物色日記−2005年10月

※頻出語句解説はこちら
  10月31日
▼いやーMARITIME&FINE LINES行ってきましたよ、どっちも最高でした。何やら前座の一番手がへろへろだったらしいですけど…。まあ我々のことなんですが。当事者の達成感云々はこの際黙っとくとして、出来ばえのほどは皆さんの思ったところにお任せします。ともかく手元足元の問題に腐心して慎重になるよりも客席向けの太さ重視で頑張ったつもりなので、そういう馬力感(が漲るであろう余白)みたいなのが多少なりとも伝わったのであればこれ幸いでございます。やり遂げた後は激しく凹みながらも、気分を切り替えて客としてバッチリ楽しんできたのであとはその模様を。

▼2番手FINE LINESはHUSKING BEEとSHORT CIRCUITの元メンバーによる新ユニット。サポートを加えた4人体制での登場でした。メロディックパンクのメロ方向が高じていい具合に力の抜けたエモポップになったような、キャリア相応歳相応かつ18 til I dieな楽曲と演奏。何々みたいにしようなんていう雰囲気はもはや皆無の実直で確かな感じがとても快く、メインアクトのMARITIMEともベストマッチ。普段日本のこういうバンドは殆ど聴くことがない私でもうわーいいなあと無心に感動できるステージでした。終盤でもろHUSKING BEEスタイルな曲もやっていて、過去の自身とそれをサポートしていた人々に愛と敬意を払っているようで何だかグッと来てしまった。こりゃーまた見たいバンドですなあ。この時点で既に豪華バイキングで昼食をとったような幸福度に。

▼しかしその後は絢爛ディナーのMARITIME。OWENを引き連れての前回の来日では、同じような快活系ギターポップチューンばっかだったけどパフォーマンスは楽しかったな〜という程度の印象だったのですが、今回は新作の出来が最高とあって大いに期待を高めてました。トリオだと思っていたらシカゴ在住の新メンバー(今回のアルバムでも既に貢献しているそう)を加えた4人で登場。ばっちり予習してあった新作からの曲を3〜4曲立て続けてのスタート、いきなり最高。1曲目の出だしのみ少し音量のバランスが整ってなかったですが、上手く収まって二人のギタリストによる多重アルペジオの均衡がビタッと完成した瞬間「あーこれは夢だ」と思うほどの、なんと言うか、圧倒的なものを見た感じに。余裕を感じさせつつ端々まで注意を払って的確に叩いていたFINE LINESのドラマー氏もウマいな〜これでこそだよなあと思って見てたけど、対照的にMARITIMEのダンはフル10オーバーでアタックが歪むまで激打するパワードラムスタイル。これがロックのネイティヴのやり方でっせピースピース!という勢いと説得力に溢れていて、感心というより魅了されっぱなし。フロントの3人も音源でのシッポリしたインドア感はどっかに置いてきてロックショウ・マナーの熱さでガツガツ迫る。いいよいいよ。

▼曲間ではメンバー一同客席に積極的に絡む(しかもわかりやすい)ような喋りをし、日本語を使いたくてしょうがないベースのエリック(ex.THE DISMEMBERMENT PLAN!)が合間にジョークをふっかけまくるという、何とも和気藹々とした時間が流れる。面白かったことを全部紹介したいところですが思い出せる部分だけ書きますと、新加入の専任ギター(と時々シンセ)氏が少し早口でジョークらしきことを喋ってみるも客がついてきてないのを見て「次の曲やれって?」と諦めかけたところで、間髪入れずエリックが「いやいやいやトライし続けよう。それでいつかは(会心のガッツポーズとともに)ブレイクスルーだ」と執拗に迫ったり、ドラムセットで下半身が見えない(当たり前)ダンが、手のひらを宙で水平にフヨフヨ這わせながらメンバーに向かって突然「おい!見ろ俺、浮いてるよ〜」と口走ってみたり、他にも色々。こうやって書いてもあんまり伝わってないっすね…。ともかくそうやって演奏以外の時間でもテンションを保ってくれたため、彼らの持ち時間中ずっとアガりっぱなしの多幸感に満ちてました。あんなのは初めてですな〜。レパートリーの半分近くを支配するターツターター、ターツターター、というリズムの曲が後半にあまりに固まって演奏されていた時はさすがにややダレ気味だったものの、私は「そうかこれはKパンクである」と自己暗示をかけてBEAT HAPPENINGやHEAVENLYのつもりで乗り切りました。本編終了でメンバーが去っていくときは大歓声と拍手、アンコールもその流れで自然発生。タバコ一本も吸わない迅速さで帰ってきてくれたのには笑った。更なる要求で2度目のアンコールまで行われる始末で、今まで見てきた名古屋での外タレライブの中でも一番くらいに盛り上がったと思われるこの晩のショウは完全終了。

▼後悔はTシャツを買い忘れたことです。ああ無念!あとデジカメ不携帯で今回は写真なしです、すんません。そういや我々が会場で無料配布していたCDをエリックに「バンドの新曲2曲と、あとサイドプロジェクトを詰め合わせたCDなんでもらって下さい。半分くらいデスメタルですけど」といって渡してみたところ、「デスメタルかー、DARKEST HOURやAT THE GATESやIN FLAMESは知ってる?グラインドコアは?ASSUCKとか」とノッて来られました。元ディスメンはASSUCK聴くのか〜…。バンドやるようなアメリカ人はやっぱ何かしらの形でそういう音楽に触れてるもんなんですかね。これからもメタルでコミュニケートしていきたいと思います、間違ってないウンウン。FINE LINES手伝ってた人もDIOのTシャツ着てらっしゃったし。力不足ながらも晴れ舞台に立たせてもらって(stiff slack新川さんに多大な感謝!!)沢山の人と繋がれて、いやはやいい日だったな〜。実に。

【只今のBGM:ASSUCK「ANTICAPITAL/BLINDSPOT/+3」】


イエス大名作!MARITIMEエリックに捧ぐ。フロリダにある聖地MORRISOUNDにてスコット・バーンズ録音の91年作、92年作と90年録音の音源3曲のコンパイル盤です。どこまで行っても容赦なき激疾走グラインドチューンが立て込む怒涛のトータル27曲。NAPALM DEATHもそろそろまとまりを見せ始めたこの頃、ダン・リルカがBRUTAL TRUTHで狼煙を上げたりとグラインドにとっては熱い時期です。そんな中ASSUCKはドロッとしないカドばったスラッシーな推進感の強化に専念したスタイルをとり、今のBENUMBみたいなRELAPSE直球過激派の礎になるようなものを一発で完成させてます。うおおこの闘争的なブラストが最高。グラインドコア永遠のイデアTERRORIZERあたりよりはほんの若干だらしない感じがあるものの、力任せの荒削りな勢いは充分過ぎる破壊力をもつ。基本的にどの曲もそう変わるもんじゃないですが中盤で挿入される90年の3曲が、荒々しいプロダクションと強引なフックで特に激烈。続く後半収録の92年録音「BLINDSPOT」の7曲ではちょっと上手くなってるのがまたアツイ。これはもう普通に小学校で習うくらいにした方がいい不朽の金字塔ですよ。中古で見ると何故か安いことが多い(金かけてなさそうなアートワークゆえか?)ので発見したら即ゲットで。

  10月27−30日
▼更新滞り続けてますがこれだけは言っておこう。あのー、ライブやります。

MARITIME JAPAN TOUR 2005 @ NAGOYA
w/ FINE LINES(ex-HUSKING BEE), DOI MOI!!!

10/31(mon)@名古屋栄TIGHT ROPE
OPEN/ 18:30 START/ 19:00
ADV/ 2,800Yen DOOR/ 3,300Yen

MARITIMEは日本でも人気があったワシントンDCの変則ポストコアバンドTHE DISMEMBERMENT PLAN、JOAN OF ARCとともにシカゴエモの祖CAP'N JAZZからの枝分かれ組であるPROMISE RINGなどの元メンバーからなるトリオバンド。新作を借りて聴いてますが(まだ国内盤しか出てないので外盤派の私は買えんのです)感想は下に。良過ぎです。ということで来ていただくしかない。

▼CDは金曜にP-CAN FUDGEのバーゲンで買っただけです。28日の収穫、全て315円でPOCO「INDIAN SUMMER」「LEGEND」「UNDER THE GUN」「BLUE AND GRAY」「COWBOYS & ENGLISHMEN」、STEELY DAN「TWO AGAINST NATURE」。驚愕のPOCO一括放出にまんまと掛かってしまった。持ってるから買わなかったけどBUILT TO SPILLまとめ売りもあったな何故か。

