物色日記−2007年9月

※頻出語句解説はこちら
  9月30日
▼さぼりました。買いもしないエフェクターを調べ漁ったりしている間に寝るしかない時刻に。あほらしや。

  9月29日
本日の収穫、AQUARIUS RECORDSから届いたFLEURETY「DEPARTMENT OF APOCALYPTIC AFFAIRS」。

【本日のレビュー:TESLA「BUST A NUT」】


クール!しかしきっと分かってもらえない。多分私がただ変態なんです。モトリー・ラット・ドッケンなどの影響下の影響下な世代のバンドがウヨウヨと溢れ、80年代後半に大いに盛り上がったヘアメタルシーンの中にあって、このTESLAというのはどこが変とも言い難いような、スピードメタル界におけるRAGEのような妙なひねくれ方をしたバンドでした。そんな彼らも90年代の暗雲に易々と飲まれ、プレスからの評価は芳しくなかったこの94年作を産み落とし解散。いやいやいや、ひねくれ・裏かき・ねじれ礼賛なグランジ気風とTESLAの元々の気性がむしろ健全に寄り添った好盤なのに。凝り固まりきったハードロック・マナーに灸を据えて前に進もうとした、涙ぐましい痕跡であることですよ。開発途上で頓挫したまま消えた音楽であるため、現在でも似たものがほとんど存在せず、今の耳にかなり新鮮です。全然具体的な例えができてないですが、強いていうなら「リフが変なAC/DC」でしょうか。そんなものはAC/DCであるはずがないですね。だから何とも言えんのです。ヴォーカルはハスキー&ソウルフルな完全メインストリーム型ハイトーンなので苦手な人は注意。これだけ心の広い音楽なのに結局メタラーにしか勧められなさそうなのが勿体ないですが、逆にいえば(ある程度の訓練がある)メタラーだけが噛み分けられる海底の珍味であるわけです。もっとありがたがりましょう。

  9月27−28日
収穫はなし。ここのところ猛烈に曲作り中でして、本当に間に合うのかという感じです。何に間に合うのかというとこれ。↓

□10月5日(金) 「GBST」
出演:ソフテロ(ソロ)
    江口亮(STEREO FABRICATION OF YOUTH)
    杉山明弘(DOIMOI)
会場:名古屋 鶴舞KDハポン
時間:19:00開場 / 19:30開演
チケット:前売り・当日とも 1,500円(別途1D)

 同じ「名大フォークソング同好会」の出でありながら、ほとんど活動領域の被るところがなかった3者が、丸裸で遂にハポンに結集します。全然肩の力抜いてる場合じゃないメンツなので私も必死系で頑張ります。多分浮きます!いやーこれは見にいらっしゃるといいですよ。

【本日のレビュー:PORCUPINE TREE「IN ABSENTIA」】


漠然と今キテるらしいという情報を得、特にRUSHがどうとかという文面を見かけてちょっと気になり、その後中古で発見したので買ってみた品です。既に10年以上のキャリアがあるイギリスのバンドのメジャーデビュー作(2002年)だそうで。過去の作風も最新作も知らない私が若干先入観ありのナロー&ニュ〜トラルな聴感レビューを致しますと、これはRUSHが「COUNTERPARTS」で探り当て、I MOTHER EARTHあたりがやんわりとそれに呼応し、育っていくかに見えた絶滅種、すなわち「『90年代オルタナ/グランジ』が内包した非常にロック然たるダイナミズムに憧れる知性肌の作家が、RADIOHEADその他のアイディアを『こういうことするとアップ・トゥ・デイトっしょ』とばかりにちょいちょい取り入れたりしながら考案する、ラウド・ムーディ・コンパクト・ポップスの仮想現在形」の系譜にやっと現れた後継者なのでは、という感じです。(うーむ簡潔の対極…。)曲によってCOLDPLAYだったりCOLLECTIVE SOUL(!)だったり。あくまでオルタナティヴロックの観察者が「まとめた」音楽、というのが体臭で滲み出ている気がします。だからラヴコールが飛んでくるのがロバート・フリップやらアレックス・ライフソンやらと、微妙に「外側」の人だったりするんでしょう。あくまで90年代の語法で対21世紀型に武装してくるという知恵っぷりに私はもっぱら耳がいってしまいますが、その知恵が大したものであるという点で非常に聴き応えはあります。「ガーッとなる」「キュンとなる」等の簡単な感情をほとんど含まないこの鬱屈した音楽、誰にどのようにして聴かれて人気を博しているのか、興味深いところです。それとも今は鬱屈が普通にウケるのか。

  9月26日
収穫はなしHEAVEN AND HELL単独公演9000円かあ…。席によるわな〜。スタンディングでDIO見れた(ZEPP名古屋)のはつくづく良かった。あとこれが大変です。

【言葉にできない名盤シリーズ:BLACK SABBATH「HEAVEN AND HELL」】
オーネノーネノーネノー…。

  9月25日
本日の収穫、バーゲン最終日のサウンドベイ両店…に補充狙いで出向くも、大して面白くなく。上前津で新品値下げになっていたBRATKO BIBIC & THE MADLEYS「BRATKO BIBIC & THE MADLEYS」、HET「LET'S HET」を捕獲するのみにとどまる。まっすぐ帰りゃ良かった。

MAG FOR EARS vol.3刊行されました!イワサさん毎度お疲れ様です。自分の書いたULVERとこちらの方の書かれたWHENが、アルファベット順に従って偶然同じページに収まるというオカルティックなミラクルも発生しております。

【本日のレビュー:HET「LET'S HET」】


アメリカのレコメン系レーベル・AD HOCからのリイシューもの。ex.HENRY COWのティム・ホジキンソンが自身のレーベルから84年にリリースしていた作品です。前衛アカペラグループをやっていた人達によるユニットらしく、人声オーケストレーション+パーカッション+各種物音で強圧的に責めたてるおっかない内容。一時期のノイバウテンやレジデンツのようでもあり、普通にART BEARS〜NEWS FROM BABEL路線も含み、根性がビーフハート化した芸能山城組とマイク・パットンとのコラボ(全然関係ないですが、こういう出典元を知るほどにマイク・パットンの器用貧乏ぶりが露呈して情けない限りです)とも言えそうな。これが例えば97年くらいにTZADIKあたりから新譜として出てたらフーンで済ませそうな気もしますが、ポストパンクから地続きな気風を匂わすリアル具合に説得力があります。それとも94年SKIN GRAFTリリースだったらきっと大喜びだな。こういうのは「高尚なる前衛アート」と構えてしまうと一気に敷居が高く感じられてしまいますが、ただの「スカム・アカデミストのうんこ」でしかないことを念頭に置いておけば根負けしません。カウが大成した「レコメン的なる符号」に縛られてないRIOサウンドをお求めの向き、またはFANTOMASの嘘臭さを暴いてみたい方にはオススメ。

