいオリジナルを買い求めてしまう傾向にあります。(雑にCD化されてしまっていたLP時代のものとかは別ですが。)何だかあの情報量の少ない裏ジャケやブックレットこそ愛おしく感じられるようになってしまいました。「一周して逆に何々」もこうなると病気ですな。

【本日のレビューその1:TONY MARTIN「BACK WHERE I BELONG」】


BURRN!編集部が名盤と祭り上げている80〜90年代BLACK SABBATHの三部作「THE ETERNAL IDOL」「HEADLESS CROSS」「TYR」および「CROSS PURPOSES」に参加していたシンガーのトニー・マーティンのソロ作(92年)。当時輸入盤屋の白黒広告にもよく紹介されていた品です。トニー・マーティンは壮大な様式美メタルを歌ってもハマる人ですが、ハスキーでソウルフルなスタイルはストレートなメインストリームロックにもすこぶるマッチ。リック・デリンジャーのハードAOR版といった趣きで非常に!よろしいです。ここまでの逸材だったとは驚き。100回くらい激賞しているRIVERDOGSにも匹敵する感動ではないですか。もしくは枯れ&哀愁化の進んだHARDLINE。最高そうでしょ!?客演陣にあまり有名人はいませんが、唯一、サバス時代からの盟友であるニール・マーレイがほぼ全編でベースを披露してます。あと微妙にアイオミを意識してるフシのあるギターも泣ける。あーほら、もう買わない理由がない。もうとっくに廃盤で今回奇跡のデッドストック入荷だったらしいので、気になる人はヘヴンHPへ今すぐどうぞ。名曲名演名盤。ラストで"Jerusalem"やってます!!

【本日のレビューその2:D.R.I.「THRASH ZONE」】


ヴォーカリストがデイヴ・グロールのPROBOTに参加したことで最近は名が知れていることでしょうか、80年代中盤に盛り上がったスラッシュメタルとハードコアのクロスオーヴァーをパンクサイドからいち早く試みていたことで有名なバンドの89年作です。名盤と誉れ高い「CROSSOVER」以降はパンク側からの評判はめっぽう低いようですが、スラッシャーとしましては全然OK、どころか大変クールな内容です。TANKARDとOVERKILLの中間のような緊張感とまくし立てのバランスが絶妙でカッコイイ。速射砲ヴォーカルが最高ですね。89年というとこの手のバンドは軒並み、スピード&アグレッションだけに拠らない表現の深みというものを、それまでと異なるアプローチに求め始める傾向にありましたが、このD.R.I.はというとオーソドックスなスタイルをますます研ぎ澄ましていく方向で見事にパワーアップを敢行してる感じです。巧みにモッシュを誘発しそうな押し引きの妙(ブレイクの設け方など)も職人芸の域。そりゃいくらかオトナではありますが、テンション低いことはないと思います。M.O.D.みたいにスカッとするバンドが他になかなかいないぜよとお悩みのスラッシャー諸氏にはオススメ。

  1月24日
本日の収穫、サウンドベイ上前津にてGODSPEED「RIDE」、POPOL VUH「SELIGPREISUNG」(73年)。GODSPEEDはSKID ROWのベーシストのレイチェル・ボランが一瞬だけやっていたプロジェクトで、意味もなくツインベースというのもあって当時(94年)軽く話題になってましたが、内容はダメダメでした。315円だから文句はないです。でもその金で「チロルチョコ きなこもち」を15個買っていた方が確実に幸せだっただろうということを思うと、やっぱりちょっとツライ。無駄遣いしそうなときは何でもチロルチョコに換算すればいいのか。そんなアホらしい算数には共感できねーよという方は、まず「チロルチョコ きなこもち」を買って食べて、15個分の幸せがいかほどか想像してからにして下さい。以上、今日も食べ物の話でした。

【本日のレビューその1:STEVE HACKETT「SPECTRAL MORNINGS」】


英国プログレ5大バンドのひとつ・GENESIS(ちなみに「四天王」となると外れる。他はKING CRIMSON、PINK FLOYD、YES、EL&P)の2代目ギタリストの、バンド脱退後のソロワーク。79年作です。3人になった本家GENESISは78年の「AND THEN THERE WERE THREE」でガバッとコンパクトな商業ポップスの香りを強めましたが、抜けたこの人も何故かその流れに同調。まあ時代柄必然の変化だったんでしょうけども(食うために)。しかしまだまだ骨の髄まで毒されることなく、プログレ然とした奔放なコードワークや牧歌的なアレンジと、パーッと明るい80年代寸前のポップ感がいい具合にクロスオーヴァーし、何とも言えぬ高揚感のあるいわゆるプログレハード的作風になってます。無駄なことをやりすぎるASIAといった様相。ラスト前には"Los Endos"のあやしい版みたいな曲も。MTV時代を前に変にカジュアル化しかかっているこの時期の元プログレアーティスト作品マニアな人(全然いなそうですけど)、必聴です。本家の「〜THREE」や「DUKE」よりアンバランスで危うい感じなのが楽しい。

【本日のレビューその2:SINISTER「DIABOLICAL SUMMONING」】


MORGOTHと並んでオランダ産ブルータルデスメタルの第一人者・SINISTERの93年2nd。リズムチェンジが頻繁であまり長時間ブラストで押すこともない、SUFFOCATIONをもう少しお手柔らかにしたような雰囲気です。抑えが効いているだけに時々瞬発的にブラストが挿入されるときの燃え盛り具合はなかなか凄まじい。ヴォーカルの肉食獣っぷりも良いです。あ〜かっこいい、無慈悲かつひたすらパワー&ヴァイオレンスなスポーティスタイル。キャッチーさには欠けますが、この圧倒的なプレッシャーこそ堪能すべき。重いDYING FETUSとの形容も可能ですな。いやーやっぱりデスメタルも初期に限ります。様式の破壊と極限への挑戦から生まれた音楽だから、古いものはどこまでタガを外していいのかわかってなさそうな闇雲な気張り具合がとにかく魅力。ポール・ディアノ時代のIRON MAIDENを聴くようなフレッシュさと無駄なハイカロリー感に通じるところがある気が。ということで北欧の古参の彼らもフロリダ系と同様に聴いてやって下さい。

  1月23日
本日の収穫、名駅69にてD.R.I.「THRASH ZONE」(89年)、STEVE HACKETT「SPECTRAL MORNINGS」、BEATS THE HELL OUT OF ME「BEATS THE HELL OUT OF ME」。最近のこだわりは「トンカツに塩」。断然塩!寂しければキャベツだけにソースをかけて一緒に食す。上等な岩塩とかでなくても充分楽しめます。誰にでも通じると思って、食べ物の話題ばっかりでお茶を濁している自分はかなりイマイチです。そこらの女性向け情報誌とか、見事に食うこととセックスすること(「この春絶対モテるコーディネイト」「二人のロマンティックムードを盛り上げるおすすめデートスポット」等々も全てそこに通じる)についてしか内容がないので、人間とは放っておくとこんなものかと凹みます。いや、いいんですがね。

【本日のレビュー:BEATS THE HELL OUT OF ME「BEATS THE HELL OUT OF ME」】


DINOSAUR JR.風のジャケですが94年METAL BLADEです。どう見ても「中途半端なメタルバンドが血迷ってグランジ」な佇まいに惹かれて買ったところ、意外と骨のある中身。硬質ひねくれリフ(変拍子有り)+噛み付きアジテイションヴォーカルはHELMET風、その他STONE TEMPLE PILOTSやUNSANEも匂わせる、ジャンク〜グランジから今日のいわゆるポストコアが派生しかける前の種のような状態の屈折ヘヴィロックをやってます。ヴォーカルの声質はちょっとPEARL JAM似。演奏面ではメタリックなミュート刻みなども頻繁に繰り出される割に、録りっぱなし感の強いラフな音像に仕上げているあたりがこの時代ならではのバランスか。とにかく夜中遅くまで起きてはPRONG、RAGE AGAINST THE MACHINE、WHITE ZOMBIEなどがジャンジャン流れるMTVの往年の名番組「HEADBANGERS BALL」を見ていた中学生時代に一瞬で引き戻されるような空気を醸し出していて、個人的に感無量です。まあ正直言って小粒感はありますが、随所でなかなかエキセントリックなアイディアも聴くことができ、CANDY MACHINEと同じくらいの評価があってもいいんではないかと思います。BARKMARKETクラスまでは及ばなかった当時のグランジ外郭派の裾野を見るつもりで、その手の音楽の熱心なマニア諸兄には軽くカスッておいて頂きたいバンドです。