【只今のBGM:MARITIME「WE, THE VEHICLES」】


今年出たばかりの2ndフルです。前作は末期PROMISE RINGの方向性を受け継いだUK寄りのスタイルのハツラツギターポップまっしぐらで、インディロックリスナーにとっては好みが分かれるとこだなあと思ってたんですが、この2ndはぐぐっと翳りが増すとともにTHE DISMEMBERMENT PLANで見られたような洒落た音響遊びも大幅に導入されて(気が効いてるなりに詰め込みすぎない匙加減がまたいい)、垢抜けとウジウジが絶妙の均衡点をとっております。個人的にDEATH CAB FOR CUTIEやPEDRO THE LIONにはもう夢を見られないと思ってたので、意外なとこから救済の手が現れてビックリ。文系男子はこういうの聴いてシケシケすりゃいいのですよ、インドアシケエモポップの新たな決定盤来たりです。この手のノーマルな歌もので久々にいいの聴いたな〜というほどの手応え。今回の来日は名古屋以外もこれから廻るはずですから、まだ見れる人は是非とも足を運んで下さい。

  10月25−26日
▼25日は何も買わず26日の収穫はバナナ四ツ谷店でTOMMY GUERRERO「SOUL FOOD TAQUERIA」、DANIEL GIVENS「AGE」。イカカレーがやっぱり秀逸なのでその良さを詳細に書き記そうかと思ったけどやめときました。

【本日のBGMその1:TOMMY GUERRERO「SOUL FOOD TAQUERIA」】


抜群のいい趣味アイテム、2002年MO'WAXリリース。音響じみたインプロ作品なんかもあったりする人ですがこのアルバムはえらくシンプルで親切。ポストロック的な音響感覚やデジタルエディットを多分にフィーチャーしつつ、土台はヒップホップともファンクともつかぬラテンのダウンタウンのニオイプンプンの人肌オシャレッティ〜・オチなしジャムが手短にズラズラと17トラック。歌ものや1分前後の小曲がところどころに配されて集中力が途切れない構成になってて、かつ神経を使わないレイドバックっぷりは全編一貫。覇気を取り去ってアルコールを与えたTHE ETERNALSか、スコット・ヘレンがメンバーになってしまったTHE METERSか。ま普通にMONEY MARKにも近いですけど。こういうのみんな好きなんだろうなあって感じです。とりあえずダサいと言われる要素が一つも見当たらない。なので私は気軽にオッいいねと思いながらも芯からなびくことはするまいと身構えてしまいますが、そういうある種潔癖な完璧さすら感じる出来だと思うのは私がメタル出身だからでしょうかね。

【本日のBGMその2:DANIEL GIVENS「AGE」】


闘う前衛ロック/エレクトロニックミュージックレーベルAESTHETICS(THE SORTS、33.3、L'ALTRAなどをリリース)から、DJもやっているというシカゴのマルチアーティスト(物書きや写真家もやってるそう)のデビューアルバム。アブストラクト〜ポエトリーリーディング、フリージャズ、ダブ、現代音楽、etc...をドバドバひとまとめに注ぎ込んで撹拌したような謎の半生エレクトロ前衛ビーツをやってます。エクスペリメンタルというよりひたすら軟体、フリーフォーム。ネタ元は雑多なもののエディット感にポストロック臭が強く漂うのはシカゴの土地柄ゆえか。ミックスもケイシー・ライスだし。どうにも宅録っぽいというか習作傾向が濃いというところで聴ける/聴けない判定ラインが人それぞれ分かれるところでしょうが、音場を上から支配する一定のセンスというか意思を常に感じさせるという点でこの「節操なき緊張感の垂れ流し」は結構面白い試みかと思います。XIU XIUイルリメあたりと仲良くなれそう。CHICAGO UNDERGROUND何々やTRICOLORやISOTOPE217他に大忙しのジェフ・パーカー、TOWN AND COUNTRYのジョシュ・エイブラムスらも参加。

  10月24日

▼前の日に半日以上かけてミックスした音源が翌日聴いたら唖然とするほど最悪だった上に「何、最初のバスドラのどこそこヘルツを広めにアゲたらいいんちゃう〜?」とドンピシャの啓示がいきなり下りて数時間のうちに全部やり直せてしまった時の気持ちを、やるせないと呼ぶべきか、何と呼ぶべきか。本日の収穫、名駅69にてゴダイゴ「カトマンドゥー」「ONE DIMENSION MAN」、BARBEE BOYS「EENEY MEENEY BARBEE MOE」、小田和正「BETWEEN THE WORD & THE HEART」(ソロ1作目!!)、久保田早紀「サウダーデ」("異邦人"収録)。今日は冴えていた。

【只今のBGM:ゴダイゴ「カトマンドゥー」】


80年の名盤!モンキーマジックやビューティフルネームが記憶の片隅にあるだけだわという人、その記憶をよーく思い出して脳内再生してみて下さい。邦楽歌謡らしからぬ派手なシンセがあったり、流暢な英語による牧歌的なコーラスワークがあったりしませんか?左様、このゴダイゴこそ極東のカンタベリー、日本が世界に誇るプログレポップスバンドなのであーります。もっとフォーク色の濃い時期もありますがこのアルバムは素っ頓狂シンセプログレテイストがひたすら炸裂。CARAVAN、CAMEL、GILGAMESH、STACKRIDGE、GENESIS、少しトッド・ラングレンなんかも入ってそりゃもう夢心地。時代柄ニューウェイブ的なリズム感覚も取り入れ、YESの「DRAMA」やリチャード・シンクレアが参加していた時期のCARAVANにかなり近い佇まい…かと思いきや、変なエセ・エスニズムや日本的哀愁までもブチ込まれて大変な事に。そのくせ曲が粒揃いで全編まったくダレません。そしてタケカワユキヒデがいい声。ジェントルで軽やかなトーンと安心して聞ける英語、しかもオール英語。いやぁ〜素晴らしい、本格派プログレッシャーは勿論必聴、それ以外の人も気が触れたリッキー・リー・ジョーンズとでも思って聴いてみて下さい。

  10月22−23日
▼隔日気味になっております、収穫はなし。若干忙しいっす。

【本日のレビューその1:CHEER-ACCIDENT「SALAD DAYS」】


過去にも登場済みのSKIN GRAFTバンドの2000年作。ジャンク〜ポストコアとプログレとエクストリーム・メタルと現代音楽がクロスするSKIN GRAFT所属バンドの中でもひときわプログレな人達です。1曲目からやってくれました、ディシプリン・クリムゾンと極初期ドンキャバの合体形にフランシス・ダナリー似のヴォーカルが乗ったような長尺不協マスロック!しかしこのバンドの変拍子や展開はどこか情緒的というか内省的というか、「難しいフレーズをこなしている」より「複雑な表現をしている」という印象が先に立つのが良いところ。その後ドローンだったりコラージュだったりする小曲3曲を挟んでラストがまた19分という、実質2曲の大曲をメインに据えた構成ですな。そのラストはピーガブ時代のGENESISがトチ狂ってグリーブス/ブレグヴァド「KEW RHONE」とMATCHING MOLEをいっぺんに真似てしまったようなえらいスケールの激プログレチューン。ああこれはアート以外の何者でもない。興味ある人は聴いてみて下さい、私はたいそう好きです。

【本日のレビューその2:THE FLYING LUTTENBACHERS「...TRUTH IS A FUCKING LIE...」】


SKIN GRAFT3連発でいきます。2つめはXBXRXなどをやっているウィーゼル・ウォルターの本命バンドTHE FLYING LUTTENBACHERSの99年作。のっけからMAGMAの"De Futura"のカヴァーを、このアルバムに収録のものとはアレンジを変えて何故か再度やってます。こっちの方がブチ壊れててカヴァーらしいかも。まーしかしとにかくこの人はド変態ですね。2曲目以降は、重ためにコンポーズされた現代音楽とフリージャズ的インプロとジャンクハードコアとブラックメタルをミキサーにブチ込んで回した途中のような、何とも言えぬ逸脱音楽を延々と。さながら妄想の排泄物とでもいうべきか。このアルバムはさすがに変な音楽好きな人でも好き嫌い分かれそうですが、ともあれテンションは常に最高潮なので聴きにくいということはないと思います。

【本日のレビューその3:COLOSSAMITE「ALL LINGO'S CLAMOR」】


最後は今月半ばに取り上げたばっかりのこのバンドを。DAZZLING KILLMENの遺伝子を受け継ぐ崩壊系極悪世紀末ジャンクですな。UNSANE+TODAY IS THE DAYみたいなとこもあって抜群にツカミが良いです。インストパートの凄いところは「DIMENSION HATROSS」〜「NOTHINGFACE」期VOIVODそのまんま、影響受けたと言わんはずがない。押すところは相当猛烈に押してくるのでRELAPSEやIPECACのCDよく買いますなんて人にはうってつけ。変に生ぬるい新人とかより効くと思います。ギターの片割れのジョンはDEERHOOFをやってる人でもあるんですが、いつものズッコケインテリ不協アルペジオの嵐でDEERHOOFと殆ど変わらないのが面白いなあ。そっちのファンの人もこれ聴いてみたらいいですよ。HELLAやそんなようなバンドが好きな人は言うに及ばず必携。

