物色日記−2004年12月

※頻出語句解説はこちら
  12月29−31日
▼29・30日は収穫なし。忘年会、二次会カラオケ、帰郷中の人と飲み、みたいな年末らしい生活をしてみました。31日は部屋の大掃除もそっちのけでCD大裁判を決行、20%OFFセールと買取り20%アップキャンペーンを同時にやっていたバナナ本店に出向いて23,000円(+20%アップ分=27,600円!)のリサイクル。有り難うございます。他にもぼちぼち寄り道して本日31日の収穫、まず本店でCRESSIDA「CRESSIDA」、COME「ELEVEN:ELEVEN」(クリス・ブロカウ!92年作)、POLVO「THIS ECLIPSE」、サニーデイサービス「サニーデイサービス」(バーゲン品段ボールから525円にて)、ジャズ・シン上のルーク・レコード・ジャズにてJOHN FRIGO「I LOVE JOHN FRIGO...HE SWINGS」(ヴァイオリン)、PEE WEE RUSSELL「ASK ME NOW!」(クラリネット)、PAT METHENY「AMERICAN GARAGE」(ECM79年)、バナナ大須店にてCANNED HEAT「HISTORICAL FIGURES AND ANCIENT HEADS」、ROT「CRUEL FACE OF LIFE」(ブラジリアンゴアグラインド!)。それでは皆様良いお年を。

【本日のレビューその1:WITH RESISTANCE「WITH RESISTANCE」】


IMMIGRANT SUNからの2003年作。詳細は調べてないですが若そうなバンドです。激情メタリックエモの正統派サウンドそのもので、特に変わったとこはないんだけどとにかく良く出来てます。絶対的なスピードとは別のグイグイ来る推進感があって、ブリッジミュート+ツーバスでぞぞぞぞんとキメまくるユニゾンの鋭さに体力の高さと本気度が窺われる。あとヴォーカルのやけっぱち振りですね。この手のバンドやもっと今時くさいスクリーモ系の受けつけない部類の連中って何が許せないかって、わめき絶叫ヴォーカルをツールとしてこなしてる感があるところで、その点この人達は快く激情ブチまけてくれてるので好感持てます。あまりに理想像の幅が狭過ぎて評価の高いバンドはどれも似て聞こえるこのジャンルの中にあって、お座なりな泣きに甘んじないセンスのキレがある人達かと。

【本日のレビューその2:ROT「CRUEL FACE OF LIFE」】


ブラジルのゴアグラインド4人組。何とも神妙なジャケです。安らかに目を閉じた顔が印刷されたA4くらいの紙を縦に持ちながら額に拳を押し当てて苦悩する男…一体何を表現したかったんでしょうか。内容は93年録音の21曲に、既発EPからの計21曲をプラスしたトータル42曲という満腹系。口を手でおさえたまま怒鳴ったようなヘンなヴォーカルと、ズモズモにくぐもった重低ギターが絡んでのテンションの異様さ、垢抜けなさが、いかにも地方産っぽくて良い。曲は総じてショートカット気味で、リフの屍臭感は意外と薄め。音楽的にも時期的にもちょうどポーランドのDEAD INFECTIONと並び評したい感じでしょうか。たった3文字なのにやたらゴジゴジと垂れてて読めないバンド名のロゴマークといい、やけに貫禄のある人々です。難点を挙げるならラスト9曲以外全部のドラムが打ち込みなこと。全体的にチープな音作りなのでそんなに気にならない訳ですが、タムロールがドルルンと下ったりするとバレバレ。これがノリノリ人力ブラストだったら文句ないのに、残念!

【本日のレビューその3:CRESSIDA「CRESSIDA」】


のちにURIAH HEEP、BLACK WIDOWに加入するメンバーを擁したバンドの70年1st。VERTIGOから計2枚出してます(再発は勿論REPERTOIRE)。音楽的には英フォークプログレと米サイケが折衷したようなREPERTOIRE御用達のレトロ・アートロックそのもの。ジャズロックっぽくなったりそこはかとなくアメリカンテイストのビート感が入り混じったりしつつ、アーティスティックなジャケとバンド名の響きとクラシカルなオルガンの存在でプログレと呼んでもらえるって感じのライン上スレスレなポジションです。ジョン・ウェットンかリチャード・シンクレアのハイスクール時代(?)みたいな柔らかくて細めの英国声ヴォーカルが、B級っぽさの源泉になっているといえばそうだし、マイナーならではの哀しき情緒に一役買ってて良いともいえる。ギターの歪みで押される印象が全くなく、劇的展開もあれど基本的につらーっと淡い情感をひたすら垂らされる感触が、音楽性そのものは違うんだけどどことなくCARAVANを彷彿とさせられました。こりゃなかなか奥ゆかしい趣きがあってヨロシイですな。もっと名前のあるバンドの微妙な時期の作品まで漁る前に出会っておいてもいい盤でしょう。

  12月28日
本日の収穫mapの通販でSNAILHOUSE「THE RADIO DANCES」「A NEW TRADITION」、CALIFONE「SOMETIMES GOOD WEATHER FOLLOWS BAD PEOPLE」「ROOMSOUND」、AROAH「THE LAST LAUGH」。何故突然mapかというと、何と1月末まで一部商品値下げセールをしてるんですな。通常10000円のところを5000円以上の買い物で送料無料とのことだったのでコマゴマ買ってしまいました。皆様も何か買って、がっぽり貢いで、またルー・バーロウ大先生やジュリー・ドワロン女史を呼んでもらいましょう。

▼なか卯で店内放送の有線を遮って時々入る店のCM、「なか卯、で、…、フンフンフフン」って歌ってる無音部分の「…」のとこに何か言葉が乗ってるんだとばかり思ってたのに、今日よく聴いたら違っててショックでした。何て語呂の悪いテーマソング。

【只今のBGM:SNAILHOUSE「THE RADIO DANCES」】


一昨日のPINES OF ROMEあたりからこういうの続いてますけども気にせず。11月20日のこの欄でも登場したバンドの98年作です。内容は昨日のマイケル・ネイスに似た、マスロック混じりで大胆アレンジのしんみり系フォーキー・インディポップ。こちらはカナダ産とあってか少し寒そうな張り詰め感があります。指弾きと意外なコードフォームを多用するギターのペリペリした響きがカッコイイですな〜。時々エレピみたいに聞こえる。ヴォーカルラインは終始ふらついた印象(歌自体はとても上手い)でどうにも覚えにくいんだけど、聴き流すように聴くだけで充分染みるのは何故。変拍子さえ完璧に味方につけたフレージングでもって全体の中での必要充分なポジションをしっかり確保しております。この物分かりのいい歌心がそういえば、ジュリー・ドワロンのバックバンドメンバーを務めた時も活きていたような。ジュリーさん他JAGJAGUWARファンは勿論、IDAやKIND OF LIKE SPITTING好きな人にもオススメ出来ます。

  12月27日
収穫はなし。1年半放置していた宅録音源数曲分を一旦ご破算にして、それと同じ曲を現在ちょこちょことリ・レコーディングしております。日々、今日はこれこれこういう日だったなあと結論付けるのが常なわけですが、宅録が進んだ日ってのはダントツで意義深く過ごした気になります。全然関係ないですけど、カモの羽毛が頭のとこだけ深緑になってるのってオシャレですよね。

【只今のBGM:MICHAEL NACE「MEASURED IN LEAGUES OF JOY」】


DCishなポストコアバンドだったDRILL FOR ABSENTEEの元メンバー(Vo./G.)のソロ2作目。これがアコースティックサウンドを基調に染み系SSWへ転向…かと思わせて随所でマスロック魂が炸裂した野心作!トツトツとした独白調じゃなくやたらとスケールがでかい。ハッスルしてしまったナッド・ナヴィルス、あるいはSUNNY DAY REAL ESTATEをカヴァーするOWEN(声は時々ジェレミー・エニックに似ている)とでも言いましょうか、作曲に凄く幅があって一曲の中のアレンジも自由で豊か。イギリスっぽさも若干漂うユニークな歌心の持ち主ですね。底の見えぬポテンシャル具合はシム・ジョーンズにも匹敵。バックバンドのメンバーにはジョセフ・マクレドモンド(ex.HOOVER〜THE CROWNHATE RUIN他、現THE SORTS)、ヴィンセント・ノヴァラ(ex.THE CROWNHATE RUIN他)、そして何とジェフ・ターナー(ex.GRAY MATTER〜3!!現NEW WET KOJACK)まで参加する豪華っぷりでこれまた凄い。外盤が存在せずSTIFF SLACKからの日本盤が唯一のオフィシャルリリースとなってますが、新品2000円のお手頃価格な上著作権どうこうの無粋な日本語文プリントは一切ないので外盤派でも安心の品です。こりゃオススメ、買いです。