  9月23−24日
▼23日は高円寺CLUB LINERにてライブでした。高円寺といえば、その単語を最初に知ったのは、筋肉少女隊の"日本印度化計画"の中の「高円寺で見た / ターバンの男よ / オレをいざなえ / ガンヂスの流れに」 というくだりで、その次が吉田達也の擬似MAGMAプロジェクト・高円寺百景でした。歩くだけでアングラ臭がするのかと思えば、短時間の滞在ではそこまで判らず、どこまで走っても曲がれる道がない「青梅街道」が横たわる下町でありました。朝8時に集合を予定し、8時40分くらいに集合完了し、高速に4時間くらい乗り、下りて2時間くらい迷い、空腹に耐えかねて結局ジョナサンで昼を摂り、リハをし、近くのブックオフにてSHIHAD「CHURN」(1st!)とMADONNA「BEDTIME STORIES」を破格で買い(23日の収穫)、出演し、スッと夕飯を済ませ、3時間強で名古屋に帰り(27時半到着)、ある者はそこから自転車で更に30分かけて自宅へ帰り、ある者はそのまま会社へ行ったらしいです。直行直帰の強行スケジュールとはこれのことか。

▼で翌24日は友人宅を訪れ、キッズの成長を確認しつつCD・DVDをユルッと観賞。ロブ・ハルフォードはキモい。JUDAS PRIESTはヘヴィメタルの異端。メタルゴッド幻想を見直さねばと、映像を見て痛感いたしました。ついでに近くの穴場CD屋MUSIC FREAKにて24日の収穫、全部300〜500円でFILTER「SHORT BUS」、TESLA「BUST A NUT」、IN THE WOODS「OMNIO」、CONSPIRACY OF SILENCE「FACELESS」(SHIVER RECORDS)。

【本日のレビュー:SHIHAD「CHURN」】


ようやく適正価格で発見。再三書きかますがカーク・ハメットに「HELMETミーツKILLING JOKE」と評され話題になった、ニュージーランドのグランジ世代バンドのデビュー作です。2ndが「いかにもそれっぽい」な印象を含む出来であったので、更に未完成の習作を予想してましたが、それが全然。こりゃ確かにインパクトあります。カーク君の言うとおりKILLING JOKEを色濃く感じるサイバーなリフを主体に、あちこちに散在していた様々な「90年代型ヘヴィミュージックが言わんとする真理」を非常に的確かつ周到に拾い集めて、それをあたかも初めて聴くかのように思わせるセンスでまとめ上げております。ゴリゴリ系のレパートリーで特に顕著に成功。うわっビックリした!というパンチ度でいえば、MELVINSと互角な瞬間すらしばしば。SHELLACを我流に昇華したJAWBOXなんて言ったら言い過ぎか?いや、それくらい大風呂敷広げてでも、そう言われてピクッと来た人には聴いていただきたい。

  9月22日
本日の収穫、バーゲン初日のサウンドベイ金山にてPIERROT LUNAIRE「PIERROT LUNAIRE」「GUDRUN」(デジパックリイシュー!)、UNIVERS ZERO「CRAWLING WIND」、FREE DESIGN「THERE IS A SONG」、DEEP PURPLE「BURN」、QUEENSRYCHE「PROMISED LAND」(外盤に買い替え)、同上前津にてSODOM「AGENT ORANGE」、PHENOMENA「PHENOMENA」「II -DREAM RUNNER」「III」、LAUGHING HYENAS「HARD TIMES」、WHITE LION「BIG GAME」、PORCUPINE TREE「IN ABSENTIA」、JOSEPH RACAILLE「JOSEPH RACAILLE」(ex.ZNR!)。シブい良品が豊作で、絞りきれずこの量に。特にPHENOMENA3枚すべて外盤で一挙コンプリートは夢のようです。

▼で戦利品をかかえてニヤニヤしていると、突如大学の先輩から電話が。「10月頭に私用で名古屋に帰るんだけど、ついでにライブどうかって話になって、SCSIDNIKUFESIN君出れる?」とのこと。二つ返事でOKしました。ということで急遽10月5日(金)、場所は鶴舞KD JAPONにて、ソフテロ(今回は一人)、ステファブ江口君、私、というソロ3組の異色イベントが決定いたしました。大変だ〜。全曲HM/HRのスタンダードのカヴァーにするか、全曲新曲にするか、悩もうにも残り2週間。「できたて」にも至らぬ「できかけ」な何かをご披露できると思いますので、お暇な方は是非お越しを。

【本日のレビューその1:JOSEPH RACAILLE「JOSEPH RACAILLE」】


フランスの恐るべき虚無系ミニマムチェンバーユニット・ZNRに参加していた人の97年のソロ作。レコメン界で気を吐いていた若かりし頃のその後、ARTHUR H.のプロデュースなんかもしたらしく、WARNERからこんなのをリリースするような大物になっちゃってたみたいです。で内容は何ともおフレンチな、パブミュージック/シャンソン/近代クラシック(というかサティ)/etc.がゴッチャになったアコースティックアンサンブル。実際ARTHUR H.の1・2作目に近いですね。彼の出自を知らなきゃ間違いなくワールドミュージック棚行き。随分と毒は薄れてきたものの、ただシャレてるとか可愛らしいとかには収まらない、不気味という単語まで辿り着かない程度のうっすらした不気味さや、陶酔しきらない冷徹さといったものが、「わかるオトナのシブみ」として隠し味を効かせております。フレンチミュージックの深いところを全然知らないので大したことが書けませんですが、ZNRファンにオススメできるか?と問われれば、できます。

【本日のレビューその2:PIERROT LUNAIRE「GUDRUN」】


イタリアンロック界屈指の気になるジャケ&バンド名(ピエロ・リュネールと読む)。こちらは77年リリースの2ndです。これの3年前のデビュー作は、ただただ整然としないサイケフォークあがりの変なバンドという感じでしたが、本作では女性シンガーを迎えるとともにズバッとアヴァン色を強め、AMON DUUL〜極初期POPOL VUHにかぶれてしまったOPUS AVANTRAもしくはJACULAてな、狂気のお下劣クラシカルチェンバープログレと化しております。モターッと悠長な時間感覚で、迫り来るようなエキサイトメントはさほどありませんが、じわじわと追い詰められてしまいには耐えられなくなる、しっとりしたホラー映画みたいな調子。居住まいの悪い無調フレーズをヒュルヒュルと歌う女性ソプラノの怖さはART BEARSやそれこそTHE 3RD AND MORTAL(もしくはATROX)ばり。しかしバック演奏が、ピアノや弦楽器だけで盛り立てていけばいいものを、いかにもそれっぽいファズギターが汚しにかかったりすると、「あーあやっぱりな」と茶番くささが気になったりもします。やっぱりOPUS AVANTRAに勝るものなしなのか。まあこの時期の有象無象のマイナーバンドと比べればインパクトは強烈ですので、興味がおありの方はどうぞ。

  9月21日
収穫はなし。今日もまたひとつ「人生初」を経験しました。対象がヒマワリの種くらいの大きさで、場所も風呂場とあってすぐに洗い流せる状況だったからこそ決行可能だったんですが、「○○ブ○(の子供)を素手のグーで圧殺」というのをやってのけました、いや満足。

