物色日記−2007年2月

※頻出語句解説はこちら
  2月28日
省略しました。

  2月27日
収穫はなし。昨日の記録を塗り替えている場合ではない。

【本日のレビュー:BEYOND「REASSEMBLE」】


基本的にB-THONGみたいな正直に時流に流されたC級以下の崩れメタルバンドを扱いながら、たまにCROWBARやSTRESSBALLみたいな逸材もあるというイリノイのPAVEMENT MUSICからのリリース。95年、やたらワンワード言い切りが多い曲のタイトル、謎のメカが写るこのジャケ、このバンド名…という諸々の条件から察しがつくとおり、インダストリアル風の感触をもった変則ヘヴィスラッシュをやってる人達です。FEAR FACTORYをもっとコアにして、「NONE」の頃のMESHUGGAHともクロスさせたような、パッとしないなりにいい感じのひねくれ具合。チューニングがクソ低くて少し「HEARTWORK」の頃のCARCASSに似た空気もあります。でヴォーカルはマックス・カヴァレラ似(ゆえにNAILBOMB彷彿型)。オエッと意表を突かれるリフメイキングのセンスはなかなかのもので、単にいいとこ取りのフォロワーと片付けるには惜しいものがあります。元メンバーが今何かやってないかと思ってAMGで調べたところ、ギターヴォーカル氏がこれの前にDEMENTED TEDなるテクニカルデスメタルバンドを率いていたことがわかったので、早速安く探して注文してしまいました。いやーいいねPAVEMENT MUSIC。玉石混交とはこのこと。

  2月26日
本日の収穫、久っっさし振りのバナナレコード栄店にてSTEPHEN MALKMUS「FACE THE TRUTH」、BEYOND「REASSEMBLE」(95年PAVEMENT MUSIC)。栄店って試聴機の台に、何かのフックとしか思えない出っ張りがついてて、試聴後ついついヘッドフォンをそこに掛けたままにしてレジカウンターに返し忘れるという信じ難い失態をしてしまいました。いくら久々といっても足繁く通っていた時期の方が断然長いはずなのに、脳みそとはいとも簡単にものを忘れるものだとショックを受け、家に帰って「DS脳トレ」で若返りに努めました。正直、ここのところ「脳トレ」にかなりの時間を取られています。馬鹿馬鹿しい!!

↑高得点記念。

【本日のレビュー:STEPHEN MALKMUS「FACE THE TRUTH」】


リリースから1年以上、手頃な中古を発見するこの日をのんびりと待っていました。この人は好きというか、どう出て何をどう斬るかチェックするのが楽しみで、しかもPAVEMENT時代から彼の作るレコードはもれなく「音がいい」ので、CDで買って聴きたくなるという具合です。まったく産業的でない付き合いをしています。

 ということでソロ3作目となる本作、アメリカの元・だらしない若者がどんどん自由にいい曲を録り溜めてきたという、もうそのまんまの印象。ローファイになりたい、枯れたい、フォークしたい、ロックしたい、皮肉りたい、優しく囁きたい、などといった衝動を少しも感じさせずして、結果的にはその全部を自然体で実行。新しい変なものを捏造することに優れているわけではなく、いろんな古いものの本当に良い部分ばかりを貼り合わせることでサラッと「今の俺」になってしまうのがこの人のひたすらニクイところです。この色男がよ。そして例によって音もいいです。あらゆる楽器の全ての音色が意味性をもって風景をなすようなアレンジとミックス。無駄も不足もなし。あー、こういう人こそ音楽をやればいい。それで誰も「こういう人になりたい」と思わない方がいい。

  2月25日
収穫はなし
Q:これは何でしょうか?

A:「ども。」

彼はコブハクチョウだそうです。

【本日のレビュー:SMASHING PUMPKINS「MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS」】


先日目撃したモノマネで久々に聴き返そうという気になって、10年近く振りにCDプレイヤーに載ってます。なるほど、HM/HRの70年代回帰およびグルーヴ偏重傾向とインディパンクの流れでしかグランジを考えてなかったけど、シューゲイザー/4AD系がその前にあったということをこれで思い出しました。そういや有名曲"Today"の轟音+退廃美メロだってかなり下向きな感じ。今日の昼に「SIAMESE DREAM」も聴いたんですが、それから2年後の本作ではもっと、受けてきた影響と当時の時代性と作者の素とが解放的に入り混じってて面白いことになってる気がします。歪んだドリーミーポップスの妄想大作としか言いようがない。けだし金字塔ですな。ビリー・コーガンのユニークさとか、メタリックな一面の存在とかのせいで、「スマパン似」という系譜があんまり存在しないみたいに思われがちだけど、この人達が「腐りも着込みもしない90年代のカラフルな若者ポップスってこういう風にやるんだよ」と提示したからこそ、スーパーカーみたいなバンドもああなったんではないかという気がします(ちゃんと聴いたことないですが)。まだそのことはあんまり気付かれてないようにも思うので、上手くスーパーカーに似ないようにスマパン・イズムを流用したバンドを日本でやれば「イマジェナティヴだ、時流に合っている、すばらしい」といって売れるかも知れませんよ。

  2月24日
収穫はなし。EXTREME THE DOJO Vol.17名古屋公演まであと10日。楽しみ。昨日ローソンの端末で買ったチケットの整理番号は500番台でした。そんなに来たらモッシュで津波ができてクラウドサーフの人も大変ですな。前の方で拝みたいけどメガネごと頭蹴られるの怖い。

【本日のレビュー:FUCK「CUPID'S CACTUS」】


ジャケ前面にバーコードをあしらってしまったというやる気のないアートワークといい、そもそもバンド名といい、ナメきったアメリカの無気力ローファイバンドの2001年作。パレス関連に似た雰囲気でもありながら、寝起きでボケてて完全非戦闘モードになってるSILKWORMもしくはCOMEといった方が近い。一応アメリカのフォークロックやブルーズへの造詣はそれなりにちゃんとしてる上で、音響的に冒険するというよりも「ヤメてしまっているがゆえにちょっと崩れている」といった調子での妙加減。曲を作って捨て入れるゴミ箱を開陳するかのような潔さが快適なアルバムに仕上がってます。PAVEMENTファンにはおすすめしません。