  10月20−21日
▼睡眠重視で更新がよく滞ってます、お陰でなのか何でなのか、アクセス数も一時より減り気味。もっと判りやすいエモとかのCDばっかレビューせんと駄目っすかね〜。そういうの好きな人がSKIN GRAFTからTZADIK、ReRへ…とウロウロとさまよってくれたり、CONVERGEやTODAY IS THE DAYならイケるよって人がデス/ブラックメタルにも興味をも持ってくれたりするきっかけになれば面白いというか、「最近ちょっと違うの聴いてみたいんだけどどこを当たってよいやら判らない」みたいな思いを漠然と持っている皆様をすべからくメタルかプログレに誘導したいわけなんですけど、そうは問屋がおろさないようで。むむむ。

20日の収穫は大学の先輩と個人売買でBIOTA「TUMBLE」(音響肌USレコメン89年作)、アマゾンから届いたCOLOSSAMITE「ALL LINGO'S CLAMOR」、21日の収穫はバナナ大須店にてTHE POSIES「SUCCESS」、NEMBRIONIC「PSYCHO ONE HUNDRED」(DISPLEASED、オランダ産激重肉食グラインド名バンド1st!)、JOHN TEJADA「LOGIC MEMORY CENTER」、カイマンから届いたBUDDY RICH「CHANNEL ONE SUITE」(85年エミー賞のライヴDVD)。うむ充実。

【本日のレビューその1:BIOTA「TUMBLE」】


名門ReR/CUNEIFORMといえど89年アメリカとなると警戒します。テープコラージュのみの完全ミュージック・コンクレート作品もありますし。しかしこのアルバム、裏のクレジットを見ると、アコギだバンジョーだオルガンだと賑やかそうな模様。内容はそこからの期待通りの、レコメン流前衛アメリカーナ音響でした。ビル・フリーゼルとORSOとMATERIALの中間のような、和むに和めずレッドゾーンに振り切れもせず、アート然として媚びのない捻れっぷり。しかしアンサンブル構築はなかなかコンセンサスの行き届いたものになっていて、充分不穏ではあるが散らかった印象は薄いです。プロダクションがどうにも貧弱ですが、もし今っぽく録られていたら「JOAN OF ARC人脈でまた一つプロジェクト出来ました、エクスペリメンタルなインストものになりました」といって聴かされても気付かない可能性大。若干敷居高いなりにカッコイイと思います。THE EXの延長のつもりでギリギリいけるかもですよ。

【本日のレビューその2:NEMBRIONIC「PSYCHO ONE HUNDRED」】


うおおこのバンドは燃えます大好きです。筋肉隆々の重量級激マッチョ・グラインディングデス!!高速ブラストに良いも悪いもあるんかいと言われそうですが、彼らは明らかにテンション高いのです。さすがハイネケンの国オランダ。BRUTAL TRUTHのようなサイコな香りはなく、NAPALM DEATH〜TERRORIZERのような目つきの鋭さとも違い、ビールと肉でどれだけでも爆走する感じの強引な足取りが魅力。デスメタルっていうよりはもはやガレージロッキンな馬力の持ち主ですね。ジャキジャキしたリズムギターはスコット・イアン(ANTHRAX)からの影響が大きそう。総じて暴力の質が至極享楽的なので「うむ、原材料はPOSSESSEDとENTOMBEDと…MORBID ANGELは入ってないね」みたいなマニアックな噛み分け無用で楽しめます。ズボズボドードーと流れる下水道(よく見ると無数の死者が流されている)のイラストのジャケ通りの図太い水圧感。

  10月18−19日
▼18日は鶴舞K.D.JAPONにてLUNGFISH観てきました。前回の来日では観た人全員口を揃えて凄かったと言うので、それならばと今回は逃さず。開演予定時刻の会場は悲惨なまでにガラガラで、狭いハポンにイスとテーブルが出る始末。結構押して始まった1番手・スティーブジャクソンは、カポを駆使する弾き語りベースとドラム、クラリネットかソプラノサックスどっちか(見てわからんかったです…)のトリオで、JAGJAGUWARとECMとURCの狭間に位置するやんわり緊迫する歌もの。TEASIとも共鳴するような雰囲気がありました。こういうのがこれからの名古屋サウンドか!?観た回数がそろそろ片手の指では足りなくなっている2番手THE ACT WE ACTはいつもどおりの突沸系激崩壊ファストコア。合ってるんだか合ってないんだかもはや判らんくらいカオティックというかカタストロフィックなフレーズをやっぱり確実に合わせて、ドタバタスタ、ハイありがとうございました。とトントン潔く進むステージングが毎度痛快ですなー。LUNGFISHのメンバーも途中で「アァォ!」と叫びをあげるほど。3番手GUIROはガットギター、アップライトベース、ドラムの三人。ラウンジなポストロックでボッサな歌ものポップス即ちMICE PARADE(最近の)+スガシカオ+STEELY DAN、という印象。とりあえず全員激ウマなのでそれだけでも腹膨れます。ASANAあたりが好きな人なら気に入るはず。

▼雰囲気の異なる3組だったせいかここまでの流れで冗長さは殆ど感じず、いい具合にテンションが上がってきたところでLUNGFISH登場…の前に久々にDOTLINECIRCLEカトマン氏による煽り。拍手は起きるが人口が相変わらず少なめ。現れたメンバー一同が全員予想を上回る中年っぷりで驚く。ヴォーカル氏はウィル・オールダム寄りの菅原文太ってな風体をした大柄の人で白髪交じりのアゴヒゲが圧巻。前作のタイトルトラック"Love Is Love"で演奏がスタートするも、PAが変でヴォーカルが全く聞こえず、しばらく半ばリハーサルのような状態が続く。何とか仕切り直して徐々に本調子に。楽器の3人のパフォーマンスは実に淡々としたもので、定位置上で体を揺らす以外の動きやアピールは殆どなし。しかしそれでこそ紡がれるミニマルグルーヴに納得。知らない方のために音楽性を説明しておきますと、若干フォークロッキンな香りもあるリフを1曲に1つだけ割り当ててそれをNEU!ばりに延々繰り返す、ストーンズを遅回しにしてみたらKILLING JOKEだった、みたいな雰囲気だと思ってるんですが、淀みなく完璧にループを守るギターが時間軸を作るのに対して、微妙にきわどいラインをなだらかに行き来するベースが景色となり、両者(とドラム、ドラムは言うなれば気温といった感じ)が組み合う中でヴォーカル氏が時に叫び、時に踊り(54-71のビンゴ氏に似る)、バンドの世界観とオーディエンスを繋ぐインターフェイスとして立つ、何とも清らかでスピリチュアルで確信に満ちた音楽であったことです。全曲ほとんど同じといえば同じであるので一定の覚悟は必要ですが、慣れてくるとむしろ5分少々ごとに曲が終わってまた始まるのがもどかしく感じるくらいの良い心地に。何も詰め込まず、振動だけを堪能すればそれが贅沢になるという、上品な高級酒の如きバンドですな。CDより断然ライブで楽しむべき。

↑ショーン・メドウズ、ex.JUNE OF 44!

↑シンガーのダニエル氏 止まったり転がったり色々します

▼昨日・今日ともCDは買わず収穫なし。なんかライヴリポートのある日に「収穫なし」って書くのがいつも気が引けるんですが、そこは物色日記でありますゆえ。

【只今のBGM:TRICOLOR「MIRTH + FECKLESS」】


ISOTOPE217やらCHICAGO UNDERGROUND TRIO/QUARTETやらの界隈で大活躍のギタリスト、ジェフ・パーカーがいるトリオの99年作。BRIDE OF NONOからケン・ヴァンダーマークのカルテットまで出しているATAVISTICから。ジャズの古典的な語法を下地にしつつ、具材はダブだったりファンクだったりフリーだったりとなかなかカラフル、しかしそれをモクモクと囁き気味のトーンで統一して、目に痛くせずシックにまとめてるのが小粋です。音響に耽溺するでもパフォーマー冥利に埋没するでもなく、ポストロック寄り/ジャズ寄りどっちのリスナーにも手が出しやすい。曲は1分少々から長くても6分まで、手短にパタパタッと畳み掛けてくれるネタ帳的な身軽さも魅力です。グレ過ぎてないトンガリジャズが好きな人は勿論、一連のTORTOISE外郭系プロジェクトの方は面白いけどどうも潔癖すぎて信用出来ん、という御仁も是非。

  10月17日
▼睡眠不足や疲れで一時的に握力が低下したりすることありますか?ホーキング博士やジェイソン・ベッカーと同じ病気だったら困るな〜。本日の収穫、また行ってしまったヤマギワソフト・ナディアパーク店の100円コーナーにてMYTHOS「MYTHOS」、THUNDER「THE THRILL OF IT ALL」、CAPSICUM RED/BLACK SUNDAY FLOWERS/EWLL'S FARGO/OSAGE TRIBE「TARZAN」(72年ARTIS、フランコ・バッティアートやex.I POOHの人などが参加する計4バンドによる謎のレア音源コンピ)、TREE「PLANT A TREE OR DIE」(95年NOISE、BIOHAZARD〜M.O.D.ラインのB級ミクスチャーメタル)、VAUXDVIHL「TO DIMENSION LOGIC」(メルボルン発、FATES WARNING〜後期ATHEIST似のダーク&シリアスなプログレメタル)。今日も胡散臭いのいっぱい買って500円、満足。早速TREEとかは売りに出ますけど。