  12月26日
収穫はなし

 昔習っていたピアノの先生への年賀状を今年はお前が書けと親に命令され、友人用とは別に当たり障りなさ過ぎるのを作ったものの、本当にピアノの先生宛て以外に使途がなく、もったいないので季節感ブチ壊しで早々と公開してやりました。おめでとうございます。年が明けたらちゃんと違うのを載せますのですいません。

【只今のBGM:PELE「ENEMIES」】


2002年発表のラスト作、840円がバーゲンで210円引きとあってやっと購入です。「NUDES」での画一ポップ化(好きだけど)、更には全編金太郎飴なライヴパフォーマンス(面白かったけど)を観て、どうせ大筋は変化なしだろうしまあいいやと2年間放っといたんですが、やっぱりその通り。基本的にはエディ・ヴァン・ヘイレンとジョン・フェイヒイを一手に踏襲する仙人的超絶ギター(両手タップ+変則チューニングアルペジオ)が起伏強めのエモいリズムに乗っかってUSポストロックの美意識の根幹にある「アメリカーナな和みメロ」をペーストになるまで煮詰めた音楽に変わりありません。見るからにオマケっぽくて可哀相だったノートPC兼タンバリンの人が正式メンバーとしてクレジットされて4人編成になった影響で一応、ギターのオーヴァーダブが減ってカットアップSEその他の電子音が加わったという程度のマイナーチェンジはあり。質の高さは相変わらず間違いありません。技術力をそのまま応用して扱う素材だけ少しずつ変えていく、といった身の振りようもあったんでしょうけど、結局これぞPELEという作風のまま解散に至ってしまったのは、それはそれで納得です。元メンバーが新たに結成したCOLLECTION OF COLONIES OF BEESは未聴ですがちゃんと継続的発展が可能なスタイルになってるんでしょうか。むしろこのギターの人は、そこいらの女性SSWと電撃コラボ、なんて展開になってくれたらSNAILHOUSEみたいできっと最高だろうに。ともあれ私にとってPELEの最もエキサイティングな瞬間はやっぱり「ELEPHANT」収録"Scuttled Bender in a Watery Closet"のジャジャッ!ていうキメに尽きるんでありました。メタラーなので。

  12月25日
本日の収穫、長らくチェックしていなかった名駅・近鉄パッセ内タワーレコードのセール品ワゴンにてGARY THOMAS「WHILE THE GATE IS OPEN」(90年作、WINTER&WINTERリイシュー)、CAL TJADER「EXTREMES」(51年「THE CAL TJADER TRIO」と77年「BREATHE EASY」のカップリングリマスター)、SONNY BOY WILLIAMSON「HIS BEST」(レーベル50周年記念ベスト)、PETER LANG「THE THING AT THE NURSERY ROOM WINDOW」(ジョン・フェイヒイ、レオ・コッテと並ぶ前衛アメリカーナギタリスト、72〜78年音源のコンパイル盤)。

【本日のレビューその1:GARY THOMAS「WHILE THE GATE IS OPEN」】


何だこの霧のようなドラムは…と呆然とするイントロ、それが数十秒遅れて重なるベースラインを完璧に歌ったものだと気付いた瞬間にはもう降伏するしかない。当時まだデビュー間もない若手だったテナー/フルート奏者ゲイリー・トーマスがデニス・チェンバース、デイヴ・ホランド他豪華面子と90年に録音したスタンダードアルバム。私が入手したのはWINTER&WINTERからの2003年リマスター盤です。「メカニカル」「重量級」が定番の形容となっているようですが確かにその通り、アラン・ホールズワースみたいな混沌ヘヴィフュージョンの香り漂うアヴァン&激テクスタイル。古典的なニュアンス感を踏まえつつ軽妙にアウトしまくるゲイリー氏はそこそこに、何せ初めて聴くデニ・チェンに気を取られっぱなしであります。ベースラインに張りつくような超手数においしいキメは逃さない切り返しの鋭さと、こりゃバディ・リッチを最高性能サイボーグ化したみたいな人ですね。凄いを通り越しておっかない。GRPでならしていたというギターのケヴィン・ユーバンクス氏もなかなか迫力の職人仕事。ともかく戦慄走る1曲目のためだけでも探す価値あります。名盤の称号に偽りなし。

【本日のレビューその2:PINES OF ROME「A CATHOLIC WESTERN」】


ロードアイランド州プロヴィデンス発、USスローコア隠れ名バンドの恐らく第1作(98年)。CODEINの暗さをそのまま持ち越したREXみたいなアーシーな曲からJUNE OF 44似(ヴォーカルは特にジェフ・ミュラーそっくりの低音囁きスタイル)の内省ダーク・ジャンク系まで網羅する、正統派ルイヴィルサウンドの第3世代って感じの人達です。あんまり和めないけど染みるなあ。EARLY DAY MINERSみたいに直球アマアマにすればキリがないけど、こうやって基本的にささくれ立ってるとこに時々ポツンと泣ける曲が混じってたりすると非常にこたえます。雰囲気としてはDRUNKやSPOKANEに近い…というかいっそJAGJAGUWARから出てればもっと認知が上がっただろうに、現状では可哀相にアマゾンでもAMGでもマトモに引っ掛かりません。しかも今年ラスト・アルバムを発表して解散したとのことで。そんな世知辛さも含めつつとにかく染みるバンドでございました。

  12月24日
収穫はなしIMPALED NAZARENEの4万人野外ライヴがあるから全員行くべしという大・キャンペーンが展開されたとして、オープンエアも爆音もメタルも好きだけどこの時間この場所にIMPALED NAZARENE見に行けって言われても、熱心なファンに比べて温度差のある自分がその場に混じってノリノリな客の振りをするのは誠意に反するとか、家でつつましくGORGOROTH聴いてたらそんなに間違いかとか、思考停止でノリきってしまえない材料はいくつか出てくることと思います。キャンペーンが商業的過ぎて、楽しみを享受するための選択肢を余りに膨大に準備/提示されてしまった時、主体的な姿勢を保つことが容易ではなくなって結局キャンペーンそのものの拒絶に走る心理は、泣かせ映画をシラケてしか見れない、マルチエフェクターのプリセットの音色は絶対使わない、等と変わらぬよくある天の邪鬼であって悪く言うものではないと。ただ家族や親しい人が「IMPALED NAZARENE見たい」と言い出したら、ガッカリさせない程度にライヴのひとつくらい同行するような柔軟性は許容していけば良いと、そういう問題だと思います。クリスマス。山下達郎はいいとしてマライア・キャリーのあの変なシャッフルがスタンダードとして定着していく気配が凄く嫌だなあ。

【只今のBGM:RICK DERRINGER「ALL AMERICAN BOY」】


ジョニー&エドガー・ウインター兄弟との仕事で頭角を現し、トッド・ラングレンやSTEELY DANあたりとも軽く絡んだあと満を持してのソロデビューとなった73年作。全編彼のペンによる曲で占められているだけでなく、ベースやオルガン、ペダルスティール他々、雑多な楽器を自力で重ねたDIYな作りになってます。音楽にイメージのある人なんですな。作風的にも軽快ファンキー&ハードドライヴィンなアメリカンロックそのものな人かと思ってたらさにあらず、時々スティーヴィー・ワンダーかそれこそトッド・ラングレンみたいなオシャレバラードも混じっててなかなか幅が広い。しかもどれもこれも魂のこもっためちゃくちゃいいパフォーマンス!歌は上手いしギターは達者。こりゃもうバンドパワーありきの当時のシーンには相当な衝撃だったんじゃないでしょうか。野性開放のロッキンっぷりと理性が利いたソフィスティケイションを同時に成立させる戦略的天才肌ロッカーのハシリですよこれは。今まではベスト盤一枚だけ持ってましたが、フルアルバムの隅っこの方にこそ楽しみが見つかるような人に違いない。コンプリート目指して頑張ります。

  12月23日
▼さて今回も充実の本日の収穫、今日からバーゲンのサウンドベイ金山にてTHE ANOMANON「THE DERBY RAM」(ネッド・オールダム、2004年作)、RICK DERRINGER「ALL AMERICAN BOY」、HISSANOL「THE MAKING OF HIM」(ex.NOMEANSNO)、PELE「ENEMIES」(ラスト作、800→600円にて!)、BONE「USES WRIST GRAB」(CUNEIFORM、ヒュー・ホッパー在籍!)、THE PINES OF ROME「A CATHOLIC WESTERN」、CECIL TAYLOR「LOVE FOR SALE」、MIRIODOR「MEKANO」(CUNEIFORM)、WES MONTGOMERY「WES MONTGOMERY TRIO」、CANNED HEAT「FUTURE BLUES」、TSUNAMI「THE HEART'S TREMOLO」(SIMPLE MACHINE!)、同上前津にてGUN「THE GUN/GUNSIGHT」(BGOからの2in1リマスター!)、CAL TJADER AND CHARLIE BYRD「TAMBU」(73年)、KIT CLAYTON「LATERAL FORCES (SURFACE FAULT)」、SPENCER DAVIS GROUP「THE BEST OF SPENCER DAVIS GROUP」、BRUCE SPRINGSTEEN「DARKNESS ON THE EDGE OF TOWN」(78年)、MAGIC SAM「WEST SIDE SOUL」、THE B-52'S「PARTY MIX/MESOPOTAMIA」。いつになく古臭い顔ぶれになっておりますが満足です。年末年始で消化しきれるか…