  2月23日

▼朝出かけるときが雨、帰りが晴れだったので、身を削って交通費を浮かすことにSM(または登山)的充足感を得ていた大学生時代以来久々に、地下鉄7駅分の距離を歩いて家まで帰りました。普段自転車でスッ飛ばしている景色を時速4〜5メートルで進んでみると、今まで目に留まっていなかったあんなお店やこんな路地が…などと言ってしまう歳頃ではもうございません。住宅密集地の奥まったところに通っていた、若干太めだが交通量は大して多くない道に、あんまり役に立たなそうな押しボタン式信号機が設置してあるのを見つけて、そのときちょうどそれを押して横断しようとする人(散歩の犬を連れた30代くらいの女性)が。たまたま通ろうとした車2台を止めてまで、あの人律儀だな…と、自分もそこを通り過ぎたあとでクルッと振り返って様子を見てみたら、どうも犬の方がオシッコをする場所をなかなか決められなかったらしく、そこら中をクンクンし続けて結局横断歩道には一歩も踏み出さないうちに、時間切れでまた赤信号に。笑い話だなと思いかけましたが、無意味な停止信号で人様の夕刻の早く帰りたい数分間をもったいないことにしてまでてめーの犬の好きにさせる悪い大人を見たということで、だんだん残念な気持ちになって残りの帰路を歩きました。収穫はなし

【本日のレビュー:ANTHONY PHILLIPS「SIDES」】


70年代英国プログレのナンバー5バンド・GENESISに極初期のみ在籍していたギタリストの79年作。彼はGENESIS脱退後から長く精力的なソロキャリアがあり、上流階級的牧歌プログレをGENESISと平行に描きながら、時流にのまれてちゃっかりポップ化もしていたようで、このアルバムはちょうどそういう時期の作品である模様。優しい中低音ヴォイスがひたすら心地よい英国紳士サウンドに、80年代寸前のパリッとした思い切りの良さがほどよく(毒されるまでいかない程度)絡み、まだデジタル化されきらないシンセ、リヴァーブ温泉に浸からないミックスも相俟って、コマーシャルになりかけのプログレポップを愛する私のような人間には本当にたまらない出来になってます。GENESIS「WIND & WUTHERING」やCAMEL「NUDE」あたりのあの感じにトッド・ラングレンを足したような、ゴダイゴがスティービー・ワンダーに感化されたような。大名盤じゃないですかこれは。自分に関係あるなと思った方はすぐに探して買って下さい。

  2月22日
▼昨日に引き続き鶴舞K.D.ハポンにて「俺ロックフェスティバル2007」、2日目の今日は出演者として行って参りました。きっとお客さんの目も厳しいんだろうな〜と思って頑張ってハードルを上げて追い込んだ結果があれだったわけですが、ちゃんと笑ってもらえたので幸せです。もっと普通に演奏が上手くいくはずだったんだけどなー。喋りで強制的に想定する方向へと空気を流すという姑息な手段で乗り切ってしまいました。着ていたTシャツはこれと同じ柄ですので。

 いち客としては、普段PAでお世話になっている星さんがどうなるかとても気にしていたんですが、小道具をごたごた並べずiPodとボリュームペダルだけでコーネリアス的なグッドソングを完成させてて、良かったですなー。散々色んな人達を見てきているだけにか、然るべく選ばれた音だけ出している感じでした。THE PYRAMIDのドラマー氏のビリー・コーガンのモノマネは激似で最高。バックのオケの完コピぶりにも感動。そして方々から凄い凄いと聞いていたラストの石田達郎さんは…小一時間かけて意外な穴から解脱する衝撃のパフォーマンスでした。あれこれと文字にするのもナンセンスになりそうなのでヤメにしておきます。今日が何の日だったかすっかり忘れて終了。

▼それにしても暖かいです、ハポンすぐ近くの鶴舞公園は一部でもう桜咲いてます。ライブの帰りも手袋ナシでいけました。今年はきっとピークで混雑するのを嫌って抜け駆けで花見しようという人が増えて、満開の時期の名所的なところが多少快適になるんじゃないでしょうか?この手の推論が夕方のニュースの天気予報の余計な喋りで飛び交う前に予言しておいて、的中したらいい気になろうと思います。

  2月21日
▼2日連続で開催され、明日は自分も出演する鶴舞K.D.ハポンの「俺ロックフェスティバル2007」1日目の観戦に行って参りました。完全に傾向と対策モードで見てしまった。いやー皆さん色々です。中でも、地方市役所職員しか直面し得ない非日常をごく淡々とトリミングしたものを必要以上の球速で放り投げるカシオトーン弾き語りのフジノさん(BOOKHOPE)、一見無意味かと思うトリックをばらまきながら途中で時間軸をシフトさせて、謎のタネ明かしと補完をしていく一方で炭水化物だけは実際の時系列どおりに過剰蓄積されていくという、半ば現代劇的な構成に仕立てた立石くん(ジョンのサン)のご両名には特に感銘を受けました。楽曲の末梢のフレーズがどうのという以上に、どうやってそこに立っているかで客を沸かすというのは、できれば達成できたい課題です。人を参考にした時点でもう間違ってしまうので、なかなか難しいものです。

本日の収穫、サウンドベイ金山にてDON ELLIS「THE NEW DON ELLIS BAND GOES UNDERGROUND」、ANTHONY OHILLIPS「SIDES」、BETRAYER「CALAMITY」、ROTTEN SOUND「PSYCOTIC VETERINARIAN」、APRIL WINE「ELECTRIC JEWELS」。迷って買ってしまいそうになるCDを減らすのは割と上達してきました。

【本日のレビューその1:ROTTEN SOUND「PSYCOTIC VETERINARIAN」】


フィンランドの極悪グラインダー。94年リリースなので多分初期寄りのリリースだと思います。全13曲がまったくトラック分けされておらず、プレイヤーでは1曲として表示されますが、トータル13分そこそこなのでまあどっちでも同じです。EXTREME NOISE TERRORとBRUTA TRUTHの中間のようなド正統派サウンドが快い。アホっぽい爆走ノリが加わるのはやはり北欧の血なのか?IMPALED NAZARENEほどではないけど、近い空気。ブラストはキレがいいというよりひたすら筋力で走り倒してる感じです。きたない嘔吐やゲップみたいな声が曲の終わりにいっぱい入ってるのがいいですね(そのへんだけANAL CUNT風)。借り物盛り合わせを全力でやっているといった雰囲気もありますが、確かまだ現役で、今ではいい感じに極悪化しつつ垢抜けてきていたように記憶しておりますので、選んで買うならもう少しこなれてきた時期の作品の方がいいかも。

【本日のレビューその2:BETRAYER「CALAMITY」】


94年ポーランド。ヨーロッパのデスメタルといえばスカンジナビア三国とせいぜいオランダ・ドイツくらいしかないと思われがちですが、昨年夏のディスクヘヴン移転セールの際にデスメタル棚を何度もくまなく見てまわった結果、ベルギーやチェコ、ウクライナ、ベラルーシといった国々まで、アングラメタルシーンが広く展開していたということを知りました。ということでVADERで有名なポーランドにも、他にこのようなマイナーバンドが存在していたようです。PANTERA風の硬質リフで聴かせるミドル〜スローパートを積極的に交えつつ、時々いきなりグオッと牙を剥いて激ブラストを挿入するという、いそうでいないタイプ。シュッとしてからのNAPALM DEATHとSEANCEあたりの中間という雰囲気も。VADERしかり、ポーランドはこういう激烈肉食ブラストが冴えるバンドが育つ気風なんでしょうかね。良質でヨロシイんではないでしょうか。名前だけ知れてていまひとつだったりする古めのB級バンドより全然聴き応えあると思います。