【只今のBGM:MYTHOS「MYTHOS」】


インチキくさいの見つけてきました。一見して底が浅そうと判るアートワークとバンド名ながら、オリジナルリリースがGURU GURUと同じOHRでしかもSPALAXのデジパックリイシューが100円とくれば、レンタルのつもりで買ってやろうじゃないのってなもんです。1曲目、クラシカルなフルートとあやしいパーカッションが同居する叙情インストサイケフォーク調。いいじゃんいいじゃん。2曲目、今度は中東かぶれのアコギと合唱が入ってTHIRD EAR BAND+COMUS+POPOL VUHの趣き。憧れと妄想だけでやってる感じがひしひしと。以降どんどんサイケロッキン度を増し、結局ASH RA TEMPELやAMON DUUL IIのようになってしまうかと思いきや、変に悠然としたロマンティックな泣きが絶えず後ろにあって、SEBASTIAN HARDIEのジャーマンロック版なのか!?みたいなマニアックな感想に辿り着いて終了。これ、ジャケさえこんな子供騙しっぽいのじゃなくてもっとマシなやつだったら、もう少し地位ある裏名盤として語り継がれていたかも知れないのに。とりあえず70年代初頭のドイツらしいグネグネ・トリッピンなヴァイブを堪能できつつもなかなか聴き易い、総じて乙な盤であったかと思います。以上テクニカルターム満載でマニア諸氏のためにお送り致しました。すんません。

  10月16日
収穫はなし。日がな一日録音とミキシングに没頭、「起きてから寝るまで一歩も家の外に出ない」をやってしまった。

【只今のBGM:MAKE BELIEVE「SHOCK OF BEING」】


世界で今一番イカレてるクリエイターの一人に違いない男ティム・キンセラの、いつの間にか本丸っぽくなってるバンドの待望の1stフル。外盤出たので買いました(何もSPARQMUSICが嫌というわけじゃありません、強硬な外盤派なので…)。録音は御大アルビニ師。パーソネルはJOAN OF ARCにも参加していたネイト・キンセラ、話題のレーベルRECORD LABELを率いるボビー・バーグ、CAP'N JAZZ時代からティムと活動を共にしGHOST & VODKAもやっていたサム・ズーリックとの計4名。復活後のJOAN OF ARC路線をもうちょっとバンド然とした雰囲気に絞ったような、激字余り変則拍子+奇天烈ミニマル&ポリリズムアルペジオ+酔拳ヴォーカル炸裂しきりの真性ド変態ロックになってます。FRIEND/ENEMYやOWLSでも聴かれなかったような凄いハッスルっぷりに唖然。無理に例えるならKISS、ジョン・フェイヒイ、ランディ・ニューマン、SLAPP HAPPY(HENRY COWと合体時)、MINUTEMENなどの乱切りを目鼻に見立てて作ったエキセントリックな福笑いか。何にも似てないのに常に最新状態を更新し続ける彼らの想像性はホントどうなってんでしょうね…。やすやすと何か定まった方法論を公開してしまわないので未だフォロワー不在、孤高ですな。ZAZEN BOYSやPIT ER PATにビビッと来てる人からカンタベリー屈折系およびサムラあたりの素っ頓狂プログレ好き、ATHEISTやCYNIC関連をひたすら追っかける変拍子メタルマニアまでみんな大満足の衝撃作でしょう。

  10月15日
収穫はなしチャン・ドンゴン劇団ひとりが似てますなあ。

【本日のレビューその1:FURBOWL「THE AUTUMN YEARS」】


大昔ビクターから国内盤も出たスウェーデンのマイナーバンドの94年作。BURRN!の白黒ページに出ていた広告を「絶対買わんだろうなこれ」などと思いながら見た記憶がありますが、今やARCH ENEMYの初代シンガーがいたバンドとして語られることになろうとは。新品100円だったので購入。これがまた10年経ってよく熟してくれました、ENTOMBED〜DISMEMBERラインの豪腕スウェディッシュ・ロックン・デスのかなり派手な部類!KULA SHAKERミーツDEAD KENNEDYSとでも例えたらよいのか、とにかく何とも微妙な、正にフェティッシュなマニアのツボ狙い撃ちのハミ出し加減がたまらんです。声はドガーッとガナる猛犬型でなかなか腕っぷしが強く、ロックンロールテイストとデスメタリックな腐敗臭を上手く配合したリフもかなりハイセンス。しかも時々メロデス風の叙情ロマンまで匂わせる曲者ときた。CATHEDRALのような器用さはないですが無問題、XYSMAにも迫る逸材ですねこれは。良い意味でバタついてるとかの域を超えて普通にちょっとヘタなのも愛らしいじゃありませんか。意味不明の冴えないジャケは気にしないとして、安かったら買えばいいです。今月取り上げたCOMECONといいこの頃の北欧デス変異種の群れは宝の山っすな。

【本日のレビューその2:KILLERS「MENACE TO SOCIETY」】


哀しき忘却の果てメタルということで続けます。ポール・ディアノといえば言わずと知れたブルース・ディッキンソンの先代、その彼が90年代に入って突如カムバックを果たしたのがこのバンドKILLERSでした。自分が歌っていた頃のIRON MAIDENの代表作のタイトルをバンド名に冠しながらサウンドは何故かJUDAS PRIEST直系で、それでも最後に"Remember Tomorrow"のセルフ・カヴァーをやっているという絶妙な1stからわずか2年、すっかり豹変してPANTERAクリソツ系に完全転身してしまったこの2ndはもう話題にもならないくらいの酷い扱いを受けていたように思います。それでも"Wrathchild"を吼え猛っていたあの男のやることだから…と思って買ってみたんですが、その期待に限ってはきっちり応えてくれてます。フィル・アンセルモ似になってしまっている感は否めないものの、元々のスタイルもこんなんだしな〜と納得は行くしちゃんと燃える。声質と音楽性がマッチしてるという点でその他大勢のグランジ転身失敗組に比べりゃ上出来です。ここに+αで何か目立った鋭さがあれば裏FIGHTの名声も得られたろうに、悲しいかな楽曲的には凡百のPANTERAフォロワーと全くもって差異なし。パパMが好きだからZWANでも何でも聴きまっせくらいの勢いのポール・ディアノ愛好者にとっては満足の品でしょう。

【本日のレビューその3:MARC FERRARI & FRIENDS「GUEST LIST」】


ダメ押しでもう1枚。今日はメタラー以外は読む余地なしっすね、すいません…。店頭で見かけたときはマーク・フェラーリって誰だっけという程度の認識しかなかったのですが、ロビン・マッコーリー(MSG)、ボブ・キューリック(KISSにいたブルース・キューリックの弟)、ジョン・ウエスト(ARTENSION他)などが参加とのことで、100円ならばと賭けで購入。ブックレットを見たところ、マイク・ヴァーニーに見出されてKEEL(イングヴェイとSTEELERにいたロン・キールのバンド)のメンバーとなり、その後COLD SWEATおよびMEDICINE WHEEL結成に至るまでの、彼の輝かしい経歴が綴られていました。なるほど。内容はその中途半端に豪華なゲスト陣を多用しての、スリージーなバッドボーイ・ヘアメタル一直線。胸キュンメロハーもの、ハードドライヴィンにいく豪快系、メタル流エセブルーズロックを3:3:1くらいでバランス良く並べた、DANGER DANGERやWARRANTと寸分違わぬ出来になってます。このへんの人達はもう曲が垢抜けてて当たり前、演奏は不必要に上手いのが常識…の世界なので、95年にわざわざこんなことやられても有り難くも何ともないわけですけども、ともかく完成度は高いわけだし、あと有名無名織り交ぜて起用されてるシンガー陣がいずれもブルージーなヴァイブのあるハイトーンの持ち主ばかりで、そこに結構耳を引かれます。大減点モノの粗雑なプロダクションをも補って余りある夢の余韻。100円ならばまあ。

  10月14日
本日の収穫、カイマンから届きまくるCOLOSSAMITE「ECONOMY OF MOTION」、THE FLYING LUTTENBACHERS「GODS OF CHAOS」。朝よく通る道で、20代半ば〜後半とおぼしき太めの男二人が、自転車のハンドルをつかむ腕の肘から肩までをぴったり密着させながら、やけに互いの顔を見て喋りながら、何だかほのぼのと並走していくのをたまに見かけるんですけど、実際ホモのカップルなのかどうかが気になり続けて数ヶ月。

【只今のBGM:COLOSSAMITE「ECONOMIY OF MOTION」】


元DAZZLING KILLMENの人やDEERHOOFのギタリストも在籍するSKIN GRAFTのブチ壊れエクストリームフリージャンクバンドの98年作。ギョリンギョリンと毛羽立ったシングルコイルの鳴り(昔のアート・リンゼイ風)と刻んでないようで刻んでるギリギリのリズムがフリージャズよろしく火花を散らす、DAZZLING KILLMENとHELLA、「RED」の頃のクリムゾン、US MAPLE、DEERHOOF(もしくはTHE GORGE TRIO)の間をいくような音になってます。そこにスポークンワードスタイルのヴォーカルが乗ってガッツリまくし立てると。もう殆ど現代音楽かぶれのプログレ聴いてるような感覚になります。何だか知らんがスケールがでかい。LIGHTNING BOLTファンは眠くなるかも知れないがフレッド・フリス信者なら手に汗握ること請け合いです。アブノーマルでも芸術としてちゃんと真面目にやってる感じがあるからこのレーベルの人達はいつも好きです。