 ↑他に出ている作品が入手可能か調べてみたら、なんとKEROSENE454と一緒に収まっているコンピレーションが存在することも判りました。なるほど納得。

  1月22日
収穫はなし。新品7000円のアコギに5000円近くのピックアップを載せる。今日噂に違わず驚いたものは「うまい棒 なっとう味」でした。ねばねばするんですよ…。

【本日のレビュー:MEDICINE WHEEL「FIRST THINGS FIRST」】


元祖ネオクラ速弾き王イングヴェイ・マルムスティーン、が大昔に在籍したSTEELER、で歌っていたロン・キール、がのちに結成したバンド・KEEL、でギターを弾いていたのがマーク・フェラーリ。MEDICINE WHEELはそのマーク・フェラーリが90年代に率いていたバンドです。98年にひょっこり2ndが出てるようですが今回は94年のデビュー作を。内容的にはBADLANDSをそのまんま踏襲したような、若干アーシーさを強調しつつも派手派手なハードロック。やはりギターにメタリックなエッヂが強く、随所でモトリーの香りも感じます。"Kickstart My Heart"系の。マーク氏は上手いプレイヤーなんですね〜。リフもリードも軽く変態なひとひねりがあって、基本はかなりオーソドックスなスタイルに留まっている楽曲にほどよく変化を与えてます。またそこだけが突出せず、華のあるシンガーを中心にバンドパワーの高さを感じられるのも良し。しかしメロディがさほど心に残るでもなし、ブルージーといっても本格的とは言えず、可食部分が少ない感じのこの仕上がりは、90年代前半フェチしか喜ばんでしょうな。この時期限定のこの音としては非常に完成度が高くて良い出来なんですが。我こそはと思った方だけどうぞ。

  1月20−21日
収穫はなし。ここ半年くらいの悩みは「レビューに取り上げたい未聴CDがことごとくクソマイナーなメタルばっかり」です。言い換えると「レビューで取り上げるくらいにじっくり聴きたいマイナーメタルのCDを多数持て余しているのに、毎日それだと閲覧者離れが心配で、わざわざ違うのを選ぶのにいつも時間がかかる」となります。そのせいで寝るのが凄く遅くなることもしばしばで、あほらしいので、あまり気にしないようにしようと思います。容赦なくメタル責めです。世の中全員メタル好きだったらまったく問題ないんですがな〜。

【本日のレビューその1:SIX FEET UNDER「GRAVEYARD CLASSICS」】


かつてはアメリカ一のディープな下水道ヴォイスを誇った元CANNIBAL CORPSEのヴォーカリスト、クリス・バーンズ率いるバンドの2000年作は、全曲オールドスクールメタルその他のカヴァー。SAVATAGE、ACCEPT、ANGEL WITCHと、愛の感じられる選曲です。そこに混じって禁じ手の"Smoke On The Water"(勿論DEEP PURPLE)があったり、何故かDEAD KENNEDYSやらジミヘンやらが混じってるのはご愛嬌。どの曲もチューニングが2音低くてヴォーカルがデス声という以外は非常に真面目なカヴァー(ないしコピー)でして、中でも秀逸だったのがAC/DCの"TNT"。ビッグなリズム&グレたリフに気持ちよくケダモノヴォーカルが乗る痛快さったらないです。普通に流行ればいい。本当は元ANTHRAXのジョン・ブッシュがゲスト参加している"Blackout"(SCORPIONS)が目玉のつもりで買ったんですが、これは普通声×デス声の絡みが中途半端でイマイチ。ジョン・ブッシュ単体はいつでも素晴らしいシンガーですが。ともあれ昔ながらのヘヴィメタルをよく知る人ならそれなりに楽しめる盤です。古い名曲ばっかり流れるFM放送でも聴く感覚でどうぞ。

【本日のレビューその2:NEW RELIGION「NEW RELIGION」】


絶対手に入らないだろうと思われた品が、少し前にディスクヘヴン店頭で普通に買えてしまいました。これは「気持ち悪いほどQUEENSRYCHEクローン」と評されて話題になったバンドのデビューEPに続くフルアルバム。96年リリース、グランジブームもいい加減下火で、FOO FIGHTERSの2ndみたいなスカッとしたのがまたメインストリームに戻ってきた頃に、彼らはというと今更ALICE IN CHAINSの模写に興じております。骨の髄までQUEENSRYCHEだった連中が突然何故…と戸惑うまでの豪快な浮気っぷり。といっても本家は本家で97年の「HEAR IN THE NOW FRONTIER」で同路線にシフトしていくわけで、尻軽フォロワーな彼らの方が逆に本家を出し抜いてしまっていたのはちょっと面白い現象。ヘヴィギター+ねっとりヴォーカルということで、心なしかNEVERMOREとの共通点も見出せます。実はなかなか先進的なヴィジョンの持ち主だったのかも??まあ違いますが…。それにしても、DREAM THEATERの成功を受けて「プログレ路線こそがメタルの生きる道」と信じたマイナーバンド達が我先にQUEENSRYCHE模倣に走るブームにまんまと飲まれ、と思いきや次はグランジブームに(変なタイミングで)折れ、結局まともに名を上げられないまま消えていくという、サバイバルのために長いものに巻かれざるを得なかった90年代の弱者の悲哀を凝縮したかのような存在ですな。その模倣技術があまりに卓越していたために語り草化しているという。このニセ・ジェフ・テイトは今何をやってるんだろう…逸材なのに…。

  1月19日
収穫はなし。年末から引っ張っていた「鼻の奥が何かの感染でひどく腫れているか、またはデキモノ(良し悪しいずれかの腫瘍)ができている」という件、めでたく前者でお墨付き頂いてきました。中耳にたまっていた液体も一昨日くらいからすっかり引いて、また普通にステレオフォニックで音楽聞けてます。というか全身麻酔で手術とか、数年のうちに病死とかいう脅威が去ってひと安心。

▼そして来月いきなり一人でライブ出ます。こちらが詳細(2月21・22日の欄)!一人演奏の構想はかねてから色々練っていたものの、1ヶ月や2ヶ月も前のアイディアとかがもうダサく感じられてしまって、どういう格好で臨もうか未だに思案中。うまく行けば全曲書き下ろしの新曲ばかりやります。昨日見たCELTIC FROSTの影響でうっかり激鬱ドゥーム路線はどうかとか考えてしまいましたが、多分それはやめておきます。(想像以上に理解されないと思うので…)ということでご予約受け付け中です、よろしくどうぞ。

【本日のレビュー:LOUIS MOHOLO/LARRY STABBINS/KEITH TIPPETT「TERN」】


ATAVISTICのUNHEARD MUSIC SERIES。82年ベルリンでの録音です。クリムゾンの"Cat Food"でチョピチョピチョピーン!と一人トチ狂ったピアノを聴かせていたのが有名なキース・ティペット、カンタ/クリムゾン人脈総結集のCENTIPEDEにも参加していたサックス奏者のラリー・スタビンス、デレク・ベイリーとの共演盤を先月紹介したばかりのドラマーのルイス・モホロという3人。フレーズの大河が圧縮状態で速射され続けるかのようなハイテンション&リリカルなフリーアンサンブルで、ピアノ主導であるためか絶叫フリーキーという印象にはならず。とにかく沸騰状態が長く持続するので息をする暇がありません。オーネット・コールマンの影を背負ってる感じの「みんなでズレよう」系なし崩しアフロスタイル(?)などとも違って、大別すればセシル・テイラー寄りか。現代音楽的な宙吊り感もさほどなく「きわめて自由度の高い即時的作曲」として聴き進めるような大きな流れがあります。かなりいい出来です。ヘタすりゃ2管3管とワサワサ寄り集まるKEITH TIPPETT GROUPの諸作よりも、キースのピアノのバイタリティが生々しく感じられるような内容になっているんじゃないでしょうか?アメリカやオランダのコアなフリージャズはいまいちどこを聴いたらいいか判らない、が興味はある、という方にもおすすめ。