  2月19−20日
収穫はなし。今日はメジロがものすごい小っちゃかったくらいしか思い起こすべきことがないので、近頃気になっていたことでも書いておきますが、「フレッツ光」のテレビCMはなんともひどいですな〜…。あんな商売で許されるんだったら何でも柴犬やマガモのオスにCMやらせときゃ私が買いますよ。マガモのオスはおしゃれ。

【本日のレビュー:電車「電車トーマソ」】


随分前に買ったものですが久々に。大槻ケンヂと元マルコシアスバンプ他の佐藤研二、初期筋少にいたこともある石塚伯広、元すかんちの小畑ポンプの4人によるグループです。2001年のこの作品以降リリースはあるんでしょうか。1曲目のタイトルトラックがいきなり、マジカルミステリーツアーがコバイア星行きになってしまったような超プログレな逸品で、オオッと思っているとそういう雰囲気の曲は結局これだけ。ファンクとフォークとブルーズが変な崩れ方をして渾然一体となった、ジャパニーズアングラを地で行くこのメンツならではの煩悩文学ロックになってます。空気はまさに明治大正の湿った四畳半。おおむね歌もの然としていて、オーケンが大人しいのが多少物足りなくもありますが、歌詞は相変わらずスパスパ切れてます。シークレットトラックに"パーマのブルーズ"という曲のライブ音源が2パターン入っていて、後に入っている方が客席がドカンドカンと笑っていて最高です。ここを紹介したさゆえの今回のピックアップでした。

  2月18日
収穫はなし。一念発起してまた部屋の大掃除。エントロピーが極大化するまでは常に無策なので、大掃除以外の掃除はないのです。要るのか要らんのかわからんものが多くて困ります。今使ってるパソコンの取り扱い説明書、エフェクターの保証書、輸入盤CDに入っているレーベルカタログ(のうち好きなレーベルのやつ)、オビ、給与明細、配りきらず手元に残ってしまったイベントのフライヤー、何かを分解したときに出てきたナットやワッシャー、小銭、中途半端に減ったシャープペンの芯のケース、鉛筆、何かについていたしょぼいイヤホン、良かったライブの半券、CD屋の袋やCDのビニールカバー、何だかよくわからないひも。こういうの、皆さんどうしてますか??罪深き資源搾取の果てがこの有様、先進国で暮らすだけで悪ですな。せめてイオンで買い物するときはレジ袋をもらわず、暖房の設定温度は22度くらいにしてますが、それでもまだ爆弾テロで殺されるに値するんでしょう。

【本日のレビュー:ALAN HOLDSWORTH「ROAD GAMES」】


84年のリリースですからソロキャリアとしては初期の方でしょう。全6曲入りで、ドラムがザッパ門下生のチャド・ワッカーマン、ヴォーカルにはあのジャック・ブルーズが参加してます(もうひとりTEMPESTの人も)。時代が時代なのでかなりパカーッと明るく爽やかで、パット・メセニー・グループ化したUKというか、ホールズワース版のパラレルASIAですな。ニュルニュルとイルカに誘われて七色の楽園に連れられるような(?)独特の変則スケール・高速レガートプレイはもちろん健在。変拍子を盛り込んだテクニカルなキメもほどよい頻度でフィーチャーされてて、なかなか燃えます。以降だんだん暗くて気難しい作風に移っていくので、わかりやすく朗々と歌うのを堪能するならかなり狙い目な盤といえましょう。日本のフュージョン趣味のシンフォプログレバンドがこぞって標榜するのもこのへんですね。個人的には昔ゼロコーポレーションから日本盤を出していたEVERONを思い出しました。おっラストの曲が東京のBALLOONSみたい!

  2月17日
収穫はなし。たまに飲食店で「90年代ベストヒット歌謡」的な有線を聴き続けてると、実力派だと思っていた昔の歌い手の音程が意外にラフだったりして驚きます。というか最近は、大概直しすぎですな。一昨日くらいにウチの食卓に出てきたトマトときゅうりが、全然甘くなくて、改めて野菜うまいなーと思ったこともありました。それより、年末に通気の悪い廊下で強力な洗剤をまいて長時間の床掃除をして以来か、どうも化学合成された洗剤などのそれなりに爽やかにしてあるはずのニオイを(物質のいわれを知っての思考の結果ではなく)石油くせーと感じるようになってます。すると世の中大概石油くさいです。

よせばいいのに、東京マラソン…。

【本日のレビュー:CONRAD SCHNITZLER「ROT」】


最初期TANGERINE DREAM、および頭文字がK時代のKLUSTERに関わっていたコンラッド・シュニツラーの73年作。個人名義としては2枚目になるようです。20分のトラックが2曲という、気合を要する内容。しかし素晴らしい。いつまで経っても始まらないTHIS HEATかのような無表情な電子音がプーーー…と続くうちに、断続的にランダム演奏したテルミンみたいな音があれよあれよと被ってきて、いつの間にやらいい塩梅。ジャーマンロックにありがちな、バンドのセットでの生演奏による中途半端にレトロッキンなサイケデリアなどは入り込む余地もなく、73年にして完全にMEGOとかの世界です。ピューイィー!執拗かつ静かにアナーキー、もの凄い良質のトリップ感。POPOL VUHの1stばりかそれ以上。しかも20分のうちにボチボチと展開(というか変移)があって、気がつけば一切ダレてない。2曲目(タイトルは"Krautrock"!!)はもう少しボヨボヨと動く謎多きビートを下地にして、時計屋の店内の物音にタチの悪いモジュレーションディレイを深々とかけたかのような、これまた即離陸モノの出来。いやー妥協なし、イカれてる。パンク!個人的にはASH RA TEMPELやAMON DUULみたいな有名バンドの初期作より全然聴けました。どっちかというとエレクトロノイズ版デレク・ベイリーてな調子。とにかく詠みが確かで全然ブレず、快いのです。いや最高。

  2月16日
本日の収穫、サウンドベイ上前津にてCONRAD SCHNITZLER「ROT」。それと、ボケたことに何と昨日の収穫があったことをすっかり忘れておりまして、ブックオフ熱田1号店にてOBITUARY「WORLD DEMISE」、UP ALL NIGHT「UP ALL NIGHT」(LONG ISLAND)。どうせレビュー行きになることはないと思って現在UP ALL NIGHTの方を聴いてますが、超妥当に洗練された型押し産業ロックで最高です。俺らは最新で最強のアグレッションを、または前衛性をブチまけています!と息巻いておいて全然100%再生紙なデスメタルやポストロックにはウンザリなくせに、こういうJOURNEYひとついれば事足りるところを無駄に頑張ってその再現に勤しむB級産業ロックバンド達には、どういうわけか無条件でキュンキュン来てしまいます。それどころか、こういう路線を標榜しているというだけで褒めたくなります。「好きな音楽」と「弱い音楽」が別にあるものなんでしょうかね。