  10月13日
本日の収穫、久々に大漁です。まずカイマンから届いたTHE FLYING LUTTENBACHERS「...THE TRUTH IS A FUCKING LIE...」、STIFF SLACKにてMAKE BELIEVE「SHOCK OF BEING」、そしてナディアパーク内ヤマギワソフトの中古コーナーの外盤新品叩き売りコーナーからSAUSAGE「RIDDLES ARE ABOUND TONIGHT」(レス・クレイプール!)、PYOGENESIS「WAVES OF EROTASIA」(NUCLEAR BLAST)、FURBOWL「THE AUTUMN YEARS」(ex.ARCH ENEMYのヨハン・リーヴァ在籍)、KILLERS「MENACE TO SOCIETY」(ポール・ディアノ!!)、PAIN「PAIN」(HYPOCRICYのメンバーのソロユニット)、AFTER CRYING「DE PROFUNDIS」(ハンガリーの現代プログレバンド)、MARC FERRARI「GUEST LIST」(ex.KEEL!)をオール100円にて!昔BURRN!のレビューで名前見たな…みたいなのをあらかた買ってみました。既に何枚か放出決定してますが、700円ポッキリで積年の未知が拓けたので全然満足、問題なし。

【只今のBGM:SAUSAGE「RIDDLES ARE ABOUND TONIGHT」】


PRIMUSの結成メンバー3人が94年にいきなりリリースした1枚限りのスタジオ盤。大筋の内容は当然の如くPRIMUSと大差ないながらも、こちらはファンク然としたノリをあまり強調せず、不協和音をビシビシ使って更に変態性を前面に出してる印象です。う〜んどうにも、聴いたこともない奇怪なリフの数々、あさっての方向を見てるようできっちり盛り上げる(しかも微妙にブルーズやフォークをかじってる)達者なギター、酔ってんだか電波受けてるんだかわからないヴォーカル、意味不明に上がるテンション…と、今日買ったMAKE BELIEVEのあとに聴いたら殆ど違わなくて驚いてます。今これ54 40 OR FIGHT!やそれこそFLAMESHOVELあたりから新人として出てきたらみんなひれ伏して有り難がるんじゃないでしょうか?MAKE BELIEVEと54-71、90 DAY MENあたりがクロスしたかのような、よくよく聴けば激ヤバなフリークアウトジャンクポップとなっておりますよ。リバーブがドワドワ乗った締まらんプロダクションだけはいただけないが。

  10月12日
本日の収穫、カイマンから届いたKEVIN MOORE「GHOST BOOK」、CHEER-ACCIDENT「SALSAD DAYS」。自転車で移動中に携帯でメールを打ち始めるも書き出しの文が上手いこと考え付かず、どうしようか思案しながら信号待ちの間に目に留まった、眼前の街灯の支柱に貼ってあったチラシ。曰く「ジャンジャン 090-XXX-XXXX 簡単審査 必要なもの:身分証明書」と。パーツそれぞれに着目すればどれもそれなりに普通の単語もしくは数字なのに、それをこうやって並べると危ない闇金融だと一目で判るって面白いなあ…と、開いた携帯を片手に(しかもボタンに指をかけて)長時間しげしげと見入っている自分はあたかも差し迫ってその電話番号に用のある人みたいじゃないかとハッと気付いて、すぐに体勢を変えたけど、一緒に信号待ちしてた人に誤解された気がしてならないのが今日の心残りその一でした。

【只今のBGM:KEVIN MOORE「GHOST BOOK」】


CHROMA KEYOSIと精力的に活動を続けている元DREAM THEATERのキーボーディストのケヴィン・ムーアが、2004年に映画のサウンドトラックとして出したソロアルバム。CHROMA KEYは一応生ドラムや生ギターを使って他のメンバーもいたりするわけですがこれは完全単独制作のようです。てことは中身も察しがつくとおり、ほぼCHROMA KEYのエレクトロニカ版。フランスのMILSあたりの半生エディット系とLABRADFORDみたいな悲壮派エレクトロ・スローコアの中間の感触。18トラック中2曲を除いて全てインストということで、かなり思い切ってアンビエント寄りになってたりもしますが、独特の美意識を100%ストレートでこれでもかと堪能できて、ファンにはバッチリの内容かと。ホントに昔から一貫してユニークな詩情が変わらない人ですね。IDAHOやDAKOTA SUITE、STARS OF THE LIDなんかと同列で語られてもいい。しかしリリースは相変わらずプログレメタルの総本山INSIDE OUT。ULVERといいこの人といい、メタル専門リスナー以外の手の届かない所にいるのが惜しいものです。ラストの歌ものトラック"Sad Sad Movie"なんかFOLK IMPLOSIONとTELEFON TEL AVIVが合体したようなほのかな名曲っすよ。

  10月11日
収穫はなし。めっきり難しそうな音楽が好きなこの頃でございます。微妙な雨だったり意外と暑かったり、今年の秋到来は何だかダラダラと締まりが悪いですなあ。

【本日のレビューその1:TIM BERNE「FRACTURED FAIRYTALES」】


80年代後半に登場し、ジョン・ゾーンと絡むこともあったNYアンダーグラウンド前衛ジャズのアルト奏者ティム・バーンの89年リーダー作。WINTER&WINTERからのリイシューです。ドラムにジョーイ・バロン、ヴァイオリンにマーク・フェルドマンなどが参加。お化け屋敷系も多少たしなみつつ、不穏過ぎるグルーヴがどこにでも渦を巻くヘヴィ、イーヴル&インテンスなスタイルがあくまで身上の人のようで、袋に入った謎の生き物が床や壁を壊しながらボコズシと跳ね回るような激変拍子低音リフ(テーマというよりもはや…)、一触即発の決闘を見るようなアドリブの応酬と、感触的にはもう殆どデスメタル聴いてるみたいなもの。MESHUGGAH+CASSIBER!ロック畑の研究学生共が思い込みと憧れでやるDIY前衛即興の何と生ぬるいことかと、卓越した言語能力と駆動性、即応性、必然たるオーラ、その他のものに圧倒されるばっかりです。とにかく凄まじい骨太絶倫っぷり。ACID MOTHERS TEMPLEとかみたいな前衛ノイズインプロ界の住人の皆様にもきっとアピールするはず。このアルバムじゃなくても、ティム・バーンの名を見かけたら多分買ってしまえばいい。

【本日のレビューその2:KIT CLAYTON「LATERAL FORCES」】


硬派続きですいません、2001年VERTICAL FORM。一応トラック分けされてはいるものの全曲シームレスでトータル38分間続く、ドッブドブのアンビエント・ミニマル・重低音・エレクトロニック・ダブの嵐。ベースもキックもなく脈打つ低音ビーツの海にプツプツジョピジョピと無数の波が立ち、若干デトロイティッシュな香りもあるウワモノの変わり果てた骸がこれまた無数の残像を引っ張って通り過ぎては帰ってくる、非常に荒涼とした無機質サウンドスケイプとなっております。粗い砂利で知覚を強引にシゴかれるかの如き極端な刺激性とともに、麻痺した意識を無心に委ねてしまえるような妙な懐の広さもあり、アナログの世界のさまざまな意味性から遁れた純音響ともいうべきエレクトロニック・ミュージックにしか表現し得ないひとつの極北を提示してる感です。「E2-E4」とか「2001年宇宙の旅」とかの名を上せるのはいささか軽薄なようでもありますがそんなところといえばそんなところ。同じ電子音響でもこういう脳天気クレイジーとはダンゴムシとICチップくらい別物っすね。いや、どっちもイイんですけど。

【本日のレビューその3:COMECON「CONVERGING CONSPIRACIES」】


気を取り直して豪腕バカを一枚。現ENTOMBEDのLG・ペトロフが歌っていた時期もあったスウェディッシュデスの忘れられた老舗、由緒正しきNIHILIST派生系譜バンド。何枚目か判りませんが93年の作品で、SUNLIGHT STUDIOにてスコッグスベルグ録音という黄金コースです。何でまたドラムだけ打ち込みにしたのか、聴くに堪えないほど顕著ではないもののデスメタルでこれはやっぱり萎える。ともかく内容は、腕っぷしひとつで縦にブチ割った薪を手にウガーッと殴りつけてくるようなバキバキロッキン初期スウェディッシュスタイルそのもの。おお粗暴。しかしブームも軽くひと段落ついた頃とあってか随所で無理矢理プログレッシヴなアプローチが散見されるのが面白い。変拍子やリズムチェンジの強制挿入、果ては何故か口琴までビョインビョインと。DISMEMBERとCARBONIZEDの中間(どっちかというとCARBONIZEDの方が折れ気味)みたいな雰囲気かも。これはカルトメタル好きにはたまりませんね。政治的なバンド名と真逆に食い違うファンタジックなジャケといい、こういう人達の適当な目分量は後から確認すると何とも楽しく新鮮。

  10月8−10日
収穫はなし。三日も空きましたが、どこぞの遠方に出掛けていたわけでもなくバンドの録音が大詰めその1だったりしただけです。そんな中昨日9日、名古屋私立大学医学部キャンパスの学祭に出向きまして、話題沸騰、みんな大好き、あのレイザーラモンHGフォ〜!を見届けて参りました!