  1月18日
▼EXTREME THE DOJO Vol.16観戦でクアトロへ。メインはCELTIC FROST!!再結成のニュースから何年経ったことでしょう、遂に日本で見られる日が来るとは…。

▼名古屋クアトロが入っているパルコに早めに着いて、楽器屋で暇を潰していたところ、何やら見覚えのある長身のアングロサクソンがドラムのスティックを物色中。DEERHOOFのグレッグによく似てるような、と思っていたらサトミさんとギタリスト氏も発見し、確実にDEERHOOFであることが判明。そういえば彼らも翌日クアトロでライブなんでした。この日はオフだったんですね。CELTIC FROST見に来たのかなと思ったけどその後会場では見かけませんでした。

▼で開場、入場、開演。1番手はNAGLFAR。スキンヘッドでギョロ目で長いマントみたいなのを着込んで登場したヴォーカル氏がなかなかカリスマ性を放つものの、楽曲自体は非常にオーソドックスなスウェディッシュスタイルのメロディックブラック。正直ブラストパートだけが燃えるといった感じで、しかもドラマー氏がブラスト時と非ブラスト時でスネアの音量に差がありまくり、まあこんなところかという印象。しかしフロアに何故か結集していたブラジル人の客の一団が早くもヒートアップしてモッシュ&ダイブの大騒ぎを繰り広げ、盛り上がった感じで終わったのでよかったと思います。

▼2番手はアート派ノルウェーブラックの雄・SATYRICON。始まった瞬間、やけに大人しい音づくりにビックリ。ギターをかなり丸い音にして、ドラムとヴォーカルのプレゼンスと弦セクションの低音をばっさり分けていて、お陰でよくある爆音メタルPAではほとんど聞こえないギターリフの細部までちゃんと聞き取ることができました。なるほど、メタルPAの定番をよくよく踏まえた上での「ヌケる音作り」がこれだったわけですな。そんな細かな配慮にも感銘を受ける。

 賛否両論あるという新作は買わないまま臨んだのですが、新曲と思しきものはどれも、ストレートなリズムとシンプルなリフをフィーチャーしており、乗っかりやすいシンガロングパートまで親切に設けられている始末。だがしかし、激烈さで押すNAGLFARよりもぐぐっと深い感動があったのでした。極限まで削ぎ落とした上で的確に次の音をつかまえるリフメイキングはやはり、ブラックメタルの限界領域を少しずつ押し広げてきた先駆者ならではの刺激性を秘めていて、最近の音楽性のシフトがあくまで「攻めモード」で行われていることを確認。スローダウンしても凄味の落ちない人達こそ本物だ。

 MAYHEM他のヘルハマーと並んでノルウェーブラック界随一の名手といわれるドラマー・フロスト氏も今回の見どころであったわけですが、疲れないように速く叩くことばかり上手い若手のテクニカル派とは全然違い、一打一打に情念を込めて腕ごとブッ叩くデイヴ・ロンバード型のパワー派で、随所で見せる細かいアクションも含めて非常にかっこよかった!ブラストも重みを失わずノリノリ。最前に近いところで見てたので生音もよく聞こえました。数メートルの距離で生フロストを体験できるとはありがたいことです。

▼そしてメインのCELTIC FROST。中心人物のトム・G・ウォリアー改めトーマス・ゲイブリエル・フィッシャーは、思ったより小柄でハゲ隠しのニット帽もちゃっかり装着したおっちゃんでした。佇まいの怖さではむしろもう一人のオリジナルメンバー、マーティン・エリック・アインが凄まじかった。かなり丸く出た腹を足元まであるロングコートでずっぽり覆い、モサモサと巻いた長髪を垂らし、ブラックメタルさながらのコープスペイント(パンダメイク)!!「黒い美輪明宏」とでも言いたい存在感。

 そして始まった1曲目、いきなり1st収録の"Visions Of Mortality"。おお〜、全身呑み込まれるようなダーク&ドゥーミーな音のカーテンよ。ISISその他の重・遅・激系バンドを完全無意味化するほどの威圧感、威厳。そっくり2音半下げたバージョンになってましたが、全く違和感はなし。というか帰って調べて初めてこの曲と判りまして、それまで新作収録のどれかだと思ってました…。グシャッと無骨なマーシャルの歪みは昔と全く変わらぬ響きで、刻み込むように吐き捨てるヴォーカルもやはり圧倒的な説得力。以前在籍していたドラマー(リード・セント・マーク)がインタビューで「トムは優秀なリズムギタリストだからもっぱら彼に合わせて叩いている」と語っていたとおり、歌いながらも手元からはあの不条理リフの数々がしっかりと弾き出されていきます。

 続いて早くも"Circle Of The Tyrants""The Usurper"と初期の名曲オンパレード!名曲がありすぎるバンドというのはやはりライブで圧倒的に強い。トムお得意の「ウッ!」というシャウトもばっちり聞けました。「ヘーイ」と「あぁあ〜」が出なかったのが残念。その後でやっと新作から"Ain Elohim"が演奏されましたが、その途中の「you are as good as dead」(訳:お前は死んだも同然)という一行のyouのところで、トムに真っ直ぐビシッと指をさされてしまいました。わかりました。

 その後も旧曲中心で、2ndからまさかの隠れ名曲"Nectomantical Screams"、"Dawn Of Meggido"、再び1stから"Dethroned Emperor""Into The Crypts Of Rays"を経て、新作ラストの猛烈に怖い大名曲"Synagoga Satanae"へ。これが凄かった。途中ブレイクでマーティンが両手を上にかざした格好で「名古屋、私と一緒に祈ってくれ。これが私の祈祷の言葉だ」と言うと、そのままドイツ語で何やらブツブツととなえ始め、どんどんボルテージが上がって叫びに変わっていくという、桜金造の怪談を聞きに来たかのような(いや、もっと高尚でしたが…)演出が。ポーズでも何でもなくて彼らがこの悪魔音楽に全精神を捧げていることがはっきり伝わる。

 曲が終わると最後に、「Celtic Frost bows to you...」といってメンバー一同ゆっくり深々とフロアに向かって一礼をし退場、そのままアンコールもなく終了。長年「セルティック・フロスト」だと思っていた(日本ではそれで通っている)ものが、本当は「ケルティック・フロスト」だったことがここで判明!!ショックです。「INTO THE PANDEMONIUM」から1曲もやってくれなかったのもショックだけど。ちなみに去り際にマーティンが投げたピックが、また私の眉間の真ん中に命中。跳ね返って前に落ちたので拾い損ねましたが、トムには死人と言われ、マーティンには秘孔を突かれ、今年は良い年になりそうです。會田茂一氏がDOIMOIを年間フェイバリット10曲の一番最初に挙げてくれた記事が載っているフリーペーパー「ramblin'」を1部手にとって帰宅。

本日の収穫はライブ前に寄ったタワーレコードの値下げ商品ワゴンからRETURN TO FOREVER「HYMN OF THE SEVENTH GALAXY」、DIZZY GILLESPIE「JAMBO CARIBE」。

  1月17日
収穫はなし。最近全然物色日記になってないですなあ。今日の成果といえば、長年愛用のハードディスクレコーダー・D12をバージョンアップしたことくらいです。ず〜っと前からKORGのサイトで公開されていたアップデータを入手し、次にこれを"SCSI機器を使って"D-12本体に移してやらねばならないという難関があったのですが(なんとUSB端子は不搭載)、父親が5〜6年前くらいに使っていた古い外付けCD-RWドライブが運良く家にあって無事解決。これでちょっと使いやすくなったので今後も引き続き使い倒していこうと思います。