【本日のレビュー:OBITUARY「WORLD DEMISE」】


フロリダデスの元祖的存在OBITUARYの94年作。ワルいですなあー。もともと鋭いブラストビートなどは使わず、ややねっとりした粗暴な2ビートで押すタイプだったのが、このアルバムではもろPANTERAその他の煽りをうけて徹底的に低速化。こうして微妙に遅れたタイミング(94年といえばちょいと遅い方です)で流行に追従した連中は概して、ただの無個性な陰鬱グランジメタルに成り下がってしまうケースが多かったですが、彼らの場合さすがベテラン。上から下へフギャーと吐き捨てる醜悪なデス声の応酬によって、顔面の孔という孔から血を流しながら黒焦げになって今にも倒れそうな断末魔のBIOHAZARDってな様相に。壮絶。スローテンポだからこそ醸し出せる汚らしさってのもあるもんです。全編やってることが似通いすぎてて、楽曲ごとの魅力なんてものは判別できないに等しい状態ですが、まあダラダラといくこの感じがいいじゃないですか。チャプター分けされた長〜い1曲のつもりでどうぞ。あ、時々90年代のCELTIC FROSTみたいな雰囲気にもなりますな。割とこれ以上ないくらいにネガティヴ&ヘイトに振り切っちゃってますので、ジャンルの見境なくそういう音を探してる向きには大推薦です。

  2月15日
収穫はなし。おっとあと一週間ではないですか。
2/22(木) 鶴舞 K.D.JAPON
「俺ロックフェスティバル2007」(2日目)
開場19:00 / 開演19:30
1,500円 / 2日通し券 2,500円(予約のみ)
出演:
加納"ゴロー"朋(the pyramid)
杉山明弘(DOIMOI)
星裕久(KDハポンPA)
石田達郎(ex.ジ・コアラ)
東内原章人(アスカテンプル、オーラミン、ひよめき)
成田元彦a.k.a.lKALU(ex.SERA)
曲は順調に出来上がってきています、自転車で走りながら頻繁にリハーサルしてますが、実際に演奏するのが大変そうです。中学生時代に読んだ「炎」誌(メタル専門誌「BURRN!」の姉妹雑誌)でビリー・シーンが語っていた、「TALASでは本当はキーボードが欲しかったけど、4人目のメンバーを入れるんじゃなくて、ベースでキーボードパートの代わりになるような音も出せばいいと思った。それで色々と変わった演奏のしかたを試すようになった」といった旨の発言が未だに脳裏にへばりついておるのです。

【本日のレビュー:ROB LAMOTHE「ABOVE THE WING IS HEAVEN」】


カナダ在住SSWの2003年作。いや〜〜、どの作品を聴いても常にグレイトな人です。作風は相変わらず、IDAやEASTMOUNTAINSOUTHなどに近い雰囲気の、「寒い季節の暖かい屋内」を思わせる極上の和みモダンフォーク。というかほとんどこっちで書ききってます、ご参照いただいた上すぐに買ってください。ブルージーで熱っぽいが芯からの心優しさを漂わすヴォーカリゼイションは唯一無二で最高。お、後半で哀愁アコースティックヴァージョンに大改造されたBLACK SABBATHの"Paranoid"を演ってますな。やや長尺なラストの曲はRED HOUSE PAINTERS〜DAKOTA SUITE路線まっしぐらでまた泣けます。

【本日のレビューその2:スピッツ「魔法のコトバ」】


半年前のシングルですな。中古で315円になったところをすかさずゲット。「ハチミツ」期を主軸にするこのバンドのパブリックイメージにぴったり沿った名曲です。いつもどおり「スパンの大きい単調上昇と単調下降のコンビネーション」と「山型が平行移動する繰り返し」だけを使ったシンプルなメロディライン。よくネタ切れもせず「新曲」を作れていくものだなと感嘆します。もう曲ならいつでも出てくるといった感じですね。目下の最新フル「スーベニア」は、初期さながらの切れ味でアーティスト性を大爆発させていた前作「三日月ロック」から打って変わって、スピッツを聴きたい人のためのアルバムといった出来になってましたが、この曲もその流れ上にあるといえます。もはや職業作家の趣き。アルバム3枚に1枚くらい芸術家に戻ってくれればもう文句はないです。

 ファンには気になるBサイド"シャララ"ですが、シンセブラスを入れてアップテンポに仕立てたスカパン風の曲になってます。「8823」あたりに入ってそうだけどもう少し油断した感じ。さしずめ夏フェスとかでこういうバンドと共演して、スカパンっぽいのもシングルB面くらいでやってみたいなあ、という思い付きを解消してみたといったところか。崎山龍男大先生の鮮やかなフィル(の後のスネアによく添えるクラッシュ一発)をしかと堪能できるのでよし。

  2月13−14日
本日14日の収穫、HMVから到着のROB LAMOTHE / CRAIG ERICKSON「RIDE」、MASTODON「BLOOD MOUNTAIN」、NEWS FROM BABEL「SIRENS AND SILENCES/WORK RESUMED ON THE TOWER/LETTERS HOME」(リマスター&リパッケージのBOXセット!)、更にバナナ名駅店にてスピッツ「魔法のコトバ」。バナナでは他に3枚くらい試聴したのに(しかもメタルばっか)、全部ヤメでこれだけ下さいといってスピッツのシングル(しかも最新)をレジに差し出すのが少々気恥ずかしくもありました(27歳・男)。

 それにしても試聴してヤメたCDがカッコ良かったな〜。ひとつは最近のINCANTATIONもリリースしているフランスのLISTENABLEから出ていたABORTEDというベルギーのバンド。THE HAUNTEDをブラスト+ガテラル化したかのような理想的なデスラッシュでした。もうひとつはMETAL BLADEの若手筆頭・THE RED CHORD。SOILENT GREENや初期MASTODONのような変態性をアピールしつつ、もっと強烈にグラインドする猛者でした。散々悩みながらひとしきり聴いたあとで、「ヨシ、家に帰ってTHE HAUNTEDやMASTODONやDISCORDANCE AXISを大切に聴こう」と思うに至り、結局スピッツ1枚に絞られたのです。

 残念、デスメタルはもう止まった音楽なのだということを今更知ったのであります。上述2バンドのどちらも、演奏内容はそれ以上どこも良くしようがないくらい優れていました。がしかし、古びかけた他人の魂に成り代わることが平気で「俺らの真摯な表現」になってしまっている。思えばリスナー側の耳もすっかり成熟して、詳細にわたるチェックシート(CARCASS寄りかSUFFOCATION寄りか、ブラストの占める割合は何%か、ギターの音はこもっているか、等々)をもとにこいつはダメ、こいつは分かってる、といって新しいバンド達を選別にかけているような現状。「そうやって昔と同じ音楽を現役として演奏するバンドがいるからこそ今のシーンが成り立っていく」などという口上が通るなら、その「シーン」の中身も相当虚しいものです。懐メロ番組に懐メロっぽいオリジナルを披露する新人歌手など要らないに違いない。