▼レビューは明日、バーゲンの収穫を糧にがんばります。

  9月20日
収穫はなし。テレビでやっていた「散らかった部屋の片付けかたの鉄則」が、私がいつも(一年のうちで本腰を入れて部屋を掃除する数回の毎回)やっているものと同じでした。ACは言います「しっている」を「している」へと。アクト・ナウ!いや、それが難しい、自分の部屋の掃除に限っては。冷房は27度以上を遵守してます。

【本日のレビューその1:THE FOLK IMPLOSION「THE NEW FOLK IMPLOSION」】


多分この欄に過去2回くらい登場してるはずですが、久し振りに聴きたくなって聴き始めたら、そのことを記録しておきたい良さだったのでまた書いてます。「ローファイ」「インディロック」「メジャーで成功するポップス」といった憑きモノがどんどん削ぎ落とされて(勿論その時々で良心に忠実な最高の作品を残してきたわけですが)「ルー・バーロウ」だけが残った作品、という感じでしょうか。そんな無駄口はいいとして、好きで聴き込んだ作品をまた聴く気持ちよさってのは、未知の素晴らしい音楽に出会う感動とは全く異質で、ないがしろにせず大切にしていきたいものだなあと今更ながら改めて実感した次第です。「どこが良いの?」と尋ねられても「好きだから。」としか答えたくない。そういう1枚を新規追加していただくきっかけになればということで日々の口数多いレビューもやっております。

【本日のレビューその2:BURZUM「HVIS LYSET TAR OSS」】


最近ブラックメタル系のとても興味深いブログのリンクに当サイトを加えていただいているのを発見して、改めて気になっているブラックメタルです。今日はAQUARIOUS RECORDSから配達されて以来「あ、無事到着した…」とだけ思ってずっと聴いていなかったこちらの古典を。言わずと知れた本場ノルウェーの最重要バンド・BURZUMの3rdでございます。不協和音や激展開が多く聴かれた初期2作に比べるとグッと理性が効いて、いや充分狂信的ではあるんだけどもより芸術作品として統率のとれたものになっていて、狙いどころを一切外さない究極のスーパーネガティヴミュージックが大成されました。80年代初頭のハードコアよりも荒んだ音質で奏でられる、悲壮きわまりないリフがひとつ(もしくはふたつ)、それを10ウン分、キョーキョーと吠えながらリピート。寒々しいシンセが垂らす死のオーロラ。全4曲それで終了という、何なんでしょうこの「敬い尊ぶものなど何もない」と言わんばかりの強烈な排他感と憎悪は。ヘヴィメタルの範疇にカテゴライズされるであろう姿をしていながら、その筋の先達をニコニコと好む様子すら思い浮かばず、むしろ80年代を通して鍛え上げられてきた「メタリックなる様式」からは積極的に断絶している。破壊のカタルシスすら誘発しない100%否定のこの感覚、THIS HEATや一部のジャーマンロック同様、過去に似た者の存在しなかった完全宙吊りの音楽にしかあり得ないもののように思います。唯一具体的に影がよぎるバンドといえばMANOWAR。彼らはもはや自分達の作品以外では存在しない「想像上の純メタル」に向かって捧げる忠義を、持てる筋肉をフル稼働して一切のブレなく謳いあげる、孤立した狂信妄想バンドでありました。他方でインディロックが鬱系スローコアに目覚めるのとほとんど時を同じくして(もしくはもう少し早く)メタルの流れからこういう現象が起こっていたというのもなかなか興味深いことであります。ともかくロックの90年代における特筆すべきステップを示した重要作品ということで間違いはないでしょう。

  9月17−19日
収穫はなしRATT とWINGERがカップリングで来日という情報を新聞の広告で知る。2000年代って凄い。しかもロビン・クロスビーの後釜に入ってたのがジョン・コラビとは…!最新情報に疎い退役メタラーにしか共有してもらえない驚きですみませんが。あ、東京在住の皆様、今度の日曜に高円寺でライブします!よろしくお願いします

【本日のレビュー:WINGER「WINGER」】


80年代のメタル・バブル末期に登場してすぐに失速したために、またそのチャラチャラしまくったイメージから、メタラーからもしばしば嘲笑の対象にされる、なんてとんでもない!な奇跡の3人組WINGERです。88年ATLANTICリリースのこのデビュー作で彼らは、80年代AOR〜ヘアメタルの全てを凝縮してやって来ました。謎の幾何学顔面ジャケはDEF LEPPARDの「HYSTERIA」の流れを汲み、ビッグなリズムのハード・エッヂな曲ではDOKKENやVAN HALENを、洗練を強調したメロディアスな曲はSURVIVORあたりを、大仰なバラードはドン・ヘンリーなどを想起させ、それらの要素をかつてないほどシュッとクールで都会的な感触のもとにまとめあげた、寸分の無駄なき世紀の傑作でございます。唯一"Purple Haze"(もちろんジミヘン)のちゃんちゃらおかしいカヴァーだけは、どう聴いても不要ですが…。赤面を赤面と思わない、摩天楼と肩パットの世界、これぞ80年代の夢。日本全国365日、このアルバムを含む解散までの3枚どれでも、中古盤屋の安売りコーナーの大定番ですので、500円くらい惜しまずに早めに買ってください。

  9月16日
収穫はなし数日前に完成させたPIGEONSの新作、気に入ってるのでジャケまで作ってみました。

 CD-Rにしてライブ会場で売るなり配るなりしようと思います。(ご希望の方は通販します。)理解に苦しんでください。

【本日のレビューその1:UPSILON ACRUX「GALAPAGOS MOMENTUM」】


以前99年作を登場させたUSマスロッカーの最新作。31KNOTSドラマーのジェイがエンジニアをやっていて、リリースがReRアメリカ支部・CUNEIFORM。出世しましたね〜。で中身は、まあ「マスロック」…これに尽きます。性急なドラミングや、タッピングを駆使したギターワークをフィーチャーし、第3期〜ディシプリン・クリムゾンをよりラフで過激に押し進めた、今のアメリカのアンダーグラウンドに実によくいるタイプ。SWEEP THE LEG JOHNNYやらILIUMやらが出てオーッとなり(当時のことは知りませんが)、HELLAとかが出てきてまたへぇーっ!となり、その後はなんかもう、「テク尽くしの過密音楽であること」自体には誰も驚かないくらいこの手のバンドが溢れてしまいましたけども、「開放含みのハンマリング/プリングフレーズ」「前のめりな奇数拍子」等々、表情がみんな同じなのが気になる。もっと無秩序に革新していける運命性をもった音楽形態のはずなのに。まあどこの世界でも、例えばテクニカル・メタル界でもAOR界でも(それこそこんなん四半世紀くらい)全く同じ状況が起きてるわけですが…。そのイディオムを好むファンに囲まれたシーンの中の出来事を外から責めるいわれはありませんです。マスロックもそろそろ伝統芸の域に入ったんだなーという感慨でシメておきましょう。