▼明日はとうとう生CELTIC FROSTですか〜。10年近くファンであり続けたバンドをようやくこの目で拝めるとは、早くも感無量。

【只今のBGM:CELTIC FROST「MONOTHEIST」


予習中です。

  1月16日
収穫はなし。BRUTAL TRUTHのラスト作が超絶かっこよいので、今日はそれだけで失礼します。↓

【本日のレビュー:BRUTAL TRUTH「SOUNDS OF THE ANIMAL KINGDOM」】


聴いてる間だけ「これが人類最強の音楽に違いない」と確信させられてしまう作品というのがいくつかあって、これはその一つです。97年RELAPSEリリース、グラインドコアの王者BRUTAL TRUTHの3作目のフルアルバム。世に出てから10年経って、このアルバムを不要にする新記録がどこかに登場したのかといえば、まだ出てきてないんじゃないかと思います。冒頭から「still not loud enough, still no fast enough」とナレーションが入りますが、これはメンバーが昔インタビューで語っていた「ドラッグをキメてるとどんなに速く演奏しても遅く聴こえる。だからもっとスピードを上げる」という言葉を象徴するものですね。Dビートを遵守するハードコア色、デスメタル色、かなり真面目なブラックメタル色、更に宇宙ノイズの類まで、全ては「薬物に匹敵する(または相乗する)脳みそマッサージのための限界超えの追究」という目的のためだけに混沌とかき集められるのみ。この芯の据わった潔さは、「誰々よりもっと変態になりたい」みたいな俗欲的化学実験に染まりがちなこの手の音楽の中では奇跡ともいえる最長不倒距離記録。心底マッド。パンクといえばこの上なくパンク。

 またこのアルバムが素晴らしいのは、この内容を典型的なガチガチしたメタルなプロダクションでまとめるのではなく、噴き出たばかりの溶岩のような生々しくて汚い音に仕上げたことも大きな要因といえましょう。エンジニアはMELVINSやSLEEPなどストーナー系のバンドを数多く手掛けるビリー・アンダーソンと、SHUDDER TO THINKやJAWBOXの作品も手伝っているジュアン・ガルシア。こうやってアナログな感触をもって聴かされると、いかに猛烈で尋常じゃない音楽を演奏しているかがよくよく実感されます。エクストリームメタルの噛み分けができるような経験のある人でなくとも、誰しも一聴すれば即「これは危ない」というのが肌で感じられるはず。これ1枚持ってればその後の人生を生きる上でひとつの基準になってくれるという、そういうアルバムだと思います。数年振りに聴いたけど最後に聴いたときより良かった。

 でこのBRUTAL TRUTHが去年あたりに再結成して、今年の3月には日本に来てくれるというので、私は絶対行く予定です。

  1月14−15日
収穫はなし。たまに普通のバラエティ番組で「ひろみちお兄さん」を見ると、やけに冷めざめとして愛のない眼光に少し悲しい気持ちになりませんか。明らかにしょぼめの地方局制作だと更に生気のなさが際立ってこわいです。と3日前に見たテレビの話題でお茶を濁すひどい日記ですみません。最近気をつけたいのは「100円だと思って適当に何でも買い過ぎること」です。

【本日のレビュー:PAUL NEWMAN「MACHINE IS NOT BROKEN」】


少し前にSTIFF SLACKでまとめて再入荷されていた、RHYTHM OF BLACK LINESのメンバーの別バンド・PAUL NEWMANのこれは多分2nd。99年の録音です。早速売り切れになったようなので人気なんでしょうか?淡々としたクリーントーンのフレーズが行き違い続けたり、変拍子でガシガシとキメたりする、SLINT〜RODANの部分拡大+α(ちょっとディシプリン・クリムゾン風)な純・マスロック。DIANOGAHやATIVINを思わせる今や懐かしいスタイルですね。ギターに微妙なコーラスが常時かかっているのが若干ニューウェイブっぽい感触にもなってます。方法論としては正直、同じような後続が世界中で(日本でも)出過ぎてやや食傷気味なところもありますが、これのリリース当初はまだリサイクルに入らないギリギリのリアリティがあった頃。もっとエモエモしい部類の連中と比べると、全編あくまでポーカーフェイス&低体温で通してるのが味ですな。かと思うとまれに予測のつかないタイミングでゴーッ!と牙を剥いてくるのが楽しい。タメ上手だこと。インディロック云々をたくさん聴いてる人よりむしろプログレッシャーに唐突に勧めてみたい。

  1月13日
▼3000円少々で落札してしまったサブウーハー(YAMAHA製、40W弱)が到着したため今日の趣味は「共振止め」でした。焼きそこなったCD-Rなどの硬くて平らなものにブチルゴムをくっつけて、PCデスクやスピーカー設置台などのブルブルしてる面にペタッと。効果の方はあるようなないような。更に家で結構な量余っていた不要なフェルト布もそこかしこに貼って、貧乏素人にやれるだけのことはやりました。

収穫はなし

【本日のレビュー:MELEK-THA「ASTRUM ARGENTINUM」】


マイナードゥームメタル発掘にハマッていた頃、フランスのADIPOCEREリリースというのとあやし過ぎるジャケ、謎のバンド名など、佇まいのみに惹かれて買ってしまった1枚。これが全編、ホラー映画の予告編の音楽のような、オーケストラ+ノイズのみでほぼ歌なし(時々スピーチの断片やクワイアが入ったりする)、ディストーションギターやドラムセットなども勿論皆無、という非常にコアかつ終末的な恐怖音響。THROBBING GRISTLEと同郷フランスのELENDのちょうど中間のような感じです。GODFLESHあたりとは近いようでまるで共通点なし。デス/ブラックメタルの流れでこういう純ノイズ音響へリンクする流れというのがどうやらあるらしくて、要はULVERあたりが蒔いた種なんでしょう。もっと遡ればCELTIC FROSTもこの手の試みをSEとしてアルバムのどこかに挟むことはよくあったこと。ちなみにこのバンド(?)未だ現役のようで、最新作はその筋の主要レーベルと思われるDARK VINYLというところからのリリースとなっています。まあおおかたの一般人には用のない、どフェチのための世界っぽいですので、ご用のありそうな方だけどうぞ。ハクのないB級フュネラルドゥームとかにウンザリさせられるよりは濃い時間が過ごせることでしょう。

  1月12日
収穫はなし。一日で何とか熱下がりました(37.8℃→36.5℃)。モンテールの新製品をチェックせねば!!

【本日のレビュー:LARD FREE「I'M AROUND ABOUT MIDNIGHT」】


フレンチアヴァン音響プログレバンドの2作目。2000年代の作品かと思うくらい今の耳にストライクな内容でびっくりします。管楽器、ドローンギター、あやしいパーカッション類が交錯してサイケ感を煽る不穏なシーケンス、ヴィブラフォンとギターによる静謐ミニマル、変調されながらパート数が増減していくシンセのシーケンス…、ん〜だんだんテリー・ライリーやマイク・オールドフィールドの影ばっかり見えるようになってきたなー。ということでよっぽどオッと思ったのは最初だけでした。やっぱり古いプログレは時期がちょっと遅いと(75年リリース)借り物が多くなりますね〜。生ピアノの黒鍵をウインドチャイムよろしく適当に掻き鳴らす最後の曲はなんちゃってファラオ・サンダースなのか?ロバート・フリップの局所的拡大解釈に生涯を捧げるHELDONのリシャール・ピナスも参加ということで、オリジナリティは薄いにしろ本格的に取り組んだという姿勢は評価できます。半年前にこの欄に登場した77年発表の次作ではやたら良いことを書いてたみたいなのですが、それまでの2年間に前進があったのか、半年前の私はこういう音に甘かったのか、まあ放ったらかしにしておきます。ともあれ何かに似てるのも風情のうち、愛あるプログレッシャーが買うのをためらうことはないでしょう。上手くいけばFOUR TETみたいになりそうなんだけどなあ。