↑オオッ本人!!!

↑最後に客と「46回フォ〜!」遠い…
第一声は何フォ〜だろうなどと凄く期待に胸を膨らませて行ったはいいが、着いてみるともう壮絶な人の数で全くステージに近寄れず(実際の距離感は下の写真で見る感じより更にありました)、スピーカーからの声も建物に反響しまくって殆ど聞き取れるものではなくて、その上意外と普通のテンションで用意してきたコントを相方とやって最後に少し喋って終わりという流れであったため、実物を見たという感慨以外は何も得られず。しかしいいんです、実物が見られれば。詰め掛けた見物客は子供から中年、初老くらいまで超ワイドレンジで、合計3000〜4000人かそれ以上はいたでしょうか。無料とはいえキャンパスに掲げられた垂れ幕だけというプロモーションでこれだけ動員するなら大した物です。私の立っていたすぐ後ろで「でも絶対すぐ、消えるよね〜。」「年末…?までもつかなー」みたいな甘い推論を垂れてた娘共がいたが、ゲッツや何でだろうとは格違いの完成度と汎用性の高さに気付かんのか君達!!ブームが過ぎてもルー大柴のように堅実な特殊仕事人として残るに違いないと確信しております。あとは腰が故障しないことを祈るのみですな。いつかゴールデンの特番でハーレーにまたがってロブと共演しておくれ。

【只今のBGM:CECIL TAYLOR「CONQUISTADOR!」】


コルトレーンは既にあっち側、オーネット・コールマンはスター、ART ENSEMBLE OF CHICAGOも胎動を始めんとしていた66年ってことで、バリバリ「流行りのフリージャズ」アルバムです。こういうの今アツイんじゃねーの?とこぞって盛り上がるシーンからまた1枚生まれ出でた決定盤、みたいな、時代の空気感までパッケージした勢いとパワーがいいっすね。20分弱の長尺セッションが2曲のみ(CD化に伴って更にアウトテイク1曲追加)という構成からして、体力消耗系か…と聴く前からドッと疲れる向きもありましょうが、これが意外と乗っかってしまえばスイスイグイグイ聴ける。乱打だったり不穏な地響きだったりとかなり現代音楽的なアプローチをするピアノを軸に、ときに挿入される作曲パートではモード風のユニゾンフレーズも繰り出され、総じて山谷・晴れ曇り雨嵐のわかりやすいドラマに沿って駆け足で展開。情緒的な芸術として成立してます。絶叫に込めた気合や熱よりも急流を楽しんで乗りこなす各人およびグループの理知性と野心にもっぱら溜息。拍という拍を失って暴走するUNIVERS ZEROか、アンプラグド化したCOLOSSAMITEか、そんな雰囲気もあって前衛派ロック野郎でもニコニコ聴ける仕上がりかと思います。

  10月7日
収穫はなし。最近は日記のネタに乏しい生活で、連日無理して搾り出しているため軽く寝不足になってます。余りの馬鹿らしさに自分でも閉口気味なのでこういうときは何か謎めいた一言だけ書いたりしてみようと思います。

【只今のBGM:LACK OF INTEREST「LACK OF INTEREST」】


SLAP A HAMからも出していた変則ファストコアバンドの多分2nd。この盤を注文した日の日記にも別のアルバムのレビューがあります。ブォフブォフと妙な猛りをあげていたヴォーカルはちょっと普通の歌い方になっちゃいましたが、それでもキャーキャー系が多いこの手にしてはガッツリ骨太なのが珍しく、何よりソングライティングが格段に進歩してますね。ブラストも当然キレ度最高で炸裂、更にリズムチェンジがアホみたいに大量に注ぎ込まれるようになって、CIRCLE JERKSとNOMEANSNOとS.O.D.が一緒に脱水機に絡まったかの如きファニー&ヴァイオレントなカオティックスタイルに大変身。作り物のヘンタイじゃなく演り手が普段から隠し持っているテンションが素直に現れた感じのアガりようでとても好感です。ライヴを見たらそりゃ楽しいことでしょう。THREE ONE GやGSL好きの人にもお勧め。

  10月6日
▼さて行って参りましたZEPP名古屋、スピッツジャンボリーツアー「あまったれ2005」。デジャヴかと思った方、ちょっと違います。こともあろうに全国を2周するツアーの前後半両方とも参戦してしまいました。だって前回は席が遠かったり新作中心すぎのセットリストが少々物足らんかったりしたので。まあ、ただのミーハーファンと呼んで下さい。

▼相変わらず客層は女性が8割、三十路近そうなOLを中心に中高生から年増まで。私はMELT BANANAを着ていきましたが他の客で別段ヘンなTシャツは見かけませんでした。約1600人収容の1階スタンディングがみるみる満杯になり、ドリンクコーナーもオイルショックの如き行列。こういうバンドのスタンディングライブってやっぱり心なしか殺気が渦巻きます。皆それとなーく前方に行きたそうで、それがしかも殆ど女性とあって、いざ本番に突入した時を思うと怖い。数分押しで場内暗転、最前ブロック(ゼップの客席1階は何本か設けられた手すりでやんわり分割されている)は早くもすし詰めならぬ押し寿司状態に。私がいた付近でも熱心過ぎるオールドミスがグイグイ横から前へ割って入ろうとしてきたのでそこは男の腕力で必死の攻防。そんなことをやってる間に演奏されていた1曲目は新作から"テイタム・オニール"でした。スピーカーに近かったせいか、ステージもそう遠くはないんだけどどうも「実況中継」という感じのPA。視覚との時差がないだけでもまあ善しです。静かな場面での金物系は生音が聞こえていた気がするし。

▼今回メンバーのいでたちは至って普通(三輪氏はまあ普通ではないがいつも通り)。正宗は左胸にワンポイントでプリントの入った白Tシャツを着ていたのが、ストラップでそのプリントがちょうど隠れてしまい、ただの無地で大きめのTシャツに見えてジェフ・ベック同然。パフォーマンスも変わらず、正宗はジッとフロア後方あたりを見つめながら余り動かず歌い、三輪氏はロッカーらしくのけぞったりはするが激しいアクションはなく、田村は忙しいベースラインを遊びながらデイヴ・ムスティンの口の形をして走り回り、髪がバッサリ短くなった崎山大先生は投げて落とすような沈着冷静なスティックさばきで安定+αのプレイ。田村と正宗の間から崎ちゃんがバッチリ見えるベストポジションで良かった。しかし好き勝手暴れて家族食わせられてる田村が一番オイシイよなあといつも思う。彼のせわしなさがライヴにおいては全体のテンションを煽り立てる重要な起爆剤として作用してて、CDで意識されることはあまりないですが彼こそなくてはならん男です。あと演奏する姿を見ると結構正宗がギターソロをガンガン取っているのが判るんですが、ニュアンスとかフレージングが結構ヴィジュアル系的(すなわちBOOWY以降の悪しき和製ビートロック的)で萎える場面多数あり。三輪氏こそ布袋直系の人だし、このバンドはギターソロがもうちょっと良ければアチャーと思う所は何もないのになあ…とそこだけが前から少し残念。

▼客はノッてるものの歓声はやはり控えめ。曲が終わると無数の腕が上がってはいるんだけど、演奏の余韻の最後が途切れてみると無言で拍手しか残ってないという状況ばかり。MC中に変に要リアクションな野次を飛ばす男はいるし…。どうにかならんものかね名古屋。あと主に女性客の、パーに開いた手を奇数拍に合わせて前方に振り下ろすノリ方が波田陽句みたいで何か妙だなあ。周り殆どそればっかですけど。私は振れ幅5%以下の縮小版ヘッドバンギングで全て対応。MCでは触れるだろうと思っていた万博ネタが案の定出て、昨日水族館にいただのパルコに行っただのうなぎを食っただのという小話もありつつ、正宗発言をだいたい総括すると「昨日DVDで『E.T.』を人生で初めて見た。今日はこのツアー初めてのスタンディングライブで、10年くらい前を思い出す。今日はスピッツ18歳」「曲を作ることはさすがにこなれたが、ロックなMCというのが昔から難しい」などでした。