【本日のレビューその2:PIGEONS「O MY WISDOM」】


宣伝として自ら解説してしまいます。筆者の宅録プロジェクトの2作目。1作目同様、「出まかせで作ったギターリフをまず録って、その後曲を覚えながらドラムを乗せ、最後に楽しく歌って完成」という方式で作られた全8曲12分強の作品です。超不親切で不快なリフの数々は、ブラックメタルや初期ゴシック/ドゥームメタルの脱調性に現代音楽やレコメンその他とのリンクを見出して紡がれたもの。ドラムトラックとなるべきものは今回、マイクのハードケースを指で叩いた音で代用されており、歪み足りないギターや終始不在であるベースと相俟って、不安を煽るほどの足元おぼつかず感、「完成してるの?」感を醸し出します。しかし確固たる意思で無理矢理演奏されるブラストビート、もはや歌詞などなくタン吐き・うがい・イビキにも似る汚穢なヴォーカルによって、それがしっかりとエクストリームメタルに足を着いたものであることを宣言。「音質の劣悪なブラックメタル」の進展的な解釈と思って下さい。恐らくこの「ギター1本・箱ドラム・イビキヴォーカル」というフォーマットは世界でそうそう試されていないはず(だから誰も良いとか思わない可能性も高い)ですが、ただの変態志願ではなく、家族の不在中に住宅密集地にある自宅で出せる音量の範囲内で作れるメタルは…と模索した結果の、削ぎ落とされきった表現形態なんであります。木の枝を3本並べて笑福亭鶴瓶の息子(がいるかどうか知りませんが)に見せて「あ、これはウチの親父ですね」と言わせられたら素晴らしい。

  9月15日
収穫はなし。今年はそれなりに秋らしい秋でいい感じですね。いつまでも暑かった去年と違って。夏は「行くなら日陰のあるとことに…」とか「買うならドロドロに溶けないものを…」とか(チョコやアイスの話です)、なにかと活動の選択肢が狭くなるのが困ったものですが、唯一素晴らしいのは「Tシャツ短パンでいける」ところだと思います。あと本っ当にどうでもいいことですが、MYSPACEを英語表示に戻せました(昨日の日記参照)。いまのような前フリをした場合、どうでもいいと言いながらも実はそれなりに面白いことが続くべきだと思うんですが、すいませんでした。

【本日のレビュー:HAREM SCAREM「MOOD SWINGS」】


懐かしの品再訪ツアーが続きます。出てすぐには買いませんでしたけども、これは93年リリースですか。メロディアスハード界でポストTNTの最右翼と目されたカナダのホープ・HAREM SCAREMの2nd。彼らはほんと悲劇のバンドです。デビュー当初はごくごくオーソドックスでポップなスタイルをとっていて、そこに90年代然としたゴリッとしたアプローチやら、ヌーノその他の影響を感じさせる新世代型のフラッシーなギターを大フィーチャーしたこのアルバムで一気に注目を集めたのに、更に大胆にアップ・トゥ・デイトな方向へ踏み込みながらメロディの良さや充実したヴォーカルハーモニーなどは失わなかった力作である3rdを出すと、簡単に「お前らもヘヴィ&ダーク化かよ」と叩かれ、要は偏狭なメタラーによって進化することを否定され、それならと開き直ってもとのメロディックな路線に戻って以降の作品は、チャレンジングであったからこそ傑作だったこの2ndを当然のことながらいつまでも超えることができず、遂に今年になって解散予定を表明してしまいました。ああトラジック!!好奇心のままに泳がせておけばオルタナ的感性と80年代HRの素養がもっと自在にクロスした奇跡的なアルバムを作り上げたかも知れないのに…。

 という経緯はさておき内容いきましょう。TNTやDEF LEPPARDが引き合いに出されがちなものの、その歌心はあんまり誰かのコピーという感じがせず、ツブ立ちのよい高品質な楽曲をポンポンと繰り出してくるという、まさに大型新人という文句が相応しい出来でした。恥ずかしいもの好きな産業ロックファンのツボを的確に刺激しつつ、トリッキーでイマジナティヴな演奏(主にギター)がその甘さを引き締める。ソロがその部分だけ独立したようなコード進行をもっていて、やたらクラシカルなメロディ運びを強調したりするのは、改めて聴くとかなり色濃いヌーノ・イズムを感じます。センスのよい吸収のしかた。更に根っこにはやっぱりエディ・ヴァン・ヘイレンの影(笑顔)がどっしり鎮座してますね。まーしかしこのアルバムは、同じような曲調が二つとして入ってないというのが凄いもんです。それぞれが中途半端でなく(アカペラのとかは割とどっちでもいい気がしますが…)充分な完成度に至っているというのも。「90年代の『FRONTIERS』はどれだ選手権」をやるとしたら、トップ5には入れてあげたい気がします。きょうびの若いメタラーさんには既に古典の域なんでしょうか?JOURNEYの劣化コピーの劣化コピーの劣化コピーみたいなのに金払う前に是非こっちを。

  9月14日
収穫はなし。昨日・一昨日あたりからMYSPACEが設定を無視して勝手に日本語表記になってます。(と書いてもわかってもらいづらいかも知れませんが、私は日本でのサービス開始以前のままの英語表記に設定していました。)mixiライクにしたそうな痕跡はわかるものの、見にくいし色々おかしい。ですが、METAL BLADE JAPANのアーティスト紹介ページに勝るものはないですね。

【本日のレビューその1:ATTENTION DEFICIT「ATTENTION DEFICIT」】


久々に聴いたら面白いかもと思って、やっぱりイマイチだなぁ〜とげんなりしたものの、せっかく聴き始めたので書いてしまいます。TESTAMENTを脱退しSAVATAGEをちょっとお手伝いした後のアレックス・スコルニックが、98年になって遂に沈黙を破ったというファンにとってはお待ちかねの1枚でした。リリースはMAGNA CARTAで、PRIMUSのドラマーのティム・アレキサンダーと、ジャコパスに師事したというマイケル・マンリングというベーシストとのトリオ。内容は…無駄に曖昧なノイズで空間をだらしなく埋める、ゆるいグルーヴのアヴァン・フュージョン。これが出た頃メタル一辺倒であった私は、「自分の知らない何かがあるのかも…」と思って売るのをガマンしてましたが、結局のところこれだけみたいです。ヘヴィメタルのあらゆる音楽的拘束から逃れてフリーな表現を求めたアレックスが、ツワモノをサポートに立ててとりあえず音を出してみたはいいが、なんとなくのアイディアを引き締まったいち作品としてオーガナイズすることができなかったという垂れ流しアルバムですね。インプロヴィゼーションができたことを一番喜んでいるようなインプロほど付き合いきれんものはないぜ。その後ナイスなメタルのスタンダードをジャズでカヴァーするアルバム2枚も作ってくれてるので、ファンはそっちだけ買えばいいです。

【本日のレビューその2:QUEENSRYCHE「PROMISED LAND」】


唐突ですが、つい最近これの存在を思い出して「名曲たくさんの名盤だったな〜」としみじみしたので。確か先日登場の「AWAKE」と同月か、限りなく近い時期にリリースされたものだったと記憶しています。94年の秋はこれとかこれとかのイメージ。あの頃は一生懸命BURRN!読んだな、よく勉強したもんだ。