【本日のレビューその1:CECIL TAYLOR「LOVE FOR SALE」】


オーネット・コールマンより先に現れて世にフリージャズを叩きつけたピアニストの59年作。アルバムタイトルも示すとおり、前半3曲は変わり果てたコール・ポーター・ナンバーが並びます。悪夢に出てきたモンクみたいな独奏で幕を開ける1曲目冒頭からして気合充分。大人しくしてるのはテーマの数小節くらいのもんで、一応拍子は保ったまま、現代音楽からの感化も伺える奇怪なスケールをジャズの語法にあてはめてノリノリに弾きまくっております。ほのぼの可愛らしいところもあるオーネット・コールマンに比べると随分ぴりぴりした空気ながら、絶叫/混沌系に行くことはなく、背骨を抜かれてウヤムヤになったショーターかドルフィーか(大雑把過ぎな例えですが)ってな作風。前半はピアノトリオで、後半3曲(本人作のオリジナル)では2管を加えてのクインテットとなる訳ですが、トリオだと自由が効き過ぎて少し散漫な気がしないでもなく、クインテットの管2人は今ひとつオーソドックスの域を出ず、全体としてジャズ解体!というインパクトを完璧に見せつけるには至らない印象。しかしポーターナンバーの崩し方に対してオリジナルがやけにノーマルな作曲だったりと、敢えてこういうバランスなのかなという気もして、すなわち(好演云々は別として)音楽的特徴の面で何か象徴的な一里塚的作品ではなかったってことでしょうか。ひととおりの代表作を押さえた後なら色んな楽しみ方が出来そうでもあります。

【本日のレビューその2:HISSANOL「THE MAKING OF HIM」】


昔中古で安く見つけた1stを試聴して買って、素性を調べたらNOMEANSNOの元ギタリストがやってるバンドだと知りヤッターと喜んだ覚えがあります。こちらは2ndでリリースは引き続きALTERNATIVE TENTACLES。前作は「WRONG」あたりを頂点とする80年代NOMEANSNOの誇大妄想風屈折癖を引き継いだのをショートカット化してバカになったような感じだったのが、今回は少々オリジナルパンク・オマージュな感じもありつつ一曲一曲に雰囲気をもたせようとする方向のようで、丁寧な音響細工が施されている反面テンションは若干落ち着き気味。しかしこのモロばれな打ち込みドラムも含めてここまで堂々とユニークな世界観を提示されると、無性に気になってしまってまんまと買ってしまうものです。ジェロ・ビアフラとの共演盤、MR. RIGHT & MR. WRONG名義の1枚、「IN THE FISHTANK」EPなど、ボチボチ存在するNOMEANSNO関連盤を網羅しようとする向きなら持っとくべきバンドでしょう。

  12月22日
収穫はなし。乾燥で手がカサカサでも、ウチの凄い近所で凄い火事があって一棟全焼以上でも(実話)、バーゲンが明日なので前向きになれます。サウンドベイは10時開店です、お忘れなく。火の元の安全もお確かに。大切なCDや機材全部グニャグニャになってしまったら号泣じゃ済みませんよう。

【只今のBGM:CORONER「GRIN」】


クラシカルなギターソロが躍る技巧派スラッシュ(と言われてるけどHOLY TERRORのような高速オブリが混入してただけって話な気もする)サウンドのデビュー作「R.I.P.」で颯爽とシーンに現れたスイス産トリオの93年ラスト作5th。93年のメタル過激派シーンというと「ブラック・アルバム」ショック/PANTERAショックの洗礼を通過してヘヴィネス礼賛一色だったわけですが、そこでスローダウンしたスラッシュメタルバンド達がそれぞれどれだけ深みのあることをやれるか試された時期でもあったと思います。そこへきてこのCORONERのこのアルバム、リズムをより強く意識したバリッと硬いリフにダークなテンション感を効かせ、メタル然とした体裁を残しながらストレート化時代に上手く順応したなかなかの力作になっております。ALICE IN CHAINSや末期CELTIC FROST(ベストのみに収録されていた新録2曲の路線)にも似つつ、吐き捨て型ヴォーカルは別としてギターだけ聴けば、同じく妖しいクラシカルテイストに90年代型ヘヴィセンスを加味したSYMPHONY Xと意外に他人の空似(流麗なソロも含め)になってるというのが面白い。そしてSADISTなんかはこのバンドの正統な後継者だったのですな。リリース当初は各誌のレビューでやたらと評判悪かった記憶があるけど、DEPRESSIVE AGEとかシュミーア脱退後のDESTRUCTION、EXODUSやFORBIDDENらが解散前に残したような作品群の数々とともに、そろそろまっとうな評価がなされてもいい頃なのでは。それにしてもニヤけてますね〜、この顔…

  12月21日
収穫はなし。何となしに雑な詭弁を垂らしがちなのも夜が長いせい。柚子湯入りましたか皆様、気が付きゃ今日冬至でしたよ。忘年会はそろそろですか、ニカセトラ003は年内限定でネット配信中ですよ。

【只今のBGM:COCO「COCO」】


楽しいジャケです。読みはココではなくシー・オウ・シー・オウのようで。DUB NARCOTIC SOUND SYSTEMのベーシストがドラムを務める男女デュオ(ベース+ドラム+ヴォーカル)の1st。勿論Kリリースで録音もキャルヴィン・ジョンソンです。昨今のデジタル猛攻の中で失われたダンスフロアのためのオーガニックなエナジーを提供し自身もそれを楽しむこと、が彼らの使命であるとKサイト内のオフィシャルページに記してありまして、なるほど納得、DUB NARCOTIC SOUND SYSTEMとKING KONGの間をいく脱力ファンキーなリズムオリエンテッド・DIY音響パンク(?)をやっております。メンバーが二人というスキマっぷりを必然のものとするグッドセンスな頑張りようには微笑むばかり。ドラムはところどころ相当あやしいですがそれもカワイイねと許せる感じです。単純過ぎて頭ワルイかと思いきやとてつもなくディープなK流そのものの作風につき、人によっては当惑注意。免疫のない方はWOLF COLONEL、HALO BENDERS、LOIS…と順を踏んで来れば多分大丈夫。

  12月20日
収穫はなし。怪我人騒ぎでいよいよ「あの気持ち悪いののどこがいいの?」という声が強まるぺ様でございますが、キモチ悪いくらいヤサヤサだからこそ正面切って心酔出来るんではないかという当然の反論はあまり聞かれませんね。キム・タクは器用貧乏だったり、坂口憲二は英会話失格だったり、竹之内豊(古い?)はイマイチ冷たい感じがするし、タッキーは可愛いだろうけど甘えたくなる感じじゃないだろうしで、そこへきてぺ様は嘘のように笑顔役で紳氏役、おば様方の妄想も何もかも穏やかな笑みひとつで受け流し、しかも海の向こうの人だから微妙に存在に現実感というか地続き感がない。ベッカムみたいなチャラさもない。安易な批判をする前に、高嶺に住まう夢の王子様として他に適切な有名人がいるなら挙げてみて頂きたい訳だな。韓国ドラマにしても然り、「真珠夫人」のブームで世間がウソくさい、あり得ないくらいドロドロしたのも楽しいじゃんという嗜好になってきたところに「冬ソナ」であったという流れを見落として韓国ドラマのみに対してマイペースな雑言を吐く橋田寿賀子は論外。方法論が出尽くした場において考えられ得る最も簡単な新しさは「組み合わせること」の他に「やり過ぎること」であって、あとは消費者が過剰さに麻痺してきたらカウンターアクトとして振り出しに戻るような真似をすれば風穴があくというエンターテインメントの嗜好循環の、今は盛り上がりの極大点に近付いているというだけの話だと思うのですよ。IN FLAMES、CHILDREN OF BODOM、FINTROLLとエスカレートしていったここ10年のメロ・デスを取り上げて「過剰なだけで内容がない」とFINTROLLを断罪する馬鹿な評論家がいないのと同じで、ドラマが現実的で丁寧なものでなければいけないという法もないはず。とここまで言っときながら韓国ドラマなんてひとつも見たことないんですけど、擁護云々というつもりは毛頭なく、こういうこと書いてたらまっとうなクチに就職出来んかなーって思って。