 ここ数年のうちに聴いたデスメタル系の比較的新しい作品で、うわ、問題だ!と跳び上がるくらいにインパクトがあったものといえば、ヴェテランの新譜を除けば、AQUARIUS RECORDSもイチオシのLUGUBRUMくらいしか思い当たりません。(私の見識も狭い方だと思いますが。)先日のEXTREME THE DOJOでSATYRICONを見たときは、なるほどまだ将来のあるブラックメタルの新形態とはこれか、と感じたものですが(メインアクトだったCELTIC FROSTはもはや孤高過ぎてそういう論議にあてはめるのが適当でない気がします)、これまでの通念からいえば彼らの現在の音楽はほとんどブラックメタルとは呼べないものでもありました。しかしこういう規格違反の現場にこそ、いやしくも「今のシーン」と言うに値する代謝というものが起きているのではと思います。少し前、個人的に盛り上がって、90年代前半の埋もれたC級ゴシック/ドゥームメタルを狂ったように掘り起こしてみたのも、現在の様式に洗練された「デスメタル選別チェックシート」に無い項目を堂々とやってしまうようなバンドがぞろぞろいたからです。マイナーな彼らは実に粋なイナバウアーを披露してくれるわけですよ。

 勃興から実に20年近く、「極端に凄いこと」をアイデンティティの一部にしてきたがゆえ、ほとんど持続音と判別不可能な超高速パルスに肉薄するまでに進化を遂げ、意表を突くトリックのパターンもおおかた実践済みとなった現在。「デスメタルの名曲のイデア」の何通りかはもう余りに誰にでも見えやすくなってしまっているようです。SATYRICONはともかくLUGUBRUMのようなやり方はなかなか認められないようだし、どうするんでしょうね。RELAPSEあたりにしっかりしてもらわないと困りますね。ということで思いがけず本日のレビューに続きます。

【本日のレビュー:MASTODON「BLOOD MOUNTAIN」】


大昔はこんないち弱小アングラレーベルだったのが、今やライバルのCENTURY MEDIAやNUCLEAR BLASTらをその懐の深さで圧倒し、欧米の激ロック何でも本舗としてのステイタスを確かなものにしているRELAPSE RECORDS。その看板アーティストのひとつだったのがこのMASTODONです。伝説的カルト・サイコ・グラインダーTODAY IS THE DAYの元メンバーを中心に結成後、2001年にリリースされたデビューEPは、SOILENT GREENやTHE DILLINGER ESCAPE PLANなどといった高圧縮変態ミクスチャーメタルに沸く当時のRELAPSEサウンドの正に申し子といった内容ながら、どこか雄大な歌心も秘めていて、ひとクセある存在感がありました。

 それから押しも押されぬアメリカのトップ・メタル・バンドの仲間入りを果たした現在、この最新作は何とあのREPRISE(RELAPSEとややこしいですが…ちなみに現在はWARNER傘下になっている模様)からのリリースされています。前作に引き続き楽曲としての彫りの深さを丁寧に描く作風が強化され、デスメタルの特殊技能をヘヴィメタルの本流に持ち帰ってきたかのような、前人未到の新・正統派メタルを見事に体現。普通声で歌うパートが増えていっそう一見(あくまで一見)オーソドックスな佇まいに。シッポをつかませない変態高音フレーズや猛烈な変拍子も、すべて必然の叙景詩として登場します。過去30余年分の歴史と誇りにかけて、ヘヴィメタル/ハードロックにやれることは何でもやったという感じじゃないでしょうか。URIAH HEEPとGORGUTSが同時に鳴っているかのようなこの感覚は未だ体験したことがない気がします。近頃のSYSTEM OF A DOWNはよくやってるなあ、みたいに思っていた人は絶対聴いた方がいいです。あるいはTHE MARS VOLTAファンでも、WOLFMOTHERで初めてハードロックちょっといいかもと思った人も。ありがとうと言いたい会心作。

  2月12日
本日の収穫、くそレイジーなカナダのCDショップから10ヶ月越しくらいで到着したROB LAMOTHE「ABOVE THE WING IS HEAVEN」「BRAVE ENOUGH」。今日は遂にeBayデビューしちゃいました。

【本日のレビュー:WILLIAM PARKER「RAINING ON THE MOON」】


02年THIRSTY EAR BLUE SERIES。ケン・ヴァンダーマークとの共演もあったハミド・ドレイクが叩いてまして、数曲で女性ヴォーカルも入ります。基本は和音楽器なしの2管カルテットによる重心の低いグルーヴをまとったポストバップ。リーダーのはずのウイリアム・パーカーのベースはどの曲もワンリフのループに徹しており、完全に監督的な立場をとっています。他人同士がたまたま同じ通りを歩いているような字余り気味のユニゾンだとか、ポスト・フリーを音楽的に聴かせる手法はもうずっと昔から変わらないのを使ってるわけですが、やたらアナログな感触の音づくりにして、ダブっぽいアプローチもそこはかとなく溶かし込んだり、ヴォーカルをででんと置いてコンポジション然とした風体に仕立てているあたりで、「今様」を体現せんとしたのでしょうか。破綻しそうでしきらないインプロパートの温度感はなんとも現代的ですね。このシリーズでよく聴ける思いがけないクロスオーヴァーや派手な逸脱といったものはあまりなく、ジャズとその外郭の音楽にもともとあった質感を新生させるのが主旨といった感じです。非ジャズリスナーが手に取りやすい内容ではありますが、ディープ(で寛容)なジャズリスナーにこそ新鮮味や感銘のある盤かも知れません。

  2月9−11日
▼10日の夜が京都でライブでした。東京も去年やってるのでこれで中部・関東・関西とひととおり制覇ですな。今回は、全国の気になるバンドをチェックしてきては地元京都でイベントをオーガナイズし続けているという金森さんという方の企画で、それぞれ毛色の違うバラバラな取り合わせの中のヘヴィサイド担当をDOIMOIに、ということで呼んでいただきました。ロケーション的にも音楽性としても果てしなくアウェイだったわけですが、ある時期から「ほかに出演する誰々を見に来た人にも聴いてもらいやすいセットリストで…」みたいに計らうのは一切ヤメにしてるので、今回もこの頃のいつもどおりな感じでやってこれました。