▼演奏された曲は順不同で以下のとおり。「スーベニア」から"春の歌""甘ったれクリーチャー""ナンプラー日和""正夢""ほのほ""ワタリ""恋のはじまり""テイタム・オニール""会いに行くよ""みそか"、「三日月ロック」から"夜を駆ける""エスカルゴ""けもの道"、「ハヤブサ」から"放浪カモメはどこまでも""8823""メモリーズ・カスタム"、「花鳥風月」から"スピカ""俺のすべて"、「ハチミツ」から"ロビンソン"(!)、「空の飛び方」から"空も飛べるはず"、「惑星のかけら」から"白い炎"。"ロビンソン"は割と序盤の方で演奏されてました。再利用出来る名曲ならいくらでも溜まってるし新しいのだって全然勝負になるという余裕の成せる業っすな。長いセットリストに途中から声がかすれ気味の正宗でありましたが、高音に差し障ることは一切無く、ハスキー度4割増って程度で難なくしのいでました。どうなってんでしょうか、凄〜。田村が投げたペットボトルも崎ちゃんのスティックも微妙に近いところに飛んできて取り損ね、終演後のドリンクカウンターはライヴ中の最前列に勝るとも劣らん高密度カオスで、Tシャツは前回買ったし…ってことで仕方なくドリンクとの引き換え用に渡されたゼップのマーク入りコインを記念にもらって帰ってきました。

▼CD屋には寄らず収穫なし

【只今のBGM:スピッツ「ハヤブサ」】


ここからも3曲やったということで久々に聴いてます。ものの本では微妙な評価が下っていたりするようですが、私は肯定派であります。巨大な金字塔「ハチミツ」の影からそう踏み外さない範囲内に収まっていた「インディゴ」〜「フェイクファー」の流れをズバッシャーンとひっくり返すハードロック企画盤であったとともに、「基本的に昔から変わらない天才」のはずだった正宗が初めて目立って違うことを(アレンジの問題ではない根底の部分で)やった作品であったと思います。タイミングとしては、70年代的ロックの再活性化という側面を孕んでいたオルタナ・ブームが日本の産業レベルにまで浸透し、ポスト・キャッチアップの攻めモードを皆自由に取れるようになった頃。ここで聴ける「ロック的感触」は、対象化され選択されたものであるという点で「ハチミツ」より前のアルバムにあったものとは質が異なり、徹底的にやったはずが却ってポップの極みである正宗の歌メロと無駄なく(リフパートと歌パートが剥離しかけたようなものではなく)噛み合うようになっています。"いろは"や"メモリーズ"に発見出来るような思い切ったモノトーン使い、円熟したバンドパワーをかつてない高温状態で誇示する"8823"のようなアプローチなどを見ても、振り出しに戻る覚悟と積み上げた自信が同時に漲るかのような勇ましさ。単なるメリハリ役の一言では片付かない瞬発力ラッシュが魅力の盤であることです。スリップケースを縦長に見せるジャケデザインもユニーク。

  10月5日
収穫はなし。オーノー、ビビンバピビンバビピンバビビンパビピンパピビンパピピンバピピンパ、順列組み合わせで全部ヒットするとは予想外…。結局最も正統なのはピビンパもしくはピビンパプであるようですが、どうしてここまで日本オリジナルの活用が増えてしまったのか謎ですねえ。

【只今のBGM:MASSIMO「HEY BABE, LET ME SEE YOUR USB AND I'LL SHOW YOU MY FIREWIRE」】


イタリアはシシリー島在住のノイズアーティスト。知的愉快犯の巣窟MEGOの中でもひときわ恐れられる存在のようです。その理由の一端はCD実物を手に取れば一目瞭然。表裏のジャケを特別にアップで載せておきます(※実物は8cmシングルサイズ)。作品タイトルを忠実に実写化した、史上稀に見る秀逸なバカジャケっすね。MEGO買いというよりジャケ買いでした。中身もまっとうなはずはなく、ノリノリ・レベルオーバー・エレクトロノイズの嵐。プツプツピー、ツチチチチ、みたいな優しいのじゃなくてピゴーー!ズビョビョーー!というやつ。一応決まったワンフレーズのリピートとそのアレンジが基本になっており、ビートというかパルスらしきものは確認できます。展開の緩急も結構ある。日本によくある容赦なき砂嵐系ではないので聴きやすいといえば聴きやすいですし、慣れればなかなかテンション上がります。実験だとかアンチ音楽だとかいう重たさを一切感じさせない天気の良さがとにかく楽しい。変にヤケクソになれるから好きだなあMEGO。

  10月4日
収穫はなし。そろそろ「家に帰ってカイマンからの封筒が届いてないと寂しい」症候群が出てきたので、また5枚ほどまとめて注文しました。久々に見たらサイトリニューアルしてて、カイマンクロッコディールが云々…ていうあやしい日本語文はどっかに行ったけども、幼児の英会話教材みたいなパステルカラー採用でますます胡散臭くなりましたな。しかし以前より早く届くようになったとか色々経営努力はしてるみたいなので何となく憎めん連中です。

【只今のBGM:JONI MITCHEL「MINGUS」】


79年発表。言わずと知れたジャズベーシストの巨人チャールズ・ミンガス追悼アルバム。相方ジャコ・パスとジョニ女史のほぼツートップ体制で、あとのバックはショーター、ハンコック、ピーター・アースキンという顔ぶれ。生前のミンガスの会話や鼻歌の録音が楽曲の合間に挟まって収められていて、曲の方も全6曲中4曲はミンガス作のものにジョニが詞をつけるという試みがなされております。ゆえにいつもの「女の私」が語る早口・半喋りスタイルはひと休みして、のっしり落ち着いて曲と組み合うジャズシンガー然とした歌い方に。一方アンサンブルはいつに増して実験的。ベースの枠を超えて歌うジャコと、ギターの枠を超えて弾(はじ)きヒトの枠からはみ出て唸るジョニとのダイアログに、あとの二人が息を潜めてそっとサポートに廻るという格好で、いわゆるジャジーSSWと形容されるものとは全く方角違い。ジョニがリーダーのジャズアルバムと称しても許されそうな出来です。声も楽器もこんなに自由にやっていいんだよと示す作品…などと言っては心が狭い。音楽を演奏する誰にでも等しくある所与の自由のもとで手練たちが粋に語らった記録であるのみ。

  10月3日
収穫はなし。部屋中に広がるCD平積みの山を少しでも切り崩そうと、CD-R編集等のために棚から出したままのものを元通りにしまう、という作業を1時間かけてやったのに、パッと見の部屋の様子が全然変わりません。ガックシ。REX(CODEINの後身)ってコンプリートしたはずなのにあと2枚どこ行ったっけ〜?などと却って悶々としてしまう結果に。色々なことを無責任に注意するこの日記でございますが、CDの買い過ぎには注意しましょう…

【本日のレビューその1:VOMITORY「PRIMAL MASSACRE」】


NASUMだったかDARKANEだったかのメンバーがEXTREME THE DOJOで来ていたときの名古屋公演終了後、ファンと談笑しているときに「Vomitory!! I love Vomitory!」と言っていたのが聞こえて以来気になってました。スウェーデン産の、こりゃー強力な肉食デスラッシュですね。2004年METAL BLADEリリース。変わった飛び道具はどこにもないながら、KRISIUNやKATAKLYSMに勝るとも劣らん重量級&猛突進スタイル一徹でグイグイ押してます。低く野太いヴォーカルは迫力充分、KREATORやSLAYERのようにドラマのあるリフ使い(EDGE OF SANITYがブルータルめにやってる時のような雰囲気も少々)をし、慎重過ぎず雑過ぎないドライブ感も快い。聴きやすい純正統派ということでわざわざ聴く気がしないなんて言う向きもありましょうが、凡庸なことしか出来ない訳ではなく敢えて王道に挑まんとする、ドラクエでいえば勇者のようなポジションなんだと思います。いいじゃないですか、やれ賢者だの武闘家だのがもてはやされる昨今に直球勝負で。私はかなり燃えました。

【本日のレビューその2:ORIGIN「ORIGIN」】


SLAYER〜MORBID ANGEL型の超優秀ブルータルデスバンドだったANGEL CORPSE(既に解散)の超絶ドラマーが在籍する新バンド。デビュー早々RELAPSEです。CRYPTOPSYやDYING FETUSにも匹敵する、何食わぬ顔でパタパタパタパタパタパタと鳴り続く激速ブラストとツーバスの大河が異常。リフはメカニカルな肌触りに拘った弱ニュースクール性でSUFFOCATIONやちょっとFEAR FACTORYを思い出したりもする。これはデスメタルにスラッシュメタルの時代からつながるロマンなど一切求めない向きにもアピールするツカミの良さですね。RELAPSEくせえハッタリやなあ…と嫌うオールドスクーラーもいましょうが。テクニカルデスというほど構造的に入り組んではいないし、ただただ冷徹に速くドス黒く切り刻むばかりの、新感覚ブルータル派ですな。宇宙の暗黒を写したジャケの世界観と確かに一致してます。まあ悪く言えば単調この上ない作風でもありますので、ユニークさにもなっているその部分をポジティヴな方向に転じるような今後のステップアップに期待。