  1月11日
収穫はなし。風邪でダウン。ひねもすMTVとスペースシャワーとVIEWSIC改めMUSIC ON! TVをザッピングしまくり。TERIYAKI BOYZと共演するカニエ・ウエストがかっこよかった。あのYOUTUBE仕立ての演出はすぐ風化するネタだけど大丈夫かいな。MTV KOREAの今週のベスト5というのが、全員歌がクソ上手くて感銘を受ける。日本海またぐだけで何故にこうも差が出るのか…。コリアンポップスは凄く本格的に西洋化されてて、韓国ならではの雰囲気というのをあまり感じず。強いて言えば男が全員ナヨさを前に出し気味。倖田來未は基本的にあまり受け付けないけど新曲がちょっとかっこいい。木村カエラの新曲はなんとなくスピッツ風だがサビをはじめメロディの完成度がまるで納得いかず。あざとすぎる映像も真意をつかみかねる。ポスト・バンプ世代の東京的眼鏡ロッカー達はいよいよ終わりが近い。あんな似たような「いい曲」はこれ以上必要なし。「Aメロでバスドラ四つ踏み」はいい加減ヤバイと誰か思ってくれ。デフテックの歌詞が凄い。つい最近のDESTINY'S CHILDの曲の一部分を早くもパクッている厚顔無恥な連中がいる。近頃の著作権は2年で期限か。インタビューで「とにかく心のままに出来た曲です」などとやけにドッカリ構えた目つきで語る女が、何の変哲もないEVANESCENCEの複写みたいのをやっている。YUIはいい。などなどでした。以上、しんどいので本日のレビューに代えさせていただきます。

  1月9−10日
収穫はなし。日曜にホームセンターでスピーカーの設置台用に木の板を購入してありまして、今日はその下に物を入れて「ツイーターを耳と同じくらいの高さにする」をやりました。

↑アンプと発泡スチロールで下駄にしています。スピーカーの横に謎の黒い四角がありますが、変な反響を減らせるかと思ってサランネットを立ててみました。写り込んでいるTEMPLE OF THE DOGはやっぱりまあまあでした。クリス・コーネルは凄いですね。

↑一見いろいろ重ねすぎで崩落してきそうに見えますが、陰で全てを固定しているのがこの特殊兵器「ブチルゴム」!吸振性にすぐれたオーディオマニア御用達の素材らしく、ハンズでも売ってますがホームセンターの方が割安でした。しっかり圧力をかけてやれば下手な両面テープより強力にくっつきます、くっつき過ぎて困るくらいです(剥がせますが)。フィギュア類の固定にもどうぞ!
 あとはコルクシールでも買ってきて発泡スチロールの見た目を何とかしようと思います。ある時はダイソー、あるときはホームセンター(東海地方はカーマ)、どうとでも工夫できて面白いっす。

鼻の奥のデキモノの件の続報ですが、今のところ血液検査でも異常値はないし、雰囲気的には大丈夫そうだが、今日採取した組織を調べてみないと断言はできない。とのことでした。今日の診察はしんどかった…。先週「患部の組織をちょっと採る」と言われていたから、てっきり綿棒か何かの先にグリグリとこすりつけるだけかと思いきや、まず鼻の奥の奥、口腔に達する寸前まで麻酔の染みた紙を捻じ込まれ、それを抜かれた後は止血用だといってもう一発何かの紙を同じ深さに詰め込まれ、次に鼻の穴の突き当たりに道具を(割と深々と)突き刺し、中の肉をつかみ取られるという惨劇が展開。ひー!やられてる最中は麻酔のお陰で耐えられないほどの痛みも無かったのですが、家に帰ってしばらくしてからですわ。そんな所がズンズン痛むなんて普通の生活じゃ経験したことないわけで、しばらくうめきながら横たわるしかない状態になってました。以上、痛い話好きな人に大サービス。

【本日のレビュー:ALICE IN CHAINS「FACELIFT」】


日中にひさびさに古いSOUNDGARDENなどを聴いてたので、その流れでおもむろにこれです。こういうのを聴くとますますグランジって何だったのかわからなくなりますね。本当に歌詞と服装に本質があったのかも知れません。90年にリリースされたAICのこのアルバムは、今なら間違いなく普通にHM/HRと言われそうな、かなり硬質でまっとうなヘヴィ・ロック作品となっています。結局80年代ハードロックと同じ足場にいながら、それに対するカウンターをあれこれ練っているといった感じでしょうか。ちょっと退廃的でズルズルしたガンズ、と言われても全然納得。この「退廃的」の要素が華やかな前時代のオーヴァーグラウンドでは徹底排除されてきたから、ちょっとフィーチャーしただけで凄く新鮮だったんでしょうね。その後2作目・3作目と進むにつれて顕著だった成長は、もっぱら当時のシーンの他のバンドからのインスピレーションと、あとはシンガーのレイン・ステイリーのポテンシャルに拠る所が大きかったんだなと思います。オーヴァードースで実際死ぬくらいリアルな病みを漂わす高粘度のヴォーカリゼイションは確かに突然変異的にして時代の流れを変えるインパクトがあったし、その強みを軸に据えて上手く当時の音を自分流に再構築できる器だったということなのでしょう。とういうことでこのデビュー作は、その後FIGHTやSKID ROWに真似されまくる90年代デカダンメタルの原石として、忘れずにおこうじゃないですか。1・7曲目イカス。

  1月8日
収穫はなし。以前から気になりまくっていた、コメダ珈琲のビーフシチューをようやく試しました。シチューとしていかほどのものなのか確認する気満々で挑んだのに、「海苔とチーズが効いててナイスだった」という感想に落ち着くという意外な展開。名古屋発ならではのクロスオーバーな仕上がりです。一度お試しを。

▼昨日のPICCHIO DAL POZZOがお気に入り。久々になんべんも聴くCDになりました。

【本日のレビュー:MALFORMED EARTHBORN「DEFIANCE OF THE UGLY BY THE MERELY REPULSIVE」】


今月はCELTIC FROSTが来日ということでもう大変ですが、3月には何とBRUTAL TRUTHまで来てしまいます。ということで久し振りに、ダン・リルカの数あるユニットの中でもひときわ浮いているこの1枚を手に取りました。NAPALM DEATHのシェーン・エンバリー、BRUTAL TRUTHのドラマーのスコット・ルイスとの3人というちょっとしたスーパーバンドで、95年にRELAPSEからリリースされています。内容は基本的にドラッグありきの醜悪なるインダストリアルミュージック。無機質な打ち込みドラムに汚れきったディストーションギターと絶叫が被さって、ダブ処理もバシバシ入るというアブストラクト極まりない代物。下手すりゃNINE INCH NAILSやマリリン・マンソンみたいになってしまいそうなところを、シャレにならない本物の病的さによって迫真の地獄絵図に仕上げているのはさすが。スローダウン以降のMESHUGGAHにも似たトリップ感あり。脳みそをグシャグシャにされるという点ではBRUTAL TRUTHと何ら変わらない気もしますが、姿かたちはまるで違います。ファンは心して臨んで下さい。

  1月7日
▼(昨日の続き)どうでもいいとは思いますが、アンプはやっぱり黒いDENON(PMA-940というもの)一本でいくことにしました。色々つなぎ替えて比べた結果、ONKYOのアンプ(INTEC205のA-907X)はレンジが狭くて端がグシャッと詰まり、またハイミドルにちょっとピークがあるような感じだったので。これに慣れてたせいで最初は違和感があったんですね。PMA-940のスピーカー出力は2系統あり、持て余しそうになっていたINTEC付属のスピーカーもそこから繋いで適宜YAMAHAとセレクトすることにしてやっと円満解決ファイナルアンサー。路頭に迷ったA-907Xはというとサブウーファー出力専用となっています。以上、詳細に読む価値ゼロのご報告でした。本日の収穫、HMVから到着のHENRY COW「CONCERTS」(リマスター)、PICCHIO DAL POZZO「ABBIAMO TUTTI SUOI PROBLEMI」(リマスター)、THIS HEAT「OUT OF COLD STRAGE」(コンプリート6枚BOX)。