 ということで話が逸れかけてますがこのアルバム。QUEENSRYCHEは、80年代当時としては斬新であったプログレッシヴ&インテレクチュアルなスタイルのHMで人気を博し、90年作「EMPIRE」に収録されたアコースティックバラード"Silent Lucidity"では遂に全米トップ10入りのビッグヒットを放ってしまったという、あまりないタイプのサクセスを収めたバンドです。で散々売れたあと、次はどう出ると注目を集めていたのがこの盤でしたが、時流に即応して素直にダーク化。メタラーからは「あ、ダーク化した!」と安直な非難を受ける一方、B!誌広瀬の猛烈な擁護あってか「いや、充実してるかもしれない…」と耳を傾ける者もあり、典型的な「時代に飲まれたのか乗ったのか評価の分かれる賛否両論アルバム」となりました。10ウン年経た今、純粋に一点の音楽として見直そうじゃないですか。

 まず思うのは、とてもQUEENSRYCHE本来のカラーに忠実な内容であるということ。ピリピリと神経質なダークさやミステリアスさがあって、内省的で…、という要素は、例えば「RAGE FOR ORDER」(86年)あたりから80年代メタルの重装備を解いたあとにも残りそうなもの。その部分がアンプラグドブーム&グランジ効果で陰鬱OKな空気と反応して、終始陰りきっていながら穏やかさもあるこのアルバムの作風に結びついたとして、何の疑問もありません。そんなことより、普通に楽曲が「新し」く、そして質が高い。えせインド風のヘヴィな冒頭曲"I Am I"、パンチのあるリフと抜けのよいサビが耳に残る"Damaged"、沈むローBのベースがどこまでも重いアコースティックの"Bridge"、あやしいウイスパーがちょいと宇都宮隆(TM NETWORK)風な新機軸の低速シャッフル"Disconnected"等々、隅々までコメントをつけたいくらい全曲の目鼻立ちがよい。しかもそれらは過去に彼らが出したことのない音像であり、更に他の誰のようにも聞こえない完成度にまで高めてあるという。特にこの頃のジェフ・テイト(Vo.)は既に孤高の表現者です。フォロワーの圧倒的な多さからも窺い知れますね。

 …とても好きなアルバムなので、何とか非メタルなバンドに結びつけて煽りまくって「全員買ってください」でシメようと思っていたのに、「実にQUEENSRYCHEらしい名盤なのでファンおよびメタラーは早く見直してください」で留まりそうな気配です。いや全員買ってくださいよ。日本盤ボーナスに入っている"Someone Else?"のフルバンドヴァージョン(これまた素晴らしい)は後に出たベスト盤に入ってるので、安い輸入盤のバーゲン品を拾っていただければOKです。で"Real World"の方は普通に「LAST ACTION HERO」のサントラを拾って下さい。リアルタイムで聴き込んだアルバムってのはなかなか簡潔にまとめられないですね。いやー。

  9月13日
収穫はなし。あ〜、部屋がきたない。用のあるものが見つけられずに何十分も探し続けるだけでなく、その挙句に「こんだけ散らかってたら、しょうがないや」と諦めたりすることもある近頃です。

【本日のレビュー:PETER GABRIEL「II」】


先月おもむろに聴き返した1stが素晴らしかったので続きです。78年の2作目。相変わらずロバート・フリップ&トニー・レヴィンのクリムゾン組ほか多数のサポート勢が参加。前作のあの妖しさはどこへやら?THE BABYSやエルヴィス・コステロですか?てな冒頭曲イントロに面食らいつつ、ヘンタイ役者なピーガブのヴォーカルが見事にそれをブチ壊す。どこにどうウケることを狙ったのかさえ測りかねるシュールな図です。中盤からややその乖離が薄まり、4〜6曲目らへんの流れなんか特に、何やらこれは聴いたような感じが…あっ3人化以降のGENESISですね。「ABACAB」くらいの雰囲気まで先取りしてたりも。みんなみんなみんなバラバラでも同じようなことやりよって、不思議な連中です。関係ないですがフリップのソロに入る"Exposure"も完全別録ヴァージョンで入ってますね。実はこちらが初演。なんと支離滅裂なアルバムだ。これを「普通のポップス」として聴いてしまった子供がいたらきっとトラウマになるんだろうなー。

  9月12日
収穫はなし。突如思い立ってPIGEONSの新作をドドドッと録音。今ならMYSPACEで全曲(1ファイルに4曲分結合されていて計8曲あり)聴けます。かなりきたないです。

【本日のレビュー:V.A.「SOMETIMES DEATH IS BETTER」】


ベルギーの失格デスメタルバンド救済レーベル・SHIVER RECORDSが残した奇跡のコンピレーション。その後まったく表舞台に生き残っていない(辛うじてDERANGEDくらいか)、欧米各地のアングラデスメタラー達の音源を15組分収録しております。リリースはおそらく93年。音が悪くて垢抜けない、しかし「ほら俺もできた、デスメタルってこんなんか?グボェー!」みたいな勢いとハッタリに満ち溢れた、ドロドロで醜悪な「これぞデスメタル」がたくさん聴けて最高。無論名曲名演など期待してないので、こうして精鋭を揃えてコンパイルしてくれるのは非常にありがたいです。まだジャンル内ジャンルがくっきり細分化される前なだけあって、素直な泣きなどではないながら何とな〜くメロディックな展開や、アグレッション一辺倒でいかず不穏なムードを強調するようなアプローチが、「僕らはメロデスバンド」「我々はゴシックバンド」と決め込むでもなく混じりあっている様子が興味深い。ファンジンやデモテープのトレード等、アングラならではのネットワークが充実していたせいもあるんでしょう。いやー面白い、十人十色の「非音楽」のイメージ。個人的にヒットだったのはAFTERDEATH(ポルトガル)。似たようなので、更に恐ろしいオランダのCYBER MUSICのコンピ「APPOINTMENT WITH FEAR」もVol.1〜3まで大事にとってあるので、そのうち登場させます。

  9月10−11日
収穫はなし。今日は休みだったのでひっさびさに「ごきげんよう」が見れました。いつもながら小堺一機、トークに保証のないゲスト3人(組)とガチで対峙するという超絶な負担をよく耐え抜くものです。と思っていたら、遂に今日は「いまのどうやってフォローしていいか判りませんでしたけど」と言わされちゃってました、瀬川瑛子に。