【只今のBGM:THE GREGG ALLMAN BAND「PLAYIN' UP A STORM」】


77年のソロ作。雷雲のようなのをバックに激モミアゲ男が陶酔の半目(いや、全部閉じてますけど)でグァッとピアノに向かう画に、更にグモモと遠近法で迫るALLMANの文字、何つー暑苦しいジャケなんでしょうか。中身もそのイメージどおり、この男の豪快なヴォーカルがホレどうだホレどうだと押し寄せる歌いまくりアルバム。しかし曲調的にはソウルフィーリングを活かした微妙にお洒落なのが多くて、エレピやシンセ、ストリングス隊、女声クワイアなどが適宜イイ具合に投入されてて何かとてもゴージャス。固定されたバンド形態/楽器分担にとどまらない自由な作りがいかにもソロっぽくて楽しいですなあ。シングルヒットとかは特になかったようですが、とにかく演奏にしろ歌にしろ、鳴ってる音がどれもこれもブッ太い気がします。メロウな曲でさえスカッと気持ち良いことこの上なし。サザンロックとソウルが力ずくで融合してしまったらこうなる、てな感じのナイスな仕事。THE ALLMAN BROTHERS BANDファンでなくともオールドロック好きには一聴の価値おおありです。

  12月19日
収穫はなし。サウンドベイのバーゲンがいよいよ次の木曜ってことを忘れかけていた人は、いっそそのまま忘れて当日昼まで寝てて下さいね!近頃回を追うごとにピーク時(開店1時間後くらい)のレジの列が長くなってる気がするのはどういう訳なのか、ホント。

▼追記。QUEENが再結成してツアーをやるらしい、というニュースをチラッと見出しだけ見掛けていて、詳細は知らずに、フーン故人の代役誰やねん、トニー・マーティンやティム・オウエンズみたいな類の器用な若者なんだろう…と思っていたら何と、我らがポール・ロジャース大先生だそうじゃないですか!!ネット上でも早速賛否両論あるようで、QUEENファンからの「それは違う」コールがもっぱら優勢みたいなんですが、QUEENを全く通ってない私としてはウルセー知るかと。もし来日した暁にはポール・ロジャース目当てに(現在決定しているヨーロッパツアーではFREE〜BAD COMPANYのレパートリーも演奏されるらしい)6000円だろうと8000円だろうと観に行ってやる!ということで男気の名前ドメイン、ポール・ロジャース・ドットコム!

【只今のBGM:SOULO「MAN, THE MANIPULATOR」】


2003年PLUG RESEARCH。これが2ndになるようです。電子音と生ドラム、生ギター/ベース、生管弦楽器の数々を未加熱のまま乱切りにしたのを並べ替えて鵺(ぬえ)を造るかの如き手法で完成させられた、相当何でもありのフォークトロニカというよりロックトロニカと言った方が良いようなジャンク・デスクトップ・ミクスチャー・ミュージック。今時「ファンクとメタルが音楽的に融合!」みたいなのじゃなくてもはやカット&ペーストの問題なのですな。これ、アイディアとしては思いつくんでしょうけど、実際こうやって調和のある仕上がりにしてきたのは大した仕事なのではと思います。ブオーと乱暴に歪んだ素材も多めに使いつつ、オールドアメリカン心の見え隠れする和みチルアウトな方向性にまとまってまして、同じく人力パーツ満載ながら内容的にはシューゲイザー賛歌だったMANITOBAの2ndより個人的に好みであります。BECK好きな人にもイケるかも?

  12月18日
収穫はなし。PINBACK来日中止、で代替がHEAVY VEGETABLEにTHINGYにソロ弾き語り!?正直PINBACKはどうしようかなーと迷ってたんですが、ロブ・クロウ本人によるHEAVY VEGETABLE(あとの人がオリジナルメンバーなのかどうか判りませんけど)が拝めるとあらばこれは行くしかないですね!解散したはずのANAL CUNTが観れたEXTREME THE DOJO以来のビックリです。前座で観る機会が多過ぎる54-71もこの際OKとして、行きましょう今池得三。

【只今のBGM:KEITH JARRETT「STAIRCASE」】


77年作。"Staircase""Hourglass""Sundial""Sand"と題された4曲がそれぞれ3部あるいは2部構成に分かれた計11トラックというつくりのピアノ独演インプロアルバム。1枚1曲とか2枚組で6曲とかそういうのが多いこの人にしては、ひとまず私のようなぺーぺー素人には集中力を持続させやすい作品といえるでしょう。何の用意もなく突如思い立って制作されたそうですが、手短に切り替わる一曲一曲は本当にイメージの洪水って感じで、即興と作曲の境界がないこの人の才気、特濃のリリシズムをドバドバ堪能できます。殆どの演奏でアメリカジャズらしいスウィング感は全く聴かれず、どれも整然とした四角いノリ。近現代のクラシックからフュージョンソウル、ミニマルミュージックまでが渾然一体に煮崩れたメタ・コンテンポラリー・ポップスとでも呼ぶべき内容になってます。これが何故ジャズか、ジャズが瞬間を読んで楽器を然るべく歌わせる音楽だとすれば、何もおかしいことはありません。モダンジャズ然としたコンボ体制のアルバムより却ってキース入門には適してる気もする(うなり声も小さいし)、明快にしてディープこの上ない盤でございます。いいもん買った。

  12月16−17日
▼16日は収穫なし、本日17日の収穫は久々の大須店にてBURNT BY THE SUN / LUDDITE CLONE「SPLIT RELEASE」、LUDDITE CLONE「THE ARSONIST AND THE ARCHITIECT」、PRESTON SCHOOL OF INDUSTRY「ALL THIS SOUNDS GAS」、SOULO「MAN, THE MANIPULATOR」、WITH RESISTANCE「WITH RESISTANCE」、JOE JACKSON「LOOK SHARP!」大須店はあの温厚そうな丸刈りの人が店長なんでしょうか、値札のコメント書き込みがやたらアツくて試聴選びに迷いました。手短かでナイスな買い物をたくさんしたので今日はレビュー奮発ということで。↓

【本日のレビューその1:PRESTON SCHOOL OF INDUSTRY「ALL THIS SOUNDS GAS」】


PAVEMENTで時々合の手程度に歌っていたギタリストのスコット・ケンバーグがバンド解散後に始めたプロジェクトの1st。2001年MATADORリリースです。ほのぼのしたジャケのとおり、内容は後期PAVEMENTそのまんまのフォーキー&ドリーミ〜なインディポップ。優しいアメリカ心が染みに染みてこりゃ最高、PAVEMENTって実はこの人が良くて良かったのかもと思うくらい素晴らしい。THE SEA AND CAKEみたいな潔癖・人造感もなければBEACHWOOD SPARKSみたいなレプリカ/コスプレ感もなく、THE BYRDSやPOCOがそのまんま21世紀に化けて出たみたいなナチュラル・ロッキンっぷりが何とも爽やか。トータルの作り込み度でいえばスティーヴ・マルクマスのソロを凌ぐくらいパッとカラフルで豊かなのでは。ヴォーカルの求心力の点で一歩譲るものの、それもPAVEMENT時代から名物的なものとしてこの人の声を認識してきた身には問題ありません。「TERROR TWILIGHT」のことを思う度にジョワーンとした感慨を噛み締めてしまうような人なら絶対、今すぐ買うべき!そうでなくとも誰にでも魅力的な傑作・大名盤の域だと思います。

【本日のレビューその2:BURNT BY THE SUN / LUDDITE CLONE「SPLIT RELEASE」】


こんなん出てたとは知らず。しかもFERRET(近頃はもっぱら軟弱スクリーモの名門となってしまった)から。BURNT BY THE SUN(以下BBTS)は最初のEPが2001年でしたから2000年リリースのこれがデビュー音源だったんですね。各々3曲ずつ持ち寄った計6曲入りです。さて内容、BBTSの方は言うに及ばぬ激情発散系醜悪ヴォーカルとデスメタリックなリフが絡む極悪ニュースクール。これがもっといかついデス声でオランダのDISPLEASEDリリースです、なんて言ったらもうただの優秀なブルータルデスですわ。DISCORDANCE AXIS〜HUMAN REMAINSのデイヴの神業ドラムはやっぱ最高。一方のLUDDITE CLONEはTHE DILLINGER ESCAPE PLANをもう少し平たくしたような混沌激テク激展開系でして、フェイク感のないハッスルっぷりでスカッと楽しめます。神経質な単音フレーズがキリキリと刻まれる場面ではMASTODONを、突如挿入されるフュージョン風展開にはCANDIRIAあたりを彷彿とさせたりもしつつ。短い収録時間ですが非常に濃い取り合わせでなかなかオイシイ1枚です。偶然中古で見かけたりしたら是非拾っといて下さい。