【本日のレビューその1:PICCHIO DAL POZZO「ABBIAMO TUTTI SUOI PROBLEMI」】


大昔(8年くらい前)に「ユーロ・ロック・プレス」でこのアルバムのレビューを読んで以来、絶対聴きたいと思い続けていたが手に入らなかった品。ReRおかかえクリエイターのボブ・ドレイクによるリマスターでめでたく昨年再発になっていました。70年代末に出てきたイタリアのプログレバンドで、デビュー作ではHH&Fあたりに近いカンタベリー風諧謔牧歌チェンバーロックをやっていたのが、80年リリースのこの2作目ではザッパ等の影響を表に出して変拍子と緻密で笑えるアンサンブルに徹する不条理スタイルに移行。変にロマンティックなエトロンといった具合に仕上がっております。ギター、管楽器各種、オルガンなどの単線同士が必要以上に密集したハーモナイゼーションでひょろひょろと蛇行していくフレーズの妙よ。変拍子っぷりはTHE MUFFINSのようにアグレッシヴなものではありませんが、同時期のディシプリン・クリムゾンみたいな乾ききった無機質感があり、マスロック的感触に近いものがあります。終始まったく脱力しっぱなしで激しくナンセンス感を漂わせているにもかかわらず(盛り上がりと呼べるものが皆無!)、繰り返しらしい繰り返しがほとんど登場せず、長大で入り組んだコンポジションを淡々と演奏し続けているのが何だか薄ら恐ろしい。ポーカーフェイスの隠れ絶倫というか。うお、サティ・ミーツ・ドリフな6曲目"Strativari"強烈!アホ過ぎ。レコメン好きは必須でしょう。ジャケもアホ&意味不明で良い。チェンバープログレがポストパンクになるとこうなるわけですか。

【本日のレビューその2:LAST LAUGH「MEET US WHERE WE ARE TODAY」】


謎多きスウェーデンの4人組。リリース元がどうやらCD屋兼レーベルみたいなとこらしく、サイトを見ても全然このバンドに関する情報がありません。(日本の70年代プログレなどに物凄く手厚いマニアックな品揃えですので興味ある方はどうぞ。)普通に検索すると同名異バンドばかり引っ掛かるし…。ともかく97年に録られたこのアルバム、MESHUGGAH+SHUDDER TO THINK+THE 3RD AND THE MORTAL+TOOL+ANEKDOTENかという、物凄い先鋭的なダーク・プログレッシヴ・オルタナ・メタルになっているのです。オールドプログレの色気を基点としてメタルもオルタナも咀嚼してるので、時流の中に真理を見失うことなく、仕上がりの感触が全然ダサくない。ポストロックの隠れ名盤といって引っ張り出されてきてもおかしくないくらい。頑張って活動を続けていれば今頃MOTORPSYCHOやTHE NOTWISTやMAUDLIN OF THE WELL改めKAYO DOTみたいな存在になってたんではないでしょうか?センスのいい若者なんて世界中の目立たないところにいくらでもいるんです、参った。

  1月6日
▼今ブックオフに行くと清水國明になじられます。本当です。「新年からここに来ているあなた!(しみじみとした調子で)おめでたいですねぇ〜。何がめでたいかって?」ドキドキして続きを注意深く聞きましたが、要は1000円以上の買い物で特製卓上カレンダーもしくはブックカバーがもらえるキャンペーンを催行中ですよ、という旨のアナウンスでした。新年早々こんな所来やがって、おめでてー奴…という文脈にしか聞こえないぜ國明。てことで本日の収穫、CDコーナーの分類がやたら好感度高めのブックオフ栄生店にてTERPANDRE「TERPANDRE」(フレンチシンフォ幻のバンド唯一のリリース、MUSEA再発、マーキー盤国内解説つき100円)、SUICIDE「SUICIDE」(2000年の2枚組リイシューMUTE盤750円にて)、DEEP PURPLE「THE BATTLE RAGES ON...」(250円にて)。栄生店は8日まで割引セールをやってるのでヘヴィユーザーは行くべし。國明は本当に何でも知ってるの?

ここのところあまり触れていないオーディオ環境改善の話ですが、年末からちょっと耳・鼻がおかしくて音を吟味云々できる状態になかったので、正月休みは全然そっちに入れ込めずにいたのです。現状はというと、鼻の奥にあって成長とともに消失するアデノイドというやつが何かの感染で腫れ上がっているか、もしくは良し悪しいずれかの腫瘍だろうということで、血を採られて再診待ちです。もらった薬(炎症を抑える系のもの3種)でかなり症状が改善しているので、恐らくはアデノイドの方かと思われます。当初は医者も訝しがって言葉に慎重になるほど極端な状態になっていたようで、私に死ねと思ったことがある、または思っている人はゴマンといるだろうから仕方ないかーと諦めかけもしましたよ。いやあ生きてるのが当たり前じゃないんですね。

 それはまた進展があるまで置いておくとして、本題。上述の激鬱状態のときに、サークルの後輩が「友人がもらいものといってくれたアンプとスピーカー、自分も近々引っ越すから引き取りませんか?」といって、一式タダで譲ってくれたのです。スピーカーはモニター用の定番らしいYAMAHA NS-10M、アンプはDENONの黒くてでかい奴。ご丁寧にAUDIO TECHNICAのART LINKシリーズ(高い)のスピーカーケーブルにインシュレーターまでつけてもらっちゃいました。DENONのアンプはドツッという俊敏さと力強さはあるが、ツヤや余白感にやや欠ける気がして、結局今まで使っていたONKYOのアンプ(INTEC205のもの)にYAMAHAをつないで鳴らすという組み方に。知らず知らずのうちにアンプのキャラクターというものに耳が慣れてたんですね〜。スピーカーはやはり箱が大きいと余裕が違います。正しいスケール感に近づいて俄然良い。

 ということで余ったDENONのアンプと、今まで使用していたONKYOの付属のスピーカーをどうするかということが次なる課題に。カーステのように後ろに置いて囲まれる感じにするか…と思ったものの、やはり位相の問題が難しく、ケーブルが部屋を横断するのもよろしくない。ということで今日、ONKYOアンプ/YAMAHAスピーカーのセットとDENONアンプ/ONKYOスピーカーのセット両方にCDからのラインを分けて引き、その時々の聴くものによって完全に独立した2つのシステムを切り替える方向で解決しました。

↑ONKYOのスピーカーの方が楽器的な鳴りの深みが乗るので、外寄りに置いてあって間隔が大きくなっていることもあり、モノラル録音のジャズなどは最高にマッチしました。一方YAMAHAは芯のよく見えるクリーン&タイトな感じで、しっかりプロデュースされたロック作品などはONKYOより遥かに向いてます。ミックス作業もやりやすそう。あっVAN HALENの「DIVER DOWN」だ!

↑PCのキーボードの引き出しの下に格納されたDENONのアンプ。ゴム足を外してギリギリ収まるぴったりサイズでした。D-12の向こうに青と白のブックオフの卓上カレンダーが…

 やれダイソーだやれハンズだとあれだけ奔走していた割に、結局「ハードのアップグレード」で満足するという、何とも意味のないオチを迎えてしまったのでありました。もらえるものはもらえ!社会人なら買え!ということで。

【本日のレビュー:DEEP PURPLE「THE BATTLE RAGES ON...」】


ダメダメ後日談シリーズその2ということで、70年代においてはツェッペリンと何故か人気を二分した(今となっては全然比べるところのない者同士に思えますが…)DEEP PURPLEの、93年のカムバック作です。DEEP PURPLEは有名曲"Burn"が録られた布陣になった後、どう考えてもリーダーでありバンドのアイデンティティそのものであったリッチー・ブラックモアが脱退し、ジェフ・ベックにも影響を与えている元ZEPHYR〜SPECTRUMのトミー・ボーリンを迎えて1枚作ったあと解散し、ある者はWHITESNAKEへ、ある者はあの世へ、リッチーはRAINBOWへと、それぞれ次の段階に移行していきました。そのRAINBOWも84年に解散するとDEEP PURPLEはあっさり再編され、しかしリッチーと確執のあったシンガーのイアン・ギランは再結成作1枚のみで早々と脱退、代わりにRAINBOWで最後に歌っていたジョー・リン・ターナーを連れてきてもう2枚評判の悪いアルバムを制作。これはダメだと改めてテコ入れをしたかったのか、またイアン・ギランを呼び戻して作ったのがこのアルバムです。長い能書きでした。