【本日のレビュー:BAL-SAGOTH「A BLACK MOON BROODS OVER LEMURIA」】


BEHOLD...THE ARCTOPUSのmyspaceの影響源の欄に意外にも名前があったので、数年ぶりに取り出して聴いております。UKエピック・ブラックの雄BAL-SAGOTHのこちらは1st。私は最初に2作目(タイトル長い…「STARFIRE BURNING UPON THE ICE-VEILED THRONE OF ULTIMA THULE」!)の方を聴きまして、腰抜かしました。それまで聴いたこともない、もはやブラックメタルなどとは呼べない(というか完全に別物だと思いますが)オーヴァー・ドラマティックなRPG風交響楽メタル。やたらクリーンなブラスト、激展開に次ぐ激展開、非常に高度な近代クラシック的和声構成、燃え立つオケアレンジをバックに吠えるデス声。メタルソングとしての体裁など一切留めないテンコ盛りサウンドにはもはや狂気の沙汰の域のインパクトがありました。それこそTHE DILLINGER ESCAPE PLANが出てきた時のような。しかし3作目、4作目…と出るにつれ、ファンタジー度が更に増すとともに子供騙しっぽさも気になるようになってきて、これはBLIND GUARDIANとかの世界が大好きでたまらん人じゃないと無理だなと私は途中で投げ出したのでした。そういう彼らの描かんとする理想を踏まえた上で、このデビュー作です。まだデス/ブラックメタルに両足しっかりついた状態でそのシンフォ化を試みているようなバランスゆえ、以降の作品では目立たなくなるようなゴアなリフも出てくるし、調性感の薄い不親切な和音の多用が雰囲気を謎めかせていてディープな味わいに。ドラマの輪郭が曖昧な分、薄暗い魑魅魍魎感は抜群といえましょう。「常識的なメーターの外にある極端音楽」全般に惹かれる人には一度触れていただきたいバンドであり、加えて「正体のわかりきってないものこそ膝を突きあわせる意義がある」という信条の方にはこのアルバムを一番にオススメします。代表作は2ndなんでしょうかね。

  9月9日
収穫はなし。日曜朝は勿論毎週「サンデーモーニング」です。「イチロー7年連続200本安打達成」のニュースに張本勲、まさかの。誰にですか?イチローにですか?「いやあのインタビューしてた記者ねえ、今年もまだ終わってないってのに来年のことなんか尋ねてねえ、あんなのぁ〜ダメですよ」と。今日はバーチャル出演(スタジオには不在だが遠隔地で同時撮影してクロマキーでいつもの席にはめ込まれている)であったため、本人が目の前にいないのをいいことに「またツマンナイことで怒ってますけど」と吐き捨てる関口宏!名場面!!

【本日のレビュー:DREAM THEATER「AWAKE」】


本当は日記本文からの流れでCHROMA KEYの1stにいきたかったのですが、どこを探しても出てこないので今日はひとまずこれで。と言われてもピンと来ない大半の方のためにご説明しておきますと、CHROMA KEYというソロユニットで活動するケヴィン・ムーアという人はDREAM THEATERの元キーボーディストであり、94年リリースの3作目であるこの「AWAKE」が彼の在籍した最後の作品であるのです。

 さてこのアルバムは、ひとまずケヴィンのことは別として、90年代メタルを見渡す上で最重要の部類に入る1枚となるでしょう。デビュー当初のDREAM THEATERはといえば、ムサムサしたB級USハイトーンパワーメタルを基調に、持て余すテクニックを駆使したプログレッシヴなアプローチ(RUSHやFATES WARNINGの影がよぎる程度)も導入し、でも死ぬほど垢抜けないハイトーンシンガーのお陰で輸入盤専門店の得意客を喜ばす程度のクラスに甘んじるバンドでした(リアルタイムのことは知りませんが恐らく)。次に発表した「IMAGES AND WORDS」が、もろフュージョンから90年代型ヘヴィリフ、ただのストレートなAORバラードまでブツ切りのまま盛り合わせた大変なドラマティック・チャンポン・アルバムで、新型の本格プログレメタルとしてかつてないインパクトをシーンに与えます。しかしその手法は意外にパクりやすいものであったため、大した素養もないのに他人のひらめきにあやかるだけの無数のフォロワーを世界中に作り出すことになりました。

 それから2年後に発表されたのが本作。前作の延長線上を期待したリスナーおよび評論家を遥か彼方に引き離す内容になっています。7弦ギター&6弦ベースを導入しての大胆なヘヴィ化、「70年代ロックのようなオーガニックなグルーヴ」への接近、要はグランジ流儀を拝借したということなんですが、確かな音楽的バックグラウンドと、積み上げてきた個性を無駄にしない奇跡の合体技術で、つい数年前に大成したばかりの発明を更に独走状態で高次に押し進めるという形での転身に成功しております。もはやダーク化礼賛ムードに従わざるを得ないという当時のメタル界の空気と上手く折り合いながら、それでも「プログレ」・「メタル」を堅持できたこの便利なアイディアは、再び速やかにあちこちでパクられる(その1その2)羽目に。その余波は未だに消えきっていない気もします。

 しかし誰もDREAM THEATERそのものにはなれませんでした。何故なら本家には、完璧な非人間テク集団の中で唯一不安定な揺らぎをもつ男、ケヴィン・ムーアがいたから。このアルバムのヘヴィリフの数々がどうしてここまでの緊張感をもって胸に迫るかといえば、彼がその後ろでヒステリーと紙一重の美や緊張を添えていたからに他ならんでしょう。ワイルドに歪んだオルガンの音色がグッと増えたとはいえ、彼のメインはストリングスやパッド系の、高音成分がヒャーッと伸びる音色で、ロックバンドの大音量と合わさったときに火焔のふちのようにとりまく空気をつくり、安易な被せ物には終わらない独特の存在感があります。ソロ時においても耳に残る歌らしいフレージングを重んじ、非常に大きく曲の印象を左右。本作での新方向性を象徴する"The Mirror"などは彼のセンスなくしてここまで輝かなかったはずです。

 実生活の失恋の落ち込みをブチまけてしまった暗〜い曲"Space-Dye Vest"を最後の置き土産にバンドを離れてしまう彼はその後、FATES WARNINGのマーク・ゾンダーらの手伝いを得てCHROMA KEY名義で録音を開始し、メランコリック&アンビエントな大名盤「DEAD AIR FOR RADIO」でポストロック寸前の世界に至ってしまいます。テクニカルメタルの枠に収まりきらない想像力を持っていたがゆえに脱退するしかなかったのか、だからこそ留任していればDREAM THEATERはもっと心の広い音楽性を実現できていたのではと惜しむべきか、とにかく彼こそがバンドきっての芸術家であったのは確かでしょう。バンドの方はといえば、より派手にオルタナティヴロックに歩み寄ろうとして中途半端な結果になったり、破綻なき自己模倣に戻ったりと、さして面白みのない迷走を続けているようなので、私は追うのをやめてしまいました。最近は名曲とかありますか?