【本日のレビューその3:JOE JACKSON「LOOK SHARP!」】


今見たらアマゾンでの新品リマスター盤の売価が今日中古で買ったのと40円ちょっとしか変わんなくてショックだったんですが…ジョー・ジャクソンといえばANTHRAXファンにはお馴染み、"Got The Time"のオリジナルをやってた人ですな。どんなスタンスのミュージシャンなのか、メタル雑誌を通して得る情報からは知る由もなかったわけですが、レゲエやラテンをほんの皮一重だけ拝借しつつパンクムーヴメントに乗っかって若きならず者達のために小慣れたビートパンクを演奏するという、初期THE POLICE(A&Mリリースというだけで思い出しただけかも知れませんが…)のラディカル度を下げたような人とでも言えばだいたいOKでしょうか。コステロ風の華やかさも加味されて楽しい限り。バカテクではないがタイト極まりないストレートなリズムで無心にヒートアップ出来るこの感じはパンクにまだ血が通っていた頃のイギリス独特のものですね。ナンバーガールが一部フレーズを拝借してる曲も他のアルバムにあるそうで、なるほど随所にそういう雰囲気あります。クサくならないクールな哀愁がカッコ良過ぎるタイトルトラックとかは一聴目でガツンと来る超名曲。件の"Got The Time"は意外にもラストに収録です。ひときわスピーディなこの曲で暴力的にシメるとはアウトローな。

  12月15日
収穫はなし。今年も残すところあと半月ですか。来年こそ平成何年かパッと出てくるようにしようと思います。今年は16年でしたよね?未だに不安。

【只今のBGM:THE FLYING LUTTENBACHERS「INFECTION AND DECLINE」】


まだ続きますSKIN GRAFT関連ショック。昨日もUS MAPLE買いましたし。さてこれは以前も紹介した 、GEORGE TRIOにメンバーが参加したりている大ヴェテランTHE FLYING LUTTENBACHERSの2001年作。既にTROUBLEMAN移籍後の作品とあって、そっちウケしそうなチープなシンセを多少まぶしつつ、基本的には相変わらずのバカテク・フリークアウト・ジャンクをやってます。ブラストが大幅に減った(一部で一応健在)代わりにどんどん変則キメがエスカレートして、もはやMASSACREミーツMR.BUNGLE、NOMEANSNOミーツRUINSの様相。誇大妄想スカム・プログレと呼んであげたい域です。嵐のような高速ノイズをリモコン操作の如く軽々とコントロールするこの精神力はマジで並大抵じゃないですね。全編インストということに途中まで気付かないほど矢継ぎ早に押し寄せる激展開/超絶キメに圧倒されるしかない。そしてこのアルバムの目玉はやはりラストに収められているヤニック・トップ作のMAGMAの名曲"De Futura"のカヴァーでしょう。破壊的なベースがグネグネ暴れ回るオリジナルに深い愛と敬意をもって挑んでおりまして、相当な難曲であるにも関わらず都合のいいハショリは一切なく、自前のレパートリーとも全然違和感なくマッチしております。これは凄い、底力の果てしないバンドは何をやらせても強い。人が厭がることを全力でやるバンドって頼もしいものです。極北プログレッシャーからスカムノイズジャンキーまでどちら様にも強くオススメ出来る秀逸盤。現役だし来日しないかなー?

  12月14日
本日の収穫、バナナ本店にてUS MAPLE「LONG HAIR IN THREE STAGES」(95年SKIN GRAFT、ジム・オルークpro)、MADLIB「BLUNTED IN THE BOMB SHELTER」(TROJAN音源のMIX CD)、MICHAEL NACE「MEASURED IN LEAGUES OF JOY」(HOOVER周辺人脈のジョゼフ・マクレドモンド&ヴィンセント・ノヴァラ全面参加!)、KIT CLAYTON「NEK SANALET」。

【本日のレビューその1:KIT CLAYTON「NEK SANALET」】


以前はこういうの全然苦手で、リコメンド文句に誘われて試聴してみてもウワー駄目だと返してたんですが、そろそろイケるようになったようで購入。99年~SCAPEリリースの1stだそうです。リスナーの注意を手取り足取りガイドしてくれるようなフレンドリーなラインは殆ど現れず、ブーミーに蠢く低音とディレイの海が不安と酩酊へいっぺんに引っ張り込むミニマル・ダブ・エレクトロニカ。テックハウス、テックジャズに倣ってテックダブと言ってしまうこともあるようです。曲によっては意外と普通にデトロイト風ビキビキビートが登場したりもするものの、全編一貫して「大衆のための親切な作曲」とはかけ離れたリズムと空間表現に関わる真摯な実験/研究に傾倒してる感じは変わらず。とはいっても理屈上でしか存在価値のない純実験音楽ではなく、「人の聴感に快く作用する音響」として成功してるのであります。たまにこういう自分のキャパギリギリの買い物をすると精神的にピシッと来て良いです。

【本日のレビューその2:HOLGER CZUKAY「ON THE WAY TO THE PEAK OF NORMAL」】


↑を聴いて思い出したシリーズ(昨日参照)ということで。こちらは全て人力リアルタイム演奏。盟友ヤキ・リーベツァイト、ジャー・ウォブル(P.I.L.!)と名物コニー・プランクもちょっと参加の81年作です。ダウンビート&リリカルなCANといった趣きの1曲目"Ode To Perfume"は18分にも渡る大作、これがいきなり良い。何かと言えばディストーションギターが出てきてしまうあたり古い時代らしさを感じさせますが、リズムトラック以外のウワモノはいずれもフヨーンとやって来ては去るだけの極めて現象的な扱い。一方執拗に同一テンションを持続するリズムトラックもまたマシン的な存在感です。途中あからさまにダブを模したような曲も出てきつつ、とにかく天然ポストモダンなフットワークでリズムと空間表現の自由な遊びに興じる音響ロック・アルバムになっています。神妙な面持ちでノートPCに向かっている画が想像される今時のミニマルエレクトロニカの人達とは違ってジャーマンロックの人は、何をそんなにというくらいアガりっぱなしでユーモラスなのが味ですね。実子のお絵描きをそのまま採用したかと思うような(実際そうかも知れませんけど)ジャケからしてそんな雰囲気。予測のつかないシンガーの存在も含めてカオスを売りにしてる感があったCANよりは整然とした中の不確実性って調子で上品、聴きやすい。UIとか初期HIMの血肉を辿るつもりで手に取るも良しです。オススメ。

  12月13日
収穫はなし。皆様も小っちゃい頃に飲んだ記憶があるんじゃないでしょうか、ミロ。大塚製薬の自販機に今でも時々缶入りのが売ってます。オッ売ってるなと思い、今日それこそ10年か20年振りくらいに買って口にして、感無量…と思いかけたのは香りまで。実際飲んでみると全粉乳が入ってあんまり濃くもなくて何だか貧弱なミルクココアみたいになってたのでした。ここはひとつビン入りの粉で買ってきてお湯割りにするしかないでしょう。これ読んで懐かしく思った方々、果敢に一本買ってみては。

【本日のBGMその1:AMERICAN MUSIC CLUB「ENGINE」】


この欄でも何度となく登場しているAMERICAN MUSIC CLUBの、今回はちょい古め87年作を。フォーキースローコアまがいだったりやけに垢抜けメインストリームロックだったり何なんだろうと思ってたけどブルース・スプリングスティーン(「NEBRASKA」前後辺り)聴いて納得がいきました。ポップにまとまりながら若干ボブ・モウルド似の声でどこか翳りのあるSSW風佇まいを見せる「アメリカン・ミュージック」を、90年代中盤の作品とほぼ変わらぬスタイルでこの頃既にやっています。RED HOUSE PAINTERSもIDAHOもみんなこのバンドの子供みたいなもんですね。いくらフォーキーだアーシーだといっても80年代にこれは地味だったことでしょう、一応BGM配給下のレーベルから出てますが当時どの程度の人気や知名度があったのやら。(ちなみに現在は何とREPRISEからの再発盤があるようです。)時流に弄ばれてる感じが全然ない分、むしろ今になってますます魅力を強めてるような気もする作品。70年代フォークロックとスローコアの橋渡しとして皆さん大事にしましょうこのバンド。