 さて本作もリリース直後から評価はめっぽう低く、しかもまたすぐにリッチーが脱退してしまうというどうしようもない展開もあって、バンドの歴史においてはただの汚点扱いを受けている代物です。腐った鯛が作る汚点作品に目がない当サイトとしましては恰好の素材ですね。まず1曲目から、6弦をDに下げてのダーク&ボールドなリフに驚かされます。何だ気合入っててしかも冴えてるじゃないかと。駄目なのはただただイアン・ギランです。枯れても枯れきらないロバート・プラントと違って、ゲイリー・バーデン系のヘタさをもつこの男は、覇気を要するハードロックを歌わされてもネガティヴなアダルト臭ばかりが目立つ。RAINBOWを思わせる様式美調の"Anya"などはドゥギー・ホワイトが歌っていればボチボチ名曲だったはず。まあそこにめげず頑張って聴き進んでみると、やっぱり弛緩しきった捨て曲か、RAINBOWっぽいのに然るべき完成を見ていない曲のどちらかしかないことに気付きます。アップテンポの曲ではイアン・ペイス(ds.)の軽妙なスウィング感が俄然活きる。この人は凄いですなあ。リッチーのギターは、ラフなタッチながらも代替不可能な味がどんどん濃くなっていて、孤高のオリジネイターであることを改めて認めざるを得ません。ベストな人選でやっていればそう批判されることもなかったろうに(9曲目"Solitaire"などは是非ロニーのバージョンが聴きたい)、やっぱり偏屈過ぎる人は誰とでも仕事をやれなくなっていくのですね。そんな世知辛い後味に落ち着く1枚でした。リッチー信者ならそれなりに楽しめるはずです。

  1月5日
収穫はなし。久し振りにJIM DUNLOPのJAZZ III(赤)ではないピックを買ってみました。やっぱりJAZZ III(赤・小)こそが最高でした。たまに楽器屋に行くと、ギターキッズによる試奏という名の公開練習大会をしばしば耳にすることになるわけですが、きょうびの中高生てのはまだまだ速弾きをしようとするんですね。AC/DCの"Back In Black"のメインリフを間違えてコピーしてる奴もいた…タッピングを練習したりする前にそこのGをDに直すんだ君。しかし彼らがそのまま大きくなれば、世の中は速弾きメタラーで溢れかえるはずなのに、大学時代、バンドサークルにはちっともコアなメタラーが入ってこなかったのは何故?若人よ、踏み入りかけたメタルは卒業するもんじゃないんだよ。ということで当方満27歳、今年の新年初聴きはDIOの「THE LAST IN LINE」でした。セィーロン、シンガソン、キェーリオ〜ン、ウィーロァック!!!シャーン!!!!すぐ試聴して下さい。買って下さい。

【本日のレビュー:JIMMY PAGE「OUTRIDER」】


THE FIRMと並んでZEPファンからは本当にどうしようもない扱いを受けている80年代のペイジ作品のひとつ。ソロ名義での88年作です。リリースはGEFFEN。ボンゾの息子ジェイソンが全面参加してますが、特にそれでどうということはなし。中身は本当にダラダラと締まらない自己模倣的ニセZEPサウンド。更にそこに80年代的な「ビッグなプロダクション」が絡んでくるのでまあ大変です。リアルタイムで聴いたファンはたいそう落胆したことでしょう。しかしそれから20年近く経とうとする今、敢えてこの悪投球ぶりを求めて聴くと非常に楽しい1枚なのです。セクシーなのかモウロクしているのか判らないヨレたフィーリング、性格の悪さが滲み出るトリッキーな字余り拍子(これは未だに真似する者が少ない!凄い)などなど、腐っても鯛、絶対この男からしか出てこない変な音が地味に満載。全9曲中インストが3曲、有り難くもプラントが歌を入れてくれているのが1曲、残りの5曲を歌っているジョン・マイルズおよびクリス・ファーロウというのが徹底的にダメダメな没個性及第点ギリ系で、彼らの活躍ならぬ悪躍が全体のクオリティを押し下げているのが至極残念。ヘタならヘタでもっと微妙な味をもった人材を連れて来れば良かったのに。まあプラントも大概ダラダラ系の人なわけですが、ダラダラとヨレヨレが寄り集まるとやっぱりボンゾみたいに後ろから派手に喧嘩を売れる人間がいなきゃ駄目ですね。ツェッペリンは何と危険極まりなくも完璧な均衡の上に成り立った奇跡的な存在だったのか、またペイジがいかに手に負えない天然クリエイターであったか、そのへんがよ〜くわかる後日談的アルバムということで、ロック好きを称する人なら一家に一枚あっても悪くはないんじゃないでしょうか?

  1月4日
本日の収穫、バナナ四ツ谷店にてHAPPY GO LICKY「WILL PLAY」、JIMMY PAGE「OUTRIDER」。そして大学のサークルの後輩宅にて開催の鍋にお邪魔しました。現役部員がぞろぞろ集って1LDKのアパートに26人、鍋とコンロは常時3台稼動、調理と消費は完全に分業され、規模の経済で信じられないクオリティを実現し全員満足に終わるという結果に。調理部隊もちゃんとあとから世界にひとつだけの残り汁でハイブリッド鍋焼きラーメンをガツガツ食っておられました。実はあれは人生でそうそうない鍋だったのかも知れんと、帰宅した今になって思われます。残った人々は今頃(26時ちょい前現在)デレク・トラックスのDVDに夢中になっていることでしょう。いいなあ。

【本日のレビュー:HAPPY GO LICKY「WILL PLAY」】


久々に買ったDISCHORDもの。こんなの持ってなくてポストコア云々を嘯いていたとは完全なモグリでした、すみません。ONE LAST WISHの後身、すなわちFUGAZIの前身でもあるバンドが唯一残したこの音源は、87〜88年の計5箇所でのライブレコーディングが収められた、ライブアルバムとも言い難いヒストリー実録的な盤です。録音状態は公演によってまちまち。作風はONE LAST WISHより更に崩壊ダンスパンク&音響寄りな感じのド屈折サウンドで、15年先のトレンドの最高形を既に描いてしまっていた先見性には何とも、ひれ伏すしかありません。イアン・マッケイの尻を蹴り上げてくる気合っぷりも確かに魅力ですが、やっぱりギーの出す音や声は、純粋に音楽としていつまで経っても面白い。ノイズの音楽的扱いといい、変態を志向しないナチュラルな変人感といい。天才的感覚の人ですな。FUGAZIは「ARGUMENT」に限る、という方は絶対手に入れて下さい。大抵の変態風バンドはあほらしく思えてしまいます。

  1月3日
▼休みらしく自転車の手入れなどをする。収穫はなし。知る機会さえなければ全く知らないまま生きていられること、というのが世の中にはいくらでもあろうかと思いますが、今年一番のそれは「イノシシの子供のことを『うり坊』と呼ぶ」でした。かわいいですね「うり坊」て。例えば同種の言葉と思われる「ひよこ」あたりと比べると、取り立てて特別な呼び方を用意しなければいけないほど庶民の生活に密接な存在ではないと思うんですが、それは地下鉄や下水道のある土地で育ったもやしっ子の言い分なのでしょうか。うり坊と遊んで大きくなったよという方がいたらご一報ください。