▼終了後、適当に打ち上げるつもりで飲み屋を探すも、近くにめぼしいところがなく、結局地下鉄3〜4駅分くらいの距離を歩いて深夜の河原町で店を物色。電飾の明るいエリアのちょっと細い道に踏み込むやいなや、風俗の客引きに次ぐ風俗の客引き、終電もなくなるはずなのにゾロゾロ10人以上で移動している高校生、チャラそうな男女が集まる謎のパーティー会場、焼肉食べ放題、串、鉄板、さすがにソフトバンクショップは開いてませんでしたが(ベースの篠田君が執拗に携帯の機種変更をしたがっていた)、こんなんと比べるとやっぱり名古屋は夜の早い田舎なのだなあと認識を新たにしましたよ。何でもありすぎて逆に選べなくなっているうちに一同の空腹も極まり、散々迷ってきたのが嘘のように凄く適当に入ったもつ鍋屋で意外に満足し、雑な仮眠室のあるサウナで一泊。

▼仕切りも何もない仮眠室なので周りの客のいびきや物音でなかなか寝られず、疲労も回復しないまま2日目。二条城をじっくり見学し、その後ある者は清水寺へ、ある者は三十三間堂へ。4人中2人の携帯の電池が切れてなかなかタフな状況を迎えつつなんとか再び集合し、名古屋へと戻ってきました。片道3時間で着くし、見る所には困らないし、いいですね京都。土日で誰か呼んで下さい。

▼京都でCD屋はまわってこなかったのですが9日の収穫が普通にありまして、今池P-CANにてWILLIAM PARKER「RAINING ON THE MOON」。次は三条あたりを掘りまくりたい。

  2月8日
収穫はなし。最近よくあるんですが今日も、行くつもりだったCD屋に行きませんでした。近頃断然億劫なのは「帰りが遅くなること」です。帰宅後、夕食等の用を済ませてから就寝時刻までが、3時間になるのと1.5時間になるのとでは、やれることは半分じゃなくてそれ以下になると思いませんか。有酸素運動と一緒で。無理を押して3時間やって睡眠時間を削れば、そのせいで翌日の全体的な気力が落ちてしまって、次なる3時間の生産性まで下げることになるし。こういうことを考え始めてもう5年以上は経ってるはずですが、一向に生活改善が見られませんです。ドブに捨ててきた時間たちをもし内職にでもあてていれば今頃ッ…。

【本日のレビュー:PATTO「HOLD YOUR FIRE」】


漫画風の身も蓋もないジャケに何だこれと思っていたら意外にロジャー・ディーン。こんな作風ももってたとは。以前デビュー作を紹介した70年代のB級ブリティッシュHRバンドの2ndです。REPERTOIREのこの手の再発は、中のライナーでの書きようが本当に残酷で、「2作目のセールスは不本意なものとなり、VERTIGOとの契約は更改されなかった」「3枚目のアルバムは実験性の高いものだったが、カスのように批判された」「4作目のレコーディングが準備されたが、バンドの内紛により実現しなかった」等々、ポジティヴな表現が一切見当たらず、泣けます。まあREPERTOIREが悪いというよりは、泣かせるバンドばかりをREPERTOIREが再発してくれてるだけという話なんですが。

 内容は確かにデビュー作ほどのインパクトはなく、軽くアメリカナイズされてソウルっぽいノリに安易にぶら下がってしまっていたりして、疑問符の嵐とともにエキサイトする70年代初頭の暗中模索ロックの醍醐味が少々軽減してます。しかし後半になるとツェッペリン風の瞬間変拍子が出てきたりしてちょっと面白い場面も。それより気になるのは、やたらギターが上手いこと。高速ハンマリング&プリング、時にタッピングらしきものまで駆使して、さながら80年代のLAメタルミュージシャンのような速弾きもこなすし、アメリカンな土クサフォーキースタイルをやっても、スケールアウトしまくりのフュージョン風スタイルでも、明らかに突出した達者ぶり。その上ヴィブラフォンまで操ってしまうオリー・ハルセイルなるこの人物、THE BEATLESのそっくりバンドTHE RUTLESの音源で全面的にギターを入れていた人だそうで。隠れ名手発見ですな。そこに気付いて聴き進むと、作品全体が彼の野心とアイディアで成り立っているような感じもしてきます。ライブではさぞ存在感を放っていたことでしょう。ということで、何だかんだで楽しい思索に耽ることのできる好盤のようです。

  2月7日
収穫はなし。出先で暇があり、シンコーミュージック刊行「ヤング・ギター・アーカイヴ Vol.1 LAメタル」を立ち読み。伊藤政則が語る80年代アメリカンメタルの総括は、一読の価値ありの濃厚な内容でした。歴史というものを自身が経験してきたままに語れる人間の言葉はやはり重い。他に寄稿してたライターは化石ものの間抜けでしたな…「新しいスターの誕生を願って止まない。」とな。

【本日のレビュー:TROUBLE「PSALM 9」】


今も数多くのアーティストからのリスペクトを集め、つい最近バックカタログがリマスター再発にもなった80年代USドゥーム・メタル・レジェンドのデビュー作。この前のC.O.C.からの流れで続けていきたかったんですが結局間があいてしまいました。さて一般的には「BLACK SABBATHに強く影響を受けたドゥーム・メタル」と認識されているこのバンド、少なくともこの時点(84年)では実際はもうちょっと手広くやっていたようです。同時発生的に存在していたSAVATAGEやMERCIFUL FATEみたいなバンドとも共通するカルト系様式美、初期JUDAS PRIESTのような悲壮感と荘厳さ、更にはANGEL WITCH的なインチキ感なども一緒になり、USアングラメタルの偏った変異種としかいえない出来に。いやークール。薄ら恥ずかしいものを薄ら恥ずかしいままドバーンとアンプリファイしてしまうこの無謀な勢いはWOLFともタメを張るじゃないですか。84年にして既に。CANDLEMASS(およびMEMENTO MORI)、SOLITUDE AETERNUS、SANCTUARY〜NEVERMOREファンの方々は避けては通れんですよ。

  2月6日
▼(昨日の前半の続き)とか適当そうなことを言っておいて、本当は日々物凄い勢いでシミュレートしてます。今日の練習(もちろん一人)は上手くいった。見る人に退屈されないといいです。本日の収穫、大須グレヒにてPATTO「HOLD YOUR FIRE」(2nd!)、THE LOUNGE LIZARDS「NO PAIN FOR CAKES」。

【本日のレビュー:THE LOUNGE LIZARDS「NO PAIN FOR CAKES」】


日頃TZADIKだTZADIKだと嘯いてる人間がこんなものを聴かずにいたらそりゃモグリですわな。何も音楽作品を年代順に権威づけしたいわけではなく、最高だと思っていたその後の枝葉の音楽に対してこっちが圧倒的に種だからしょうがないのです。アート・リンゼイ&アントン・フィアーは抜けたものの、ジョン・ルーリーとその兄弟エヴァン、マーク・リボー、エリック・サンコなどなど、そっちの界隈のドン級の人々が揃っている超ミラクルスーパーバンドの87年作。81年のデビュー作以来スタジオ録音としては2枚目になります。