【本日のBGMその2:R.E.M. 「DOCUMENT」】


↑を聴いて何となく存在を思い出したので。意外と何枚も持ってた中から上のと同じ87年作をチョイスです。若々しく挑戦的なアレンジから脱却してプロダクション的にも相当売れ線傾向を強めてる時期ですね。私にとってはそのへんが血迷ってる感、何やりたいか判らない感として聞こえてしまいます。MEAT PUPPETSとかもこの時期は相当訳わからんことに手出してることだし、80年代後半って難儀。しかしその変なメジャー指向の合間から確かに届いてくるポストパンク世代のアメリカン・インディ・ギターバンド臭に気付くと、これがなかなか快い。枯れ/内省系HUSKER DUって趣きで。普通にもう少し前かもう少し後のアルバムにしとけば良かったな。これを書き始める前にざっと聴き返した傑作B面集「DEAD LETTER OFFICE」とか何だか最高でした。中古盤屋で500円割る定番としてゴロゴロ転がってる彼らも、実はアメリカンミュージックのひとつの結実として結構いいことやってるバンドなのだと再確認。キース・ジャレットが細かいヴィブラート効かせて普通に歌ったような声質のこのヴォーカルだけは今んとこ少々苦手ですけど。

  12月12日
収穫はなし。フガフガ…

【只今のBGM:RIDDLE OF STEEL「PYTHON」】


デビューEPが充実の出来でフルアルバムを待望していた人も多いであろうRIDDLE OF STEELがちょっと前にめでたくリリースした1stです。今度もTRAINDODGEと同じASCETICから。JAWBOX、BLUETIP、SHINERあたりのラインを受け継ぐ屈折突撃系パワー・エモ(?)の2004年版真打ちって感じの内容でこれがもう大変素晴らしい。一目でわかるジェイソン・ファレルのアートワークからして品質は折り紙つきなわけですが、TRAINDODGEの2枚組と並べて大推薦したいくらい最高ですよ。パッパッと走り去るようなフットワーク感で威勢良く飛ばしつつ、細部に目をやれば擦り減るまで聴いても古びないような丁寧で奥行きある仕上がり。各人のテクニックをフル稼働してトリオの限界に迫るアンサンブル表現はガッツィーだったりスペイシーだったりと自由自在でむちゃスリリングです。歌いながらよく弾けるなってなギターといい激手数ドラムといいMEDICATIONSばりに壮絶。ガッチリ整ったヘヴィなサウンドにまとめられてるので、最近のANTHRAXが許容できるようなメタルリスナーにもお薦め出来ます。BLUETIP〜RETISONICファンは言うに及ばず即買い!今年下半期の一押しということで。太いの好きな人ならこれ効きますよ。

  12月11日
収穫はなし。卒業した大学のバンドサークルの定期コンサートに足を運んで参りました。途中から途中までしか居られんかったけどいいもん見れて良かった。自転車の鍵を落としました、ここ一ヶ月以内で2度目。スピッツ星人のフィギュアより小さいような金属片が失せるだけで被る不便は甚大、文明とは便利で世知辛いものですな〜。

【只今のBGM:INCANTATION「MORTAL THRONE OF NAZARENE」】


毎度毎度グチャグチャした臓器っぽいジャケが印象的なUSブルータルデスの中堅・INCANTATIONの94年作。何故かアマゾンで1000円切ってたので購入です。何ともただならぬこの雰囲気、MORBID ANGELの荘厳さとAUTOPSYの腐敗臭を足した感じとでも申しましょうか、目立たないバンドだと思ってましたが実は隠れ異端ですね。切れ味の鈍いボケボケドラムサウンドと全然ローカットしてないズブズブギター、その更に下でベースがズヌンと抜け、ヴォーカルは滝の水が落下するような物凄い低いゴーッともドシャーッともつかぬ咆哮タイプ。リフの不穏(というかもはや不吉)な感じは極初期CATHEDRALとタメ張るほどです。メタル的な汗かき感を前面に出さずしてデスメタルのアングラな屈折性をかなりディープに漂わせてるので、JUDAS PRIEST何それ?てなニュースクーラーから、ドンキャバその他から流れてきたような人まで広くオススメ。ところでUSブルータルデスのリフって12音技法ですよね。(多分違いますけど。)

  12月10日
▼朝の身支度をしながら音声だけ聞こえていたとくダネ!内「とくダネ!TIMES」でミュージシャンが射殺されましたとの不穏なニュース、誰?と思って耳を傾けていたら笠井君が口走った名前はダイムバッグ・ダレルでした…って、何すかそれとしか言いようがないです。私がメタルを真面目に聴き始めて割とすぐの頃、当時注目の新譜だったPANTERAの「FAR BEYOND DRIVEN」からの音源が和田誠の「ヘヴィメタルボンバー」(R.I.P.)でもBURRN!の二人(相方はまだ大野奈鷹美だった)の「ヘヴィメタルシンジケート」でも大量にオンエアされていて、"I'm Broken"とかむさ苦しい曲だな〜と思いつつ、今や伝説の「MTV HEADBANGERS BALL」で"Walk"や"Cowboys From Hell"のヴィデオクリップを目撃したりもして、ウムこれが時代かと納得したものでした。え〜ダレル、早過ぎですよ。クリス・オリヴァ、コージー・パウエル、チャック・シュルディナーと、まだまだ頑張って欲しかったミュージシャンが死んでいくのは本当に惜しいですね。黙祷。本日の収穫は今池P-CANにてJUMBO「JUMBO」、MAY BLITZ「2ND OF MAY」、アマゾンから届いたINCANTATION「MORTAL THRONE OF NAZARENE」、THE FLYING LUTTENBACHERS「INFECTION AND DECLINE」("De Futura"のカヴァー収録!)、RIDDLE OF STEEL「PYTHON」、ANTHRAX「THE GREATER OF TWO EVILS」、DUKE ELLINGTON「THE POPULAR DUKE ELLINGTON」。

【只今のBGM:ANTHRAX「THE GREATER OF TWO EVILS」】


今日は追悼でPANTERA聴くぞと思ってたんだけど帰ったらこれが届いてたので。近年作にはダレルも参加してたってことで良しとしましょう。ジョーイ・ベラドナがいたISLAND時代、更にはデビュー作1枚のみ在籍したニール・タービン時代の曲まで、ベスト選曲で再録した、TESTAMENTが数年前にやったのと同じようなファンサービス企画盤。彼らの最近の作品はホントに素晴らしいので大いに期待したのですが…やっぱり所持CDひとケタ時代に聴き込んだものをこうやって変形されると良い悪い以前に違和感を覚えるもんです。ダン・スピッツのギターソロって凄い変だったけど再現されないのは困る、特に"A.I.R."のイントロを端折るような真似は許さん!何だこの"Madhouse"は!?ギターソロ時にバッキングが増えないあたりからして恐らく一発録りで制作されたんでしょうけど、"Caught In A Mosh"や"Indians"のリズムチェンジとかはやっぱりライヴどおり相当ルーズだし、円熟という意味も含めて端々に「コイツら歳とったな〜」という感じが出てます。そんな中俄然気を吐くジョン・ブッシュの猛々しいヴォーカルはスゲーいいですね。思わずARMORED SAINT時代が脳裏をよぎるブルース・ディッキンソン型の絶唱!今のANTHRAXの求心力の源泉はこれです。ともあれ「今のANTHRAXが大昔のレパートリーをやったらこうなるぜ!」的な作り込みは期待せず、単純に古い曲オンパレードのライヴを実録したものを聴くつもりで手にすれば納得がいくかも。何だかんだ言ってファンなら買わないわけにはいきません。"Panic"のタッピング・ハモリソロはさすがに再現してくれてますのでご安心を。最後のシークレット・トラックは2nd収録のあの名曲!ああ今日はANTHRAXファンのためだけの文章になってしまった…。

  12月9日
本日の収穫、バナナ四ツ谷店にてKEITH JARRETT「STAIRCASE」(77年ピアノソロ)、ART ENSEMBLE OF CHICAGO「NICE GUYS」(79年)、MAKE UP「SAVE YOURSELF」(ブレンダン・キャンティpro、Kリリース99年作)。アマゾンの在宅物色も熱中するけどやっぱり実際の店舗を訪れてちょっとギリギリな奴を試聴しては買うってのが楽しいですなあ。と時々行くと思う。以前は今の5倍くらい買ってた気がするのにな〜。今そんなに買っても本当に聴けないですからね、やっぱ留年大学生の暇っぷりは最強なのか。ほんの数単位のために留年してる人とか週に授業が3〜4コマしかない真面目な3・4年生の皆様、音楽聴くなら今のうちですよ。