【本日のレビュー:HERMETO PASCOAL「ZABUMBE-BUM-A」】


やれ南米音響だ、やれ電化マイルスだと、ヒップな方々からの再評価を受けて近年いい感じの扱いになってるようですが、プログレッシャーには一介の辺境変態職人としてかねてから馴染みのある、ブラジルのひげじいさんの79年作。WARNER ARCHIVEシリーズのブラジル盤なので表記が「WARNER ARQUIVOS」となっているのが熱い。中身はカンタベリーやサムラ〜エトロンあたりの珍妙系RIOサウンドと呼応するジャズロックを基調として、更に熱血南米ビーツや突飛な物音なども好き勝手に挿入した、プログレッシヴ変態ジャングルフュージョンとなっております。脱臼エレクトリックファンク時代のオーネット・コールマン、アフロ〜ラテンを導入していた頃(「ATTAHK」「UDU WUDU」期)のMAGMAなどとリンクする部分もあり。暑苦しくもイノセントな笑いがお好きな方に。あっ何か昨日のシメと同じ調子だな…

  1月2日
収穫はなし。毎日雑煮ですわ。

【本日のレビュー:MATS&MORGAN「THE TEENAGE TAPES」】


今をときめくMESHUGGAHのギタリスト、フレドリック・ソーデンタルの名作ソロ「SOL NIGAR WITHIN」にも全面参加していたモルガン・オーギュレン(Ds.)と、その相方マッツ・エーベリー(Key.)の二人によるユニットのプライベート音源集。タイトル通り10代の頃に録り溜めたマテリアルであるようです。幼少の頃に聴いたRETURN TO FOREVERに衝撃を受け、のちにザッパの門下に入り師匠からお墨付きをもらったという、鳴り物入りの変態コンビなわけですが、10代から既に相当な域へ達していたことがこの盤で明らかになってもう大変です。PRIMUSの屈折しまくったバネとZNRの無重力、それこそRTF風な過剰感、ザッパばりの食い合わせ的シャッフル感、何故かチルアウトなダウンビートまでドンドン注ぎ込まれ、正直HELLAとかの立場も危うくなりそうな化学合成危険物サウンドがズラズラズラと70分近くに渡って展開。ブツ切りで終わる短い曲も多く、ひとつの完結した作品としての充実度は近年の正規のスタジオ録音盤に比べて劣るかも知れませんが、底知れぬ妄想の淵を覗けるという点では最高です。「いわゆる変態」がどんなものか気にする様子もない「純白のヘンタイ」をお探しなら是非これを。

  1月1日
▼2007年となりまして、皆さん新年初聴きは何でしたでしょうか?私のそれは、友人への年賀状のネタに使ったので、配達される頃までヒミツにしておきます。さてそろそろ00年代も後半、つい最近と思っていたものがいつの間にか回顧の対象になっていきますね。クソ古いスウィングジャズがお好きな方々などはそのうち、迂闊にポンと「30年代」とか言っても、どっちの30年代か紛らわしくて不便な思いをするようになったりするんでしょう。メディア文化はとっくに一周したとの意識のもと、二周目以降をどう行くかをビシッと確信するのが、誰にとっても死活問題な時代ですか。疲れ果てそうですが、不勉強にフラフラもしてらんないっすね。頑張っていきましょう。収穫はなし

【本日のレビューその1:NELS CLINE「INKLING」】


DEERHOOFのグレッグ君を自身の作品にゲストで呼んでしまったりする自由人アヴァンギタリスト、ネルズ・クラインの2000年発表のリーダー作。KNITTING FACTORY界隈でよく名前を目にするマーク・ドレッサーや、BJORKと共演したりとかなり幅広い活躍をしているジーナ・パーキンスなどが参加。アコギを使ってポ〜ン…‥、ジャーン…‥、と静かに呟く現代音楽的コンポジションから、無調変拍子でニョロニョロとすり抜けまくるフリージャズ然としたインプロまで、逸脱したぜヤッホーなどというナイーブな悦びはとうの昔に置いてきた様子のしっかりした筆致で描いております。ウルサ過ぎず香り高い。いいですね。アコギにやんわり絡んでくるジーナ・パーキンスのハープも耳慣れない響きで面白い。曲によってはTHE FOR CARNATION寸前の暗黒ジャジースローコアが堪能できたりもします。むしろあてなき実験に明け暮れるシカゴポストロック界隈のお偉方に踊らされるよりも、分かりやすいし充実感もあるのでは。ロッカーにも推薦の1枚です。

【本日のレビューその2:V.A.「RELAPSE SINGLES SERIES VOL.1」】


90年代初頭から世界のあらゆるデスメタル、グラインド、ノイズコア、etc.といったアングラ・エクストリーム・ミュージックを発信し続けてきたRELAPSE RECORDSの、極初期にリリースしていた7インチを4バンド分ずつ集めてCD化するという実にありがたい企画の第1弾。バンド別に見ていきます。
 最初の2バンド、VELCRO OVERDOSEFACE OF DECLINEは特に何てことのない90年代ハードコアをやってます。特にFACE OF DECLINEの方は普通過ぎるくらい普通なメロディックパンク。このへんは専門外なので深い追及はヤメにします。
 3つめに収録されているAPPARITION、これは実に期待通りの初期型C級デスメタルをかましてくれて素晴らしい。C級といっても極悪なのはプロダクションだけで、演奏も楽曲も別にCANCERやMASTERみたいな連中にひけを取ることはありません。ドゥーミーなアプローチも達者なものでなかなかカッコイイ。しかし貧乏くさいジャケやロゴ、鳴かず飛ばずだったという歴史などを踏まえて聴くと、そういう哀愁を勝手に感じ取ってしまいます。いやー音の悪い初期デスは最高だ。無理のある必死さが微笑ましくも燃える。
 そして最後がINCANTATION「ENTRANTMENT OF EVIL」EP!これ目当てで買ったようなもんです。いかにINCANTATIONが最高かは過去に紹介済みの作品をご参照ください。この頃から既に、モフモフと腐った肉の柔らかさを思わせるこもり気味のギターサウンド、地の底から這い出るようなヴォーカルは健在。凄い。ドラムはトパトパ…と軽い音で録られてますが、リフの不穏さを損なうものではありません。スラッシュメタルの残り香が消えきらないMORBID ANGELやOBITUARYみたいな先達と比べると、一目瞭然に異質なリアル・地獄オーラ。何なんでしょうこの才能は。CARCASSを鉛の底に沈めたような最重・最悪サウンドで素晴らしいです。未だに現役なのでカーボンコピーのような新作をコンスタントに作ってくれてファンには困りものなのですが、全部追いきれねーよという方はこっちの古い方だけでも押さえておきましょう。

【本日のレビューその3:BLACK WIDOW「SACRIFICE」】


BLACK SABBATHに触発された系の黒魔術ハードロックバンドが70年にリリースしたデビュー作。中の英文のライナーを見ると「大した事のない音楽的ポテンシャルの割にライブでの神秘的な演出で注目を集めた」「世界の音楽プレスから見向きもされなかったにも関わらず70年代の『ヘヴィロック・オカルト派』の重要な一端を担った」などとボロクソな書かれようです。中身の方はさほどサバス的というわけでもなく、というかむしろあんな危険なねちっこさはなく、極初期GENESISをちょっと思い出すサイケジャズロックの域。サックスや鍵盤も入ってむしろ軽妙ですらあります。これでオカルト扱いされたんだからよっぽどとんでもない演出のライブをやってたんでしょう。歌詞はきっとそういう内容を歌っているのだと思いますが。しかもフックらしいフックをあまり設けられてなくて、スルッと聴き流しそうになってしまいます。唯一、シングルカットされたという3曲目"Come To The Sabbat"は、JETHRO TULLの曲にJUDAS PRIESTのサビがついたような珍曲で、記憶には残りますがどちらかというと失笑系。「おどろおどろしい音楽表現」のステレオタイプというものがまだロック界に根付いていなかった時代のあがきの記録としては貴重といえます。減五度を使えばいいとか短三度と長三度をいっぺんに使えばいいといったセオリーも知らず、「悲しそうな顔をして演奏すればメジャーキーの曲がマイナーキーになると思った」的な世界。うーん結局ここでもボロクソに書かれちゃいました。ブリティッシュロックの文化体系に人生を捧げるほど没頭しておられる向きには間違いなく必須。

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