【本日のレビューその3:RAVENOUS「BLOOD DELIRIUM」】


ブルータルデス三者三様ということで今日はもう一枚。ANTHRAX、S.O.D.、NUCLEAR ASSAULT、BRUTAL TRUTH、MALFORMED EARTHBORN、HEMLOCK、HOLY MOSES、EXIT-13…と在籍した/絡んだバンドを数え上げればキリのない北米大陸最凶のカーリーヘアといえばあの男ダン・リルカ。それが激シブUSカルトデスメタルの名バンドAUTOPSY〜ABCESSの中心人物カート・ライファートを含むメンバー3人、NECROPHAGIA(近年はフィル・アンセルモが参加)のKILLJOYと組んだゲロゲロ血みどろ頑固親父デスの黒き新星がこれ、RAVENOUS。04年リリースの2ndです。中身は多数決によりかやっぱりAUTOPSY〜ABCESS直系。曲の前後にホラー映画の音声のサンプルを大量に貼り付け、バタスタバタスタと鈍い2ビートを骨に、BLACK SABBATHやCELTIC FROSTを簡単にしたようなズルズル湿って腐敗臭のするリフと何をそんなに恨んでいるのか判らぬオゲオゲヴォーカルが基本的に常時全開の、オールドスクールの一言では片付かない何ともアングラで醜悪な音楽性です。演奏の機能性由来の驚嘆・感動なんかよりも「うわっ何か臓物!」という生物レベルでのショックが全て。ZENI GEVAとかが好きな人にも俄然お勧め。

  10月2日
本日の収穫、全店バーゲン最終日のバナナレコード・パルコ店にてMASSIMO「HEY BABE, LET ME SEE YOUR USB AND I'LL SHOW YOU MY FIREWIRE」(MEGO!)、JOHN COLTRANE「KULU SE MAMA」(65年)、TRICOLOR「MIRTH + FECKLESS」(ATAVISTICリリース、ジェフ・パーカーのトリオ)。夜遅め(22〜24時くらい)に住宅地を移動してると、歳食って頻尿になるせいか、老犬が散歩に出てるのをよく見ます。連れてる人も大抵中年以上だったりするのですが、首を垂れ気味にしてすぐ目の前の地面に顔を近づけながら(視力が弱っているためと思われる)ソロソロとゆっくり進む愛犬に、イラつく様子もなく歩調をあわせてそっと後ろについてあげる優しい飼い主が多く、そういうのを見るにつけ、あ〜自分はああいう風に出来なかったな、といつも心が痛みます。我が家に数年前までいた美男子の柴犬も晩年の散歩どきはそんな調子で、しかし昔から一緒に暮らしてて未だ大学生だったりするコッチとしては犬のことをいつまでも少年だと思っているから、散歩中に止まってしまったり変な方に行かれそうになったりするとつい無理に引っ張ってしまうことが多くありました。思えばそんなの要介護老人に「てめーのオムツくらいてめーが換えろよ〜」となじるようなもの、割と悔いの少ない人生を送ってるつもりですがそこだけは悔やみきれません。特にオチも何もない話でした。皆様のお宅のペットが老犬老猫になってもちゃんと慈しんであげて下さいねということで。

【本日のレビューその1:TONY BANKS「A CURIOUS FEELING」】


GENESISのキーボーディスト、トニー・バンクスのソロ。ドラムは三人GENESISの固定サポート要員であるチェスター・トンプソンが参加、ヴォーカルはキム・ビーコンというあまり聞かない人。79年ということはGENESISでいうと「AND THEN THERE WERE THREE(邦題:そして三人が残った)」と「DUKE」の間ですね。ピーター・ゲイブリエルの脱退でシンフォ化に拍車が掛かっていたところに今度はギターのスティーヴ・ハケットまでもが抜け、正に今この男が燃えたぎらんとしていた頃です。クラシカルともフュージョン風ともつかないアクロバティックな調性コントロールが昔から光っていた人ですが、ここではGENESISで聞き覚えのあるノスタルジックなエレピやストリングスの音色をドップリ駆使して、QUEENとSTEELY DANの間のような何とも不思議な音楽性を開花させています。シンフォ系プログレアーティストが80年代に向けてポップ化したなれの果ての音、日本でいうところの「プログレハード」というやつですな。といっても改革されたのはリズム面のツカミやすさだけで、ラジオ向きのお気楽さはほぼ皆無。相変わらずの奔放なコードワーク満載でうかつに手を触れられないガラス細工のようなギリギリの美しさを発しております。YESがクリス・スクワイア(b.)のバンドであり続けたように、GENESISの頭脳はこの人であったということがよく判る。勿論GENESISファンでなくともキワドいAORが好きなら間違いのない傑作です。

【本日のレビューその2:CHET BAKER「CHET BAKER AND CREW」】


たまにはただのいわゆるモダンジャズも。爽やかにも程がある船上のクルー達を撮ったジャケが印象的な56年のクインテット作。1曲目のみ派手なパーカッションをフィーチャーしたラテン風アレンジで面食らいますが、全体の大筋は周到なアレンジで2管が絡むテーマ、ただの4ビートを堅守して全く主張のないリズム隊、ビーチが見えるテラスで傾けるシャンパン、後ろでは粋なバックバンド…みたいな危険度ゼロの出来過ぎたもてなし満載。これぞウエストコーストの快適さ。その豪華なお膳立ての上でも相変わらずのツプ〜と悩ましげなトーンでフラつくチェットはやはりサムシング・スペシャルであることです。上品かつ余裕のプレイで見事に仕事人の座をこなすテナーのフィル・アーソも、ここではスティーヴ・マルクマスと並べられたリチャード・マークスの如し。ついでにピアノがボビー・ティモンズだったりするんですが、振りの大き過ぎないブルーズフィーリングを嫌味なくまぶしたスタイルで優秀なサイドマンっぷりを発揮。また例によってCD化に伴いボーナストラックが大量に追加収録されており、そのうち1曲ではチェットのあの妖艶じとじとヴォイスがばっちり披露されています。月並みですがこの人の歌は大好きです。1枚に1曲入ってるだけでも嬉しい。ともかく、ジャズに「オシャレである」「ハイソである」「きれいで聴きやすい」「癒される」といったイメージを持っていてこれから聴いてみようと思っている方は、マイルスやコルトレーンに振り回されたりブレイキー暑苦しいなあとか思う前にこのへんから。

  10月1日
本日の収穫、引き続き全店バーゲン中のバナナレコード、今日は四谷店でVOMITORY「PRIMAL MASSACRE」(北欧激ブルータルデス2004年作)、FARBEN「TEXTSTAR」(a.k.a.ヤン・イェリネック)、CHET BAKER「CHET BAKER AND CREW」(56年)、ARTBLAKEY「FREEDOM RIDER」(61年)、BUDDY RICH「SWINGIN' NEW BIG BAND」。9月はあっという間だったな〜。もはや後半戦も中盤に差し掛かった2005年、達成した業績を書き並べたら皆様はどれくらいになりますか。私は3行くらいだと思います。

【本日のレビューその1:FARBEN「TEXTSTAR」】


個人名義だったりGRAMMだったり色々なヤン・イェリネックのFARBEN名義でのシングルコンピ。リリースはKLANG ELEKTRONIKから。ドスッと太めのビート感と、ケージに入れられた7〜8匹の鈴虫の鳴き声や物音を電子音化したかのような複雑系要素がグニャグニャと絡みつつ、総じて都会的でスッキリした鳴りに収まる未来派クリックハウス。体そのものを踊りに仕向けることはせずして、体内のリズムに溶け込んで静かな高揚を誘うような奥ゆかしさが毎度のことながら素晴らしい。見返してみたらここでもここでも絶賛してました。リズムの楽しさや刺激性あるアイディアに長けている一方で、いつも高級な布のような洗練された美しさを下地に一枚スーッと敷いてるのが好きです。人と音の位置関係への計らいがなされている感じ。アーティストの手から出てきたアートであることを真っ直ぐに主張する音楽作品って多いような少ないようなですが、これは正にそれ。

【本日のレビューその2:TODAY IS THE DAY「KISS THE PIG」】


今日のRELAPSEを背負って立つ、極悪サイコジャンクグラインドバンドの2004年作。ブックレットは本気の目つきでありとあらゆる銃(短銃からマシンガンまで)を構えるメンバー各人の写真の嵐。怖い。SOILENT GREENのようなのたうつ酩酊感とも、枝分かれ組であるMASTODONのようなテクニックに裏付けられる詩情でもなく、カオティックギターと共にストレートなブラストをとにかく出来るだけ使った巨大な殺気がメイン。DISCORDANCE AXISと初期BRUJERIAの中間のようなデンジャラス極まりない劇薬グラインドを練り上げてきました。容赦なきテンションはブラックメタルの域。生ぬるい演出の狂気ではなく、狂気の芸術を信じる者による渾身の妄想実体化。このバンドの作品の中でも過去最恐をマークしたんじゃないでしょうか。BEASTIE BOYSより更に半オクターブ高いトーンで絶叫するヴォーカルにも全くもって笑えません。レーベル名とジャケにピンと来た人ならまず間違いなく当たりクジです。DAZZLING KILLMEN〜THE FLYING LUTTENBACHERS周辺が好きな人も是非。

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