 昔はノーウェイブな香りをガンガン振りまくシニカルなフェイク・ジャズだったのが、今作ではすっかり90年代以降のTZADIK(の「RADICAL JEWISH CULTURE」シリーズ)サウンドに接近。クレツマーほか東欧音楽+ポストパンク経由のノイズ・ロック+近代クラシック〜現代音楽のカクテルを、管楽器を含む大編成を活かした映画音楽的なスケール感で体現する内容となっています。これだけ広範なアプローチをしておきながら、「色んなところからゴッタゴッタと引っ張ってきました」的な雑居感をほれほれとアピールしたりはせず、「色々入ってるけど根は全部同じひとつの何か」と聴き手に思わせてしまう確かさと機能美がさすが。無理してどこかにカテゴライズするのであれば、正に額面どおりの意味で「ポスト・ロック」なんではないでしょうか。個人的には1stよりも重みを感じる名盤です。

  2月5日
収穫はなし。ちょっと変な音楽を聴くと全部MAGMAに聴こえる。なので"M.D.K."のカヴァーでもやろうかと思ったりしています。いや、どうだろうか。
2/22(木) 鶴舞 K.D.JAPON
「俺ロックフェスティバル2007」(2日目)
開場19:00 / 開演19:30
1,500円 / 2日通し券 2,500円(予約のみ)
出演:
加納"ゴロー"朋(the pyramid)
杉山明弘(DOIMOI)
星裕久(KDハポンPA)
石田達郎(ex.ジ・コアラ)
東内原章人(アスカテンプル、オーラミン、ひよめき)
成田元彦a.k.a.lKALU(ex.SERA)
過去にいろんな名義で一人音源を作ってますが、今回はそれらと関係なく全て新マテリアルで臨む予定です。未だ完成形が見えてないので(恐らくそのまま本番行き)自分で楽しみです。大丈夫かなー。

▼近畿圏在住の方、お初でございます。
2/10(土) 京都・油小路御池 夜想
「歌謡万博」
開場17:30 / 開演18:00
2,000円(1ドリンク付)
出演:
her(東京)
DOIMOI(名古屋)
current mirror
loti
ちあきひこ
カモン観音。金剛力士を従えて。

【本日のレビュー:BLACKSTAR「BARBED WIRE SOUL」】


NAPALM DEATHから枝分かれするや否や、デスメタル黎明の時代にいきなりゴアグラインドのパーフェクトな雛形を作り上げ、そこから数年でたちまちメロディックデスの開拓者となった、イギリスの偉大過ぎるグループといえば勿論CARCASS。CARCASSはスウェーデン人のマイケル・アモット(ex.CARNAGE)をリードギタリストの座に迎えることでストレート&メロディック化を一気に加速させましたが、そうして作り上げた金字塔4th「HEARTWORK」を最後にマイケルは脱退、残ったメンバーで完成させたラストアルバム「SWANSONG」はMEGADETHを土臭くしたかのような、地味ながらHM/HRの過去と未来を両方見据えた力作になっていました。

 その後「CARCASSを化けさせてきた男」としての名声を得たマイケルの方はSPRITUAL BEGGARSやARCH ENEMYといったバンドに活動をつなぎ、今もめでたく活躍中。一方で母体CARCASSの残党組はというと、短いブランクののち、あまり期待されないままに新しいバンドを立ち上げまして、それがこのBLACKSTARです。結局97年のデビュー作であるこの盤しか残してないはずですが、今何やってんでしょうか…

 内容は「SWANSONG」がもっと気ままかつ味わい深くなった雰囲気で、デスメタル経過型のワルいヘヴィネスをオールドロックのサイケ感に代入する、通好みのモダンハードロックといった具合になってます。BLACKFOOTやTHE RODSみたいな威勢のよさとMOUNTAINあたりの荒々しさが共存するような。CARCASS時代はシャーッと軽い独特のデス声を披露していたジェフ・ウォーカーが、ここではタネリ・ヤルヴァ(SENTENCEDTHE BLACK LEAGUE)ばりのパワー系ダミ声スタイルにシフトしているのがファンには興味深いところ。ちゃんとメロディ追ってます。やってることは昨日紹介したC.O.C.や「LOAD」以降のMETALLICAなどともさほど遠くない気がするのに、一向に売れませんでしたね。残念。「SWANSONG」肯定派、THE BLACK LEAGUEや一時期のENTOMBEDがお好きな方には強く推薦です。

  2月4日
収穫はなし。バンドメンバーが使う歪みエフェクターを物色しに楽器屋へ出掛け、あれもこれもと6〜7個試奏。人の金だと思って(予算3万円前後)高価な品ばかりホイホイと触るのは非常に爽快でした。最終的にHUMAN GEARというメーカーのFINE DISTORTIONなる品で決着。

▼それから家に帰って、そういえば今自分が使ってるやつはどうなんだろう…と、ツマミのセッティングや繋ぐ順番などを今一度考え直していたところ、何だか大変もったいない展開になってしまいまして、要約すると「最初に既に持っていたものと、一番最後に買ったものだけがあれば事足りていたことに気付いた」となるその中身を、あんまり哀しいのでダラダラ詳しく書いておきます。

・ギター1(※1)を既に所有していた。

・ギター1と併せて使うために歪みペダルA(※a)を購入した。

・存在の面白さと安さに惹かれて急に衝動買いしてしまったギター2(※2)の方がバンドの音に合っていると思い、高かったギター1をひとまず引退させた。

・ギター2と歪みペダルAとの相性は最悪だったため、熟慮の末、歪みペダルB(※b)を購入した。

・とても愛着の沸いているギター2と、信用できる歪みペダルBとの組み合わせで現在に至る。

※1:HAMER、ハムバッカーPU、新品24万円→アウトレットで6万円
※a:ELECTRO-HARMONIX「METAL MUFF」、新品2万円
※2:DANELECTRO、シングルPU、新品3万円
※b:T.C. ELECTRONIC「VPD-1」、新品3.3万円→オークションで2.6万円

 ここまでで唯一実践されていない組み合わせ「ギター1+歪みペダルB」があったことに今日ようやく気付き、歪みペダルBの実力を確かめるだけのつもりでスッと試してみたところ、まー見事に理想的な音がするわけです。ついでに今まで挟んでいたブースター1個も不要になりました。結局一番高いもの同士のペアが最強だったというのは非常につまらないですね。私は普通の高そうな音が欲しかっただけなのですね。あーあ、ダンエレ(ギターB)軽くて丸くて気に入ってたのに。なのでダンエレを有効活用できそうなバンドか、METAL MUFF(歪みペダルA)を有効活用できそうなバンド、誰か誘って下さい。