 ついでに余分な補足ですが、やっぱりラブリエのヴォーカルは時々無理がある気もしますねー。レイン・ステイリー(ALICE IN CHAINS)よろしく汚く潰そうとしなくても、堂々とクリアな声で全曲歌い上げた方がキャラが立ったというか、バンド内での立ち位置も明確になって、雇われ云々と失礼なことを言われることもなかったろうに。まあ、あのつぶら過ぎる目と強烈なケツアゴで損してる感もありますが…。

  9月8日
本日の収穫、今池P-CAN FUDGEにてTHE THREE「THE THREE」(ジョー・サンプル、レイ・ブラウン、シェリー・マンの76年録音)。P-CAN、棚の配置が変わってました。輸入盤・ジャズ・メタルのコーナーが近くなって個人的に見やすくなった。

【本日のレビュー:THE THREE「THE THREE」】


ひっさびさにジャズ買いました。といってもほとんどジャケ買い。76年にこれです、スキャン画像だとわかりづらいですがロゴが変にサイバーでかっこいい。でメンツが、70年代フュージョン/ソウル時代の売れっ子セッションミュージシャンで今もメジャー中のメジャーの立ち位置をキープするジョー・サンプル(p.)と、バーニー・ケッセルとのPOLL WINNERSが大好きなレイ・ブラウン(b.)&シェリー・マン(ds.)のコンビ。カラフルだが安全な選曲のスタンダード中心に、ヴェテラン現役の名人芸を惜しげなく披露する、ほどよく楽チンでしっかり興奮できる内容です。ロック耳的には"On Green Dolphin Street"での鬼のブラシでバッタンと卒倒。あと私、ジョー・サンプルはこれで初聴きでありますが、ザッツ・エンターテイナーな人ですね。振りがでかくてわかりやすい。ジャズ界で新しいものへの野心とか挑戦とかいうものがひと回り済んでしまったこの時期の、敢えて昔から変わらぬウエストコースト魂をゼイタク尽くしで味わうには絶好の盤でしょう。ついでに録音も異常によいです。ナイスリイシュー。

  9月7日
▼今日はTHE ACT WE ACTのゴミヘン君が加入したdOPPOのイベントに行って参りました。場所は鶴舞KDハポン。

 1番手はSTIFF SLACKから出たフルアルバムが絶賛発売中のURTHONA。ハポン+URTHONAの組み合わせは何度となく観ているので、そうそう新しい印象があったりもしませんが、無論いつもどおりカッコイイ。この人達の楽曲はつくづく生き物ですな。生物学的な意味で変態ロック。詳しくは過去のリポートをどうぞ。

 次に登場のCLIMB THE MINDは、数年前に見たときのイメージから随分と変化。単身弾き語りとしても成立する優しいギターのつま弾きを中心として、ベースはロウミドルに動きを作る役(一番下の低音はほとんどギターが担っている)、ドラムは変則的なパターンとダイナミクスづけでアンサンブルを立体的にする役へとそれぞれ回り、一気にオリジナリティを高めながら「普通にいい曲」の新しいやり方を発明したという感じでした。ヴォーカル山内氏のソロユニット・果てなでの活動からのフィードバックもあるんでしょうか。キャリア的には既に中堅の域にして俄然今後が注目されます。

 3番手はNICE VIEWのショータ氏の弾き語りユニット・GO FISH。今回はアップライトベースとのデュオで、入り組んだ高速アルペジオとごくストレートな歌という以前の体裁からこれまたガラッと変わり、隙間と余韻を存分に活かした、ちょっとジャズヴォーカル風のスローなスタイルに移行。盛り上がったと思ったら唐突に終わったりする曲展開など、レストランのシェフが家庭で妻子に振舞う簡単だが必要充分な日常食、てな具合の簡潔さと腕の確かさが良かったですなー。

 でラストは主催のdOPPOフロム京都。低血圧と激情が同一線上で展開する、ラフで日記的で実直なカレッジロックという調子。アングラな頃のジャパ・エモの空気が濃厚に漂う。アツくなったりはしてないけど全開、てな複雑な表情で青筋を立てたりささやいたりするギターヴォーカル氏のうしろで、音がボコスコと大きくて一見大雑把そうだがとても的確な表現をする女性ドラマー氏が、時々何だか外タレを見てるような錯覚に。マイクスタンドを蹴倒して絶叫しているところばっかり見てきたゴミヘン君のベースも意外なほどメロディアスで楽曲に多大に貢献。なるほど世間の評判も納得のいいチームでした。

▼そして現在、さっきから部屋にブクブクに大きくなった蚊がいる。絶対この1〜2時間で何回も血を吸われている。しかしPC周りにはCDの平積みの山が多いので、物陰に隠れられると手も足も出せず一向に退治できてない次第です。

  9月6日
収穫はなし。誰にも聴いてもらえないとさすがに寂しいので宣伝します。FM AICHIにて、名古屋近辺で活動するインディーズバンドに1ヶ月パーソナリティを務めさせるという番組「STORM」の9月分が、我々DOIMOIの担当となっておりまして、初回が明日7日の深夜28:30〜29:00の放送です。非常に深い時間帯ですが、XXXXXXもしくは徹夜でギターの練習でもして聴いてやって下さい。

▼去年ロゴだけ作ってあった幻の新ユニットの構想がようやく(そしていきなり)まとまりました。当初のコンセプトはヤメにして、一人で気軽に静かにできる、聴くに堪えないほどに芯だけしかない、JESTER RECORDS狙いなアカペラもしくはインストのデスメタルを目指します。

【本日のレビュー:ULVER「KVELDSSANGER」】


ブラックメタル界随一の異端児としてアンビエント〜ノイズ〜バンドサウンドを行ったり来たりしている(過去のレビュー参照→その1その2その3その4)ノルウェーのグループの2ndです。私が一時期ちょっと改まってブラックメタルを勉強しようと思っていた頃、主要っぽいバンドの作品を買い漁ってみていた中でこれも買ったものの、ディストーションギターはおろかドラムすら(ほぼ)一瞬たりとも入っていない意外な内容に思いっきり面食らったのを覚えています。あるのは物悲しいアコギの多重奏と軽くオペラティックな男声コーラスのみ。ブラックメタルとは金切り声とブラストビートとガンベルトではなく、北欧の森の暗闇である。と彼らが思ってやっているのかどうかは知りませんが、表現すべきモチーフがヨシ見えたとなった段で、それを描くべく使われることが想定されていた手法を途端にキッパリ捨て去り、全く違うやり方から同じ結果を浮き彫りにしていくという、芸術家が新しくあるために理想的なスタンスをいつでも彼らはキープしてると思うわけです。変わり続けるがゆえに1作ごとのアプローチがひたすら徹底的で、このアルバムも本当に濃い。尋常ならざる狂気の信念なくしてこの多過ぎる間はもたせられんでしょう。聴き手もそういう部分に目を向けて対峙しないと、純粋にスコアとしては正直かなりしんどい内容ではありますが、音にならない部分での合意が成立したときに何倍も素晴らしくなる音楽はつまり素晴らしい音楽ということでいいと思うので、ブラックメタルをある程度踏まえている方は是非手にとってみていただきたいです。

  9月5日
収穫はなし。おっとスピッツのニューアルバムリリースがアナウンスされているではないですか。見た感じ、今回は統一感というかトータルでの色がある作りになっていることが期待されますね、このタイトルならあの影の薄い新曲("群青")も何となく納得。さざなみスピッツ楽しみ。フラゲせねば!!