【只今のBGM:ART ENSEMBLE OF CHICAGO「NICE GUYS」】


今月は初っ端のRADIAN以来気難しいのが続いてますが今日も懲りずにAECです。79年、それまで比較的アングラなコミュニティで活動してきた彼らが突如大手ECMと契約して出してきたあっけらかんなアルバムがこれだそうで。ポスト・フリー時代のグループ表現模索の旅も一回りしたのか、ジャズと民族音楽・現代音楽・ロック/ポップスなどが当然のように同じ鉢ですられながら、聞こえてくるのはどこか大衆音楽としての軽さのある「楽しむべき音」(「鳴らすべき音」に非ず)。いかにも定番な現代音楽風フリーアンサンブルからヴォーカル入りの享楽的レゲエ崩れ裏ノリビートに雪崩れ込む1曲目"Ja"からしてそんな宣言のよう。普通のフリをしてる時もSLAPP HAPPYみたいな隠しアヴァン心がバリバリ見えつつなわけですが。他にも軽快ジャズロック風イントロかと思いきやすぐさま後期コルトレーンばりの荒天系激インプロに突入する"597-59"、あやしい雰囲気がショーター似のスロウパートからいきなり3倍速くらいにいきり立つ真っ当コンボジャズチューン"Dreaming Of The Master"など、あるかないかの秩序をチラ見させて聴き手の予測を弄ぶような刺激的かつ非・公開実験的フリーミュージックのしこたま円熟したやつが色々と堪能出来ます。彼らの何たるかを理解するのに最初の1枚としてこれが適当かどうか、他の音源を一切持ってないので判りませんけども、観念的なことはさておき楽しく聴くには恐らく間違いのない盤でしょう。ジャズと現代音楽がリンクするジャズサイドの付け根ギリギリを端的に観察出来るという意味でも多分貴重。

  12月8日
収穫はなし。昨日の日記はいくらネタがなかったとはいえ鬼気迫るダメ人間振りに自分で唖然とする。最近携帯にぶら下げている、ペットボトル入りコーヒー牛乳のオマケで手に入れたウシのミニフィギュアが、すこぶる良い出来なのです。

後ろのCDを気にするのが望ましい見方です。モー

【只今のBGM:DON BYRON「BUG MUSIC」】


トム・コラ、マーク・リボー、ビル・フリーゼル他、ジャズ〜エクスペリメンタル界を股に掛けてのコラボレーションをこなすクラリネット/バリトンサックス奏者ドン・バイロンがレイモンド・スコット・カルテット、ジョン・カービー楽団、エリントン楽団の曲を取り上げた96年のアルバム。ジョン・カービーとデューク・エリントンはスウィングジャズ時代からのビッグバンド・リーダー、レイモンド・カルテットはアニメ音楽やら何やらで人気を博して電子音響にも手を出していた変な人だとか。内ジャケを開くとぺたぺた後進する無数のペンギン達の写真ひとつひとつの脇に演奏者の名前とパートが記してあるという反則アートワークものです。特に奇抜なヒネリを加えるでもなく、素っ頓狂ノリノリビッグバンドジャズをそのまま大所帯で演奏する内容です。とにかく90年代式のグッド・プロダクションにて収められているので上から下まで猛烈にバランスが良く、全帯域で一斉にボファッ!と攻めてくるビッグバンドのダイナミズムが十二分に堪能出来るだけでも最高。そして古典独特の情緒に対して確信的な演奏をしていて、LOS LOBOS的な「こういうのあるね、イイよね」という対象化感が漂うあたり、現代人な我々が気軽にちょっと聴くのに何となく安心感があります。ミュート・トランペットやバスクラリネットの愛らしくも滑稽な響きがひたすら愉しいなあ〜。やってる人達もこれは相当楽しかったに違いない。ノリ的には恐らくスティーヴン・パーシーやらマーク・スローターやらが参加してみんな大真面目に原曲を再現していたAEROSMITHトリビュートみたいな感じっぽい気がします。ジョーイ・バロン、ウリ・ケインといったアヴァンジャズ畑のプレイヤーに混じってデイヴ・ギルモアの名前を見つけましたがこれはPINK FLOYDのあの人とは同名異人の模様。さておき、非常にわかりやすく浮かれ放題な好盤です。どちら様にもオススメ。

  12月7日
▼朝晩すっかり冷え込みまして、寝起きに布団から出たくないよねえとはこの時期の頻出句でございますが、それで済んだら警察要らない。布団から出るとか何、頭おかしいんじゃないの?てな勢いで断固拒否ですよ。3分おきに10回鳴るよう設定した携帯の目覚ましを鳴っては止め、鳴っては止め、結局30分間(断続的にですが)のアラームを全部聞き終えたのちやっとムクムク起き上がればいいじゃないですか。本日の収穫は貯まったポイントで1000円引きを行使しに行ったナディアパーク内ヤマギワソフトにてMINUTEMEN「POST-MERSH, VOL.2」、CORONER「GRIN」(スイススラッシュ名バンド93年作)。

【只今のBGM:MINUTEMEN「POST-MERSH, VOL.2」】


SSTの歴史の中でもひときわ異彩を放つ、激テクニカル+フェイク・ファンクな脱力ショートカットハードコア/ポストパンクを身上としていた名トリオの、Vol.1〜3まであるアルバム/シングル/EPコンピシリーズの2枚目。83年の2ndフル「BUZZ OR HOWL UNDER THE INFLUENCE OF HEAT」、85年のEP「PROJECT MERSH」が合体した計14曲入りです。前半の方は1stより突撃度が若干抑え目になりつつ、基本は変わらず刻みの細かいクルクル奇天烈パンク。掃いて捨てるように繰り出されては用済みになるリフの数々の何とイカスことか。31KNOTSとか初期EL GUAPOみたいなショボ(勿論褒め言葉!)・テクニカル系バンド群が創作イメージの根源に持っているのはズバリこの音なんじゃないでしょうか。後半は本腰入れてミクスチャーファンクに傾倒した2枚組大作の84年4th「DOUBLE NICKELS ON THE DIME」より後に制作されたとあって、その方向を引き継ぐ内容。これまた非常にクールであります。足場だけハードコアってことにしてあとは好き勝手にクロスオーヴァーしまくるこの自由度、ボーダー越えがもてはやされる近年においてもここまでのものを持ててるバンドは少ないのではないかと思える程。その後ポストハードコアとしてどんどん成熟していくアングラ・パンクの偉大な貢献者として尊敬されてもらいたいバンドです。

  12月6日
収穫はなしココイチの店内有線でゲイリー・ムーア&フィル・ライノットの"Out In The Fields"が聞こえてきて、すげーの流してんな、どんなチャンネルやねん…と思ってたらその次が"I Surrender"(RAINBOW!!!)で思わず燃え上がってしまった!!

【只今のBGM:FOREIGNER「HEAD GAMES」】


こんなのがもう四半世紀前のものになってしまう時代なのですね〜。79年3rd。時代柄を差し引いてもやっぱり他の同系統バンド(JOURNEY、SURVIVOR、BOSTON、etc.)よりシブめのロッキンな作風ですこの人達。むしろBAD COMPANYが目一杯親切になった感じか。ルー・グラムのソウルフルなハスキーハイトーンはこの頃から既に大物の貫禄です。この人がいなかったらこのバンドはもっと低評価に落ち着いていたに違いない。ロックする気のない場つなぎ風ロックンロールチューンの数々は毒にも薬にも…と思うとして、やっぱ恥ずかしシンセの冴える"I'll Get Even With You"や産業的ハードロック新時代の香り漂う"Seventeen"、ビッグな4ビートの熱烈タイトルトラック"Head Games"みたいなのこそ醍醐味ですね。ていうか聴き進むにつれ明らかになってきましたがどうやら中盤以降にポップな曲が偏ってるようです。それも嘘みたいに甘々なのじゃなくて適当に抑え目なのがいい。(嘘みたいに甘々みたいなの聴いても「サイコー!」て言いますけど。)有名なのは次作「4」ですがこれも秀逸。ジャケだけは何とも言えません。

  12月5日
収穫はなし。年末らしく部屋の掃除に着手して、端々に積み上がった魔窟を切り崩すつもりが部屋中魔窟になりかける始末。とにかくCDの袋が多いです。体積の割に面積ばっかり食うのですぐに下が見えなくなり、必要以上に散らかって見えるという。ビニールカバー大量に欲しい人いたら差し上げますよ?