 ちなみに全ての組み合わせを通して生き残っているのはPROCO「RAT」です。RATはいつでも最高。

【本日のレビュー:CORROSION OF CONFORMITY「DELIVERANCE」】


個人的に90年代前半を見つめ直そうキャンペーン続行中ということで今日はこれを。この前作「BLIND」をもって初期のハードコアスタイルから一変、METALLICAのブラックアルバム以降のテイストをもつスローダウン&オールドロッキンな作風にシフトし、ダメ押しで94年に出たのがこれです。ここでは更にサバス礼賛モードが明確化。そう当時はサバス再評価が異様に盛り上がっていたのでした。PANTERAのメンバー(フィル)はCONFESSORをリスペクトしている→CONFESSORのメンバーはTROUBLEを崇拝している→TROUBLEはBLACK SABBATHのオマージュバンドである、という連鎖からなのか、たまたまそうなったのか判りませんが。

 ともかくこのアルバムです。これはもうアメリカのCATHEDRALといってもいいくらい、オールドロックのヴァイブレーションを今日的な手触りで随所に散りばめた、職人仕事的な力作なのであります。習作っぽかった「BLIND」と比べると俄然大人。3曲目"Clean My Wounds"の愛溢れるTHIN LIZZYオマージュにはニヤニヤしながら拳を握りしめてしまいます。当然並ぶサバス似の曲は驚かないにしろ非常に良い出来で、適度にバリエーションが加えられていてCROWBARやEYEHATEGODのようなニューオーリンズ激スラッジの一群に似通った雰囲気も。後半にはDEEP PURPLEの"Space Truckin'"みたいなのもあるな〜。うーん充実、CLUTCHやごく最近のANTHRAXすら代弁してしまいかねない強力さ。SOUNDGARDENの神盤「SUPERUNKNOWN」と同格に近い域なのではなかろうか。次作以降も野心的な創作を続けていますが、やっぱり「でーきた!」というフレッシュさが溢れるこの盤が一番。

  2月2−3日
▼ああっ豆を食べてない。収穫はなし

【本日のレビュー:JOSHUA「INTENSE DEFENSE」】


名盤「THE HAND IS QUICKER THAN THE EYE」で有名な、アメリカ版イングヴェイかと騒がれたという速弾きギタリストのジョシュア・ペラヒア率いるJOSHUAの88年3rd。他のアルバムはリイシューの際にアートワークに余分な手直しがされていたのが嫌でしたが、こちらは無事です。ロゴに安っぽい影とか要りませんよね…。今回はシンガーの座に、トニー・マカパインのMARSにいたロブ・ロックが就いております。彼はこの後IMPELLITTERIで長年活躍するわけで、昔から激テク職人に恵まれたキャリアを送ってたんですね。確かに、激しい速弾きと張り合うパワーと、かつ主役をリーダーに譲る適度な影の薄さを兼ね備えた人材ではある気がします。

 で内容はというと、BOSTONをもう少し硬質かつ派手(というかイングヴェイ風)にした感じの高品質・善良・キラキラシンセ・産業ロック!プロダクションも垢抜けてるし素晴らしいです。ロブ・ロックはかねてからBOSTONのブラッド・デルプによく声が似ていると思っていたので、このポストはまさに適任ですな。とはいえ収録曲のどれが取り立てて名曲ということもなく(強いて言えば全部名曲ということになる)、押し餅の詰め合わせのような危なげなさゆえ、こういう音楽を空気のみでテイスティングできるコアなマニアでもない限り、わざわざこんなものを時代の奥底から引っ張り出してこなくても、SURVIVORなりSTRYPERなりの入手しやすいものを聴いていれば充分という気もします。ロブ・ロックのファン、マイナー速弾きギタリスト研究家、ちょっと様式美的なムチムチ感のあるメロハーがツボという方は頑張って探しましょう。

  2月1日
本日の収穫、米アマゾンのマーケットプレイスで購入のMOLLY McGUIRE「SISTERS OF...」、御器所ディスクヘヴンにてJOSHUA「INTENSE DEFENSE」、PINK CREAM 69「GAMES PEOPLE PLAY」(外盤中古!)。今日一番の写真はこれです。↓

【本日のレビューその1:MOLLY McGUIRE「SISTERS OF...」】


SHINERと並ぶカンサスヘヴィエモグランジの開祖バンドの94年作。90年代前半が面白いのは、グランジという強力で曖昧な流れに触発された世界各地の色んなバンドが、それぞれが元々持っていた血と混ぜ合わせて「妄想上のグランジ的アプローチ」をでっち上げていたところにあるような気がします。この人達もUNSANEやFUDGE TUNNEL似のジャンクサウンド、SOUNDGARDENのように特定の意味性を強調したオールドロックのエッヂなどさまざまな要素がゴッタ煮になり、「時流に乗った結果非常にオリジナルな音が出てきてしまった」という面白い存在だったと思います。こういう突然変異がまた新しい種となって次の10年を作っていくという。既にピックアップ済みの次作同様グレイトな出来ですのでSHINER〜TRAINDODGE周辺を熱心にチェックしている向きは是非ゲットをば。

【本日のレビューその2:PINK CREAM 69「GAMES PEOPLE PLAY」】


これもメタルバンドによる妄想グランジ風アルバム。ごくオーソドックスなメロディック・ハードロックを演奏していたドイツの4人組がグルッとダークな方向に切り替えた93年作です。シンガーのアンディ・デリスはこの後、言わずと知れたジャーマンメタルのパイオニア・HELLOWEENに移籍するわけですが、そのHELLOWEENの前任シンガー時代のラスト作にして問題作「CAMELEON」もほぼ同時期のリリースだったように記憶しています。当時はこの手のリリースはどれもこれも評価低かったですな〜。実際にダメな作品も多かったですが、旧習を廃せんとして現れたグランジ勢に市場のシェアを取られてしまったのを受けて「メタル低迷の悪しき原因は全てグランジ/オルタナである」と呼びかける極端な敵視キャンペーンをメディアが煽動していただけという気もします。80年代に飽和点を越えたビッグ&ゴージャスなハードロックがいつまでも衰えず、洗練の行き過ぎた「省略可能な名盤」を終わることなく買い続けねばならないのとどっちが退屈か、実際にそこまで行かないと彼らは想像できなかったのか?

 だからこのアルバムのように、メタルの本筋の良さを残しつつ、同時代的なアプローチも程よく取り入れた挑戦者に対しては、「ヘヴィメタルの延命のために尽力してくれてありがとう」と賛辞と感謝を向けるべきだったと思うわけです。ほんの少しのダークなリフとエキセントリックなフックを上に羽織っていても、肝となるはずのダイナミズムやメロディを端に追いやるようなことはしていません。フレッシュでいいじゃないですか。LILLIAN AXEやMASQUERADE(勿論2nd)をもう少し甘くしたようなバランスで。ついでにプロダクションもソリッド&パンチーでやたら良好。90年代フェチ、およびメタルのロスト・ディケイドを今一度見直してみようかと思っている向きは探してみて下さい。アンディ・デリスの歌はやっぱり好きじゃないですがね。

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