【本日のレビュー:BROKEN HOPE「LOATHING」】


シカゴブルータルデスの名バンド、BROKEN HOPEの97年リリース4作目。これの前作を以前紹介しておりまして、そっちも最高でした。まあこの手の人達はスジが通っているので2年やそこらでガラッと音楽性が変化したりするはずもなく、「俗悪」以降のPANTERAからエグエグ・ダウンビート・サイドだけを抽出してガテラル声とブラスト(というかバスドラ・スネア・金物を全部同時にドドドド…と打つやつ)少々を足したかのような、超ヘイトな重量級強圧デス路線をどんどん邁進しています。かっこいい。シブイ。スリリングでもなく、これ見よがしにドゥーミーでもない、中途半端にもったりしたミッドテンポがいかにも嫌われ者っぽくて最高です。ヴォーカルもほんとイイ声。惜しむらくはクリアすぎる上にベースがほとんど聞こえない迫力不足のプロダクションでしょうか。イヤしかしこれも「デスメタルなのにこんなにツルッとキレイなんて、アングラ幻想に甘んじてなくて立派」などと褒めることもできましょう。とにかくBROKEN HOPE好きなんです。

  9月4日
収穫はなし。変な時間に食べ過ぎて、夕飯抜いたら腹減った(25時過ぎ現在)。ハイ、ハイ、ハイハイハイ。

【本日のレビュー:YES「YES」】


先月登場のFREE DESIGNを勝手に裏YESとして聴いていた件の続きで、今日はYESの1stいきます。言わずと知れた英国を代表するプログレバンドでありますね。デビュー作は69年リリースということで、コーラスグループ風あるいはビートルズくずれの和やかな歌ものをちょいとアートロック風味のオルガンその他で色づけしたかのような、まだプログレと呼ぶには足りないなりに結構質の高い内容。おお、あながち間違った連想ではなかった。楽曲そのものは比較的ノーマルなのに、それを強引にスリリングに仕立てようとしているというところで、結果としてどこに興奮の軸をもっていってよいのか判りかねるあたりがいかにもデビュー作の佇まいでしょうか。部分的に抜粋すれば普通にソフトロックの名盤という扱いを受けてもおかしくなさそう。ジョン・アンダーソンは最初から美声です。というか未だにまったく変わりませんねこの人のノドは…。ついでにクリス・スクワイアのギゾギゾなベースも既に健在。で、こんなに暴君だったか!?と改めてショックを受けたのがビル・ブラフォード。かわいく収まるはずの曲もこの人のガタガタと突っ込むドラムのお陰で何だか騒々しくなってます。YES(やビルブラ)のその後を知っていればなお楽しいですが、ロックの歴史のインヴェンションの痕跡としてだけでも興味深く聴ける、けっこうムチャクチャな1枚です。「ポテンシャルある者の完成前」てのは面白いものですな。

  9月2−3日
本日3日の収穫、御器所ディスクヘヴンにてHELSTAR「NOSFERATU」、Y&T「TEN」、BROKEN HOPE「LOATHING」。動物園の裏手の道を通りかかることがあって、フェンスの外から発見した園内のロバに偽ホーミーを聞かせてみたところ、やっぱり耳をそばだててクルッとこっちを向きましたよ。かわいかったなあ。

【本日のレビュー:HELSTAR「NOSFERATU」】


80年代のUSハイトーンパワーメタルバンドの89年4thです。割とマイナーな存在ですが、デビュー作が84年に出てるということでVICIOUS RUMOURSやMETAL CHURCHよりちょっと先輩ですね。ジェフ・テイト激似系のヴォーカルがスピードアップしたSANCTUARYを歌うような(すなわちちょっとNEVERMOREっぽくもある)、REALMその他が属する一連の流れのど真ん中を突いてくる音で、ま〜最高ですね。甘過ぎず、無駄はなく、ネオクラ趣味もほどよく溶かし込み、何をそこまで?と底知れぬ気合でみなぎるメタリック・パラノイアをモワモワモワモワと発散。スラッシュメタルとふすま一枚で隣あわせな感じを漂わすこれぞアメリカンスタイル。キャッチーさは全然ないですが、その一点のみを理由に「B級」呼ばわりするのは、このクオリティを前にはためらわれます。「伏流系」とでも言ってあげたい。これ以上キャッチーなサビとか聴かせられても、もう新しく覚える気ありません、もっと空気の流れとかで魅せるやつをくれ。というディープなメタルリスナーにはホントお勧めです。

  9月1日
収穫はなし。「ウェブ経由で海外からバンドTシャツ直買い」がなかなかクセになっている私ですが、今日もちょっと前に頼んだブツが届きました。男物がなかったのでガールズXLを頼んだところ、袖や胴回りは問題なかったものの、意外な盲点。着丈だけがやたら長かったです。更に生地がヴィックリするほどペラペラ(過去最ペラくらい)で、今後すくすく伸びまくる懸念が。いや、だけど良い買い物でした。だってこれですもん

【本日のレビュー:DEF LEPPARD「ON THROUGH THE NIGHT」】


ということで日記本文からのいい流れ(スポーツ解説風)でこの「ON THROUGH THE NIGHT」いきましょう。DEF LEPPARDの最高傑作といえば?はい、「HIGH 'N' DRY」です。無論「PYROMANIA」以降も否定しないどころか我が青春ですけども。で、このデビュー作は、未だに世間一般の評価というものが定まってない感がありますので、私自身あんまりちゃんと聴いてなかったし、これを機会に勝手にじっくり掘り下げてみようと思います。

 改めて聴くと、彼らが忌み嫌うNWOBHM臭を自らどうしようもなく振り撒きながら、しかし凡百のNWOBHMが持ち得なかったキラキラして軟弱でツカミのよいグラムロック色(その後の安定したポップ性とはまた別物)がハードロック色と同等か上回るほどに濃厚。更にそれがジョー・エリオットの男らしくないヴォーカルと抜群のマッチングを誇っていたことで、よくあるマッチョなイメージに陥らずして我流の「ワルガキのロックンロール」を提示することに成功し、新しさを感じさせるパッとしたバンドとして注目を集めたのも納得がいく気がします。円熟と洗練による圧倒的な質の高さで万人の心をつかんだ「PYROMANIA」「HYSTERIA」とは魅力の軸がまったく異なります。ゆえにしばしば「ただのつたない習作」みたいな評価を受ける羽目にもなるんでしょう。実際、その後の行く末を知った上で「ああ、この部分はいずれあんなことに…」みたいな聴き方をしなければ、ただの風情あるB級クラシックロックでしかないかも知れませんが。

 まあしかし音楽は文化ですので、「全員頭を空っぽにして空気の振動にだけ反応しろ!!」と強制されなきゃいかんいわれもないわけで、ウン百万枚ヒット級の大いなるサクセスストーリーの出発点と思ってニコニコ聴くということに意義を見出してもいいと思います。あるいは、その後の「DEF LEPPARDらしさ」には全く含まれないイモ臭めの熱血ハードロック的な部分が、80年代初頭の「まだロックであることを覚えていた頃のメタル」が好きな人にはかなりグッと来るはずなので、もっぱらそこに喜ぶというのも一興。素性もわからないC級バンドだったらためらうけどDEF LEPPARDなら買える、という動機でも全然アリでしょう。何にせよ「DEF LEPPARDだから今でも買う人がいる盤」ということなんでしょうか…何か後ろ向きなまとまり方だな。いや、(言われるまでもないでしょうが)思い思いに愛して下さい。ジャケは最高。

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