【只今のBGM:MESHUGGAH「NOTHING」】


目下の最新作「I」を先月のこの欄で絶賛して以来、そういえば買って聴いてシックリ来なかったっきり早くも棚送りになっていたこの4thを今一度ちゃんと聴き返そうと思っていたんでした。ひときわキャッチーな曲が揃っていたEP「NONE」、続く必殺の金字塔「DESTROY ERASE IMPROVE」の路線こそが本筋だと期待してたため当初少々ガックシ来たこのアルバムも、BATTLESでイケるようになった今となっては究極の険悪重低マスロック・アルバムとして聴ける気がしてて、久々に手に取ったら大正解。生体リズムに対して不自然極まりないフック(つまずくような休符、立ち眩みのようなベンディング他)だらけの低音変則ポリリズムリフの反復を、実はスッキリ4拍子なドラム(といいつつ金物・タイコ・足でバラバラのリズムをとる)とコンダクター代わりの血管破砕ヴォーカルで広義のポップミュージック然とした整合性のもとにまとめ上げた、既存のヘヴィメタルとは完全に次元の異なる学者肌アグレッシヴ・ミニマルアート作品です。これは凄い、人間ここまで辿り着けるのかと思う程凄い。スラッシュメタル的な速度感や急展開のカタルシスはもう殆ど放棄されてしまっていて、過度にアーティスティックなものに興味がないメタルファンにとってはタルいでしょうけど、ここまでくるとむしろTHIS HEATやART ZOYDみたいなストイックな前衛・錬金術系バンドに近いニオイがします。偏屈な音楽は色々聴くけどメタルだけが欠落している、聴こうにも手の出しどころが判らない、という人は是非コレで対メタル感受性をゲットして下さい。くどいようですがBATTLESファンには特に強く推薦。

  12月4日
▼一日遅れでパルコ店バーゲンに行って、気になるものはあったけど試聴せずに買うのが危険そうだったから買わず、久々に行きたい気がしていたナディアパーク内ヤマギワソフトにハシゴしてみたら本日の収穫!新品でSEAM「KERNEL」(SUPERCHUNKのマックが在籍したT&Gバンド、1stと2ndの間の4曲入りEP!)、SILKWORM「MARCO SOLLINS SESSIONS」(MATADORからの4曲入りEP、FMで放送されたアコースティックライヴ音源のCD化)、CANDY MACHINE「CANDY MACHINE」(1st!)、BARKMARKET「GIMMICK」「LANDROOM」、THE GREGG ALLMAN BAND「PLAYIN' UP A STORM」(リマスター)、中古でMARVIN GAYE「LET'S GET IT ON」。ヤマギワやばいですよ名古屋市民の皆様、輸入盤新品がだいたい軒並み1200〜1600円のアマゾン価格な上、マイナーと判断されたと思しきものは20%OFFになってて(今日買った新品は全部20%OFF商品)、品揃えもMINUTEMENやらPOPOL VUHやらがやけに揃ってたり名前も知らないイタリアンロックのB級バンドがゴソゴソあったりと場末のリサイクルショップの様相。中古もこのマーヴィン・ゲイが輸入盤リマスターで状態も良くて735円ですから。いっぺん行ってみて下さい。

【本日のレビューその1:BARKMARKET「GIMMICK」】


90年代ヘヴィグルーヴものがex.HELMETのメンバーを含むBATTLESの活躍、エモグランジ台頭(ってほどでもないか?)に伴って若干再評価される方向にある今、それでもあんまり光を当てられてない名バンドがこのBARKMARKET。ギター/ヴォーカルのデイヴ・サーディはHELMET、RED HOT CHILI PEPPERS、SYSTEM OF THE DOWNなどを手掛けた今や超ビッグネームのプロデューサーになってます。いや〜探しました、アマゾン見ても全部在庫切れだし。まさか新品に格安で遭遇出来るとはヤマギワソフト様サマです。さてこれは93年の2nd、HELMETやALICE IN CHAINS、SOUNDGARDENなんかが絶好調の頃にリリースされたとあって、当時特有の濁ったグルーヴが渦巻く王道スタイルの範囲内です。知能犯寄りのグランジそのものなヘヴィギターと生々しくて妄想っぽいヴォーカルのアジテイションが先導する様はいかにも当時のど真ん中なんですが、しかしどうにも気になるこのユニークな倦怠と爆発の交錯っぷり、何かと思えば中〜後期ZEPに近い。直接的にリフや半端拍子トリックが似てるSOUNDGARDENとは違ってあくまで破壊的に這いずるグルーヴがです。加えてプロダクション面においては、90年代前半のキーワードだった「ダークなヘヴィネス」を93年にして早くも完全に手の平で転がす音響処理/実験が冴えに冴え、今聴いても全然キツさがないどころか腰を抜かす程カッコ良い。普通にリヴァーブ使いやマスタリングのEQバランスも2004年の新譜と称してリリースして何ら問題のない完璧なクオリティです。こりゃ凄いな〜。裏SOUNDGARDENないし裏MELVINSとして、あるいは後期JAWBOXや昔のFIRESIDEあたりと絡めて、後々の代まで語り継がれて頂きたい。中古で見かけたらどのアルバムも即買い!

【本日のレビューその2:CANDY MACHINE「CANDY MACHINE」】


ついでにもう一発。DCishなスタイルで割と早い時期から活動してた彼らの93年1st。なかなか出来の良い2ndもこの欄で以前紹介してました。ポストコアとグランジが微妙に未分化でクロスオーヴァーしてた時代の、不親切なダルさと酩酊感のあるDCサウンドになってます。というか殆ど同時期のFUGAZIと変わんないですね。ただああいうポリティカルな物腰の強さは漂って来なくて、代わりにポストパンクが出自であることを明快に示す人を食ったフニャ感があります。判りやすくグッと燃えるような場面にはいささか乏しいため現在のこの知名度になってることと思いますが、LUNGFISHみたいな孤高の貫禄シブ系の仲間だと思って聴けばシックリ来るはず。少なくともこの1stに関しては、そこまで絶対マストってことはない気がするので、脱ストレイトアヘッド・ハードコアしたてのDCシーンの裾野を見てみたい人はお試し下さい。ヤギか何かの顔のどアップ・ジャケがなんか思わせ振りでいいですね。

  12月3日
収穫はなし。近場だけど敢えて行くことはないような地域にあるアピタみたいな所を館内余さず丹念に廻ると結構なレジャーになりますね。郊外にある店舗だと馬鹿デカかったりして驚く。

【只今のBGM:TRENCHMOUTH「MORE MOTION」】


THE ETERNALSの前身バンドのアンソロジー盤。90〜97年の音源がどっさり18曲も入ってます。リミックスがされているのか、当時からよっぽど注意深い音作りをしてたのか、最初期のトラックを聴いても全然古くないプロダクションになってるのが驚き。しかも内容も後期MINUTEMENその他SSTを中心に80年代中盤以降に存在したファンク/レゲエな一派とFUGAZIを相当ナウい感覚でブレンドしたような、若手の新人が敢えて今やったとしても何の文句も言われないどころか「スゲーの出たよ?」と噂になるようなオリジナル&高完成度のハイパーカッコイイもの!とにかくリズムが並のロックじゃやりそうにないようなバネの効いた暴れ方をして壮絶。レゲエ/ダブを意識したリズミックなすきっ歯ベースとジャンクHCど真ん中な混沌ギターの絡みの間に沸いたエネルギーを、変則パターン自由自在のドラムがボッボッと外に放出し、時にヴォーカリストが片手間でやるパーカッション激打が混じってきてよりプリミティヴなコーフンをもたらすという、SEVENS(THE SORTSの前身)が全力かつ原曲無視でレッチリトリビュートにでも挑んだようなユニークなスタイルです。携わったエンジニアがまたブラッド・ウッド(サム・プレコップがいたSHRIMP BOATのメンバー、手掛けたアーティストはSEAM、SUNNY DAY REAL ESTATE〜THE FIRE THEFT、THE FOR CARNATIONなど)にケイシー・ライスと大物づくし。私もTHE ETERNALSの前身としてしか名前を耳にしたことがなかったですが、登場年代的に言ってもDRIVE LIKE JEHUやSHUDDER TO THINKらへんと全然同等の評価を得て然るべき強大な存在だと思います。グレイト。

  12月1−2日
▼両日とも収穫はなし。冬は28時とかまで起きてても空が白まないから、苛まれるべき凹みに苛まれなくてイカン気がします。何やってたかって宅録です。モリゾー好きですか?私は割と好きです。

【只今のBGM:RADIAN「TG11」】


MEGO傘下RHIZリリースのウィーン発音響インプロトリオ1st。やんわりオーガナイズされた語数少なめ電子ノイズ各種と、ジャズマナーで大人しく鳴らされるドラム(インテンポ/フリーともに有)、ノイズと殆ど区別がつかないベースが絡む、芸大生ウケが良さそうなエクスペリメンタル・アンサンブルです。必要以上の陶酔はないものの、フレンドリーとかファニーとかいう感覚からはかけ離れた、北極基地みたいにシリアスかつ硬派な世界。調性すらほぼ全編存在しません。PAN AMERICANを更に物音だけにしたらこんなんでしょうか。普通にリズムを刻むドラムと勝手にガーガー鳴ってるノイズとが、これちゃんと合ってんの、インタープレイになってんの?と疑問に思うことも多々ありますが、きっと生演奏の場においてはテンションの上げ下げのための意義ある相乗として機能するんだろうなと、現場を想像したら納得。全員前に出過ぎないでいるのもまた駆け引きのうちか。こういうバンドはキャリアとともにやり方がすぐ変わるのでTHRILL JOCKEYからの近作も聴いてみたいところ。

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